説明

離型フィルム

【課題】溶剤を使用せずに製造でき、製造工程が大幅に短縮され、残存するSiH基が無く、製造に白金触媒を使用しない離型フィルムを提供する。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂 100質量部、
(B)1分子中に1個の不飽和官能基を有するオルガノポリシロキサンを40〜100質量%含有する不飽和官能基含有オルガノポリシロキサン 0.01〜30質量部、および
(C)有機過酸化物 0.001〜2質量部
を含有する離型剤組成物がフィルム状に成型、硬化され、FINAT試験法 SECTION1のFTM10に準じて粘着テープを用いて測定される剥離力が0.01〜1N/25mmであり、かつ同FTM10に準じて測定される残留接着率が70%以上である、離型フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムに関する。詳しくは、剥離紙用シリコーンを用いた場合には必要な塗工工程およびセパエージング工程が不要なため製造工程を短く効率化でき、製造するのに白金触媒を必要としないため製造原価が安く、密着性に優れ、また経時で剥離力が変化しないため長期保管し使用時に切断して使うことが可能な離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
離型フィルム又はシートは、ラベル、シール、粘着テープ、建築資材(粘着加工した型紙、粘着ビニルタイル、粘着金属シート、粘着化粧版、防水材、粘着遮光フィルム、自動車内装用発泡シート)、衛生用品(医療用絆創膏、貼り薬、生理用品、ゴキブリ捕獲機)、ベーキングトレイ、アメ類またはチョコレート類の製造および包装用、セラミックシート製造工程、ポリ塩化ビニル、ウレタン等の合成皮革製造工程、液晶用偏光板製造工程用、炭素繊維プリプレグ用、感圧接着フィルム製造用、アスファルトまたはゴムの包装、転写印刷関連製品工程、各種成型品の製造といったさまざまな用途において使用されている。
【0003】
従来の離型シート又は剥離フィルムの製造方法は、紙、フィルム等の基材表面に剥離紙用シリコーンを薄く均一に広げて塗布した後、熱エネルギーまたは電子線エネルギーにより基材表面にシリコーン架橋物を造るものである。また基材両面に剥離層を作る場合は、基材の片面ずつ形成操作を行なう必要がある。
【0004】
剥離紙用シリコーンは、硬化形式で見ると縮合型、付加反応型、紫外線硬化型および電子線硬化型に分けられるが、反応硬化性に優れていることから付加反応型が主流であり、ビニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主原材料とし、配合原料の中では白金触媒の価格が高い。代替触媒は見つかっておらず、近年では少ない白金触媒量で離型フィルムを造る配合処方が検討されているが、白金触媒を無くすことはできておらず、原料価格に占める白金触媒の価格の割合は依然として高い状態である。
【0005】
また、この付加反応型オルガノポリシロキサンは密着性と反応性を高めることを目的に、ビニル基に対し2倍近いケイ素原子結合水素原子(以下、「SiH基」という場合がある。)を含有するポリシロキサンを配合している。このため一般にフィルム上にキュアした直後は残存するSiH基が粘着剤と反応し剥離が重く(剥離力が大きく)、経時で脱水素によりSiH基が減るため、剥離力は初期に比べて軽く(剥離力が小さく)なる。このため離型フィルム製造メーカーは製品によりエージング時間を変えて処理を行ない、最適な剥離力を有するフィルムを作っている。すなわち基材への塗工工程とエージングに時間がかかること、エージング時間幅が限定されることが工程費の上昇と手間(効率・生産性の低下)になっている。さらに電子部品メーカーの工程紙用途ではサブミクロンサイズのゴミの混入が許されない条件下にあり工程の短縮は価格だけではなくコンタミネーション(汚染)の可能性を減らすためにも有効である。
【0006】
上記の問題を解決するためにさまざまな試みが成され、離型フィルム用途として下記に挙げる報告がなされているが、多くはSiH基を有するハイドロジェンシロキサンと不飽和官能基含有シロキサンの白金触媒による付加反応物である。またエーテル変性シリコーン化合物を用いたものに関する報告も、シリコーン接着組成物とエチレン性不飽和モノマーとを共重合した組成物を用いたものに関する報告もあるが、原材料費と工程費は高い。
【0007】
不飽和アルキル基含有ポリシロキサン0.1〜50質量部とポリオレフィン樹脂を溶融混練してなる組成物フィルム上に剥離性シリコーン被膜を形成したものが提案されている(特許文献1)。これは、フィルム中の不飽和アルキル基と剥離性シリコーン中のSi−H基が反応することにより、密着性が向上するというものであるが、白金触媒量は変わらず、塗工工程は従来と変わらない。またSi-H基は少なくなるが、無くなるわけではないのでエージングは必要である。
【0008】
20mPa.s以上のエーテル変性シリコーン化合物を主成分とする熱可塑性樹脂用剥離性内部添加剤が知られている(特許文献2)。この内部添加剤を用いた剥離ラミネートシートは白金触媒が不要で塗工工程およびエージングも必要ないものであるが、未反応原料であるエーテル化合物は10%ほど移行成分として存在する。未反応原料だけでなくエーテル変性シリコーン自体も樹脂と反応する官能基を持たないため、成型加工中にブリードして表面に存在し、はがれやすく、傷つきやすいものである。
【0009】
有機溶剤を少量含有した有機樹脂中で1)両末端及び側鎖ビニルシロキサン、2)1分子中に2個以上水素基(Si−H基)を有するハイドロジェンシロキサン、3)白金触媒を付加反応させた方法が知られている(特許文献3)。この方法は有機溶剤に溶解する有機樹脂が限定され、有機溶剤を除く工程が必要になる。また、Si−H基が残存するためは剥離力の経時変化は起こり、白金触媒を使用するため原料価格は高いままである。
【0010】
シリコーンゴムとオレフィン系樹脂との複合成型物が知られている(特許文献4)。この技術は、オレフィン系樹脂成型品表面に付加重合型シリコーンゴム硬化層を設けてなるもので、残存Si−H基は多く、白金触媒を使用している。
【0011】
シリコーン侵入型重合体網状構造を含む溶融押出熱可塑性樹脂が知られている(特許文献5)。これは、熱可塑性樹脂とSi−H基含有シリコーンを反応させ加硫し溶融延伸したもので、Si−H基は残存し、樹脂内に部分架橋物が多く存在するためか、表面の剥離性は重い。また硬度が高いためフィルム化は難しい。
【0012】
ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂とビニルシランを触媒として有機過酸化物を用いてグラフト化することは知られている。具体的にはビニルアルコキシシランあるいは側鎖ビニルシロキサンを有機過酸化物と共に樹脂と反応させたものである(特許文献6)。特にビニルトリアルコキシシラン架橋ポリエチレンは電線被覆材料などに使用されている。しかし、これらの架橋樹脂はフィルム用樹脂で検討されたことがなく、離型フィルム用途に検討されたこともない。これはポリオルガノシロキサン単位を持たないため作られる架橋樹脂は剛直で硬く、フィルムに加工が困難な材料であるためである。
【0013】
アクリル変成シリコーンを含有するシリコーン接着組成物とエチレン性不飽和モノマーを共重合した組成物が報告されている(特許文献7)。値段の高いシリコーン接着組成物を大量に使用する必要があり価格は高く、組成物の機械強度は低下する。また剥離用途に対して紙またはプラスチックフィルムにキャストして使われるため塗工の工程費が余分に掛かるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許2658650号公報
【特許文献2】特開平5−194858号公報
【特許文献3】特許2756394号公報
【特許文献4】特開昭60−247556号公報
【特許文献5】特開平1−157827号公報
【特許文献6】特公昭62−34779号公報
【特許文献7】特表2009−540052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、溶剤を使わないで製造できるため安全面および環境面で問題がなく、製造工程が大幅に短縮されるため高効率で生産性が高く、残存するSiH基が無いため経時で剥離力が変化せず、製造するのに白金触媒を必要としないため白金の省資源化を実現することができる離型フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
フィルムに適した熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリイミド等が知られている。フィルムに適した熱可塑性樹脂にシリコーンを配合しても、このような熱可塑性樹脂とシリコーンとの相溶性が悪いため、多くの場合、相分離が生じてしまう。本発明者らは、種々検討の結果、下記の離型フィルムにより、上記の課題を全て解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0017】
即ち、本発明は第一に、
(A)不飽和官能基を有する熱可塑性樹脂 100質量部、
(B)1分子中に1個の不飽和官能基を有するオルガノポリシロキサンを40〜100質量%含有する不飽和官能基含有オルガノポリシロキサン 0.01〜30質量部、および
(C)有機過酸化物 0.001〜2質量部
を含有する離型剤組成物がフィルム状に成型、硬化され、FINAT試験法SECTION1のFTM10に準じて粘着テープを用いて測定される剥離力が0.01〜1N/25mmであり、かつ同FTM11に準じて測定される残留接着率が70%以上である、離型フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の離型フィルムは溶剤を使わないで製造できるため、安全面および環境面での問題がない。また、本発明の離型フィルムは白金触媒を用いないで製造できるため、貴重元素である白金の省資源のメリットがある。更に、本発明の離型フィルムは塗工工程を経ずに製造することができ、また、残存SiH基が無いためエージング時間が必要ないため、製造工程が大幅に短縮され、効率および生産性が向上する。加えて、本発明の離型フィルムは残存SiH基が無いため経時で剥離力が変化しない。さらに、本発明の離型フィルムは両面に優れた剥離特性を有するが、これを1回の製造工程で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
[(A)成分]
(A)成分は、不飽和官能基を有する熱可塑性樹脂であり、該熱可塑性樹脂は1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。(A)成分中の不飽和官能基としては、例えばビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等を挙げることができるが、反応性が良い観点からアクリロイル基、メタクリロイル基が特に好ましい。
【0020】
フィルムに適した不飽和官能基を有する熱可塑性樹脂としてはポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂等を挙げられるが、熱可塑性樹脂の中でもポリオレフィン樹脂が好ましい(A)成分のポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレンおよびポリプロピレンが挙げられる。
【0021】
低密度ポリエチレンまたはリニア低密度ポリエチレンとしては、例えば、ASTM D1238に準拠して測定される190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート(以下、「MFR」と略す場合がある。)が0.05〜10g/10min、好ましくは0.05〜5g/10min、さらに好ましくは0.5〜3g/10minのものが挙げられる。該MFRが0.05〜10g/10minの範囲内にあると、離型フィルムを得るための成型加工が容易となりやすく、得られる離型フィルムの強度、ヒートシール性および耐ブロッキング性が十分となりやすい。
【0022】
低密度ポリエチレンとリニア低密度ポリエチレンの具体例をその品名とともに以下に挙げるが、本発明の離型フィルムに用いられる低密度ポリエチレンとリニア低密度ポリエチレンは下記の製品に限定されるものではない。
【0023】
・低密度ポリエチレンとリニア低密度ポリエチレンの具体例
市販品としては、ノバテックUF420、ノバテックUF240、ノバテックUF440、ノバテックUJ580、ノバテックUJ960、ノバテックUE320、ノバテックSF720、ノバテックLF128、ノバテックLF244E、ノバテックLF440HB、ノバテックLC525、ノバテックLC520、ノバテックLC600A、ノバテックLC621、ノバテックLC720(以上、日本ポリエチレン株式会社製の商品名);
【0024】
スミカセンF101−1、スミカセンF102−0、スミカセンF218−0、スミカセンF208−3、スミカセンF200、スミカセンF412−1、スミカセンL211、スミカセンL716−H、スミカセンGA401、スミカセンGA701(以上、住友化学工業株式会社製の商品名);
【0025】
UBEポリエチレンF019、UBEポリエチレンF022NH、UBEポリエチレンF120H、UBEポリエチレンF222、UBEポリエチレンR300、UBEポリエチレンF234、UBEポリエチレンZ372、UBEポリエチレンL719(以上、宇部丸善ポリエチレン株式会社製)
NEO−ZEX0134H、NEO−ZEX0144H、NEO−ZEX0434N、ULT−ZEX1020L、ULT−ZEX4050、ULT−ZEX10100W、MORETEC0218CN、MORETEC0358CN、MORETEC1018CN、EVOLUE SP2320、EVOLUE SP4020(以上、株式会社プライムポリマー社製の商品名)
【0026】
ポリプロピレンとしてはASTM−D1238に準拠して測定される230℃、2.16kgにおけるメルトフローレートが0.01〜30g/10min、好ましくは4〜10 g/10minのものが挙げられる。該MFRが0.01〜30g/10minの範囲内にあると、離型フィルムを得るための成型加工が容易となりやすく、得られる離型フィルムの強度、ヒートシール性および耐ブロッキング性が十分となりやすい。
【0027】
ポリプロピレンの具体例をその商品名とともに以下に挙げるが、本発明の離型フィルムに用いられるポリプロピレンは下記の製品に限定されるものではない。
・ポリプロピレンの具体例:
プライムポリプロF113G、プライムポリプロF109V、プライムポリプロF227D、プライムポリプロF219D8(以上、株式会社プライムポリマー製の商品名);
【0028】
ノバテックPP MA3、ノバテックPP MA1B、ノバテックPP BC8、ノバテックPP F203T、ノバテックPP FX4E、ノバテックPP FG3DC、ノバテックPP FL02A、ノバテックPP FY4、ノバテックPP EA9、ノバテックPP EG7F(以上、日本ポリプロ株式会社製の商品名);
PC480A、PC684S、PC630S、PF621S、PC412A、PC600S、PL500A(以上、サンアロマー株式会社製の商品名)
【0029】
[(B)成分]
(B)成分は、不飽和官能基含有オルガノポリシロキサンであるが、これに含まれる1分子中に1個の不飽和官能基を有するオルガノポリシロキサンが40〜100質量%の範囲であり、好ましくは60〜100質量%の範囲であり、より好ましくは80〜100質量%の範囲である。高温でラジカル存在下では、(B)成分中の不飽和官能基と(A)成分の不飽和官能基を有する熱可塑性樹脂とが優先して反応する。全(B)成分中の、1分子中に1個の不飽和官能基を有するオルガノポリシロキサンが40質量%未満であると、不飽和官能基数が2個以上のものが増え過ぎ、ゲル状物が生成し表面の凹凸が大きくなるため剥離力が重くなる(剥離力が大きくなる)。(B)成分は、上記の条件を満たすならば、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
(B)成分中の不飽和官能基としては、例えば、不飽和官能基としてはビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等を挙げることができるが、反応性が良い観点からアクリロイル基、メタクリロイル基が特に好ましい。
【0031】
(B)成分のオルガノポリシロキサンのオストワルド粘度計により測定される25℃での動粘度としては5mm/s〜1万mm/sが好ましく、より好ましくは5mm/s〜1000mm/s、さらに好ましくは10mm/s〜100mm/sである。5mm/s以下の場合、加熱混練時に表層に移行するものが多く、混練が空滑りし均一に混合することが難しい。逆に1万mm/s以上の場合は樹脂内に留まり表層へ移行する量が極端に少なくなる場合がある。
【0032】
[(C)成分]
(C)成分は有機過酸化物であり、パーオキシド構造(−O−O−)または過カルボン酸構造{R−C(=O)OOH}を有する化合物を意味する。有機過酸化物は種類により特有の温度で分解し遊離ラジカルを発生することにより(A)成分が有する不飽和官能基と(B)成分の不飽和官能基を架橋させる作用を示す。使用に適した有機過酸化物としてはジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、1,1ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
有機過酸化物の種類は通常加工時の温度に従い、半減期温度を考慮して選定される。加工温度は樹脂の種類により変わるが、ポリオレフィン樹脂の場合は、一般に80〜260℃が好ましい。
【0034】
本発明における有機過酸化物の配合量は(A)成分の熱可塑性樹脂100質量部当り、0.001〜2質量部が好ましい。
【0035】
[その他の成分]
本発明で用いられる離型剤組成物には、その特性を阻害しない範囲で、その目的に応じてその他の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、光安定剤、滑剤、充填剤を挙げることができる。
【0036】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5‘−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4−チオビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2−メチレンビス−(6−t−ブチル−メチルフェノール)、4,4−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2−4−6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4‘−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3‘−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2,5,7,8−テトラメチル−2(4,8,12−トリメチルデシル)クロマン−2−オール、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジペンチルフェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0037】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0038】
安定剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の各種金属せっけん系安定剤、ラウレート系、マレート系やメルカプト系各種有機錫系安定剤、ステアリン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の各種鉛系安定剤、エポキシ化植物油等のエポキシ化合物、アルキルアリルホスファイト、トリアルキルホスファイト等のホスファイト化合物、ベンゾイルメタン、デヒドロ酢酸等のβ−ジケトン化合物、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール等のポリオール、ハイドロタルサイト類やゼオライト類を挙げることができる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0039】
[組成物の調製・成形]
本発明の離型フィルムは、(A)、(B)および(C)成分、並びに必要に応じて配合される任意成分を含む混合物を加熱反応後成形することにより製造することができる。
【0040】
(A)、(B)および(C)成分を十分に混合分散後、温度を上げ(C)成分を分解しラジカルを発生させて(A)及び(B)を反応させ(A)の幹ポリマーに(B)の枝ポリマーをグラフトしたものを合成する。
【0041】
(A)、(B)および(C)成分の混合は室温下で行っても、また加熱して行っても良く、加熱混合時の温度は(A)成分のポリオレフィン樹脂にもよるが、例えば、130〜260℃である。十分に混合できた混練物は有機過酸化物を熱分解しラジカル反応を行う。ラジカル反応を行う時の温度は加熱混合時よりも20℃以上高温であることが好ましい。加熱混合及びラジカル反応は、例えば、2軸押出機、1軸押出機、バンバリーミキサー、もしくは加圧ニーダー中で行うことができる。(A)成分、(B)成分と(C)成分との混合は、(B)成分と(C)成分を(A)成分へ直接添加して行ってもよいし、取り扱い性及び分散性の面で優れていることから、(A)成分と(B)成分あるいは(A)成分と(C)成分とを含むマスターバッチを作り、所定の混合比となるように該マスターバッチを(A)成分中に添加して行ってもよい。上記混合物の加熱成形は溶融成形法で行うことが好ましく、プレス成形法、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法、二軸延伸法等を溶融成形法の例として挙げることができる。加熱成形時の温度は、(A)成分のポリオレフィン樹脂にもよるが、例えば、160〜360℃である。
【0042】
上記離型剤組成物の配合は、離型フィルムの成形過程で行われてもよい。具体的には、(B)成分の不飽和基含有オルガノポリシロキサンを(A)成分の熱可塑性樹脂へ添加する際、直接2軸押出機、1軸押出機、バンバリーミキサー、もしくは加圧ニーダー中で加熱混合してもよい。また(B)成分の高重合度不飽和基含有オルガノポリシロキサンと(A)成分の熱可塑性樹脂を配合したマスターバッチをつくり、マスターバッチを(A)成分の熱可塑性樹脂中に所定濃度配合してもよく、この方法のほうが、取り扱い性及び材料相互の分散性の面で優れている。フィルムまたはシートの作成方法としては溶融成型法が好ましく、プレス成型、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法、二軸延伸法等を例として挙げることができる。
【0043】
本発明の離型フィルムは、そのまま使用することも可能であるが、ラミネーターを用いて紙等にラミネートして使用することも可能である。
【0044】
該離型フィルムは、上述した用途、即ち、ラベル、シール、粘着テープ、建築資材(粘着加工した型紙、粘着ビニルタイル、粘着金属シート、粘着化粧版、防水材、粘着遮光フィルム、自動車内装用発泡シート)、衛生用品(医療用絆創膏、貼り薬、生理用品、ゴキブリ捕獲機)、ベーキングトレイ、アメ類またはチョコレート類の製造および包装用、セラミックシート製造工程、ポリ塩化ビニル、ウレタン等の合成皮革製造工程、液晶用偏光板製造工程用、炭素繊維プリプレグ用、感圧接着フィルム製造用、アスファルトまたはゴムの包装、転写印刷関連製品工程、各種成型品の製造といったさまざまな用途において使用することができる。
下に実施例を記すが、いずれも塗工工程、セパエージング工程は不要で剥離力の経時変化もないものである。
【0045】
[剥離力および残留接着率]
本発明の離型フィルムは、FINAT試験法SECTION1のFTM10により粘着テープを用いて測定される剥離力が、0.01〜1N/25mm、好ましくは、0.01〜0.9であり、かつ同法SECTION1のFTM11に準拠する残留接着率が、70%以上(即ち、70〜100%)のものである。該測定に使う粘着剤はアクリル系粘着剤である。アクリル系粘着剤は現在使用されている粘着剤の中で最も使用例が多く、中でもTESA7475テープ(テサテープ株式会社)が最も多く使われている。
【0046】
原料としてポリエチレン樹脂のみを用いて製造した従来の離型フィルムの剥離力は典型的には7〜8N/25mm程度である。本発明の離型フィルムは、前記剥離力が0.01〜1N/25mmの範囲内にあることにより、高い離型性が必要とされる粘着テープに剥離材料として用いることができるというメリットがある。また、本発明の離型フィルムの残留接着率は70%以上であるので、本発明の離型フィルムから剥がしたシール等は十分な接着力を維持しており、そのため、被着体に貼った場合にしっかりとくっつけることができる。
【0047】
なお、上記剥離力は以下の手順で測定される。
フィルムにTesaテープ7475(テサテープ株式会社製)を貼り、70℃の乾燥機中20g/cmの加重をかけ24時間後に取り出す。30分ほど空冷した後、引張試験機(株式会社島津製作所製 DSC−500型試験機)を用いて180度の角度、剥離速度0.3m/分でTesaテープ7475を引張り、剥離させるのに要する力(N/25mm)、即ち、剥離力を測定する。
【0048】
また、残留接着率は以下の手順で測定される。上記の剥離力の測定で剥離させたTesaテープ7475をSUSステンレス板に貼り付け、上記の引張試験機により180度の角度、剥離速度0.3m/分でTesaテープ7475を引張り、剥離させるのに要する力F(N/25mm)を測定する。比較として未使用のTesaテープ7475をSUS板に貼り付け、Fの測定と同様にして、剥離させるのに要する力F(N/25mm)を測定する。式:F/F×100により残留接着率(%)を計算して、剥離力測定後のTesaテープ7475には未使用のTesaテープ7475と比較して何%の接着力が残っているかを評価する。
【実施例】
【0049】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0050】
−材料の説明−
下記の実施例等で使用した材料は表1〜表3に記載の通りである。
(A)成分:熱可塑性樹脂
【0051】
【表1】

【0052】
(B)成分:オルガノポリシロキサン
【0053】
【表2】

【0054】
(注)
・表2のメタクリル変成シリコーンオイル(B2)〜(B5)及びビニルシリコーンオイル(B6)中に存在するメタクリロイル基もしくはビニル基以外の有機基はメチル基である。
・分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
・動粘度は25℃における測定値である。
【0055】
(C)成分:有機過酸化物
【0056】
【表3】

(注)
パーブチルP:α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン
パークミルP:ジイソプロピルベンゼン ハイドロパーオキサイド
【0057】
[離型フィルムの製造]
表4(実施例)または表5(比較例)に記した比率(単位:質量部)で各原料をヘンシェルミキサー(三井金属鉱山株式会社)で1分以上十分に混合する。混合物はラボプラストミルに取り付けたKF75Vセグメントミキサー(株式会社東洋精機社製)に入れ3分間、30rpmの条件下で加熱混練を行う。加熱温度はLDPE(A1)が150℃で3分、PP(A2)が190℃であった。
【0058】
出来上がった混練物は、50トンプレス機(株式会社ショージ社製)を用いて、LDPE(A1)、PP(A2)については260℃、5MPa、1分間の条件で、プレス成形を行った。出来上がったフィルムを用いて以下の評価を行った。
【0059】
[べたつき感]
指でフィルムをさわりべたつきの有無を評価した。表4および表5において、べたつき感のないものを○、べたつき感のあるものを×で示す。
【0060】
[剥離力]
FINAT試験法SECTION1のFTM10に準じて下記の手順で剥離力を測定した。
フィルムにTesaテープ7475を貼り、70℃の乾燥機中20g/cmの加重をかけ24時間後に取り出した。30分ほど空冷した後、引張試験機(株式会社島津製作所製 DSC−500型試験機)を用いて180度の角度、剥離速度0.3m/分でTesaテープ7475を引張り、剥離させるのに要する力(N/25mm)を測定した。
【0061】
[残接(残留接着率)]
上記の剥離力の測定で剥離させたTesaテープ7475をSUS板に貼り付け、上記の引張試験機により180度の角度、剥離速度0.3m/分でTesaテープ7475を引張り、剥離させるのに要する力F(N/25mm)を測定した。比較として未使用のTesaテープ7475をSUS板に貼り付け、Fの測定と同様にして、剥離させるのに要する力F(N/25mm)を測定した。式:F/F×100により残留接着率(%)を計算して、剥離力測定後のTesaテープ7475には未使用のTesaテープ7475と比較して何%の接着力が残っているか評価した。
【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の離型フィルムはラベル、シール、粘着テープ等従来公知の用途に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂 100質量部、
(B)1分子中に1個の不飽和官能基を有するオルガノポリシロキサンを40〜100質量%含有する不飽和官能基含有オルガノポリシロキサン 0.01〜30質量部、および
(C)有機過酸化物 0.001〜2質量部
を含有する離型剤組成物がフィルム状に成型、硬化され、FINAT試験法SECTION1のFTM10に準じて粘着テープを用いて測定される剥離力が0.01〜1N/25mmであり、かつ同FTM11に準じて測定される残留接着率が70%以上である、離型フィルム。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂がASTM-D1238により測定される190℃、2.16kgにおけるメルトフローレートが0.05〜10g/10minの低密度ポリエチレンまたはリニア低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記ポリオレフィン樹脂がASTM-D1238により測定される230℃、2.16kgにおけるメルトフローレートが0.01〜30g/10minのポリプロピレンであることを特徴とする請求項2又は3記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記オルガノポリシロキサンの不飽和官能基がアクリロイル基もしくはメタクリロイル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記オルガノポリシロキサンの25℃における動粘度が5mm/s〜1万mm/sであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の離型フィルム。
【請求項7】
前記の粘着テープが基材テープに粘着剤としてアクリル系粘着剤がコートされたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の離型フィルム。
【請求項8】
前記粘着テープがTESA7475テープであることを特徴とする請求項7のいずれか1項に記載の離型フィルム。

【公開番号】特開2012−25828(P2012−25828A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164900(P2010−164900)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】