説明

難燃性木質ボード

【課題】 より少ない難燃剤で難燃材料としての特性を備えた木質ボードを提供しようとするものである。
【解決手段】 少なくとも木質チップと、接着剤と、難燃剤としての膨張黒鉛とで構成される木質ボードであって、木質チップ100重量部に対して、前記膨張黒鉛を5〜20重量部添加した木質ボードとすることで、難燃性に優れた(建築基準法に規定されている分類の難燃材料で、加熱後5分間非燃焼性、非損傷性、非発煙性を満たすもの)木質ボードを提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は建築用としての天井材、壁材、床材、内装材、外装材の他、家具、家電製品、厨房設備などに広く用いられる難燃性木質ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
天然木材に代わる木質ボードとして、木粉チップや木片チップ等の木質チップを用い、結合材となる接着剤を添加して加圧成形してなる各種の木質ボードが用いられており、具体的なものとしては、ハードボード、MDF、パーティクルボード、インシュレーションボード、配向性ボード(OSB)等が用いられている。
【0003】
このような木質ボードは、天然木材と同様に、燃えやすいことから、難燃化を図る研究がなされており、種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、木材そのものを難燃化する手法としては、主として次の4つのものを挙げることができる。
【0005】
(1)木材を塩水などのハロゲン化物溶液に浸漬する手法
(2)リン酸系、ホウ酸系、ハロゲン系などの化合物を水溶液にして含浸させた後、減圧して水分を除去する手法
(3)リン酸系、ホウ酸系、ハロゲン系などの化合物を、接着剤と混合し、薄板材に塗って貼り合わせて合板とする手法
(4)木材の表面に耐火塗料をコーティングする手法
このような木材を難燃化する手法をパーティクルボードなどの木質ボードに適用しようとすると、次のような問題がある。
【0006】
上記(1)の手法では、燃焼時にダイオキシンが発生する可能性があるとともに、浸漬に長時間を要し、上記(2)の手法では、工程が複雑で加圧・減圧設備が必要であり、しかも1回の処理で限られた量しか生産できず、非能率的であり、加えて上記(1)や(2)の手法では、ボードを溶液中に含浸したり、浸漬することからボードの膨張が起こり、ボードが原形を留めなくなって強度も低下してしまう虞がある。
【0007】
また、上記(3)の手法では、多量の接着剤や難燃剤を必要とし、コスト高になるだけでなく、接着剤によってはHCHO(ホルムアルデヒド)が発生する場合があり、HCHOが多いと、室内で使用する場合に、シックハウス症候群の原因になる場合がある。
【0008】
さらに、上記(4)の手法では、表面をコーティングするため木質感を喪失してしまうとともに、所望の難燃性を得るためには大量にコーティングする必要があり、これにより、外観が悪くなるとともに、莫大なコストがかかり、しかも工程数が増大するほか、ボード表面と耐火塗料との接着性が問題となる場合がある。
【特許文献1】特開2000−141318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上記問題を解決し、難燃性木質ボードを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の請求項1記載の難燃性木質ボードは、
少なくとも木材を粉砕した木質チップと、接着剤と、難燃剤としての膨張黒鉛とで構成される木質ボードであって、木質チップ100重量部に対して、前記膨張黒鉛を5〜20重量部添加したことを特徴とするものであり、難燃性に優れた木質ボードを提供することができる。
【0011】
ここで、難燃材料とは、建築基準法に規定されている分類による難燃材料で、加熱後5分間非燃焼性、非損傷性、非発煙性を満たすものをいい、ISO5660に準拠するコーンカロリーメーター試験による発熱性試験により、総発熱量が8MJ/m2以下、200kW/m2を越える最大発熱速度が10秒を越えて継続しない、試験体裏面に達する亀裂、貫通孔を生じない条件を満たすものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1記載の難燃性木質ボードによれば、難燃性に優れた木質ボードを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
この発明の難燃性木質ボードを構成する層は、少なくとも木材を粉砕した木質チップと、接着剤と、難燃剤としての膨張黒鉛とで構成され、木質チップ100重量部に対して、前記膨張黒鉛を5〜20重量部添加するものである。
【0015】
本発明の膨張黒鉛添加量は、所定量より少ないと、難燃材料として必要な難燃性を付与することができない傾向にあり、逆に多くしても、難燃性の向上は図れず、コスト増大を招く傾向にある。
【0016】
ここで、膨張黒鉛について説明する。膨張黒鉛とは、熱によって膨張し、膨張層(不燃性発泡層)を形成して難燃効果をもたらすものである。尚、本発明で用いる膨張黒鉛は、膨張容積が180〜300ml/gのものが好ましく用いられ、膨張開始温度は、木質ボードの製造時に用いる熱プレス板の温度よりも高いものが用いられ、150度以上のものが好ましい。
【0017】
本発明の木質チップは、木材の主として微粉末の集合である木粉チップと、木材の主として微小片の集合である木片チップとのいずれか一方、あるいは両方が混在したものいずれかをいうものであり、できるだけ均一で、より細かい微粉末状の木粉チップが好ましく用いられ、これによって表面が緻密かつ平滑で綺麗なボードにすることができる。
【0018】
木粉チップとしては、例えば、広葉樹及び針葉樹或いはマツ、ツガ、スギ、ヒノキ等の木材を鋸の屑状に微細化した微粉末を主体とするものが用いられる。
【0019】
また、木片チップとしては、例えば広葉樹及び針葉樹或いはマツ、ツガ、スギ、ヒノキ等の木材の太さ0.2〜3mm、長さ5〜30mm程度の大きさの微小片を主体とするものが用いられる。
【0020】
これら木粉チップ、木片チップとも容器等に盛ったときの見かけ比重は0.1〜0.2g/cc程度である。
【0021】
なお、木材の微粉末と木材の微小片或いは木質繊維等とが混ざり合うことは好ましいものではないが、木質チップを作製する過程において多少の混ざり合いは避けることができず、木材の微粉末に少量の木材の微小片や木質繊維が混入したものも木粉チップであり、木材の微小片に少量の木材の微粉末や木質繊維が混入したものも木片チップである。
【0022】
本発明の難燃性木質ボードに用いられる難燃剤としては、膨張容積が180〜300ml/gである膨張黒鉛を所定量用いるものであるが、木質ボードとしての所望の難燃性を確保できる範囲であれば、他の難燃剤を用いてもよく、他の難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム、ノンハロゲン、あるいはノンアンチモンのものが用いられ、例えば、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸メラミン、赤りん、ホウ酸、メタホウ酸バリウム、ほう砂、スルファミングアニジン、リン酸グアニル尿素、リン酸グアニジン、硫酸グアニジン、テトラホウ酸グアニジン、水酸化アルミニウム、あるいはこれら混合物などを挙げることができる。
【0023】
本発明の難燃剤は、木質チップと接着剤とともに均一に混合し使用してもよいし、或いは難燃剤の水溶液を木質チップに含浸させた後、水分を乾燥・除去し、接着剤と混合し使用してもよい。
【0024】
本発明の木質ボードに用いられる接着剤としては、通常のパーティクルボードなどの木質ボードで使用される接着剤を用いることができ、例えばユレア・メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ユレア系樹脂、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、TDI(トリレンジイソシアネート)、あるいはMDIプレポリマー、TDIプレポリマー 等を挙げることができる。
【0025】
そして、この難燃性木質ボードは、少なくとも木材を粉砕した木質チップと、接着剤と、難燃剤としての膨張黒鉛とで構成され、木質チップ100重量部に対して、前記膨張黒鉛を5〜20重量部添加して、木質チップおよび接着剤と均一に混合し、通常のパーティクルボードなどの製造設備を用い、熱加圧成形によって製造される。
【0026】
なお、本発明の木質チップ及び接着剤及び難燃剤等の混合には、従来から使用されているリボンブレンダー、高速ミキサー、タンブラーなどの混合設備を利用でき、均一に混合することができる。
【0027】
また、製造工程中に設けたロータリフィーダー、スクリューフィーダーなどで、木質チップに一定量ずつ均一に接着剤と難燃剤等を混入して供給するようにしても良い。
【0028】
本発明の難燃性木質ボードの製造は、例えばスチールベルトを用いて、その上に、木質チップ及び接着剤及び難燃剤等の材料を供給し、その後、プレス板やプレスベルトで熱加圧成形することで製造することができる。なお、プレス板やプレスベルトで熱加圧成形する前に、目的とする形状に予備圧縮してから加圧成形すれば、得られる難燃性木質ボードの品質が安定する。
【0029】
この加圧成形は、常温で加圧成形しても良いし、蒸気噴射させながら加圧成形しても良いし、成形台やスチールベルト等を加熱して加圧成形しても良い。
【0030】
本発明は、木質ボードとして所望の難燃性を確保すると共に、ボードとしての強度や耐水性を向上させるために合成樹脂チップを添加してもよい。例えば、硬質ポリウレタンフォームの微粉末の集合である粉砕ウレタン粉を用いることができ、廃冷蔵庫、廃自販機から回収した硬質ポリウレタンフォームの断熱材、建築現場で発生する断熱材の端材、残材、さらに工場で生産時に発生する裁断ロスなどを回収して高速粉砕機で平均粒径3mm以下に微粉砕したものが好ましく、容器等に盛ったときの見かけ比重は0.03〜0.2g/ccのものが好ましい。
【0031】
この合成樹脂チップが3mm以上の径であると強度や耐水性がほとんど改善されなかったり、加圧成形後のボード表面が平滑でなくなる場合がある。
【0032】
なお、合成樹脂チップとしては、硬質ポリウレタンフォームに限らず他の合成樹脂でも良く、特に廃材を利用することで、廃材としての合成樹脂の有効利用を図ることができる。
【0033】
なお、この発明の難燃性木質ボードにおいて、従来の結合材添加木質ボードに使用できる防腐剤、防黴剤、防虫剤、防火剤、撥水剤、寸法安定剤を難燃性や強度などの性能に影響を与えない範囲で使用することは、何ら問題がない。
【実施例】
【0034】
以下、この発明を実施例により説明するが、この発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
この実施例では、次のものを用いた。
【0036】
木質チップとして用いた木粉チップは、一般的にパーティクルボードで使用されているマツから得られた絶乾状態のチップを使用いた。
【0037】
合成樹脂チップとしてのウレタン粉は、自動販売機の断熱材の廃材をターボミル(ターボ工業社製)で平均粒径1mm以下に粉砕したものを使用した。
【0038】
接着剤Aは、ユレアーメラミン樹脂(スイソボンド701、日本化成製)を使用し、接着剤Bは、水乳化型ジフェニールメタンジイソシアネート(ウッドキュア300、日本ポリウレタン工業社製)を使用した。
【0039】
難燃剤は、膨張黒鉛(SYZR502、三洋貿易製)で、膨張容積が180〜200ml/gのものを使用した。
【0040】
また、各実施例および各比較例で用いる木質チップ、接着剤、難燃剤それぞれの配合量(重量部)を表1に示した。
【0041】
難燃性の試験は、ISO5660に準拠するコーンカロリーメーター試験機による発熱試験で行った。
【0042】
(実施例1)
木質チップである木粉チップ100重量部と、接着剤であるユレアーメラミン樹脂13重量部と、難燃剤Aである膨張黒鉛20重量部とを高速ミキサーで混合し、その混合物をコール板上に散布し、その後予備圧縮し、生成したマットの両端に12mmのディスタンスバー(スペーサ)を置き、さらにマット上にコール板を載せて165℃に加熱したプレス機で5分間熱加圧成形し、12mm厚、850kg/m3の木質ボードを得た。
【0043】
得られた木質ボード(木質ボード)から100mm×100mm角で12mm厚のサンプルを得た。
【0044】
このサンプルを用い、難燃性の試験を行った。
【0045】
その結果を表1に示す。
【0046】
同表から明らかなように、難燃材料としての条件を満足するものであった。
【0047】
(実施例2)
難燃剤Aを10重量部用いた以外は、実施例1と同様とした。
【0048】
得られたサンプルを用い、難燃性の試験を行い、その結果を表1に示す。
【0049】
同表から明らかなように、難燃材料としての条件を満足するものであった。
【0050】
(実施例3)
木質チップを65重量部と、合成樹脂チップを35重量部と、接着剤Bを6.5重量部と、難燃剤Aを10重量部用いた以外は、実施例1と同様とした。
【0051】
得られたサンプルを用い、難燃性の試験を行い、その結果を表1に示す。
【0052】
同表から明らかなように、難燃材料としての条件を満足するものであった。
【0053】
(実施例4)
難燃材Aを5重量部用いた以外は、実施例1と同様とした。
【0054】
得られたサンプルを用い、難燃性の試験を行い、その結果を表1に示す。
【0055】
同表から明らかなように、難燃材料としての条件を満足するものであった。
【0056】
(比較例1)
難燃剤を用いることなく、実施例1と同様とした。
【0057】
得られたサンプルを用い、難燃性の試験を行い、その結果を表1に示す。
【0058】
同表から明らかなように、難燃材料としての条件を満足するものではなかった。
【0059】
(比較例2)
難燃剤Bを2.5重量部用いた以外は、実施例1と同様とした。
【0060】
得られたサンプルを用い、難燃性の試験を行い、その結果を表1に示す。
【0061】
同表から明らかなように、難燃材料としての条件を満足するものではなかった。
【0062】
【表1】

※1.THR(総発熱量)が、8MJ/m2以下であるもの→○、ないもの→×
※2.200kW/m2を越える最大発熱速度が、10秒を越えて継続しないもの→○、
あるもの→×
※3.試験体裏面に達する亀裂、貫通孔を生じるもの→○、ないもの→×
※4.(※1と※2と※3)の条件をすべて満たすもの→○、ないもの→×

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも木質チップと、接着剤と、難燃剤としての膨張黒鉛とで構成される木質ボードであって、
木質チップ100重量部に対して、前記膨張黒鉛を5〜20重量部添加したことを特徴とする請求項1記載の木質ボード。