説明

難燃性ホットメルト接着剤

【課題】 導体等の無機系材料や高分子フィルム等の有機系材料に対する優れた接着性と優れた難燃性とを両立させると共に、アンチブロッキング性が良く、耐熱性、絶縁性および耐屈曲性に優れた難燃性ホットメルト接着剤を提供すること。
【解決手段】 少なくともアルケンモノマーおよびエポキシ基含有(メタ)アクリレートからなるアルケン/エポキシ基含有(メタ)アクリレート系共重合体および難燃剤を含有することを特徴とする難燃性ホットメルト接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性ホットメルト接着剤、特に接着性、耐熱性、耐屈曲性等に優れ、且つ高い難燃性を有するフラットケーブル用難燃性ホットメルト接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の家電製品、通信機器、OA機器、自動車等の内部に多数の電線を配線する必要が生じてきた。ところが、使用される電線としては、銅線等の断面が略円形の導体に塩化ビニル等の絶縁層を被覆したものであり、使用する際には、多数の電線を束ねていた。そして、この多数の電線を束ねる作業は手作業で行わなければならず、極めて面倒で且つ非能率的であった。また、多数の機能を具備させるために、極めて多くの電線を必要とし、上記のような従来の電線では対応しきれなくなってきた。
【0003】
このような背景から、例えば、錫メッキ軟銅導体(以下導体と略す)からなる複数の導線を、その両側から絶縁基材等でサンドイッチ状に被覆したフラットケーブルが提案された。
【0004】
このフラットケーブルは、最近では、例えばプリンターや自動車等の配線に広く使用されており、難燃性、耐熱性、耐屈曲性等の要求が高まっている。ところで、このフラットケーブルの接着剤としては、ポリ塩化ビニル系(PVC)、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系等を主成分とするものが用いられている。
【0005】
上記接着剤に難燃性を付与する方法としては、無機物等の難燃剤を添加する方法がある。しかしながら、難燃性を向上させる為に、接着層中の難燃剤量を増加させると、導体との接着性が低下する。一方、導体接着性を向上させる為に、接着層中の難燃剤量を減少させると今度は難燃性が低下する。即ち、導体接着性と難燃性とが両立しないという欠点がある。
【0006】
また、このフラットケーブル用途の接着剤の多くは溶剤型であり、製造上で溶剤の乾燥工程を必要としたり、近年問題となっているシックハウス症候群等を引き起こす可能性がある。
【0007】
そこで、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンを含有するホットメルト型難燃性接着剤組成物(特許文献1)、および溶融加工性グラフトエチレン共重合体を含有するホットメルト接着剤組成物(特許文献2)が報告されている。しかしながら、それらの接着剤組成物を用いても、導体との接着性等が十分ではなかった。
【特許文献1】特開平10−130608号公報(請求項1等参照)
【特許文献2】特表2003−514080号公報(第0010〜0011段等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、導体等の無機系材料や高分子フィルム等の有機系材料に対する優れた接着性と優れた難燃性とを両立させると共に、アンチブロッキング性が良く、耐熱性、絶縁性および耐屈曲性に優れた難燃性ホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくともアルケンモノマーおよびエポキシ基含有(メタ)アクリレートからなるアルケン/エポキシ基含有(メタ)アクリレート系共重合体および難燃剤を含有することを特徴とする難燃性ホットメルト接着剤に関する。
【0010】
本明細書中、(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタクリレートの両者を包含する概念で用いるものとする。例えば、グリシジル(メタ)アクリレートはグリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートを包含して意味するものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の難燃性ホットメルト接着剤は、導体等の無機系材料や高分子フィルム等の有機系材料に対する優れた接着性と優れた難燃性とを両立させると共に、アンチブロッキング性が良く、耐熱性、絶縁性および耐屈曲性等にも優れている。この為、電気、電子機器、自動車等の電気配線部分又は家庭用屋内、屋外配線等の用途に大いに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る難燃性ホットメルト接着剤は、少なくともアルケン/エポキシ基含有(メタ)アクリレート系共重合体および難燃剤を含有してなるものである。
【0013】
アルケン/エポキシ基含有(メタ)アクリレート系共重合体(以下、単に共重合体ということがある)は、少なくともアルケンモノマーとエポキシ基含有(メタ)アクリレートとが直鎖状に付加重合してなるランダム型またはブロック型の共重合体であり、通常はランダム型共重合体である。
【0014】
アルケンモノマーは炭素原子数が2〜4である分枝状または直鎖状のアルケンモノマーであり、例えば、エチレン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロペン等が挙げられる。アルケンモノマーは2種類以上組み合わせて使用されてよいが、比較的入手しやすいという観点から、エチレンを単独で使用することが好ましい。
【0015】
エポキシ基含有(メタ)アクリレートはエポキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルであり、例えば、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル部分にエポキシ基を有するモノマーが使用される。そのようなエポキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートの具体例として、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート(GMA)、グリシジルメチル(メタ)アクリレート、2−グリシジルエチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。エポキシ基含有(メタ)アクリレートは2種類以上組み合わせて使用されてよいが、接着性の相乗効果が期待出来ない点、比較的入手しやすい点で、GMAを単独で使用することが好ましい。
【0016】
共重合体におけるエポキシ基含有(メタ)アクリレートの含有量は、接着性と耐熱性の観点から、当該共重合体を構成する全モノマーに対して5〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは6〜12重量%である。5重量%より少ないと導体との接着性が不足し、一方15重量%を越えると熱安定性が悪い為、ゲル化しやすくなる。
【0017】
共重合体におけるアルケンモノマーの含有量は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート含有量が上記範囲内であれば特に制限されず、通常は、当該共重合体を構成する全モノマーに対して75〜95重量%、特に80〜94重量%が適当である。
【0018】
共重合体は、アルケンモノマーおよびエポキシ基含有(メタ)アクリレート以外に他のモノマーを構成モノマーとして含んでよい。他のモノマーは1分子あたり重合性二重結合を1つ有するものであり、具体例として、例えば、酢酸ビニル、メチル(メタ)アクリレート、アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0019】
共重合体における上記他のモノマーの含有量は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート含有量が上記範囲内であれば特に制限されず、通常は、当該共重合体を構成する全モノマーに対して20重量%以下、特に10重量%以下が適当である。
【0020】
本発明においてアルケン/エポキシ基含有(メタ)アクリレート系共重合体の軟化点は、耐熱性をより有効に向上させる観点から、50℃以上であることが好ましく、接着剤の低温ヒートシール性の観点からは100℃以下であることが好ましい。より好ましい軟化点は60〜90℃である。
【0021】
本明細書中、軟化点は以下に示す方法によって測定された値を用いているが、以下の方法によって測定されなければならないというわけではなく、当該方法と同様の原理・原則に従って測定可能な方法であれば、いかなる方法によって測定されてもよい。
(測定方法はビカット軟化点;ASTM D1525)。
【0022】
また共重合体は、Tダイス等による押し出し加工による成膜上の観点から、MFR(メルトフローレート)が2〜280g/10分特に3〜250g/10分であることが好ましい。
【0023】
本明細書中、MFRはフローテスターCFT−100D(島津製作所社製)によって190℃/2.16kg荷重の条件下で測定された値を用いている。
【0024】
本発明の接着剤におけるアルケン/エポキシ基含有(メタ)アクリレート系共重合体の含有量は本発明の目的が達成される限り特に制限されないが、優れた接着性と優れた難燃性とをより有効に両立させる観点から、接着剤全量に対して30〜60重量%、特に35〜55重量%が好ましい。アルケン/エポキシ基含有(メタ)アクリレート系共重合体は2種類以上組み合わせて使用されてよく、その場合、それらの総含有量が上記範囲内であればよい。
【0025】
アルケン/エポキシ基含有(メタ)アクリレート系共重合体は公知の方法によって合成可能である。例えば、所定のモノマー混合物と活性触媒をパラフィン系有機溶媒中で100〜160℃の温度下で攪拌し合成する。合成は、上記のフィリップ法以外の方法によっても構わない。
【0026】
本発明において使用される難燃剤は従来から難燃性ホットメルト接着剤の分野で知られている難燃剤が使用可能であり、例えば、臭素系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤、メラミンシアヌレート、尿素、メラミン誘導体等を含むトリアジン環含有化合物、芳香族ポリフォスフェート等のリン酸エステル等の有機系難燃剤が挙げられる。これらの中でも、優れた接着性と優れた難燃性とをより有効に両立させる観点から、臭素系難燃剤、メラミンシアヌレートが好ましい。さらに耐環境性の観点からは、メラミンシアヌレートが好ましい。
【0027】
臭素系難燃剤とは、例えばテトラブロモビスフェノールA(TBBA)、デカブロモジフェニルオキサイド(DBDPO)等であり、例えば、市販品のSAYTEX CP−2000(アルベマール日本社製)、Geat Lakes BA−59P(グレートレイクスケミカル日本社製)、フレームカット120G(東ソー社製)として入手可能である。
メラミンシアヌレートとは、メラミンとシアヌール酸との縮合物であり、例えば、市販品のMC−610(日産化学社製)として入手可能である。
【0028】
難燃剤は、接着剤中での分散性向上、フィルム状にしたときのフィッシュアイによる外観不良防止、溶融粘度の増大防止および難燃性のさらなる向上の観点から、平均粒径1〜5μmのものを使用することが好ましい。
【0029】
難燃剤の含有量は、優れた接着性と優れた難燃性とをより有効に両立させ、かつ耐屈曲性をより向上させる観点から、接着剤全量に対して10〜50重量%が好ましい。
【0030】
本発明の接着剤にはさらに難燃助剤を含有させることが好ましい。
難燃助剤は難燃剤の難燃効果を促進するものであり、従来から難燃性ホットメルト接着剤の分野で知られている難燃助剤が使用可能である。例えば、三酸化アンチモン、赤燐、五酸化アンチモン、芳香族燐酸エステル等が挙げられる。
【0031】
難燃助剤は、難燃性のさらなる向上と溶融粘度の増大防止の観点から、平均粒径1〜5μmのものを使用することが好ましい。
【0032】
難燃助剤の含有量は、難燃性のさらなる向上と溶融粘度の増大防止の観点から、接着剤全量に対して3〜20重量%が好ましい。
【0033】
難燃助剤は上記の中でも、優れた接着性と優れた難燃性とを最も有効に両立させる観点から、使用される難燃剤に応じて適宜選択されることが好ましい。
詳しくは、例えば、難燃剤として臭素系難燃剤を使用する場合は、難燃助剤として三酸化アンチモンを使用することが好ましい。
また例えば、難燃剤としてメラミンシアヌレートを使用する場合は、難燃助剤として赤燐を使用することが好ましい。
【0034】
臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとを併用する場合において、優れた接着性と優れた難燃性との観点からは、臭素系難燃剤の含有量は接着剤全量に対して10〜35重量%、特に15〜30重量%が好ましく、三酸化アンチモンの含有量は接着剤全量に対して5〜20重量%、特に7〜15重量%が好ましい。そのような場合において臭素系難燃剤(A)と三酸化アンチモン(B)との含有割合(A:B)は重量比で1:1〜8:1、特に2:1〜4:1であることがより好ましい。
【0035】
メラミンシアヌレートと赤燐とを併用する場合において、優れた接着性と優れた難燃性との観点からは、メラミンシアヌレートの含有量は接着剤全量に対して20〜50重量%、特に22〜35重量%が好ましく、赤燐の含有量は接着剤全量に対して3〜10重量%、特に5〜6重量%が好ましい。そのような場合においてメラミンシアヌレート(A)と赤燐(B)との含有割合(A:B)は重量比で2:1〜20:1、特に3:1〜6:1であることがより好ましい。
【0036】
本発明の接着剤の難燃性を向上させる為に、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、タルク等の無機フィラーを含有させることができる。無機フィラーの含有量は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではないが、接着剤全量に対して、例えば、40〜70重量%で含有させることができる。
【0037】
本発明の接着剤にはさらに、ホウ酸亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸亜鉛、酸化バリウム、酸化ジルコニウム等の別の難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料を、本発明の目的が達成される範囲内で含有させてもよい。
【0038】
本発明の接着剤は、種々の方法によって製造できるが、溶融混合法が好ましい。例えば上記した各種成分からなる混合物を、溶融釜、ニーダー、ミキシングロール、押出機、インターナルミキサー等により溶融・混練すればよい。混練後は、通常、冷却およびカッティングしてペレット状接着剤を得ることができる。得られたペレット状接着剤を予め溶融しておき、高分子フィルム等の有機系材料にTダイス等によって押し出し加工し、被着体を加熱圧締し、冷却することによって、容易に接着可能である。加熱圧締温度は通常、120〜180℃、特に130〜170℃である。
【0039】
本発明の接着剤は特に、いわゆるフラットケーブルの製造に有用である。フラットケーブルは、導体からなる複数の導線を、その両側から2枚の絶縁基材でサンドイッチ状に被覆・挟持してなるものであり、本発明の接着剤は2枚の絶縁基材の接着に使用される。
【0040】
絶縁基材としては特に制限されず、通常は高分子フィルムが使用される。高分子フィルムは、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムと略す)、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。中でも機械的強度、電気絶縁性および耐熱性等とコストとのバランスが良いという理由からPETフィルムが好適である。
【0041】
上記高分子フィルム面上には、接着剤を適用するに先立って、予めプライマー層を形成しておき、接着剤層とフィルムとの接着性を向上させることができる。このプライマーは特に限定するものではなく、有機チタン化合物、有機シラン化合物等を主成分とするものが挙げられる。例えば、プライマーとして有機チタン化合物を使用する場合、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートのアルキルエステルタイプやチタニウムアセチルアセトネート、トリエタノールアミンチタネートのようなキレートタイプのチタネートの稀薄溶液で表面を処理し、空気中の水分で加水分解すると非結晶性の酸化チタンフィルムが形成される。その結果、表面の極性が増加し、よって、接着剤層とフィルムとの接着性が向上する。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
プライマーはA−1(日本曹達社製)を用いた。
炭酸カルシウムはホワイトンSB(白石カルシウム社製)を用いた。
臭素系難燃剤はSAYTEX CP−2000(アルベマール日本社製)を用いた。
三酸化アンチモンは三酸化アンチモン(日本精鉱社製)を用いた。
メラミンシアヌレートはMC−610(日産化学社製)を用いた。
赤燐はノーバエクセルF5(燐化学工業社製)を用いた。
【0043】
得られた接着剤の各物性の評価は次のような方法で行った。
1.接着性(剥離強度)
(1)PET−導体間
厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布し、得られた接着剤の膜厚が40μmとなるようにホットプレスの装置を用いて150℃の温度で溶融させ加熱圧締後冷却した。これと厚さが50μmの導体(幅0.8mm)をホットプレスの装置を用いて150℃、3kg/cm、3秒間で溶融させ加熱圧締後冷却した。この作製した試験片のT字剥離強度を引張速度50mm/minで測定した(導体幅0.8mm)。0.8N以上が実用上問題のない範囲であり、好ましくは1.0N以上、より好ましくは1.2N以上、最も好ましくは1.4N以上である。
【0044】
(2)PET−PET間
厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布し、得られた接着剤の膜厚が40μmとなるようにホットプレスの装置を用いて150℃の温度で溶融させ加熱圧締後冷却した。このPETフィルム同志をホットプレスの装置を用いて150℃、3kg/cm、3秒間で溶融させ加熱圧締し冷却した。この作製した試験片のT字剥離強度を引張速度50mm/minで測定した(試験片幅10mm)。10N以上が実用上問題のない範囲であり、好ましくは11N以上、より好ましくは12N以上、最も好ましくは14N以上である。
【0045】
2.耐熱性
25μm厚PET/40μm厚ホットメルト接着剤層/導体/40μm厚ホットメルト接着剤層/25μm厚PETの積層体を、ホットプレスの装置を用いた150℃の温度で溶融させ加熱圧締後冷却し作製した。積層体を折り曲げ、113℃中に7日間放置し、浮き等が生じるかどうか確認した。このとき、生じなかったものを○、生じたものを×で評価した。
【0046】
3.耐屈曲性
25μm厚PET/40μm厚ホットメルト接着剤層/導体/40μm厚ホットメルト接着剤層/25μm厚PETの積層体を、ホットプレスの装置を用いた150℃の温度で溶融させ加熱圧締後冷却し作製した。積層体を常態で折り曲げ、浮き等が生じるかどうか確認した。このとき、生じなかったものを○、生じたものを×で評価した。
【0047】
4.アンチブロッキング性
得られた接着剤の膜厚が40μmとなるようにホットプレスの装置を用いてフィルム状に調整した。この接着剤とPETフィルムを共に50mm×50mmのサイズにカットし、交互に積層した(総積層数10枚)。この積層体の最上部から1.25kgの荷重を加え、50℃中で24時間放置し、接着剤とPETフィルムの間のブロッキングの有無を確認した。このとき、ブロッキングが生じなかったものを○、ブロッキングが生じたものを×で評価した。
5.難燃性
UL規格VW−1に準じて測定し、自消したものを○、自消しなかったものを×で評価した。
【0048】
(実施例1)
エチレン含有量88%/GMA含有量12%で、MFRが3g/10min、ビカット軟化点が75℃であるエチレン/GMA共重合体(住友化学社製ボンドファーストE)38g、臭素系難燃剤18g、三酸化アンチモン7g、炭酸カルシウム37gを2軸混合機を用いて180℃で1時間混練してホットメルト型難燃性接着剤を調製した。厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布しこの接着剤と加熱圧締等行い各種試験を実施した。得られた試験結果は表1に示すように、接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性のいずれにおいても優れたものであった。
【0049】
(実施例2)
エチレン含有量83%/GMA含有量12%/酢酸ビニル含有量5%で、MFRが3g/10min、ビカット軟化点が68℃であるエチレン/GMA/酢酸ビニル共重合体(住友化学社製ボンドファースト2B)38g、臭素系難燃剤18g、三酸化アンチモン7g、炭酸カルシウム37gを2軸混合機を用いて180℃で1時間混練してホットメルト型難燃性接着剤を調製した。厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布しこの接着剤と加熱圧締等行い各種試験を実施した。得られた試験結果は表1に示すように、接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性のいずれにおいても優れたものであった。
【0050】
(実施例3)
エチレン含有量83%/GMA含有量12%/酢酸ビニル含有量5%で、MFRが7g/10min、ビカット軟化点が66℃であるエチレン/GMA/酢酸ビニル共重合体(住友化学社製ボンドファースト7B)38g、臭素系難燃剤18g、三酸化アンチモン7g、炭酸カルシウム37gを2軸混合機を用いて180℃で1時間混練してホットメルト型難燃性接着剤を調製した。厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布しこの接着剤と加熱圧締等行い各種試験を実施した。得られた試験結果は表1に示すように、接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性のいずれにおいても優れたものであった。
【0051】
(実施例4)
エチレン含有量94%/GMA含有量6%で、MFRが3g/10min、ビカット軟化点が83℃であるエチレン/GMA共重合体(住友化学社製ボンドファースト2C)38g、臭素系難燃剤18g、三酸化アンチモン7g、炭酸カルシウム37gを2軸混合機を用いて180℃で1時間混練してホットメルト型難燃性接着剤を調製した。厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布しこの接着剤と加熱圧締等行い各種試験を実施した。得られた試験結果は表1に示すように、接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性のいずれにおいても優れたものであった。
【0052】
(実施例5)
エチレン含有量88%/GMA含有量12%で、MFRが3g/10min、ビカット軟化点が75℃であるエチレン/GMA共重合体(住友化学社製ボンドファーストE)38g、メラミンシアヌレート24g、赤燐8g、炭酸カルシウム30gを2軸混合機を用いて180℃で1時間混練してホットメルト型難燃性接着剤を調製した。厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布しこの接着剤と加熱圧締等行い各種試験を実施した。得られた試験結果は表1に示すように、接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性のいずれにおいても優れたものであった。
【0053】
(実施例6〜7)
実施例1の配合を表1の配合に変えて行った以外は実施例1と同様にしてホットメルト型難燃性接着剤を調製し、試験片を作製して、各種試験を行った。得られた試験結果は表1に示すように接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性のいずれにおいても優れたものであった。
【0054】
【表1】

【0055】
(比較例1)
エチレン含有量90%/メチルメタクリレート含有量10%で、MFRが7g/10min、ビカット軟化点が75℃であるエチレン/メチルメタクリレート共重合体(住友化学社製アクリフトWD301)38g、臭素系難燃剤18g、三酸化アンチモン7g、炭酸カルシウム37gを2軸混合機を用いて180℃で1時間混練してホットメルト型難燃性接着剤を調製した。厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布しこの接着剤と加熱圧締等行い各種試験を実施した。得られた試験結果は表2に示すように、接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性の少なくともいずれかが劣っていた。
【0056】
(比較例2)
エチレン含有量82%/メチルメタクリレート含有量18%で、MFRが7g/10min、ビカット軟化点が60℃であるエチレン/メチルメタクリレート共重合体(住友化学社製アクリフトWH303)38g、臭素系難燃剤18g、三酸化アンチモン7g、炭酸カルシウム37gを2軸混合機を用いて180℃で1時間混練してホットメルト型難燃性接着剤を調製した。厚さ25μmのPETフィルムにプライマーを塗布しこの接着剤と加熱圧締等行い各種試験を実施した。得られた試験結果は表2に示すように、接着性、耐熱性、耐屈曲性、アンチブロッキング性、難燃性の少なくともいずれかが劣っていた。
【0057】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の難燃性ホットメルト接着剤は、電子機器および自動車等の電気配線部分又は家庭用または業務用の屋内および屋外の電気配線部分等で使用される接着剤として大いに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアルケンモノマーおよびエポキシ基含有(メタ)アクリレートからなるアルケン/エポキシ基含有(メタ)アクリレート系共重合体および難燃剤を含有することを特徴とする難燃性ホットメルト接着剤。
【請求項2】
アルケン/エポキシ基含有(メタ)アクリレート系共重合体のエポキシ基含有(メタ)アクリレート含有量が5〜15重量%であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性ホットメルト接着剤。
【請求項3】
アルケン/エポキシ基含有(メタ)アクリレート系共重合体の含有量が30〜60重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性ホットメルト接着剤。
【請求項4】
アルケン/エポキシ基含有(メタ)アクリレート系共重合体の軟化点が50〜100℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ホットメルト接着剤。
【請求項5】
難燃剤が臭素系難燃剤であり、さらに三酸化アンチモンを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ホットメルト接着剤。
【請求項6】
難燃剤がメラミンシアヌレートであり、さらに赤燐を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ホットメルト接着剤。

【公開番号】特開2007−45947(P2007−45947A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232320(P2005−232320)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(591158690)ダイアボンド工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】