説明

難燃性樹脂組成物及び樹脂シート、樹脂成形品

【課題】オレフィン系樹脂を主体とし、少ない熱可塑性ポリエステル樹脂の混合で、90秒を超える長時間の着炎でも難燃性に優れた難燃性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】実質的にハロゲンを含まず、次の(A)〜(D)成分を必須成分とする。(A)成分:230℃における溶融張力が35〜60mNであるオレフィン系樹脂組成物、(B)成分:270℃における剪断速度100s−1で測定した溶融粘度が500〜1500Pa・sである熱可塑性ポリエステル樹脂、(C1)成分:リン酸塩系難燃剤、(D)成分:ポリプロピレン系ポリマーアロイ相溶化剤。好ましくは、さらに、(C2)成分:縮合リン酸エステル系難燃剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼時における有害ガスの発生を抑えた非ハロゲン系の難燃性樹脂組成物に関する。また、この難燃性樹脂組成物で構成された樹脂シート、樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オレフィン系樹脂の難燃化手段としては、リン酸塩系難燃剤を始めとして、ハロゲン系難燃剤、赤リンやポリリン酸アンモニウムに代表される無機リン系難燃剤、トリアリールリン酸エステル化合物に代表される有機リン系難燃剤、金属水酸化物や難燃助剤である酸化アンチモン、メラミン化合物を単独又は組み合わせて用いることが広く知られている。
【0003】
その中でも、環境保護の観点から、非ハロゲン系難燃性樹脂が求められており、リン酸塩系の難燃剤と組み合わせた難燃性樹脂組成物が提案されている。
例えば、特許文献1には、オレフィン系樹脂に対してリン酸塩系の難燃剤と二酸化ケイ素および高級カルボン酸を配合してなる、難燃性オレフィン系樹脂組成物が開示されている。
【0004】
一方、特許文献2には、ポリプロピレン系樹脂とポリエステル系樹脂の相溶性を改善するために、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびグラフト変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2004/000973号公報
【特許文献2】特開平8−157700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された樹脂組成物は、UL規格のような10秒程度の短時間の着炎では、V−0レベルの難燃性を示しているが、鉄道車両内装材に要求されるような90秒を超える長時間の着炎では、延焼が大きく、また、炎を取り去った後の残炎があり、鉄道車両用材料燃焼試験規格での難燃性樹脂のランクには到達できていないという問題がある。また、難燃剤をオレフィン系樹脂に均一に分散させるために添加される高級カルボン酸等が、成形後その表面にブリードアウトしてくるという問題もある。
【0007】
また、特許文献2に記載された樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂を主体として、それに、オレフィン系樹脂を混合することによって、樹脂組成物の剛性、強度、表面性の向上を目的としたものであり、価格的に高価になるという問題がある。また、長時間の着炎に対する難燃性については一切開示されていない。
【0008】
上記の点に鑑み、本発明の目的は、オレフィン系樹脂を主体とし、少ない熱可塑性ポリエステル樹脂の混合で、90秒を超える長時間の着炎でも難燃性に優れた難燃性樹脂組成物を提供することである。また、この難燃性樹脂組成物で構成された樹脂シート、樹脂成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、係る現状に鑑み鋭意検討を重ねた結果、下記の構成を採用することにより、90秒を超える長時間の着炎でも難燃性に優れた難燃性樹脂組成物が得られることを見出し本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明に係る難燃性樹脂組成物は、実質的にハロゲンを含まず、以下の(A)〜(D)成分を必須成分とすることを特徴とする(請求項1)。
(A)成分:230℃における溶融張力が35〜60mNであるオレフィン系樹脂組成物
(B)成分:270℃における剪断速度100s−1で測定した溶融粘度が500〜1500Pa・sである熱可塑性ポリエステル樹脂
(C1)成分:リン酸塩系難燃剤
(D)成分:ポリプロピレン系ポリマーアロイ相溶化剤
上記の発明において、好ましくは、さらに、(C2)成分:縮合リン酸エステル系難燃剤を含み(請求項2)、(D)成分が、無水マレイン酸変性オレフィン系樹脂である(請求項3)。
また、好ましくは、(A)成分80〜95質量%と(B)成分5〜20質量%からなる混合物100質量部に対して、(C1)成分20〜40質量部、(C2)成分0〜10質量部、(D)成分が5〜30質量部とする(請求項4)。
【0011】
本発明に係る樹脂シートは、上記の難燃性樹脂組成物で構成されることを特徴とする(請求項5)。また、本発明に係る樹脂成形品は、上記の難燃性樹脂組成物で構成されることを特徴とする(請求項6)。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、オレフィン系樹脂組成物である(A)成分と熱可塑性ポリエステル樹脂である(B)成分に、難燃剤である(C1)成分とオレフィン系ポリマーアロイ相溶化剤である(D)成分を必須成分とする。
【0013】
270℃における剪断速度100s−1で測定した溶融粘度が500〜1500Pa・sである熱可塑性ポリエステル樹脂を用いることにより、燃焼時の溶融樹脂の垂れ落ちを防止することができる。また、樹脂表面に炭化層を保持して酸素遮断の役目をすると同時に、リン酸塩系難燃剤から発生した気泡の保持力を高め、断熱膜を形成する。これにより、長時間炎が当たっても燃焼が進まず、90秒を超える長時間の着炎でも、延焼が少なく、難燃性に優れた樹脂組成物を得ることができる。さらに、少ない熱可塑性ポリエステル樹脂の混合で、難燃性を確保できるため、価格的に安価なものとすることができる。
【0014】
230℃における溶融張力が35〜60mNであるオレフィン系樹脂組成物を用いることにより、上記の難燃性を向上させる効果を増大させるとともに、樹脂シートの真空成形性に優れ、射出成形品にも適用できる樹脂組成物を得ることができる。
【0015】
また、オレフィン系の相溶化剤を加えて混練することにより、オレフィン系樹脂組成物と熱可塑性ポリエステル樹脂からなる混合物の特性を向上させるとともに、この相溶化剤が、難燃剤の分散剤としての効果を持ち、分散剤を加えなくても、良好に難燃剤が分散した難燃性樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、ベースとなるオレフィン系樹脂組成物である(A)成分と熱可塑性ポリエステル樹脂である(B)成分に、難燃剤である(C1)成分と、(A)成分と(B)成分からなる混合物を均一な組成とするための相溶化剤である(D)成分を、インラインスクリュウタイプの押出機にて溶融混練した後、押出して得ることができる。
本発明に係る樹脂シートは、前記押出してペレット状にした材料を押出成形して製造することができる。また、前記押出してペレット状にした材料を射出成形して本発明に係る樹脂成形品を製造することができる。
【0017】
(A)成分のオレフィン系樹脂組成物は、プロピレン単独重合体、エチレンプロピレン共重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等を使用することができ、これらを単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。そして、230℃における溶融張力が35〜60mNであるものを使用する。なお、オレフィン系樹脂組成物を構成する樹脂は、それぞれ190℃におけるメルトフローレートが1.0g/10min以下とすることが好ましい。また、プロピレン単独重合体、エチレンプロピレンブロック共重合体、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンで構成することが好ましい。これにより、真空成形の加熱時のドローダウンが小さく、真空成形性に優れた樹脂シート、及び射出成形も可能な難燃性樹脂組成物を得ることができる。
【0018】
(B)成分の熱可塑性ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を使用することができ、これらを単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。そして、270℃における剪断速度100s−1で測定した溶融粘度が500〜1500Pa・sのものを使用する。溶融粘度が500Pa・s未満であると、燃焼時の樹脂の垂れ落ち防止効果が小さく、難燃性が低下する。また、1500Pa・sを超えると、オレフィン系樹脂組成物との混練が困難となる。
【0019】
(B)成分の溶融粘度を上記の範囲とすることで、燃焼時の溶融樹脂の垂れ落ちを防止し、樹脂表面に炭化層を保持して酸素遮断の役目をすると同時に、リン酸塩系難燃剤から発生した気泡の保持力を高め、断熱膜を形成するため、長時間に炎が当たっても燃焼が進まず、難燃性が向上する。
【0020】
なお、垂れ落ち防止として、ポリテトラフルオルエチレン(PTFE)を添加する方法も報告されているが、PTFEは、オレフィン系樹脂との相溶性が悪く、また高価なため大量に添加することができない。また、本発明が目的とする長時間の着炎に対する難燃効果は小さい。
【0021】
また、(B)成分は結晶性樹脂であるため、225℃以上の融点を保持しており、融点以下の温度での真空成形の加熱時(150℃〜200℃付近)のシートの垂れ下がり、すなわちドローダウンを小さくする効果も付与している。
【0022】
上記(A)成分と(B)成分からなる混合物は、(A)成分80〜95質量%、(B)成分20〜5質量%とすることが好ましい。(B)成分が5質量%未満では、難燃性の向上効果は小さく、90秒を超える着炎に耐えられない。(B)成分の混合割合が大きくなるにしたがい難燃性向上効果は大きくなるが、相溶化剤の添加量が増加し、コスト高となる。
【0023】
(C1)成分のリン酸塩系難燃剤は、ポリリン酸アンモニウム化合物、リン酸アミン塩、ポリリン酸アミン塩等を使用することができる。例えば、ADEKA製アデカスタブ「FP2100」や「FP2200」、クラリアントジャパン製「AP750」等が挙げられる。
【0024】
(C2)成分の縮合リン酸エステル系難燃剤は、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、1,3フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート等を使用することができる。例えば、ADEKA製アデカスタブ「FP600」、味の素ファインテクノ製レオフォス「BAPP」等が挙げられる。
【0025】
なお、(C1)成分と(C2)成分とを併用することが好ましい。一般的に、原料である樹脂ペレットを粉末状フィラとともに溶融混練するときは、樹脂ペレットの表面に粉末状フィラを付着させる目的で、流動パラフィンなどの液状のものを添加することが行われている。しかし、流動パラフィンは、溶融混練後の樹脂組成物の難燃性を阻害する。一方、縮合リン酸エステル系難燃剤は液状であるため、樹脂ペレットの表面に粉末状のリン酸塩系難燃剤を付着させることができ、しかも、溶融混練後の樹脂組成物の難燃性を阻害することもない。
【0026】
(C1)成分及び(C2)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分からなる混合物100質量部に対して、(C1)成分20〜40質量部、(C2)成分0〜10質量部であることが好ましい。(C1)成分を上記の範囲とすることにより、難燃性及び樹脂シートの物性、特に耐衝撃性や引張り伸びを十分に確保することができる。また、(C2)成分を上記の範囲とすることにより、縮合リン酸エステル系難燃剤とオレフィン系樹脂とを十分に相溶させることができる。
【0027】
相溶化剤である(D)成分は、(A)〜(C)成分を溶融混練するときに、(A)成分と(B)成分を相溶させ均一なものとするための助剤であり、また、(A)成分と(B)成分の樹脂に難燃剤である(C1)成分と(C2)成分の均一分散性を向上させる作用をも発揮する。相溶化剤としては、オレフィン系樹脂と熱可塑性ポリエステル樹脂との相溶化を促進するものであればよいが、なかでも、無水マレイン酸変性オレフィン系樹脂が、樹脂の相溶化剤と難燃剤の分散性向上効果が高い。無水マレイン酸変性オレフィン系樹脂としては、例えば、三洋化成製「ユーメックス1001」が挙げられる。
【0028】
(D)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分からなる混合物100質量部に対して、(D)成分5〜30質量部が好ましい。(D)成分を上記の範囲とすることにより、(A)成分と(B)成分とを十分に相溶させることができ、(C)成分を十分に分散させることができる。また、材料をコンパウンド押出しでペレタイズするときのコンパウンド作業性も良好である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を詳細に示す。ただし、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。
実施例に使用する材料は以下の通りである。
(A)成分として、
(a)プロピレン単独重合体:住友化学工業製「ノーブレンFH1016」
(b)エチレンプロピレン共重合体:日本ポリプロ製「ノバテックPP EC9」
(c)高密度ポリエチレン:日本ポリエチレン製「ノバテックHD HY434」
(d)低密度ポリエチレン:住友化学工業製「スミカセンF102−0」
(B)成分として、
(e)ポリエチレンテレフタレート:270℃における剪断速度100s−1で測定した溶融粘度300Pa・s
(f)ポリエチレンテレフタレート:270℃における剪断速度100s−1で測定した溶融粘度1000Pa・s
(g)ポリブチレンテレフタレート:270℃における剪断速度100s−1で測定した溶融粘度1000Pa・s
(C1)成分として、
(h)リン酸塩系難燃剤:ADEKA製「FP2200」
(C2)成分として、
(i)縮合リン酸エステル系難燃剤:ADEKA製「FP600」
(D)成分として、
(j)無水マレイン酸変性PP:三洋化成製「ユーメックス1001」
実施例1〜8
各例毎にそれぞれ表1〜2に示す樹脂組成物を2軸押出し機で押出しペレット化し、射出成形による2.5mm厚の射出成形板と押出成形による厚さ2mmの樹脂シートを作製した。
【0030】
比較例1〜4
各例毎にそれぞれ表3に示す樹脂組成物を2軸押出し機で押出しペレット化し、射出成形による2.5mm厚の射出成形板と押出成形による厚さ2mmの樹脂シートを作製した。
【0031】
上記実施例および比較例について、難燃性および真空成形性を評価した。その結果を表1〜3に併せて示した。なお、表中において、上記材料(a)〜(g)は、(A)成分:オレフィン系樹脂組成物と(B)成分:熱可塑性ポリエステル樹脂からなる混合物を100質量%とした配合量(質量%)で、また、上記材料(h)〜(j)は、(A)成分と(B)成分からなる混合物100質量部に対する配合量(質量部)で、それぞれ記載している。
【0032】
また、表中に示した各特性は、次のようにして評価した。
(1)溶融張力:キャピラリーレオメーター(東洋精機製「キャピログラフ1B」)を使用し、230℃で加熱溶融した樹脂を、長さ10mm、内径1mmのキャピラリーを通して押出す。このときの押出速度は10mm/分である。押出された溶融樹脂フィラメントを、テンションプーリを介して引取りロールで巻き取る。このときの引張速度は3mm/分である。そして、テンションプーリにかかる力を溶融張力として測定する。
(2)溶融粘度:キャピログラフ(ノズル径:1.0mm、ノズル長:10mm)を使用した。なお、燃焼時は高温度で、樹脂の流動は自重のみで発生するため、温度270℃、剪断速度100s−1の条件で測定した。
(3)難燃性:厚み2.5mm、幅50mm、長さ60mmの射出成形試験片を用い、試験片を水平に45°傾斜させて固定して、その中央に30mm〜40mmのローソク火炎を当て、燃焼により、試験片に10mm程度の貫通孔が発生するまでの時間(穴あき時間)と、火炎を除去した後に残炎が消えるまでの時間(残炎時間)を測定した。なお、この方法で、穴あき時間が180秒以上であれば、鉄道車両用内装材の0.5ccアルコール燃焼(約90秒燃焼)の難燃性ランクに相当する。
(4)ドローダウン性:真空成形機(布施真空製「CUPF−1013−PWB」)を使用し、真空成形機のクランプ(大きさ:1000mm×800mm)に、厚み2mmの樹脂シートをセットし、加熱後のクランプ中央部の樹脂シートの垂下がり量を測定した。このとき、加熱条件は、ヒータ温度上下360℃、加熱時間90秒とした。
(5)真空成形後型形状再現性:真空成形機(布施真空製「CUPF−1013−PWB」)を使用し、凸型成形品(形状:縦幅800mm×横幅600mm×高さ150mm)を成形したときの型形状再現性、コーナ再現性、皺発生の有無、変形、ゆがみの大きさについて、目視により成形性の良否を判断した。このとき、成形前の樹脂シートは1000mm×1000mm×厚み2mmである。なお、評価は下記により行なった。
◎:外観の異常、ゆがみ変形なく良好,○:型形状再現性は良好も天面にゆがみ発生,△:皺、変形発生,×:成形不可
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
比較例3〜4に示すように、(B)成分を含有していない系では、難燃剤(C1)及び(C2)成分を、(A)成分と(B)成分からなる混合物100質量部に対して26.7質量部(比較例3)〜31.9質量部(比較例4)添加しても、穴あきまでの時間が60〜90秒と短く、また火炎を取り去ったあとの残炎が20秒〜延焼まで発生している。このレベルでは、長時間の着炎に対する難燃性が不充分である。
【0037】
また、比較例1〜2に示すように、(B)成分を含有していても、その溶融粘度が低い系においては、同じように難燃剤(C1)及び(C2)成分を26.7質量部(比較例1)〜31.9質量部(比較例2)添加することにより、穴あき時間、残炎時間が改良されているものの、樹脂シートにおけるドローダウンが大きく真空成形性が不充分である。
【0038】
実施例1〜3に示すように、270℃における剪断速度100s−1で測定した溶融粘度が1000Pa・sであるポリエチレンテレフタレートを配合した系においては、難燃剤(C1)及び(C2)成分を26.7質量部(実施例1、2)〜31.9質量部(実施例3)添加することにより、穴あき時間が大幅に改良されており、また、樹脂シートにおけるドローダウンが小さく真空成形性も良好である。
なお、実施例3〜4では、穴あき時間が240秒以上の結果が得られており、鉄道車両用材料の燃焼規格の難燃性ランクに適合するレベルにある。
【0039】
実施例5〜6に示すように、(A)成分が、ポリプロピレンもしくはポリエチレン単独でも、(B)成分との混合物であれば、長時間の着炎に対する難燃性が充分確保できる。
また、実施例7〜8に示すように、(B)成分が、ポリブチレンテレフタレートでも、同様の効果を得ることができる。
実施例1〜8に示すように、本発明の樹脂組成物は、いずれも良好な真空成形性を得ることができる。
【0040】
以上のことから判るように、(A)成分と(B)成分からなる混合物に、リン酸塩系難燃剤(好ましくは、さらに縮合リン酸エステル系難燃剤)と、適度な相溶化剤を組み合わせ、溶融混合した樹脂組成物とすることにより、従来困難であった非ハロゲン系難燃性オレフィン系樹脂を提供することが可能となる。これにより、車両内装品、医療機器部品などの工業部品に適用でき、本発明の工業的価値はきわめて大なるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にハロゲンを含まず、以下の(A)〜(D)成分を必須成分とする難燃性樹脂組成物。
(A)成分:230℃における溶融張力が35〜60mNであるオレフィン系樹脂組成物
(B)成分:270℃における剪断速度100s−1で測定した溶融粘度が500〜1500Pa・sである熱可塑性ポリエステル樹脂
(C1)成分:リン酸塩系難燃剤
(D)成分:ポリプロピレン系ポリマーアロイ相溶化剤
【請求項2】
さらに、(C2)成分:縮合リン酸エステル系難燃剤を含む請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)成分が、無水マレイン酸変性オレフィン系樹脂である請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分80〜95質量%と(B)成分5〜20質量%からなる混合物100質量部に対して、(C1)成分20〜40質量部、(C2)成分0〜10質量部、(D)成分5〜30質量部である請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物で構成された樹脂シート。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物で構成された樹脂成形品。

【公開番号】特開2011−231276(P2011−231276A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105057(P2010−105057)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】