説明

難燃剤の製造方法

【課題】 80%までの充填剤を含んでいても容易に加工しうるポリマー組成物及び被覆する方法と比較して、単純かつ費用効果が高い製造方法を提供すること。
【解決手段】 a)熱可塑性物質および/または架橋エラストマーまたは架橋性エラストマー20〜60重量%、および b)難燃剤として、次の物性値を有する水酸化アルミニウム40〜80重量%;BET法による比表面積:3〜5mg/g、平均粒度:d50 1.0〜1.5μm、残留湿度:0.1〜0.4%、吸油量:19〜23%、吸水量:0.4〜0.6ml/g または、次の物性値を有する水酸化アルミニウム40〜80重量
%;BET法による比表面積:5〜8mg/g、平均粒度:d50 0.8〜1.3μm、残留湿度:0.1〜0.6%、吸油量:21〜25%、吸水量:0.6〜0.8ml/gを
含むことを特徴とする難燃性ポリマー組成物。および沈降および濾過により得られた平均粒子径が0.8〜1.5μmである濾過湿潤水酸化アルミニウムを、粒子径分布を大きく変えることなく、BET表面積を少なくとも20%増加させるような条件で、加熱空気乱気流下で粉砕乾燥する難燃剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリマー組成物および難燃剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設業、家具製造業、輸送、電気・電子工業の分野では合成樹脂材料が用いられる。ポリマーは、多くの用途において国内および国際的な難燃剤標準に従わなければならない。ほとんどのポリマーは燃えやすいので、難燃性の材料として使用できるように改質・変性しなければならない。一般的に、このような改質・変性は有機系あるいは無機系の難燃剤を添加することによって達成される。多数の難燃剤の中で金属水化物、特に、アルミニウムの水化物が非常に重要なものとして注目されてきた(G. Kirschbaum, Kunststoffe, 79, 199, pp.1205-1208およびR. Schmidt, Kunststoffe, 88, 1998, pp.2058-2061)。
【0003】
水酸化アルミニウムの難燃剤効果は、200〜400℃で起こる化学的に結合された水の熱的な解離に基づくものである。このような水酸化物の吸熱分解の過程でエネルギーが消費され、その結果として、合成樹脂の表面が冷却される。その上、放出された水蒸気によって、ポリマーの可燃性有機分解生成物が希釈される。残留する酸化アルミニウムが重合体マトリックスの燃焼時に生成する多環芳香族化合物を吸収する。これらの化合物は黒煙の成分であるので、水酸化アルミニウムは火災に際して煙の濃度を低減するのに貢献する。従って、毒性の無い、ハロゲンを含まない水酸化アルミニウムを使用することによって煙の発生量が低い、ハロゲンを含まない重合体化合物を製造することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
問題は、難燃剤材料に関する種々の規制に従うためには、大量の水酸化アルミニウムをプラスチックに添加しなければならないことである。このような大量の水酸化アルミニウムによって、押出成型等の難燃性重合体混合物の処理プロセスが困難なものとなり、製品の機械的性質が損なわれることもある。
【0005】
銅線を被覆する過程あるいはケーブル構造体に外装を施す過程で押出速度を高めることはケーブル生産プロセスの重要なコスト要因である。標準的な電気・機械的性質と難燃性の要求事項を満たし、しかも高速で押出成型することのできる、水酸化アルミニウムの沈降微粒子を含むポリマー組成物は、ハロゲンを含まない難燃性のケーブルが代替技術よりも高い市場占有率を得るために特に重要な材料である。
【0006】
更なる改良を達成する1つの可能性として、水酸化アルミニウムの表面に有機添加物、例えばシランあるいはチタン酸塩の層を存在せしめる方法が挙げられる。被覆された水酸化アルミニウムが熱可塑性物質と混合することにより押出速度が更に高められる。
【0007】
本発明の目的は、標準的な水酸化アルミニウムの沈降微粒子を大量に含み、上述した欠点がなく、しかも80%までの充填剤を含んでいても容易に加工しうるポリマー組成物を提供することにある。被覆する方法と比較して、生産方法は単純で、かつ費用効果が高い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、特別な粉砕乾燥プロセスで製造される水酸化アルミニウムの沈降微粒子を用いることによって達成された。粉砕乾燥装置は、剛性シャフト上に強固に搭載された高速で回転するローターにより構成される。ローターの回転運動と高速の空気流が加熱空気
を極度の渦巻状に変換し、乾燥物質を巻き込んで高度に分散させることにより微粒子化し、大きな表面積が形成される。完全に乾燥した後、水酸化アルミニウムの粒子は乱気流により粉砕乾燥機外に送られ、加熱空気と蒸気から分離される。ローターの周速は40〜140m/sec、乾燥に用いる加熱空気の温度は150〜450℃である。従来公知の粉砕乾燥機を用いることが出来る(例えば、Lueger, Lexikon der Technik, volume 48, p.394参照)。
【0009】
このようにして得られた超微粒水酸化物の粉末は油分の吸収量が極めて少ないという特徴を有する。市販の製品と比較すると油分の吸収量は少なくとも20%は低減している。このことは、匹敵する粒度を有する他の製品のみならず、BET法(ブルナウアー−エメット−テラー法)で測定される比表面積がより大きな他の製品との比較においても当てはまる。
【0010】
本発明の水酸化アルミニウムの場合、予期されたギブサイトの結晶構造の変更に加えて、X線回折装置の走査によってベーマイトの含有量が約1%であることが確認された。これは粉砕乾燥のために選択された空気の温度が270℃以上の場合である。比較のために用いられる市販の水酸化アルミニウム微粒結晶は通常純粋なギブサイトである。本発明の製品では、ベーマイトは主として粒子の表面に存在する。
【0011】
吸水率はボーマンの方法(H. Baumann, Fette, Seifen, Anstrichmittel, 68, 1966, pp.741-743)により測定した。この方法は極性と親水性に従って鉱物と鉱物質充填材料を
区別するために用いられた。特に、この方法は有機添加物を含む充填剤物質が十分に親水化されているかどうかを測定することによって、該無機充填剤の表面被覆状態を評価するのに用いられる。質量単位当たりの水吸収量の大きい充填剤物質は水吸収量のより小さい物質より親水性が大である。本発明の難燃剤を市販の標準的な製品と比較した。本発明の水酸化アルミニウムの吸水率は市販の相当品よりもそれぞれ35%および27%低い。
【0012】
上記の方法により製造される製品は、これまでの市販品よりも容易にポリマーに取り込むことができ、かつその混合物は従来の市販品との混合物よりも優れたレオロジー特性を有する。使用された鉱物充填剤材料はこれまでに用いられた充填剤材料よりも疎水性が大であることが確認された。驚くべきことに、この新しい充填剤材料は重合体マトリックスとの両立性の点でもより優れている。油分の吸収量が低いほど、鉱物表面を湿らせるのに必要とされるポリマーの量は少なくて済む。鉱物表面を湿らせるのに用いられるポリマーの量が少ないほど、重合体マトリックス内部で互いに外れるポリマー鎖の数が増加する。最終的な分析において、油分吸収量の小さな充填剤物質とのポリマー混合物は油分吸収量の大きな充填剤物質とのポリマー混合物よりも低い粘度を有することが確認された。このことは、完全に硬化する前のポリマー溶融物および常温で液状の反応性樹脂について、充填剤物質の含有量が80%以下において当てはまる。
【0013】
このような特徴を有する製品を不飽和ポリエステル樹脂(以下、UP樹脂という。)と混合すると、その混合物は市販の比較製品を同じ濃度で含む混合物よりはるかに低い粘度を有する。したがって、本発明の製品は、より高い濃度で充填剤物質を含んでいるにもかかわらず、極めて高い流動性を有する混合物を製造するのにも好適である。相対粘度で比較した場合、50重量%の充填剤物質を含む本発明の製品の粘度は標準的な製品の粘度よりおよそ60%低い。
【0014】
前述の方法に従って乾燥した水酸化アルミニウムを溶融法によって熱可塑性ポリマーのマトリックスに配合することによって得られる組成物は、期待された低い溶融粘度(メルトフローインデックスとして決定される)を有する。この効果は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」または「EVA共重合体」と言う。)とアミノシラン(実施
例4)についての濃度系列試験によって示されるように、標準的な低分子のカップリング剤を使用するか否かにかかわらず達成される。この試験は充填剤物質とポリマーの割合を一定にして、アミノシランの配合比を変えて行なった。本発明の製品を市販の標準的な製品と比較した。予期されたように、本発明の製品は全領域にわたってより高いメルトフローインデックスを示した。標準的な製品と比較した場合のメルトフローインデックスの増加は20〜40%であった。
【0015】
ハロゲンを含まない難燃性ケーブル被覆・絶縁材料としての用途向けに技術的に重要な意味を有する単純なポリマー基材混合物としてのポリマー組成物を、上記の水酸化アルミニウムを用いて製造した。得られたポリマー組成物は、優れた機械的性質と耐炎性に加えて、良好なメルトフロー特性を有するものであった。このような高いメルトフローインデックスと粘度とは、市販の標準的な超微粒結晶性水酸化アルミニウム製品と比較した場合、特に顕著である。
【0016】
高濃度の充填剤配合量を有する組成物のこのように著しく改善されたメルトフロー特性は、この難燃性物質を導電体に適用する際に高い押出速度を達成するための基本的な前提条件となる。2つのプラスチック組成物を銅導電体に押し出すことによって得られた結果を実施例9に示す。押出機のスクリュー速度と押出速度を一定にして本発明の製品を含む組成物と市販の製品を含む組成物とを処理する場合、前者の方が溶融圧力と溶融温度が低くなることがわかった。このことは、押出加工作業の作業者にとって絶縁電線やケーブルを製造する際にスクリュー速度を上げることによって本発明の製品を含む組成物をより大きな押出・抽出速度で処理可能であることを意味する。
【0017】
低い溶融粘度と標準的な高充填密度に関して言えば、より優れた難燃性ポリマー組成物を得るために充填剤の配合量を更に増加せしめることも可能である。この場合、溶融粘度と機械的性質は通常のレベルに保たれる。これは標準的な製品では不可能である。
【0018】
以下、いくつかの実施例を参照しての本発明を更に詳しく説明する。実施例1および2は本発明の製品およびその製法に関する。実施例は3〜9は本発明の製品の利点を証明するための比較例を含む。
【0019】
実施例1および2は本発明の製品の製法を記載する。
【実施例1】
【0020】
比表面積約3m/g、残留湿度約50重量%の水酸化アルミニウム微結晶の濾過ケーキを従来の送給手段を用いて粉砕乾燥機に導入した。固形物の供給量は200kg/hであり、温度270〜290℃で加熱空気を加えた。空気の供給量は5000Bm/hであった。ローターの回転速度を80m/sに設定し、乾燥品を十分な処理容量を有するフィルターを用いて分離し、ロータリーバルブを経由して取り出した。
【0021】
表1は、このようにして得られた粉体の主要な特性を、超微粒水酸化アルミニウムを基材とする3種の市販の難燃剤の特性と比較して示す。比較品Bは、本発明品Aと同じ濾過湿潤水酸化物超微粒子を基材として得られた製品である。
【0022】
本発明品Aと比較品B、C、Dの吸水量をボーマン法を用いて測定した。測定装置および測定法は、H. Baumann, GIT-Fachzeitschrift fur das Laboratorium, Heft 6, 6. Juni 1967, pp.540-542およびH. Baumann, Fette, Seifen, Anstrichmittel, 68, 1966, pp.741-743に記載されているところに従った。
【0023】
図1は難燃剤の吸水率の経時変化を示す。5〜15分後に製品は水で飽和される。その
後の試験期間中には吸水率は増加しない。本発明品Aの吸水率は比較品よりも少なくとも36%低い。この値は油吸収量の値とまったく同じである。本発明品Aが21%(1gの充填剤物質に対してオレイン酸0.21g)で飽和されるのに対して、市販品は27〜35%で飽和される。
【0024】
【表1】

【0025】
図1は、本発明品Aと市販の製品B、CおよびDのボーマン法による水吸収率を示す。
【実施例2】
【0026】
比表面積約5m/g、残留湿度約53重量%の水酸化アルミニウム微結晶の濾過ケーキを、従来の送給手段を用いて粉砕乾燥機に導入した。固形物の供給量は200kg/hであり、温度250〜280℃で加熱空気を加えた。空気の供給量を5000Bm/hとし、ローターの回転速度を2000〜3000rpmに設定した。乾燥品を十分な処理容量を有するフィルターを用いて分離し、ロータリーバルブを経由して取り出した。
【0027】
表2は、このようにして得られた粉体Eの主要な性質を市販品Fの性質と比較して示す。更に、表2は、本発明品Eと同じ濾過湿潤水酸化物超微粒子を基材として用いるが、製法は市販品Fの製法に従って製造された製品Gのデータを示す。
【0028】
本発明品E、市販品F、ならびに製品Gの吸水量をボーマン法を用いて測定した。図2は2つの充填剤の吸水率の経時変化を示す。5〜15分後に製品は水で飽和される。その後の試験期間中吸水率は増加しない。本発明品Eの吸水率は製品Fおよび製品Gの吸水率よりも少なくとも27%低い。この値は油吸収量の値とまったく同じである。本発明品Eは24%で飽和されるのに対して、製品Fは34%である。製品Gも31%で飽和され、本発明品Eよりおよそ30%高い吸油量指数を示した。
【0029】
【表2】

【0030】
図2は、本発明品Eと比較の製品FおよびGのボーマン法による水吸収率である。
【実施例3】
【0031】
本発明品Aと比較品B、CおよびDをPalapregP17(BASF社製、不飽和ポリエステル樹脂)と混合した。IKA−RE 166型の攪拌機を用いて充填剤物質を添加した
。等量のPalapregP17と充填剤物質とを3500rpmで3分間導入し、その後5500rpmで2分間攪拌することにより、充填剤物質含有量が50重量%である細分散混合物を製造した。このようにして得られた充填剤含有樹脂を22℃に2時間保持し、それらの粘度をブルックフィールドRVT粘度計を用いて回転数20rpm(錘6を使用)で測定した。これらの結果を表3に示した。
【0032】
【表3】

【0033】
製品Aの粘度が最小であり、極端に低い。BとCは3倍の粘性を有し、製品Dは粘度が高すぎて、使用した粘度計では測定できなかった。
【実施例4】
【0034】
本発明品Aと比較品を酢酸ビニル含有量が19重量%のEVA共重合体と混合した。充填剤物質の含有量を一定(61.3重量%)に保ち、カップリング剤として用いたアミノシラン(デグッサAG社製、ダイナシランAMEO)の量を変化させた。混合はLDUK1.0型(ワーナー・プフライデレル社製)の分散混練機を用いて行った。メルトフローインデックスはASTM D1238に準拠したメルトフロー・テスター 6942(1
90℃/21.6kg)を用いて測定した。図3は、このようにして測定されたメルトフローインデックスの関係を示す図である。
【0035】
図3は、アミノシラン含有量とMFI値の関係である。
【0036】
全領域にわたって製品Aが高いMFI値を示した。アミノシラン含有量の増加とともに製品A、B、CおよびDのMFI値は平行関係を保ちつつ下降した。
【0037】
実施例5〜10はユーザーで好適に使用される熱可塑性のプラスチック組成物に関連して得られた試験結果を要約する。
【実施例5】
【0038】
酢酸ビニル含有量が19重量%のEVA共重合体を基材とするポリマー組成物の組成と主要なパラメーターとを表4に示す。比較に用いた難燃剤は、BETに従って測定した比表面積がおよそ4m/gである超微粒水酸化アルミニウムの結晶である。市販の水酸化アルミニウム3種を本発明品との比較に使用した。
【0039】
混合物はLDUK1.0型(ワーナー・プフライデレル社製)の分散混練機を用いて製造した。ポリスタット 300S型のシュワベンタンプレス(Schwabenthan press)を用
いて圧縮成型したプレートから後の試験に用いる試験片を切り出した。ティラ試験(Tiratest)2705型の引張試験機を用いてDIN 53504に準拠した引張試験を行った
。ASTM D1238に準拠したメルトフローインデックスをメルトフロー・テスター6942によって測定し、ISO4589(ASTM D2863)に準拠した酸素インデックスをスタントンレッドクロフト社製のFTAを用いて測定した。
【0040】
【表4】

【0041】
エスクロンUL00119はエクソンモービル社製のEVA共重合体である。
【0042】
ダイナシランAMEOはデグッサ社によって生産されたアミノシランである。
【0043】
引張強さ−DIN53504により測定した応力歪みより求めた。
【0044】
破断伸び率−DIN53504により測定した応力歪みより求めた。
【0045】
LOI=ISO4589による酸素指数。
【0046】
MFI=ASTM D1238によるメルトフローインデックス。
【0047】
本発明品Aが比較したすべての製品中最も良い値を示すことが確認された。非常に良好な機械的性質に加えて、処方4.1のメルトフローインデックスは比較品よりも少なくとも35%高い。
【実施例6】
【0048】
酢酸ビニル含有量が26重量%のEVA共重合体を基材とするポリマー組成物の組成と主要なパラメーターとを表5に示す。比較に用いた難燃剤は、BETに従って測定した比表面積が約4m/gの超微粒水酸化アルミニウムの結晶である。市販の水酸化アルミニウム3種を本発明品との比較に使用した。
【0049】
組成物および試験標本を実施例5と同様な方法により作製した。
【0050】
この処方においても、本発明の水酸化アルミニウムはそれまでで最高のメルトフローインデックスを示した。標準品と比較して、増加率は少なくとも25%であった(組成物5.1を組成物5.2〜5.4と比較)。
【0051】
【表5】

【0052】
エスクロンUL00226はエクソンモービル社製のEVA共重合体である。
【実施例7】
【0053】
酢酸ビニル含有量が19重量%のEVA共重合体を基材とするポリマー組成物の組成と
主要なパラメーターとを表6に示す。この実施例では、BET法で測定した比表面積が約6m/gである超微粒水酸化アルミニウムの結晶を比較に用いた。本発明の製品を実施例2に記載の製法によって調製し、市販の水酸化アルミニウムとの比較を行った。
【0054】
組成物および試験標本を実施例5と同様な方法により作製した。
【0055】
この実施例においても、本発明の製品Eは優れたメルトフローインデックスを示した。本発明品Eは、破断伸び率が比較品に比べて良好である上に、測定条件に依存するものの、MFI値は少なくとも68%増加していた。
【0056】
【表6】

【実施例8】
【0057】
酢酸ビニル含有量が26重量%のEVA共重合体を基材とするポリマー組成物の組成と主要なパラメーターとを表7に示す。この実施例では、BET法で測定した比表面積が約6m/gである実施例7の2種類の超微粒水酸化アルミニウムの結晶を比較した。
【0058】
組成物および試験標本を実施例5と同様な方法により作製した。
【0059】
この実施例においても本発明品Eは良好な機械的性質、高いLOI値、および高いメルトフローインデックスを示した。
【0060】
【表7】

【実施例9】
【0061】
PE/EVA(酢酸ビニル含有量が26重量%のEVA)混合物を基材とするポリマー組成物の組成と主要なパラメーターとを表8に示す。比較に用いた難燃剤は、BETに従って測定した比表面積が約4m/gの超微粒水酸化アルミニウムの結晶である。実施例4および実施例5で用いた市販の水酸化アルミニウム3種を本発明品との比較に使用した。
【0062】
組成物および試験標本を実施例5と同様な方法により作製した。
【0063】
この組成物の評価結果からも上記実施例と同じくメルトフローインデックスの増大を確認することが出来た。
【0064】
【表8】

【0065】
LL1004YBはエクソンモービル社製のLLDPEである。
【0066】
シルクエスト(Silquest)FR−693はOsiスペシャルティー社製のビニルシランエステルである。
【0067】
シルクエストPA−826はビニル変性ポリジメチルシロキサンである。
【0068】
インターロックス(Interox)TMCH−75−ALはペロキシド・ケミー(Peroxid Chemie)社製のターシャリーアミルペルオキシピバレートの75%の脂肪族炭化水素溶液
である。
【0069】
イルガノックス(Irganox)1010はチバスペシャルティー社製の熱安定剤(ペンタ
エリスリトールテトラキス3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートである。
【実施例10】
【0070】
以下の試験では、表8の中で最良の比較値を示した製品を比較品として用いた。
【0071】
表9には、実施例9の方法を修正した方法により製造した処方8.1および8.2の組成物の応力−歪み試験の結果およびメルトフローインデックスを示す。
【0072】
この例では、ポリマー混合物はブスコ混練機(Buss-ko-kneader)のMDK/E46−
11Dを用いて製造した。単一スクリュー押出機(ED30−GL、エクストルデクス(Extrudex)製)を用いて製造された押出片をパンチで切り出すことによって機械試験用の試験片を得た。
【0073】
この製法で得られた製品は、機械的性質およびメルトフローインデックスともに表7に示した値よりも改善されたものであった。この例においても、本発明品を含む組成物の高
いMFI値は特筆すべきものであった。
【0074】
【表9】

【0075】
このようにして製造された組成物の溶融・レオロジー特性をキャピラリーレオメーター(ボーリン社製、ローザンドRH7−2、測定温度150℃)を用いて測定した。図4は、せん断速度とせん断粘度(せん断粘度)との関係を示す。
【0076】
図4は、表8に列挙する組成物のせん断粘度である。
【0077】
MFI値と同様に、本発明品Aの組成物はせん断速度の全領域において比較品Bよりも低い溶融粘度を有する。
【0078】
更に、両組成物を断面積0.5mmの細い銅線上に押し出し、塗布した。この試験はBMスクリュー(Brevet Mailler、Maillefer特許)を備えたフランシス・ショウ抽出機
(Francis Shaw Extruder)を使用して行なった。 主要なパラメーターを表10に列挙する。
【0079】
抽出温度と押出温度が同一の場合、本発明の水酸化アルミニウムを含む組成物は比較品よりも低い圧力と溶融温度で銅線に塗布することが出来る。回転スクリュー速度を30rpm以上に速め、溶融圧力と溶融温度を、例えば比較品をBを含む組成物を回転スクリュー速度を30rpmで処理するときに達成される溶融圧力と溶融温度にまで上げることによって、絶縁銅線の抽出速度を増加させることが可能である。しかしながら、この試験を行った試験装置はこのような抽出速度を達成できるようには設計されていなかった。
【0080】
【表10】

【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明品Aと市販の製品B、CおよびDのボーマン法による水吸収率を示す。
【図2】本発明品Eと比較の製品FおよびGのボーマン法による水吸収率を示す。
【図3】アミノシラン含有量とMFI値の関係である。
【図4】表9に示す組成物のせん断速度である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)熱可塑性物質および/または架橋または架橋性エラストマー20〜60重量%、および
b)難燃剤として、次の物性値を有する水酸化アルミニウム40〜80重量%
BET法による比表面積:3〜5mg/g
平均粒度:d50 1.0〜1.5μm
残留湿度:0.1〜0.4%
吸油量:19〜23%
吸水量:0.4〜0.6ml/g
または、次の物性値を有する水酸化アルミニウム40〜80重量%
BET法による比表面積:5〜8mg/g
平均粒度:d50 0.8〜1.3μm
残留湿度:0.1〜0.6%
吸油量:21〜25%
吸水量:0.6〜0.8ml/g
を含むことを特徴とする難燃性ポリマー組成物。
【請求項2】
前記b)成分の水酸化アルミニウムが、0.5〜1.5%のベーマイトを含むギブサイト構造であることを特徴とする請求項1記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項3】
前記a)成分を構成するポリマーが、ポリオレフィン、ビニルポリマー、共重合体あるいはターポリマーとグラフト重合ポリメタクリレート、天然または合成ゴム、これらの混合物であることを特徴とする請求項1記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項4】
次の物性値を有する水酸化アルミニウム
BET法による比表面積:3〜5mg/g
平均粒度:d50 1.0〜1.3μm
残留湿度:0.1〜0.4%
吸油量:19〜23%
吸水量:0.4〜0.6ml/g
または、次の物性値を有する水酸化アルミニウム
BET法による比表面積:5〜8mg/g
平均粒度:d50 0.8〜1.5μm
残留湿度:0.1〜0.6%
吸油量:21〜25%
吸水量:0.6〜0.8ml/g
の製造方法であって、沈降および濾過により得られた平均粒子径が0.8〜1.5μmである濾過湿潤水酸化アルミニウムを、粒子径分布を大きく変えることなく、BET表面積を少なくとも20%増加させるような条件で加熱空気乱気流下で粉砕乾燥することを特徴とする難燃剤の製造方法。
【請求項5】
剛性シャフト上に強固に搭載されたローターが周速40〜140m/sで回転し、かつ150〜450℃の加熱空気が流速3000〜7000Bm/h、レイノルズ因子3000以上で循環する粉砕乾燥機を使用して行うことを特徴とする請求項4記載の難燃剤の製造方法。
【請求項6】
前記濾過湿潤水酸化アルミニウムの凝集物を一次結晶に変換するため、前記ローターを周速60m/s以上で運転することを特徴とする請求項4または5に記載の難燃剤の製造方法。
【請求項7】
流速5000Bm/h以上、温度270℃以上の加熱空気によるエネルギーの導入およびローターの周速70m/s以上の運転が、表面上ギブサイト粒子をベーマイトに変換するために十分な条件であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項記載の難燃剤の製造方法。
【請求項8】
溶融物のメルトフローインデックスが標準的な水酸化アルミニウムに較べて少なくとも20%大きい、押出形成法による被覆導電体およびケーブルの製造における請求項1〜3の難燃性ポリマー組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−168589(P2010−168589A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−93833(P2010−93833)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【分割の表示】特願2003−356040(P2003−356040)の分割
【原出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【出願人】(503379760)ナバルテック アー・ゲー (5)
【Fターム(参考)】