説明

雪崩防止杭

【目的】 景観的に異和感を与えず、施工のときに法面を荒らさない強度的に優れた雪崩防止杭を提供する。
【構成】 鋼管よりなる本体幹材2から同様に鋼管よりなる本体枝材3を多段にわたって放射状に斜め上方に張り出させて一体構造とし、雪崩防止杭本体1を構成する。基礎は本体側、控側共に基礎杭とする。雪崩防止杭本体1の本体側基礎杭4への固定には連結パイプ5またはスリーブ等で行う。雪崩防止杭本体1の山側上方の適切な位置に同様に控側基礎杭6を打設し、控ワイヤーロープ9を控側基礎杭6の上端に固定し、それを雪崩防止杭の本体幹材2の上端から適切な位置に結び付け支持させる。以上のように構成した雪崩防止杭。

【考案の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
本考案は雪崩防止のために斜面に設置される雪崩防止杭に関わるものである。
【従来の技術】
雪崩予防杭は樹木が茂った斜面では雪崩が起きないことから考案された、斜面に直角に設置される杭状構造物であり、集合的に用いられる。斜面への配置法は千鳥配置とし、35〜40度の斜面では杭間の水平距離は5m、列間斜距離は8m程度が標準とされる。その構造は単独柱のものと杭本体を谷側に設けた控柱で支持する2通りの方法が採用されている。基礎はコンクリート基礎または根かせが採用されている。
【考案が解決しようとする課題】
現状の雪崩防止杭には以下に述べるような問題がある。
法面に無機的な杭状構造物が林立するので、景観上好ましくない。
単一な杭状構造物である従来の雪崩防止杭は全層雪崩の防止が対象であり、表層雪崩に関しては何らその効果が期待できない。
標準の設計法では1本の雪崩防止杭は水平距離分の雪圧を受けると考えて計算を行うので、多雪地では基礎、部材が共に大きなものになる。そのとき、谷側に控柱を設ける方法もあるが、法面上にさらに部材が多数見えるので景観上好ましくない。
現在、雪崩防止杭に用いられているコンクリート基礎、根かせは共に施工時に法面の掘削を伴うので、法面を荒らし、崩落の危険が増大する。
本考案は以上のような従来の雪崩防止杭の欠点をなくし、景観的に異和感を与えず、施工のときに法面を荒らさない強度的に優れた雪崩防止杭を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
本体幹材から枝材を多段にわたって放射状に斜め上方に張り出させ、人工樹木風な立体構造物とする。本体幹材の下部は穿孔打設した本体側基礎杭に連結させる。法面上で雪崩防止杭本体の位置から山側上方に控側基礎杭を穿孔打設し、控側基礎杭上部に固定した控ワイヤーロープで本体幹材の頂部から適宜距離を置いた位置で本体幹材を支持させる。
本体側、控側基礎に杭基礎を採用し、施工による斜面の荒れを最小にする。
【作用】
本体幹材から張り出させた各枝部も雪の移動を防止する。また、基礎杭は穿孔や打設によって施工するので斜面を荒らさない。本体側、控側共に基礎として杭を用いているので、荷重によりある程度自由に変位することが出来る。本体幹材の頂部から適宜離れた位置を控ワイヤーロープで支持するので、本体幹材に作用する雪圧による曲げモーメントを大幅に低減させる。
【実施例】
本考案の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本考案の雪崩防止杭を法面に設置したときの側面図である。雪崩防止杭本体1は鋼管で構成した本体幹材2から同様に鋼管で構成した本体枝材3を多段にわたって放射状に斜め上方に張り出させて一体構造としたものである。基礎は本体側、控側共に基礎杭とする。その際、雪崩防止柵のアンカーとして多用されている、杭自体に先端ビット7が付いていて、それを旋回掘進させてそのまま杭とするものを使用すると施工が容易になる。雪崩防止杭本体1の本体側基礎杭4への固定には連結パイプ5を介してボルトナット8で行う。雪崩防止杭本体1の山側上方の適切な位置に同様に控側基礎杭6を打設し、控ワイヤーロープ9を控側基礎杭6の上端に固定し、それを雪崩防止杭の本体幹材2の上端から適切な位置に結び付け支持させる。
【考案の効果】
本考案の雪崩防止杭は以上のような構成であり、以下に示すような効果がある。
本体幹材に放射状に枝部が配置されているので、従来の単純な支柱状の雪崩防止杭に較べて、斜面積雪の移動をより効果的に押さえることが出来、雪崩防止効果が高い。また、人工樹木風の外観であるので景観上好ましい効果がある。その際、FRPコーティングなどにより表面に擬木的な塗装処理を施せばより効果的である。
本体幹材が本体側基礎杭と控側基礎杭に結び付けられたワイヤーロープの2点で支持されているので、従来の単支柱的な雪崩防止杭で対応できないような積雪深の場所でも適用することが出来る。また同じ積雪深ならより小さな断面の材料で済む。なお控柱を付けた雪崩防止杭でも同様な効果が期待出来るが、ワイヤーロープに較べてはるかに目に付く断面の大きい控柱が必要であり、しかも目立ち易い本体の谷側に控柱が位置するので景親上、極めて都合が悪い。
法面の不整などで側圧が作用した場合でも基礎杭の場合は柔軟に変位し、雪崩防止杭本体材料に無理が掛かりにくい。
また、コンクリート基礎や根かせを使用しないので法面を荒らさない、また特にコンクリート基礎に較べて目立たないので景観上好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の雪崩防止杭が法面に設置された状態の側面図である。
【図2】控ワイヤーロープの結合状態を示すA−A′矢視図である。
【図3】本考案の雪崩防止杭の正面図である。
【図4】本考案の雪崩防止杭の平面図である。
【符号の説明】
1 雪崩防止杭本体
2 本体幹材
3 本体枝材
4 本体側基礎杭
5 連結パイプ
6 控側基礎杭
7 先端ビット
8 ボルトナット
9 控ワイヤーロープ
10 ワイヤークリップ
11 法面

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】鋼管よりなる本体幹材2から同様に鋼管よりなる本体枝材3を多段にわたって放射状に斜め上方に張り出させて一体構造とし、雪崩防止杭本体1を構成する。基礎は本体側、控側共に基礎杭とする。雪崩防止杭本体1の本体側基礎杭4への固定には連結パイプ5またはスリーブ等で行う。雪崩防止杭本体1の山側上方の適切な位置に同様に控側基礎杭6を打設し、控ワイヤーロープ9を控側基礎杭6の上端に固定し、それを雪崩防止杭の本体幹材2の上端から適切な位置に結び付け支持させる。以上のように構成した雪崩防止杭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【登録番号】第3002215号
【登録日】平成6年(1994)7月13日
【発行日】平成6年(1994)9月20日
【考案の名称】雪崩防止杭
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−4278
【出願日】平成6年(1994)3月15日
【出願人】(000203162)