説明

集水構造

【課題】既設の排水枡を交換することなくそのまま使用しながら、コストや時間をかけることなく、排水機能を維持しながら捕獲できる流入物の量を大きくできる集水構造を提供する。
【解決手段】排水枡1へ流入する雨水の流路上において流路を交差して起立する網体10で排水枡1の周囲及び上方を囲う。排水枡1は、路側において道路と平行に設けられた溝2の底面に設けられたものであってもよい。そして、網体10は、排水枡1の上方位置から溝2に沿って延び、溝2と交差する縁辺が溝2の内面に密着し、溝2と平行する縁辺が溝2の縁に密着しているものであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路側部に設けられた、ロールドガッターなどの排水路において、雨水を集める排水枡近傍の集水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路側部における集水構造として、道路の走行部分から縁に向けて下り勾配を設け、さらに道路の長さ方向に沿って、所定位置から排水枡に向けて下り勾配を有する溝を設け、雨水を排水枡に集める構造が採用されている。
【0003】
一方、排水枡には、通常、地中に埋設された排水管に異物が流入し閉塞することを防止するための網状の蓋体、いわゆるグレーチング蓋が設置される。しかしながら、グレーチング蓋に落ち葉などが堆積すると、排水枡への雨水の流入の妨げとなる。そこで、落ち葉等の堆積により排水枡への雨水の流入が妨げられることを防止するための様々な構造が提案されている。そして、そのような構造として、例えば、特開2005−264722号公報に開示されたグレーチング蓋がある。
【0004】
このグレーチング蓋では、流水表面の流水勾配よりも大きく傾斜した導水表面を有する複数のガイド部材が、横断方向に並べられた状態で上流側に設けられている。そして、ガイド部材上に流れてくる水の力で落ち葉等の屑片を下流側へ押し出すことにより、ガイド部材の下流側の集水通路を開放し、流水の排水性能を確保するものとなっている。
【0005】
また、このグレーチング蓋では、横断方向(道路の幅方向)外側に水量の偏りが生じた場合における排水性能の確保が考慮されていなかったため、その対策を施したものとして、特開2007−205101号公報に開示されたグレーチング蓋がある。このグレーチング蓋では、一部のガイド部材の長手方向長さが他のガイド部材の長手方向長さよりも長くされているので、グレーチング蓋の上に落ち葉等の屑片が堆積しても、流水の呑み込みスペースを長期間確保でき、かつ、横断方向における排水性能を確保することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献2】特開2005−264722号公報
【特許文献1】特開2007−205101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記グレーチング蓋を含む従来のグレーチング蓋では、捕獲した落ち葉等の流入物はその表面に堆積する構造となっているため、排水機能を維持しながら捕獲できる流入物の量(以下、許容量とする)は表面積によりある程度決まってしまう。そのため、例えば、集中豪雨時に、想定された量を超える流入物が流れてきた場合、グレーチング蓋は短時間のうちに閉塞してしまうおそれがあった。ところが、許容量を増やすために排水枡の口径を大きくするためには、排水枡を交換するコストや時間を要するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、既設の排水枡を交換することなくそのまま使用しながら、コストや時間をかけることなく、流入物の許容量を大きくできる集水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る集水構造では、排水枡へ流入する雨水の流路上において前記流路を交差して起立する網体で、前記排水枡の周囲及び上方を囲う。なお、本発明において起立とは、流路に対し直交する場合のみならず、所定の角度で傾斜する場合も含まれるものとする。
【0010】
前記排水枡は、路側において道路と平行に設けられた溝の底面に設けられたものであってもよい。そして、前記網体は、前記排水枡の上方位置から前記溝に沿って延び、前記溝と交差する縁辺が前記溝の内面に密着し、前記溝と平行する縁辺が前記溝の縁に密着しているものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る集水構造によれば、排水枡へ流入する雨水とともに流れてくる落ち葉等の流入物は、流路を交差して起立する網体により捕獲される。そして、この網体は、雨水の流路上において流路を交差して起立し、排水枡の周囲を囲むものであるため、排水枡へ流入する雨水に接する面積が排水枡の開口面積よりも大きくなる。従って、流入物の許容量が大きくなる。しかも、排水枡を囲うものであるため、既設の排水枡に適用することができ、排水枡を交換する必要がない。そのため、既設の排水枡を交換することなくそのまま使用し、コストや時間をかけることなく、流入物の許容量を大きくできる。
【0012】
なお、網体は排水枡の上方も囲うもうのであるため、雨水の量が増えて網体の起立した高さよりも水位が高くなった場合にも、流入物が排水枡に直接流入することを防止できる。
【0013】
網体の形状は、排水枡の設置されている場所にあわせて適宜決めることができる。例えば、排水枡が、路側において道路と平行に設けられた溝の底面に設けられている場合、排水枡の上方位置から溝に沿って延び、その溝と交差する縁辺が溝の内面に密着し、その溝と平行する縁辺が溝の縁に密着するものにできる。この場合、溝が流路となり、雨水は溝に沿って流れ排水枡へ流入することになるが、網体の縁辺が溝の内面に密着していることから、溝に沿って流れてくる流入物は網体に捕獲されることになる。また、道路の幅方向に流れて、排水枡及び溝の排水枡近傍位置に流れ込む雨水とともに流れてくる流入物も捕獲される。この場合、溝に流入する雨水の流路は路面を経て溝の内面に沿ったものとなるため、縁辺が溝の縁に密着している網体は、この流路に対し交差して起立した状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る集水構造の実施形態の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る集水構造の他の実施形態の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照しながら、本発明に係る集水構造の実施形態について説明する。
この集水構造が採用された排水枡1は、路側において道路20と平行に設けられた溝2の底面に設けられている。道路20の路面3には、幅方向の中央位置から溝2への下がり勾配が設けられ、路面3の上に降った雨水が溝2に集められるものとなっている。また、溝2は、その底面を浅い曲面としたロールドガッターとなっている。そして、その底面は、排水枡1が設けられている位置で最も低くなっており、排水枡1に溝2に沿って二つの方向(道路20の上り方向と下り方向)から雨水が流入するものとなっている。
【0016】
排水枡1の開口はグレーチング蓋4で塞がれ、更にその周囲が網体10で囲まれている。網体10は、正方形の中央部11と、矩形の延伸部12、13と、矩形の一長辺を曲線に置換えた形状をなす側部14、15とで構成されている。延伸部12、13は、その一短辺において前記中央部11の対向する辺に対しそれぞれ取り付けられ、中央部11から、それぞれが反対方向に延びている。また、側部14、15は、延伸部12、13のそれぞれの、中央部11に取り付けられた短辺に対向する短辺に、曲線の輪郭部分が延伸部12、13の長軸方向に突出する向きで取り付けられている。更に、側部14、15は、延伸部12、13との境目で折り曲げられ、中央部11及び延伸部12、13に対し傾いた状態とされている。そして、中央部11が前記排水枡1の上方に配置され、延伸部12、13が溝2の上方に配置され、中央部11及び延伸部12、13の縁辺が、溝2の開口部の縁に密着する状態で載置されている。一方、側部14、15は、溝2に挿入され、曲面の輪郭部分が溝2の内面に密着した状態とされている。
【0017】
なお、両側部14、15の先端間の長さは約4000mm、延伸部12、13の幅は約700mmとなっており、各部材はSPHC(熱間圧延鋼板)で形成されている。ただし、その寸法や材質に制限はなく、使用状況に応じて好ましいものとすればよい。
【0018】
また、網体10は、溝2に対し固定しておくことが好ましい。その固定方法に制限はなく、適宜好ましい方法で固定すればよいが、例えば、溝2の適当な位置にアンカープレートを打ち込むとともに、網体10にチェーンを取り付け、そのチェーンをアンカープレートに取り付けることで固定することができる。
【0019】
この集水構造によれば、排水枡1へ流入する雨水とともに流れてくる落ち葉等の流入物は、流路となる溝2を交差して起立する網体10の側部14、15により捕獲され、その水位が高い場合や流れの勢いが強い場合には、網体10の延伸部12、13でも捕獲される。そして、この網体10全体の排水枡1へ流入する雨水に接する面積は、排水枡1の開口面積よりも大きいため、流入物の許容量が大きくなる。しかも、排水枡1を囲うものであるため、既設の排水枡1に適用することができ、排水枡1を交換する必要もない。また、集中豪雨など、突発的に雨水の流れが多く強いものとなる場合において、流入物は、主に延伸部12、13で捕獲されることになるため、この延伸部12、13を長くすることで、許容量を適宜調整することができる。
【0020】
網体10の形状に制限はなく、使用する条件等に応じて、その他の形状とすることができる。図2に、網体10の形状を変えた場合の集水構造の外観を示す。なお、図2において、図1に示す集水構造と実質的に同じ部分には同符号を付し、その説明を省略する。
【0021】
図2に示す集水構造で使用されている網体16は、グレーチング蓋4の平面積とほぼ同じ底面積を有する箱形をなし、グレーチング蓋4に載置されている。そして、その側面は、溝2の端面と排水枡1の壁面に密着している。そのため、排水枡1へ流入する雨水とともに流れてくる落ち葉等の流入物は、流路となる溝2の端面に密着しているを交差している側面により捕獲され、その水位が高い場合や流れの勢いが強い場合には、上面でも捕獲されることになる。この網体16によれば、排水枡1へ流入する雨水に接する面積は、排水枡1の開口面積よりも、側面積分だけ大きくなる。また、図1に示す網体10のように、許容量を調整することはできないが、網体10よりも小型で簡単な形状となっているため、取り扱いが容易となりコストを低く抑えることができる利点がある。
【符号の説明】
【0022】
1 排水枡
2 溝
3 路面
4 グレーチング蓋
10、16 網体
11 中央部
12、13 延伸部
14、15 側部
20 道路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水枡へ流入する雨水の流路上において前記流路を交差して起立する網体で、前記排水枡の周囲及び上方を囲ったことを特徴とする集水構造。
【請求項2】
前記排水枡は路側において道路と平行に設けられた溝の底面に設けられ、前記網体は、前記排水枡の上方位置から前記溝に沿って延び、前記溝と交差する縁辺が前記溝の内面に密着し、前記溝と平行する縁辺が前記溝の縁に密着している請求項1に記載の集水構造。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−64029(P2011−64029A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216949(P2009−216949)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(391007460)中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社 (47)
【出願人】(509264268)中日本ハイウェイ・メンテナンス北陸株式会社 (4)
【Fターム(参考)】