説明

電位・温熱組合せ家庭用電気治療器

【課題】面状発熱体の温度―抵抗負特性(NTC特性)電気絶縁性能による印加電圧の低下が無く、面センサー性能をも維持する電位・温熱組合せ家庭用電気治療器を提供する。
【解決手段】敷布団に電位治療用の電床板5と温熱治療用の発熱体を内装し、コントローラーの制御切り替えによって電位治療と温熱治療が行える電位・温熱組合せ家庭用電気治療器において、発熱体は、両側に銅線等の導電極帯を織り込んだ布にカーボン導電塗料を塗布してなる等の面状発熱体1を用い、電床板5は塩化ビニールフイルム等の電気絶縁フイルムの片面にカーボン塗料を塗布して導電膜を形成してなる面状導電体を用いて、これら面状発熱体1と電床板5は、4mm2〜100mm2目を有する網状布帛21を挟んで積層一体的に構成することにより電床板5としての性能および面状発熱体1の電気的安全を得る面センサーとしての性能も維持しうる電位・温熱組合せ家庭用電気治療器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイナス電界に人体を横臥することにより、人体の帯電微粒子を調整する電位治療と、人体を暖めることにより血行を良好にして肩こり等をやわらげる温熱治療とが行える電位・温熱組合せ家庭用電気治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
電位治療器は大地絶縁された電床板にマイナス電圧を印加することにより形成された電界領域に人体を置くことによって、生体の帯電微粒子を調整する家庭用の電気治療器の一種であり、温熱治療器は、電気発熱体等の加温体によって人体を暖めることにより血行を良好にして、肩こり、筋肉痛等を癒す家庭用の温熱治療器の一種である。従来これらの治療器を組合せ敷き布団用に構成して、寝ながら治療を受けることができるようにしたものがある。
本発明者等は先の発明(特願2011―149913)において、上記の如き敷き布団形式の電位・温熱組合せ家庭用電気治療器において、面状発熱体の安全装置として装備した面センサーと、電位治療用マイナス電位出力用電極としての電床板を同一の面状導電体で兼用するように構成したものを発明した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかして、電床板を従来面発熱体の針刺しなどの障害、ならびに面状発熱体の電気絶縁シートの絶縁劣化を検知して、安全に使用するために設けた面状導電体からなる面センサーと共用することにより、構造が簡単、軽量で引いては安価に提供できるようにした電位・温熱組合せ家庭用電気治療器は、面状発熱体に通電して、加温しながら電床版に電位電圧を印加すると、温度上昇とともに面状発熱体の温度―抵抗負特性(NTC特性)を持つ絶縁抵抗低下で電位電圧が低下するという課題を生じる。
【0004】
すなわち、面状発熱体と電位発生電極としての面センサーを兼ねた電床板の間の絶縁抵抗が、温度上昇とともに低下(NTC特性)することにより、電位電圧が面状発熱体側に引かれて、設定の電位電圧が低下して、電位治療としての性能が低下する不具合を生じる。
【0005】
しかしながら、電床板は面センサーも兼ねることから、面センサーとしての針刺し検知および面状発熱体の電気絶縁劣化を検知する安全性能も有していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のことから、本発明はこれら観点に立って、電床板と面センサーを兼用することにより、軽量で安価な治療器を提供するものにおいて、電床板としての性能を維持するとともに、面センサーとしての性能も担保する治療器を得るものである。
【0007】
本発明は面センサーを兼ねた電床板と、面状発熱体との間に4mm〜100mm2及び綿糸換算略20番手(約250d)の糸径の寒冷紗のような網状布帛を挟装することにより、面状発熱体が発熱しているときにあっても、印加した電位電圧の降下も少なく、また面状発熱体の電気絶縁温度―抵抗負特性(NTC特性)をも検知して面センサーとしての針刺し検知および絶縁劣化検知性能も担保し得る構成の電位・温熱組合せ家庭用電気治療器を提供するものである。
【0008】
敷布団に内装した電床板に1000V以下のマイナス低電圧を印加して、敷布団上面に電界域を作り、敷布団に横臥した治療者にマイナス電位を与えて、人体の帯電微粒子のバランスを調整して、頭痛・肩こり・不眠症・慢性便秘を緩解する効能効果が得られる家庭用電気治療器において、面状導電体の電床板に面状発熱体を積層一体して、面状発熱体を発熱させて温まりながら、あるいは温熱治療を受けながら電位治療を受けることのできる、電位・温熱組合せ家庭用電気治療器にあって、面状発熱体の電気的安全を担保する面センサーを上記電床板と兼用させ、且つ電床板と面状発熱体の間に網状布帛を挟装したものである。
【0009】
上記のように電床板と面状発熱体の間に網状布帛を挟装させたことにより、温度―抵抗負特性(NTC特性)を持つ塩ビフイルムのごとき面状発熱体の電気絶縁フイルムを利用して、針刺し及び電気絶縁劣化における電気的安全を担保する面センサーを電床板と兼用しても、設定電位電圧を確保することができ、かつ面センサーとしての電気安全性能も確保できる。
【0010】
さらに、温熱治療のために設けた面状発熱体の安全装置としての面センサーを、電位治療器の電極としての電床板に兼用させる構成にしたことにより、軽量で安価な電位・温熱組合せ家庭用電気治療器として提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、低圧の電位・温熱組合せ家庭用電気治療器において、電床板と面状発熱体の間に網状布帛を挟装することにより、電床板に印加した設定電位電圧の降下が少なく、電床板に兼用した面センサーとしての性能も維持して、構造が簡素化され軽量になるとともに、安価になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】は面状発熱体を示す。
【図2】は電床板を示す。
【図3】は電位・温熱組合せ家庭用電気治療器の全体を示す。
【図4】は面発熱体と電床板の積層断面図。
【図5】は図3の断面図。
【図6】は本家庭用電気治療器の電子回路を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
電床板への電圧出力側に電位電圧検知回路なる電圧出力モニター機能を設けてマイコンに対して電圧出力可否信号出すことによりマイコンで発光ダイオードの点滅を行う。電床板と兼用する面センサーは面状発熱体からの一定以上の漏洩電流(例えば100μA以上)を面状発熱体から受けたときにマイコンの作用で面状発熱体への電気の供給を止める。また、面センサーを兼ねる電床板に印加される低圧マイナス電圧は、商用交流電源から変換された安定化された直流電源である。温度―抵抗負特性(NTC特性)のフイルムで電気絶縁された面状発熱体に対面積層された、面状導電体からなる電床板との間に例えばポリエステル糸で織られた4mm2〜100mm2の目、及び略綿糸20番手の径を有する寒冷紗のような網状布帛を挟装する。
【実施例1】
【0014】
本発明の一実施例を図に基づいて説明する。図1は本発明を実施するための面状発熱体1を示し、これは両側に銅線を織り込んだ電極帯2,2を設けた織布に、カーボン導電塗料を塗布して、表裏面に温度―抵抗負特性(NTC特性)の塩ビフイルムをラミネートして電気絶縁して形成される。電極帯2,2からは端子3,3を介してリード線4,4が導出されている。図2は面センサーを兼ねた電床板5を示し、これは塩ビフイルム等電気絶縁フイルム6の片面にカーボン導電塗料を印刷してなる導電面7を形成して、導電面7から端子8を介してリード線9が導出されている。
【0015】
これら面状発熱体1と電床板5は、面状発熱体1の片面に電床板5の導電面7を対面させて積層一体に形成されている。このとき、面状発熱体1と電床板5の間には図4のように網状布帛21が挟装されている。
【0016】
網状布帛21は、例えばポリエステル糸で織られた目4mm2〜100mm2、綿糸略20番手(約250d)相当の糸径の寒冷紗のものを使用するとよい。
【0017】
積層一体に形成された面状発熱体2および電床板5は、図3、図5に示されるように敷き布団10の綿20,20に接着して、外皮19,19内装されている。敷き布団10の角部には電気接続器11が装着されており、そこから本体コード12を介してコントローラー13に面状発熱体1および電床板5のリード線4,9が電気接続される。14は商用交流電源に接続されるプラグ付き電源コードである。
【0018】
コントローラー13には面状発熱体の発熱温度をコントロールする温度調節ボタン15と温度調節設定を知る発光ダイオード16…および電位・温熱切換えボタン17と治療状況を知る発光ダイオード18…が操作面に設けてある。
【0019】
図5は本発明電位・温熱組合せ家庭用電気治療器を敷き布団形態に実施した図3の敷き布団10部の断面を示し、外皮19・19に被包された固綿20・20に上下挟まれて、積層された面状発熱体1と電床板5が設けられている。
【0020】
図6は、電気系統を示すコントローラー13に収められた電子回路ブロック図である。商用交流電源(100V〜220V)はスイッチング安定化電源回路Aおよび面状発熱体1への電気供給を制御する発熱体制御回路Bに投入される。
【0021】
電源回路Aにおいては、スイッチング安定化電源により、たとえば直流5Vに変換されて、マイコンCおよび電位治療のためのマイナス電位発生回路Dに投入される。マイナス電位発生回路Dでは、たとえばマイナス直流600Vに昇圧されて電床板5に電気接続されている。スイッチング安定化電源回路Aと商用交流電源とは、基本的には絶縁されているが直流出力を高インピーダンス素子Gを介して商用交流電源と接続することにより、マイナス電位発生回路Dの出力基準を商用交流電源のアース電位とすることができる。
【0022】
電床板5へのマイナス電圧出力側には電圧検知回路Eが設けられており、電圧印加状況をマイコンCに投入する。マイコンCにおいては、マイナス電位発生回路DへのON/OFF制御および発熱体制御回路BへのON/OFFが面状発熱体1に設けられた図示しない温度センサー(感熱線あるいはサーミスター)からの信号を受けて行われる。
【0023】
この場合、マイコンCからマイナス電位発生回路Dへの信号がONにもかかわらず電位電圧検知回路Eで電圧出力が検知できないときはマイコンCを介して発光ダイオード16或は18を点滅するなどして報知する。
【0024】
また、電床板5への電位電圧出力回路上には漏洩電流検出回路Fが設けられており、面状発熱体1から、例えば針刺し、あるいは面状発熱体1の電気絶縁フイルムが絶縁低下したときに受ける漏洩電流を検出してマイコンCに送信することで、面状発熱体1への通電をOFFして使用上の安全を確立する。この場合、電床板5への電位治療電圧を、スイッチング安定化電源回路A以降の直流5Vから昇圧したことにより、面状発熱体1への商用交流電源の漏洩電流と差別化され、電床板5は面センサーと兼用できる。
【0025】
面状発熱体1と電床板5の間に、網目4mm2〜100mm2、綿糸略20番手相当の径の糸で織った寒冷紗のような網状布帛21を挟装することにより、常温において面状発熱体1と電床板5間の絶縁抵抗を100MΩ以上維持したものが、使用温度60℃においては70MΩ程度まで下がり、さらに例えば温度制御の異常により面状発熱体1が高温になったときにおいては1MΩと低下する。これは、高温上昇により塩ビフイルムが柔軟性を帯びて、網状布帛21の目を介して電床板5の導電面と面状発熱体1の絶縁フイルムが接合して、面状発熱体1の絶縁劣化によるリーク電流が電床板5に伝わり、面状発熱体1への通電を遮断する。誤って針刺しをしたときには、面状発熱体1の導電部7と電床板5の電通面が針を介して電気導通することから、面状発熱体1の通電を遮断する。
【0026】
発明者の実測では、網状布帛に代えて通常の織布、不織布を面状発熱体1と電床板5の間に挟装したときは、面状発熱体1を60℃に上げても100MΩ以上を維持して面センサーとしての機能を発揮しえない。また、40MΩ以下に面状発熱体1と電床板5間の絶縁抵抗が下がると、電位電圧が急激に低下して、電位治療器としての機能が失われる。これにたいして、4mm2〜100mm2の目を持つ網状布帛を面状発熱体1と電床板5の間に挟装したときは、面状発熱体1の温度が60℃の設定温度のとき70MΩを維持して60℃以上の90℃の異常高温になったときは、絶縁抵抗は1MΩ以下まで低下することが確認できた。
【0027】
従って、本発明、面状発熱体1と電位治療の負電圧印加電極としての電床板5の間に4mm2〜100mm2目の網状布帛を挟装することは、電床板5を面状発熱体1の電気的安全を保つ面センサーと兼用させても、面状発熱体1が異常高温になったとき絶縁抵抗が下がり、リーク電流を受けて、面状発熱体1への通電を遮断する。また、温熱治療器として、必要な温度60℃のときは、絶縁抵抗70MΩ以上を維持して、温熱治療と電位治療を組み合せたこの種治療器において、電位治療器として印加した電位電圧を低下することもない。
【0028】
なお、上記実施例においては、両側に電極帯を織り込んだ織布にカーボン等導電塗料を塗布してなる面状発熱体を説明に用いたが、糸に導電塗料を塗布等して、これを横糸に織り込んでなる線面発熱体においても同様の作用効果を得る。
【0029】
以上実施例において説明したように、本発明は電位電圧をスイッチング安定化電源から昇圧したことから、治療用電位電圧を安定した電圧として得ることができる。さらに、面状発熱体への発熱電気を商用交流電源から得、電位治療用電圧をスイッチング安定化電源から昇圧して得るようにしたことにより、電床板と面センサーを同一の面状導電体で共用できることから、機器本体は簡素化出来、軽量にできることになり、安価に構成される。このような構成において、面状発熱体と電床板の間に4mm2〜100mm2の目を有する網状布帛を挟装することにより、電位治療用印加電圧を設定電圧に維持するとともに、異常時には面状発熱体からのリーク電流を電床板で受けて、電気的安全を担保することができる。
【符号の説明】
【0030】
1:面状発熱体
2:電極帯
3:端子
4:リード線
5:電床板
6:電気絶縁フイルム
7:導電面
8:端子
9:リード線
10:敷き布団
11:電気接続器
12:本体コード
13:コントローラー
14:プラグ付き電源コード
15:温度調節ボタン
16:温度調節設定LEDランプ
17:電位・温熱切換えボタン
18:治療状況LEDランプ
19:布団外皮
20:布団綿
21:網状布帛
A:スイッチング安定化電源回路
B:発熱体制御回路
C:マイコン
D:マイナス電位電圧発生回路
E:電位電圧検知回路
F:漏洩電流検出回路
G:高インピーダンス素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷布団に電位治療用の電床板と温熱治療用の発熱体を内装し、コントローラーの制御切り替えによって電位治療と温熱治療が行える電位・温熱組合せ家庭用電気治療器において、面状発熱体と電床板との間に4mm2〜100mm2目を有する網状布帛を挟装することを特徴とする電位・温熱組合せ家庭用電気治療器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−94614(P2013−94614A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243151(P2011−243151)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(391014871)株式会社京都西川 (11)
【出願人】(302067534)山陽電気工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】