説明

雲台システム

【課題】 雲台とレンズの制御データの記憶間隔を焦点距離に応じて変更してデータ量を削減し、且つ再現性を向上させたトレース機能付き雲台システムを提供する。
【解決手段】 ズーム、フォーカス操作が可能なレンズ装置とカメラ装置からなる撮像装置と、撮像装置が固定されパン及びチルトが可能な雲台と、を有する雲台システムであって、該雲台は、パン、チルト、ズーム、フォーカスの指令値を記憶する記憶手段と、ズーム、フォーカスを制御するレンズ制御部と雲台のパン、チルトを制御する雲台制御部と記憶手段の記憶間隔を設定するサンプリング制御部を含む制御手段とを有し、制御手段は、記憶手段に記憶されたパン、チルト、ズーム、フォーカスの指令値を、記憶されたサンプリング間隔で再生してレンズ装置、雲台を駆動可能であり、パン、チルト、ズーム及びフォーカスの少なくとも一つの指令値のサンプリング間隔は望遠端において広角端よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズーム及びフォーカスの操作が可能なレンズ装置及びカメラ装置からなる撮像装置と該撮像装置が固定されたパン及びチルトが可能な雲台とを含む雲台システムに関し、特に、雲台コントローラからの遠隔操作により、雲台のパン/チルト動作やカメラ及びレンズのズーム、フォーカス等を制御すると共に、雲台のパン及びチルト操作、並びに、レンズ装置のズーム及びフォーカス操作の一連の操作を記憶し、記憶したデータを再生してレンズ装置及び雲台を駆動することが可能なトレース機能付き雲台システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サーボ機構を備えた雲台装置にテレビカメラを搭載した雲台システムにおいて、ある連続的な雲台及びレンズの制御動作を予め記憶させておき、ボタン操作で自動的に一連の動作を再現させるトレース機能備えた雲台システムが開示されている。
例えば、特許文献1では雲台及びレンズの操作状態を時間的に連続に記録・再生するシステム例が開示されている。
また、特許文献2では雲台及びレンズの操作状態をショットデータとして複数個記憶し、連続的に移動するように演算して軌跡データを作成し、雲台及びレンズの操作状態を一定時間連続的に記憶し、その記憶された軌跡データを再生するなどの方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−256876号公報
【特許文献2】特開平1−248876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献に開示された従来技術では、雲台及びレンズの操作状態を精度良く一定時間連続的に記憶するためには記憶容量を大きくしなければならない。
また、雲台及びレンズの動作を大まかに選定して記憶し、それらを補正或いは再生する場合は、前述の連続的に記憶する場合と比較し、操作データは少なくなり記憶量は削減できるが、
雲台及びレンズの操作状態の再現性は低下してしまう。
本発明では、雲台システムの操作状態をトレースするための記憶容量を削減し、かつ再現性を向上させたトレース機能付き雲台システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の雲台システムは、ズーム及びフォーカス操作が可能なレンズと該レンズ装置が接続されたカメラ装置からなる撮像装置と、該撮像装置が固定されパン及びチルトが可能な雲台と、を有する雲台システムであって、該雲台は、パン及びチルト並びに該レンズ装置のズーム及びフォーカスの指令値を記憶する記憶手段と、該レンズ装置のズーム及びフォーカスの駆動を制御するレンズ制御部と該雲台のパン及びチルトの駆動を制御する雲台制御部と該記憶手段に記憶するデータのサンプリング間隔を設定するサンプリング制御部を含む制御手段と、を有し、該制御手段は、該記憶手段に記憶されたパン、チルト、ズーム、フォーカスの指令値を、それぞれ記憶されたサンプリング間隔で再生して、該レンズ制御部によって該レンズ装置を及び該雲台制御部によって該雲台を駆動制御することが可能であり、該サンプリング制御部は、パン、チルト、ズーム及びフォーカスの少なくとも一つの指令値のサンプリング間隔を、望遠端において広角端よりも小さく設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によればパン・チルト・ズーム・フォーカスの一連の操作駆動データを記憶するデータを削減すると共に、トレースの再現性を向上させたトレース機能付雲台を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態であるブロック図である。
【図2】実施例1のフローチャートである。
【図3】ズームの焦点距離とデータのサンプリング間隔の例を表したグラフである。
【図4】本発明の第2の実施形態であるブロック図である。
【図5】実施例2のフローチャートである。
【図6】操作されるデータとサンプリング間隔の関係の例を表した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
以下、図1のブロック図を参照して、本発明の第1の実施例の雲台システムの構成について説明する。
【0010】
図1に示すように、ズーム及びフォーカス操作が電動で制御可能なレンズ1が、カメラ2に接続され、映像が出力される。
レンズ1及びカメラ2から構成される撮像装置は、パン及びチルトが可能な電動雲台3に固定されている。電動雲台3には、ズーム及びフォーカスの制御を行うレンズ制御部4とパン及びチルトの駆動用のモータ5の制御を行う雲台制御部6が構成された制御手段であるCPU7が組み込まれている。オペレータは操作器10より、パン、チルト、ズーム、フォーカスの操作をすることが可能となっている。
また、電動雲台3は、操作器10で操作されたパン、チルト、ズーム、フォーカスの一連の指令値である操作データ(トレースデータ)を記憶するメモリ8を有する。メモリ8にデータを記憶するサンプリング間隔はCPU7内のサンプリング制御部であるサンプリング処理部9によって制御されている。
【0011】
図6に例示するように、メモリ8に記憶するデータのサンプリング間隔(Ts1)に対してパン、チルト、フォーカスの制御データが大きく変化した場合、サンプリングポイントのデータしか記録されないため、そのデータを再生しても、もともとのパン、チルト、フォーカスの制御量の再現性は低くなってしまう。
【0012】
そこで記録するデータ量を削減してもトレースデータの再現性が高い、本発明の第1の実施例によるCPU7のトレースデータ記憶処理の流れについて図2のフローチャートをもとに説明する。
CPU7は操作器10よりパン、チルト、フォーカス、ズームのいずれかの制御命令を受信(S11)すると、その制御命令がレンズのズームの制御命令を含んでいるか否かを判定(S12)する。ズーム制御命令を受信していない場合は、パン、チルト、フォーカス、ズームの制御命令(指令値)を記憶するサンプリング間隔として前回使用した値を設定(S15)する。
【0013】
レンズのズーム制御命令を受信した場合は、レンズ制御部4がレンズ1に対して指令値を出力すると共にその焦点距離を取得(S13)する。その焦点距離を基に図3に示すグラフから、操作されたパン、チルト、フォーカス、ズームの制御命令を記憶するサンプリング間隔を計算し設定(S14)する。
ズームの操作がなされた場合は(S14)で設定されたサンプリング間隔、ズームの操作がなされない場合には(S15)で設定されたサンプリング間隔にて、パン、チルト、フォーカス及びズームの制御命令をメモリ8に記憶(S16)する。ここで記憶するデータはパン、チルト、フォーカス、ズームの全てのデータではなく、ズームデータとそれ以外の操作された制御命令(指令値)のみでもよい。
【0014】
図3のグラフはズームの焦点距離とパン、チルト、フォーカスのデータを記憶するサンプリング間隔の関係の一例を表したグラフであり式(1)で表される。
T= −a X+b (1)
(a:ズーム倍率係数(a>0)、b:定数、T:サンプリング間隔、X:焦点距離)
サンプリング間隔は広角側の方が望遠側に比較し長く設定されている。
【0015】
例えば20倍ズームレンズの広角端の焦点距離を10mmとした場合、望遠端の焦点距離は200mmとなり、広角端では望遠端と比較しパン・チルトを同じ量操作しても、広角端での画角は望遠端での画角に対して1/20の移動量になる。よって、広角端でのサンプリング間隔を望遠端の20倍の間隔に設定し、記憶するデータを1/20に間引きしても、再生時には望遠側と広角側での画角に対するトレースの再現性は同一となる。
すなわち、ズームの焦点距離に応じてデータのサンプリング間隔を可変させることにより、広角側でのトレースデータを間引きして記憶データを削減しても、画角に対するトレース再現性を同一にすることができる。
【0016】
本実施例ではトレースデータの記録部分しか記述していないが、トレースデータを再生する場合はズームの焦点距離から式(1)の関係よりサンプリング間隔を計算し、そのサンプリング間隔にてサンプリング処理部9で順次メモリ8を読み出し制御することにより再生可能である。
パン、チルト、フォーカスデータを記憶するサンプリング間隔の演算にはCPU7での計算処理の負荷を減らすため1次式を用いたが、広角端のサンプリング間隔が望遠端より長く設定される式(多項式、高次式)でも良い。また、サンプリング間隔はあらかじめズームの焦点距離とサンプリング間隔の関係をテーブルとしてメモリに記憶しておき、それを読み出して設定しても良い。
本実施例において、パン、チルト、フォーカスのデータを記憶するサンプリング間隔は、ズームの焦点距離の一次式として、焦点距離に対して単調減少する関係である例を示したが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、ズームの焦点距離の増加に対して、サンプリング間隔がステップ的に減少するように設定してもよい。
【実施例2】
【0017】
以下、図4を参照して、本発明の第2の実施例による構成について説明する。図4において図1と同一のブロック要素については同符号をつけている。本実施例におけるCPU7には、第1の実施例と比較し、メモリ残量検出部11が追加されている。
【0018】
実施例1と同様に電動雲台3にはレンズ1及びカメラ2が取り付けられている。レンズ制御を行うレンズ制御部4とパン及びチルトの駆動制御を行う雲台制御部6と一連の操作データを記憶するメモリ8の残量を検出するメモリ残量検出部11が構成されたCPU7が組み込まれている。
【0019】
オペレータは操作器10より、パン、チルト、ズーム及びフォーカスを操作する。一連の操作データ(トレースデータ)はCPU7のサンプリング処理部9によって決定されたサンプリング間隔でメモリ8に記憶される。
ここで、メモリ8の記憶領域の残量が少なくなってきた場合、常に同一のサンプリング間隔で記録し続けると容量の制限によりトレースの状態を記録する時間が短くなってしまうので、トレースの再現性が低くなってもトレースを長い時間記憶することを優先する。
【0020】
以下に本発明の第2の実施例によるCPU7の処理の流れについて図5のフローチャートをもとに説明する。
【0021】
CPU7は実施例1と同様に、操作器10よりパン、チルト、フォーカス、ズームのいずれかの制御命令を受信(S21)すると、受信した制御命令にレンズのズームの制御命令が含まれているか否かを判定(S22)する。ズームの制御命令を受信していない場合は、パン、チルト、フォーカス、ズームの制御命令を記憶するサンプリング間隔として前回の値を設定(S25)する。
【0022】
レンズのズーム制御命令を受信した場合は、レンズ制御部4がレンズ1に対して指令値を出力すると共にその焦点距離を取得(S23)する。その焦点距離を基に図3に示すグラフから操作されたパン、チルト、フォーカス、ズームの制御命令(指令値)を記憶するサンプリング間隔を計算し設定(S24)をする。
【0023】
ズームの操作がなされた場合は(S24)で設定されたサンプリング間隔(Tz1)、ズームの操作がなされない場合には(S25)で設定されたサンプリング間隔(Tz0)、をサンプリング間隔として仮に設定(Tz)(S26)する。メモリ残量検出部11で検出されたメモリ8の記憶領域の残量が、設定された閾値より大きい場合は(S26)で設定されたサンプリング間隔に設定(S30)し、パン、チルト、フォーカス及びズームのデータをメモリ8に記憶(S31)する。
(S26)で設定されたサンプリング間隔で記録する場合は、実施例1と同一の記録時間、トレースの再現性を維持することが可能である。
【0024】
メモリ断量検出部11で検出されたメモリ8の記憶領域の残量が閾値以下の場合は、図3で最もサンプリング間隔が長い(記憶データが最も少ない)広角端でのサンプリング間隔(S29)を使用し、パン、チルト、フォーカス、ズームのデータをメモリ8に記憶(S31)する。
(S29)で設定されたサンプリング間隔で記録する場合は(S26)で設定されたサンプリング間隔での記録と比較して少ないメモリ容量で長時間のトレースデータの記録が可能である。
【0025】
以上のようにトレースデータを記憶するメモリ残量が十分な場合は、トレースの再現性の高い記録、メモリ残量が少なくなった場合は、トレースの記録時間を優先した記録が可能となる。
【0026】
本実施例から派生する方法として、前述の説明のようにメモリ残量が少なくなった場合、サンプリング間隔の拡大によるトレースの再現性の悪化と記録可能な時間の延長の双方を考慮して、広角端ではなく図3のグラフの広角端と望遠端の間の任意のサンプリング間隔に設定し記録してもよい。すなわち、メモリ残量が少なくなった場合のメモリ8に記憶するサンプリング間隔をT、広角端におけるメモリ8に記憶するサンプリング間隔をTwide、望遠端におけるメモリ8に記憶するサンプリング間隔をTteleとするとき、
Ttele≦T≦Twide (2)
を満たすような所定のTをサンプリング間隔として設定してもよい。
【0027】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 レンズ
2 カメラ
3 電動雲台
4 レンズ駆動制御部
6 雲台駆動制御部
7 CPU
8 メモリ
9 サンプリング処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズーム及びフォーカス操作が可能なレンズ装置と該レンズ装置が接続されたカメラ装置からなる撮像装置と、該撮像装置が固定されパン及びチルトが可能な雲台と、を有する雲台システムであって、
該雲台は、パン及びチルト並びに該レンズ装置のズーム及びフォーカスの指令値を記憶する記憶手段と、該レンズ装置のズーム及びフォーカスの駆動を制御するレンズ制御部と該雲台のパン及びチルトの駆動を制御する雲台制御部と該記憶手段に記憶するデータのサンプリング間隔を設定するサンプリング制御部とを含む制御手段と、を有し、
該制御手段は、該記憶手段に記憶されたパン、チルト、ズーム、フォーカスの指令値を、それぞれ記憶されたサンプリング間隔で再生して、該レンズ制御部によって該レンズ装置を及び該雲台制御部によって該雲台を駆動制御することが可能であり、
該サンプリング制御部は、パン、チルト、ズーム及びフォーカスの少なくとも一つの指令値のサンプリング間隔を、望遠端において広角端よりも小さく設定する
雲台システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記記憶手段の記憶領域の残量を検出するメモリ残量検出部をさらに有し、
該メモリ残量検出部によって検出された残量が所定の閾値よりも小さい場合は、前記サンプリング制御部は、Tを該記憶手段に記憶するデータのサンプリング間隔、Twideをズームが広角端である場合のサンプリング間隔、Tteleをズームが望遠端である場合のサンプリング間隔とするとき、
Ttele≦T≦Twide
を満たすような所定のTにサンプリング間隔を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の雲台システム。
【請求項3】
前記メモリ残量検出部によって検出された残量が所定の閾値よりも小さい場合は、前記サンプリング制御部は、前記記憶手段に記憶するデータのサンプリング間隔をズームが広角端である場合のサンプリング間隔に設定することを特徴とする請求項2に記載の雲台システム。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶する指令値の前記サンプリング間隔は、ズームの焦点距離に基づき演算されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の雲台システム。
【請求項5】
前記記憶手段に記憶する指令値の前記サンプリング間隔は、ズームの焦点距離に基づきテーブルから読み出されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の雲台システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−5020(P2012−5020A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140443(P2010−140443)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】