説明

雨水の仮溜めを兼ねたマンホール

【課題】 雨水の一部を一時的にマンホール内の水貯溜袋に貯溜し、雨水を再利用すると共に水貯溜袋内が満杯となったときにはオーバーフロー放出口から順次雨水を放出させて、大雨時に給排用排管への急激な排水を避け、マンホール内でのオーバーフローを容易にし、排水のマンホール内での直流を和らげることができる雨水の仮溜めを兼ねたマンホールを提供する。
【解決手段】 マンホール蓋2に雨水取り入れ用の複数の小孔7が形成され、水貯溜袋8の上端開口枠9を断面D字状として該開口枠とマンホール壁との間に間隙10が形成され、水貯溜袋内の雨水をマンホール内にオーバーフローするための放出口11が前記間隙に指向されているようにした雨水の仮溜めを兼ねたマンホール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マンホールは都内だけでもその設置台数が約50万台あり、その各マンホールが3mないし10mの容積を有していることから、地下には大容量の空間が形成されている。本発明は、この大容量の地下空間を大雨時の一時貯溜に利用するものであって、雨水の仮溜めを兼ねたマンホールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,マンホールの最上部位のマンホール蓋受枠にマンホール蓋を載置し、マンホール内で下位に配置された受台上に水貯溜袋を載置し、該水貯溜袋の上端開口枠側をマンホール上位の壁に取付け自在としたマンホールを水の貯溜に兼用し、災害時等に必要とする水を地中に埋設されたマンホール内に貯水しておく水溜め兼用マンホールがある(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−264659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の技術は、水貯溜袋に保存する水を貯水し、該保存された水を侵害時等に防火用の水として利用したり、緊急時の飲み水として使用するものであり、水の長期保存の為に防水加工,撥水加工等の施しが必要であった。また、雨水を貯溜して再利用するものではなく、大雨時に大量の雨水がマンホール内の給排用排管へ急激に排水される虞があった。
【0005】
本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、雨水の一部を一時的にマンホール内の水貯溜袋に貯溜し、雨水を再利用すると共に水貯溜袋内が満杯となったときにはオーバーフロー放出口から順次雨水を放出させて、大雨時に給排用排管への急激な排水を避け、マンホール内でのオーバーフローを容易にし、排水のマンホール内での直流を和らげることができる雨水の仮溜めを兼ねたマンホールを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明における雨水の仮溜めを兼ねたマンホールは、マンホール蓋に雨水取り入れ用の複数の小孔を形成し、水貯溜袋の上端開口枠を断面D字状として該開口枠とマンホール壁との間に間隙を形成し、水貯溜袋内の雨水をマンホール内にオーバーフローするための放出口を前記間隙に指向させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、マンホール蓋に雨水取り入れ用の複数の小孔を形成し、水貯溜袋の上端開口枠を断面D字状として該開口枠とマンホール壁との間に間隙を形成し、水貯溜袋内の雨水をマンホール内にオーバーフローするための放出口を前記間隙に指向させたので、雨水の一部を一時的にマンホール内の水貯溜袋に貯溜し、災害時の防火水等で雨水を再利用できると共に水貯溜袋内が満杯となったときにはオーバーフロー放出口から順次雨水を放出させて、大雨時に給排用排管への急激な排水を避け、マンホール内でのオーバーフローを容易にし、排水のマンホール内での直流を和らげることができる雨水の仮溜めを兼ねたマンホールとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1及び図2は本発明に係る雨水の仮溜めを兼ねたマンホールの実施例に関するもので、図1は雨水の仮溜めを兼ねたマンホールを設置する分解説明図、図2は雨水の仮溜めを兼ねたマンホールの設置概略図である。
【0009】
図において、1は既存のマンホールであり、該マンホ―ル1の最上部位にはマンホール蓋2を載置するマンホール蓋受枠3が結合され、マンホ―ル1の最下部位には複数の給排用排管4,4,…を接続する接続管を有するインバート5が結合されている。そして、前記マンホール1の内周壁には多数段の足掛具6,6,…が配設されている。
【0010】
前記マンホール蓋2には雨水取り入れ用の複数の小孔7,7,…が形成され、該マンホール蓋2は前記マンホール蓋受枠3に載置されて、その表面が地表面に露出されている。
【0011】
8は水貯溜袋であり、該水貯溜袋8は雨水を貯溜するもので例えばポリエチレン製等の袋で、水貯溜袋8の上端開口側には断面D字状の開口枠9が固定バンド等で係着,接着されている。そして、水貯溜袋8はマンホール1の内空間の略四分の三の大きさであり、前記開口枠9とマンホール内壁との間に間隙10が形成されるようにしてある。また、水貯溜袋8の上部には雨水をマンホール1内にオーバーフローするための放出口11が前記間隙10に指向させて形成されている。なお、前記放出口11を前記間隙10に指向させる蛇口としてもよい。さらに、水貯溜袋8の底部には排水弁12が設けられ、該排水弁12に袋8の上端開口部と連鎖するロープ13が連結された栓14が挿着されていて、該袋8内の雨水が不要となりマンホール1から放出する場合には、ロープ13をマンホール1の上方から操作して排水弁12を開放するようになっている。
【0012】
前記断面D字状の開口枠9の周面には、マンホール蓋受枠4の下位で前記マンホール1上位の内周壁に埋め込まれたアンカー15,15,…で固定するためのアンカー挿入孔16,16,…が複数穿設されている。
【0013】
17は前記マンホール1の下部位のインバート5に配置される貯溜袋受台であり、該貯溜袋受台17の上面全域には多数の孔18,18,…が設けられ、受台17の側周面には前記給排用排管4,4,…の水の流れを妨げないように複数の孔19,19,…が形成されている。
【0014】
以上のような構成からなる雨水の仮溜めを兼ねたマンホールであって、水貯溜袋8の底部をマンホール1の下部位のインバート5に配置された貯溜袋受台17に載置し、該貯溜袋受台17による嵩上げにより給排用排管4,4,…の水の流れの妨げを防止している。そして、水貯溜袋8は上端開口側の断面D字状の開口枠9に穿設されたアンカー挿入孔16,16,…をマンホール蓋受枠4の下位で前記マンホール1上位の内周壁に埋め込まれたアンカー15,15,…に係止させて固定する。この際、開口枠9と多数段の足掛具6,6,…が配設されている側のマンホール1の内周壁との間に間隙10が形成されるようにして水貯溜袋8は設置される。また、水貯溜袋8の底部の排水弁12に栓14を挿着し、該栓14に連結されたロープ13を最上位の足掛具6に係止させ、マンホール蓋受枠3にマンホール蓋2を載置することで雨水の仮溜めを兼ねたマンホールは簡単,容易に設定することができる。
【0015】
そして、雨水はマンホール蓋2に形成された複数の小孔7,7,…からマンホール1内に取り入れられ、水貯溜袋8に貯溜される。水貯溜袋8内が雨水で満杯となったときには水貯溜袋8の上部に形成した前記オーバーフロー放出口11から順次その雨水が放出されるようになっている。このようにして大雨時には一時的にマンホール1内の水貯溜袋8に雨水を貯溜することにより、給排用排管4,4,…への急激な排水を避け、マンホール1内でのオーバーフローを容易にし、排水のマンホール内での直流を和らげることができる。
【0016】
そして、貯溜された雨水はポンプ等により水貯溜袋8内から汲み上げ、災害時の防火水として利用することができる。また、雨水の水貯溜袋8内から放出もロープ13をマンホール1の上方から操作して排水弁12を開放することで容易に給排用排管4,4,…に排水することができて、大雨の予報があるときには水貯溜袋8内を空にして大雨への備えをすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る雨水の仮溜めを兼ねたマンホールを設置する分解説明図である。
【図2】雨水の仮溜めを兼ねたマンホールの設置概略図である。
【符号の説明】
【0018】
1 マンホール
2 マンホール蓋
3 マンホール蓋受枠
7 小孔
8 水貯溜袋
9 開口枠
10 間隙
11 放出口
17 受台


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールの最上部位のマンホール蓋受枠にマンホール蓋を載置し、マンホール内で下位に配置された受台上に水貯溜袋を載置し、該水貯溜袋の上端開口枠側をマンホール上位の壁に取付け自在としたマンホールを水の貯溜に兼用したものにおいて、マンホール蓋に雨水取り入れ用の複数の小孔を形成し、前記水貯溜袋の上端開口枠を断面D字状として該開口枠とマンホール壁との間に間隙を形成し、水貯溜袋内の雨水をマンホール内にオーバーフローするための放出口を前記間隙に指向させたことを特徴とする雨水の仮溜めを兼ねたマンホール。


【図1】
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【図2】
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