説明

集塵装置

【課題】被処理空気が流れる空気通路(10)内に、該被処理空気中の塵埃を帯電させるための荷電部(20)と、該荷電部(20)の下流側で液滴を噴霧して塵埃を液滴に付着させるスクラバー部(30)と、塵埃が付着した液滴を捕集する捕集部(40)とを備えた集塵装置(1)において、装置の大型化やコストアップを防止するとともに十分な集塵効果が得られるようにする。
【解決手段】
荷電部(20)を、放電電極(21)と、放電電極(21)に対して所定の位置関係で設置された対向電極(22)と、両電極(21,22)間でストリーマ放電を発生させる放電電源(43)(23)とを備えたストリーマ放電部(20)により構成し、ストリーマ放電によって塵埃を帯電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理空気中の塵埃などの汚染物を荷電部で帯電させた後にスクラバー部で液滴(水滴)に付着させて捕集する集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、集塵装置には、電気的な処理を伴って被処理空気を処理するものがある。その一例として、被処理空気中の塵埃をコロナ放電により帯電させるための荷電部と、該荷電部を通過した被処理空気を洗浄液で洗浄するスクラバー部とを備えた集塵装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この集塵装置に被処理空気を流すと、まず、該被処理空気中の塵埃が荷電部においてコロナ放電により帯電する。スクラバー部では、被処理空気に水などの洗浄液が散布され、塵埃が電気的な吸引力により液滴に付着して装置の下方へ落下する。装置には、落下した塵埃と液滴を回収する回収槽が設けられており、回収した洗浄液が排出または再利用される。スクラバー部を通過した被処理空気からは塵埃が除去されている。そして、このようにして塵埃の除去された被処理空気が装置の出口から排出される。
【特許文献1】特開2003−126728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、コロナ放電では被処理空気中の塵埃が十分に帯電されないため、塵埃が液滴に付着せずにスクラバー部を通過してしまい、十分な集塵効果が得られないおそれがある。また、このような問題を防止するために、例えばスクラバー部を大型にすることが考えられるが、そうすると集塵装置が大型になるうえ、使用する洗浄液の量が増えるためにコストが増大してしまうことになる。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、荷電部とスクラバー部とを備えた集塵装置において、装置の大型化やコストアップを防止するとともに十分な集塵効果が得られるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、被処理空気が流れる空気通路(10)内に、該被処理空気中の塵埃を帯電させるための荷電部(20)と、該荷電部(20)の下流側で液滴を噴霧して塵埃を液滴に付着させるスクラバー部(30)と、塵埃が付着した液滴を捕集する捕集部(40)とを備えた集塵装置を前提としている。
【0007】
そして、この集塵装置は、上記荷電部(20)が、放電電極(21)と、放電電極(21)に対して所定の位置関係で設置された対向電極(22)と、両電極(21,22)間でストリーマ放電を発生させる放電電源(23)とを備え、ストリーマ放電によって塵埃を帯電させるストリーマ放電部(20)により構成されていることを特徴としている。
【0008】
この第1の発明では、荷電部(20)を構成するストリーマ放電部(20)においてストリーマ放電が発生する。ストリーマ放電は、放電電極(21)の先端から対向電極(22)まで発光を伴ったプラズマ柱として形成される放電であって、コロナ放電と比べて被処理空気中の塵埃を十分に帯電させる能力を有する強い放電である。そのため、コロナ放電を行うものに比べて、スクラバー部(30)において塵埃が液滴に確実に付着する。
【0009】
また、ストリーマ放電により、放電場には低温プラズマ状のガスが発生する。このガスには、活性種として、高速電子、イオン、オゾン、ヒドロキシラジカルなどのラジカルや、その他励起分子(励起酸素分子、励起窒素分子、励起水分子など)が含まれる。そして、被処理ガスに臭気成分や有害成分が含まれていると、これらの活性種により上記臭気成分や有害成分が分解されて、無臭化、無害化される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、捕集部(40)がデミスタ(41)により構成されていることを特徴としている。デミスタ(41)は、例えば金属繊維により所定の厚みを持った金網状に形成されたものである。
【0011】
この第2の発明では、塵埃の付着した水滴がデミスタ(41)に接近すると、電荷を持った水滴は電気影像力によってデミスタ(41)に付着する。
【0012】
第3の発明は、第1の発明において、捕集部(40)が、電位差を有する複数の電極板(42)により構成されていることを特徴としている。
【0013】
この第3の発明では、塵埃の付着した水滴が電極板(42)に接近すると、電荷を持った水滴はクーロン力によって電極板(42)に付着する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、荷電部(20)をストリーマ放電部(20)で構成したことにより、コロナ放電を行う従来の装置と比べて塵埃を帯電させる能力が向上し、スクラバー部(30)において塵埃が液滴に確実に付着する。したがって、スクラバー部(30)を大型にしなくても十分な集塵効果を得ることができる。その結果、集塵装置の大型化を防止できるうえ、使用する洗浄液の量が増えないのでランニングコストも増加しない。
【0015】
また、本発明によれば、ストリーマ放電で発生する活性種により、被処理空気に含まれる臭気成分や有害成分を分解し、被処理空気を無臭化、無害化することも可能となる。
【0016】
上記第2の発明によれば、塵埃が付着した水滴がデミスタ(41)に接近すると、電荷を持った水滴が電気影像力によってデミスタ(41)に付着する。そして、デミスタ(41)により液滴を捕集して回収することにより、塵埃を除去したクリーンな被処理空気を排出できる。
【0017】
上記第3の発明によれば、塵埃が付着した水滴が電極板(42)に接近すると、電荷を持った水滴がクーロン力によって電極板(42)に付着する。そして、電極板(42)により液滴を捕集して回収することにより、塵埃を除去したクリーンな被処理空気を排出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る集塵装置(1)は、被処理空気が流れる排気ダクト(空気通路)(10)内に各構成要素を配置したものであって、排気ダクト(10)の入口側または出口側の端部には排気ファン(図示せず)が設けられている。この集塵装置(1)の具体的な適用例としては、厨房排気のオイルミストやダストを除去する例がある。
【0020】
この集塵装置(1)は、被処理空気の流れ方向の上流側から下流側に向かって、被処理空気中の塵埃を帯電させるための荷電部(20)と、液滴を噴霧して塵埃を液滴に付着させるスクラバー部(30)と、塵埃が付着した液滴を捕集する捕集部(40)とを順に配置することにより構成されている。
【0021】
上記荷電部(20)は、ストリーマ放電によって塵埃を帯電させるストリーマ放電部(20)により構成されている。このストリーマ放電部(20)は、放電電極(21)と、放電電極(21)に対して所定の位置関係で設置された対向電極(22)と、両電極(21,22)間でストリーマ放電を発生させるための放電電源(23)とを備えている。
【0022】
上記対向電極(22)は、メッシュ状の電極板により構成されている。また、放電電極(21)は、先端がこの対向電極(22)に向かうように配置されたタングステンの針状電極により構成されている。放電電源(23)には直流電源が用いられており、放電電極(21)に放電電源(23)のプラス極が、対向電極(22)に放電電源(23)のマイナス極が接続されている。なお、放電電極(21)は、タングステン以外の材料を用いてもよい。
【0023】
ストリーマ放電は、放電電極(21)の先端から対向電極(22)まで発光を伴ったプラズマ柱として形成される放電であって、被処理空気中の塵埃がこのストリーマ放電によって帯電する。また、ストリーマ放電により、放電場には低温プラズマ状のガスが発生する。このガスには、活性種として、高速電子、イオン、オゾン、ヒドロキシラジカルなどのラジカルや、その他励起分子(励起酸素分子、励起窒素分子、励起水分子など)が含まれている。そして、被処理ガスに臭気成分や有害成分が含まれていると、これらの活性種により上記臭気成分や有害成分が分解されて、無臭化、無害化される。
【0024】
スクラバー部(30)は、排気ダクト(10)の中心部に配置されたノズル(31)と、このノズル(31)に一端が接続された給水管(32)と、給水管(32)の途中に設けられたポンプ(33)と、給水管(32)の他端が接続される洗浄液タンク(図示せず)とを備え、洗浄液タンク内の洗浄液(水)をノズル(31)から噴霧するように構成されている。上記ノズル(31)は、噴霧口が排気ダクト(10)の下流側を向くように配置されており、洗浄液(水)を円錐状に噴霧するものである。
【0025】
捕集部(40)は、金属繊維から形成した所定厚さの金網部材であるデミスタ(41)を備えている。上記排気ダクト(10)には、このデミスタ(41)の下方に排水口(11)が形成されている。排水口(11)には排水管(12)が接続され、排水管(12)は回収槽(図示せず)に接続されている。回収した排水は、水処理後に廃棄してもよいし、スクラバー部(30)の噴霧水に再利用してもよい。
【0026】
−運転動作−
次に、この集塵装置(1)の動作について説明する。
【0027】
被処理空気は、排気ダクト(10)に接続された排気ファンによって排気ダクト(10)内を出口側に向かって流れていく。このとき、ストリーマ放電部(20)では、放電電極(21)から対向電極(22)に向かってストリーマ放電が発生している。ストリーマ放電により、コロナ放電と比べて被処理空気中の塵埃は十分に帯電する。また、このストリーマ放電により上記活性種が発生し、被処理ガスに含まれる臭気成分や有害成分が分解されて、無臭化、無害化される。
【0028】
スクラバー部(30)では、ノズル(31)から排気ダクト(10)の下流側に向かって水が噴霧されている。噴霧された水は排気ダクト(10)内の全体に拡がり、被処理空気の流れに乗って下流側へ流れていく。その際、噴霧された液滴とストリーマ放電部(20)で帯電した塵埃とが混合される。そして、電荷を持った塵埃が液滴に接近することにより両者の間に電気影像力が働き、液滴に塵埃が付着する。
【0029】
液滴に塵埃が付着すると、液滴が帯電した状態となる。この状態で液滴がデミスタ(41)に接近すると、今度は液滴とデミスタ(41)の金属繊維との間に電気影像力が働き、液滴が塵埃を保持したままデミスタ(41)に付着する。デミスタ(41)への液滴の付着が進むと、デミスタ(41)が十分に濡れて洗浄液がデミスタ(41)から滴下する。このとき、デミスタ(41)に付着した塵埃は洗浄液で流され、洗浄液と一緒にデミスタ(41)から回収槽に回収される。
【0030】
デミスタ(41)を通過した被処理空気は、塵埃が除去されている。したがって、排気ダクト(10)の出口から排出されるのは、クリーンな被処理空気である。
【0031】
−実施形態1の効果−
この実施形態では、荷電部(20)をストリーマ放電部(20)で構成したことにより、従来と比べて塵埃を帯電させる能力が向上し、スクラバー部(30)において、コロナ放電を行うものよりも塵埃が液滴に確実に付着する。したがって、スクラバー部(30)を大型にしなくても十分な集塵効果を得ることができる。その結果、集塵装置(1)の大型化を防止できるうえ、使用する洗浄液の量が増えないのでランニングコストも増加しない。
【0032】
また、この実施形態1によれば、ストリーマ放電で発生する活性種により、被処理空気に含まれる臭気成分や有害成分を分解し、被処理空気を無臭化、無害化することも可能となる。したがって、デミスタ(41)を通過した被処理空気は、塵埃が除去されるとともに臭気成分や有害成分も除去されたクリーンな空気となる。
【0033】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2は、図2に示すように、捕集部(40)として、デミスタ(41)の代わりに複数の電極板(42)と、電極板(42)に電位差を与える電源(43)とを用いたものである。この電極板(42)は、図示の例では3枚が被処理空気の流れ方向と平行に配置されている。そして、中央の電極板(42)が電源(43)のプラス極に接続され、両側の電極板(42)が電源(43)のマイナス極に接続されている。排気ダクト(10)の排水口(11)は、この電極板(42)の下方に配置されている。なお、この構造では電極板(42)が濡れるため、適当な漏電対策を施しておくとよい。
【0034】
その他の構成は実施形態1と同じであるため、説明を省略する。
【0035】
この実施形態では、液滴が電極板(42)に達する前までの動作も実施形態1と同じであり、ストリーマ放電により被処理空気の臭気成分や有害成分が分解されるとともに、塵埃が帯電して水滴に電気影像力で付着する。
【0036】
塵埃が付着した液滴は、電極板(42)に達すると、クーロン力により電極板(42)に引き寄せられ、該電極板(42)に付着する。そして、電極板(42)が十分に濡れると洗浄液が電極板(42)から滴下し、その際に塵埃も洗い流される。電極板(42)から滴下した液滴は、塵埃とともに回収槽に回収される。また、この電極板(42)を通過した後の被処理空気はクリーンな空気である。
【0037】
この実施形態2の場合も、実施形態1と同様に、スクラバー部(30)を大型にしなくても十分な集塵効果を得ることができるため、集塵装置(1)の大型化を防止できるうえ、使用する洗浄液の量が増えないのでランニングコストも増加しない。
【0038】
また、ストリーマ放電で発生する活性種により、被処理空気に含まれる臭気成分や有害成分を分解し、被処理空気を無臭化、無害化することも可能である。
【0039】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0040】
例えば、上記実施形態では、集塵装置(1)の具体的な適用例として、厨房排気のオイルミストやダストを除去する例を挙げたが、工場の排気を被処理空気とする集塵装置などに適用してもよいし、用途は任意に変更可能である。
【0041】
また、上記各実施形態において、ストリーマ放電部(20)は、針状の放電電極(21)とメッシュ状の対向電極(22)とを備えたものとして説明したが、両電極(21,22)の形状や構成は適宜変更してもよい。また、放電電源(43)(23)には交流電源(43)を用いてもよい。
【0042】
さらに、上記各実施形態において、スクラバー部(30)は、排気ダクト(10)の中心部に1つのノズル(31)を有するものとして説明したが、複数のノズル(31)を排気ダクト(10)内に適当な間隔で配置したものであってもよい。
【0043】
また、上記各実施形態では、横向きの排気ダクト(10)内に各機器を配置することにより集塵装置(1)を構成しているが、縦向きの排気ダクト(10)内に各機器を配置することにより集塵装置(1)を構成してもよい。
【0044】
要するに、本発明は、ストリーマ放電部(20)により構成された荷電部(20)と、洗浄液(水)を噴霧するスクラバー部(30)とを備え、荷電部(20)で帯電した塵埃をスクラバー部(30)の液滴に付着させて捕集部(40)で捕集するものであれば、細部の構成は任意に変更してもよい。
【0045】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本発明は、被処理空気中の塵埃などの汚染物を荷電部で帯電させた後にスクラバー部で液滴(水滴)に付着させて捕集する集塵装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態1に係る集塵装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態2に係る集塵装置の構成図である。
【符号の説明】
【0048】
1 集塵装置
10 空気通路
20 ストリーマ放電部(荷電部)
21 放電電極
22 対向電極
23 放電電源
30 スクラバー部
40 捕集部
41 デミスタ
42 電極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理空気が流れる空気通路(10)内に、該被処理空気中の塵埃を帯電させるための荷電部(20)と、該荷電部(20)の下流側で液滴を噴霧して塵埃を液滴に付着させるスクラバー部(30)と、塵埃が付着した液滴を捕集する捕集部(40)とを備えた集塵装置であって、
上記荷電部(20)は、放電電極(21)と、放電電極(21)に対して所定の位置関係で設置された対向電極(22)と、両電極(21,22)間でストリーマ放電を発生させる放電電源(23)とを備え、ストリーマ放電によって塵埃を帯電させるストリーマ放電部(20)により構成されていることを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
請求項1において、
捕集部(40)が、デミスタ(41)により構成されていることを特徴とする集塵装置。
【請求項3】
請求項1において、
捕集部(40)が、電位差を有する複数の電極板(42)により構成されていることを特徴とする集塵装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−6371(P2008−6371A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179169(P2006−179169)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】