説明

雨水貯水槽における換気装置

【課題】 雨水貯水槽において、雨水が雨水貯水槽内に流入し、雨水が貯留させる時に内部の空気を排出するようにした換気装置の提供。
【解決手段】 上記中間壁4,4・・・にて仕切った各貯水空間槽の頂版5には換気孔7,7・・・を設け、そして貯水槽の付近に設置した換気枡9から延びる換気管8,8・・・に上記換気孔7,7・・・を接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洪水時などにおける雨水を一時的に貯留することが出来る雨水貯水槽に取付ける換気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洪水時などにおける大量の雨水を一時的に貯留する為にコンクリート製の構造物として構成した雨水貯水槽が設けられている。この雨水貯水槽に関しては実公昭63−35092号に係る「遊水池装置」、実公平2−34306号に係る「遊水池装置」が知られている。
【0003】
雨水貯水槽に雨水が流れ込む場合、内部の空気を外に排出する必要があり、従来では図8に示すような換気枡を設置して雨水貯水槽内部の空気を排出している。このような換気装置の場合、雨水の流入水位が開口部の高さまでならば、内部の空気は換気枡が設置されていない層列からの空気も換気される。しかし、開口部の高さ以上に水位が上った場合、換気装置の無い層列の空気は排出されなくなり、開口部以上の水位に雨水を貯留できなくなる。雨水貯水槽の内部空間を全て雨水貯水空間として利用出来ず、所定の貯水量を確保する場合、内部の空隙も含んだ必要貯水量より大きな雨水貯水槽を設置する必要がある。
【0004】
このような問題を解決する為には、雨水貯水槽を構成している各層列ごとに換気枡を設置しなくてはならない。一般に地下に設置される大きな雨水貯水槽の上部地表面部は駐車場やグランドなどに有効利用される為に、その地表面に多数の換気枡を設置するならば、駐車場やグランドなどにおいては上部利用に支障が生じる。また、換気枡の設置数が増えればそれだけ設置費用が増すことになる。
【特許文献1】実公昭63−35092号に係る「遊水池装置」
【特許文献2】実公平2−34306号に係る「遊水池装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように従来の地下貯水槽には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、貯留槽をほぼ満杯に満たすことが出来るように簡単な構造で構成した雨水貯水槽における換気装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は雨水を一時的に貯留することが出来る貯水槽を対象とし、この貯水槽は地下に設置される。そこで、豪雨時の雨水はこの貯水槽に一時的に流れ込んで、住宅地や道路の冠水を抑制することが出来る。
ところで、この貯水槽はコンクリート製の底版とその周囲には側壁を垂直に起立した大きな地下空間を形成し、そして、この地下空間には複数の中間壁が起立することで仕切られて複数の貯水空間層が形成され、側壁及び中間壁の上端には上版が載っている。
【0007】
そして、側溝から流れる雨水を貯水空間に流入する流入枡が該側壁付近に設けられ、また側壁には貯留した雨水を流出する為の放流管が側壁に接続している。中間壁の一部は開口して流入枡から流入した雨水は仕切られた貯水空間層に均等に満たされるように開口部を形成している。ところで、上版には所々に換気孔が設けられ、各換気孔は上版上に設置した換気管と接続し、換気管は換気枡に接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明が対象とする雨水貯水槽は地下に形成され、底版の周りを側壁にて囲まれる大きな地下空間であって、上部には頂版が設けられているが、対向する側壁の間には複数の中間壁が起立して上記頂版を支えている。そして、中間壁の一部は切欠かれた開口部を形成している為に、流入枡から貯水槽へ流入する雨水は開口部を通過して各貯水空間層は均等に満たされる。
【0009】
そして、各貯水空間の頂版には換気孔が設けられると共に、換気孔には換気管が接続されて外気と繋がっている。従って、貯水空間層に雨水が満たされることで、水位の上昇と共に頂版との間に介在する空気は圧縮されることなく、頂版まで雨水を貯留することが出来る。換気孔には換気枡から延びる換気管を介して空気の出入が行なわれるために、貯水槽の上部に換気孔は露出せず、上部地表面は駐車場などの別の用途に利用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】雨水貯水槽に取付けた換気装置を示す実施例。
【図2】コンクリートブロックを配列して構成した雨水貯水槽。
【図3】雨水貯水槽を構成する端部ブロックの具体例。
【図4】雨水貯水槽を構成する中間ブロックの具体例。
【図5】雨水貯水槽を構成する頂版スラブ。
【図6】雨水貯水槽を構成する点検用スラブ。
【図7】端部ブロックと中間ブロック、及び頂版スラブの配列形態。
【図8】上部に換気枡を配置した従来の雨水貯水槽。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は雨水貯水槽を示す実施例であり、外観と内部構造の一部を表している。同図の1は底版、2は側壁、3は端壁、4は中間壁、5は頂版をそれぞれ表し、長方形底版1の周りに上記側壁2,2と端壁3,3が垂直に起立して貯水槽が構成されている。該雨水貯水槽は底版1と両側壁2,2、及び両端壁3,3、それに上端に設けている頂版5にて囲まれる地下の空間であり、該空間には側壁2に平行して複数の中間壁4,4・・・が底版1から垂直に起立している。従って、中間壁4,4・・・にて仕切られることで貯留槽の内部には複数の貯水空間層が形成される。
【0012】
そして、中間壁4はその一部が底版1から切欠かれて開口部6を形成している。従って、雨水貯水槽の内部空間は中間壁4,4・・・にて仕切られて複数の貯水空間層と成っているが、該中間壁4,4・・・に形成した開口部6,6・・・を介して貯水槽全体が連通している。頂版5の所々には換気孔7,7・・・が貫通して設けられ、換気孔7,7・・・の上部には換気管8,8・・・が配置され、換気孔7,7・・・は換気管8,8・・・と接続している。
【0013】
そして、換気管8,8・・・は雨水貯水槽のコーナー部の外に設置した換気枡9に接続している。雨水貯水槽は地下に設置されることで外気と遮断されるが、換気枡9から延びる換気管8.8・・・を通して頂版5に形成した換気孔7,7・・・と接続していることで、雨水貯水槽の内部空間に形成される貯水空間層は外気と連通し、常に大気圧と等しく成るように維持されている。
【0014】
図2は雨水貯水槽を門形のコンクリートブロックを配列して構成した具体例を示している。複数の門形コンクリートブロックがX−X方向に隙間なく配列することでコンクリートブロック列10a,10b,10cが構成され、これらコンクリートブロック列10a,10b,10cの間には所定の空間が設けられ、この空間には頂版スラブ11,11・・・が配置され、該頂版スラブ11,11・・・は門形コンクリートブロックの頂版と同一高さに成るように該門形コンクリートブロックの頂版コーナーに載置されている。
【0015】
ところで、図2に示す雨水貯水槽は図3〜図6の構成部材を組付けて構成されている。図3の門形コンクリートブロックは端部ブロック12を示し、両側に配置されるコンクリートブロック列10a,10cを構成し、頂版部13と両側版部14a,14bを有している。そして、頂版部13の片側には切欠き部15を形成している。片方の側版部14bの中央には開口部6が形成され、側版部14bの両側には切欠き部16a,16bを設けている。
【0016】
図4に示す門形コンクリートブロックは中間ブロック17を示し、この中間ブロック17は図2における両コンクリートブロック列10a,10cの間に配列されているコンクリートブロック列10bとなる。そこで、該中間ブロック17は頂版部18と両側には側版部19a,19bを有し、この両側版部19a,19bの中央には開口部6が設けられ、両側には切欠き部16a,16bを有している。そして、頂版部18の両側には切欠き部15a,15bを形成している。
【0017】
図5には頂版スラブ11を示しているように、該頂版スラブ11は一定厚さの四角形版であり、両側にはボルト穴20,20・・・が貫通して設けられている。該頂版スラブ11,11・・・はコンクリートブロック列10aとコンクリートブロック列10bの間に配置されるが、端部ブロック12の頂版部13に形成した切欠き部15と中間ブロック17の頂版部18に形成した切欠き部15aに両側端部が載置され、ボルト穴20,20・・・にボルトを挿通して連結・固定される。
【0018】
同じく、コンクリートブロック列10cとコンクリートブロック列10bの間に配置され、端部ブロック12の頂版部13に形成した切欠き部15と中間ブロック17の頂版部18に形成した切欠き部15bに両側端部が載置され、ボルト穴20,20・・・にボルトを挿通して連結・固定される。
【0019】
図6は点検用スラブ21を表し、該点検用スラブ21は前記頂版スラブ11と縦横寸法、及び厚さ寸法は同じであって、両側にはボルト穴20,20・・・が貫通している。また、該点検用スラブ21には点検穴22が貫通している。そして、該点検用スラブ21はコンクリートブロック列10cとコンクリートブロック列10bの間に頂版ブロック11の代わりに配置される。
【0020】
図7は図2におけるY−Y方向の両側に配列される両端部ブロック12,12と中央に位置する中間ブロック17の間に頂版スラブ11,11が配置される場合を示している。図7(a)は頂版スラブ11,11が載置される前の状態、図7(b)は頂版スラブ11,11が載置された状態を示す。頂版スラブ11,11と端部ブロック12,12の頂版部13,13、及び中間ブロック17の頂版部18とは同一高さと成っている。
【0021】
ところで、端部ブロック12,12・・・、及び中間ブロック17,17・・・は底版コンクリート面上に配列されるが、インバートコンクリート23が現場打ちされて、端部ブロック12,12・・・の側版部19a,19b・・・の下端、及び中間ブロック17,17・・・の側版部19a,19b・・・の下端は固定される。
【0022】
図7に示す端部ブロック12、頂版スラブ11、中間ブロック17、頂版スラブ11、及び端部ブロック12はボルト締めして互いに連結・固定され、コンクリートブロック列10a,10cを構成する端部ブロック12,12・・は連結金具によって連結・固定され,コンクリートブロック列10bを構成する中間ブロック10b,10b・・・は同じく連結金具によって連結・固定されている。
【0023】
前記図2において、雨水貯水槽には流入枡24が設けられ、該流入枡24は雨水貯水槽と側溝との間に配置されて、側溝を流れて来た雨水は流入枡24から雨水貯水槽へ流入する。そして、反対側の端壁3には放流管25が接続されており、該放流管25から流出して水路へ流れることが出来る。ただし、雨水貯水槽に流入した雨水が放流管25から直ちに流出したのでは、雨水貯水槽の意味が無い為に、放流管25の管径は放流河川などの許容流入量より決定され、雨水貯水槽への流入量より雨水貯水槽からの放流量が少なく、その差の分だけ内部に雨水が貯留されることになる。
【符号の説明】
【0024】
1 底版
2 側壁
3 端壁
4 中間壁
5 頂版
6 通水穴
7 換気孔
8 換気管
9 換気枡
10 コンクリートブロック列
11 頂版スラブ
12 端部ブロック
13 頂版部
14 側版部
15 切欠き部
16 切欠き部
17 中間ブロック
18 頂版部
19 側版部
20 ボルト穴
21 点検用スラブ
22 点検穴
23 インバートコンクリート
24 流入枡
25 放流管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に形成した空間の底に底版を設け、該底版から側壁及び端壁を起立して周囲を囲み、そして、上記側壁又は端壁に平行して複数の中間壁を起立することで内部を複数の貯水空間層に仕切ると共に中間壁には開口部を設けた雨水貯水槽であって、雨水が雨水貯水槽内に流入する時に内部の空気を排出するようにした換気装置において、上記中間壁にて仕切った各貯水空間層の頂版には換気孔を設け、そして貯水槽の付近に設置した換気枡から延びる換気管に上記換気孔を接続したことを特徴とする雨水貯水槽における換気装置。
【請求項2】
雨水貯水槽を構成する中間壁により仕切られる各貯水空間層の各層列毎に1ヶ所以上の換気孔を設け、各層ごとの換気孔を連通した請求項1記載の雨水貯水槽における換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−49956(P2013−49956A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186941(P2011−186941)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(593158179)株式会社ミルコン (18)
【Fターム(参考)】