説明

集塵セルおよびエアクリーナ

【課題】集塵セルのメンテナンス周期を伸ばす。
【解決手段】イオナイザ4とコレクタ(セカンダリコレクタ)5との間の空間に、接地電極板18−1,18−2,18−3を並置し、これらの電極群をプライマリコレクタ19とする。各接地電極板18は、自身の貫通孔Hと隣接する接地電極板18の貫通孔Hとが、浄化対象の気体の流入側から流出側に向かう方向(A方向)において、互いに重ならないように並置する。これにより、イオナイザ4によりイオン化されたミストや粒子が接地電極板18の貫通孔Hを有する面Pにぶつかって、そのミストや粒子中の比較的比重の大きな粗い粒子が接地電極板18に吸着され、残りの粒子が接地電極板18の貫通孔Hを通ってセカンダリコレクタ5へ至り、セカンダリコレクタ5では、比較的比重の小さいミストや粒子(例:純粋な水溶性分及び油分など)を吸着させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋内空気を浄化するために用いて好適な集塵セルおよびエアクリーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は従来のエアクリーナを示す構成図であり、同図において、1はエアクリーナの矩形筒形のケースで、このケース1内の一方の開口端部にはサランネットおよび不織布などからなるプレフィルタ2が設けられている。
【0003】
3はケース1内の中央部付近に設置された集塵セルであり、この集塵セル3内には浄化対象の気体の流入側にイオナイザ4が、浄化対象の気体の流出側にコレクタ5が設置されている。
【0004】
イオナイザ4はタングステン線や放電エッジなどのコロナ放電により空気をイオン化する複数の放電電極6を、接地された複数のプレート(電極)7により挟むように配置したものからなり、コレクタ5は正,負の高電圧が印加されて、対向する2枚のコレクタ極板8,9を複数組備えたものからなる。
【0005】
10は集塵セル3の出口側に設けられた脱臭機能などを有する活性炭フィルタ、11はケース1内の他方の開口端部に設けられたファンである。
【0006】
図9に集塵セル3の要部の回路図を示す。集塵セル3にはイオナイザ4およびコレクタ5に高電圧を供給する高電圧出力装置(パワーパック)12が付設されている。高電圧出力装置12は、その出力段に、直列接続された分圧抵抗13,14を備えている。
【0007】
図9において、15はイオナイザ入力線、16はコレクタ入力線であり、イオナイザ入力線15から取り出される直流の高電圧(例えば、8kV)HiVがイオナイザ4の放電電極6とプレート7との間に印加され、コレクタ入力線16から取り出される直流の高電圧(例えば、4kV)LoVがコレクタ5のコレクタ極板8,9間に印加される。イオナイザ4におけるプレート7およびコレクタ5におけるコレクタ電極8は接地されている。
【0008】
このエアクリーナ100では、電源の投入によって、高電圧出力装置12内で高電圧HiVおよびLoVを発生させ、この高電圧HiVおよびLoVをイオナイザ入力線15およびコレクタ入力線16へそれぞれ供給する。これにより、イオナイザ4の放電電極6とプレート7との間およびコレクタ5のコレクタ極板8,9間にそれぞれ高電圧が印加される。
【0009】
一方、ケース1の一端からは、浄化対象の気体として埃を含む空気が、ファン11の吸引力を受けてケース1内に吸い込まれ、この埃のうち大きな埃はプレフィルタ2にて集塵される。そして、このプレフィルタ2を通過した微小の埃である粒子が集塵セル3のイオナイザ4へ流入し、放電電極6の周辺に生じた電界内でイオン化され、その多くはプラス(+)に帯電される。図8および図9において、矢印Aは、集塵セル3における浄化対象の気体の通過方向を示す。
【0010】
この帯電したプラス(+),マイナス(−)の粒子はコレクタ5に流入し、コレクタ5のコレクタ極板8,9間に至り、プラス(+)に帯電した粒子は接地されたコレクタ極板8に、わずかではあるがマイナス(−)に帯電した粒子は高電圧が印加されているコレクタ極板9に、それぞれ吸着される。集塵された後の空気は、活性炭フィルタ10を通過して脱臭され、ケース1の他方の開口端から室内に送り出される(例えば、特許文献1,2参照)。
【0011】
【特許文献1】特開平9−313984号公報
【特許文献2】特開平9−099254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した従来のエアクリーナ100では、タバコや花粉、ハウスダスト等の一般の大気粉塵を中心とした一般家庭やオフィスなどで使用される場合には問題はないが、ミストなどを中心としたウェット環境の工場やプラントなどで使用する場合、メンテナンスを頻繁に行わなければならないという問題があった。
【0013】
すなわち、例えば工場やプラントなどでは、室内環境で発生する粉塵量に対して大量の粉塵が発生する。さらに粉塵にはドライ粉塵だけでなくミストのようなウェット粉塵も含まれる。この場合、集塵セル3の前段に設けられたプレフィルタ2でミストを含む比較的比重の大きな粉塵類が主に捕集され、プレフィルタ2で捕集されなかった比較的比重の小さいミストや微粒子が集塵セル3で捕集される。
【0014】
ミスト自体は集塵セル3のコレクタ5で捕集されると液化し、コレクタ電極8,9にほとんどこびり着くことはなく流れ落ちるため、洗浄も容易である。しかし、ミスト成分に塵等が混入してコレクタ5で捕集されると、コレクタ電極8,9にこびり着いて溜まるので、集塵セル3を洗浄する機会が増え、また、洗浄作業もやっかいとなる。
【0015】
このエアクリーナ100において、集塵セル3のメンテナンス周期を伸ばすためには、コレクタ5で極力比重の大きいミストを含む粉塵を大量に集塵させない必要がある。しかしながら、単純にプレフィルタ2の集塵能力を上げると圧力損失が増え、また、プレフィルタ2の目詰まりも早まり、結果的にメンテナンス周期が短くなる。
【0016】
尚、ここではミスト環境を例に説明をしたが、一般の大気粉塵を中心としたドライ環境でも同様の効果も見込める。前段のプライマリコレクタで比較的比重の大きな粗い粒子を集塵し、後段のセカンダリコレクタで細かい粒子を集塵することでトータル的なメンテナンス周期を伸ばすこともできる。
【0017】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、メンテナンス周期を伸ばすことができる集塵セルおよびエアクリーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような目的を達成するために本発明は、浄化対象の気体の流入側に設置され、高電圧の供給を受けて、浄化対象の気体中の粒子をイオン化するイオナイザと、浄化対象の気体の流出側に設置され、高電圧の供給を受けて、イオナイザによりイオン化された粒子を吸着するコレクタ(セカンダリコレクタ)と、イオナイザとコレクタとの間の空間に設置された浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向にラビリンス構造を有する接地電極板(プライマリコレクタ)とを設けたものである。
【0019】
本発明において、接地電極板は浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向にラビリンス構造を有するが、そのラビリンス構造の一例として、浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向に1以上の貫通孔を有する面を向けて接地電極板を設置するようにするとよい。このようにすると、浄化対象の気体に塵等が付着したミストが混入していたような場合、イオナイザによりイオン化されたミスト(プラス(+)に帯電されたミスト)が接地電極板の貫通孔を有する面にぶつかって、そのミスト中の大きな粒子が接地電極板に吸着され、残りの粒子が接地電極板の貫通孔を通ってセカンダリコレクタへ至る。これにより、セカンダリコレクタにおける比重の大きいミストを含む粉塵が大量に吸着される機会が減り、集塵セルのメンテナンス周期を伸ばすことができる。
【0020】
また、一般の大気粉塵を中心としたドライ環境でもイオナイザによりイオン化された粉塵(プラス(+)に帯電された粉塵)が接地電極板の貫通孔を有する面にぶつかって、その粉塵の中の大きな粉塵が接地電極板に吸着され、残りの細かい粉塵が接地電極板の貫通孔を通ってコレクタへ至る。これによりセカンダリコレクタにおいては大きな粉塵を吸着する機会が減り、集塵セルのメンテナンス周期を伸ばすことができる。
【0021】
本発明において、接地電極板は1枚でもよいが、浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向に沿って接地電極板を複数並置するようにしてもよい。例えば、1以上の貫通孔を有する接地電極板とする場合、各接地電極板を、自己の貫通孔と隣接する接地電極板の貫通孔とが、浄化対象の気体の流入側から流出側に向かう方向において、互いに重ならないように並置する。このようにすると、イオナイザによりイオン化されたミストや粒径の大きな粉塵が手前の接地電極板の貫通孔を真っ直ぐに通過した後、後の接地電極板の貫通孔を真っ直ぐに通過するということがなく、次々に接地電極板の貫通孔を有する面にぶつかるものとなる。これにより、ミスト中の粒子や粒径の大きな粉塵が接地電極板に吸着される回数が増え、セカンダリコレクタでは比重の小さい微粒子を主に集塵させることができる。要するに、セカンダリコレクタに到達する前に、ほとんどの部分(粒径の大きいもの)をプライマリコレクタで処理可能とする。
【0022】
また、本発明において、1以上の貫通孔を有する接地電極板とする場合、接地電極板の貫通孔は、単なる孔ではなく、その貫通孔から切り起こされた傾斜面を有するものとし、この傾斜面にイオナイザによりイオン化されたミストや粒径の大きな粉塵がぶつかるものとしてもよい。この場合、貫通孔から切り起こされた傾斜面は、浄化対象の気体の流出側へ切り起こされた傾斜面としてもよく、浄化対象の気体の流入側へ切り起こされた傾斜面としてもよい。
【0023】
また、本発明において、1以上の貫通孔を有する接地電極板とする場合、貫通孔から切り起こされた傾斜面を有する接地電極板を用いるようにし、この接地電極板を浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向に沿って複数並置する際、各接地電極板を自己の貫通孔と隣接する接地電極板の貫通孔とが浄化対象の気体の流入側から流出側に向かう方向において互いに重なるように並置するようにしてもよい。
【0024】
また、本発明において、接地電極板は必ずしも1以上の貫通孔を有するものとしなくてもよく、接地電極板をその板面を浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向にほゞ平行にして複数配置するようにし、この接地電極板にはその板面に浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向に対面する屈曲部を形成するものとしてもよい。
【0025】
また、本発明は、集塵セル単体としてではなく、集塵セルに浄化対象の気体を流入させるファンと組み合わせたエアクリーナとしても提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、イオナイザとコレクタとの間の空間に、浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向にラビリンス構造を有する接地電極板を設置するようにしたので、浄化対象の気体に塵等が付着したミストや粒径の大きな粉塵が混入していたような場合、そのミスト中の大きな粒子や粒径の大きな粉塵を接地電極板に吸着させるようにして、セカンダリコレクタでは比重の小さい微粒子を主に集塵させることができ、集塵セルのメンテナンス周期を伸ばすことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1はこの発明に係る集塵セルの一実施の形態の要部を示す図である。同図において、図9と同一符号は図9を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0028】
本実施の形態の集塵セル17は、イオナイザ4とコレクタ5との間の空間に、浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向(矢印A方向)に沿って複数の接地電極板18を並置している。この例では、複数の接地電極板18として、接地電極板18−1,18−2,18−3の3つを並置している。
【0029】
接地電極板18−1,18−2,18−3は、それぞれ貫通孔H1,H2,H3を複数有しており、この貫通孔H1,H2,H3を有する面P1,P2,P3を浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向(矢印A方向)に向けて、イオナイザ4とコレクタ5との間の空間に設置されている。
【0030】
また、各接地電極板18は、自身の貫通孔Hと隣接する接地電極板18の貫通孔Hとが、浄化対象の気体の流入側から流出側に向かう方向(矢印A方向)において、互いに重ならないように並置されている。すなわち、接地電極板18−1について言えば、接地電極板18−1の貫通孔H1と隣接する接地電極板18−2との貫通孔H2とが矢印A方向において互いに重ならないように、接地電極板18−1の貫通孔H1と接地電極板18−2の貫通孔H2とをずらして配置している。接地電極18−2,18−3についても同様にして配置されている。
【0031】
この接地電極板18−1,18−2,18−3は1つの電極群19を構成している。以下、この電極群19をプライマリコレクタと呼ぶ。また、このプライマリコレクタ19と区別するために、従来から用いられているコレクタ5をセカンダリコレクタと呼ぶ。
【0032】
図2にこの集塵セル17の外観図を示す。本実施の形態では、この集塵セル17を従来の集塵セル3(図8)に代えてエアクリーナ100に搭載し、エアクリーナ200(図3)とする。このエアクリーナ200では、浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向(矢印A方向)に沿って、イオナイザ4,プライマリコレクタ19,セカンダリコレクタ5の順で各電極群が配置された構成とされる。
【0033】
以下、このエアクリーナ200を工場やプラントなどで使用するものとし、塵等が付着したミストが空気に多く混入している場合を例にとって、その動作について説明する。
【0034】
このエアクリーナ200では、電源の投入によって、高電圧出力装置12内で高電圧を発生させ、この高電圧をイオナイザ入力線15へ、また分圧抵抗13,14によって分圧した高電圧をコレクタ入力線16へ、それぞれ供給する。これにより、イオナイザ4の放電電極6とプレート7との間およびセカンダリコレクタ5のコレクタ極板8,9間にそれぞれ高電圧が印加される。
【0035】
一方、ケース1の一端からは、浄化対象の気体として塵等が付着したミストや粉塵を含む空気が、ファン11の吸引力を受けてケース1内に吸い込まれ、この塵等が付着したミストや粉塵の中の大きな粒子の一部はプレフィルタ2にて集塵される。そして、このプレフィルタ2を通過したミストや粉塵を含む空気が集塵セル17のイオナイザ4へ流入し、放電電極6の周辺に生じた静電界内でイオン化されてプラス(+)に帯電される。
【0036】
このプラス(+)に帯電されたミストや粉塵は、接地電極板18−1の貫通孔H1を有する面P1にぶつかって、そのミストや粉塵の中の大きな粒子が接地電極板18−1に吸着され、残りの粒子(面P1にぶつかっても吸着されなかった粒子や面P1にぶつからなかった粒子)が接地電極板18−1の貫通孔H1を通過する。
【0037】
接地電極板18−1の貫通孔H1を通過したミストや粉塵は、接地電極板18−2の貫通孔H2を有する面P2にぶつかって、そのミストや粉塵の中の大きな粒子が接地電極板18−2に吸着され、残りの粒子(面P2にぶつかっても吸着されなかった粒子や面P2にぶつからなかった粒子)が接地電極板18−2の貫通孔H2を通過する。
【0038】
接地電極板18−2の貫通孔H2を通過したミストや粉塵は、接地電極板18−3の貫通孔H3を有する面P3にぶつかって、そのミストや粉塵の中の大きな粒子が接地電極板18−3に吸着され、残りの粒子(面P3にぶつかっても吸着されなかった粒子や面P3にぶつからなかった粒子)が接地電極板18−3の貫通孔H3を通過する。
【0039】
接地電極板18−3の貫通孔H3を通過したミストや粉塵は、セカンダリコレクタ5に流入し、セカンダリコレクタ5のコレクタ極板8,9間に至り、コレクタ極板8に吸着される。この場合、ミストや粉塵の中の大きな粒子はその殆どが接地電極板18−1,18−2,18−3で吸着されるので、セカンダリコレクタ5に流入するミスト中の粒子や粉塵は微小となる。
【0040】
このようにして、本実施の形態によれば、セカンダリコレクタ5では比重の小さい微粒子を主に集塵させることができ、集塵セル17のメンテナンス周期を伸ばすことができる。
【0041】
なお、プライマリコレクタ19は、プレフィルタ2と比較して圧力損失が少なく、プレフィルタ2の集塵能力を上げるよりも、性能面で有利になる。また、プライマリコレクタ19は、高電圧を印加する電極構造とはされていないので、給電及び絶縁機構が不要となり構造が簡単になる可能性がある。
【0042】
図4にプライマリコレクタ19の具体例を示す。このプライマリコレクタ19Aでは、丸形状の孔(貫通孔)HAをパンチングした板金を接地電極板18Aとし、この接地電極板18Aをその貫通孔HAが重ならないように交互に積層させている。例えば、接地電極板18Aを共通部品とし、例えばその左右の位置を入れ替えることによって、隣接する接地電極板18A間の貫通孔HAが重ならないようにしている。この他、接地電極板18Aとして貫通孔HAの位置が異なる2種類の接地電極板を作り、この2種類の接地電極板を交互に積層するなどの方式も考えられる。
【0043】
また、この接地電極板18Aを用いる場合、隣接する接地電極板18Aの貫通孔HA同士は、必ずしもその全ての領域が重ならないようにしなくてもよい。すなわち、図5(a)に示すように、手前の接地電極18Aの貫通孔HAと後の接地電極18Aの貫通孔HAとをその全ての領域において重ならないようにするのに対し、図5(b)に示すように、手前の接地電極18Aの貫通孔HAと後の接地電極18Aの貫通孔HAとを交差させ、重ならない一部の領域が生じるようにしてもよい。本発明でいう「互いに重ならないようにする」という定義には、「全部の領域」のみではなく、このような「一部の領域」も含まれるものである。
【0044】
図6にプライマリコレクタ19の別の具体例を示す。このプライマリコレクタ19Bでは、角形状の孔(貫通孔)HBを切り起こし加工によって形成した板金を接地電極板18Bとし、この接地電極板18Bをその貫通孔HBが重なるように積層させている。
【0045】
このプライマリコレクタ19Bにおいて、接地電極板18の各貫通孔HBは、その貫通孔HBから切り起こされた傾斜面HPを有しており、この傾斜面HPにイオン化されたミストや粉塵がぶつかり、ここでそのミスト中の大きな粒子や粒径の大きな粉塵が吸着される。この場合、貫通孔HBから切り起こされた傾斜面HPは、浄化対象の気体の流出側へ切り起こされた傾斜面としてもよく、浄化対象の気体の流入側へ切り起こされた傾斜面としてもよい。
【0046】
このプライマリコレクタ19Bでは、貫通孔HBを通過する際にミストや粉塵が傾斜面HPにぶつかるので、隣接する接地電極板18Bの貫通孔HB同士を重ならないようにしなくても、ミスト中の大きな粒子や粒径の大きな粉塵を効率よく接地電極板18に吸着させることができる。これにより、接地電極板18Bを共通部品とし、一方向に揃えて重ねて行くのみで、簡単にプライマリコレクタ19Bを得ることができる。
【0047】
なお、図6に示した例では、接地電極板18Bを共通部品とし、その貫通孔HBが重なるように積層させたが、接地電極板18Bとして貫通孔HBの位置が異なる2種類の接地電極板を作り、この2種類の接地電極板を交互に積層するなどの方式も考えられる。
【0048】
また、上述した実施の形態では、プライマリコレクタ19を複数の接地電極板で構成したが、1つの接地電極板で構成するものとしてもよい。また、接地電極板に設ける貫通孔は、必ずしも複数でなくてもよく、1個でも構わない。また、接地電極板に設ける貫通孔は、丸形状、角形状に限られるものではない。
【0049】
上述したプライマリコレクタ19Aでは、接地電極板18Aに丸形状の孔(貫通孔)HAを形成することによって、本発明でいうラビンリンス構造を実現している。また、上述したプライマリコレクタ19Bでは、接地電極板18Bに角形状の孔(貫通孔)HBを切り起こし加工によって形成することによって、本発明でいうラビンリンス構造を実現している。このラビリンス構造は必ずしも貫通孔を設けることによって実現しなくてもよい。
【0050】
図7にプライマリコレクタ19の他の具体例を示す。このプライマリコレクタ19Cでは、接地電極板18Cをその板面を浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向にほゞ平行にして複数配置するようにし、これら接地電極板18Cの板面に貫通孔ではなく、浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向に対面する屈曲部BPを形成している。
【0051】
なお、図7(a)はプライマリコレクタ19Cの平面図、図7(b)はプライマリコレクタ19Cの正面図、図7(c)はプライマリコレクタ19Cの側板を取り外した状態を示す側面図である。プライマリコレクタ19Cの中心部には、支柱Jが設けられており、この支柱Jを通して接地電極板18Cが並設されている。
【0052】
このプライマリコレクタ19Cでは、隣接する接地電極板18Cの板面間を浄化対象の気体が通過する。この場合、接地電極板18Cの板面には浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向に対面する屈曲部BPが形成されているので、この屈曲部BPにイオン化されたミストや粉塵がぶつかり、ここでそのミスト中の大きな粒子や粒径の大きな粉塵が吸着される。
【0053】
上述した実施の形態において、集塵セル17をイオナイザ4とプライマリコレクタ19のみの構成とすれば、すなわちセカンダリコレクタ5を除けば、一般空気環境における無放電セルとして使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る集塵セルの一実施の形態の要部を示す図である。
【図2】この集塵セルの外観図である。
【図3】この集塵セルを用いたエアクリーナの構成図である。
【図4】この集塵セルに用いるプライマリコレクタの具体例を示す斜視図である。
【図5】このプライマリコレクタにおける隣接する接地電極間の貫通孔の重なりを説明する図である。
【図6】この集塵セルに用いるプライマリコレクタの別の具体例を示す斜視図である。
【図7】この集塵セルに用いるプライマリコレクタの他の具体例を示す図である。
【図8】従来のエアクリーナの構成図である。
【図9】従来のエアクリーナにおける集塵セルの要部の回路図である。
【符号の説明】
【0055】
1…ケース、2…プレフィルタ、4…イオナイザ、5…コレクタ(セカンダリコレクタ)、6…放電電極、7…プレート(電極)、8,9…コレクタ極板、10…活性炭フィルタ、11…ファン、12,13…分圧抵抗、14…高電圧出力装置、15…イオナイザ入力線、16…コレクタ入力線、17…集塵セル、18(18−1,18−2,18−3,18A,18B,18C)…接地電極板、H(H1,H2,H3,HA,HB)…貫通孔、P(P1,P2,P3)…貫通孔を有する面、HP…傾斜面、BP…屈曲部、J…支柱、19(19A,19B,19C)…プライマリコレクタ、200…エアクリーナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化対象の気体の流入側に設置され、高電圧の供給を受けて、前記浄化対象の気体中の粒子をイオン化するイオナイザと、
前記浄化対象の気体の流出側に設置され、高電圧の供給を受けて、前記イオナイザによりイオン化された前記粒子を吸着するコレクタと、
前記イオナイザと前記コレクタとの間の空間に設置された前記浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向にラビリンス構造を有する接地電極板と
を備えることを特徴とする集塵セル。
【請求項2】
請求項1に記載された集塵セルにおいて、
前記接地電極板は、
前記浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向に1以上の貫通孔を有する面を向けて設置されている
ことを特徴とする集塵セル。
【請求項3】
請求項2に記載された集塵セルにおいて、
前記接地電極板は、
前記浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向に沿って複数並置されている
ことを特徴とする集塵セル。
【請求項4】
請求項3に記載された集塵セルにおいて、
前記各接地電極板は、
自身の貫通孔と隣接する接地電極板の貫通孔とが、前記浄化対象の気体の流入側から流出側に向かう方向において、互いに重ならないように並置されている
ことを特徴とする集塵セル。
【請求項5】
請求項2〜4の何れか1項に記載された集塵セルにおいて、
前記接地電極板の貫通孔は、
その貫通孔から切り起こされた傾斜面を有する
ことを特徴とする集塵セル。
【請求項6】
請求項1に記載された集塵セルにおいて、
前記接地電極板は、
前記浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向にその板面をほゞ平行にして複数配置され、かつその板面に前記浄化対象の気体の流入側から流出側へ向かう方向に対面する屈曲部を有する
ことを特徴とする集塵セル。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載された集塵セルと、
この集塵セルに浄化対象の気体を流入させるファンと
を備えることを特徴とするエアクリーナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−131540(P2010−131540A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310711(P2008−310711)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】