説明

雌ねじ成形方法

【課題】雄ねじの軸力を向上させることができる雌ねじを成形する雌ねじ成形方法を提供する。
【解決手段】ワーク12に対して孔114を成形する先端に設けられた孔成形部100と、孔成形部100に対して連続して設けられたねじ成形部102と、孔成形部100の後端側に設けられた所定の形状を付与する形状付与部106と、を有する加工ツール32を回転させながらワーク12に押圧することで雌ねじ14を成形する雌ねじ成形方法は、加工ツール32の孔成形部100によって、肉盛り処理が行われた雌ねじ14を成形する位置に孔114を成形する孔成形工程と、ねじ成形部102によって孔114に雌ねじ14を成形する雌ねじ成形工程と、雌ねじ14の入口周辺の盛り上がり部116の上部に形状付与部106によって平坦な面を成形する平坦面成形工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対して雌ねじを成形する雌ねじ成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークに雌ねじを成形する場合には、下記特許文献1に示すように、ワークの肉盛り処理が行われた箇所に、雌ねじを成形する加工ツールを回転しながら前記ワークを押圧することで、雌ねじを成形していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−329528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の技術では、ワークの肉盛りがされた箇所に、雌ねじを成形していくので、成形された雌ねじの周りに肉盛りが残り、この残った肉盛りがバリになってしまう。図15に示すように、雌ねじの周辺にバリがある場合に、雌ねじ200に雄ねじ(例えば、ボルト)202を螺合させて他のワーク204を固定する際、前記バリによって、雌ねじ200が成形されたワーク206と他のワーク204とが平行配置されないため、雄ねじ202の頭部208にかかる面圧が一様にならず、雄ねじ202の軸力が低下してしまう。この軸力の低下が雄ねじ202の緩みの原因になってしまう。したがって、雌ねじ200を成形した後にバリを除去する作業を必要に応じて行う必要があり、手間がかかっていた。
【0005】
そこで、本発明は、係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、雄ねじの軸力を向上させることができる雌ねじを成形する雌ねじ成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ワークに対して孔を成形する先端に設けられた孔成形部と、前記孔成形部に対して連続して設けられたねじ成形部と、前記孔成形部の後端側に設けられた所定の形状を付与する形状付与部と、を有する加工ツールを回転させながら前記ワークに押圧することで雌ねじを成形する雌ねじ成形方法であって、前記加工ツールの前記孔成形部によって、肉盛り処理が行われた雌ねじを成形する位置に孔を成形する孔成形工程と、前記ねじ成形部によって前記孔に雌ねじを成形する雌ねじ成形工程と、前記雌ねじの入口周辺の盛り上がり部を前記形状付与部によって平坦化させる平坦面成形工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記雌ねじの入口周辺の前記盛り上がり部は、前記肉盛り処理及び前記孔成形工程及び前記雌ねじ成形工程によって成形されるものである。
【0008】
前記形状付与部は、前記ねじ成形部によって貫通され、前記孔成形部方向に付勢されており、前記平坦面成形工程は、前記雌ねじ成形工程と並行して行われてもよい。
【0009】
前記形状付与部は、前記ねじ成形部の後端側に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、孔成形部と、前記孔成形部に対して連続して設けられたねじ成形部と、前記孔成形部の後端側に設けられた所定の形状を付与する形状付与部とを有する加工ツールを回転させながら前記ワークに押圧することで、前記孔成形部により孔が成形され、その後、前記孔に雌ねじが成形されるとともに、前記形状付与部により雌ねじの入口周辺の盛り上がり部を平坦化させるので、1回の動作で、雄ねじの軸力を向上させることができる雌ねじを成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ねじ加工装置を備えるロボットとコントローラの略式機能ブロック図である。
【図2】実施の形態に係るねじ加工装置の側面断面図である。
【図3】実施の形態における雌ねじ成形方法を実現するための加工ツールの一例を示す図である。
【図4】雌ねじ成形方法を示すフローチャートである。
【図5】ワークの雌ねじ加工位置に肉盛り処理が行われたときの状態を示す図である。
【図6】加工ツールによる孔の成形状態を示す図である。
【図7】加工ツールによる雌ねじの成形状態を示す図である。
【図8】加工ツールによる雌ねじの入口周辺の盛り上がり部における平坦面の成形状態を示す図である。
【図9】加工ツールの退避状態を示す図である。
【図10】加工ツールによって成形された雌ねじを示す図である。
【図11】変形例1の加工ツールによる雌ねじの入口周辺における平坦面の成形状態を示す図である。
【図12】変形例2の加工ツールを示す図であり、変形例2の加工ツールによる雌ねじの入口周辺における平坦面の成形状態を示す図である。
【図13】変形例3の加工ツールを示す図であり、変形例3の加工ツールによる雌ねじの入口周辺における平坦面の成形状態を示す図である。
【図14】図14は、図13のXIV−XIV線断面図である。
【図15】従来技術によってワークに成形された雌ねじにボルト等の雄ねじを螺合させて他のワークを固定した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明に係る雌ねじ成形方法を、それを実施する雌ねじ加工装置との関係で好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、実施の形態に係る雌ねじ加工装置10は、本塗装前であるワーク(例えば、金属板)12における所定の箇所に雌ねじ14を形成するためのユニット型式の装置であり、ロボット16の先端に着脱自在に設けられている。ロボット16は産業用の多関節型であって、雌ねじ加工装置10はロボット16の動作範囲内で任意の位置に任意の姿勢に設定可能である。これにより、雌ねじ加工装置10は、例えば、ワーク12におけるドアヒンジ部12aやバンパビーム部12bに対向するように配置され、これらの箇所に雌ねじ14を形成することができる。
【0014】
ワーク12は搬送ライン18上で搬入されてロボット16の近傍において一時停止し、カメラ19によって正確な位置の確認が行われる。ワーク12は雌ねじ加工装置10によって雌ねじ14を形成する加工が行われた後、搬送ラインに沿って次工程のステーションへと搬送され、この後、ロボット16の近傍には未加工の次のワーク12が搬入される。
【0015】
ロボット16及び雌ねじ加工装置10は、コントローラ20によって制御される。コントローラ20は、ロボット16を所定の教示データに基づいて動作させるロボット駆動部22と、雌ねじ加工装置10内の第1モータ38及び第2モータ40(図2参照)を駆動するモータ制御部24と、溶融可能な素材であるフィラー62(図2参照)を送給するためのフィラー送給制御部26と、フィラー62に高電圧を印加する電圧印加制御部28とを有する。また、コントローラ20はカメラ19から得られる画像に基づいてワーク12及び雌ねじ加工位置Pの位置確認を行うことができる。
【0016】
図2に示すように、雌ねじ加工装置10は、ハウジング30をベースとして構成されており、加工ツール32と、該加工ツール32を保持するチャック34と、該チャック34と接続されたボールねじ36と、該ボールねじ36を回転させる第1モータ38と、ボールねじ36を進退駆動させる第2モータ40とを有する。加工ツール32は、例えば、高速工具鋼等の金属で構成される。ロボット16はハウジング30の側面に接続されている。
【0017】
第1モータ38及び第2モータ40は直列状に並んで配置されており、ボールねじ36と並列している。ボールねじ36の上端部には抜け止め用のストッパ41が設けられている。
【0018】
ボールねじ36は、スプラインナット42により進退自在に軸支されており、該スプラインナット42がプーリ44a、44b及びベルト46を介して第1モータ38によって回転駆動される。プーリ44a、44bは第1モータ38の回転速度を減速する作用を奏する。
【0019】
スプラインナット42には軸方向に循環するボール群48が設けられており、該ボール群48の一部がスプラインナット42の内面からやや突出してボールねじ36の複数のスプライン溝36aに係合している。ボール群48は、スプラインナット42内に設けられた内部通路を通り循環駆動される。このボール群48の転がり作用により、ボールねじ36は滑らかに進退可能である。また、ボール群48の一部はスプライン溝36aに係合していることから、スプラインナット42が第1モータ38によって回転駆動されることにより、ボールねじ36はスプラインナット42とともに回転駆動される。スプラインナット42はベアリング50及び所定のブラケットを介してハウジング30に支持されており、滑らかに回転可能である。
【0020】
一方、ボールねじ36は、ボールねじナット52により回転自在に軸支されており、該ボールねじナット52がプーリ54a、54b及びベルト56を介して第2モータ40によって回転駆動される。プーリ54a、54bは第2モータ40の回転速度を減速する作用を奏する。
【0021】
ボールねじナット52はスプラインナット42よりも上側で、所定の隙間を有して直列状に配置されている。ボールねじナット52には螺旋状に循環するボール群58が設けられており、該ボール群58の一部がボールねじナット52の内面からやや突出してボールねじ36の螺旋溝36bに係合している。ボール群58は、ボールねじナット52内に設けられた内部通路を通り循環駆動される。ボール群58の一部が螺旋溝36bに係合していることから、ボールねじナット52が第2モータ40によって回転駆動されることにより、ボールねじ36はボールねじナット52を滑らかに進退駆動する。ボールねじナット52はベアリング60及び所定のブラケットを介してハウジング30に支持されており、滑らかに回転可能である。
【0022】
さらに、雌ねじ加工装置10は、ワーク12の雌ねじ加工位置Pに対してフィラー62を送給するローラ機構64と、該ローラ機構64を構成する複数のローラのうち1つであるローラ66に接続された正電極68と、雌ねじ加工装置10の下端部において雌ねじ加工位置Pを中心に配置された複数の負極板69とを有する。各負極板69は負電極70にそれぞれ接続されるとともに、絶縁材69aによってハウジング30から絶縁されている。
【0023】
ローラ66は金属製であって、フィラー62と正電極68は電気的に導通する。負極板69は、スプリング72の作用下に弾性的にワーク12に接触して電気的に導通する。正電極68及び負電極70は電圧印加制御部28に接続されており、雌ねじ加工位置Pの近傍に配置されるフィラー62の先端部と、ワーク12との間に高電圧を印加することができる。
【0024】
雌ねじ加工装置10の下方には絶縁内筒74が設けられており、加工ツール32はこの絶縁内筒74内を進退駆動される。フィラー62は、雌ねじ加工位置Pの方向に向かって延在する絶縁チューブ76内を通って送給される。
【0025】
図3は、本実施の形態における雌ねじ成形方法を実現するための加工ツール32の一例を示す図である。加工ツール32は、図示しないワーク12に対して孔を成形する先端に設けられた孔成形部100と、孔成形部100の後端に対して連続して設けられたねじ成形部102と、ねじ成形部102の後端に対して連続して設けられた円柱部104と、孔成形部100の後端側に設けられた形状付与部106とを備える。孔成形部100は、下方に向かって縮径する円錐形であり、孔成形部100の上端部における最も大径の部分は、ねじ成形部102と同径である。
【0026】
ねじ成形部102は、円柱状の形状であり、螺旋状の突起部102aが設けられている。ねじ成形部102に設けられた突起部102aにより、孔成形部100が成形した孔に雌ねじ14を成形することができる。この突起部102aは、ピッチtの間隔で螺旋状に設けられている。円柱部104は、円柱状の形状を有しており、円柱部104の下端側に軸方向と直交する方向に放射状に突出したフランジ部108を有する。
【0027】
形状付与部106は、ねじ成形部102によって貫通され、スプリング110を介装して円柱部104のフランジ部108に固定されている。これにより、形状付与部106は、スプリング110によって、孔成形部100方向に付勢された状態となる。形状付与部106の先端には、加工ツール32によって形成された雌ねじ14の入口周辺の盛り上がりを削って、平坦化させる刃部112が設けられている。刃部112の先端は、加工ツール32の進退方向に略垂直な方向と平行しており、刃部112のねじ成形部102側の端は、鋭角に孔成形部100側に突出している。
【0028】
次に、加工ツール32を用いた雌ねじ成形方法を、図4のフローチャートを用いて説明する。ロボット駆動部22の作用下にロボット16を動作させ、雌ねじ加工装置10をワーク12に接近させて、負極板69を接触させる(ステップS1)。このとき、予め設定された雌ねじ加工位置Pが加工ツール32の進退する軸上に配置されるようにする。
【0029】
次いで、図2に示すように、フィラー送給制御部26の作用下にフィラー62を送給し、該フィラー62の先端部を絶縁チューブ76から突出させた後、電圧印加制御部28の作用下に正電極68に高電圧を印加してアークAを発生させて、雌ねじ加工位置Pを加熱させ、フィラー62を溶融させて肉盛り処理を行う(ステップS2)。所定時間が経過した後、高電圧の印加を停止してアークAを消滅させる。図5は、ステップS2によりワーク12の雌ねじ加工位置Pに肉盛り処理が行われたときの状態を示す。
【0030】
次いで、ボールねじ36及び加工ツール32を第1モータ38の作用下に高速で回転させるとともに、第2モータ40の作用下に下方へ向けて駆動する(ステップS3)。このとき、第2モータ40は、第1モータ38の回転速度に応じて、加工ツール32が適当な速度で進行するように速度制御される。
【0031】
次いで、加工ツール32の先端である孔成形部100が加工位置Pに当接した後、図6に示すように、加工ツール32の回転及び下方移動を維持すると、雌ねじ加工位置Pに孔成形部100により孔114が成形される(ステップS4)。当初、孔114は、孔成形部100の先端部によって成形された後、孔成形部100の錐面によって拡径され、最終的に孔114は、ねじ成形部102の径と同じ大きさになる。
【0032】
次いで、加工ツール32の回転及び下方移動を維持すると、図7に示すように、ねじ成形部102により、成形された孔114に雌ねじ14が形成される(ステップS5)。なお、加工ツール32が1回転する間に、該加工ツール32がねじ成形部102の突起部102aのピッチt(図3参照)だけ進行するように第1モータ38及び第2モータ40がモータ制御部24により駆動制御される。これにより、図7に示すように、突起部102aが孔114に螺合するようにタップ加工され、雌ねじ14が形成される。
【0033】
ステップS4及びステップS5により、ステップS2で処理された肉盛りの中心に雌ねじ14が成形される。これにより、成形された雌ねじ14の入口周辺には、肉盛りが残っている状態となる。さらに、ステップS4による孔114の成形処理及びステップS5による雌ねじ14の成形処理により雌ねじ14の入口周辺にはバリが発生する。本実施の形態では、ステップS2の肉盛り処理と、ステップS4の孔114の成形処理と、ステップS5の雌ねじ14の成形処理とによって発生した雌ねじ14の入口周辺の盛り上がりを盛り上がり部116と呼ぶ。
【0034】
次いで、加工ツール32の回転及び下方移動を維持すると、図8に示すように、形状付与部106は、雌ねじ14の入口周辺の盛り上がり部116を平坦化させる(ステップS6)。詳しくは、盛り上がり部116の上部に平坦な面を成形(付与)する。加工ツール32の回転により形状付与部106も回転し、スプリング110によって形状付与部106は、雌ねじ14の入口周辺の盛り上がり部116を押圧した状態となる。これにより、形状付与部106の先端にある刃部112によって、盛り上がり部116の上部が削られ、平坦な面が成形される。
【0035】
なお、ステップS4の後、加工ツール32は孔114に挿入されたまま次のステップS5及び6へ移ることから、これらのステップS4〜ステップS6は実質的に1つの連続した作業とみなすことができ、ステップS4〜ステップS6の処理は並行して行われる。
【0036】
次いで、加工ツールの回転及び下方移動を維持し、図9に示すように、雌ねじ14の成形が完了し、盛り上がり部116の上部に平坦面を成形すると、図9に示すように、第1モータ38及び第2モータ40を逆回転させ、加工ツール32を雌ねじ14から抜き取る(ステップS7)。つまり、加工ツール32を退避させる。このとき、形状付与部106は、スプリング110によってワーク12に押圧されるので、加工ツール32を雌ねじ14から抜き取る間も形状付与部106は、盛り上がり部116を平坦化させる。加工ツール32の抜き取り動作によっても、雌ねじ14の入口周辺にバリが発生して、盛り上がり部116が成長する可能性もあるが、加工ツール32を抜き取る際も、形状付与部106が盛り上がり部116の上部を削るので、盛り上がり部116の上部を平坦な面にすることができる。
【0037】
このように、盛り上がり部116を平坦化させるので、雌ねじ14に螺合する図示しない雄ねじの頭部にかかる面圧が一様になり、雄ねじの軸力が向上する。
【0038】
なお、加工ツール32を退避させる際は、加工ツール32が1回転する間に該加工ツール32がピッチtだけ後退するように第1モータ38と第2モータ40がモータ制御部24により駆動制御される。ねじ成形部102が雌ねじ14から抜き取られた後には加工ツール32を高速で後退させてもよい。
【0039】
図10は、雌ねじ14から加工ツール32を抜き取ったときの雌ねじ14の状態を示す図である。雌ねじ14の入口周辺の盛り上がり部116の上部は、平坦な面となっていることが諒解されよう。図10に示すように、雌ねじ加工位置Pは、前記ステップS2の処理によって肉盛りされていることから、雌ねじ14の深さAは充分に深く、孔114の周囲の厚みBは充分に厚い。
【0040】
この後、ロボット16を動作させることにより雌ねじ加工装置10をワーク12から離間させる。複数の雌ねじ14を形成する場合には、次の雌ねじ加工位置Pへ雌ねじ加工装置10を移動させて、同様の手順により加工を続行すればよい。
【0041】
このように、孔成形部100と、孔成形部100に対して連続して設けられたねじ成形部102と、孔成形部100の後端側に設けられた形状付与部106とを有する加工ツール32を回転させながらワーク12に押圧することで、まず、孔成形部100により孔114が成形され、その後、ねじ成形部102により孔114に雌ねじ14が成形されるとともに、形状付与部106により盛り上がり部116が平坦化されるので、1回の動作で、雌ねじ14に螺合する雄ねじの軸力を向上させることができる雌ねじ14を成形することができる。
【0042】
[変形例]上記実施の形態は、以下のように変形してもよい。
【0043】
(変形例1)上記実施の形態では、形状付与部106により、雌ねじ14の入口周辺の盛り上がり部116の上部を平坦な面形状にしたが、変形例1では、加工ツール32の形状付与部106によって、盛り上がり部116を平坦化させていくことで、盛り上がり部116全体を削って、盛り上がり部116を除去してもよい。この場合は、図11に示すように、形状付与部106が盛り上がり部116全体を削るまで、加工ツール32を抜き取ることなく、加工ツール32の回転を維持させればよい。これによっても、雌ねじ14の入口周辺は平坦な面形状となり、雄ねじの軸力を向上することができる雌ねじ14を成形することができる。
【0044】
(変形例2)上記実施の形態は、図3に示すように、刃部112の先端が、加工ツール32の進退方向に対して略垂直な方向に平行している(ワーク12に対して平行している)加工ツール32を用いたが、変形例2では、図12に示すような加工ツール32を用いてもよい。図12は、変形例2の加工ツール32を示す図であり、図3と同一のものについては同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
変形例2の形状付与部106の刃部120の先端は、ねじ成形部102に近いほど、下方側に突出した形状を有する。この場合は、刃部120によって盛り上がり部116の上部を削っても、盛り上がり部116の上部は平坦な面とならないので、本変形例2においては、図12に示すように、刃部112により盛り上がり部116全体を削ることで、盛り上がり部116を除去する。ワーク12に成形された雌ねじ14と、図示しない雄ねじとを螺合させて、図示しない他のワークを固定する場合であっても、ワーク12と前記他のワークとは平行配置されるので、前記雄ねじの頭部にかかる面圧は一様になり、前記雄ねじの軸力を向上させることができる。
【0046】
(変形例3)上記実施の形態では、図3に示すように、形状付与部106が孔成形部100の後端側であり、ねじ成形部102に貫通され、スプリング110を介装して円柱部104のフランジ部108に設けられた加工ツール32を用いたが、変形例3では、図13に示すような加工ツール32を用いてもよい。図13は、変形例3の加工ツール32を示す図、図14は、図13のXIV−XIV線断面図である。なお、図3と同一のものについては同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
変形例3の形状付与部130は、ねじ成形部102の後端に連続して設けられている。形状付与部130の先端側(ねじ成形部102の後端側)には、形状付与部106の軸方向(加工ツール32の進退方向)に垂直な方向に突出する2つの突出部132、132が設けられ、該突出部132、132に刃部134、134が設けられている。刃部134は、加工ツール32が回転する際に、突出部132とワーク12とが接触する箇所に設けられている。例えば、雌ねじ14を成形する場合は、加工ツール32は右方向に回転するので、突出部132の右回転方向側の面に刃部134が設けられている。
【0048】
この場合は、ねじ成形部102によって孔114に対して雌ねじ14が成形された後に、図13に示すように、形状付与部106によって盛り上がり部116の上部に平坦な面形状が付与される。なお、形状付与部106は、盛り上がり部116を平坦化させていくことで、盛り上がり部116を除去して雌ねじ14の入口周辺を平坦にさせてもよい。これによっても、雌ねじ14に螺合する雄ねじの軸力を向上させることができる。
【0049】
以上、本発明について好適な実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0050】
10…雌ねじ加工装置 12…ワーク
24…モータ制御部 32…加工ツール
38…第1モータ 40…第2モータ
100…孔成形部 102…ねじ成形部
104…円柱部 106、130…形状付与部
108…フランジ部 110…スプリング
112、120、134…刃部 114…孔
116…盛り上がり部 132…突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して孔を成形する先端に設けられた孔成形部と、
前記孔成形部に対して連続して設けられたねじ成形部と、
前記孔成形部の後端側に設けられた所定の形状を付与する形状付与部と、
を有する加工ツールを回転させながら前記ワークに押圧することで雌ねじを成形する雌ねじ成形方法であって、
前記加工ツールの前記孔成形部によって、肉盛り処理が行われた雌ねじを成形する位置に孔を成形する孔成形工程と、
前記ねじ成形部によって前記孔に雌ねじを成形する雌ねじ成形工程と、
前記雌ねじの入口周辺の盛り上がり部を前記形状付与部によって平坦化させる平坦面成形工程と、
を備えることを特徴とする雌ねじ成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の雌ねじ成形方法であって、
前記雌ねじの入口周辺の前記盛り上がり部は、前記肉盛り処理及び前記孔成形工程及び前記雌ねじ成形工程によって成形されるものである
ことを特徴とする雌ねじ成形方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の雌ねじ成形方法であって、
前記形状付与部は、前記ねじ成形部によって貫通され、前記孔成形部方向に付勢されており、
前記平坦面成形工程は、前記雌ねじ成形工程と並行して行われる
ことを特徴とする雌ねじ成形方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の雌ねじ成形方法であって、
前記形状付与部は、前記ねじ成形部の後端側に設けられた
ことを特徴とする雌ねじ成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−143841(P2012−143841A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4464(P2011−4464)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)