説明

雨水利用システム

【課題】 逆浸透膜処理で排出される濃縮液の処理方法を確立して、雨水を安定して飲料水としても供給できるシステムを提供する。
【解決手段】 上記課題は、集水した雨水を、中水基準まで処理を行い、その一部を逆浸透膜処理して透過液を飲料水として供給し、膜を透過しなかった濃縮液を中水ラインに返送する、雨水利用システムによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を中水あるいは飲料水として利用するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
雨水を集めて中水や飲料用水などに利用する方法は種々開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、雨水や河川、池、生活廃水を集めて中水や上水を製造する装置が開示されている。その方法は、集水して沈殿、濾過、活性炭処理、亜塩素酸塩を添加し、さらにミクロ濾過膜で濾過を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−234496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
逆浸透膜は海水の淡水化には使用されているが、雨水の浄化には使用されていない。本発明者らは、雨水の飲料化の確実な方法として逆浸透膜に着目したが、逆浸透膜処理では膜を透過しない濃縮液が出る。そこで、この濃縮液をどのようにするかが問題になる。
【0006】
本発明の目的は、逆浸透膜処理で排出される濃縮液の処理方法を確立して、雨水を安定して飲料水としても供給できるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題の解決手段として、雨水の塩類濃度が非常に低いことに着目した。すなわち、逆浸透膜処理における濃縮率は通常数倍であり、最大でも10倍程度である。そこで、雨水を集めたものは、逆浸透膜処理した濃縮液でも灌漑用水やトイレ用水などには充分使用しうる。
【0008】
そこで、本発明では、中水を逆浸透膜処理して排出される濃縮液を、中水ラインに、すなわち、中水処理の前後、滅菌処理の前後、中水貯槽あるいは、中水貯槽からの中水供給ラインの途中に返送して中水として利用するシステムを新たに案出した。
【0009】
すなわち、本発明は、集水した雨水を、中水基準まで処理を行い、その一部を逆浸透膜処理して透過液を飲料水として供給し、膜を透過しなかった濃縮液を中水ラインに返送する、雨水利用システムを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、雨水から中水と上水を円滑に製造することができ雨水の有効利用量を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の雨水利用システムを説明する系統図である。
【図2】雨水集水の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で利用される雨水は、各戸の屋根や路面等から集められるものである。集水手段は特に限定されず、各戸の屋根や路面に降った雨水を排水路や配管を利用して雨水貯槽に集めてもよく、その間に適宜中継貯槽を設けてもよい。例えば、図2に示すように、各戸に雨水タンクを設けて、その一部を各戸で灌漑用等に利用し、残部を集めてもよい。集水した雨水を中水基準まで処理する処理プロセスは流入水質、要求処理水質に応じて最適な方法を選択する必要がある。通常、中水の使用目的はトイレ用水や灌漑用水であるので、要求水質はそれほど厳しくはない。国内における代表的一例を挙げれば、pH値…5.8以上8.6以下、 臭気…異常でないこと、外観…ほぼ無色透明、大腸菌…検出されないこと、濁度…2度以下(ただし便器洗浄水は、濁度の基準はない。)、残留塩素基準…遊離残留塩素は0.1ppm(結合残留塩素の場合は0.4ppm)を保持、などである。
雨水を流入水とした場合ミクロフィルター(MF)膜での濾過と塩素滅菌でほとんどの場合は要求水質を満足できる。その他、凝集処理、沈澱処理、pH調整、イオン交換、逆浸透膜法、オゾン処理法、紫外線照射法、活性炭吸着法などを適宜組み合わせて使用する。
【0013】
一方、日本における水道水基準の代表的なものについてみると、pH値…5.8以上8.6以下、味…異常でないこと、 臭気…異常でないこと、色度5度以下、濁度2度…以下…、大腸菌…検出されないこと、濁度…2度以下(ただし便器洗浄水は、濁度の基準はない。)、残留塩素基準…遊離残留塩素は0.1ppm(結合残留塩素の場合は0.4ppm)を保持、となっており、上述の中水の場合の要求水質と大差はない。しかしながら、飲料の場合、健康被害をなくすという観点の他に、利用者の心理的な嫌悪感を極力排除する必要があり、その意味で、細菌、ウイルス、農薬や各種イオン等の化学物質を確実に排除できる逆逆浸透法を用いる。
【0014】
本発明では、集水した雨水を中水処理して得られた中水の一部を逆浸透膜処理して飲料水とし、残部は中水として利用する。中水と飲料水の比率は、地域の要求に応じて定められる。
【0015】
逆浸透膜装置は公知の装置を用いればよく、運転条件は、逆浸透法の原水の水質と、処理水である上水の要求水質と、本発明の根幹である逆浸透処理における濃縮水の満足すべき水質条件から決定すればよい。海水淡水化の場合の使用する膜の種類によってある程度異なるが、回収率は60%程度、濃縮率は2.5倍程度になる。回収率および濃縮率が制限される理由は、さらに濃縮率を高くしようとした場合には、原液の濃度が上昇し、正浸透圧が上昇し逆浸透処理に必要となる加圧圧力が上昇し、動力効率が低下することと、原液の濃度が上昇し、膜表面への膜閉塞物質付着が懸念されること、などによるものである。しかしながら、雨水を処理して得た中水を原水とした場合には、塩類濃度が非常に小さいため、海水淡水化の場合に比べて非常に大きい回収率での運転と装置の小型化が可能になる。たとえば、このため、塩排除率が小さい代わりにエネルギー消費も小さく、細菌やウイルスさらには農薬のような化学成分の除去が可能な種類の逆浸透膜の使用が可能となるというメリットがある。しかしながら、逆浸透法の宿命として、濃縮液は少なからず発生し、その処理が必要となる。海水淡水化の場合には、非常に高濃度の濃縮水を海に放流した場合、局所的な高塩濃度の海水域が形成されるため、環境問題が深刻化している。
【0016】
一方、本発明では、発生する濃縮液は、中水レベルの水の濃縮液であるため上水レベルの水質は望むことはできないが、非常に清澄で、もともと塩類濃度の小さい雨水から製造した中水を原水としているため、濃縮液の塩類濃度も小さく、中水としてであればその利用が可能であり、廃棄することによる資源の無駄使いの防止と、環境への負荷低減が可能となる。
【0017】
逆浸透膜の透過液は、塩素添加等による滅菌処理をし、その外、必要により、ミネラル添加などを行って飲料水として供給する。
【0018】
一方、濃縮液は、中水ラインへ返送する。返送先は、中水処理の上流側、中水処理中、中水処理後の中水貯槽までの間、あるいは、中水貯槽からの中水供給ラインの途中のいずれでもよい。中水処理の上流側への返送は、濃縮率が非常に高くても希釈されて、またさらに中水処理が施されるため、中水として全く問題のない水質になる利点がある。中水処理の段階、特に滅菌処理の上流側への返送も可能である。この場合でも、他の中水による希釈効果が得られ、返送された濃縮液による中水水質への影響はごくわずかとなるというメリットがある他、返送水は滅菌処理が施され、安全性の高い中水を確実に供給できるというメリットや、滅菌処理より上流側の処理には影響を及ぼさないため、滅菌処理より上流側の処理装置を大型化する必要もない。中水処理後の中水貯槽までの間への返送も、大量の中水で希釈されるため特に問題を生じない。この場合には、滅菌処理装置より下流側への返送となるため、中水貯層での残留塩素濃度が所定の値となるように、滅菌装置での塩素系殺菌剤の添加量を調整すればよい。この塩素系殺菌剤の添加量の調整の方法としては、水質、水量が安定している場合には、経験的に決めることが出来、さらに、中水貯槽に残留塩素濃度測定装置を設け、その値から調整することも出来る。必要に応じて、中水貯槽にも塩素系滅菌剤を投入できるようにしておけばよい。一方、中水供給ラインへの返送は、局部的に濃度が高くなるおそれがあるので、濃縮液の品質管理が必要になる場合がある。
【0019】
本発明の一実施態様である雨水利用システムの概略構成を図1に示す。
【0020】
同図に示すように、集水された雨水は、雨水貯槽から中水処理装置へ送られる。
【0021】
中水処理プロセスは流入水質、要求処理水質に応じて最適な方法を選択する必要がある。通常、中水の使用目的はトイレ用水や灌漑用水や洗車用水である。MF膜での濾過と塩素滅菌でほとんどの場合は要求水質を満足できる。その他、凝集処理、沈澱処理、pH調整、イオン交換、逆浸透膜法、オゾン処理法、紫外線照射法、活性炭吸着法などを適宜組み合わせて使用する。
【0022】
中水処理が行われた水は次亜塩素酸塩の添加による滅菌処理が行われ、中水貯槽に入れられる。
【0023】
中水貯槽からは、一部は逆浸透膜装置へ送られて逆浸透膜処理が行われ、残部は、中水として、トイレ用水、灌漑用水、洗車等に利用される。
【0024】
逆浸透膜の透過液は、次亜塩素酸塩の添加による滅菌処理が行われ、飲料水貯槽に貯えられて、飲料水等に利用される。
【0025】
一方、逆浸透膜を透過しなかった濃縮液は、中水処理の前(A)、中水処理と滅菌処理の間(B)、中水貯槽(C)あるいは中水供給ライン(D)へ返送される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の雨水利用システムは、雨水から上水と中水を安定提供でき雨水の有効利用量を増大することができるので、特に、河川等から離れた地域に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集水した雨水を、中水基準まで処理を行い、その一部を逆浸透膜処理して透過液を飲料水として供給し、膜を透過しなかった濃縮液を中水ラインに返送する、雨水利用システム

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−121003(P2011−121003A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280849(P2009−280849)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】