説明

雨水貯留施設における点検口の構造

【課題】 地中に設けられた貯水槽内の一部に形成される点検口であって、運搬や取り扱いが容易であると共に貯水槽内の所定箇所への施工が簡単に行えると共に特別な基礎等を設けることなく上載荷重を確実に受止することができ、また、内部からの点検も全面に亘って明確に行える点検口を提供する。
【解決手段】 点検口6は複数個の矩形枠7と支柱8とからなり、地中に多数の雨水貯留ユニット部材3を縦横に且つ多段に配設することによって形成している貯水槽1の一部に雨水貯留ユニット部材3を設けていない空間部を設けてこの空間部内に上記矩形枠7を上下方向に一定間隔毎に配設してこれらの矩形枠7の縁辺部を雨水貯留ユニット部材3の縁辺部に支持させ、矩形枠7の設置後に空間部内に4本の支柱8を挿入、立設して矩形枠7の四隅部をこの支柱8にボルトにより連結した構造としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園や駐車場、或いは道路等の地面下に設けられる雨水貯留施設において、この雨水貯留施設内を点検するための点検口の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅地や道路等に降った雨水は地中に殆ど浸透することなく側溝や排水溝を通じて河川等に排出されているが、集中豪雨のように短時間で多量の降雨が発生すると、道路上に氾濫して交通マヒを引き起こすことになる。このため、従来から公園や駐車場、或いは、道路等の地面下に雨水貯留施設を設けておき、多量の降雨が発生した際には、側溝や排水溝を通じて雨水をこの雨水貯留施設に一旦、貯留しておくことが行われている。
【0003】
このような雨水貯留施設としては、例えば、特許文献1に記載されているように、地面を掘り下げることによって形成した貯水凹部内に、雨水を貯留する内部空間を有する樹脂製のブロック体を縦横に敷設すると共に複数段に積み重ねることによって貯水槽を形成すると共に、この貯水槽をシート材や舗装材等の積層被覆材によって被覆してなる構造を有し、側溝や排水溝内に流入した雨水を雨水導入管を通じて上記貯水槽に貯水するように構成している。
【0004】
さらに、雨水が貯水槽内に貯留中に、雨水に含まれている砂利や泥土等が沈降して槽底上に堆積するので、その堆積状態を確認したり、貯水槽内の状態や貯水された雨水の水位等を点検するための点検口(マンホール)を配設しているが、このような点検口としては、点検口を設けたい貯水槽内の一部に、その箇所の縦一列の積層ブロック体を排除することによって縦孔を設け、この縦孔内に複数個のコンクリート製のリングを積み重ねることによって形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−160606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、貯水槽を構成しているブロック体は、通常、コンクリートよりも軽量な合成樹脂成形品からなる一方、コンクリート製の点検口は重量が極めて大きいので、ブロック体を多列、多段に積層してなる貯水槽内に上記コンクリート製の点検口を形成する場合には、軽量なブロック体を支持している貯水槽の底部とは別に点検口を設置すべき貯水槽の底部に、該点検口を支持できる強度を有する基礎を設けたり、沈下防止のための地盤改良等を必要とし、さらに、このようなコンクリート製の点検口では点検口周囲の貯水槽の内部を点検口内から点検するための開口部の形成に制約を受けて十分な点検が行えなくなるといった問題点がある。
【0007】
また、貯水槽内に点検口を施工する手順として、上記のように、点検口を設けたい貯水槽内の一部に、その箇所の縦一列の積層ブロック体を排除することによって縦孔を設け、この縦孔内に複数個のコンクリート製のリングを積み重ねることによって形成した場合、一度、組み上げたブロック体の一部を排除することは著しい手間と労力を要して工期が長くなる。このため、まず、地面を掘り下げることによって形成した貯水凹部内の所定位置に基礎を施工して該基礎上に上記コンクリート製の点検口を設置した後、該貯水凹部内に上記樹脂製のブロック体を多列、多段に敷設、積載することによって貯水槽を構築する方法も考えられるが、この方法も施工が煩雑化して手間を要するといった問題点がある。
【0008】
さらに、このような問題点を解消するために、予め、ステンレス製のアングル材を複数本、組み合わせて溶接することにより直方体形状の点検用開口枠を形成しておく一方、上記貯水凹部内に多数個の樹脂製ブロック体を多列、多段に敷設、積載することによって貯水槽を構築する際に、その一部にブロック体が積層されていない平面矩形状の空間部を設けておき、この空間部内に上記点検用開口枠を挿入、設置することも考えられるが、組み立てた直方体形状の点検用開口枠が重量が大で、高さも比較的高いために、運搬や取り扱いが困難であるばかりでなく、人手によって上記空間部内にこの点検用開口枠を挿入、設置することができず、重機で吊り上げて設置する必要が生じて上記同様に施工が煩雑化し工費が嵩む等の問題点が生じることになる。
【0009】
その上、上記点検口はいずれも、ブロック体とは別体にしてブロック体に連結することなく貯水槽の一部に設けている縦孔内や空間部内に設置されているため、この点検口に上載荷重等の鉛直荷重が作用すると、この点検口を支持している貯水槽の底面にその荷重がこの点検口を介して直接伝達することになり、点検口を支持している貯水槽の底面がその荷重によって部分的に沈下する等の不具合が生じる虞れがあった。
【0010】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、運搬や取扱いが容易であると共に、施工時には貯水槽の一部に設けている空間部内に、人手によって簡単且つ正確に組み立てることができ、その上、上載荷重等の鉛直方向の荷重が作用しても貯水槽の底面に全ての荷重を直接伝達させることなく周囲に分散、支持させることができて、貯水槽における点検口設置面に特別の基礎を施工したり地盤改良を行う必要をなくすことができると共に、内部からの貯水槽の点検も全面に亘って明確に行える雨水貯留施設における点検口の構造を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の雨水貯留施設における点検口の構造は、請求項1に記載したように、地面を掘削することにより形成した貯水凹部内に雨水を貯留する内部空間を有する雨水貯留ユニット部材を縦横に敷設すると共に複数段に積み重ねることによって貯水槽を形成し、この貯水槽の上面を被覆材によって被覆すると共に貯水槽に外部かから雨水を導入するための雨水導入管を設けてあり、さらに、上記貯水槽の一部に雨水貯留ユニット部材を配設していない平面矩形状の空間部を該貯水槽の全高に亘って設けてこの空間部内に点検口を配設し、地表から上記被覆材を貫通してこの点検口に連通する人孔を設けてなる雨水貯留施設において、上記点検口は、上記空間部内に上下方向に所定間隔毎に配設している複数個の矩形枠からなり、各矩形枠の縁辺部をその高さ位置に配設している雨水貯留ユニット部材の縁辺部に支持させていることを特徴とする。
【0012】
このように構成した雨水貯水槽における点検口において、上記空間部内に上下方向に所定間隔毎に配設している矩形枠の四方の内隅部に沿って支柱を挿入してあり、これらの支柱に矩形枠の四隅部をボルトによって連結していることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、点検口を構成する上記矩形枠は四本の枠材を組み合わせて、点検口を設置するための平面矩形状の空間部内に挿入可能な大きさの矩形状枠に形成していると共に互いに平行な2組の枠材のうち、一組の枠材にのみ外側面に雨水貯留ユニット部材の縁辺部上に受止させる一定幅を有する水平フランジ部を突設していることを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項4に係る発明は、上記請求項3に記載の発明において、水平フランジ部を有する枠材を山形鋼から形成してあり、この山形鋼の一方の辺を水平フランジ部としていることを特徴とし、請求項5に係る発明は、上記矩形枠における互いに直角に連結している枠材の対向する端部間に足場兼用補強フレームを固着していることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に係る発明は、上記支柱を山形鋼から形成してあり、その辺に長さ方向に所定間隔毎に矩形枠の隅部に設けている螺子孔に螺着させるボルト取付孔を穿設していることを特徴とし、請求項7に係る発明は、隣接する支柱の内面間に筋交いを装着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、貯水槽の一部に設けている平面矩形状の空間部内に設置する点検口は、この空間部内に上下方向に所定間隔毎に配設している複数個の矩形枠からなるので、施工現場への運搬時においては、これらの複数個の矩形枠を積み重ねた状態にして嵩張ることなく容易に運搬することができるのは勿論、施工現場において点検口を組み立てる際には、重機などを使用することなく人手によって矩形枠を一個宛、上記空間部内に順次、容易に挿入することができて工費の低減を図ることができると共に、これらの矩形枠の互いに平行な縁辺部をその高さ位置に配設している雨水貯留ユニット部材の縁辺部に支持させることによって空間部の下部から上部に向かって所定間隔毎に矩形枠を所定の高さ位置に簡単且つ正確に配設することができる。
【0017】
その上、このように組み立てられた点検口は、各矩形枠をその周囲の雨水貯留ユニット部材の縁辺部に支持させているので、この点検口に上載荷重等の鉛直荷重が作用してもその荷重を矩形枠を介してその周囲の雨水貯留ユニット部材に分散させることができ、従って、点検口の底部に特別の基礎や地盤改良を行う必要をなくすることができ、コストの削減と共に工期の短縮を図ることができる。また、このように構成した点検口によれば、上下に隣接する矩形枠間を四方に向かって大きく開口させているから、この開口部を通じて貯水槽を構成している四方の雨水貯留ユニット部材を広い範囲に亘って明確に確認することができる。
【0018】
さらに、請求項2に係る発明によれば、上記空間部内に上下方向に所定間隔毎に配設している矩形枠の四方の内隅部に沿って支柱を挿入してあり、これらの支柱に矩形枠の四隅部をボルトによって連結しているので、空間部内から矩形枠に対する支柱のボルトによる連結作業を行うことによって簡単に直方体形状の開口枠からなる点検口を組み立てることができ、このように構成した点検口に上載荷重等の鉛直荷重が作用しても、支柱から各矩形枠を介してこれらの矩形枠を支持している雨水貯留ユニット部材にそれぞれ分散受止させることができ、貯水槽の底部に掛かる荷重を小さくすることができて上述したように基礎や地盤改良を不要にすることができる。
【0019】
また、請求項3に係る発明によれば、点検口を構成する上記矩形枠を、点検口を設置するための平面矩形状の空間部内に挿入可能な大きさに形成していると共にこの矩形枠を形成する4本の枠材における互いに平行な2組の枠材のうちの一組の枠材にのみ外側面に雨水貯留ユニット部材の縁辺部上に受止させる一定幅を有する水平フランジ部を突設しているので、点検口の施工時には、この水平フランジ部を突設している互いに平行な枠材を挿入方向に向けた状態となるように矩形枠を傾斜させて、その一方の枠材から点検口を施工すべき上記平面矩形状の空間部内に挿入することにより、水平フランジ部が空間部内に向かって面している雨水貯留ユニット部材の縁辺に引っ掛かることなく矩形枠を空間部内に円滑に挿入することができ、所定の位置まで挿入したのち、下傾端側の枠材の水平フランジ部をこの枠材に対向する雨水貯留ユニット部材の縁辺上に係止させ、この係止部を支点として上傾端側の枠材を該雨水貯留ユニット部材の高さ位置まで降下させてその水平フランジ部を対向する雨水貯留ユニット部材3の縁辺上に係止させることにより、矩形枠を空間部内における所定の高さ位置で、対向する雨水貯留ユニット部材間に安定した架設状態に簡単に設置することができる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、矩形枠における水平フランジ部を有する上記枠材は山形鋼からなり、この山形鋼の一方の辺を水平フランジ部としているので、別に水平フランジ部を形成することなく、山形鋼を使用して水平フランジ部を有する枠材を簡単に作製することができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、上記矩形枠における互いに直角に連結している枠材の対向する端部間に足場兼用補強フレームを固着しているので、この足場兼用補強フレームによって矩形枠が強固に補強されて歪み等の変形が生じがたいのは勿論、これらの矩形枠を上下に所定間隔毎に配設することによって点検口を構成しているので、足場兼用補強フレームが梯子の役目を発揮して点検口内への昇降が容易に行えることができ、貯水槽内の点検作業が円滑に且つ確実に行うことができる。
【0022】
さらに、請求項6に係る発明によれば、矩形枠と共に点検口を構成している上記支柱は山形鋼からなり、その辺に長さ方向に所定間隔毎に矩形枠の隅部に設けている螺子孔に螺着させるボルト取付孔を穿設しているので、貯水槽の一部に設けている上記空間部内に矩形枠を上下方向に所定間隔毎に配設したのち、矩形枠の内隅部に沿ってこの支柱を挿入して点検口を構成する際に、矩形枠の四隅部に設けている上記足場兼用補強フレームを足場として空間部内から矩形枠と支柱とのボルトによる連結作業が位置決めをすることなく容易に行うことができる。
【0023】
また、請求項7に係る発明によれば、点検口における隣接する支柱の内面間に筋交いを装着しているので、耐震性に優れた強固な点検口を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】点検口を備えた雨水貯留施設の簡略縦断側面図。
【図2】その簡略平面図。
【図3】拡大縦断側面図。
【図4】点検口の一部の拡大斜視図。
【図5】点検口を形成する矩形枠と支柱との分解斜視図。
【図6】空間部内に矩形枠を配設した状態の簡略縦断面図。
【図7】矩形枠と支柱とを連結して点検口を形成した状態の簡略縦断面図。
【図8】この点検口を下から見た場合の一部切欠裏面図。
【図9】点検口の上部の拡大縦断面図。
【図10】雨水貯留ユニット部材の斜視図。
【図11】上下に重ね合わせた雨水貯留ユニット部材の縦断面図。
【図12】点検口を備えた別な構造を有する雨水貯留施設の一部の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1〜図3において、雨水貯留施設は、公園等の地面を所定深さ、掘り下げることによって平面長方形状の貯水凹部2を形成すると共にこの貯水凹部2内に雨水を貯留する内部空間を有する平面矩形状で一定厚みを有する合成樹脂製の雨水貯留ユニット部材3を縦横に敷き並べると共に多段に積載することによって形成してなる貯水槽1と、この貯水槽1の上面を被覆した被覆材4と、貯水槽1内の一部にこの貯水槽1の内底面から上端までの全高に亘って雨水貯留ユニット部材3が配設されていない平面矩形状の空間部5を設け、この空間部5内に配設している点検口6と、地表から上記被覆材4を貫通して点検口6の上端開口部に連通している人孔9と、貯水槽1の一端部側に配管されて雨水を貯水槽1外から貯水槽1内に導入する雨水導入管10とから構成されている。
【0026】
このように構成している雨水貯留施設の構造をさらに詳述すると、上記貯水凹部2の底面を平坦な水平面に形成したのち、この貯水凹部2の底面から四方の掘削壁面全面に亘って遮水シート11を被覆し、この遮水シート11によって被覆されている貯水凹部2内に上記雨水貯留ユニット部材3を多列、多段に配設することによって貯水槽1を形成してあり、さらに、貯水槽1における他端部側の下端部に貯水槽1内の雨水を外部に排出するための雨水導出管16を連通させている。なお、上記遮水シート11に代えて透水シートを敷設してもよい。
【0027】
貯水槽1を構成する上記雨水貯留ユニット部材3としては、例えば、図10、図11に示すように、平面矩形状の底板部31に、下端がこの底板部31から下方に全面的に開口している一定高さの截頭角錐形状の中空突部32を4個以上、偶数個、底板部31の互いに平行な一方の縁辺間に亘って連続させた状態で直列状に突設すると共にこの中空突部列を複数列、互いに平行な他方の縁辺間方向に一定間隔毎に突設してあり、さらに、全ての中空突部32の上端面に平面矩形形状の小さな突出頂部32a を突設していると共に各隣接する2個を一組とする中空突部32、32の突出頂部32a 、32a の外側壁面間の間隔を中空突部32の下端開口部の開口幅に等しくなるように形成していて、雨水貯留ユニット部材3を互いにその中空突部列を順次直交するように向きをかえながら上下方向に積載した際に、上段側の中空突部32の下端開口部に、この開口部に対応する下段側の各中空突部列における隣接する2個の中空突部32、32の突出頂部32a 、32a が嵌合、係止し、上段側の中空突部32の下端面が下段の雨水貯留ユニット部材3の中空突部32の上面に支持させた状態にして正確に且つ確実に積み重ねられるように構成している。
【0028】
さらに、全ての中空突部32における突出頂部32a には、中空突部32内に連通する数個の通水孔33が穿設されていると共に隣接する中空突部32、32間の谷部を一定幅を有する真っ直ぐな凹溝からなる貯水空間部34に形成してあり、また、底板部31の四方の縁辺における少なくとも互いに平行に対応する一組の縁辺部35、35を中空突部32の下端から一定幅、外側に突出させている。なお、この突出縁辺部35は、底板部31の四辺に形成しておいてもよい。
【0029】
このように構成した雨水貯留ユニット部材3を多数個、まず、貯水凹部2の底面に敷設している遮水シート11上に全ての雨水貯留ユニット部材3をその中空突部32が互いに直列状に連なるように貯水凹部2の全面に亘って縦横に設置して一段目の雨水貯留ユニット部材列を形成する。この際、この雨水貯留ユニット部材列の一部に、例えば、貯水凹部2の長さ方向の両側中央部の2箇所に、雨水貯留ユニット部材3が設けていない空間部5a、5aを設ける。この空間部5aは雨水貯留ユニット部材一個分に相当する広さ(1000mm角程度)に形成されている。
【0030】
同様にして、この一段目の雨水貯留ユニット部材列の全ての雨水貯留ユニット部材3上に、二段目となる多数個の雨水貯留ユニット部材3を、順次、その中空突部列を下段の雨水貯留ユニット部材3の中空突部列に直交するように重ね合わせて、その中空突部32の下端開口部をこの下端開口部に対応する下段の雨水貯留ユニット部材3の中空突部列における2個の中空突部32、32を一組とする複数組の中空突部32、32突出頂部32a 、32a に被嵌させることにより、二段目の雨水貯留ユニット部材列を形成する。この際、この二段目の雨水貯留ユニット部材列にも一段目の雨水貯留ユニット部材列における上記雨水貯留ユニット部材3が設けられていない空間部5a上に同じくこの空間部に重なるように連通した雨水貯留ユニット部材3を設けていない空間部5aを形成する。
【0031】
このように、下段の雨水貯留ユニット部材3上に上段の雨水貯留ユニット部材3を互いにその中空突部列を直角にして重ね合わせ、且つ、これらの雨水貯留ユニット部材列の一部に雨水貯留ユニット部材3が設けられていない矩形状の空間部5aを形成してながら貯水凹部2の上端近傍部にまで多数段、積み重ねることによりその一部に貯水凹部2の底面に敷設している遮水シート11の上面から貯水凹部2の上端近傍部までの全高に至るまで、雨水貯留ユニット部材3が設けられていない平面矩形状の空間部5、5を有する貯水槽1を築造する。
【0032】
しかるのち、この貯水槽1における上記空間部5内に直方体形状の開口枠からなる点検口6を配設している。この点検口6は空間部6内に上下方向に所定間隔毎に、例えば、上記雨水貯留ユニット部材3の厚み寸法に等しい間隔毎に配設された複数個の矩形枠7と、これらの矩形枠7の四方の内隅部内を通じて上下方向に挿入している4本の支柱8とからなり、矩形枠7の少なくとも互いに平行な一組の枠材7a、7aに外側に向かって一定幅を有する水平フランジ部7a1 を突設し、これらの枠材7a、7aの水平フランジ部7a1 、7a1 を上記空間部5内に露出している雨水貯留ユニット部材3、3の上記突出縁辺部35、35上に受止させている。
【0033】
矩形枠7は上記互い平行な一方の2本の枠材7a、7aと、この枠材7aに直角に連なる互いに平行な他方の2本の枠材7b、7bとの4本の枠材を矩形状に組み合わせて直角に接合する端部を溶接等によって一体に連結することによって形成されているが、図4、図5に示すように、一方の組の枠材7a、7aは一定長さの山形鋼からなり、他方の組の枠材7b、7bは断面矩形状の一定長さの中空鋼材からなり、山形鋼からなる枠材7a、7aは、その一方の辺の両端部背面を中空鋼材からなる枠材7bの端面に接合させて一体に溶接することにより、この一方の辺の上端から外方に向かって水平状に突出する他方の辺によって上記水平フランジ部7a1 を形成している。
【0034】
さらに、この矩形枠7における他方の互いに平行に組み合わされた上記中空鋼材からなる枠材7b、7bの外側の面間の寸法を上記空間部5の開口幅よりも僅かに小さい寸法に形成しているが、一方の互いに平行に組み合わされている山形鋼からなる枠材7a、7aは、その水平フランジ部7a1 の幅に相当する長さだけ、これらの枠材7a、7aにおける水平フランジ部7a1 、7a1 の先端間の寸法を上記空間部5の開口幅よりも大きくなるように形成している。
【0035】
このように構成した矩形枠7を空間部5内における所定高さ位置に設置するには、水平フランジ部7a1 を突設している枠材7a、7aを挿入方向に向けて一方の枠材7aから他方の枠材7aに向かって矩形枠7を傾斜させた状態とし、この状態にして矩形枠7を空間部5内に挿入し、その下傾端側の枠材7aが所定位置まで達すると、この枠材7aの水平フランジ部7a1 をこの枠材7aに対向する雨水貯留ユニット部材3の突出縁辺部35に引っ掛けるように係止させさせ、この係止部を支点として矩形枠7が水平状となるまで上傾端側の枠材7aを該雨水貯留ユニット部材3の高さ位置まで降下させてその水平フランジ部7a1 を上記一方の枠材7aの水平フランジ部7a1 を係止させている雨水貯留ユニット部材3の突出縁辺部35に対して平行に対向した雨水貯留ユニット部材3の突出縁辺部35上に係止させることにより、矩形枠7を空間部5内における所定の高さ位置に設置する。
【0036】
空間部5内へのこのような矩形枠7の配設は、複数個の矩形枠7を順次、空間部5の底部側から上方に向かって雨水貯留ユニット部材3の厚さ間隔毎に配設し、各矩形枠7における互いに平行な枠材7a、7aをそれぞれの高さ位置においてその縁辺部側の面を空間部5内に露出させている雨水貯留ユニット部材3、3の対向する縁辺部間に架設させた状態に設置することによって行われる。なお、多段に積み重ねてねる雨水貯留ユニット部材3の四方に突出縁辺部35を形成している場合には、空間部5内への矩形枠7の挿入方向をどの方向に向けてもよいが、互いに平行する一方の縁辺部を突出させ、互いに平行する他方の縁辺部を突出させていない雨水貯留ユニット部材3を上述したように互いに直角に向きをかえながら多段に積み重ねている場合には、図6等に示すように、空間部5内に臨む突出縁辺部35は、順次、空間部5の直角に連なる面に交互に現れるので、矩形枠7を順次、その空間部5内への挿入方向を直角方向に向きを変えて、その水平フランジ部7a1 を突出縁辺部35に係止させるようにする。
【0037】
矩形枠7における互いに平行な上記中空鋼材からなる枠材7b、7bの両端部には図5に示すように、矩形枠7の四隅部に位置する螺子孔7c、7cが設けられていると共に、互いに直角に連結している枠材7a、7bの直角に対向する端部内面間に足場兼用補強フレーム7dを固着している。一方、これらの矩形枠7における直角に連結した枠材7a、7bの端部と上記足場兼用補強フレーム7dとによって囲まれたいる四方の内隅部内を通じて上下方向に挿入している4本の支柱8は、長さが空間部5の深さに等しい長さを有する山形鋼からなり、その一方の辺に長さ方向に上記雨水貯留ユニット部材3の厚み間隔に等しい間隔毎にボルト取付孔8aを穿設している。
【0038】
この支柱8は、上記複数個の矩形枠7を、貯水槽1の一部に設けている上記空間部5内に雨水貯留ユニット部材3の厚み間隔毎に配設してその互いに平行な枠材7a、7aにおける水平フランジ部7a1 を対向する雨水貯留ユニット部材3の突出縁辺部35上に受止させた状態にして順次、空間部5の上端部まで設置したのち、図7〜図9に示すように、これらの矩形枠7の上記内隅部内を通じてその下端が空間部5の下端に露出している貯水槽1の底面に受止されるまで挿入され、各矩形枠7の四隅部に設けている上記螺子孔7cにボルト取付孔8aを合致させて、ボルト取付孔8aから螺子孔7cにボルト12を螺締することにより、四方の支柱8を囲むようにして複数個の矩形枠7を上下方向に所定間隔毎に支柱8に固着してなる直方体形状の点検口6を組み立てる。この際、矩形枠7と支柱8との連結作業は、先に空間部5内に配設した矩形枠7の足場兼補強フランジ7dを足場として容易に行うことができる。
【0039】
なお、矩形枠7は雨水貯留ユニット部材3の厚さ間隔毎に配設することなく、雨水貯留ユニット部材3が比較的薄い場合には、2個の厚み分、或いはそれ以上の厚み間隔毎に配設してもよく、この場合には当然のことながら、上記支柱8にはその間隔と同一間隔毎にボルト取付孔8aが穿設される。
【0040】
このように構成された点検口6において、隣接する支柱8、8の内面間の複数箇所を筋交い13によって連結して点検口6を剛直な直方体形状の開口枠となるように構成している。この筋交い13の装着作業は点検口6内を通じて行うことができ、互いにX状に交差させて筋交い13の両端部を支柱8における上記ボルト取付孔8aに合致させてボルト12により矩形枠7と共に支柱8に一体に固着している。
【0041】
上記貯水槽1における最上段の雨水貯留ユニット部材列の上面全面、及び、点検口6の上端開口部上には、上下方向に貫通した多数の小さな通水孔15a を有する仕切板15を縦横に敷設して補強層を形成していると共にこの補強層を介して貯水槽1を被覆材4によって被覆している。被覆材4としては、補強層上に敷設した透水性シート4aとこの透水性シート4a上に設けた土砂層等からなる透水性舗装層4bとからなり、降雨時には雨水を上この舗装層4bから透水性シート4a、補強層を構成している仕切板15に設けた通水孔15a を通じて貯水槽1内に浸入させように構成しているが、透水性舗装層4bに代えてアスファルト舗装層を、透水シート4aに代えて遮水シートをそれぞれ採用してもよく、この場合には、仕切板15に通水孔15a を設けておく必要はない。
【0042】
仕切板15は雨水貯留ユニット部材3と嵌合する形状となった矩形形状板からなり、最上段の全ての雨水貯留ユニット部材3の上面に重ねていると共に、点検口6の上端開口部上に敷設している仕切板15には点検口6の上端開口部の中央に連通した作業員が出入り可能な大きさを有する円形孔或いは矩形孔からなる通孔15b を設けてあり、この通孔15b 上の被覆材4の部分を排除して地表面からこの通水孔15b に連通する人孔9を形成し、この人孔9の上端開口部を蓋体17によって開閉可能に閉止している。なお、点検口6の上端開口部上に複数個の仕切板15を配設している場合には、この点検口6を構成している最上部の矩形枠7の上端開口部に数本の水平補強フレーム(図示せず)を取付けて、これらの水平補強フレーム上に仕切板15を受止させ、舗装層上に係る載荷重を支持するように構成しておけばよい。この場合、組み合わせられた仕切板15の中央部に点検口6の上端開口部の中央に連通する開口部15b を設けている。なお、点検口6と人孔9との開口幅が同一である場合には、点検口6の開口上端を上方に延長するようにして人孔9を築造すればよい。
【0043】
一方、上記貯水槽1の一端部側における貯水槽1外の地中からこの貯水槽1の上端部内に雨水を導入するための雨水導入管10を配設している。貯水槽1の一端側には図1、図3に示すように、側溝や排水溝からの雨水を雨水流入管14を通じて受け入れる沈砂槽13が築造されてあり、この沈砂槽13内に流入した雨水を一旦、沈砂槽13に滞留させてその滞留中に雨水に含まれている砂利や粘土等の固形物を沈砂槽13内に沈澱、堆積させたのち、沈砂槽13から雨水導入管10を通じて雨水を貯水槽1内に導入、貯水させるように構成している。なお、沈砂槽13に開口している上記雨水導入管10の開口端にはゴミや落ち葉を除去するスクリーン(フィルター)22が張設されている。図中、16は貯水槽1の他端部における下端部に連通している雨水導出管である。
【0044】
このように構成した雨水貯留施設は、降雨時において側溝や排水溝に流入した雨水を上記流入管14内を通じて沈砂槽13内に送り込み、この沈砂槽13内に一旦、滞留させて雨水に含まれている砂利や粘土等の固形物を沈砂槽13の底部に沈降させ、沈砂槽13の底部に堆積させる。堆積した固形物は後日、地上側から吸引ホース等を使用して吸入、排除される。沈砂槽13から雨水導入管10を通じて貯水槽1内に導入された雨水は、貯水槽1内に貯水され、その貯水中に沈砂槽13内では雨水から分離しなかった砂やシルト等を点検口6の底面や雨水貯留ユニット部材列の貯水空間部34の底面上に沈澱、堆積する。
【0045】
点検口6の底部や雨水貯留ユニット部材列の貯水空間部34の底面上に堆積した砂やシルト等は、貯水槽1内の雨水を排除したのち、点検口6の開口枠を形成している上下に隣接した矩形枠7、7間の空間部に臨んでいる雨水貯留ユニット部材列の貯水空間部34に点検口6内から高圧水噴射ノズル等を挿入して高圧水を噴射することにより、点検口6内に高圧水と共に排除すると共に雨水貯留ユニット部材列の貯水空間部34をその高圧水によって洗浄する。この作業は、点検口6の開口枠を形成している上下方向に配設した上記矩形枠7の四隅部に取付けている足場兼用補強フレーム7dを足場として容易に行うことができ、また、点検口6内を通じて貯水槽1内を定期的に点検することができる。この場合、貯水槽1内の数カ所に点検口6を設けておくことによって、貯水槽1全体の点検作業や、貯水槽1内に沈澱、堆積した砂やシルト等の除去作業が能率よく行うことができる。
【0046】
なお、貯水槽1内に貯水された雨水は、雨水導出管16を通じ排水槽18でオリフィス19により流量が調節され徐々に排水管20より河川等に排出される。また、貯水槽1内に雨水が満杯になった場合は、排水槽18内に設けている余水吐21よりオーバーフローし、排水管20を通じ河川等に排出される。さらに、排水槽18内にボンプを設置し、貯留水を汲み上げて公園やグランド等への散水などに使用することもできる。
【0047】
以上の実施例においては、貯水槽1を構成する雨水貯留ユニット部材3として、平面矩形状の底板部31に、下端がこの底板部31から下方に全面的に開口している一定高さの截頭角錐形状の中空突部32を複数個、底板部31の互いに平行な一方の縁辺間に亘って連続させた状態で直列状に突設すると共にこの中空突部列を複数列、互いに平行な他方の縁辺間方向に一定間隔毎に突設してなる構造のものを使用しているが、このような雨水貯留ユニット部材3に限らず、従来から知られている構造の雨水貯留ユニット部材、例えば、図12に示すように、平面矩形状の底板部31' に複数本の中空筒状部材32' を突設してなる雨水貯留ユニット部材3'を使用してもよい。
【0048】
この雨水貯留ユニット部材3'の底板部31' には上下面間に貫通する複数の通水孔(図示せず)が設けられていると共に中空筒状部材32' の頂面にも通水孔が設けられてあり、下段側の雨水貯留ユニット部材3'の中空筒状部材32' 上に上段の雨水貯留ユニット部材3'の底板部31' を載置して積み重ねるか、或いは、図に示すように、上側の雨水貯留ユニット部材3'を反転させた状態にしてその下向きとなった中空筒状部材32' の頂面を下側の雨水貯留ユニット部材3'の中空筒状部材32' の頂面に突き合わせ状態にして係合、受止させ、このように組み合わせた上下一対の雨水貯留ユニット部材3'、3'を貯水凹部2内に縦横に配設すると共に多段に積み重ねることによって貯水槽1を形成してもよい。
【0049】
この貯水槽1の一部に雨水貯留ユニット部材3'を設けていない平面矩形状の空間部5を貯水槽1の全高に亘って設けて、この空間部5内に点検口6等を形成した構造は上記実施例と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0050】
1 貯水槽
2 貯水凹部
3 雨水貯留ユニット部材
4 被覆材
5 空間部
6 点検口
7 矩形枠
7d 足場兼用補強フレーム
8 支柱
9 人孔
10 雨水導入管
31 底板部
32 中空突部
34 貯水空間部
35 突出縁辺部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面を掘削することにより形成した貯水凹部内に雨水を貯留する内部空間を有する雨水貯留ユニット部材を縦横に敷設すると共に複数段に積み重ねることによって貯水槽を形成し、この貯水槽の上面を被覆材によって被覆すると共に貯水槽に外部かから雨水を導入するための雨水導入管を設けてあり、さらに、上記貯水槽の一部に雨水貯留ユニット部材を配設していない平面矩形状の空間部を該貯水槽の全高に亘って設けてこの空間部内に点検口を配設し、地表から上記被覆材を貫通してこの点検口に連通する人孔を設けてなる雨水貯留施設において、上記点検口は、上記空間部内に上下方向に所定間隔毎に配設している複数個の矩形枠からなり、各矩形枠の縁辺部をその高さ位置に配設している雨水貯留ユニット部材の縁辺部に支持させていることを特徴とする雨水貯留施設における点検口の構造。
【請求項2】
空間部内に上下方向に所定間隔毎に配設している矩形枠の四方の内隅部に沿って支柱を挿入してあり、これらの支柱に矩形枠の四隅部をボルトによって連結していることを特徴とする請求項1に記載の雨水貯留施設における点検口の構造。
【請求項3】
矩形枠は四本の枠材を組み合わせることにより、点検口を設置するための平面矩形状の空間部内に挿入可能な大きさに形成していると共に互いに平行な2組の枠材のうち、一組の枠材にのみ外側面に雨水貯留ユニット部材の縁辺部上に受止させる一定幅を有する水平フランジ部を突設していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の雨水貯留施設における点検口の構造。
【請求項4】
枠材は山形鋼からなり、この山形鋼の一方の辺を水平フランジ部としていることを特徴とする請求項3に記載の雨水貯留施設における点検口の構造。
【請求項5】
矩形枠における互いに直角に連結している枠材の対向する端部間に足場兼用補強フレームを固着していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の雨水貯留施設における点検口の構造。
【請求項6】
支柱は山形鋼からなり、その両辺に長さ方向に所定間隔毎に矩形枠の隅部内面に設けている螺子孔に螺着させるボルト取付孔を穿設していることを特徴とする請求項2に記載の雨水貯留施設における点検口の構造。
【請求項7】
隣接する支柱の内面間に筋交いを装着していることを特徴とする請求項2又は請求項6に記載の雨水貯留施設における点検口の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−158962(P2012−158962A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21113(P2011−21113)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(390033112)積水テクノ成型株式会社 (48)
【Fターム(参考)】