説明

難燃性を有する反応性化合物、及びそれを用いた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物並びにその硬化物

【課題】高い難燃性を有しており、光感度に優れ、その硬化膜は、現像性、硬化性、密着性、PCT耐性、柔軟性等も十分に満足する反応性化合物を提供する。
【解決手段】下記式(1)
【化1】


(式中、R1、R2は炭素数1〜10の直鎖または分岐状の炭化水素基を表わし、且つR1、R2の何れか1種以上のアルキレン基中に水酸基を少なくとも1以上含有する。R1、R2は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。)で表されるアルコール化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)を反応させて得られる反応性化合物(A)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料の難燃化を目的として、種々の高分子材料に重合可能な新規な反応性化合物であるホスフィンオキサイド化合物及びそれを用いた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。その用途としては、皮膜形成用材料、プリント(配線回路)基板製造の際のソルダーマスク、アルカリ現像可能なレジスト材料、接着剤、レンズ、ディスプレー、光ファイバー、光導波路、ホログラム等が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
成形物、皮膜形成用材料等に難燃性を持たせる試みは広く行われている。従来臭素化合物に代表されるハロゲン系化合物を用いた難燃材料が広く用いられてきたが、近年環境問題の高まりからこれらが忌避されるようになってきた。これらに替わるものとしてリン系化合物を難燃材料の検討がすすんでいる。
この中でリンを含む重合可能な(メタ)アクリル系モノマーとしては、次の一般式(2)に示すようなリン酸型の化合物が知られている。(特許文献1)
【0003】
【化1】

【0004】
(式中、R’1、R’2は炭素数1〜10の直鎖または分岐状のアルキレン基を表わし、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わす。R’1、R’2は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。)
【0005】
また、耐熱性、耐湿性に優れた水酸基を有するホスフィンオキサイドにエポキシ基を介在させ、エチレン性不飽和基を導入する技術が開示されている。(特許文献2)
更には、難燃性を有する種々のリン含有アクリレートモノマーが知られている。(特許文献3)
【0006】
一般的のレジスト材料に難燃性を付与させるために、いわゆる難燃剤及び無機の体質顔料を配合することは周知一般の技術であるが、反応性を有する難燃剤は一般的ではない。
さらに、フレキシブル回路基板に用いるためのレジスト材料においては、高い柔軟性を
要求されるために、より多くの体質顔料を添加し、難燃性を付与することは難しい。
【0007】
【特許文献1】特開2000−38398号公報
【特許文献2】特開2004−143286号公報
【特許文献3】特表平10−505122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の前記式(2)で表わされるようなリン酸型構造を有する場合、この酸性基による悪影響が見られる。例えば、酸性基が加水分解を促進する、または金属等の基材の腐食を促進するために、硬化物の長期にわたる耐久性に問題を残していた。特に回路基板用の永久レジスト等に用いられる場合は、長期間にわたり回路を保護する目的に用いられることから、このような酸性基の存在は大きな問題となる。
さらに、現像を必要とされるソルダーレジスト等の用途においては、一般的に樹脂組成物中に硬化剤としてエポキシ化合物等を二液混合して用いられている。この際、酸性基が組成物中に多く含まれる場合は、二液混合後の保存安定性や塗工後、現像までの工程で硬化剤の反応が促進されてしまい、現像出来なくなってしまうという問題があった。
また、エポキシ樹脂と架橋したリン酸型化合物は、高湿熱条件下において加水分解してしまうものであり、電気特性等の信頼性試験における不具合があった。
また、特許文献2記載のホスフィンオキサイドのエチレン性不飽和基導入率は、61%程度と低く、活性エネルギー線で硬化させた場合、感度が出ずに、樹脂組成物中からブリードアウトしてくる問題があった。
【0009】
前記、感光性を有するホスフィンオキサイド化合物は、エポキシ樹脂を配合した感光性樹脂組成物において、露光前に加熱乾燥しても、アルカリ現像が十分可能である熱安定性が求められている。
また、エポキシ樹脂と架橋したリン酸型化合物は、高湿熱条件下において加水分解することなく、電気特性等の信頼性試験における不具合が出ない耐熱性、耐湿性に優れた化合物が求められている。さらには、大量に添加することなく難燃効果が発現できるような難燃剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題に鑑み、紫外線等の活性エネルギー線等により硬化し、熱安定性があり、さらには耐熱性、耐湿性に優れ、電気絶縁性が良好でかつ少量の添加でも難燃効果を発現できる新規な感光性基を有するホスフィンオキサイド化合物及びそれを用いた感光性樹脂組成物について鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する不飽和基含有化合物及びその組成物が前記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
【0011】
(1)下記式(1)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R1、R2は炭素数1〜10の直鎖または分岐状の炭化水素基を表わし、且つR1、R2の何れか1種以上のアルキレン基中に水酸基を少なくとも1以上含有する。R1、R2は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。)で表されるアルコール化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)を反応させて得られる反応性化合物(A)、
(2)分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)が、(メタ)アクリル基を有するモノカルボン酸化合物である前項(1)記載の反応性化合物(A)、
(3)前項(1)又は(2)記載の反応性化合物(A)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、
(4)更に、反応性化合物(A)以外の分子中にエチレン性不飽和基を有する反応性化合物(B)を含有することを特徴とする前項(3)記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、
(5)成形用材料である前項(3)又は(4)に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、
(6)皮膜形成用材料である前項(3)又は(4)に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、
(7)レジスト材料組成物である前項(3)又は(4)に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、
(8)前項(3)ないし(7)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物、
(9)前項(8)に記載の硬化物の層を有する多層材料、
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の反応性化合物(A)及びそれを含有する感光性樹脂組成物の硬化物は、金属への密着性が良く、樹脂の難燃性を十分に満足し、かつ長期にわたる信頼性に優れた材料である。従って、該感光性樹脂及びその組成物は、皮膜形成用材料、プリント(配線回路)基板製造の際のソルダーマスク、アルカリ現像可能なレジスト材料、接着剤、レンズ、ディスプレー、光ファイバー、光導波路、ホログラム等用として適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0016】
本発明の反応性化合物(A)は、下記式(1)で表されるのアルコール化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)を反応させて得られる。
【0017】
【化3】

【0018】
上記式(1)におけるR1、R2は炭素数1〜10の直鎖または分岐状の炭化水素基を表わし、更にR1、R2の何れか1種以上のアルキレン基中に水酸基を少なくとも1以上含有していれば、特に制限されるものではないが、炭素数は2〜6であるのが好ましく、更にはR1、R2が各々炭素数3であるのがより好ましい。炭素数が10を超えると、化合物中のリン含有率が低下して難燃性が低下し、炭化水素鎖が短い場合は合成が困難になる。
【0019】
前記式(1)で表されるアルコール化合物(a)の具体例としては、例えば、n−ブチル−ビス(ヒドロキシメチル)ホスフィンオキサイド、n−ブチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフィンオキサイド、n−ブチル−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−3−ヒドロキシプロピルホスフィンオキサイド、n−ブチル−ビス(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ホスフィンオキサイド、n−ブチル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイド、n−ブチル−ビス(4−ヒドロキシブチル)ホスフィンオキサイド、n−ブチル−ビス(5−ヒドロキシペンチル)ホスフィンオキサイド、n−ブチル−ビス(8−ヒドロキシオクチル)ホスフィンオキサイドなどが挙げられる。中でも、化合物中のリン含有率、反応性、入手の容易さ、ブリードアウトを抑制できる分子量の観点から、n−ブチル−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−3−ヒドロキシプロピルホスフィンオキサイド、n−ブチル−ビス(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ホスフィンオキサイド、n−ブチル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイドが好ましく、特にn−ブチル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイドが好ましい。このようなアルコール化合物の市販品としては、下記式(3)で表されるPO−4500(日本化学工業(株)製)が挙げられる。
【0020】
【化4】

【0021】
本発明の反応性化合物(A)を製造するために使用される分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)は、活性エネルギー線への反応性を付与させるために反応せしめるものである。分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)として具体的には、例えば(メタ)アクリル酸類やクロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、或いは飽和または不飽和二塩基酸と不飽和基含有モノグリシジル化合物との反応物が挙げられる。上記において(メタ)アクリル酸類としては、例えば(メタ)アクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、(メタ)アクリル酸二量体、飽和または不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等の一分子中にカルボキシル基をひとつ含むモノカルボン酸化合物が挙げられるが、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としたときの感度の点で、最も好ましくは、(メタ)アクリル酸と桂皮酸が挙げられる。
【0022】
本発明の反応性化合物(A)は前記式(1)で表されるアルコール化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)を酸触媒の存在下で脱水縮合させる方法により製造できる。
【0023】
使用しうる酸触媒は、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等公知のものから任意に選択でき、その使用量は、分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)に対して通常、0.1〜10モル%、好ましくは1〜5モル%である。
【0024】
反応により生成した水を留去するのには共沸溶媒を用いることができる。ここでいう共沸溶媒とは60〜130℃の沸点を有し、水と容易に分離できるものであり、特に、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素の使用が好ましい。その使用量は任意であるが、好ましくは反応混合物に対し10〜70重量%である。
【0025】
反応温度は通常、60〜130℃の範囲でよいが、反応時間の短縮と重合防止の点から、75〜120℃で行なうのが好ましい。
【0026】
原料として用いる分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)として市販品の(メタ)アクリル酸等を使用する場合には、反応時に重合禁止剤を添加してもよい。そのような重合禁止剤の例としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、3−ヒドロキシチオフェノール、p−ベンゾキノン、2,5−ジヒドロキシ−p−ベンゾキノン、フェノチアジン等が好ましい。その使用量は反応原料混合物に対し、通常、0.01〜1重量%である。
【0027】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記で得られた反応性化合物(A)を含有する。
【0028】
また本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、更に反応性化合物(A)以外の分子中にエチレン性不飽和基を有する反応性化合物(B)を含有することが出来る。
使用しうる(A)成分以外の分子中にエチレン性不飽和基を有する反応性化合物(B)の具体例としては、ラジカル反応型のアクリレート類、ビニル化合物類等のいわゆる反応性オリゴマー類等が挙げられる。
【0029】
使用しうるラジカル反応型のアクリレート類としては、単官能(メタ)アクリレート類、多官能(メタ)アクリレート、その他エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0030】
単官能(メタ)アクリレート類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
多官能(メタ)アクリレート類としては、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびそのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0032】
使用しうるビニル化合物類としてはビニルエーテル類、スチレン類、その他ビニル化合物が挙げられる。ビニルエーテル類としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。その他ビニル化合物としてはトリアリルイソイシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0033】
さらに、いわゆる反応性オリゴマー類としては、活性エネルギー線に官能可能な官能基とウレタン結合を同一分子内に併せ持つウレタンアクリレート、同様に活性エネルギー線に官能可能な官能基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステルアクリレート、その他エポキシ樹脂から誘導され、活性エネルギー線に官能可能な官能基を同一分子内に併せ持つエポキシアクリレート、これらの結合が複合的に用いられている反応性オリゴマー等が挙げられる。
【0034】
これらのうち、分子中にエチレン性不飽和基を有する反応性化合物(B)としては、ラジカル反応型のアクリレート類が最も好ましい。
【0035】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、本発明の反応性化合物(A)と、必要により(A)成分以外の分子中にエチレン性不飽和基を有する反応性化合物(B)とを混合せしめて得ることができる。このとき、用途に応じて適宜その他の成分を加えてもよい。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、通常、組成物中に反応性化合物(A)97〜5重量%、好ましくは87〜10重量%、(A)成分以外の分子中にエチレン性不飽和基を有する反応性化合物(B)3〜95重量%、好ましくは3〜90重量%を含む。
【0037】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は活性エネルギー線によって容易に硬化する。ここで活性エネルギー線の具体例としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線等が挙げられる。本発明の好適な用途を考慮すれば、これらのうち、紫外線、レーザー光線、可視光線、または電子線が好ましい。
【0038】
本発明において成形用材料とは、未硬化の組成物を型にいれ、もしくは型を押し付け物体を成形したのち、活性エネルギー線により硬化反応を起こさせ成形させるもの、もしくは未硬化の組成物にレーザー等の焦点光などを照射し、硬化反応を起こさせ成形させる用途に用いられる材料を指す。
【0039】
具体的な用途としては、平面状に成形したシート、素子を保護するための封止材、未硬化の組成物に微細加工された「型」を押し当て微細な成形を行う、所謂ナノインプリント材料、さらには難燃性と高い信頼性を求められかつハロゲン化合物が忌避されるコーティング用途等の周辺封止材料等が好適な用途として挙げられる。
【0040】
本発明において皮膜形成用材料とは、基材表面を被覆することを目的として利用されるものである。具体的な用途としては、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ、オフセットインキ等のインキ材料、ハードコート、トップコート、オーバープリントニス、クリヤコート等の塗工材料、ラミネート用、光ディスク用他各種接着剤、粘着剤等の接着材料、ソルダーレジスト、エッチングレジスト、マイクロマシン用レジスト等のレジスト材料等これに該当する。さらには、皮膜形成用材料を一時的に剥離性基材に塗工しフイルム化した後、本来目的とする基材に貼合し皮膜を形成させる、いわゆるドライフイルムも皮膜形成用材料に該当する。
【0041】
本発明においてレジスト材料組成物とは、基材上に該組成物の皮膜層を形成させ、その後、紫外線等の活性エネルギー線を部分的に照射し、照射部、未照射部の物性的な差異を利用して描画しようとする活性エネルギー線感応型の組成物を指す。具体的には、照射部、または未照射部を何らかの方法、例えば溶剤等やアルカリ溶液等で溶解させるなどして除去し、描画を行うことを目的として用いられる組成物である。
【0042】
本発明のレジスト材料用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、パターニングが可能な種々の材料に適応でき、例えば特に、ソルダーレジスト材料、ビルドアップ工法用の層間絶縁材に有用であり、さらには光導波路としてプリント配線板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光基材等にも利用される。
【0043】
特に好適な用途としては、難燃性と高い信頼性を得ることができる特性を生かして、ソルダーレジスト等の永久レジスト用途などのパターニングが必要な絶縁材料として好ましい。
【0044】
さらに、フレキシブル回路基板に用いるためのレジスト材料としては、本発明の反応性化合物(A)は、レジスト材料中で反応するため、架橋剤としての効果も有する。したがって、多く体質顔料を添加せずに、高い難燃性と柔軟性を両立できる。
【0045】
皮膜形成させる方法としては特に制限はないが、グラビア等の凹版印刷方式、フレキソ等の凸版印刷方式、シルクスクリーン等の孔版印刷方式、オフセット等の平版印刷方式、ロールコーター、ナイフコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スピンコーター等の各種塗工方式が任意に採用できる。
【0046】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物とは、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し硬化させたものを指す。
【0047】
本発明の多層材料とは、本発明において示される活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を基材上に皮膜形成・硬化させ得られる、少なくとも二層以上の層をもってなる材料を示す。
【0048】
この他、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を各種用途に適合させる目的で、70重量%を上限にその他の成分を加えることもできる。その他の成分としては光重合開始剤、その他の添加剤、着色材料、顔料材料等が挙げられる。下記に使用しうるその他の成分を例示する。
【0049】
ラジカル型光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシンクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2?t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等の公知一般のラジカル型光反応開始剤が挙げられる。
【0050】
この他、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の熱に感応する過酸化物系ラジカル型開始剤等を併せて用いても良い。開始剤は、1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併せて用いることもできる。
【0051】
その他の添加剤としては、例えばメラミン等の熱硬化触媒、アエロジル等のチキソトロピー付与剤、シリコーン系、フッ素系のレベリング剤や消泡剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤等を使用することが出来る。
【0052】
その他の着色顔料としては、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系等の有機顔料、カーボンブラック等、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
【0053】
また、その他の顔料材料としては例えば、着色を目的としないもの、いわゆる体質顔料を用いることも出来る。例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー等が挙げられる。
【0054】
この他に活性エネルギー線に反応性を示さない樹脂類(いわゆるイナートポリマー)、たとえばその他のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、クレゾール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン樹脂、グアナミン樹脂、天然及び合成ゴム、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びこれらの変性物を用いることもできる。これらを使用する場合は、通常40重量%までの範囲において用いることが好ましい。
【0055】
また使用目的に応じて、粘度を調整する目的で揮発性溶剤を使用する事が出来、使用する場合は通常50重量%、好ましくは35重量%までの範囲において添加することが出来る。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中特に断りがない限り、部は重量部を示す。
【0057】
合成例1:n−ブチル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイドの合成
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えたオートクレーブ中で、窒素パージを施しながら、ホスフィン102.0g(3.0mol)とトルエン600mlを仕込み、ラジカル開始剤アゾイソブチロニトリル0.5gを加え、ブテン112.2g(2.0mol)を導入し、約1時間、反応温度85〜90℃にて、一定圧を示すまで反応させた。
次に、同温度でさらに1時間反応させ、室温まで冷却した。エバポレーターで濃縮することにより、n−ブチルホスフィン264.9gを得た。
次に、この生成物をイソプロパノール264.9ml中に溶解させ、30%過酸化水素/イソプロパノール264.9mlを室温にて1時間かけて滴下し、酸化させた。滴下終了後、クロロホルムで抽出した後、エバポレーターで濃縮することにより、n−ブチルホスフィンオキサイド311.9gを得た。
攪拌機、温度計、滴下ロート、コンデンサーを備えた1000mlの四つ口フラスコに、 n−ブチルホスフィンオキサイド 106.1g(1.0mol)と純水30ml、エタノール300mlを仕込み、ラジカル開始剤tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート3.50gをアリルアルコール58.1g(1.0mol)に溶解させた溶液を、約4時間かけてエタノール還流下に、滴下反応させた。滴下終了後、同温度で2時間熟成させ、室温まで冷却した。この反応液に(1+1)塩酸水溶液をpH1の酸性となるまで添加したところ、塩化ナトリウムが析出してきた。液量を1/2まで濃縮し、生成した塩化ナトリウムを濾別除去し、エバポレーターで濃縮することにより無色透明な液体160.9gを得た。分析結果したところ、生成物はn−ブチル−3−ヒドロキシプロピルホスフィンオキサイドであった。
得られたn−ブチル−3−ヒドロキシプロピルホスフィンオキサイド131.4g(0.8mol)を500ml四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下、100℃に昇温した。次いで、滴下ロートに仕込んだラジカル開始剤ジ−tert−ブチルパーオキサイド3.17gをアリルアルコール55.7g(0.96mol)に溶解した溶液を、約4時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で2時間熟成した。冷却後、過剰のアリルアルコールを真空ポンプで完全に留去させると、微黄色の粘性液体217.2gを得た。分析の結果、生成物は、n−ブチル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイド(前記式(1)においてR1=C36、R2=C36)で収率は97.7%であった。
【0058】
合成例2:n−ブチル−ビス(3−ヒドロキシオクチル)ホスフィンオキサイドの合成
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えたオートクレーブ中で、窒素パージを施しながら、ホスフィン102.0g(3.0mol)とトルエン600mlを仕込み、ラジカル開始剤アゾイソブチロニトリル0.5gを加え、ブテン112.2g(2.0mol)を導入し、約1時間、反応温度85〜90℃にて、一定圧を示すまで反応させた。
次に、同温度でさらに1時間反応させ、室温まで冷却した。エバポレーターで濃縮することにより、n−ブチルホスフィン264.9gを得た。
次に、この生成物をイソプロパノール264.9ml中に溶解させ、30%過酸化水素/イソプロパノール264.9mlを室温にて1時間かけて滴下し、酸化させた。滴下終了後、クロロホルムで抽出した後、エバポレーターで濃縮することにより、n−ブチルホスフィンオキサイド311.9gを得た。
攪拌機、温度計、滴下ロート、コンデンサーを備えた1000mlの四つ口フラスコに、 n−ブチルホスフィンオキサイド 106.1g(1.0mol)と純水30ml、エタノール300mlを仕込み、ラジカル開始剤tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート3.50gをn−オクテノール114.2g(1.0mol)に溶解させた溶液を、約4時間かけてエタノール還流下に、滴下反応させた。滴下終了後、同温度で2時間熟成させ、室温まで冷却した。この反応液に(1+1)塩酸水溶液をpH1の酸性となるまで添加したところ、塩化ナトリウムが析出してきた。液量を1/2まで濃縮し、生成した塩化ナトリウムを濾別除去し、エバポレーターで濃縮することにより無色透明な液体229.6gを得た。分析結果したところ、生成物はn−ブチル−3−ヒドロキシオクチルホスフィンオキサイドであった。
得られたn−ブチル−3−ヒドロキシオクチルホスフィンオキサイド131.4g(0.8mol)を500ml四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下、100℃に昇温した。次いで、滴下ロートに仕込んだラジカル開始剤ジ−tert−ブチルパーオキサイド3.17gをn−オクテノール109.6g(0.96mol)に溶解した溶液を、約4時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で2時間熟成した。冷却後、過剰のアリルアルコールを真空ポンプで完全に留去させると、微黄色の粘性液体326.6gを得た。分析の結果、生成物は、n−ブチル−ビス(3−ヒドロキシオクチル)ホスフィンオキサイド(前記式(1)においてR1=C816、R2=C816)で収率は90.1%であった。
合成例1、2に関する炭素数と収率に関しては、下表1にまとめた。
【0059】
(表1)アルコール化合物(a)の合成
炭素数
合成例 R12 収率%
合成例1 3 3 97.7
合成例2 8 8 90.1
【0060】
実施例1:n−ブチル−ビス(3−アクリロイルオキシプロピル)ホスフィンオキサイドの合成
還流冷却器、攪拌機、温度計、温度調節装置、及び水分離機を備えた反応器に、アルコール化合物(a)として合成例1で得られた化合物を下表2中に記載の量、分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)としてアクリル酸172.9g(2.4mol)、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸一水和物3.46g、熱重合禁止剤としてハイドロキノン1.31g、反応溶媒としてトルエン138.3g、シクロヘキサン59.3g仕込み、反応温度95〜105℃で生成水を溶媒と共沸留去しながら反応させ、生成水が31.7mlに達したところで反応の終点とした。反応混合物にトルエン507.2g及びシクロヘキサン217.4gを加え、25重量%苛性ソーダ水溶液で中和した後、15重量%食塩水100gで3回洗浄した。溶媒を減圧留去して本発明の反応性化合物(A−1)を294.2g(収率87.7%)得た。合成後、1H−NMRにて構造を確認した。
【0061】
1H-NMR(CDCL3、δ)
:0.92(t,J=13.5,3H),1.43-1.54(m,4H),1.71-2.06(m,10H),4.21(t,J=5.7,4H),5.84(dd,J=10.5Hz,J=1.52Hz,2H),6.11(dd,J=10.3Hz,J=17.5Hz,2H),6.40(dd,J=17.5Hz,J=1.52Hz,2H)
【0062】
実施例2:n−ブチル−ビス(8−アクリロイルオキシオクチル)ホスフィンオキサイドの合成
還流冷却器、攪拌機、温度計、温度調節装置、及び水分離機を備えた反応器に、アルコール化合物(a)として合成例2で得られた化合物を下表2中に記載の量、分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)としてアクリル酸172.9g(2.4mol)、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸一水和物3.46g、熱重合禁止剤としてハイドロキノン1.31g、反応溶媒としてトルエン225.6g、シクロヘキサン96.7g仕込み、反応温度95〜105℃で生成水を溶媒と共沸留去しながら反応させ、生成水が29.3mlに達したところで反応の終点とした。反応混合物にトルエン827.2g及びシクロヘキサン354.6gを加え、25重量%苛性ソーダ水溶液で中和した後、15重量%食塩水100gで3回洗浄した。溶媒を減圧留去して本発明の反応性化合物(A−2)を294.2g(収率87.7%)得た。合成後、1H−NMRにて構造を確認した。
【0063】
1H-NMR(CDCL3、δ)
:0.95(t,J=13.3,3H),1.44-1.59(m,4H),1.65-2.12(m,30H),4.28(t,J=5.8,4H),5.87(dd,J=10.3Hz,J=1.51Hz,2H),6.14(dd,J=10.5Hz,J=17.8Hz,2H),6.45(dd,J=17.8Hz,J=1.55Hz,2H)
実施例1、2における仕込み量と収率に関しては、下表2にまとめた。
【0064】
(表2)反応性化合物(A)の合成
炭素数
実施例 アルコール化合物(a) R12 モノカルボン酸化合物(b) 収率%
実施例1 合成例1 222.3 g 3 3 AA 172.9 g 87.7
実施例2 合成例2 362.5 g 8 8 AA 172.9 g 81.3
【0065】
比較合成例(特開2000−38398に記載の化合物(前記式(2)))
攪拌機、温度計、滴下ロート、コンデンサーを備えた1000mLの四つ口フラスコに、次亜リン酸ナトリウム・1水塩106.0g(1.0モル)と純水30mL、エタノール300mLを仕込み、ラジカル開始剤tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート3.50gをアリルアルコール58.1g(1.0モル)に溶解させた溶液を、約4時間かけてエタノール還流下に、滴下反応させた。滴下終了後、同温度で2時間熟成させ、室温まで冷却した。この反応液に(1+1)塩酸水溶液をpH1の酸性となるまで添加したところ、塩化ナトリウムが析出してきた。液量を1/2まで濃縮し、生成した塩化ナトリウムを濾別除去し、エバポレーターで濃縮することにより無色透明な液体128.6gを得た。分析結果は、以下の通りで、生成物は3−ヒドロキシプロピルホスフィン酸であった。収率は97.1%であった。得られた3−ヒドロキシプロピルホスフィン酸105.9g(0.8モル)を500mL四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下、100℃に昇温した。次いで、滴下ロートに仕込んだラジカル開始剤ジ−tert−ブチルパーオキサイド3.17gをアリルアルコール55.7g(0.96モル)に溶解した溶液を、約4時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で2時間熟成した。冷却後、過剰のアリルアルコールを真空ポンプで完全に留去させると、微黄色の粘性液体147.0gを得た。分析の結果、生成物は、ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン酸で、収率は97.7%であった。
還流冷却器、攪拌機、温度計、温度調節装置、及び水分離機を備えた反応器に、アルコール化合物としてビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン酸182.2g(1.0mol)、分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)としてアクリル酸172.9g(2.4mol)、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸一水和物3.46g、熱重合禁止剤としてハイドロキノン1.31g、反応溶媒としてトルエン124.3g、シクロヘキサン53.3g仕込み、反応温度95〜105℃で生成水を溶媒と共沸留去しながら反応させ、生成水が25.3mlに達したところで反応の終点とした。反応混合物にトルエン430.0g及びシクロヘキサン181.2gを加え、25重量%苛性ソーダ水溶液で中和した後、15重量%食塩水100gで3回洗浄した。溶媒を減圧留去してビス(3−アクリロイルオキシプロピル)ホスフィン酸(比較化合物)を220.7g(収率70.2%)得た。
【0066】
実施例3、4及び比較例1
前記実施例1,2及び比較合成例で得られた本発明の反応性化合物(A−1)、(A−2)及び(比較化合物)を下表3に示す配合割合で混合、必要に応じて3本ロールミルで混練し、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。これをスクリーン印刷法により、25μmの厚さになるように銅回路プリント基板に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器で60分乾燥させた。室温に冷却後、脱脂綿を塗膜に付着させ、タック性の観察を行った。次いで、パターンの描画されたマスクフィルムを密着させ、紫外線露光装置(USHIO製:500Wマルチライト)を用いて、紫外線を照射した。次に現像液として、1%炭酸ナトリウム水溶液(温度30℃)を用いて60秒間スプレー(スプレー圧:0.2MPa)現像を行った。水洗後、150℃の熱風乾燥器で60分間熱処理を行い本発明の硬化物を得た。後述のとおり、タック性、感度、現像性、硬化性、難燃性、PCT耐性、柔軟性の試験を行なった。それらの結果を下表4に示す。なお、試験方法及び評価方法は次のとおりである。
【0067】
(感度評価)
感度は、ステップタブレットを透過した露光部に、何段目の濃度部分までが現像時に残
存したかで判定した。段数(値)が大きいほうがタブレットの濃部で高感度と判定される(単位:段)。なお、現像不可で感度測定が不可能なものに関しては、×とした。
【0068】
(現像性評価)
現像性は、パターンマスクを透過した露光部を現像する際に、パターン形状部が完全に
現像されきるまでの時間、いわゆるブレイクタイムをもって現像性の評価とした(単位:秒)。なお、60秒以内にブレイクしなかったものに関しては、×とした。
【0069】
(硬化性評価)
硬化性評価は、150℃加熱終了後の硬化膜の鉛筆硬度をもって示した。
評価方法は、JIS K5600−5−4:1999に準拠した。
【0070】
(密着性評価)
密着性評価は、硬化膜をJIS K5400に準じて、試験片に1mmのごばん目を100個作りセロハンテープによりピーリング試験を行った。ごばん目の剥離状態を観察し、次の基準で評価した。
○・・・・剥れのないもの
×・・・・剥離するもの
【0071】
(難燃性評価)
難燃性は、日立化成製のノンハロゲンの難燃性基板RO−67G(0.2mmt材)に、
片面15μmずつスクリーン印刷で全面塗布し、80W/cm 3灯の高圧水銀灯で紫外線硬化した。この試験片をUL94燃焼性試験に準じて、燃焼時間を測定した。
◎:UL V−0相当
(試験片5本を、それぞれ2回着火した時の合計燃焼時間が、50秒以下)
○:UL V−1相当
(試験片5本を、それぞれ2回着火した時の合計燃焼時間が、50〜250秒)
×:自己消火性なし
【0072】
(耐PCT性)
試験基板を121℃、2気圧の水中で96時間放置後、外観に異常がないか確認した後、セロハンテープ(R)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○:感光層からなる硬化膜に浮き、剥がれ、表面白化が見られない、
△:感光層からなる硬化膜の一部に浮き、剥がれ、表面白化が見られる、
×:感光層からなる硬化膜の全面に浮き、剥がれ、表面白化が見られる。
【0073】
(柔軟性)硬化膜を180度に折り曲げ観察する。下記の基準を使用した。
○:膜面に割れは見られない
×:膜面が割れる
【0074】
表3
実施例 比較例
3 4 1
(A)成分 注
A−1 10.00
A−2 10.00
比較化合物 10.00
(B)成分(エチレン性不飽和基含有オリゴマー)
ZFR−1401H *1 46.55 46.55 46.55
架橋剤
DPCA−60 *2 6.06 6.06 6.06
光重合開始剤
Irg.907 *3 4.54 4.54 4.54
DETX−S *4 0.91 0.91 0.91
硬化剤
YX−4000 *5 18.31 18.31 18.31
熱硬化触媒
メラミン 1.00 1.00 1.00
体質顔料
硫酸バリウム 15.15 15.15 15.15
フタロシアニンブルー 0.61 0.61 0.61
添加剤
BYK−354 *6 0.39 0.39 0.39
KS−66 *7 0.69 0.69 0.69
濃度調整用溶媒
CA *8 4.54 4.54 4.54
【0075】

*1 ZFR−1401H 日本化薬(株)製 アクリレートオリゴマー
アルカリ現像型多官能BisFエポキシアクリレート
*2 DPCA−60 日本化薬(株)製 アクリレートモノマー
ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
*3 Irg.907 チバスペシャリティーケミカルズ社製 光重合開始剤
2−メチル−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパン
*4 DETEX−S 日本化薬(株)製 光重合開始剤
2,4−ジエチルチオキサントン
*5 YX−4000 ジャパンエポキシレジン(株)製 エポキシ樹脂
2官能ビキシレノール型エポキシ樹脂
*6 BYK−354 ビックケミー社製 レベリング剤
*7 KS−66 信越化学製 消泡剤
*8 CA 大阪有機(株)製 カルビトールアセテート
【0076】
表4 レジストの評価
実施例 比較例
3 4 1
評価項目
タック性 ○ ○ ×
感度 7 7 ×
現像性 21 38 ×
硬化性 6H 5H 5H
密着性 ○ ○ ○
難燃性 ◎ ○ ○
PCT耐性 ○ ○ ×
柔軟性 ○ ○ ○
【0077】
上記の結果から、比較例1の樹脂組成物においてはエチレン性不飽和基を有するリン酸型化合物と樹脂組成物中のエポキシ化合物と反応してしまい、現像が不可能となる。また、比較例1の樹脂組成物に含有のエポキシ樹脂と架橋したリン酸型化合物は、高湿熱条件下において加水分解してしまい、PCT耐性などの信頼性試験において不具合が生じる。
これに対して、本発明の反応性化合物(A)を含有する樹脂組成物では、酸性基を有していないことにより、高い難燃性を有しながら、現像性やPCT耐性に優れた特徴をもつことが明らかとなった。
【0078】
よって、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は高い難燃性を有しており、光感度に優れ、その硬化膜は、現像性、硬化性、密着性、PCT耐性、柔軟性等も十分に満足するものであり、特にフレキシブルプリント基板用感光性樹脂組成物に適している。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の反応性化合物(A)及びそれを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物は、金属への密着性、樹脂の難燃性を十分に満足し、かつ長期にわたる信頼性に優れた材料である。従って、該感光性樹脂及びその組成物は、皮膜形成用材料、プリント(配線回路)基板製造の際のソルダーマスク、アルカリ現像可能なレジスト材料、接着剤、レンズ、ディスプレー、光ファイバー、光導波路、ホログラム等用の一成分として適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、R1、R2は炭素数1〜10の直鎖または分岐状の炭化水素基を表わし、且つR1、R2の何れか1種以上のアルキレン基中に水酸基を少なくとも1以上含有する。R1、R2は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。)で表されるアルコール化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)を反応させて得られる反応性化合物(A)。
【請求項2】
分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)が、(メタ)アクリル基を有するモノカルボン酸化合物である請求項1記載の反応性化合物(A)。
【請求項3】
請求項1又は2記載の反応性化合物(A)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
更に、反応性化合物(A)以外の分子中にエチレン性不飽和基を有する反応性化合物(B)を含有することを特徴とする請求項3記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
成形用材料である請求項3又は請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
皮膜形成用材料である請求項3又は請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
レジスト材料組成物である請求項3又は請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
請求項3ないし請求項7のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物の層を有する多層材料。

【公開番号】特開2009−29896(P2009−29896A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194225(P2007−194225)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】