説明

難燃性の導電性EMI遮蔽物質及びその製造方法

【課題】電磁気遮蔽用途のために適するz軸伝導率又は体抵抗率を示す難燃性の導電性EMI遮蔽物質及びその製造する方法を提供する。
【解決手段】内部隙間を有する多孔性物質から構成され、該隙間の内部表面が導電性であり、かつ有効量の難燃剤を含むものであり、該隙間の内部表面には、少なくとも一つの金属化された伝導性層が配置されている。伝導性層を形成する金属としては、銅、ニッケル、銀、バラジウム、白金、ニッケルメッキされた銀、アルミニウム、スズ、及びこれらの合金が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性の導電性EMI遮蔽物質に関し、更に詳しくは、遮蔽性の改善された保持力を示すところの難燃性の導電性EMI遮蔽物質に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の操作における普通の問題は、装置の電子回路構成内での電磁放射線の発生である。そのような放射線は、「電磁干渉」即ち「EMI」をもたらし、そして従って、ある接近を伴う他の電子機器の操作を妨害する。
【0003】
EMIの効果を改善するための通常の解決策は、EMIエネルギーを吸収及び/又は反射することができる遮蔽物質の開発であった。これらの遮蔽物質は、EMI発生源内でEMIを特定部位に集め、かつEMI発生源に最も近い他の機器を絶縁するために使用される。実際、米国において、EMI遮蔽物質は、EMI遮蔽物質として販売されるためにコマーシャルFederal Communication Commission(FCC)EMC規制に従わなければならない。
【0004】
更に、電子機器において使用されるべき全てのEMI遮蔽物質の目的は、それらが、FCC要求に従わなければならないばかりではなく、かつ難燃性のためのUnderwriters Laboratories(UL)標準に合致しなければならないことである。この文脈において、EMI遮蔽物質は、EMI遮蔽要求に合致するために必要な遮蔽性を傷つけることなく、難燃性を与えられること、即ち、UL Std. No.94, 党Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances媒 (1991年)に基づくV-0の等級を達成することが必要である。
【0005】
いくつかの試みが、難燃性を示すところのEMI遮蔽物質(即ちガスケット)を提供するためになされた。典型的には、EMIガスケットは、次いで硬化されるところの高粘性の難燃性物質の使用により明確な難燃層を備えられる。例えば、伝導性のファブリックオンフォームEMIガスケットに向けられるところの米国特許第4,857,668号明細書は、明確な難燃性のウレタン層が伝導性布帛の内側に配置されていることを開示している。同様に、伝導性のファブリックオンフォームEMIガスケットにまた向けられるところの米国特許第6,248,393号明細書は、高粘性の難燃組成物での布帛の範囲を定めていない浸透により伝導性布帛の内側に明確な難燃層を形成することを開示している。該布帛の範囲を定めていない浸透は、ガスケットの外側が実質的に被覆されずそして従って伝導性のままであることを可能にする。しかし、布帛の被覆された部分は難燃性被覆のために導電性を失う。このように、これらのガスケット物質が表面抵抗性を示す一方、これらの物質により示される任意のz軸伝導率又は体抵抗率は難燃性のために急激に減じられるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、難燃性であり、かつ電磁気遮蔽用途のために適するz軸伝導率又は体抵抗率を示すところのEMI遮蔽物質のための技術における必要性がある。従って、本発明の目的は、z軸伝導率又は体抵抗率を示すところの難燃性のEMI遮蔽物質及びこれらの物質を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内部隙間を有する多孔性物質を含む難燃性の導電性EMI遮蔽物質を提供し、ここで、該隙間の内部表面が導電性であり、かつ有効量の難燃剤を含む。好ましくは、該隙間の表面は、少なくとも一つの伝導性層が内部表面に配置されている故に導電性であり、ここで、金属化された層がより好ましい。金属化された層のための金属は、銅、ニッケル、銀、バラジウム、白金、ニッケルメッキされた銀、アルミニウム、スズ、及びこれらの合金を含む。一の実施態様において、難燃剤は、遮蔽物質の隙間内に配置された粒子の形態である。この実施態様において、該粒子は好ましくは、隙間により規定される合計内部表面積の約30%より多くない部分を占有し、約20%より多くないことがより好ましくは、かつ約10%より多くないことが更に好ましい。他の実施態様において、難燃剤は、隙間の内部表面上に被覆の形態で存在する。この実施態様において、被覆は好ましくは、約12ミクロン以下の厚みを有し、約5ミクロン以下がより好ましく、かつ約2ミクロン以下が更に好ましい。これらの実施態様のいずれにおいても、遮蔽物質は好ましくは、塞がれた隙間を実質的に有しない。好ましい多孔性物質は、全体的に少なくとも一つの金属化された層を有するオープンセルフォームであり、これは、任意的に多孔性スクリムを含み得る。オープンセルフォームの例はポリウレタンフォームである。
【0008】
本発明の遮蔽物質は有利に体抵抗率及び難燃性を示す。該遮蔽物質は好ましくは、約20オーム・cm以下の体抵抗率を有する。約1オーム・cm以下がより好ましく、かつ約0.5オーム・cm以下が更に好ましい。有効量の難燃剤は好ましくは、少なくとも一つの下記のUL94燃焼性等級、即ち、少なくともHF‐1、少なくともHB、少なくともV2、少なくともV1又はV0を持つ遮蔽物質を提供する。使用されるべき難燃剤の例は、リン(III)に基づいた難燃剤、例えば、リン酸アンモニウム塩である。他の実施態様において、該難燃剤はハロゲンを含まない。難燃剤は任意的に、ポリマー状担体、例えば、水溶性又は水分散性ポリマーを含み得る。最後に、本発明の遮蔽物質は、少なくとも約65デシベルの平均遮蔽効果を示す。
【0009】
本発明はまた、上記の遮蔽物質を製造する方法を提供する。該方法は、その内部表面が導電性であるところの内部隙間を有する多孔性物質を難燃剤で含浸して、該隙間の内部表面上に有効量の難燃剤を与えることを含む。難燃剤は好ましくは水性組成物の形態であり、これは任意的に、ポリマー状担体、例えば、水溶性又は水分散性ポリマーを含み得る。好ましくは、水性組成物のための溶媒は、水及び水混和性の有機溶媒であり、かつ任意的に、水と混和しない有機溶媒を含まないことができる。該方法は好ましくは、含浸された遮蔽物質を硬化することを含む。有利に、有効量の難燃剤を提供する方法は、体抵抗率において約10倍より大きくない増加をもたらす。ここで、体抵抗率における1倍より大きくない増加がより好ましい。他の好ましい実施態様は、上記の通りである。
【発明の効果】
【0010】
従って、本発明は、従来達成できなかった難燃性及び電気的性質を有利に示すところの遮蔽物質を提供する。本発明のこれらの及び他の利点は、下記の記述からより容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明によれば、遮蔽能力の実質的な減少なしに難燃性を示すところの難燃性の導電性EMI遮蔽物質が提供される。有利に、難燃剤の慣用的適用で生ずることが分かっているところの電気的性質の実質的な劣化なしに、伝導性遮蔽物質が難燃性にされ得ることが分かった。
【0012】
本発明の難燃性の遮蔽物質は、隙間の内部表面が導電性であり、かつ有効量の難燃剤を含むところの内部隙間を有する多孔性物質を含む。導電性表面を持つ内部隙間(即ち孔)を有する多孔性物質は当業者に周知であり、かつEMI遮蔽用途に普通に使用される。隙間(即ち孔)の内部表面は、物質の全体に提示された隙間即ち孔の相互連結されたネットワークを通じての「内部表面積」を規定する。一の好ましい実施態様において、多孔性物質は、オープンセルのポリマー状フォーム、例えば、熱可塑性エラストマーから作られたフォーム(例えば、ポリウレタンフォーム)である。ポリマー状フォームは、ある遮蔽用途のために有利であるところのそれらの変形し得る性質のために好ましい。より好ましい実施態様において、該フォームは、1インチ当り約5〜120個の孔を有し、1インチ当り約50〜70個の孔がより好ましい。
【0013】
遮蔽用途において、多孔性物質の内部表面は、該物質の内部表面全体に伝導性物質の少なくとも一つの層を沈積することにより導電性にされる。典型的には、遮蔽用途における導電性は約300オーム/square以下の表面抵抗率を意味する。導電性物質は、導電性フィラー、金属層又は導電性非金属層の形態であり得る。EMI遮蔽用途に使用される伝導性フィラーの例は、限定されるものではないが、黒鉛、金属フレーク、金属粉、金属ワイヤ、及び金属メッキされた粒子、又はこれらの組み合わせを含む。多孔性物質はフィラーで含浸されて、該物質全体にフィラーを分散する。金属化された層は典型的には、当業者に周知のメッキ又はスパッタリングにより施与される。多孔性物質を導電性にするためにしばしば使用される金属は、限定されるものではないが、銅、ニッケル、銀、パラジウム、白金、ニッケルメッキされた銀、アルミニウム、スズ、又はそれらの合金を含む。多孔性物質の内部表面を伝導性にするための非金属物質の例は、限定されるものではないが、本質的に伝導性のポリマー、例えば、d-ポリアセチレン、d-ポリ(フェニレンビニレン)、及びd-ポリアニリン、及びそれらの組み合わせを含む。
【0014】
本発明の多孔性遮蔽物質はまた、該遮蔽物質に耐磨耗性を与えるためにスクリム又は外側布帛層を含み得る。該スクリムは、織物、不織布又は編物の形態であり得る。いずれの場合においても、該スクリムは多孔性物質である。
【0015】
多孔性遮蔽物質は好ましくは、高度の遮蔽効果を示さなければならない。この点において、遮蔽機器の遮蔽効果は、該物質を通して伝達される信号の減衰の尺度である。本発明によれば、多孔性遮蔽物質は好ましくは、伝達インピーダンス試験により1MHzから1GHzまで測定された少なくとも65デシベル(dB)の平均遮蔽効果を示す。より好ましくは、平均遮蔽効果(SE)は少なくとも約80dBであり、少なくとも約90dBがより好ましい。
【0016】
特に好ましい実施態様において、本発明に従って使用されるべき多孔性物質は、金属化されたフォーム(即ち、フォームの内部表面がその上に沈積された少なくとも一つの金属層を有するところのフォーム物質)である。金属化されたフォームの例は、種々の供給源から市販されている。一つの商業的提供者は、オハイオ州、Chardonに位置するEltech System Corp.である。他の商業的提供者は、ミズリー州、St. Louisに位置するLaird Technologies Inc.である。
【0017】
本発明によれば、多孔性物質の内部表面は有効量の難燃剤を備えられている。別な方法で述べれば、難燃剤は、相互連結された隙間(即ち孔)の表面上に沈積されることにより該物質全体に分散される。本発明の文脈において「有効量」は、少なくとも水平燃焼性等級を持つと同時に、EMI遮蔽用途のために十分なz軸伝導率又は体抵抗率を保有する遮蔽物質を与える難燃剤の量である。難燃性は、the Underwriters Laboratories Standard. 第94号, 典ests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances・(1991年)を使用して測定される。より好ましい実施態様において、有効量は、少なくともHF‐1又はHBのUL94燃焼性等級を遮蔽物質に与える。少なくとV1、V2又はV0のUL94の垂直燃焼性等級がより好ましい。同様に、遮蔽物質は好ましくは、(圧縮していない状態における)約20オーム・センチメートル(Ω・cm)以下の体抵抗率を示す。ここで、約1Ω・cm以下がより好ましく、かつ約0.05Ω・cm以下が更に好ましい。体抵抗率を確かめる一つの方法は、ASTM D991標準を使用することによる。当業者に明白であるように、該物質全体に分散されるべき難燃剤の実際量は、種々の因子に依存して変わり得る。通常、該物質全体に分散される難燃剤の量は、約10オンス/平方ヤード(opsy)以下でなければならず、約3opsy以下がより好ましく、約1opsy以下が更に好ましい。しかし、これらのパラメーターは、本発明の技術分野の当業者により容易に確かめられ得る。
【0018】
本発明の難燃性物質は、種々のフォームにおいて該物質の内部表面に沈積された難燃剤を有する。一の実施態様において、難燃剤は、比較的薄い被覆として該物質全体に分散される。他の実施態様において、難燃剤は、内部表面に接着された粒子として該物質全体に分散される。理論に限定されることを望まないが、難燃剤の分散された性質の故に塞がれた隙間(即ち孔)を実質的に有しないところの本発明の難燃性の遮蔽物質の性質が、遮蔽物質の電気的性質の劇的な保有を促進することが信じられている。遮蔽物質の導電性表面の間の電気的な接触が従って変形の間に特に生じることを可能にされる。これは、難燃剤被覆が、隙間即ち孔の遮断又は閉塞がそれにより電気的接触を低減することを発生するような厚さであるところの先行技術の難燃性のEMI遮蔽物質と相反する。塞がれた隙間(即ち孔)を「実質的に含まない」との言及は、難燃剤を備えられた多孔性物質の隙間(即ち孔)の大部分が決して閉塞又は遮断されていないことを意味する。より好ましい実施態様において、隙間(即ち孔)の約25%より少ない量が閉塞され、ここで、約10%より少ない量が更に好ましい。
【0019】
一の特定の実施態様において、難燃剤は、粒子の形態で内部表面に配置される。より好ましい実施態様において、該粒子は、難燃剤を備えられた遮蔽物質の合計の内部表面積の約30%以下を占有し、ここで約20%以下が好ましく、かつ約10%未満がより好ましい。他の実施態様において、難燃剤は、約12ミクロン以下の厚さを有する薄い被覆の形態であり、ここで約5ミクロン以下がより好ましく、かつ約2μm以下が更に好ましい。
【0020】
使用されるべき難燃剤は、任意の難燃剤、例えば、ハロゲンに基づいた及びハロゲンに基づいていない難燃剤を含む。一の実施態様において、ホスフェートに基づいた難燃剤が使用される。使用されるべきホスフェートに基づいた難燃剤の例は、アンモニウムホスフェート、アルキルホスフェート、ホスホネート化合物、又はこれらの組み合わせである。使用されるべき難燃剤の代表的な例は、限定されるものではないが、デカブロモジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルエーテル、三酸化アンチモン、ヘキサブロモシクロドデカン、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、ビス(ヘキサクロロシクロペンタジエノ)シクロオクタン、塩素化パラフィン、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛トリ‐(1,3‐ジクロロイソプロピル)ホスフェート、ホスホン酸、オリゴマー状ホスホネート、多リン酸アンモニウム(APP)、リン酸二水素アンモニウム(ADP)、トリフェルホスフェート(TPP)、ジアンモニウム及びモノアンモニウムホスフェート塩又は任意のこれらの混合物を含む。他の実施態様において、難燃剤は、ハロゲンを含まない難燃物質を提供するためにハロゲンを実質的に含まない。市販の難燃剤の特定の例は、サウスカロライナ州、スパルタンバーグに所在するApex Chemical Company及びニューヨーク州、ドッブスフェリーに所在するAkzo Nobelにより販売されている。
【0021】
他の実施態様において、ポリマー状被覆が任意的に、隙間(即ち孔)の内部表面と難燃剤との間に位置される。遮蔽物質が、燃焼性の実質的な増加なしに、ポリマー状被覆を備えられ得ることが有利であることが分かった。遮蔽物質に与えられる量は、該物質の遮蔽効果を実質的に減少することのないと同時に、燃焼性を増加することがないところの任意の量である。使用されるべきポリマー状物質の例は、ホモポリマー、コポリマー、及びこれらの混合物、例えば、ポリ(エチレン)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(スチレン)、ポリ(ブタジエン)、可塑化されたポリ(塩化ビニル)、ポリクロロプレン(ネオプレン)、ポリカーボネート、ポリ(酢酸ビニル)、アルキルセルロース、ポリ(エチレンテレフタレート)、ホスホネート及びポリホスホネートエステル、エポキシ樹脂、スチレンと無水マレイン酸とのコポリマー、メラミン‐ホルムアルデヒド樹脂、及びウレタンである。好ましくは被覆のためのポリマー状物質は、水溶性又は水分散性ポリマーである。一の特定の実施態様において、多孔性物質の内部表面積は、約1オンス/平方ヤード(opsy)より少ない乾燥被覆重量を持つウレタンポリマー被覆を備えられており、ここで約0.6opsyより少ない量がより好ましい。当業者に明らかなように、ポリマー状被覆の実際量は、遮蔽物質の遮蔽効果及び燃焼性が不利益に作用されない限りにおいて変えられ得る。
【0022】
本発明の難燃性の遮蔽物質は、隙間の内部表面上に有効量の難燃剤を配置するのに十分な条件下で上記の遮蔽物質を難燃剤で含浸することにより製造される。多孔性物質は、当業者に公知の任意の技術を使用して含浸される。例えば、多孔性物質は、難燃剤を含む液状組成物中に浸漬され得る。多孔性物質を難燃剤で含浸する他の方法は、スプレー、エアーナイフコーティング、トップアンドボトムダイレクトコーティング、スロットダイ(押出)コーティング、ナイフオーバーロール(ギャップ)コーティング、メータリングロッドコーティング、及びデュアルリバースロールコーティングを含む。
【0023】
一の好ましい実施態様において、多孔性物質は、十分な粘度の液状難燃組成物中に、かつ該組成物が該物質全体に拡散するために十分な時間、該物質を浸漬することにより含浸される。過剰な難燃剤は、閉塞の発生を最小にするために(例えば、含浸された物質をニッピングすることにより)取り除かれ、その後、含浸された物質は当業者に公知の任意の技術により硬化される。より好ましくは、水性組成物がポリマー状フォームを含浸するために使用されて、該フォーム物質の潜在的な膨潤を最小にする。本発明の文脈において、「水性」は、液状組成物のための溶媒の大部分が水であるか、又は水と水混和性有機溶媒との組み合わせであることを意味する。より好ましくは、溶媒は非水混和性有機溶媒を含まない。一の実施態様において、硬化は、(例えば、環境温度で又はオーブンにより)該物質を乾燥することによりもたらされる。しかし、当業者に明らかなように硬化手段の選択は、該組成物に含まれる成分に依存する。
【0024】
フォーム物質を含浸するために使用されるべき液状の難燃組成物は、種々の供給業者、例えば、上記のApex Chemical Company及びAkzo Nobelから容易に入手し得る。液状組成物の粘度は、多孔性物質を通して容易に拡散(即ち、浸透)するために十分に低くなければならない。好ましくは、液状の難燃組成物は、1秒当り約1000センチポアズ(cps)以下の粘度を有しなければならず、ここで、約500cps以下がより好ましく、かつ約100cps以下が更に好ましい。従って、市販の難燃剤の粘度は、被覆重量を変えることに加えて、多孔性物質全体に拡散を促進するために調節され得る。任意的に、液状組成物はまた、難燃組成物の拡散を促進するために湿潤剤を含み得る。使用されるべき湿潤剤は、限定されるものではないが、(例えば、カチオン性、アニオン性、非イオン性及び両性)界面活性剤を含む。湿潤剤は、約10重量%(wt.%)以下の量で該組成物中に組み込まれ得る。ここで、約4 wt.%以下が好ましく、かつ約2 wt.%以下が更に好ましい。
【0025】
他の実施態様において、液状の難燃組成物はまた、多孔性の遮蔽物質の隙間(即ち孔)の内部表面上に薄い難燃剤の被覆の形成を促進するためにポリマー状担体を含む。使用されるべきポリマー状担体は上記のポリマー状物質を含み、ここで、水溶性又は水分散性ポリマーが好ましい。一の特定の実施態様において、水に基づいたウレタンポリマー組成物が利用される。難燃剤対ポリマー状担体の比は、乾燥重量基準において約1:1〜約5:1の範囲でなければならない。ここで、乾燥重量基準で約2:1〜約3:1の比がより好ましい。
【0026】
上記のように、遮蔽物質は任意的に、遮蔽物質の燃焼性を増加することなしにポリマー状被覆を備えられ得る。この実施態様において、遮蔽物質はまず、ポリマー状被覆組成物で含浸される。過剰のポリマー状被覆物質が含浸された遮蔽物質から取り除かれて、塞がれた隙間を最小にし、そして難燃剤の適用に先立って任意的に硬化される(例えば、乾燥される)。
【0027】
本発明に従って、多孔性の遮蔽物質を難燃剤で含浸する段階は、難燃剤が該物質全体に分散されることをもたらす。本発明の方法の一つの有意な利点は、該物質の明確な部分のみが難燃剤を与えられるところの先行技術の方法と比較して、等しい量又はより多い量の難燃剤が該物質中に配置され得ることである。先行技術の方法により製造された難燃剤の明確な層は、該物質のz軸伝導率又は体抵抗率を著しく低減する。本発明の好ましい実施態様における難燃剤を持つ遮蔽物質を提供する方法は、遮蔽物質のための体抵抗率において10倍より多くない増加をもたらさなければならない。ここで、体抵抗率における約1倍より多くない増加が好ましく、かつ0.1倍より多くない増加が更に好ましい。同様に、難燃剤を一度備えられた遮蔽物質の平均遮蔽効果は、好ましくは30%より大きくない量まで減少される。ここで、20%以下がより好ましく、かつ10%以下が更に好ましい。
【0028】
下記の限定するものではない実施例は、本発明に従って製造された難燃性フォームの独特の性質を説明する。
【0029】
実施例
実施例1
市販の全体的に金属化されたファブリック-オン-フォーム遮蔽物質が、Apex Chemical Companyから入手し得る希釈されていないApex 911難燃剤(25cpsの粘度)により被覆された。二つ異なった厚さ(1.0mm及び3.2mm)のファブリック-オン-フォーム遮蔽物質が夫々、Laird Technologiesファブリック-オン-フォーム製品CF0040-4及びCF0125-4のラインランから採られた。伝導性フォームの5媒×11媒のシートが、難燃剤を含む5媒×12媒のなべに浸漬された。該フォームシートは次いで、10psiにおいてデュアルラバーニップローラーにより挟みつけられた。パッドした後、被覆されたフォームシートは、約25分間、110℃においてオーブン中で乾燥された。被覆されたフォームシートは、塞がれた孔がないことが目視で観察された。Apex 911の被覆重量は、3.2mmの物質のために4.34opsyであり、かつ1.0mmの物質のために1.76opsyであると決定された。検体は、5媒×1/2媒の棒状試料に切断され、そしてUL94 Vertical Burn(V)試験に付された。燃焼試験結果は表1に掲げられている。
【0030】
【表1】

【0031】
難燃性ファブリック-オン-フォームの両方の試料は、V0等級でUL94 Vertical Burnに合格した。V0等級はまた、Underwriters laboratoriesによりこれらの物質のために独立して確認された。社内で、V0燃焼等級がまた、上記の方法で施与された他の難燃剤Apex 2080及びFyrol FR-2(Akzo Nobel)により得られた。
【0032】
実施例2
オハイオ州、ChardronのEltech Systems Corp.から市販されている1.75mm厚さの導電性フォームの試料が得られ、そして本発明に従って処理された。該導電性フォームは、ニッケルの30グラム/平方メートルでメッキされた炭素被覆されたポリウレタンフォームであり、これは、製品コード番号2620の下に販売されている。フォーム試料の一つのグループ(n=5)は処理されず、そして対照として供された。導電性フォームの5媒×7媒のシートの第2グループ(n=5)は、Apex Chemical Companyによる希釈されていないFlame Proof 911被覆及びApex Chemical Companyからまた入手可能なPentrapex 1924(湿潤剤)の1重量%(wt.%)を含む5媒×12媒のなべに浸漬された。該フォームシートは次いで、10psiにおいてデュアルラバーニップローラーにより挟みつけられた。パッドした後、被覆されたフォームシートは、約25分間、110℃において乾燥された。フォーム試料の第3グループ(n=5)はまず、水に基づいたウレタン被覆(Soluol Chemical Co.によるSolucote 1024-4C )により被覆された。導電性フォームの5媒×7媒のシートは、希釈された水に基づいたウレタン被覆(800グラムの脱イオン水中の200グラムのウレタン(Solucote))の溶液を含む5媒×12媒のプラスチック製なべに浸漬された。該フォームシートが該ウレタン被覆に浸漬された後、それらは、10psiにおいてデュアルラバーニップローラーによりパッドされた。パッドした後、被覆されたフォームシートは、約20分間、140℃においてオーブン中で乾燥された。該試料が乾燥した後、それらは、希釈されていないFlame Proof 911中に浸漬され、次いで、上記の手順が続けられ、そして100℃におけるオーブン温度で乾燥された。フォーム試料の第4グループ(n=5)はウレタンのみで被覆された。被覆された試料は実質的に、塞がれた孔を含まないことが目視で観察された。三つの(3)グループ(被覆されていない、911被覆された、及びウレタン被覆されかつ911被覆された)からの検体は、5媒長×1/2媒幅の棒状試料に切断され、そしてUL94 Vertical(V)燃焼試験に付された。燃焼試験結果は表2に掲げられている。
【0033】
検体はまた、被覆重量、表面抵抗率(4点)、遮蔽効果(SE)、及び力抵抗特性ついて分析された。被覆重量及び表面抵抗率は表3に掲げられている。遮蔽効果及び力抵抗特性(即ち、圧縮の関数としての体抵抗率)は夫々、図1及び2にクラフで描かれている。
【0034】
【表2】

*NT‐物質のより早い破損の故に試験しなかった。
【0035】
【表3】

【0036】
表3並びに図1及び2におけるデータは、分散された難燃剤を与えられたフォーム遮蔽物質が、対照から実質的に変化されていない性質を示したことを示している。例えば、被覆された物質の表面抵抗率は、せいぜい約4.3倍の増加を示した(0.4483オーム/sq.÷0.1036オーム/sq.=4.3)。図1に示されているように、該物質の遮蔽効果は、23%より大きくない量まで減じられた。同様に、図2は、対照及び難燃剤試料の力抵抗特性が類似していたことを示している。
【0037】
実施例3
1.5mmの厚さを持つ実施例1と同様な全体的に導電性のファブリック-オン-フォーム遮蔽物質の試料が、(ウレタンを伴う及び伴わない)希釈されていないApex 911及びウレタンのみで含浸された。該物質は、Laird Technologiesファブリック-オン-フォーム製品CF0060-4のラインランから採られた。該物質の試料は含浸され、次いで、911難燃剤が0.2%のPentrapex 1924を含んでいたことを除いて、上記の手順が続けられた。被覆された試料は実質的に、閉塞された孔がないことを目視で観察された。試料3(ウレタン被覆+911被覆)の検体はまた、難燃剤の分散された性質を評価するために電子顕微鏡下に検査された。孔の内部表面は、10%より少ない内部表面積を占有する接着された粒子を含むことを観察された。該粒子はまた、Apex 911中に見出されるリン酸アンモニウム塩に関係するところのリン(III)物質を含むことが測定された。被覆された物質及び被覆されていない対照の表面抵抗率、被覆重量、及びUL94 V0難燃性が表4に掲げられている。該試料の力抵抗特性と共に該物質の遮蔽効果が夫々、図3及び4に示されている。
【0038】
【表4】

【0039】
表4並びに図3及び4におけるデータは、難燃剤を与えられたファブリック-オン-フォーム遮蔽物質が、対照から実質的に変化されていない遮蔽能力を示したことを示している。被覆された物質の表面抵抗率は、せいぜい3倍未満の増加を示した(0.038オーム/sq.÷0.014オーム/sq.=2.71)。図3に示されているように、対照試料が95dBの平均遮蔽効果を示した一方、難燃剤のみを持つ試料及び該難燃剤に加えてウレタン前被覆を持つ試料が夫々、91及び90dBを示した。これは、遮蔽効果における10%未満の減少である。同様に、図4は対照及び難燃剤試料の力抵抗性パターンが実質的に類似していることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明に従う分散された難燃剤を持つ遮蔽物質(1.75mmフォーム)のための周波数の関数として遠視野遮蔽効果(SE)を示すプロットグラフである。
【0041】
【図2】図2は、本発明に従う分散された難燃剤を持つ遮蔽物質(1.75mmフォーム)のための物質圧縮の関数として体抵抗率を示す遠視野力抵抗性のグラフである。
【0042】
【図3】図3は、本発明に従う分散された難燃剤を持つ遮蔽物質(1.5mmファブリック‐オン‐フォーム)のための周波数の関数として遠視野遮蔽効果(SE)を示すプロットグラフである。
【0043】
【図4】図4は、本発明に従う分散された難燃剤を持つ遮蔽物質(1.5mmファブリック‐オン‐フォーム)のための物質圧縮の関数として体抵抗率を示す遠視野力抵抗性のグラフである。
【符号の説明】
【0044】

:被覆されていない対照

:ポリマー被覆されたもの

:難燃剤(「FR」)被覆されたもの

:ポリマー及び難燃剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部隙間を有する多孔性物質を含む難燃性の導電性EMI遮蔽物質において、該隙間の内部表面が導電性であり、かつ該隙間が有効量の難燃剤を含むところのEMI遮蔽物質。
【請求項2】
該隙間が、該内部表面に配置された少なくとも一つの伝導性層の故に導電性であるところの請求項1記載のEMI遮蔽物質。
【請求項3】
該伝導性層が金属化された層であるところの請求項2記載のEMI遮蔽物質。
【請求項4】
該金属化された層のための金属が、銅、ニッケル、銀、パラジウム、白金、ニッケルメッキされた銀、アルミニウム、スズ、及びこれらの合金より成る群から選ばれるところの請求項3記載のEMI遮蔽物質。
【請求項5】
該難燃剤が、該EMI遮蔽物質の該隙間内に分散された粒子の形態であるところの請求項1記載のEMI遮蔽物質。
【請求項6】
該粒子が、該隙間により規定される合計内部表面積の約30%より多くない面積を占有するところの請求項5記載のEMI遮蔽物質。
【請求項7】
該内部表面積の約20%より多くない面積が占有されるところの請求項6記載のEMI遮蔽物質。
【請求項8】
該内部表面積の約10%より多くない面積が占有されるところの請求項7記載のEMI遮蔽物質。
【請求項9】
該難燃剤が隙間の内部表面上の被覆の形態であるところの請求項1記載のEMI遮蔽物質。
【請求項10】
該被覆が約12ミクロン以下の厚みを有するところの請求項9記載のEMI遮蔽物質。
【請求項11】
該厚みが約5ミクロン以下であるところの請求項10記載のEMI遮蔽物質。
【請求項12】
該厚みが約2ミクロン以下であるところの請求項11記載のEMI遮蔽物質。
【請求項13】
該EMI遮蔽物質が約20オーム・cm以下の体抵抗率を有するところの請求項1記載のEMI遮蔽物質。
【請求項14】
該体抵抗率が約1オーム・cm以下であるところの請求項13記載のEMI遮蔽物質。
【請求項15】
該体抵抗率が約0.5オーム・cm以下であるところの請求項14記載のEMI遮蔽物質。
【請求項16】
該多孔性物質が、少なくとも一つの金属化された層を全体に有するオープンセルフォームであるところの請求項1記載のEMI遮蔽物質。
【請求項17】
該フォームが更に多孔性スクリムを含むところの請求項16記載のEMI遮蔽物質。
【請求項18】
該フォームがポリウレタンフォームであるところの請求項17記載のEMI遮蔽物質。
【請求項19】
該難燃剤の該有効量が、該EMI遮蔽物質に少なくともHF‐1のUL94燃焼性等級を与えるところの請求項1記載のEMI遮蔽物質。
【請求項20】
該EMI遮蔽物質が少なくともHBのUL94燃焼性等級を示すところの請求項19記載のEMI遮蔽物質。
【請求項21】
該EMI遮蔽物質が少なくともV2のUL94燃焼性等級を示すところの請求項20記載のEMI遮蔽物質。
【請求項22】
該EMI遮蔽物質が少なくともV1のUL94燃焼性等級を示すところの請求項21記載のEMI遮蔽物質。
【請求項23】
該EMI遮蔽物質がV0のUL94燃焼性等級を示すところの請求項22記載のEMI遮蔽物質。
【請求項24】
該難燃剤がリン(III)に基づいた難燃剤であるところの請求項1記載のEMI遮蔽物質。
【請求項25】
該難燃剤がリン酸アンモニウム塩であるところの請求項24記載のEMI遮蔽物質。
【請求項26】
該難燃剤がハロゲンを含まないところの請求項24記載のEMI遮蔽物質。
【請求項27】
該難燃剤が更にポリマー状担体を含むところの請求項1記載のEMI遮蔽物質。
【請求項28】
ポリマー状担体が水溶性又は水分散性ポリマーであるところの請求項27記載のEMI遮蔽物質。
【請求項29】
該EMI遮蔽物質が少なくとも約65デシベルの平均遮蔽効果を有するところの請求項1記載のEMI遮蔽物質。
【請求項30】
該EMI遮蔽物質が塞がれた隙間を実質的に有しないところの請求項1記載のEMI遮蔽物質。
【請求項31】
難燃性の導電性EMI遮蔽物質を製造する方法において、内部表面が導電性であるところの内部隙間を有する多孔性物質を難燃剤で含浸して、該隙間の該内部表面上に有効量の該難燃剤を与えるところの上記製造方法。
【請求項32】
該隙間が、該内部表面に配置された少なくとも一つの伝導性層の故に導電性であるところの請求項31記載の方法。
【請求項33】
該伝導性層が金属化された層であるところの請求項32記載の方法。
【請求項34】
該金属化された層のための金属が、銅、ニッケル、銀、パラジウム、白金、ニッケルメッキされた銀、アルミニウム、スズ、及びこれらの合金より成る群から選ばれるところの請求項33記載の方法。
【請求項35】
該難燃剤が水性組成物の形態であるところの請求項31記載の方法。
【請求項36】
該水性組成物が更にポリマー状担体を含むところの請求項35記載の方法。
【請求項37】
ポリマー状担体が水溶性又は水分散性ポリマーであるところの請求項36記載の方法。
【請求項38】
該水性組成物のための溶媒が水及び水混和性有機溶媒であるところの請求項35記載の方法。
【請求項39】
該溶媒が水非混和性有機溶媒を含まないところの請求項38記載の方法。
【請求項40】
該含浸されたEMI遮蔽物質を硬化することを更に含むところの請求項31記載の方法。
【請求項41】
該難燃剤がリン(III)に基づいた難燃剤であるところの請求項31記載の方法。
【請求項42】
該難燃剤がリン酸アンモニウム塩であるところの請求項41記載の方法。
【請求項43】
該有効量が体抵抗率において約10倍より大きくない増加を与えるところの請求項31記載の方法。
【請求項44】
該有効量が体抵抗率において1倍より大きくない増加を与えるところの請求項43記載の方法。
【請求項45】
該有効量が少なくともHF‐1のUL94燃焼性等級を与えるところの請求項31記載の方法。
【請求項46】
該有効量が少なくともHBのUL94燃焼性等級を与えるところの請求項45記載の方法。
【請求項47】
該有効量が少なくともV2のUL94燃焼性等級を与えるところの請求項46記載の方法。
【請求項48】
該有効量が少なくともV1のUL94燃焼性等級を与えるところの請求項47記載の方法。
【請求項49】
該有効量がV0のUL94燃焼性等級を与えるところの請求項48記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−111408(P2009−111408A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325895(P2008−325895)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【分割の表示】特願2003−575688(P2003−575688)の分割
【原出願日】平成15年3月7日(2003.3.7)
【出願人】(504341232)レアード テクノロジーズ,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】