説明

雪下ろし機

【課題】経済性を備えた簡易な構成により、雪下ろし点から十分に離れた安全な位置で、雪庇を含む屋根面の雪を手動で地上にかき下ろす雪下ろし機を提供する。
【解決手段】棟1aの両端近傍に支持具2A,2Bを固設し、屋根面1b側にガイド用のスリット4aが開口された管状体4の両端近傍を支持具2A,2Bに固定し、管状体4内には滑動自在とした滑子11を設け、一端が滑子11に取付けられ他端が地上まで延在するワイヤロープ12を設け、ワイヤロープ12を摺動案内するガイドパイプ13を屋根面1bの下方側に設置し、地面側で摺動案内するガイドバー15を軒先1dから適宜量離間した位置における地面から所要の高さ位置に横設し、ワイヤロープ12をガイドパイプ13及びガイドバー15を摺動させつつワイヤロープ12の他端部を左右移動させてワイヤロープ12により雪庇を含む屋根面1b上の雪をかき下ろす雪下ろし機を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪下ろし機に関するものであり、特に、雪庇を含む屋根面の雪を雪下ろし点から十分に離れた安全な位置で手動で地上にかき下ろすことが可能な雪下ろし機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅の屋根に積雪があり自然落下しない場合は、いつ落下するか分からないことから軒下を通る歩行者等に対し危険が与えられる。このため、強制的な雪下ろしが必要となるが、ショベルカー等の大掛かりな機器の使用は、経費も多くかかり、またショベルカー等の大掛かりな機器は住宅の近くまで入り込ませること自体に無理が伴う。
【0003】
この雪下ろしに関連する従来技術として、例えば、次のような屋根の雪庇切断装置が知られている。この従来技術は、屋根の軒先部両端の破風部にそれぞれ支持柱を固定し、該両支持柱の頭部間に張架したワイヤにリングを移動自在に通し、該リングに地上まで届く被覆ワイヤを吊着して設けている。そして、雪庇ができたときに被覆ワイヤの先を手動で一方向に引き寄せることにより、ワイヤに通したリングを移動させ、被覆ワイヤで軒先部に積もった雪庇を切り落とすようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−40908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の従来技術においては、比較的簡易な構成であるが、切り落とすのは、軒先部に積もった雪庇のみである。軒先に雪庇ができるときには、屋根面にもかなりの量の積雪が生じているのが普通であると考えられる。したがって、軒下を通る歩行者等にとって安全であると言えるためには、雪庇の切り落としとともに屋根面の雪下ろしも必要である。また、雪庇を切り落とす際には、一端をリングに吊着した被覆ワイヤの他端を直接手動で一方向に引き寄せるようにしている。このため、引き寄せる位置によっては、切り落とされる雪庇により引き寄せる人間に危険が伴うことが考えられる。
【0006】
そこで、経済性を備えた簡易な構成により、雪下ろし点から十分に離れた安全な位置で雪庇を含む屋根面の雪を手動で地上にかき下ろすために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、屋根における棟の長手方向両端近傍にそれぞれ支持具を固設し、屋根面側にガイド用のスリットが開口された管状体の両端近傍を前記支持具にそれぞれ固定し、前記管状体には前記スリットから抜け止めされた状態で該管状体内を滑動自在とされた滑子を設け、一端が前記滑子に取付けられ他端が地上まで延在するワイヤロープを設け、該ワイヤロープを摺動案内するガイドパイプを前記屋根面の下方側に前記管状体にほぼ平行させて設置し、地面側で前記ワイヤロープを摺動案内するガイドバーを軒先から適宜量離間した位置における地面から所要の高さ位置に前記ガイドパイプにほぼ平行させて横設し、前記ワイヤロープを前記ガイドパイプ及び前記ガイドバーを摺動させつつ前記ワイヤロープの他端部を左右移動させて該ワイヤロープにより雪庇を含む屋根面上の雪をかき下ろすようにした雪下ろ
し機を提供する。
【0008】
この構成によれば、ワイヤロープは予め屋根面の一方の端に寄せておく。積雪があって雪下ろしをする際は、軒先から十分に離れたガイドバーの手前側でワイヤロープの他端部を把持し、該ワイヤロープを屋根面の他方の端側に移動させ、また一方の端側に引き戻すというように左右移動させる。このときワイヤロープは、その中途部分がガイドバーを摺動し、一端部は滑子が管状体内を滑動することで屋根面等との摩擦が軽減される。このようにして屋根面上を横移動するワイヤロープにより雪庇を含む屋根面上の雪がかき下ろされる。ワイヤロープは当初は緊張状態で横移動させ、次に弛緩状態で横移動させるなど適宜に横移動の状態を調整することで雪庇を含む屋根面上の雪が効果的にかき下ろされる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記管状体内を滑動自在とされた滑子に代えて、上記管状体内をコロ軸を中心に回転して転動自在とされたコロを設け、上記ワイヤロープの一端は前記コロ軸に取付けた雪下ろし機を提供する。
【0010】
この構成によれば、ワイヤロープを横移動させるとき、その一端部の摩擦が一層軽減して雪庇を含む屋根面上の雪のかき下ろし容易性が得られる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明は、雪下ろしをする際に軒先から十分に離れたガイドバーの手前側でワイヤロープの他端部を左右移動させることで、雪下ろし点から十分に離れた安全な位置で雪庇を含む屋根面の雪を手動で地上にかき下ろすことができる。また、雪下ろし機は、棟の両端近傍に支持具で固定した管状体、該管状体内を滑動自在とされた滑子、該滑子から地上まで延在するワイヤロープ、屋根面に設置したガイドパイプ及び地面に横設したガイドバーから成り、簡易な構成で十分に経済性が得られるという利点がある。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えてさらに、ワイヤロープを横移動させるときの一端部の摩擦が一層軽減して雪庇を含む屋根面上の雪を一層容易にかき下ろすことができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図は本発明の実施例に係る雪下ろし機を示すものである。
【図1】実施例1の雪下ろし機を示し、(a)は全体構成を示す斜視図、(b)は滑子部分の側面図、(c)は図(b)のX−X線に沿う断面図。
【図2】図1(a)の側面図。
【図3】図1(a)における支持具の拡大斜視図であり、(a)は支持具2A、(b)は支持具2B。
【図4】実施例2に適用されるコロの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、経済性を備えた簡易な構成により、雪下ろし点から十分に離れた安全な位置で雪庇を含む屋根面の雪を手動で地上にかき下ろすという目的を達成するために、屋根における棟の長手方向両端近傍にそれぞれ支持具を固設し、屋根面側にガイド用のスリットが開口された管状体の両端近傍を前記支持具にそれぞれ固定し、前記管状体には前記スリットから抜け止めされた状態で該管状体内を滑動自在とされた滑子を設け、一端が前記滑子に取付けられ他端が地上まで延在するワイヤロープを設け、該ワイヤロープを摺動案内するガイドパイプを前記屋根面の下方側に前記管状体にほぼ平行させて設置し、地面側で前記ワイヤロープを摺動案内するガイドバーを軒先から適宜量離間した位置における地面から所要の高さ位置に前記ガイドパイプにほぼ平行させて横設し、前記ワイヤロープを前記ガイドパイプ及び前記ガイドバーを摺動させつつ前記ワイヤロープの他端部を左右移動
させて該ワイヤロープにより雪庇を含む屋根面上の雪をかき下ろすようにして実現した。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の好適な実施例1を図1の(a)、(b)、(c)、図2及び図3の(a)、(b)を参照して説明する。まず、本実施例に係る雪下ろし機の構成を説明する。図1(a)に示すように、屋根1の頂部部分である棟1aの長手方向両端近傍にそれぞれ支持具2A,2Bが固設され、該両支持具2A,2B間に架け渡されるように雪割板として機能する平板3が立設して固定されている。該平板3の前面部に該平板3と一体で且つ両端近傍が前記両支持具2A,2Bに固定された管状体4が設置されている。管状体4は直径30mmφ程度の円管が用いられ、その屋根面1b側にガイド用のスリット4aが開口されている。
【0016】
図3の(a)、(b)は、前記支持具2A,2Bを、それぞれ拡大して詳細に示している。図3(a)に示す支持具2Aは、円形の支持台5の下面中央に所要長さの支持柱体6が垂設され、該支持柱体6の周囲に3個の脚部7,8,9が取付けられている。該脚部7,8,9は、それぞれ主脚部7a,8a,9aと副脚部7b,8b,9bとからなり、各副脚部7b,8b,9bは、各主脚部7a,8a,9aに対し、各ねじ部7c,8c,9cの締戻し及び締込みにより、それぞれ開き具合(曲げ具合)が調節可能となっている。また、2個の脚部7,8における主脚部7a,8aのほぼ中間高さ位置には補強用の横板10が架設されている。
【0017】
図3(b)に示す支持具2Bは、脚部が7,8の2脚のみで、前記脚部9が設けられていない点を除いては、前記支持具2Aとほぼ同様に構成されている。両支持具2A,2Bは、上記のように構成され、図1(a)及び図2に示すように、両支持具2A,2B共に、支持柱体6の下端が棟1aの部分に当接し、脚部7,8における各副脚部7b,8bが屋根面1bの勾配に沿うように、その開き具合が調節されて、前記のように、棟1aの長手方向両端近傍にそれぞれ設置されている。
【0018】
そして、前記平板3は、その両端近傍が両支持具2A,2Bにおける各支持台5上に固着して立設され、また、前記管状体4は、その背面側が平板3に固着されるとともに両端近傍が両支持具2A,2Bにおける各支持台5上に固着されている。このように、平板3及び管状体4の両端近傍が両支持具2A,2B上に固着された状態で、両支持具2A,2Bにおける横板10等と、屋根1の図1(a)における左右両破風1c部分等の上部位置に突設された図示しない掛止具等との間に図示しない脚固定用ロープが緊張状態で掛渡されて両支持具2A,2Bは、棟1aの長手方向両端近傍に強固に固定されている。
【0019】
該両支持具2A,2B上に、その両端近傍が固着された前記管状体4には、スリット4aから抜け止めされた状態で該管状体4内を滑動自在とされた滑子11が設けられ、一端が該滑子11に取付けられ他端が地上まで延在する雪かき用のワイヤロープ12が設けられている。図1の(b)(c)は、滑子11の構成例を示している。図の例の滑子11は、ワイヤロープ12の一端側を適宜長さ位置で二つ折りにし、該二つ折りにした部分に適宜にスペーサ部材11aを沿わした上で、細い針金11bを緊縛状態に巻回し、断面がほぼ円形に形成されている。この滑子11の形成は、スリット4aに臨ませたワイヤロープ12の一端側を管状体4端部の開口部から外部に引出して行う。滑子11の形成後、管状体4端部の開口部は、適宜に閉塞する。
【0020】
前記屋根面1bの下方側には、ワイヤロープ12を摺動案内するガイドパイプ13が前記管状体4にほぼ平行に設置され、また軒先1dから適宜量離間した位置における地面には、2本の支柱14a,14bにより所要の高さ位置に支持されたガイドバー15が前記ガイドパイプ13にほぼ平行に横設されている。ガイドバー15は、地面側でワイヤロー
プ12を摺動案内するものである。前記ガイドパイプ13及びガイドバー15には、それぞれ鉄パイプ又は青竹等が用いられている。
【0021】
次に、上述のように構成された雪下ろし機の作用を説明する。ワイヤロープ12は、予め屋根面1bの一方の端、例えば図1(a)における右端側に寄せておく。積雪があって雪下ろしをする際は、図1(a)及び図2に示すように、軒先1dから十分に離れたガイドバー15の手前側でワイヤロープ12の他端部を把持し、該ワイヤロープ12をガイドパイプ13及びガイドバー15を摺動させつつ屋根面1bの他方の端側に移動させ、また一方の端側に引き戻すというように左右移動させる。
【0022】
このときワイヤロープ12は、その中途部分が上記のようにガイドパイプ13を摺動し、一端部は滑子11が管状体4内を滑動することで屋根面1b等との摩擦が軽減される。このようにして屋根面1b上を横移動するワイヤロープ12により雪庇を含む屋根面1b上の雪がかき下ろされる。ワイヤロープ12は当初は緊張状態で横移動させ、次に弛緩状態で横移動させるなど適宜に横移動の状態を調整することで雪庇を含む屋根面1b上の雪が効果的にかき下ろされる。
【0023】
上述したように、本実施例に係る雪下ろし機においては、雪下ろしをする際に軒先1dから十分に離れたガイドバー15の手前側でワイヤロープ12の他端部を左右移動させることで、雪下ろし点から十分に離れた安全な位置で雪庇を含む屋根面の雪を手動で地上にかき下ろすことができる。
【0024】
雪下ろし機は、棟1aの両端近傍に支持具2A,2Bで固定した管状体4、該管状体4内を滑動自在とされた滑子11、該滑子11から地上まで延在するワイヤロープ12、屋根面1bに設置したガイドパイプ13及び地面に横設したガイドバー15から成り、簡易な構成で十分に経済性が得られる。
【実施例2】
【0025】
本発明の実施例2を図4を参照して説明する。本実施例は、実施例1における前記滑子11に代えて、前記記管状体4内をコロ軸16aを中心に回転して転動自在としたコロ16を設け、前記ワイヤロープ12の一端をコロ軸16aに取付けたものである。図の例では、ワイヤロープ12の一端をリング状に形成し、このリング12aの部分で、ワイヤロープ12の一端をコロ軸16aに取付けている。コロ軸16aには、管状体4におけるスリット4aからの抜け止め16bが形成されている。
【0026】
管状体4内へのコロ16の組込みは、例えば、スリット4aを管状体4の一端側開口部まで形成しておき、この開口部からコロ軸16aをスリット4aに差し込むようにしてコロ16全体を管状体4内へ組入れる。コロ16の組入れ後は、管状体4の開口端に図示しないキャップを嵌め込み、開口端を閉塞する。
【0027】
本実施例2では、ワイヤロープ12を横移動させるときの一端部の摩擦が一層軽減して雪庇を含む屋根面1b上の雪を一層容易にかき下ろすことができる。
【0028】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
経済性を備えた簡易な構成により、雪下ろし点から十分に離れた安全な位置で雪庇を含む屋根面の雪を手動で地上にかき下ろすことが不可欠なワイヤロープ使用以外の雪下ろし機に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 屋根
1a 棟
1b 屋根面
1c 破風
1d 軒先
2A,2B 支持具
3 平板
4 管状体
4a スリット
5 支持台
6 支持柱体
7 脚部
8 脚部
9 脚部
10 横板
11 滑子
12 ワイヤロープ
13 ガイドパイプ
14a,14b 支柱
15 ガイドバー
16 コロ
16a コロ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根における棟の長手方向両端近傍にそれぞれ支持具を固設し、屋根面側にガイド用のスリットが開口された管状体の両端近傍を前記支持具にそれぞれ固定し、前記管状体には前記スリットから抜け止めされた状態で該管状体内を滑動自在とされた滑子を設け、一端が前記滑子に取付けられ他端が地上まで延在するワイヤロープを設け、該ワイヤロープを摺動案内するガイドパイプを前記屋根面の下方側に前記管状体にほぼ平行させて設置し、地面側で前記ワイヤロープを摺動案内するガイドバーを軒先から適宜量離間した位置における地面から所要の高さ位置に前記ガイドパイプにほぼ平行させて横設し、前記ワイヤロープを前記ガイドパイプ及び前記ガイドバーを摺動させつつ前記ワイヤロープの他端部を左右移動させて該ワイヤロープにより雪庇を含む屋根面上の雪をかき下ろすようにしたことを特徴とする雪下ろし機。
【請求項2】
上記管状体内を滑動自在とされた滑子に代えて、上記管状体内をコロ軸を中心に回転して転動自在とされたコロを設け、上記ワイヤロープの一端は前記コロ軸に取付けたことを特徴とする請求項1記載の雪下ろし機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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