説明

難易度推定システムおよびプログラム

【課題】楽曲における区間毎の難易度を推定すること。
【解決手段】ユーザそれぞれが歌唱した歌唱履歴を楽曲毎に統合し、これに基づいて指定楽曲における判定対象区間それぞれの難易度を推定し、これをユーザに提示できる。歌唱履歴データは、ユーザそれぞれによる楽曲の歌唱に際して特定されたものであって、その楽曲の単位区間それぞれに対応する理想パラメータ毎に、その理想パラメータの音声が正確に発声されたかをパラメータ化したものである。そのため、歌唱履歴データにおけるある単位区間のパラメータ正確性が低いということは、その単位区間の音声が正確に発声されていないことが多く、ユーザが実際に歌唱を行った結果から難易度が高いといえる。つまり、単位区間におけるパラメータ正確性の低さに応じて、その単位区間を含む判定対象区間における難易度は高くなるといえ、このことをもって判定対象区間それぞれの難易度を推定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが楽曲を歌唱する場合の難易度を推定する難易度推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から楽曲についての難易度を判定することが行われており、近年では、過去に歌唱された際の採点結果に応じた難易度の判定方法なども提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−107334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術では、過去に歌唱された際の採点結果の平均点に基づいて難易度を判定しているだけであり、楽曲全体としての難易度を知るうえでは有用であるが、楽曲の時間軸に沿った区間毎に難易度を判定することができないため、楽曲の区間それぞれについてみると、必ずしも適切な難易度になっているとはいえない。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、楽曲における区間毎の難易度を推定するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためには、難易度推定システムを以下に示す第1の構成(請求項1)のようにすることが考えられる。
この構成においては、ユーザが楽曲を歌唱してなる音声を時系列に沿って所定の区間毎に分割した単位区間それぞれについて、該単位区間の音声に関する歌唱パラメータを、該単位区間において発声すべき正しい音声に基づく理想パラメータと対比することにより、その楽曲における単位区間毎の前記理想パラメータに対する前記歌唱パラメータの正確性(パラメータ正確性)を、その楽曲の歌唱履歴として特定する履歴特定手段と、該履歴特定手段によりそれぞれ特定された1以上の歌唱履歴のうち、同じ楽曲の歌唱履歴について、各単位区間のパラメータ正確性が平均化されるように統計をとることにより、楽曲毎の歌唱履歴に統合する履歴統合手段と、ユーザにより楽曲が指定された際に、前記履歴統合手段により統合された歌唱履歴のうち、その指定された楽曲(指定楽曲)に対応する歌唱履歴における単位区間毎のパラメータ正確性に基づいて、該指定楽曲において1以上の単位区間で形成される判定対象区間それぞれを歌唱する際の難易度を推定する難易度推定手段と、該難易度推定手段により推定された前記判定対象区間毎の難易度をユーザに提示する難易度提示手段と、を備えている。
【0006】
そして、前記難易度推定手段は、前記指定楽曲に対応する歌唱履歴における単位区間毎のパラメータ正確性に基づき、前記判定対象区間を形成する各単位区間それぞれのパラメータ正確性の低さに応じた難易度を、その判定対象区間を歌唱する際の難易度として推定する。
【0007】
このように構成された難易度推定システムによれば、ユーザそれぞれが実際に歌唱した歌唱履歴を楽曲毎に統合し、これに基づいて指定楽曲における判定対象区間それぞれの難易度を推定したうえで、これをユーザに提示することができる。
【0008】
歌唱履歴は、ユーザそれぞれによる楽曲の歌唱に際して特定されたものであって、その楽曲の単位区間それぞれに対応する理想パラメータ毎に、その理想パラメータの音声が正確に発声されたかを「パラメータ正確性」という形でパラメータ化したものである。
【0009】
そのため、歌唱履歴におけるある単位区間のパラメータ正確性が低いということは、その単位区間における音声が正確に発声されていないことが多く、ユーザが実際に歌唱を行った結果から難易度が高いということを示している。つまり、単位区間におけるパラメータ正確性の低さに応じて、その単位区間を含む判定対象区間における難易度は高くなるといえ、上記構成では、このことをもって判定対象区間それぞれの難易度を推定することができる。
【0010】
さらに、ユーザが指定楽曲を歌唱したか否かとは無関係に難易度を推定できるため、そのユーザが指定楽曲を歌唱したことがなかった場合においても、その歌唱に際しての目安として対象判定区間それぞれの難易度を事前に提示することができる。
【0011】
この構成において歌唱パラメータ,理想パラメータにおける「単位区間」とは、音声を時系列に沿って所定の区間毎に分割したものであり、例えば、楽曲における1以上の小節からなる区間や、音声を音(具体的には音符など)の推移で表した場合における1以上の音からなる区間などのことである。
【0012】
また、上記構成において、最終的に推定した難易度を提示する具体的手法については特に限定されず、例えば、その難易度を示すメッセージを表示部やスピーカに出力させる手法を採用することが考えられる。
【0013】
また、この構成において難易度を提示する際の提示態様としては、例えば、各判定対象区間の難易度それぞれを一括して表示部に出力させることとすればよいし、難易度それぞれを順番に表示部に出力させることとしてもよい。
【0014】
この後者の場合には、ユーザが指定楽曲を歌唱するか否かとは無関係に提示すればよいが、ユーザが実際に指定楽曲を歌唱する際に提示することとすれば、その難易度を確認しながら歌唱を行うことができるようになるため好適といえる。このための構成としては、例えば、以下に示す第2の構成(請求項2)のようにすることが考えられる。
【0015】
この構成においては、ユーザに歌唱すべき楽曲を指定させる楽曲指定手段と、該楽曲指定手段により指定させた楽曲を前記指定楽曲として、該指定楽曲の演奏を行う楽曲演奏手段と、を備えている。そして、前記難易度提示手段は、前記楽曲演奏手段により指定楽曲の演奏が開始されて以降、前記難易度推定手段により推定された難易度のうち、その演奏されている指定楽曲の前記判定対象区間について推定された難易度を前記指定楽曲の演奏に伴って提示する。
【0016】
この構成であれば、演奏されている楽曲における判定対象区間について推定された難易度が、その演奏に伴って順次提示されるため、その難易度を確認しながら歌唱を行うことができるようになる。
【0017】
この構成において、判定対象区間の難易度は、指定楽曲の演奏に伴って順次提示されるようにすればよく、具体的な例としては、上記第2の構成を以下に示す第2−1の構成のようにするとよい。
【0018】
この構成においては、前記判定対象区間について推定された難易度それぞれを、前記指定楽曲の単位区間それぞれのうち、その判定対象区間を構成するいずれか(例えば時間軸上先頭または最後尾)の単位区間に対応づける難易度対応付け手段,を備えている。
【0019】
そして、前記難易度提示手段は、前記楽曲演奏手段により指定楽曲の演奏が開始されて以降、その時点で演奏されている単位区間以降の単位区間を含む前記判定対象区間以降に到来する所定数の前記判定対象区間について、該判定対象区間を構成するいずれかの単位区間に対して前記難易度対応付け手段が対応づけた難易度を提示する。
【0020】
この構成であれば、演奏されている判定対象区間以降の判定対象区間について推定された難易度が都度提示されるため、それ以降に到来する判定対象区間の難易度を認識しながら歌唱を行うことができるようになる。
【0021】
また、上記各構成において歌唱履歴を特定する基準となる音声については、どのように取得することとしてもよく、例えば、ユーザが楽曲を歌唱してなる音声を示す情報を外部装置から取得するようにすることが考えられる。また、ユーザに歌唱すべき楽曲を指定させ、その楽曲の演奏を開始すると共に、その演奏に際してユーザが歌唱してなる音声を取得するように構成することも考えられる。
【0022】
この後者のためには、上記各構成を以下に示す第3の構成(請求項3)のようにするとよい。
この構成においては、ユーザに歌唱すべき楽曲を指定させる楽曲指定手段と、該楽曲指定手段により指定させた指定楽曲を示す楽曲データに基づいて、該指定楽曲の演奏を行う楽曲演奏手段と、該楽曲演奏手段により指定楽曲の演奏が行われる過程においてユーザが歌唱してなる音声を示す歌唱データを取得する音声取得手段と、を備えている。そして、前記履歴特定手段は、前記音声取得手段により取得された歌唱データで示される音声に基づいて歌唱履歴を特定する。
【0023】
この構成であれば、ユーザにより実際の歌唱が行われる都度、その歌唱に係る音声を取得し、これに基づいて歌唱履歴を特定することができる。
また、上記各構成において、指定楽曲における難易度を推定するに際しては、例えば、下記に示す第4の構成(請求項4)のように、難易度推定手段が、前記指定楽曲において1以上の単位区間で形成される判定対象区間それぞれを歌唱する際の難易度として、該判定対象区間を形成する各単位区間それぞれのパラメータ正確性を平均化してなるパラメータ正確性の低さに応じた難易度を推定する、ように構成するとよい。
【0024】
この構成であれば、判定対象区間を形成する各単位区間それぞれのパラメータ正確性を平均化してなるパラメータ正確性に基づいて、このパラメータ正確性の低さに応じた判定対象区間の難易度を推定することができる。
【0025】
なお、上記各構成における難易度推定システムは、1つの装置として構成してもよいし、それぞれ通信可能に接続された複数の装置が協調して動作するように構成してもよい。また、カラオケシステムの一機能として実装された構成として実現してもよい。
【0026】
また、上記課題を解決するためには、上記第1〜第5のいずれかにおける全ての手段として機能させるための各種処理手順をコンピュータシステムに実行させるためのプログラム(請求項6)としてもよい。
【0027】
このプログラムを実行するコンピュータシステムであれば、上記第1〜第5のいずれかに係る歌唱採点システムの一部を構成することができる。
なお、上述したプログラムは、コンピュータシステムによる処理に適した命令の順番付けられた列からなるものであって、各種記録媒体や通信回線を介して難易度推定システムや、これを利用するユーザ等に提供されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1)全体構成
難易度推定システム1は、周知のコンピュータシステムからなるサーバ2と、1以上のカラオケ装置3それぞれとが、ネットワーク100を介して通信可能に接続されてなるものである。
【0029】
サーバ2は、サーバ全体を制御する制御部21,各種情報を記憶する記憶部23,ネットワーク100を介した通信を制御する通信部25,キーボードやディスプレイなどからなるユーザインタフェース(U/I)部27,記録メディアを介して情報を入出力するメディアドライブ29などを備えている。
【0030】
カラオケ装置3は、装置全体を制御する制御部31,演奏楽曲の伴奏内容および歌詞を示す楽曲データや映像データなどを記憶する記憶部33,ネットワーク100を介した通信を制御する通信部35,各種映像の表示を行う表示部41,複数のキー・スイッチなどからなる操作部43,マイク45からの音声の入力とスピーカ47からの音声の出力とを制御する音声入出力部49などを備えている。
(2)サーバ2による処理
以下に、サーバ2の制御部21が内蔵メモリまたは記憶部23に記憶されたプログラムに従って実行する各種処理について説明する。
(2−1)履歴蓄積処理
はじめに、いずれかのカラオケ装置3から歌唱データを受信する(s106)ことにより開始される履歴蓄積処理の処理手順を図2に基づいて説明する。
【0031】
この歌唱データは、カラオケ装置3のユーザがカラオケ装置3に対するログイン操作を行ったうえ、そのユーザが楽曲を歌唱した後で送信されてくるデータであり、その歌唱に係る音声の時系列に沿った音高の推移パターンを示すものである。また、この歌唱データは、その歌唱に係る楽曲およびユーザそれぞれの識別情報(楽曲番号,ユーザID)が付加された状態で送信されてくるものである。
【0032】
この履歴蓄積処理が起動されると、まず、その起動に際して受信した歌唱データに付加された楽曲(以降「歌唱楽曲」という)の識別情報(楽曲番号)に基づき、その楽曲において発声すべき正しい音声を示す理想データが、記憶部23における理想データ用の記憶領域にあらかじめ記憶されている複数種類の理想データの中から読み出される(s110)。
【0033】
次に、本履歴蓄積処理の起動に際して受信した歌唱データで示される音声と、上記s110にて読み出された理想データで示される音声と、を対比することにより、音声を時系列に沿って所定区間毎に分割した単位区間毎のパラメータ正確性が特定される(s130)。
【0034】
ここでは、歌唱データで示される音声における各音(本実施形態では音符)の区間毎に分割した単位区間それぞれについて、その単位区間の音声に関する歌唱パラメータが、理想データで示される音声の同じ単位区間において発声すべき音声に関する理想パラメータと対比され、これにより、単位区間毎の理想パラメータに対する歌唱パラメータの正確性(以降「パラメータ正確性」という)が特定される。
【0035】
具体的には、理想パラメータに対する歌唱パラメータの音高としての近似度合いや、音高が変化するタイミングの時間的な近似度合いが、その単位区間におけるパラメータ正確性として特定され、本実施形態では、その近似度合いが所定のしきい値以上である場合をパラメータ正確性「Yes」,しきい値未満である場合をパラメータ正確性「No」として特定するように構成されている(図3参照)。なお、この近似度合に応じた区間正確性として、「0」〜「1」の間の値を特定することとしてもよい。
【0036】
次に、本履歴蓄積処理の起動に際して受信した歌唱データに付加された楽曲番号に基づき、その楽曲番号で識別される楽曲に対応する歌唱履歴データが、記憶部23における歌唱履歴データ用の記憶領域から読み出される(s140)。この歌唱履歴データとは、楽曲における単位区間毎のパラメータ正確性を1以上のユーザそれぞれについて集計したものであり、1以上の楽曲番号それぞれに対応づけられた状態で記憶部23に記憶されている(図3参照)。
【0037】
なお、このs140の時点で該当する楽曲番号に対応するユーザの歌唱履歴データが記憶部23に記憶されていない場合、このs140では、データの実体がない(つまり集計前の)歌唱履歴データが、該当する楽曲番号に対応するものとして生成されたうえで、これが読み出される。
【0038】
そして、上記s130にて特定された単位区間毎のパラメータ正確性に基づいて、上記s140にて読み出された歌唱履歴データが更新される(s150)。
ここで、上記s140にて読み出された歌唱履歴データは、図3に示すように、単位区間毎に、その単位区間におけるパラメータ正確性が「Yes」と特定された特定回数と、楽曲が歌唱されてパラメータ正確性の特定が行われた総回数と、の比を示すものとなっている。
【0039】
そのため、このs150では、上記s130にて特定された単位区間毎のパラメータ正確性のそれぞれについて、そのパラメータ正確性が「Yes」であれば、その単位区間における特定回数および総回数の両方(分子,分母)に「1」が加算され、また、パラメータ正確性が「No」であれば、同総回数のみ(分母)に「1」が加算される。こうして、パラメータ正確性それぞれについて楽曲における単位区間毎に統計がとられ、その楽曲における単位区間毎のパラメータ正確性が集計された状態となる。
【0040】
なお、パラメータ正確性それぞれを「0」〜「1」の間の値として特定されるようにした場合、このs150では、単位区間毎にパラメータ正確性を平均化することにより、パラメータ正確性の統計をとることとすればよい。
(2−2)難易度推定処理
続いて、いずれかのカラオケ装置3から、楽曲番号を伴った要求(通知要求)を受信することにより開始される難易度推定処理の処理手順を図4に基づいて説明する。
【0041】
この通知要求は、カラオケ装置3のユーザがカラオケ装置3に対するログイン操作を行った後、歌唱すべき楽曲を指定する操作を行った場合に、そのカラオケ装置3から送信されてくるものである。
【0042】
この難易度推定処理が起動されると、まず、その起動に先立って受信した通知要求に伴う楽曲番号で識別される楽曲(以降「指定楽曲」という)につき、この指定楽曲に対応づけて記憶部23に記憶されている歌唱履歴データが読み出される(s240)。
【0043】
次に、上記s240にて読み出された歌唱履歴データで示される単位区間毎のパラメータ正確性に基づいて指定楽曲の難易度が推定される(s260)。
ここでは、歌唱履歴データで示される単位区間毎のパラメータ正確性に基づき、指定楽曲において1以上の単位区間で形成される判定対象区間(本実施形態では、1以上の小節)毎の歌唱に際しての難易度として、その判定対象区間を形成する各単位区間それぞれのパラメータ正確性の低さに応じた難易度が推定される。本実施形態では、判定対象区間を形成する各単位区間それぞれのパラメータ正確性を平均化した値(0〜1の値)が、その判定対象区間の難易度として推定される。こうして、このs260では、指定楽曲の難易度として、判定対象区間毎の難易度からなる難易度列が推定されることとなる。
【0044】
次に、上記s260にて推定された判定対象区間毎の難易度(難易度列)を示す難易度データが生成される(s270)。
そして、カラオケ装置3側で指定楽曲の演奏を行うための楽曲データが記憶部23から読み出され(s280)、この楽曲データおよび上記s270にて生成された難易度データが通知要求の送信元であるカラオケ装置3へと返信された後(s290)、本難易度推定処理が終了する。
【0045】
なお、ここで返信される楽曲データは、指定楽曲の楽曲番号,曲名および演奏時間に関するデータである楽曲情報と、ユーザが歌唱すべき旋律に関するデータであるガイドメロディと、そのカラオケ楽曲の歌詞に関するデータである歌詞情報とから構成されている。
【0046】
この楽曲通知を受信したカラオケ装置3では、その楽曲データで示される指定楽曲の演奏を開始すると共に、その演奏に伴い、難易度データで示される難易度の表示部41への表示を行うこととなる。
(3)カラオケ装置3による処理
以下に、カラオケ装置3の制御部31により実行される各種処理手順を説明する。
(3−1)楽曲演奏処理
ここで、カラオケ装置3が起動した以降、繰り返し実行される楽曲演奏処理の処理手順を図5に基づいて説明する。
【0047】
この楽曲演奏処理が起動されると、まず、ユーザにより歌唱すべき楽曲を選択するための操作が行われるまで待機状態となる(s310:NO)。 本実施形態においては、この操作に際して、カラオケ装置3に対するログインが必要となるように構成されており、こうして楽曲が選択された際には、選択された楽曲の楽曲番号と共に、その選択に際して行われたログイン操作で入力されたユーザIDが取得されることとなる。
【0048】
その後、楽曲を選択するための操作が行われたら(s310:YES)、そうして選択された楽曲(指定楽曲)の楽曲番号,および,その選択に際して行われたログイン操作で入力されたユーザIDが取得される(s320)。
【0049】
次に、上記s320にて取得された楽曲番号に基づき、この楽曲番号で識別される指定楽曲を演奏するための楽曲データをカラオケ装置3に要求するための情報として、その楽曲番号,および,これと共に取得されたユーザIDを伴う通知要求が生成され(s330)、これがサーバ2に送信される(s340)。
【0050】
この通知要求を受信したサーバ2では、この通知要求に伴う楽曲番号で識別される指定楽曲の難易度を上記難易度推定処理により推定し(図4のs260)、その結果を示す難易度データと共に、その楽曲を演奏するための楽曲データを返信してくる(同図s290)。
【0051】
こうして、上記s340で通知要求を送信した後、このサーバ2から返信されてくる楽曲データおよび難易度データが受信されたら(s350)、これら楽曲データおよび難易度データが記憶部33に記憶される(s360)。
【0052】
次に、上記s360で記憶された楽曲データで示される指定楽曲の単位区間それぞれと、同記憶された難易度データで示される判定対象区間の難易度それぞれとの対応づけが行われる(s370)。
【0053】
ここでは、まず、楽曲データで示される指定楽曲の単位区間それぞれが、難易度データで示される判定対象区間のうち、その単位区間を含む判定対象区間に分類される。そして、同一判定対象区間に分類された単位区間のうち、いずれかの単位区間(例えば、時間軸上先頭または最後尾)それぞれに、その判定対象区間の難易度が対応づけられる。このとき、単位区間に対応づけられる難易度は、各単位区間それぞれのパラメータ正確性を平均化した値(0〜1)そのものを用いればよいが、そのパラメータ正確性が低い,つまり難易度の高さを複数段階で示した値(例えば、A,B,…,Eなど)を用いてもよい。
【0054】
次に、上記s360にて記憶部33に記憶された楽曲データに基づく指定楽曲の演奏が開始されると共に(s380)、その演奏に際してマイク45から入力された音声,つまり指定楽曲を歌唱してなる音声を示す歌唱データの生成が開始される(s390)。
【0055】
このs380における指定楽曲の演奏は、従来どおり、スピーカ47からの楽曲の出力と、表示部41に対する歌詞の表示とが、その演奏に合わせて同期するように実施されると共に、上記s370にて難易度が対応づけられた単位区間の歌詞に隣接する表示領域に、その単位区間に対応づけられた難易度(つまりその単位区間を含む判定対象区間の難易度)が合わせて表示される(図6参照;難易度の高さをA〜Eで示し,かつ,時間軸上最後尾の単位区間に難易度が対応づけられた例)。
【0056】
こうして、指定楽曲の演奏が開始されて以降、その演奏が終了するまで待機状態となった後(s400:NO)、その演奏が終了したら(s400:YES)、上記s390にて開始された歌唱データの生成が終了され、その時点までに生成された歌唱データが取得される(s410)。
【0057】
そして、上記s410にて取得された歌唱データがサーバ2へと送信された後(s420)、本楽曲演奏処理が終了する。
この歌唱データを受信したサーバ2は、上述した履歴蓄積処理により歌唱履歴データの更新を行うこととなる(図2のs106〜)。
(4)作用,効果
このように構成された難易度推定システム1によれば、ユーザそれぞれが実際に歌唱した歌唱履歴のデータ(歌唱履歴データ)を楽曲毎に統合し(図2のs130〜s150)、これに基づいて指定楽曲における判定対象区間それぞれの難易度を推定したうえで、これをユーザに提示することができる(図4のs290,図5のs380)。
【0058】
歌唱履歴データは、ユーザそれぞれによる楽曲の歌唱に際して特定されたものであって、その楽曲の単位区間それぞれに対応する理想パラメータ毎に、その理想パラメータの音声が正確に発声されたかを「パラメータ正確性」という形でパラメータ化したものである。
【0059】
そのため、歌唱履歴データにおけるある単位区間のパラメータ正確性が低いということは、その単位区間における音声が正確に発声されていないことが多く、ユーザが実際に歌唱を行った結果から難易度が高いということを示している。つまり、単位区間におけるパラメータ正確性の低さに応じて、その単位区間を含む判定対象区間における難易度は高くなるといえ、上記構成では、このことをもって判定対象区間それぞれの難易度を推定することができる。
【0060】
さらに、ユーザが指定楽曲を歌唱したか否かとは無関係に難易度を推定できるため、そのユーザが指定楽曲を歌唱したことがなかった場合においても、その歌唱に際しての目安として対象判定区間それぞれの難易度を事前に提示することができる。
【0061】
また、上記実施形態においては、判定対象区間毎の難易度を指定楽曲の演奏に伴って順番に提示するように構成されているため、その難易度を確認しながら歌唱を行うことができるようになる。特に、上記実施形態では、演奏されている判定対象区間以降の判定対象区間について推定された難易度が都度提示されるため(図6参照)、それ以降に到来する判定対象区間の難易度を認識しながら歌唱を行うことができる。
【0062】
また、上記実施形態においては、ユーザが楽曲を歌唱してなる音声を示す歌唱データが、カラオケ装置3側で実際に歌唱が行われる都度取得されるように構成されている(図5のs410,420,図2のs106)。そのため、ユーザにより実際の歌唱が行われる都度、その歌唱に係る音声を取得し、これに基づいて歌唱履歴(パラメータ正確性)を特定することができる。
【0063】
また、上記実施形態においては、判定対象区間を形成する各単位区間それぞれのパラメータ正確性を平均化してなるパラメータ正確性に基づいて、このパラメータ正確性の低さに応じた判定対象区間の難易度を推定することができる(図2のs150)。
(5)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0064】
例えば、上記実施形態においては、判定対象区間毎の難易度をメッセージとしてカラオケ装置3の表示部41に表示させて提示するように構成されている。しかし、この難易度は、それを示すメッセージをスピーカ47から出力させるなど別の手法で提示するように構成してもよい。
【0065】
また、上記実施形態においては、判定対象区間毎の難易度を指定楽曲の演奏に伴って順番に提示するように構成されている。しかし、この難易度は、指定楽曲の演奏とは無関係に提示してもよいし、また、各判定対象区間におけるものを一括して提示することとしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、ユーザが楽曲を歌唱してなる音声を示す歌唱データが、カラオケ装置3側で実際に歌唱が行われる都度取得されるように構成されている。しかし、この歌唱データは、例えば、サーバ2と通信可能に接続された外部装置や、記録メディアを介して取得されることとしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、難易度推定システム1として、サーバ2およびカラオケ装置3が協調して動作するように構成された場合を例示した。しかし、この難易度推定システム1は、カラオケ装置3側に実装された機能をサーバ2に実装させることにより、このサーバ2単体からなる構成としてもよい。
【0068】
また、上記実施形態におけるサーバ2は、このサーバ2による処理の一部,例えば履歴蓄積処理の一部または全部や難易度推定処理の一部または全部を他の装置と協調して実施することにより、全体としてサーバ2として機能するようにできることはいうまでもない。
(5)本発明との対応関係
以上説明した実施形態において、図2のs130が本発明における履歴特定手段であり、同図s150が本発明における履歴統合手段であり、図4のs260が本発明における難易度推定手段であり、図4のs290,図5のs380が本発明における難易度提示手段であり、図5のs310が本発明における楽曲指定手段であり、同図s370が本発明における難易度対応付け手段であり、同図s380が本発明における楽曲演奏手段であり、同図s390,s410が本発明における音声取得手段である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】カラオケシステムの全体構成を示すブロック図
【図2】履歴蓄積処理を示すフローチャート
【図3】パラメータ正確性,および,歌唱履歴データを示す図
【図4】難易度推定処理を示すフローチャート
【図5】楽曲演奏処理を示すフローチャート
【図6】難易度が提示される状態の例を示す図
【符号の説明】
【0070】
1…難易度推定システム、2…サーバ、21…制御部、23…記憶部、25…通信部、27…ユーザインタフェース部、29…メディアドライブ、3…カラオケ装置、31…制御部、33…記憶部、35…通信部、41…表示部、43…操作部、45…マイク、47…スピーカ、49…音声入出力部、100…ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが楽曲を歌唱してなる音声を時系列に沿って所定の区間毎に分割した単位区間それぞれについて、該単位区間の音声に関する歌唱パラメータを、該単位区間において発声すべき正しい音声に基づく理想パラメータと対比することにより、その楽曲における単位区間毎の前記理想パラメータに対する前記歌唱パラメータの正確性(パラメータ正確性)を、その楽曲の歌唱履歴として特定する履歴特定手段と、
該履歴特定手段によりそれぞれ特定された1以上の歌唱履歴のうち、同じ楽曲の歌唱履歴について、各単位区間のパラメータ正確性が平均化されるように統計をとることにより、楽曲毎の歌唱履歴に統合する履歴統合手段と、
ユーザにより楽曲が指定された際に、前記履歴統合手段により統合された歌唱履歴のうち、その指定された楽曲(指定楽曲)に対応する歌唱履歴における単位区間毎のパラメータ正確性に基づいて、該指定楽曲において1以上の単位区間で形成される判定対象区間それぞれを歌唱する際の難易度を推定する難易度推定手段と、
該難易度推定手段により推定された前記判定対象区間毎の難易度をユーザに提示する難易度提示手段と、を備えており、
前記難易度推定手段は、前記指定楽曲に対応する歌唱履歴における単位区間毎のパラメータ正確性に基づき、前記判定対象区間を形成する各単位区間それぞれのパラメータ正確性の低さに応じた難易度を、その判定対象区間を歌唱する際の難易度として推定する
ことを特徴とする難易度推定システム。
【請求項2】
ユーザに歌唱すべき楽曲を指定させる楽曲指定手段と、
該楽曲指定手段により指定させた楽曲を前記指定楽曲として、該指定楽曲の演奏を行う楽曲演奏手段と、を備え、
前記難易度提示手段は、前記楽曲演奏手段により指定楽曲の演奏が開始されて以降、前記難易度推定手段により推定された難易度のうち、その演奏されている指定楽曲の前記判定対象区間について推定された難易度を前記指定楽曲の演奏に伴って提示する
ことを特徴とする請求項1に記載の難易度推定システム。
【請求項3】
ユーザに歌唱すべき楽曲を指定させる楽曲指定手段と、
該楽曲指定手段により指定させた指定楽曲を示す楽曲データに基づいて、該指定楽曲の演奏を行う楽曲演奏手段と、
該楽曲演奏手段により指定楽曲の演奏が行われる過程においてユーザが歌唱してなる音声を示す歌唱データを取得する音声取得手段と、を備え、
前記履歴特定手段は、前記音声取得手段により取得された歌唱データで示される音声に基づいて歌唱履歴を特定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の難易度推定システム。
【請求項4】
前記難易度推定手段は、前記指定楽曲において1以上の単位区間で形成される判定対象区間それぞれを歌唱する際の難易度として、該判定対象区間を形成する各単位区間それぞれのパラメータ正確性を平均化してなるパラメータ正確性の低さに応じた難易度を推定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の難易度推定システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の全ての手段として機能させるための各種処理手順をコンピュータシステムに実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−85658(P2010−85658A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254028(P2008−254028)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】