説明

難燃性合成繊維、難燃繊維複合体およびそれを用いた炎遮断性バリア用不織布

【課題】燃焼時に極めて高度な炭化性、柔軟性、および形態保持製を発現する、高度な難燃性を必要とする繊維製品に好適に使用できる難燃性合成繊維、難燃性複合体、およびそれを用いたマットレスを提供する。
【解決手段】アクリロニトリル単位30〜70重量%、塩素含有ビニルおよび/または塩素含有ビニリデン単量体単位70〜30重量%、およびこれらと共重合可能なビニル系単量体単位0〜10重量%からなる塩素含有重合体100重量部に対して、酸化亜鉛の含有割合が20〜80重量%である酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体3〜55重量部、およびアンチモン化合物0〜30重量部を含有し、かつ前記複合体とアンチモン化合物の合計が3〜55重量部である難燃性合成繊維。(A)難燃性合成繊維10重量%以上、および(B)天然繊維および/または化学繊維90重量%以下からなる難燃繊維複合体および該難燃繊維複合体を用いたマットレス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具や家具等に用いられる高度な難燃性を必要とする繊維製品に好適に使用できる高度な難燃性を有する難燃性合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衣食住の安全性確保の要求が強まり、防炎の観点より難燃素材の必要性が高まってきている。そのような中で、特に発生時に人的被害が大きい就寝中の火災を防止するため、寝具や家具等に使用される素材への難燃性付与の必要性が高まってきている。
【0003】
これら寝具や家具等の製品においては、使用時の快適さや意匠性のために綿やポリエステル、ウレタンフォームなどの易燃性素材がその内部や表面に用いられることが多い。それらの防炎性の確保には、適当な難燃素材をこれら製品中に使用することで、その易燃性素材への着炎を長時間にわたり防止する高度な難燃性を具備することが重要である。また、その難燃素材は、これら寝具や家具等の製品の快適さや意匠性を損なわないものでなければならない。
【0004】
この難燃素材に使用される繊維製品に対し、過去様々な難燃性合成繊維や防炎薬剤が検討されてきたが、この高度な難燃性と寝具や家具等の製品に求められる快適さや意匠性といった要件を充分に兼ね合わせたものは未だ現れていない。
【0005】
例えば、綿布に防炎薬剤を塗布する、いわゆる後加工防炎という手法があるが、防炎薬剤の付着の均一化、付着による布の硬化、洗濯による脱離、安全性などの問題があった。
【0006】
また、安価な素材であるポリエステルを用いた場合には、ポリエステルは炭化成分となりえないため、強制燃焼させた場合には溶融し穴が空き、構造を維持することができず、前述の寝具や家具等に用いられる綿やウレタンフォームへ着炎してしまい、性能としては全く不充分であった。
【0007】
また、耐熱性繊維は、難燃性には優れているが極めて高価であり、さらに布帛とする際の開繊時等加工性の問題や、布帛自体の吸湿性や触感の悪さ、そして染色性の悪さから意匠性の高い色柄を得るのが難しいという問題もある。
【0008】
前述のような家具、寝具に使用される難燃繊維素材の欠点を改良し、一般的な特性として要求される優れた風合、吸湿性、触感を有し、かつ、安定した難燃性を有する素材として、難燃剤を大量に添加した高度に難燃化した含塩素繊維と、難燃化していない他の繊維とを組み合わせた難燃繊維複合体(特許文献1)が提案されている。また、耐熱性繊維を少量混ぜることで、作業服用途に使用可能な高度難燃繊維複合体(特許文献2)が、風合いや吸湿性に優れ、高度な難燃性を有するとの記載はあるが、有機耐熱繊維は一般に着色し布帛の白度が不充分であり、意匠性に問題のある難燃繊維複合体であった。さらに、本質的に難燃性である繊維と含塩素繊維から嵩高さを有する難燃性不織布(特許文献3)が提案されているが、複数の繊維を複合化して用いなければ高度な難燃性が得られず、製品の製造工程が複雑になり、また、有機耐熱繊維や本質的に難燃性である繊維は一般的に高価でありコスト的に不利であるという問題点があった。
【0009】
【特許文献1】特開昭61−89339号公報
【特許文献2】特開平8−218259号公報
【特許文献3】国際公開第03/023108号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、風合い、触感、視感などの意匠性や加工性に優れ、高度な難燃性を必要とする繊維製品に好適に使用できる難燃性合成繊維、難燃性複合体、およびそれを用いたマットレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、塩素を含有する合成繊維に酸化亜鉛および縮合リン酸系化合物の複合体を含有させることで、加工性や風合い、触感は良好なまま、高度な難燃性を獲得できることを見出した。この結果、意匠性を損なうことなく、かつ長時間の炎にも耐え得る難燃性や形態保持性を兼ね備えた家具、寝具等に用いられる繊維製品を得る事が可能な難燃性合成繊維が安価に得られることを見出した。また、耐熱性繊維単独で使用するときの問題であった、加工性や価格の問題も改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、アクリロニトリル単位30〜70重量%、塩素含有ビニルおよび/または塩素含有ビニリデン単量体単位70〜30重量%、およびこれらと共重合可能なビニル系単量体単位0〜10重量%からなる塩素含有重合体100重量部に対して、酸化亜鉛の含有割合が20〜80重量%である酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体3〜55重量部、およびアンチモン化合物0〜30重量部を含有し、かつ前記酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体とアンチモン化合物の合計が3〜55重量部である難燃性合成繊維に関する。
【0013】
前記縮合リン酸塩系化合物が、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、トリメタリン酸塩、およびテトラメタリン酸塩から選択される少なくとも一種の化合物であることが好ましい。
【0014】
前記縮合リン酸塩化合物が、トリポリリン酸塩であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、(A)前記難燃性合成繊維10重量%以上、および(B)天然繊維および化学繊維の少なくとも1種の繊維90重量%以下からなる難燃繊維複合体に関する。
【0016】
繊維(B)がポリエステル系繊維であり、かつ難燃繊維複合体中の含有量が40重量%以下であることが好ましい。
【0017】
前記ポリエステル系繊維が、低融点バインダー繊維であることが好ましい。
【0018】
前記低融点バインダー繊維が、低融点ポリエステル単一成分よりなる繊維、融点が200℃を超えるポリエステルと低融点ポリエステルの複合よりなる繊維、融点が200℃を超えるポリエステルと低融点ポリオレフィンの複合よりなる繊維から選択される少なくとも一種の繊維であることが好ましい。
【0019】
前記難燃繊維複合体が不織布であることが好ましい。
【0020】
前記不織布は炎遮蔽バリア用不織布として用いることができる。
【0021】
さらに、本発明は、前記炎遮断性バリア用不織布を用いたマットレスに関する。
【0022】
マットレスにおける炎遮断性バリア用不織布の目付けが250〜400g/m2であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の難燃性合成繊維、それを用いた難燃性複合体をマットレスなどの寝具製品に用いることで、風合い、触感、視感などの意匠性や加工性に優れ、長時間の炎にも耐え得る高度な難燃性や形態保持性を有することを可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の難燃性合成繊維(塩素含有繊維)は、アクリロニトリル単位30〜70重量%、塩素含有ビニルおよび/または塩素含有ビニリデン単量体単位70〜30重量%、およびこれらと共重合可能なビニル系単量体単位0〜10重量%からなる塩素含有重合体100重量部に対して、酸化亜鉛の含有割合が20〜80重量%である酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体3〜55重量部、およびアンチモン化合物0〜30重量部を含有し、かつ前記酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体とアンチモン化合物を合計で3〜55重量部含有する。
【0025】
前記塩素含有ビニルおよび塩素含有ビニリデンの具体例としては、塩化ビニル、塩化ビニリデンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。得られる繊維の難燃性、価格、入手性、取扱いの容易さなどから、塩化ビニル、塩化ビニリデンが好ましい。
【0026】
塩素含有ビニル単位および塩素含有ビニリデン単位の両者を含む場合は、これらの重量比としては、90:10〜10:90であることが好ましく、70:30〜30:70であることがより好ましい。両者の重量比をこの範囲とすることにより、得られる繊維が所望の性能(強度、難燃性、染色性、白度など)を有し、かつアクリル繊維としての風合いも有する繊維とすることができる。
【0027】
前記共重合可能なビニル系単量体としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸基含有ビニル系単量体およびそれらの塩などがあげられ、1種または2種以上を用いることができる。なかでも、少なくとも1種がスルホン酸基含有ビニル系単量体の場合には、染色性が向上するため好ましい。
【0028】
前記塩素含有重合体は、塩素原子を17重量%以上含むことが好ましく、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは26重量%以上である。塩素原子含有量の上限としては85重量%であることが好ましく、より好ましくは73重量%、さらに好ましくは48重量%である。前記塩素原子含有量が17重量%未満の場合、繊維を難燃化することが困難になり、好ましくない。前記塩素原子含有量が85重量%を超えることは、技術的に現実的ではなくなる傾向がある。
【0029】
本発明において、前記塩素含有重合体が、アクリロニトリル単位30〜70重量%、塩素含有ビニルおよび/または塩素含有ビニリデン単量体単位70〜30重量%、およびそれらと共重合可能なビニル系単量体単位0〜10重量%を含むことが好ましい。得られる繊維が強度、難燃性、染色性などの所望の性能を有し、かつアクリル繊維の風合を有することから、前記アクリロニトリル単位はより好ましくは40〜60重量%であり、塩素含有ビニルおよび/または塩素含有ビニリデン単量体単位はより好ましくは60〜40重量%、およびそれらと共重合可能なビニル系単量体単位はより好ましくは0.1〜5重量%であることが特に好ましい。
【0030】
前記アクリロニトリル単位が30重量%未満の場合や、塩素含有ビニルおよび/または塩素含有ビニリデン単量体単位が70重量%を超える場合は、得られる布帛の耐熱性が充分でない傾向があり、前記アクリロニトリル単位が70重量%を超える場合や、塩素含有ビニルおよび/または塩素含有ビニリデン単量体単位が30重量%未満の場合は、難燃性が充分でなくなる傾向がある。また、共重合可能なビニル系単量体は、所望の染色性、風合いの改善などのために使用されるが、10重量%を超える場合は、塩素含有難燃性繊維の特徴である難燃性と風合いが充分活かせなくなる傾向がある。
【0031】
前記塩素含有ビニル系単量体および/または塩素含有ビニリデン単量体、およびアクリロニトリルからの単位を含む共重合体の具体例としては、例えば塩化ビニル50部、アクリロニトリル49部、スチレンスルホン酸ソーダ1部よりなる共重合体、塩化ビニリデン47部、アクリロニトリル51.5部、スチレンスルホン酸ソーダ1.5部よりなる共重合体、塩化ビニリデン41部、アクリロニトリル56部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ソーダ3部などがあげられる。これは、既知の重合方法で得ることができる。
【0032】
本発明の難燃性合成繊維は、酸化亜鉛(ZnO)の含有割合が20〜80重量%である酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体3〜55重量部を含む。該酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体を、前記塩素含有重合体に含有することにより、得られる難燃性合成繊維を用いた難燃性寝具製品、家具などを燃焼させたときに、燃焼後、繊維内に残存し形態を保持する働きがある。また、推定ではあるが、縮合リン酸塩系化合物の存在および酸化亜鉛の活性により、つまり、酸化亜鉛が前記塩素含有繊維中の塩素と容易に反応して塩化亜鉛となり、この塩化亜鉛が前記重合体中の分子鎖間架橋反応の触媒として作用する働きが適度に弱められるため、酸化亜鉛の存在による燃焼時の塩素含有繊維の高収縮を抑制、炭化速度を弱め、燃焼後の繊維炭化物が硬く脆くなる性質を抑えることができる。前記高収縮、硬く脆くなる性質は、寝具製品や家具製品の一部の難燃試験、例えば米国カリフォルニア州燃焼試験TB603におけるマットレスのボーダー部分の試験において、塩素含有繊維、セルロース系繊維を含む不織布を用いた場合、収縮あるいは割れにより不織布に穴明きが発生して、そこから内部の易燃性ウレタンに着火するため、前記試験に不合格になる場合があり、難燃性合成繊維における問題点とされている点である。
【0033】
縮合リン酸塩系化合物としては、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩などの鎖状ポリリン酸塩、トリメタリン酸塩、テトラメタリン酸塩などの環状ポリリン酸塩などをあげることができるがこれらに限定されるものではなく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。具体的には、鎖状ポリリン酸塩としては、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸二水素アルミニウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウムなどのトリポリリン酸塩などがあげられ、環状ポリリン酸塩としては、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸アルミニウム、テトラメタリン酸ナトリウム、テトラメタリン酸アルミニウムなどがあげられる。なかでも、燃焼時の温度領域(500℃〜1000℃)において、その一部が溶融し、繊維表面にガラス皮膜を形成する効果が高いため、燃焼時、繊維形態保持効果を強め、さらには燃焼後の繊維炭化物に柔軟性を付与することから、トリポリリン酸塩が特に好ましい。
【0034】
前記酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体を作製する方法としては、特に限定されるものではないが、湿式反応により40〜100℃の温水中で前記酸化亜鉛と縮合リン酸塩系化合物を反応させた後、ろ過、乾燥、粉砕させたものが好ましい。この方法により、酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体の形状として、縮合リン酸塩系化合物の表面を酸化亜鉛で被覆(コーティング)したもの、あるいは縮合リン酸塩系化合物と酸化亜鉛が化学的あるいは物理的力で結合あるいは接着した形状が得られる。前記塩素含有重合体を含有する紡糸原液に添加した際、酸化亜鉛と縮合リン酸塩系化合物が近接していないと、局部的に縮合リン酸系塩による酸性、あるいは酸化亜鉛による塩基性が生じ、紡糸原液がゲル化あるいは着色して、紡糸性が悪くなるだけでなく、視感の良い繊維を安定して得ることができない。
【0035】
本発明においては、酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体における酸化亜鉛と縮合リン酸塩系化合物は含有割合が、20:80〜80:20重量%となるように配合する。前記割合は、25:75〜75:25重量%がより好ましく、さらに好ましくは33:67〜67:33重量%である。酸化亜鉛の含有量が20重量%未満の場合は、燃焼時に前記塩素含有繊維が充分に架橋、炭化せずに、溶融するため、例えば本発明の難燃性合成繊維をベットカバーとして用いた寝具製品に炎を晒すと、加熱部分に穴明きが生じ、炎が内部の易燃性物質であるウレタンフォーム等に着火するため、充分な難燃性能を得ることができない。酸化亜鉛の含有量が80重量%を超える場合は、燃焼時、前記合成繊維が容易に架橋、炭化して繊維炭化物となるが、縮合リン酸塩系化合物量が酸化亜鉛に対して20重量%未満となるため、繊維炭化物に柔軟性を付与することができない。
【0036】
前記酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体の含有量は、塩素含有重合体100重量部に対して3〜50重量部であり、好ましくは4〜40重量部、より好ましくは5〜30重量部である。前記酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体の含有量が3重量部未満の場合は、燃焼後に塩素含有重合体の形態を保持する効果(形態保持効果)が少なくなる傾向があり、所望とする高度な難燃性能を得る必要な形態保持効果を得ることができない。前記酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体の含有量が50重量部を超えると、充分な形態保持効果は得られるが繊維化時の製造工程において糸切れなどが発生するため好ましくない。
【0037】
前記酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体の平均粒子径としては、5μm以下であることが塩素含有重合体に酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体成分を添加してなる繊維の製造工程上におけるノズル詰りなどのトラブル回避、繊維の強度向上、繊維中での酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体成分粒子の分散などの点から好ましい。
【0038】
本発明に用いるアンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどの酸化アンチモン化合物、アンチモン酸やその塩類、オキシ塩化アンチモンなどの無機アンチモン化合物などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。またこれらを組み合わせて使用してもよい。
【0039】
アンチモン化合物は、前記塩素含有重合体に添加することで、燃焼により脱離した塩素原子と容易に反応し、塩化アンチモン化合物になる。塩化アンチモン化合物は低沸点化合物であり、そのガスは不燃性のため、燃焼個所の酸素を遮断し燃焼を抑制し消火する、いわゆる自己消火効果示す為、前記塩素含有重合体100重量部に対し、酸化亜鉛の含有割合が20〜80重量%である酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体3〜55重量部含有する難燃性合成繊維に自己消火性能を付与することができるが、燃焼後の形状維持性が重要であり、燃焼時の自己消化性は特に必要としない場合、アンチモン化合物を前記塩素含有重合体に添加する必要はない。また、アンチモン化合物を使用する場合は、30重量部以下とすることが好ましい。30重量部を超えると、添加効果が飽和しコスト高の要因となるため好ましくない。
【0040】
本発明の難燃性合成繊維には、必要に応じて帯電防止剤、熱着色防止剤、耐光性向上剤、白度向上剤、失透性防止剤、着色剤、難燃剤といったその他添加剤を含有してもよい。
【0041】
本発明の難燃性合成繊維は、塩素含有重合体を用いて、湿式紡糸法、乾式紡糸法、半乾半湿式法等の公知の製造方法で製造することができる。例えば湿式紡糸法では、前記重合体をN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトン、ロダン塩水溶液等の溶媒に溶解後、ノズルを通じて凝固浴に押出して凝固させ、次いで水洗、乾燥、延伸、熱処理し、必要であれば捲縮を付与し切断することで製造される。
【0042】
本発明の難燃性合成繊維は、短繊維でも長繊維でもよく、使用方法において適宜選択することが可能であり、例えば他の天然繊維および化学繊維と複合させて加工するには複合させる繊維に近似なものが好ましく、繊維製品用途に使用される他の天然繊維および化学繊維に合わせて、1.7〜12dtex程度、カット長38〜128mm程度の短繊維が好ましい。
【0043】
前記塩素含有繊維において炭化速度が速いと、推定ではあるが、燃焼時に繊維が急速に炭化し、燃焼後、硬く脆くなる。一方、炭化速度が遅いと、燃焼時に繊維が炭化する前に、軟化、溶融するために、燃焼後、繊維が形状を保持しなくなる。ここで、炭化速度とは、TMA(熱応力歪測定装置)にて測定されるもので、初期サンプル長を100%とし、150〜250℃付近に現われる初期収縮の下式で求められる収縮速度
収縮速度[%・℃-1]=
初期収縮率[%]/(初期収縮終了温度[℃]−初期収縮開始温度[℃])
をいう。
【0044】
炭化速度と本発明の繊維、またはその繊維を用いた寝具製品や家具製品の難燃性との関係は、試験の方法、合否判定基準などによって異なってくるが、本発明の塩素含有繊維、あるいはその繊維を用いた寝具製品や家具製品の燃焼後、前記繊維あるいは前記繊維を用いた製品に柔軟性を要求されるような場合、例えば米国カリフォルニア州難燃試験TB603における試験体(マットレス)のボーダー部分(マットレスの側面)においては、燃焼後、マットレス本体の荷重を支えるために、ある程度の形状維持性、および柔軟性が要求されるため、炭化速度は、軟化、溶融してしまわない程度に遅い方が好ましい。本発明のハロゲン含有重合体の炭化速度は、特に限定されるものではないが、たとえば、炭化速度が2.0〜3.5%・℃-1であることが好ましい。
【0045】
本発明は、(A)前記難燃性合成繊維10重量%以上、および(B)天然繊維、化学繊維の少なくとも1種の繊維90重量%以下からなる難燃繊維複合体に関する。
【0046】
本発明に用いる繊維(B)は、本発明の難燃性繊維複合体に優れた風合、触感、意匠性、製品強力、耐洗濯性、耐久性を与えるため、また寝具や家具に難燃性不織布を用いる際の加工性を良好にする成分である。
【0047】
前記天然繊維の具体例としては、例えば綿、麻などの植物性繊維、羊毛、らくだ毛、山羊毛、絹などの動物性繊維などがあげられる。また化学繊維の具体例としては、たとえばビスコースレーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維などの再生繊維、再生繊維に水ガラスを含有せしめた特殊再生繊維(セテリ オサケュスティオ製、VISIL 登録商標)、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエステル系低融点バインダー繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維などの合成繊維があげられるが、これらに限定されるものではない。繊維(B)は単独で用いてもよく、2種類以上を使用してもよい。
【0048】
本発明において、前記繊維(B)がポリエステル系繊維を含有する場合は、燃焼時に溶融物が生じ、難燃性不織布を覆うことで難燃性不織布により形成される炭化層がより強固なものとなり、激しい炎に長時間晒されても寝具や家具に用いられる綿やウレタンフォームへの着炎を防ぐ炎遮蔽バリア性能を付与することができること、不織布に加工した際の嵩高性が得やすいこと、開繊機(カード)において難燃性合成繊維(A)の強度の問題から繊維が破損することを緩和することができるため、前記繊維(B)がポリエステル系繊維を含むことが好ましい。
【0049】
前記繊維(B)としてポリエステル系繊維を用いる場合の含有量は、難燃繊維複合体中40重量%以下とすることが好ましく、15〜25重量%含むことがより好ましい。前記含有量が40重量%を超える場合は、燃焼時にポリエステル系繊維が溶融し、炎遮断バリアに穴明きが生じるため、難燃性が劣る傾向がある。前記含有量が、15重量%未満の場合は、燃焼時に生じる溶融物が充分に難燃性複合体を覆うことができず、炎遮蔽バリア性能が不充分となる傾向がある。
【0050】
前記ポリエステル系低融点バインダー繊維を用いた場合は、本発明の難燃繊維複合体を不織布とする際に簡便な熱溶融接着法が採用できる。ポリエステル系低融点バインダー繊維としては、低融点ポリエステル単一型繊維でもよくポリエステル/低融点ポリプロピレン、低融点ポリエチレン、低融点ポリエステルからなる並列型もしくは芯鞘型複合型繊維でもよい。一般に、低融点ポリエステルの融点は概ね110〜200℃、低融点ポリプロピレンの融点は概ね140〜160℃、低融点ポリエチレンの融点は概ね95〜130℃であり、概ね110〜200℃程度で融解接着能力を有するものであれば特に限定されない。また、前述のような低融点ではないポリエステル系繊維を使用した場合、不織布とする際に簡便なニードルパンチ法が採用できる。
【0051】
本発明においては、難燃繊維複合体は、(A)難燃性合成繊維10重量%以上と(B)天然繊維および化学繊維の少なくとも一種の繊維90重量%以下とから、本発明の難燃性布帛が製造されるが、難燃性合成繊維(A)および繊維(B)の混合割合は、得られる難燃繊維複合体から製造される最終製品に要求される難燃性とともに、吸水性、風合、吸湿性、触感、意匠性、製品強力、耐洗濯性、耐久性などの品質に応じて決定される。一般に、難燃性合成繊維(A)90〜10重量%が好ましく、より好ましくは60〜20重量%である。繊維(B)は10〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは80〜40重量%である。本発明における難燃繊維複合体から不織布を製造する際に熱溶融接着法を選択する場合には、天然繊維および/または化学繊維(B)として、ポリエステル系低融点バインダー繊維を少なくとも難燃繊維複合体に対し10重量%含むことが好ましい。
【0052】
難燃性合成繊維(A)の混合割合が10重量%未満の場合は、激しい炎に長時間晒されたときに寝具や家具に用いられる綿やウレタンフォームへの着炎を防ぐための炭化層形成が不充分であり、所望とする高度な難燃性能を得ることが難しい傾向がある。
【0053】
本発明の難燃繊維複合体は、前記繊維(A)および(B)が複合したものであり、織物編物、不織布などの布帛、スライバーやウェブなどの繊維の集合体、紡績糸や合糸・撚糸などの糸状物、編み紐、組み紐などのヒモ状物のごとき形態のものである。
【0054】
前記複合したとは、繊維(A)、(B)をさまざまな方法で混ぜ合わせて前記所定の比率で含有する布帛などを得ることをいい、混綿、紡績、撚糸、織り、編みの段階でそれぞれの繊維や糸を組み合わせることを意味する。なかでも、加工性の点から不織布であることが好ましい。
【0055】
本発明の難燃繊維複合体は炎遮蔽バリア用不織布として好適に用いられる。ここでいう炎遮蔽バリアとは、難燃性不織布が炎に晒された際に難燃性不織布が繊維の形態を維持したまま炭化することで炎を遮蔽し、反対側に炎が移るのを防ぐことであり、具体的にはマットレスや布張り家具等の表面生地と内部構造体であるウレタンフォームや詰め綿等との間に本発明の難燃性不織布をはさむことで、火災の際に内部構造物への炎の着火を防ぎ、被害を最小限に食い止めることができるものである。
【0056】
難燃性不織布の製造方法としては一般的な熱溶融接着法、ケミカルボンド法、ウォータージェット法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法等の不織布作製方法を用いることが可能であり、複数の種類の繊維を混綿した後にカードにより開繊、ウェブ作成を行い、このウェブを不織布製造装置にかけることにより作成される。装置の簡便さからはニードルパンチ方式、ポリエステル系低融点バインダー繊維を用いれば熱溶融接着方式による製造が一般的で生産性が高いため好ましいがこれらに限定されるものではない。
【0057】
本発明は、また、前記炎遮断性バリア用不織布を用いたマットレスに関する。
【0058】
本発明の炎遮蔽バリア用不織布の目付けとしては、250〜400g/m2であることが好ましい。炎遮断バリア用不織布の目付けが250g/m2未満であると、充分な難燃性能を示さない傾向があり好ましくない。また、炎遮断バリア用不織布の目付けが400g/m2を超える場合は、高い難燃性能を発揮するが、経済的な目付けとは言い難い。
【0059】
本発明のマットレスとしては、例えば、金属製のコイルが内部に用いられたポケットコイルマットレス、ボックスコイルマットレス、あるいはスチレンやウレタン樹脂などを発泡させたインシュレーターが内部に使用されたマットレス等がある。本発明のマットレスに使用される前記難燃繊維複合体による炎遮断性(防炎性)が発揮されることにより、前記マットレス内部の構造体への延焼が防止できるため、何れの構造のマットレスにおいても、難燃性と同時に優れた風合いや触感に優れたマットレスを得ることができる。さらに本発明の難燃性複合体を使用すると、ベッドマットレスの米国カリフォルニア州燃焼試験TB603に合格するベッドマットレスが得られる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0061】
実施例1〜10
(塩素含有繊維の製造方法)
アクリロニトリル単位51重量%、塩化ビニリデン単位48重量%およびp−スチレンスルホン酸ソーダ単位1重量%からなる共重合体(ハロゲン原子含有割合:35重量%)をアセトンに樹脂濃度が30%になるように溶解させた。酸化亜鉛は、堺化学(株)製の酸化亜鉛3種を用いた。酸化亜鉛含有量が20重量%である酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体に用いる縮合リン酸塩系化合物としてトリポリリン酸二水素アルミニウム(K−WHITE #105 テイカ(TAYCA)(株)製)、酸化亜鉛含有が40重量%である酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体に用いる縮合リン酸塩系化合物としてトリポリリン酸二水素アルミニウム(K−WHITE #108 テイカ(TAYCA)(株)製)、アンチモン化合物として三酸化アンチモンを得られた樹脂溶液の樹脂重量に対して表1の添加量にしたがい添加して、紡糸原液とした。この紡糸原液をノズル孔径0.10mmおよび孔数1000ホールのノズルを用い、50%ジメチルホルムアミド水溶液中へ押し出し、水洗したのち120℃で乾燥し、ついで3倍に延伸してから、さらに150℃で5分間熱処理、さらに切断することで本発明の塩素含有繊維を得た。得られた繊維は繊度5.6dtexであり、カット長51mmの短繊維であった。
【0062】
実施例で得られた塩素含有繊維の難燃性は、下記のようにして測定、判断した。なお総合判定は、難燃性評価試験(燃焼時の不織布の穴明き、燃焼後の不織布の柔軟性)の結果を総合して、合格○、不合格×と判定した。また、燃焼後の不織布の柔軟性を表すパラメータとして、加熱時の炭化速度を繊維収縮率および収縮速度を測定することにより求めた。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
(燃焼時の不織布の穴明き評価)
1)難燃繊維複合体不織布の作製
実施例で得られた塩素含有繊維50重量%とレギュラーレーヨン(ダイワボウ(株)製、1.5dtex、カット長38mm)30重量%と熱融着ポリエステル繊維(東レ(株)製のサフメット(繊度4.4dtex、カット長51mm、融点110℃))20重量%とを均一に混合し、ローラーカードにより開繊してウェブを作製した後、熱融着方式により目付け300g/m2、縦200mm×横200mmの不織布を作製した。
【0065】
2)難燃性評価試験(簡易TB603試験方法)
縦200mm×横200mm×厚さ10mmのパーライト板の中心に直径150mmの穴をあけたものを準備し、その上に難燃繊維複合体不織布を置き、加熱時に難燃繊維複合体不織布が収縮しないよう4辺をクリップで固定して試験試料とした。難燃繊維複合体不織布の面を上にして、ガスコンロ((株)パロマ工業製、PA−10H−2)にバーナー面より40mmの所に試験試料の中心とバーナーの中心が合うようにセットした。燃料ガスは純度99%以上のプロパンを用い、炎の高さは25mmとし、接炎時間は180秒とした。この時に難燃繊維複合体不織布の炭化層に貫通した孔があいておらず、かつ、ひびがない場合を○(合格)、穴およびひびがある場合を×(不合格)とした。
【0066】
(燃焼後の不織布の柔軟性評価)
前記難燃性評価試験方法により試験した後の不織布の中心部を軸に180°折り曲げたとき、不織布の炭化層が割れなかった場合を○(合格)、割れる場合を×(不合格)とした。
【0067】
(加熱時の炭化速度(繊維収縮速度)の測定方法)
実施例および比較例で得られた塩素含有繊維、約3000dtexを約5mmとり、TMA(熱応力歪測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製 TMA/SS150C 使用ガス:チッ素 ガス流量:30L/min、昇温速度:3℃/min 荷重18mN))にて測定した。初期サンプル長を100%とし、150〜250℃付近に現われる初期収縮の収縮速度(収縮速度[%・℃-1]=初期収縮率[%]/(初期収縮終了温度[℃]−初期収縮開始温度[℃]))を算出し、収縮速度が大きいほど塩素含有繊維の炭化速度が早いものと定義した。
【0068】
(繊維中のハロゲン含有量の測定方法)
実施例および比較例で得られたハロゲン含有重合体を元素分析測定器((株)ヤナコ製 CHNコーダーMT−5)によりC元素、H元素、N元素に関する元素分析を行い、N原子をアクリロニトリル由来のものとし、N原子含有量より重合体中のアクリロニトリル成分含有量を求めた。さらにp−スチレンスルホン酸ソーダは全量共重合したと仮定し、残りをハロゲン含有単量体由来成分とし、計算により得られたハロゲン含有共重合体中のハロゲン含有量を求めた。
【0069】
比較例1〜5
酸化亜鉛を含有しない縮合リン酸塩系化合物として前記トリポリリン酸二水素アルミニウム単体、および縮合リン酸塩系化合物を含まない酸化亜鉛として酸化亜鉛単体(堺化学(株)製 酸化亜鉛3種)を表1に示す添加量にしたがい添加した以外は、実施例1〜10と同様にして紡糸原液とした。得られた紡糸原液を用いて実施例1〜10と同様の方法により塩素含有繊維を得た。また、得られた塩素含有繊維を用いて実施例と同様の方法で、不織布での難燃性評価(燃焼時の不織布の穴明き、燃焼後の不織布の柔軟性)、および熱応力歪測定による炭化速度測定、繊維中のハロゲン含有量の測定を実施した。結果を表1に示す。
【0070】
実施例1〜10の燃焼試験結果は良好であった。不織布の難燃性評価においては、ガスコンロによる加熱後、良好な炭化層を形成し穴明きやひび割れの発生もなく合格し、また、燃焼後の不織布の柔軟性も良好であることから、高度な難燃性を有していると判断し総合判定には合格した。特に、実施例5〜8においては、三酸化アンチモンを含有しているためコンロによる加熱時に、不織布中の成分として含まれているレギュラーレーヨンの燃え広がりが小さく、より良好な炭化層を形成することが判る。
【0071】
これに対して比較例1は、形状保持性能および、推定ではあるがガラス皮膜形成能に優れるトリポリリン酸二水素アルミニウムを前記塩素含有繊維に5部添加しているが、酸化亜鉛をトリポリリン酸二水素アルミニウムで複合化(コーティング)していないため、燃焼時、前記塩素含有繊維の炭化速度が遅く、不織布に穴明きが生じ、充分な難燃性能を得ることができないことから総合判定が不合格となった。また、比較例2では、前記塩素含有繊維の架橋、炭化を促進する酸化亜鉛を表1に示す量において、前記塩素含有繊維に添加しているが、トリポリリン酸二水素アルミニウムを複合化(コーティング)していないため、前記塩素含有繊維に対する酸化亜鉛の含有量としては表1の実施例2に示す値より多いにもかかわらず、不織布の燃焼試験時、不織布に穴明きが生じ、総合判定が不合格となった。また、比較例3および比較例4では、前記塩素含有繊維の架橋、炭化を促進する酸化亜鉛を表1に示す量において、前記塩素含有繊維に添加しているため、不織布の燃焼試験時、良好な炭化膜を形成することができるが、炭化速度が速すぎるため、燃焼後の不織布の炭化部分が硬く脆くなっており、柔軟性がなく、折り曲げたときに割れが発生したため、総合判定が不合格となった。また、比較例5では、消火性能に優れる三酸化アンチモンを表1に示す量において、前記塩素含有繊維に添加しているが、形状保持性能および、推定ではあるがガラス皮膜形成能に優れるトリポリリン酸二水素アルミニウム、あるいは前記塩素含有繊維の架橋、炭化を促進する酸化亜鉛を含有していないため、不織布の燃焼試験時において穴明きが生じ、充分な難燃性能を得ることができないことから総合判定が不合格となった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の難燃性合成繊維は、易燃性素材への着炎を長時間にわたり防止する高度な難燃性を有するので、寝具や家具等の製品、特にマットレスに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロニトリル単位30〜70重量%、塩素含有ビニルおよび/または塩素含有ビニリデン単量体単位70〜30重量%、およびこれらと共重合可能なビニル系単量体単位0〜10重量%からなる塩素含有重合体100重量部に対して、酸化亜鉛の含有割合が20〜80重量%である酸化亜鉛および縮合リン酸塩系化合物の複合体3〜55重量部、およびアンチモン化合物0〜30重量部を含有し、かつ前記複合体とアンチモン化合物の合計が3〜55重量部である難燃性合成繊維。
【請求項2】
前記縮合リン酸塩系化合物が、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、トリメタリン酸塩、およびテトラメタリン酸塩からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である請求項1記載の難燃性合成繊維。
【請求項3】
前記縮合リン酸塩系化合物が、トリポリリン酸塩である請求項2記載の難燃性合成繊維。
【請求項4】
(A)請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性合成繊維10重量%以上、および(B)天然繊維および化学繊維の少なくとも1種の繊維90重量%以下からなる難燃繊維複合体。
【請求項5】
繊維(B)がポリエステル系繊維であり、かつ難燃繊維複合体中の含有量が40重量%以下である請求項4記載の難燃繊維複合体。
【請求項6】
前記ポリエステル系繊維が、低融点バインダー繊維である請求項5記載の難燃繊維複合体。
【請求項7】
前記低融点バインダー繊維が、低融点ポリエステル単一成分よりなる繊維、融点が200℃を超えるポリエステルと低融点ポリエステルの複合成分よりなる繊維、融点が200℃を超えるポリエステルと低融点ポリオレフィンの複合成分よりなる繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維である請求項6記載の難燃繊維複合体。
【請求項8】
前記難燃繊維複合体が不織布である請求項4〜7のいずれかに記載の難燃繊維複合体。
【請求項9】
請求項8記載の難燃繊維複合体からなる炎遮蔽バリア用不織布。
【請求項10】
請求項9記載の炎遮断性バリア用不織布を用いたマットレス。
【請求項11】
炎遮断性バリア用不織布の目付けが250〜400g/m2である請求項10記載のマットレス。

【公開番号】特開2007−291570(P2007−291570A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122514(P2006−122514)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】