説明

離型フィルム

【課題】 フッ素系の有機溶剤を一切用いる必要がなく、フッ素系の有機溶剤を使用しなくても、離型剤成分が移行することを防止することができ、離型層面を軽剥離にすることが可能なフッ素系の剥離層を有する離型フィルムを提供する。
【解決手段】 トリフルオロプロピル基ユニットを有するシリコーン樹脂を含有する離型層を有する離型フィルムであり、当該離型層中のフッ素含有量が30重量%以下であることを特徴とする離型フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン粘着剤を離型する成分として、フロロアルキル基をもったシロキサン単位を含有するベースポリマーを配合した離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコーン粘着剤を使用した粘着テープや粘着ラベルは、シリコーン粘着剤層が耐熱性、耐寒性、耐候性、電気絶縁性、耐薬品性に優れることから、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤などでは変質・劣化してしまうような厳しい環境下での使用が可能である。また、シリコーン系材料の表面に対して粘着することから、撥水、離型などの目的でシリコーン処理された物品やシリコーン系剥離紙、シリコーンゴムへの粘着も可能であるという特徴を持っている。
【0003】
シリコーン粘着剤を用いた粘着テープなどを製造するには、シリコーン粘着剤をプラスチックフィルムなどの基材に塗工し、粘着特性を向上させるため架橋反応を行い硬化させる。このような粘着テープの用途には、耐熱性のある基材にシリコーン粘着剤を塗工して製造した、耐熱粘着テープ、耐熱マスキングテープ、耐薬品マスキングテープ、電気絶縁テープ、シリコーン剥離紙どうしを連結するためのスプライシングテープなどがある。
【0004】
ところが、シリコーン粘着剤を塗工した粘着テープの粘着面を保護するには、一般的に粘着加工品の保護に多用されるシリコーン系剥離剤を塗工した剥離フィルムや剥離紙に対しては強く粘着してしまうので、フッ素系剥離剤を塗工した剥離フィルムや剥離紙およびフッ素樹脂シート等を貼り合わせていた(特許文献3参照)。
【0005】
従来、シリコーン粘着剤に用いられる代表的剥離剤としてフッ素系ポリマーをベースにしたものがある。これは特性的に優れているがキュアー性、および使用する溶剤がフッ素系有機溶剤を使用せねばならない点でコスト的、環境的に問題がある。シリコーン粘着剤が工業材料として汎用化するために大きな障害となっている。また、その他非シリコーン系の剥離剤としてワックス、ポリビニルカーバイド等が知られているが、コスト的にも特性的にも不満足なものであった。
【0006】
前述したが、フッ素系ポリマーベースの剥離剤を基材に塗工するには、通常、フッ素系有機溶剤が使用される。これは、非フッ素系有機溶剤ではフッ素系ポリマーを溶解することができないためである。フッ素系有機溶剤は大気中など環境中に漏洩した場合、オゾン層破壊などへの影響がある。また、揮発性が高いため、塗工装置からの溶剤回収が困難であり、扱いづらい。新しい保護フィルムとしての採用させるために、様々な策を講じる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭49‐26798号公報
【特許文献2】特開昭62‐86061号公報
【特許文献3】特開昭64‐74268号公報
【特許文献4】特開平10−147758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、フッ素系の有機溶剤を一切用いる必要がなく、フッ素系の有機溶剤を使用しなくても、離型剤成分が移行することを防止することができ、離型層面を軽剥離にすることが可能なフッ素系の剥離層を有する離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、除棄課題に鑑み鋭意検討を行った結果、特定の構成からなる離型フィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、トリフルオロプロピル基ユニットを有するシリコーン樹脂を含有する離型層を有する離型フィルムであり、当該離型層中のフッ素含有量が30重量%以下であることを特徴とする離型フィルムに存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フッ素系の有機溶剤を一切用いる必要がなく、フッ素系の有機溶剤を使用しなくても、離型剤成分が移行することを防止することができ、離型層面を軽剥離にすることが可能なフッ素系の剥離層を有する離型フィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明でいうポリエステルフィルムとは、いわゆる押出法に従い押出口金から溶融押出されたシートを延伸したフィルムである。
【0013】
上記のフィルムを構成するポリエステルとは、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボン酸から重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2、6−ナフタレート等が例示される。
【0014】
本発明のフィルム中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されているような耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0015】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0016】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.1〜2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できない場合がある。一方、3μmを超える場合には、フィルムの製膜時に、その粒子の凝集物のために透明性が低下することがある他に、破断などを起こし易くなり、生産性の面で問題になることがある。
【0017】
さらにポリエステル中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0018】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0019】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0020】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0021】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜350μm、好ましくは15〜100μmの範囲である。
【0022】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常90〜140℃、好ましくは95〜120℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常90〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0023】
また、本発明のポリエステルフィルム製造に関しては、同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常90〜140℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0024】
本発明で使用する離型剤の組成としては、例えば、下記のものが挙げられる。
(A)1分子中に、ケイ素原子に結合した下記(1)ビニルーメチルシロキサンユニット(VM)に表されるアルケニル基を少なくとも1個、およびケイ素原子に結合した、(2)パーフルオロヘキシルーメチルシロキサンユニット(FH)、(3)トリフルオロプロピルーメチルシロキサンユニット(FP)の含フッ素置換基を有し、トリフルオロプロピル基ユニットのモル数が、パーフルオロヘキシル基ユニットのモル数よりも多く、フッ素含有量が30%以下であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン
【0025】
【化1】

【0026】
【化2】

【0027】
【化3】

【0028】
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(以後SiHで示す)を1個有するポリオルガノハイドロジエンシロキサン(4)(HM)
【0029】
【化4】

【0030】
(C)触媒量の白金族系化合物
(D)反応抑制剤
(E)任意量の有機溶剤
本発明で用いる(A)成分のフロロアルキル変性ポリジメチルシロキサンは、1分子中に少なくとも1個のビニル基を有し、かつ1分子中に少なくとも1個のフロロアルキル基を有し、トリフルオロプロピル基ユニットのモル数が、パーフルオロヘキシル基ユニットのモル数よりも多いことを特徴とする。
【0031】
上記(A)成分であるフロロアルキル変性ポリジメチルシロキサンに含まれるアルケニル基含有量は0.02〜0.20mol/100gが好ましく、さらに好ましくは、0.03〜0.15mol/100gである。フロロアルキル変性ポリジメチルシロキサンに含まれるアルケニル含有量が約0.02mol/100g以下の場合には、架橋度合いが不十分になり硬化不具合が生じる可能性があるため好ましくなく、アルケニル含有量が約0.20mol/100g以上の場合には、この硬化物の剥離特性が損なわれる可能性があるため好ましくない。
【0032】
上記(A)成分であるフロロアルキル変性ポリジメチルシロキサンに含まれるフロロアルキル含有量は0.05〜0.50mol/100gが好ましく、さらに好ましくは、0.05〜0.30mol/100gである。フロロアルキル変性ポリジメチルシロキサンに含まれるフロロアルキル含有量が0.05mol/100g以下の場合には、シリコーン粘着剤との剥離特性が低下するため好ましくなく、フロロアルキル含有量が0.50mol/100g以上の場合には、炭化水素系溶剤類への溶解性が低下し、コスト的にも不利になる。
【0033】
(A)成分であるフロロアルキル変性ポリジメチルシロキサンが1分子中にアルケニル基を有するシロキサン単位を、0.1〜2.0モル%より好ましくは0.2〜1.0モル%含有するフロロアルキル変性ポリジメチルシロキサンとアルケニル基を有するシロキサン単位を4.0〜15.0モル%より好ましくは5.0〜12.0モル%含有するフロロアルキル変性ポリジメチルシロキサンを重量比で約20:80〜80:20好ましくは40:60〜60:40からなる混合物であることがより好ましい。
【0034】
本発明で用いる(B)成分である1分子中にSiHを少なくとも3個有するポリオルガノハイドロジエンシロキサンは、特に限定されず、分子構造は直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のいずれであってもよい。
【0035】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分のフロロアルキル変性ポリジメチルシロキサンとヒドロシリル化反応により組成物を硬化させる架橋剤として作用するものであり、下記平均組成式
SiO(4−x−y)/2
(ただし、上記式中Rは一価の飽和炭化水素基、少なくとも80%以上はメチル基であり、x、yは0.7≦x≦2.1、0.001≦y≦1.0、かつ0.8≦x+y≦2.6、好ましくは0.8≦x≦2、0.01≦y≦1、1≦x+y≦2.4を満たす正数である)で示される1分子中に少なくとも3個のSiH結合を有するものである。
【0036】
ここで、Rは1価の飽和炭化水素基であり、好ましくはアルキル基がよい。また、少なくとも80%以上はメチル基であることが好ましい。
【0037】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0038】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、1分子中のケイ素原子の数(または重合度)は4〜1000、特に4〜300程度のものを使用することができる。
【0039】
また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は、数mPa・s〜数万mPa・sの範囲であれば良いが、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは1〜400mPa・sであることが好ましい。
【0040】
上記(B)成分のオルガノハイドロジエンポリシロキサン配合量は、含有されるSiHのモル数が、(A)成分に含まれるアルケニル基の合計モル数の0.5〜5倍に相当する量、好ましくは0.7〜2倍となる量とすればよい。(B)成分の配合量に含有されるSiHモル数が(A)成分に含まれるアルケニル基の合計モル数の0.5倍未満では本発明の剥離紙用シリコーン組成物の硬化性が不十分となる一方、5倍以上配合しても顕著な効果の増加は見られず、かえって剥離性の経時変化の原因となることがある。一般的なオルガノハイドロジエンポリシロキサンでの配合重量部としては、(A)成分のポリオルガノシロキサン100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0041】
本発明で使用される(C)成分としての白金族系化合物は、(A)成分と(B)成分のいわゆる付加反応を促進し、硬化被膜を形成するために用いられる。付加反応用触媒としては、例えば、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸−オレフィンコンプレックス、塩化白金酸−アルコール配位化合物、ロジウム、ロジウム−オレフィンコンプレックス等が挙げられる。上記付加反応用触媒は、(A)成分としてのポリオルガノシロキサン、(B)成分としてのオルガノハイドロジエンポリシロキサン、合計重量に対し、金属の量として5〜1000ppm(重量比)配合することが、充分な硬化被膜を形成する上で好ましいが、前記成分の反応性または所望の硬化速度に応じて適宜増減させることができる。
【0042】
本発明で用いる(D)成分は、上記反応の制御剤として公知のものが使用できる。例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノール等のアセチレン系アルコール、3−メチル−3−1−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−イン等のアセチレン系化合物、これらのアセチレン系化合物とアルコキシシランまたはシロキサンあるいはハイドロジェンシランまたはシロキサンとの反応物、テトラメチルビニルシロキサン環状体等のビニルシロキサン、ベンゾトリアゾール等の有機窒素化合物およびその他の有機リン化合物、オキシム化合物、有機クロム化合物等が挙げられる。
【0043】
(D)成分の配合量は、良好な処理浴安定性が得られる量であればよく、一般に(A)成分100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部使用される。
【0044】
本発明の組成物において、任意成分として(E)成分の有機溶剤が、処理浴保存安定性および各種基材に対する塗工性の向上、塗工量および処理浴粘度の調整を目的として使用することができる。かかる(E)成分としては、例えばトルエン、キシレン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の本発明の組成物を均一に溶解できる有機溶剤が使用できる。選択される他の組成物の成分や塗工方法によっては使用しなくてもよい。
【0045】
本発明の組成物は前記(A)、(B)、(C)、(D)および(E)の各成分を均一に混合することにより容易に製造することができる。この混合に際しては、(A)、(B)、(D)成分を(E)成分に均一に溶解した後、(C)成分を混合するのが有利である。また、十分なポットライフを確保するため、(C)成分は剥離紙等を製造する直前に添加混合すべきである。
【0046】
本発明の組成物には、必要に応じてシリカ等の無機充填剤または顔料等をさらに配合することもできる。
【0047】
本発明の組成物を使用して剥離紙等を製造する方法として、本発明の組成物を直接または適当な有機溶剤で希釈した後、マルチロールコート、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、バーコート、ダイコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著1979年発行に記載例がある。
【0048】
本発明において基材への塗布量は塗布すべき基材の材質の種類によっても異なるが、固形分の量として0.1〜2.0g/mの範囲が好ましい。上記のようにして本発明の組成物を塗布した基材を80〜180℃で約5〜約60秒間加熱することにより組成物の表面に硬化被膜を形成せしめ、所望の剥離力および残留接着力等を有する剥離シートを得ることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例で部は重量部を示す。また、下記例で使用した評価方法は下記のとおりである。
【0050】
(1)離型フィルムの剥離力(F)の評価
試料フィルムの離型層表面に片面粘着テープ(3M製「No.5413」)を2kgのローラーを1往復させて、貼り合わせた後、室温にて1時間放置後の剥離力を常態剥離力、100℃1時間熱処理をし、室温にて1時間放置後の剥離力を加熱剥離力とした。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
【0051】
(2)密着性の評価
試料の硬化皮膜表面を指でこすり、表面のくもりおよび脱落の有無を観察し、以下の基準で評価した。
◎:くもりおよび脱落が全くない
△:くもりまたは脱落がわずかに生ずる
×:くもりおよび脱落が生ずる
【0052】
(3)残留接着率
剥離力測定後の粘着シートを、ステンレス板に貼りつけ、ゴム被覆された重さ2kgのローラーを1往復させることにより圧着した。オーブン100℃1h処理後し、室温で約1時間放置した後、引っ張り試験機を用いて300mm/分の速度、180゜の角度で粘着シートをステンレス板から引き剥がすのに要する力(mN/cm)を測定した。粘着シートをポリテトラフロロエチレン製のシートに貼合わせ、室温で約1時間放置した後の粘着力のこの力に対する比を残留接着率とした。
【0053】
(4)フッ素含有量測定
試料を風乾させた後、得られた残渣物を試料ボードに約25mg採取し、自動試料燃焼装置を用いて燃焼させ、発生したガスを吸収液10mlに捕集した。燃焼後、吸収液を15mlに定溶し、さらに純水で1万倍に希釈した液についてイオンクロマトグラフ(IC)を用いて定量分析を行い、試料中のフッ素含有量を測定した。
【0054】
実施例1:
<ポリエステルフィルムの製造>
先に述べたポリエステルを原料として、ベント付き押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して厚さ約550μmの無定形フィルムを得た。このフィルムを85℃で縦方向に3.7倍延伸し、100℃で横方向に3.9倍延伸し、210℃で熱処理して、厚さ38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムに、下記に示す離型剤組成−Aからなる離型剤を塗布量(乾燥後)が0.10g/mになるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度120℃、ライン速度30m/分の条件でロール状の離型ポリエステルフィルムを得た。
【0055】
<離型剤組成−A>
・硬化型シリコーン樹脂(X−41−3035:信越化学製、固形分濃度80重量%) 100部
トリフルオロプロピルーメチルシロキサンユニット(FP)、パーフルオロヘキシルーメチルシロキサンユニット(FH)、のモル比は下記式で表される。
FP:FH=58.8:41.2
フッ素含有量は25重量%
・付加型白金触媒(PL−50T:信越化学製) 5部
・MEK/n−ヘキサン混合溶媒(混合比率は1:1) 3860部
固形分濃度:2.2重量%
この組成物を前述の条件にて処理した結果を表1に示した。
【0056】
実施例2:
<離型剤組成−B>
・硬化型シリコーン樹脂(固形分濃度80重量%) 100部
トリフルオロプロピルーメチルシロキサンユニット(FP)、パーフルオロヘキシルーメチルシロキサンユニット(FH)、のモル比は下記式で表される。
FP:FH=50:50
フッ素含有量は28重量%
・付加型白金触媒(PL−50T:信越化学製) 5部
・MEK/n−ヘキサン混合溶媒(混合比率は1:1) 3860部
固形分濃度:2.2重量%
この組成物を前述の条件にて処理した結果を表2に示した。
【0057】
比較例1:
・硬化型シリコーン樹脂(シルオフ3062:東レ・ダウコーニング、固形分濃度10重量%) 100部
トリフルオロプロピルーメチルシロキサンユニット(FP)、パーフルオロヘキシルーメチルシロキサンユニット(FH)、のモル比は下記式で表される。
FP:FH=30:70
フッ素含有量は31重量%
・付加型白金触媒(FSXK−3077:東レ・ダウコーニング製) 0.5部
・IPE 400部
固形分濃度:2.2重量%
この組成物を前述の条件にて処理した結果を表1に示した。
【0058】
比較例2:
・硬化型シリコーン樹脂(固形分濃度10重量%) 100部
トリフルオロプロピルーメチルシロキサンユニット(FP)、パーフルオロヘキシルーメチルシロキサンユニット(FH)、のモル比は下記式で表される。
FP:FH=0:100
フッ素含有量は36重量%
・付加型白金触媒(FSXK−3077:東レ・ダウコーニング製) 0.5部
・IPE 400部
固形分濃度:2.2重量%
この組成物を前述の条件にて処理した結果を表1に示した。この組成物を前述の条件にて処理した結果を表1に示した。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のポリエステルフィルムは、軽剥離で移行の少ないシリコーン粘着剤用の離型フィルムとして好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルオロプロピル基ユニットを有するシリコーン樹脂を含有する離型層を有する離型フィルムであり、当該離型層中のフッ素含有量が30重量%以下であることを特徴とする離型フィルム。