説明

雛鶏用サルモネラ感染抑制剤及びそれを用いる雛鶏のサルモネラ感染抑制方法

【課題】雛鶏の孵化後できるだけ早期に投与して優れた効果を発揮可能な雛鶏用サルモネラ感染抑制剤及びそれを用いる雛鶏のサルモネラ感染抑制方法を提供すること。
【解決手段】有効成分としてグルコン酸類を含有する雛鶏用サルモネラ感染抑制剤、該雛鶏用サルモネラ抑制剤が添加されてなる雛鶏用サルモネラ感染抑制強化飼料組成物、該雛鶏用サルモネラ感染抑制剤又は該雛鶏用サルモネラ感染抑制強化飼料組成物の有効量を雛鶏に投与する工程を有する雛鶏のサルモネラ感染抑制方法、及び、雛鶏のサルモネラ感染を抑制するための組成物の製造のためのグルコン酸類の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雛鶏用サルモネラ感染抑制剤及びそれを用いる雛鶏のサルモネラ感染抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集団食中毒の発生がしばしば社会問題となるが、その病因物質別の食中毒統計でサルモネラ食中毒の発生件数、患者数は依然と高い順位を占めている。その主要原因のひとつに鶏卵のサルモネラ エンテリティディス(Salmonella Enteritidis)(以下、サルモネラと記すこともある。)による食中毒多発が挙げられる。
採卵鶏がサルモネラに感染すると鶏体内で卵巣や卵管に分布し、鶏卵に入り込む。従って鶏が卵を産んだ段階ですでに卵内部はサルモネラに汚染されている(In-Eggの汚染)。In-Eggの汚染を受けた卵は外観では汚染の有無は鑑別できず、GPセンター(Grading and Packaging Center、鶏卵を洗浄し大きさ別に選別しパックする工場)での洗浄工程でも鶏卵内部の汚染は除去できない。
たとえ鶏群がサルモネラに汚染されていても、サルモネラ汚染卵が産出される率は0.01〜1%程度と低いが、しかしながら、調理の際にたまたまサルモネラ汚染卵が使用され、加熱不十分によりサルモネラが生残し調理品の保存温度が不適切であった場合にはサルモネラは再び活発に増殖し食中毒を起こすほどの菌数まで増加し食中毒を起こすことがある。特に抵抗性の低い幼児、老人又は病人では健康成人に比して少ない菌数でも食中毒が起こる。よって、サルモネラによる食中毒は家庭でも発生することもあるが、外食産業施設、学校、病院、軍隊等の給食施設で発生する集団食中毒は極めて深刻な社会問題を引き起こす。
鶏卵の衛生的品質を確保し、サルモネラ食中毒を減少させるためには農場から食卓までの生産流通の全ての段階での対策が必要である。しかしサルモネラを考えた場合、農場で鶏群をサルモネラ不在の状況に維持すること、または汚染率を減少させることが最大のポイントである。
鶏は特に若齢期にはサルモネラに対する感受性が極めて高く、事実雛鶏に少数のサルモネラを感染させると大量に排菌することが知られている。現代養鶏では雛鶏の生産は孵化場で行われていて、雛鶏は親鶏と接触する機会を持っておらず、且つ種鶏からの病気の伝播を防ぐために各段階で徹底的消毒が行われていて、雛鶏は腸管系病原菌の感染防御に必要な有用腸内菌叢を親鶏から受け継ぐことができないのが上記の現象の最大の理由である。従って野外で普通に飼育されているサルモネラの感染防御に必要な腸内菌叢が成立するには6週間以上の長い時間が必要であると言われている。
このように、親と接触なしに生産飼育されているのは家畜のなかでは鶏を含めた家禽類だけであり、腸内菌叢が未熟な若齢期にはサルモネラに感染すると鶏群内の高度の汚染が生起し、これがのちの鶏群のサルモネラ汚染率に影響すると考えられている。
このため、成鶏の腸内菌叢を雛鶏に強制的に定着させ、その後にサルモネラが経口的に感染しても雛鶏の体内でのサルモネラ増殖が抑制され、野外で通常見られるような高度な排菌を起させないようなサルモネラ感染抑制方法も見出されている(例えば、特開平11-302185参照)。
【0003】
【非特許文献1】特開平11-302185
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、性成熟に達し成鶏となる以前の雛鶏に(特に雛鶏の孵化後できるだけ早期に)投与して優れた効果を発揮可能な雛鶏用サルモネラ感染抑制剤及びそれを用いる雛鶏のサルモネラ感染抑制方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、かかる状況下において鋭意検討した結果、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.有効成分としてグルコン酸類を含有することを特徴とする雛鶏用サルモネラ感染抑制剤(以下、本発明感染抑制剤と記すこともある。):
2.前項1記載の雛鶏用サルモネラ抑制剤が添加されてなることを特徴とする雛鶏用サルモネラ感染抑制強化飼料組成物(以下、本発明飼料組成物と記すこともある。);
3.前項1記載の雛鶏用サルモネラ感染抑制剤又は請求項2記載の雛鶏用サルモネラ感染抑制強化飼料組成物の有効量を雛鶏に投与する工程を有することを特徴とする雛鶏のサルモネラ感染抑制方法(以下、本発明感染抑制方法と記すこともある。);
4.雛鶏が孵化後0〜5週令の雛鶏であることを特徴とする前項3記載の雛鶏のサルモネラ感染抑制方法;
5.雛鶏のサルモネラ感染を抑制するための組成物の製造のための、グルコン酸類の使用(以下、本発明使用と記すこともある。);
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、雛鶏の孵化後できるだけ早期に投与して優れた効果を発揮可能な雛鶏用サルモネラ感染抑制剤及びそれを用いる雛鶏のサルモネラ感染抑制方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、詳細に本発明を説明する。
【0008】
鶏の育成では、通常、卵から孵化した雛(通常、「初生雛」と呼ばれる。)を成鶏まで育てられる。鶏の場合には、特に採卵鶏では孵化後の餌付けから5週令までを「幼雛」と呼び、自らは体温調節ができないので、温度管理された育雛器で飼育される。その後、「中雛期」(6〜10週令)、「大雛期」(11〜17周令)を経て性成熟に達し「成鶏」となる。中雛期〜大雛期は、通常、育雛農場において群飼ケージかコンクリート床に敷料を敷いて平面飼育される。その後、性成熟に達し成鶏は、育雛農場から成雛農場へ移される。
本発明では、性成熟に達し成鶏となる以前の雛鶏(即ち、初生雛〜幼雛〜中雛期雛〜大雛期雛)を対象とするものである。このような雛鶏のからでも幼雛を好ましい対象として挙げることができる。さらに好ましい対象としては、孵化後0〜7日令の雛鶏が挙げられる。
【0009】
本発明感染抑制剤は、有効成分としてグルコン酸類を含有する。
本発明感染抑制剤において一つの有効成分として用いられる「グルコン酸類」とは、グルコン酸若しくはその薬学的に等価な効果を有するグルコン酸の塩若しくは誘導体を意味する。当該グルコン酸の塩若しくは誘導体としては、具体的には例えば、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸の分子内エステル(即ち、ラクトン化合物)等を挙げることができる。好ましくは、グルコン酸ナトリウムが挙げられる。ここで「薬学的に等価な効果」とは、雛鶏用サルモネラ感染抑制強化飼料組成物に対する雛鶏用サルモネラ感染抑制剤としての使用におけるグルコン酸ナトリウムと同等なサルモネラ感染抑制効果を意味する。
好適な分子内エステルとしては、例えば、グルコノデルタラクトン、グルコノガンマラクトンが挙げられる。
【0010】
本発明感染抑制剤を用いる場合には、他の何らの成分も加えず、そのままグルコン酸類を用いてよいが、通常はグルコン酸類にさらに固体坦体、液体坦体等の賦形剤とともに、錠剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤、水溶剤、液剤、水和剤及び懸濁剤等に通常の方法(例えば、製剤学、大塚昭信ら編、1995年、南江堂刊に記載される方法等)に準じて製剤化してから用いてもよい。
固体坦体である賦形剤としては、例えば、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ゼラチン、カゼイン、澱粉、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等が挙げられる。また液体担体である賦形剤としては、例えば、水、グリセリン、植物油、脂肪酸、脂肪酸エステル、ソルビトール等が挙げられる。
尚、本発明感染抑制剤には、例えば、ペプチド亜鉛、ペプチド鉄等の有機ミネラル、炭酸亜鉛、炭酸マンガン、硫酸鉄、炭酸マグネシウム等の無機ミネラル、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸、パントテン酸、ニコチン酸等のビタミン類、アルファルファミール、圧ペントウモロコシ等が含有されていてもよい。また、嗜好性を高める為、同時にフレーバー等を給与してもよい。
さらに必要により、抗菌剤、防カビ剤、駆虫剤、抗酸化剤、色素、着香料、呈味料、酵素のような通常の添加物と混合してもよく、通常の方法により、散剤、顆粒剤、液剤、錠剤等の形態に製剤化して用いることが好ましい。これらの製剤には、有効成分としてグルコン酸類を、通常、重量比で約0.01〜95重量%含有させることがよい。
【0011】
このようにして製剤化された本発明感染抑制剤は、そのままで、あるいは水等に希釈して用いる。また、さらに他の抗菌剤、防カビ剤、駆虫剤、抗酸化剤、色素、着香料、呈味料、酵素のような通常の添加物等を混用又は同時若しくは非同時に併用することもできる。
【0012】
本発明感染抑制剤の雛鶏への投与は特別の制限はなく、後述のような飼料へ撒布、混合等適宜の方法によることができる。投与量は、要するに雛鶏のサルモネラ感染抑制効果に有効な量、即ち、他の条件を等しくした場合において、本発明感染抑制剤を投与したときの方が投与しないときに較べて雛鶏のサルモネラ感染抑制効果が増進される量である。
【0013】
雛鶏に投与しようとする本発明感染抑制剤の有効成分を混合、ゲル化し自由摂取させる方法は、孵化場及び育雛農場のいずれでも実施することができる他、孵化場から育雛農場への雛鶏の輸送中にも実施することができる。
【0014】
また、本発明感染抑制剤の有効成分に所定量の水溶性多糖類の粉末を配合したゲル化用調製物を用意しておき、孵化場及び農場で使用する際に水で希釈しゲル状固形物とし、対象とする雛鶏に投与する方法(即ち、自由摂取、そ嚢内直接投与)を実施することができる。
【0015】
本発明感染抑制剤は、通常、単独で用いるほか、水に希釈してから製剤希釈液として使用してもよい(即ち、飲水希釈投与)。当該製剤希釈液中の有効成分濃度としては、通常、約10〜500000ppm程度を挙げることができる。好ましくは約35〜3500ppm程度が挙げられる。当該製剤希釈液の投与方法としては、通常、水1リッターに対して本発明感染抑制剤を約0.01〜500g溶解し、投与液量に処理する方法等を挙げることができる。好ましくは、水1リッターに対して約0.035〜35gを溶解し投与する方法等を挙げることができる。
【0016】
前記の製剤希釈液を雛鶏に投与する場合には、飲水添加装置等を用いて、当該製剤希釈液を投与すればよい。当該製剤希釈液の投与液量は、対象となる雛鶏の大きさ、生育状況、飼育密度又は投与方法等に応じて適宜調節すればよいが、通常10000羽当たり約300〜2000リットル程度を挙げることができる。
【0017】
本発明感染抑制剤の投与の時期及び実施期間は、採卵用種及び肉用種において、育雛の全期間継続して、好ましくは幼雛期(孵化後0〜5週令の雛鶏)に投与する。より好ましくは孵化後0〜7日に投与する。
【0018】
本発明飼料組成物は、本発明感染抑制剤が添加されてなる。通常、本発明感染抑制剤が動物用飼料又は飲料水若しくは生理電解質溶液等に添加されてなる。
本発明飼料組成物に関しては、例えば、本発明感染抑制剤が飼料全量の約0.25〜5重量%の割合で添加されてなることがよい。
本発明飼料組成物で用いられる動物用飼料又は飲料水若しくは生理電解質溶液は、一般に使用されているものであればよく、特に限定されない。これらの一例としては、とうもろこし、米、麦、マイロ、大豆粕、ふすま、脱脂米ぬか、魚粉、脱脂粉乳、乾燥ホエー、油脂、アルファルファミール、北洋ミール、大豆油脂、粉末精製牛脂、小麦粉、なたね油脂、肉骨粉(フェザーミール)、動物性油脂、リン酸カルシウム、コーングルテンミール、糖蜜、コーンジャームミール、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、塩化ナトリウム、塩化コリン、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンE、パントテン酸カルシウム、ニコチン酸アミド、葉酸等)、アミノ酸類(リジン、メチオニン等)、微量無機塩類(硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、ヨウ化カリウム、硫酸コバルト等)、生菌剤等を適宜混合して調製した飼料等が挙げられる。
【0019】
尚、本発明飼料組成物には、例えば、ペプチド亜鉛、ペプチド鉄等の有機ミネラル、炭酸亜鉛、炭酸マンガン、硫酸鉄、炭酸マグネシウム等の無機ミネラル、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸、パントテン酸、ニコチン酸等のビタミン類、アルファルファミール、圧ペントウモロコシ等が含有されていてもよい。また、嗜好性を高める為、同時にフレーバー等を給与してもよい。
【0020】
本発明飼料組成物の雛鶏への投与は特別の制限はなく、後述のような飼料へ撒布、混合等適宜の方法を利用した給与法によることができる。投与量は、要するに雛鶏のサルモネラ感染抑制効果に有効な量、即ち、他の条件を等しくした場合において、本発明飼料組成物を投与したときの方が投与しないときに較べて雛鶏のサルモネラ感染抑制効果が増進される量である。
【0021】
本発明飼料組成物の投与の時期及び実施期間は、採卵用種及び肉用種において、育雛の全期間継続して、好ましくは幼雛期(孵化後0〜5週令の雛鶏)に投与する。より好ましくは孵化後0〜7日に給与する。
【0022】
本発明飼料組成物は、動物用飼料に配合して用いる場合には、グルコン酸ナトリウムを約0.0005〜5重量%、好ましくは約0.05〜2重量%、より好ましくは約0.1〜1重量%の割合で用いることができる。また、飲料水若しくは生理電解質溶液に添加して用いる場合には、グルコン酸ナトリウムを約0.035〜3.5重量%、好ましくは約0.035〜1.4重量%、より好ましくは約0.07〜0.7重量%の割合で用いることができる。
【0023】
本発明感染抑制方法は、本発明感染抑制剤又は本発明飼料組成物の有効量を雛鶏に投与する工程を有する。当該方法において、本発明飼料組成物は、前記動物に通常の方法で与えることができる。上記の有効量は、いずれも製剤の種類、対象動物、摂取させる期間等の状況によって異なり、上記の範囲に関わることなく増減して適宜選択することができる。
具体的には例えば、本発明感染抑制剤は雛鶏に投与するのに適した濃度になるように水で希釈される。このようにして得られた希釈液を使用してもよい。尚、希釈倍率は従来の飲水希釈投与法に準じて適用すればよく、例えば、5〜10倍程度の希釈液が好ましく使用される。
また、具体的には例えば、本発明感染抑制剤を所定濃度になるように水で希釈し、これに攪拌下水溶性多糖類を添加混合し、均一な溶液とし、常温で放置するか、若しくは冷所(例えば、冷蔵庫等)に保管することによりゲル状固形物が得られる。または高温で溶解し低温で凝固するゲル化剤(例えば、寒天、ゼラチン等)を用いる場合には、本発明感染抑制剤を作成するための培地にあらかじめゲル化剤を加えておき、培地を高圧蒸気殺菌後冷却してゲル化直前に種菌を接種し37℃で培養した後、これを常温で放置するか、若しくは冷所(例えば、冷蔵庫等)に保管することによってもゲル状固形物が得られる。このようにして得られたゲル状固形物を使用してもよい。尚、ゲル化した場合のゲル強度は、概ね200〜2000g/cm2が適当であり、寒天を用いた場合には寒天の種類により異なるが、概ね0.5〜3.0%の濃度に相当する。
本発明感染抑制剤を水媒体中でゲル化させるのに使用される多糖類しては、例えば、寒天、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、澱粉、マンナン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、アラビヤガム、ロウストビーンガム、キサンタンガム、キトサン、グアーガム、ペクチン、アルギン酸プロピルグリコールエステル、アラビノガラクタン、ガティガム、タマリンドシードガム、プルラン、モルホリン脂肪酸塩、カードラン、トラガントガム等が挙げられる。これらの多糖類の中、安価且つ容易に入手し得る点から、特に寒天、澱粉、マンナン、ゼラチンを用いることが好ましい。
例えば、前記のゲル状固形物を、飲水量及び飼料摂取量の少ない概ね0〜7日令の雛鶏に投与すると、床面の固形物を嘴で突っついて摂取しようとする雛鶏の遺伝的プログラム(習性)によって短時間に本発明感染抑制剤の必要量を省力的に摂取させることができる。この際、前記のような若令期の雛鶏に投与することが困難であった生菌剤、ワクチン、薬剤、栄養等も必要に応じて本発明感染抑制剤と共に混合して水溶性多糖類でゲル化し自然摂取させることにより、これらを本発明感染抑制剤と同時に効率よく雛鶏に投与することもできる。また、雛鶏の時期における水分及び栄養の補給はその後の生産性にとって極めて重要であり、栄養を投与する場合には、グルコース、マンノース、フラクトース等の単糖類及びこれらのオリゴ体、シュークロース等の二糖類の糖類等の炭水化物、スキムミルク等の蛋白質、脂質に加えてビタミン、ミネラル等が挙げられる。
【0024】
本発明は、勿論、雛鶏のサルモネラ感染を抑制するための組成物の製造のための、グルコン酸類の使用(即ち、本発明使用)を含む。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を製剤例及び試験例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0026】
製剤例1 散剤
グルコン酸ナトリウム25部と、乳糖25部とを乳鉢でよく混合した後、当該混合物を充分攪拌混合することにより、散剤を得る。
【0027】
製剤例2 顆粒剤
グルコン酸ナトリウム25部と乳糖25部とを加え、よく攪拌混合する。次いで、これらの混合物に適当量の水を加え、さらに攪拌した後、これを増粒機で製粒し、通風乾燥することにより、顆粒剤を得る。
【0028】
製剤例3 液剤
グルコン酸ナトリウム25部を水50部に溶解した後、当該混合物をよく攪拌混合することにより、液剤を得る。
【0029】
次に本発明飼料添加物が優れた動物肥育促進効果を示すことを試験例により示す。
【0030】
試験例1 (バリアーされた実験室にてSalmonella Typhimurium感染を行う1回目感染試験)
市販の雛鶏(ブロイラー種)60羽を購入し、購入された雛鶏(1日齢)に、表2に記載される試験区分、供試羽数及び飼料中へのグルコン酸ナトリウムの添加量で試験飼料(表1参照)を摂取させること(表2参照)により、グルコン酸ナトリウムを投与した。
上記の雛鶏が3日齢に達した後、当該雛鶏に対して一羽あたり1×10のSalmonella Typhimuriumを経口接種した。
その後、上記の雛鶏が8日齢に達した後、当該雛鶏を屠殺した。死亡した雛鶏から盲腸切片を摘出し、摘出された盲腸切片から盲腸便を採取した。次いで採取された盲腸便の中で生存するサルモネラ菌の菌数を測定した。その結果を表3に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
採取された盲腸便の中で生存するサルモネラ菌の菌数は、対照群での菌数と比較して、各グルコン酸ナトリウム添加群では低値であった。特にグルコン酸ナトリウム低添加群では、統計学上(Student’s t test)での明らかな有意差(P<0.01)も確認された。
【0035】
試験例2 (バリアーされた実験室にてSalmonella Typhimurium感染を行う2回目感染試験)
市販の雛鶏(ブロイラー種)60羽を購入し、購入された雛鶏(1日齢)に、表4に記載される試験区分、供試羽数及び飼料中へのグルコン酸ナトリウムの添加量で試験飼料(表1参照)を摂取させること(表4参照)により、グルコン酸ナトリウムを投与した。
上記の雛鶏が14日齢に達した後、当該雛鶏に対して一羽あたり1×10のSalmonella Typhimuriumを経口接種した。
その後、上記の雛鶏が19日齢に達した後、当該雛鶏を屠殺した。死亡した雛鶏から盲腸切片を摘出し、摘出された盲腸切片から盲腸便を採取した。次いで採取された盲腸便の中で生存するサルモネラ菌の菌数を測定した。その結果を表5に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
【表5】

【0038】
採取された盲腸便の中に存在するサルモネラ菌陽性率は、対照群での陽性率が15例中4例であったのに対して、グルコン酸ナトリウム低添加群では1例のみが陽性であり、他のグルコン酸ナトリウム高添加群及び中添加群では全て陰性であった。特にグルコン酸ナトリウム高添加群及び中添加群では、統計学上(χ2 test)での明らかな有意差(P<0.05)も確認された。
グルコン酸ナトリウムが雛鶏用サルモネラ感染抑制剤として有用であることが初めて確認された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明により、雛鶏の孵化後できるだけ早期に投与して優れた効果を発揮可能な雛鶏用サルモネラ感染抑制剤及びそれを用いる雛鶏のサルモネラ感染抑制方法を提供することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてグルコン酸類を含有することを特徴とする雛鶏用サルモネラ感染抑制剤。
【請求項2】
請求項1記載の雛鶏用サルモネラ抑制剤が添加されてなることを特徴とする雛鶏用サルモネラ感染抑制強化飼料組成物。
【請求項3】
請求項1記載の雛鶏用サルモネラ感染抑制剤又は請求項2記載の雛鶏用サルモネラ感染抑制強化飼料組成物の有効量を雛鶏に投与する工程を有することを特徴とする雛鶏のサルモネラ感染抑制方法。
【請求項4】
雛鶏が孵化後0〜5週令の雛鶏であることを特徴とする請求項3記載の雛鶏のサルモネラ感染抑制方法;
【請求項5】
雛鶏のサルモネラ感染を抑制するための組成物の製造のための、グルコン酸類の使用。

【公開番号】特開2008−179590(P2008−179590A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16253(P2007−16253)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】