説明

難燃製品

本発明は、1または2次元基材を備え、結晶性トリアジン層をさらに備える難燃製品に関する。トラジン(trazine)の量は、基材の難燃性を改善するものであり、この量は、好ましくは、約0.1g/m2以上かつ約500g/m2以下である。トリアジンは、好ましくは蒸着されており、好ましくはメラミンである。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、難燃性を有する特定の製品、特に、難燃性を有する繊維、フィルム、布帛、シート、層状体等の1および2次元製品に関する。
【0002】
繊維製品、天然または合成繊維、木質パネル、合成または天然皮革、発泡材等の保護または断熱シート、電子パネル、ワイヤー、ケーブル等の製品の難燃性を高める方法は数多く知られている。例えば、塩素化または臭素化された化学物質を当該製品に混合、塗布、または含浸することが知られている。アルミナ三水和物もしくはポリリン酸を調製時に難燃剤として使用することやその後に適用される膨張性塗装として使用することも周知である。塩素化または臭素化された化学物質の使用は環境問題における課題であり、したがって、これらの化学物質は使用しないことが好ましい。難燃性を達成するための他の方法は必ずしも十分なものではなく、有用な難燃性を達成するためのより優れた代替的方法が求められている。
【0003】
本発明者らは、良好な特性を達成しながらも工程の簡素化を可能にする、難燃性を達成する方法を見出した。
【0004】
本発明の1つの目的は、難燃性が改善された1または2次元製品を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、難燃性が改善された1または2次元製品の製造方法を提供することにある。
【0006】
上記目的および他の有利な特徴は、当該製品が、結晶性トリアジン層をさらに含む1または2次元基材を備え、前記層中のトリアジンの量が基材の難燃性を改善するものである、本発明を用いることによって達成される。
【0007】
上記目的および他の有利な特徴は、1または2次元基材にトリアジンを蒸着させることによって蒸着された結晶性トリアジン層を得る方法であり、トリアジンの量が基材の難燃性を改善するものである方法によってさらに達成される。
【0008】
上記目的および他の有利な特徴は、結晶性トリアジン層を製品の難燃性被覆として用いることによってさらに達成される。
【0009】
本発明の一実施形態においては、基材上のトリアジンの量は、約0.1g/m以上かつ約500g/m以下である。
【0010】
本発明の他の実施形態においては、1または2次元基材の表面は、50nm以上の結晶性メラミン層を備えている。
【0011】
蒸着に用いるのに好適なトリアジンとしては、これらに限定されるものではないが、メラミン、メラム、メレム、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ジシアンジアミン(dicyanediamine)、トルエンスルホンアミド、尿素、およびチオ尿素が挙げられる。好ましい例は、コスト上の理由から、メラミンおよび尿素である。一実施形態においては、多方面から入手可能であり、かつ非常に優れた特性を付与するメラミンを蒸着用トリアジンとして使用することが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態においては、複数種のトリアジンの混合物が蒸着に用いられる。本発明の他の実施形態においては、2種以上のトリアジンが異なる蒸着容器から連続的に蒸着される。異なるトリアジンの昇華温度が異なる場合は、このようにする方が混合物を使用するよりも有利であろう。
【0013】
本発明の一実施形態においては、基材は両面に結晶性トリアジン層を有している。
【0014】
他の実施形態においては、トリアジン以外の1種またはそれ以上の難燃性または膨張性化合物も1または2次元基材上に沈着されている。他の好ましい化合物は、蒸着が可能なものである。他の難燃性化合物の好適な例としては、これらに限定されるものではないが、メラミンシアヌレート、メラミン(ポリ)ホスフェート、メラミンボレート、リン、リン酸エステル、無機塩、シロキサン、ケイ酸塩、アルミニウム三水和物、アンチモン錯体、および亜鉛/マグネシウム錯体が挙げられる。
【0015】
好ましい実施形態においては、基材は少なくとも1つの結晶性トリアジン層を有し、この層は、約90重量%以上が結晶性トリアジンから構成される。好ましくは、この層の約97重量%以上が結晶性トリアジンから構成される。
【0016】
基材は、好ましくは、1または2次元方向に延在する形態にある。この種の基材の好適な例としては、これらに限定されるものではないが、繊維、フィルム、シート、または層状体が挙げられる。
【0017】
本出願において1次元形態とは、第3の寸法と比較して2つの寸法が比較的短い製品を意味する際に用いられる。1次元形態の好適な例としては、合成または天然繊維およびロープが挙げられる。繊維の好適な例としては、これらに限定されるものではないが、炭素繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル、ポリアクリルアミド、およびポリオレフィン繊維または綿、羊毛、もしくは絹繊維が挙げられる。1次元製品の直径または厚みは数μm〜数cmであろう。
【0018】
本出願において2次元形態とは、他の2つの寸法と比較して1つの寸法が比較的短い製品を意味する際に用いられる。2次元形態の好適な例としては、これらに限定されるものではないが、シート、布帛、フィルム、および層状体が挙げられる。2次元形態の好適な例としては、天然または合成皮革からのシート、木材、上述の繊維からの布帛、プラスチックまたは樹脂の保護または断熱シート、フィルム等が挙げられる。一般に、2次元形態の厚みは数μm〜数cmであろう。
【0019】
一実施形態においては、2次元形態を用いることが好ましい。
【0020】
一実施形態においては、2次元製品の厚みは約1mm以上、好ましくは約2mm以上である。通常、厚みは、約10cm以下、好ましくは約5cm以下である。
【0021】
本発明の一実施形態においては、2次元製品は多孔質である。本明細書における多孔質とは、実質的な圧力を加えなくても空気または水分が2次元製品内に拡散することが可能であることを意味する。多孔質製品としては、例えば、布帛および連続気泡発泡体が挙げられる。
【0022】
他の実施形態においては、2次元製品は、独立気泡発泡体のような不均質な構造を有する。
【0023】
一実施形態においては、2次元形態は、合成または天然繊維からの布帛である。
【0024】
他の実施形態においては、2次元形態は、木質パネルである。
【0025】
他の実施形態においては、2次元形態は、合成または天然皮革である。
【0026】
他の実施形態においては、2次元形態は、保護または断熱シートである。好適な断熱シートとしては、これらに限定されるものではないが、発泡シートが挙げられる。発泡体は、天然または合成材料をベースとするものであってもよい。この種の材料の好適な例としては、天然ラテックス、天然ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリプロピレンの共重合体、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリブタジエン、ポリウレタン等が挙げられる。
【0027】
本発明の他の実施形態においては、基材は着色されており、これは、少なくとも1種の有機染料を、トリアジンの沈着と一緒に蒸着させるかまたはトリアジン蒸着チャンバに隣接(先または後)する蒸着チャンバ内で蒸着させることによって達成される。
【0028】
基材上のトリアジンの量は、通常は約0.1g/m以上、好ましくは約1g/m以上、より好ましくは約5g/m以上である。約10g/m以上を使用することがより好ましく、11g/m以上を使用することが最も好ましい。有用な量は基材に応じて異なるであろう。例えば、目の粗い布帛は、目の詰まった布帛や木質パネルよりも、難燃性を得るために必要なメラミンがはるかに少なくなるであろう。したがって、例えば約0.5g/mまたは約2g/m以上といった少量のトリアジンでも、難燃性の向上が認められ得るので有利であろう。
【0029】
基材上のトリアジンの量は、通常、約500g/m以下、好ましくは約100g/m以下である。約50g/m以下の量が最も好ましい。これよりも量が多いと、トリアジンを含む基材の加工が難しくなったり価格が高くなる場合がある。
【0030】
本発明の一実施形態においては、トリアジン層の好ましい厚みは、約100nm以上、より好ましくは約200nm以上である。この層の最大厚みは決定的に重要ではなく、1000μm以下、好ましくは100μm以下、例えば50μm以下または20μm以下であってもよい。
【0031】
トリアジン層は、好ましくは、基材表面において実質的に連続しており、これは、トリアジン結晶間にほとんど空間が認められないことを意味する。例えば、空間は、約20%以下、好ましくは10%以下、よりさらに好ましくは約5%以下であってもよい。最も好ましい実施形態においては、空間は約0%である。
【0032】
本発明の一実施形態においては、基材上へのトリアジンの蒸着は、米国特許第6,632,519号明細書、国際公開第2004/101662号パンフレット、および国際公開第2004/101843号パンフレットに記載されているように実施してもよく、この開示内容を参照により本明細書に援用する。蒸着は、好ましくは、真空チャンバ内で減圧下に実施される。好ましくは、沈着は、例えば窒素雰囲気のような不活性雰囲気中で実施される。好ましくは、蒸着工程は、圧力が約10mBar以下、好ましくは約1mBar以下、より好ましくは約10−3mBar以下の真空チャンバ内で実施される。圧力が低いとトリアジンがより低い温度で蒸発し、それによって、必要となる加熱が少なくなるので有利である。
【0033】
本発明の他の実施形態においては、トリアジンの蒸着は、大気圧中で実施される。このようにすることは、空気が捕捉されていたり水分含有量が高い基材などを用いる場合に特に有利である。好適な例としては、独立気泡発泡体、残留水分含有量の高い発泡体、多孔質木材等が挙げられる。
【0034】
通常、トリアジンは加熱されるであろう。昇華に必要な温度は真空度(適用する場合)に依存し、好ましくは約150℃以上、好ましくは約200℃以上、よりさらに好ましくは、例えばメラミンの場合は約250℃〜300℃の温度である。真空引きしない場合の温度は、例えばメラミンの場合は300℃〜360℃であろう。一般に、トリアジンの加熱温度は分解温度近辺となり、これはトリアジン(triazin)毎に異なっている。メラミンの場合は、この温度は、約350℃以下であろう。メラムの場合は、この温度は約450℃以下であろう。
【0035】
一般に、トリアジンの蒸着を確実に達成するには、基材の温度をトリアジンの加熱温度よりも約100℃低く維持することが好ましく、好ましくは、この温度差は約200℃以上であり、よりさらに好ましくは約300℃以上である。好ましくは、基材は、室温付近、例えば約20℃の温度に維持される。沈着ステップの最中にある程度の加熱が起こることになるが、これは重要なことではない。沈着されるトリアジンの量は、基材が蒸着に付される時間の長さ、蒸気中のトリアジンの濃度(これは特に、トリアジンを加熱する温度および圧力に依存する)によって操作することができる。
【0036】
本発明の一実施形態においては、基材が真空チャンバ内を横断する速度は約0.5m/s以上である。この速度は、通常、約10m/s以下であろう。真空チャンバ内のトリアジンの温度は、約250℃以上、好ましくは約330℃以上の温度である。真空度は、好ましくは約10Pa以下である。
【0037】
蒸着を最大数分間かけて実施することは可能ではあるが、これは一般に、経済的に魅力的なものではないであろう。トリアジンと基材との温度差を約250℃以上とし、沈着に高速、高真空度、高濃度蒸気を用いることの利点は、トリアジンが非常に微細な結晶層として沈着され、それによって難燃性が改善されることにある。
【0038】
本発明の一実施形態においては、基材上のトリアジンは微結晶構造を有する。SEM写真においては、好ましくは、メラミンの結晶サイズは、小板状の多結晶体として示される。この小板体の幅は、通常は約1000μm以下、より好ましくは約500μm以下であろう。通常、この幅は、約200nm以上、好ましくは約500nm以上であろう。通常、この小板体の厚みは、約100μm以下、好ましくは約50μm以下であろう。通常、この厚みは、約1nm以上、好ましくは約5nm以上であろう。
【0039】
一実施形態においては、基材はいわゆる連続基材であり、1または2次元基材の巻回物の形態にあってもよい。この基材は、大気圧または大気圧以下の圧力であってもよい蒸着用チャンバ内を引っ張られながら通過する。基材の長さは、通常は例えば約50m以上、好ましくは約200m以上であろう。通常、この長さは、約20km以下または約10km以下であろう。2次元の場合は、基材の幅は、通常は50cm以上、好ましくは1m以上であろう。通常、この幅は、約8m以下または6m以下であろう。
【0040】
他の実施形態においては、基材は、シート様物品等の2次元形態である。シートまたは層の大きさは重要ではなく、実際に考慮すべき事項によって決定してもよい。シートまたは層の大きさは約10cm以上、例えば約40cmであってもよい。シートまたは層の大きさは、通常、約10m以下、好ましくは2m以下であろう。
【0041】
基材および結晶性トリアジン層を備える製品は、結晶性トリアジン層を有しない基材と比較すると、難燃性が改善されている。
【0042】
本発明のさらなる実施形態においては、結晶性トリアジン層を有する製品は、結晶性トリアジン層を保護するためのコーティングで覆われている。この種のコーティングは、例えば、ラッカー、UV硬化性コーティング、熱硬化性コーティング等であってもよい。保護コーティングを使用することは、結晶性トリアジンが一般に(幾分)水溶性を有していることから、製品が濡れる可能性がある場所で使用される場合は特に有利である。また、たとえ結晶性トリアジン層が耐スクラッチ性を有していたとしても、耐摩耗性には限界がある場合もある。好ましくは、有機溶媒系のコーティングまたは固形分100%のコーティングが使用される。コーティングが熱硬化性である場合は、基材に応じて250℃まで加熱してもよい。好適なコーティングは、例えば、缶コーティング、工業用木材コーティング等である。通常、このコーティングは、ポリエステル、アルキド、ウレタン、アクリル、または他のバインダーポリマーを含んでいる。さらに、このコーティングは、通常、エポキシド、ブロック化イソシアネート、エチレン不飽和基、エーテル化メチロール−メラミン樹脂等の架橋性化合物を含む。
【0043】
本発明のさらなる好ましい実施形態においては、このさらなるコーティングは、例えば難燃剤を含むことにより、それ自体も難燃性を有している。
【0044】
難燃性は複数の要素から構成されており、多くの試験方法を利用することができる。一般に、適用される試験方法は、製品の用途に応じて異なる。好適な試験方法としては、これらに限定されるものではないが、建築構造および材料に関するASTM E 119、固定軌道輸送システム(fixed guideway transit systems)に関するNFPA 130、内装材に関するUL 1717、内装用発泡プラスチックに関するUBC 26−3、布帛に関するASTM D−1230、および布張り家具用材料に関するTB 117またはBS 5852が挙げられる。
【0045】
難燃性を試験することにより多くの特性を分析することができる。このような特性としては、これらに限定されるものではないが、着火時間、残炎、残じん、落下滴、炭化長、火炎伝播速度、自己消炎時間、燃焼および燻焼による重量減少が挙げられる。
【0046】
結晶性トリアジン層を使用すると、例えば、着火時間および火炎が視認できる状態にある時間が短くなり得る(したがって、自己消炎能力が向上する)。炭化長は短くなり、重量減少は低減されるであろう。好ましくは、メラミンの量は、難燃性の判定基準のうちの1つが平均して約10%以上、好ましくは約30%以上改善されたことが認められるような量である。一般には、5または10個の試験片が試験に供される。よりさらに好ましくは、メラミンの使用量は、場合により他の難燃剤と合わせて、所要のクラスに適合するものである。
【0047】
合成製品の場合、対応する試験方法としては、UL94およびUL746Aのうちの一つが特に好ましい。UL94は、火炎の拡がりまたは消炎性に焦点を当てている一方で、UL746Aは、耐着火性および表面のトラッキングに焦点を当てている。その中でも特に、燃焼性(flammability)および/または燃焼性(combustibility)を測定するための標準的な試験は、アンダーライターズ・ラボラトリーズ(Underwriters Laboratories)UL94、「プラスチック材料の燃焼性試験(Test for Flammability of Plastic Materials)UL−94」(1997年7月29日)として周知であり、特にこの開示内容を本明細書において参照により援用する。
【0048】
本発明の好ましい一実施形態においては、製品に含まれる基材上の結晶性トリアジンの量は、場合により他の難燃剤化合物と合わせて、製品がUL94に準拠するV1の要件、より好ましくはV0の要件を満たすようなものである。本発明の他の好ましい実施においては、特に基材が低密度発泡体である場合、製品に含まれる結晶性トリアジンの量は、場合により他の難燃剤化合物と合わせて、製品がUL94に準拠するHF2の要件、より好ましくはHF1の要件を満たすようなものである。本発明のさらなる他の実施形態においては、特に基材が布帛やフィルムのように自己支持性でない場合、製品に含まれる結晶性トリアジンの量は、場合により他の難燃剤化合物と合わせて、製品がUL94に準拠するVTM−1の要件、より好ましくはVTM−0の要件を満たすようなものである。さらなる他の好ましい実施形態においては、製品に含まれる基材上の結晶性トリアジンの量は、場合により他の難燃剤化合物と合わせて、製品がUL746Aに準拠する1つまたはそれ以上の要件を満たすようなものである。
【0049】
本発明による特に望ましい製品はV−0クラスを達成すべきであるが、特定の用途の場合は、その材料に意図される最終用途に応じて、より低い水準のクラス(V−1等)でも十分であろう。本発明の範囲内の製品の、この試験および試験条件下における挙動に関する詳細を以下に示す。
【0050】
20mm垂直燃焼試験用UL94試験片には、棒状引張試験片(tensile bar)として調製したものを用いる。この試験片は、典型的には、長さが125mm、幅が13mm、厚みが3.2mm、1.6mm、または0.8mmである。このような基材の表面に、次いで、メラミンが蒸着される。材料をV−0、V−1、またはV−2に分類するための垂直燃焼試験は、室内の温度および湿度を調整しなければならないという規定を設けないことと、棒状体を2日間で平衡状態にすることを必要としないこととを除いて、UL94(その全体を参照により本明細書に援用する)に準拠し、棒状試験片の調製から少なくとも1日経過した後に実施する。
【0051】
試験片の厚みも、試験結果の解釈に重要であろう。より肉厚の試験片よりもより肉薄の試験片の方がUL94垂直燃焼試験に合格するのが難しいが、結晶性メラミン層の相対的な量および厚みにも依存するであろう。
【0052】
難燃性の発泡体や布帛等の難燃製品は、好ましくは、輸送(飛行機、自動車、列車等)、建造物(病院、学校、住宅、ホテル、レストラン等)、電子工学(電気機器の筐体)等に用いられる。
【0053】
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、これらに限定されるものではない。
【0054】
[実施例]
[実施例1〜3;ナイロン−6(ポリアミド)布帛へのメラミンの蒸着]
80g/m(20×30cm)のポリアミド布帛を真空チャンバに装入する。真空チャンバは、メラミンを含む小型オーブンを備えるものとした。圧力を10−5mBarに維持しながらメラミンを305℃に加熱する。表1に示すようにして、メラミンを所定の時間沈着させる。
【0055】
【表1】

【0056】
[実施例4〜5;木質パネルへのメラミンの蒸着]
650g/m(20×30cm)の木質パネルを真空チャンバに装入する。真空チャンバは、メラミンを含む小型オーブンを備えるものとした。圧力を10−5mBarに維持しながらメラミンを305℃に加熱する。表2に示すように、メラミンを所定の時間沈着させる。
【0057】
【表2】

【0058】
この実施例から、これらの基材上の片面にも両面にも、米国特許第6,632,519号明細書による方法において通常用いられるよりも実質的に多い量のメラミンが上首尾に蒸着されたことがわかる。これらの実験は実験室設備で実施されたことにも留意されたい。工業規模では、この表に示す量を供するであろう高速の蒸着を容易に達成することができる(1メートル当たり数秒以下)。
【0059】
さらに、この結晶性トリアジン層を含む製品は難燃性が改善されており、例えば、着火時間が向上しているとともに、炎上時間(flame time)が低減されている。
【0060】
[実施例6〜10;および比較実験A〜C;PUR発泡体へのメラミンの蒸着]
厚さ1cmのポリウレタン(PUR)発泡シートから7×7cmの小片を切り出した。特定の量のメラミンを沈着させた。メラミンを沈着させた小片を、小片の下に炎を5秒間保持することによって燃焼試験に付し、難燃性を判定した。結果を表3に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
これらの実験からわかるように、この基材上においては、メラミンが少量のときは難燃性は改善されないが、より高量になると非常に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または2次元基材を備える製品であって、前記製品の難燃性が改善される量の結晶性トリアジン層をさらに含む製品。
【請求項2】
1または2次元基材を備える製品であって、トリアジンの量が約0.1g/m以上かつ約500g/m以下である結晶性トリアジン層をさらに含む製品。
【請求項3】
トリアジンの量が、約5g/m以上である、請求項1〜2のいずれか一項に記載の製品。
【請求項4】
前記トリアジンが、メラミンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製品。
【請求項5】
前記基材が、多孔質である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品。
【請求項6】
前記基材が、不均質である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製品。
【請求項7】
前記基材の厚みが約1mm以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製品。
【請求項8】
前記基材が、合成または天然繊維を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製品。
【請求項9】
前記基材が、炭素繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル、ポリアクリルアミド、およびポリオレフィン繊維、または綿、羊毛、もしくは絹繊維を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製品。
【請求項10】
前記基材が、フィルム、布帛、シート、または層状体を備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製品。
【請求項11】
前記基材が、天然または合成皮革、木質パネル、布帛、保護または断熱シートを備える、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製品。
【請求項12】
前記基材が、合成材料の発泡シートである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の製品。
【請求項13】
前記基材が、ポリウレタン発泡体である、請求項12に記載の製品。
【請求項14】
前記トリアジンが、幅が約500μm以下の小板状構造を有する微結晶である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の製品。
【請求項15】
結晶性トリアジン層を有する前記製品が、前記トリアジン層上に保護コーティングをさらに備える、請求項1〜14のいずれか一項に記載の製品。
【請求項16】
結晶性トリアジン層の、製品の難燃性被覆としての使用。
【請求項17】
1または2次元基材にトリアジンを蒸着させることによって前記基材上に蒸着された結晶性トリアジン層を得ることによる、難燃製品の製造方法。

【公表番号】特表2009−542933(P2009−542933A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518750(P2009−518750)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005865
【国際公開番号】WO2008/003457
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】