説明

電位生成回路および液晶表示装置

【課題】本発明は、簡単な回路構成で消費電力を低減することが可能な電位生成回路および液晶表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明による電位生成回路は、容量性負荷に印加するコモン電位を生成する電位生成回路であって、所定の設定電位が正入力に入力され出力電位が負入力に負帰還される差動アンプ2と、差動アンプ2からの出力を増幅し、コモン電位を出力する電流増幅部3と、一端が基準電位に接続された電荷回収容量5と、電荷回収容量5の他端とコモン電位との間に接続された逆並列ダイオード4とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に、アクティブマトリクス方式の液晶表示装置における電位生成回路に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス方式の液晶表示装置の駆動方式は、コモン電位の観点から大きく分けて2通りの方法がある。一方は、一般的にラインコモン反転方式と呼ばれる方式であり、液晶表示装置のゲート線の1行おきにコモン電位の極性が反転し、全データ線の電位の極性は、コモン電位の極性に従って反転する。なお、極性の反転周期は複数行おきでもよく、フレーム単位おきであってもよい。他方は、一般的にドット反転方式と呼ばれる方式であり、コモン電位は直流電位で一定に保たれ、データ線の電位はコモン電位を基準として極性を反転する。なお、隣接する画素同士の極性が異なるように反転させることが一般的であるが、複数画素おきに極性を反転するようにしてもよい。
【0003】
例えば、ラインコモン反転方式において、ノーマリホワイトの液晶のゲート線に対して1行おきに印加電圧の極性を反転させる場合では、全画面を黒表示にしたときに印加電圧が最大となり、電位生成回路(以下、コモン電位生成回路とする)で消費される電流も最大となる。一方、ドット反転方式では、全画面が黒表示または白表示のときに隣接する画素間での電位が相殺されるため、コモン電位生成回路での電流の消費はほとんどない。しかし、例えば、隣接する画素が白黒表示(通常の隣接する画素はRGBと色が異なっているので、隣接する画素は紫・緑・紫というように表示される)のときは、ラインコモン反転方式のようにコモン電位生成回路での消費電力が大きくなってしまう。ドット反転方式では、一般的な画像が表示されると極性が平均化されるため、コモン電位生成回路における消費電力はラインコモン反転方式と比べて概ね少ない傾向にある。
【0004】
従来では、ラインコモン反転方式において消費電力が大きいコモン電位生成回路を低消費電力化するために、電荷回収回路を用いた方法などがある(例えば、特許文献1参照)。他にも、コモン電位生成回路を低消費電力化させる方法が記載されたものがある(例えば、特許文献2、3、4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−69848号公報
【特許文献2】特開2007−093696号公報
【特許文献3】特開平11−194320号公報
【特許文献4】特開2001−282197号公報
【特許文献5】特開平06−088955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のコモン電位生成回路では、低消費電力化が十分ではない、または複雑な回路構成によって低消費電力化を図っていた。
【0007】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、簡単な回路構成で消費電力を低減することが可能な電位生成回路および液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明による電位生成回路は、容量性負荷に印加する出力電位を生成する電位生成回路であって、所定の設定電位が正入力に入力され出力電位が負入力に負帰還される差動増幅器を備え、差動増幅器からの出力に応じて出力電位が容量結合によって出力され、出力電位を直流バイアスする直流バイアス手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、容量性負荷に印加する出力電位を生成する電位生成回路であって、所定の設定電位が正入力に入力され出力電位が負入力に負帰還される差動増幅器を備え、差動増幅器からの出力に応じて出力電位が容量結合によって出力され、出力電位を直流バイアスする直流バイアス手段とを備えるため、簡単な回路構成で消費電力を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1によるコモン電位生成回路の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態1によるコモン電位生成回路における電圧と電流との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2によるコモン電位生成回路の概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態2による他のコモン電位生成回路の概略構成図である。
【図5】従来におけるコモン電位生成回路の概略構成図である。
【図6】本発明の実施形態による液晶表示パネル側の等価回路を示す図である。
【図7】従来におけるコモン電位生成回路と液晶表示パネル側の等価回路とを接続した概略構成図である。
【図8】従来におけるコモン電位生成回路における電圧と電流との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0012】
まず初めに、本発明の前提となる技術について説明する。
【0013】
図5は、従来におけるコモン電位生成回路の概略構成図である。図5に示すような回路構成は、現在一般的に使用されているドット反転方式において駆動されるコモン電位生成回路であり、直流電位を決定する電位調整部1と、ボルテージフォロア接続された差動アンプ2、電流増幅部3、平滑化容量(Cs)5とから構成される。図5に示すコモン電位生成回路は、コモン電位が差動アンプ2の正帰還端子の電位と異なると、逆方向電圧に差動アンプ2が動作(+に異なっていれば−に、−に異なっていれば+に差動アンプ2が動作)し、電流増幅部3からコモン電位の平滑化容量5に電流が流れて電荷が蓄積され(または平滑化容量5から電荷が引き抜かれ)、コモン電位を電位調整部1の電位と等しくするよう動作する。なお、実際には位相調整などの素子が追加される場合があるが、簡略化のためここでは省略している。また、電流増幅部3を個別に設けずに、差動アンプ2の最後段のバッファにて電流能力が十分である場合もあるが、ここでは分かりやすくするために分離している。
【0014】
図6は、一般的な液晶表示パネル側の等価回路を示す図である。データ線駆動回路9は、画像データや極性反転信号によって液晶表示パネルに出力する電圧を各データ線に出力する。各データ線は、対応する各画素電極に対してTFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子を介して接続されており、各画素電極は液晶容量を介してコモン電位と接続されている。
【0015】
なお、各データ線は、各画素を介すこと以外に直接にコモン電位と寄生的に容量結合しており、実際にはこの容量結合が主ではあるが、ここでは何らかの容量(Cp)8で各データ線とコモン電位とが結合されているとする。また、実際の液晶表示パネル側の等価回路はさらに複雑であるが、簡略化のために必要な部分のみを示している。図6に示すデータ線駆動回路9は4つであるが、実際にはデータ線の本数分(例えば、VGA(Video Graphics Array)パネルの場合は、640×RGB=1920本)ある。
【0016】
前述の通り、データ線駆動回路9の半分の電圧が増加側に変化し、同時に残りの半分の電圧が減少側に同じ電圧だけ変化した場合は、各容量の大きさが同じであれば各電荷が打ち消しあうため、コモン電位は変動せずコモン電位生成回路にて電力が消費されることはない(ただし、ここでは電流増幅部3にてやり取りされる電流以外はないものとする)。しかし、データ線駆動回路9の出力電位の変化の平均が同じ電位方向である場合には、電荷同士で打ち消すことができずコモン電位が変動する。従って、コモン電位生成回路では、コモン電位の変動分を抑制するために電力を消費する。
【0017】
図7は、従来におけるコモン電位生成回路と液晶表示パネル側の等価回路とを接続した概略構成図である。なお、コモン電位生成回路側は簡単のため電流増幅部3のみ記載している。また、図8は、従来におけるコモン電位生成回路における電圧と電流との関係を示す図である。図7および図8に示すように、データ線駆動回路9の出力が平均的にΔVpだけ正方向に変化したとすると、コモン電位生成回路は瞬時に反応できないため、コモン電位がΔVp×Cp/(Cs+Cp)程度変化する。この電位の変化にともなって、差動アンプ2は電流増幅部3の下側(PNP)トランジスタをONにして平滑化容量(Cs)5の電荷を引き抜いてコモン電位を下げる。このとき、データ線駆動回路9側からコモン電位生成回路側へ電流が流れ、電源から電流IAが消費される。一方、データ線駆動回路9の出力が平均的に−ΔVpだけ負方向に変化したとすると、コモン電位生成回路は瞬時に反応できないため、コモン電位が−ΔVp×Cp/(Cs+Cp)程度変化する。この電位の変化にともなって、差動アンプ2は電流増幅部3の上側(NPN)トランジスタをONにして平滑化容量(Cs)5に電荷を充電しコモン電位を上げる。このとき、コモン電位生成回路側からデータ線駆動回路9側へ電流が流れ、電源から電流IBが消費される。
【0018】
上記のことから、コモン電位生成回路にて消費される電力は、データ線駆動回路9から出力される平均電位が下がったときに、コモン電位を上げようと電流IBを消費する。そのため、電流IBが大きいほどコモン電位生成回路にて消費される電力も大きくなる。本発明では、電流IBを小さくし、コモン電位生成回路にて消費される電力を減少させることを特徴としている。以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1によるコモン電位生成回路の概略構成図である。図1に示すように、容量性負荷に印加する出力電位(コモン電位)を生成する電位生成回路(コモン電位生成回路)であって、所定の設定電位が正入力に入力されて出力電位が負入力に負帰還される差動アンプ2(差動増幅器)と、差動アンプ2からの出力に応じて出力電位が出力されるように、差動アンプ2からの出力を増幅して出力電位を出力する電流増幅部3と、一端が基準電位(安定電位)に接続された電荷回収容量5と、電荷回収容量5の他端と出力電位との間に接続された逆並列ダイオード4とを備えている。
【0020】
ここで、本実施形態では基準電位とするが、安定な電流電位(安定電位)であればどのような電圧であってもよい。また、従来のコモン電位生成回路にて用いていた平滑化容量は、本実施形態では電荷回収容量と呼ぶ。
【0021】
図2は、本発明の実施形態1によるコモン電位生成回路における電圧と電流との関係を示す図である。図1および図2を用いて、コモン電位生成回路における動作について説明する。
【0022】
データ線駆動回路9の平均電位がΔVp増加すると、電流増幅部3が動作開始するまでの期間、すなわち、差動アンプ2の出力電圧がコモン電位の変動方向とは反対方向に変化して電流増幅部3に対してバイアスをかけるまでは、コモン電位は増加し、コモン電位と電荷回収容量5端の電位との電位差はダイオード4の順方向電圧VFとなる。このとき、電流増幅部3が十分な時間動作しなかったとすると、ダイオード4を流れる電流はほぼ0となって電荷回収容量5端の電位は一定となり、ダイオード4の順方向電圧VFは電流が0近傍でのダイオードの順電圧特性で落ち着く。
【0023】
次に、電流増幅部3がコモン電位を下げる動作を開始(PNPトランジスタON)し、増加したコモン電位を所望の電位まで収束させる。このとき、ダイオード4の順電圧特性によって、電荷回収容量5から電荷が抜かれることはなく、電荷回収容量5端の電位は変化せずに電気的に切断された状態となる。すなわち、電荷回収容量5には電荷が充電されている状態となる。
【0024】
次に、データ線駆動回路9の平均電位がΔVp減少すると、電流増幅部3が動作開始するまでの期間は、コモン電位は減少し、コモン電位と電荷回収容量5端の電位との電位差はダイオード4の順方向電圧VFとなる。このとき、電流増幅部3が十分な時間動作しなかったとすると、電荷回収容量5に充電されている電荷が放電してダイオード4を流れ始め、ダイオード4の両端の電位差がほぼ0になるまで流れる。そして、この電荷回収容量5から流れた電荷によって、減少したコモン電位は上げられる。ダイオード4を流れる電流がほぼ0となると電荷回収容量5端の電位は一定となり、ダイオード4の順方向電圧VFは電流が0近傍でのダイオードの順電圧特性で落ち着く。
【0025】
次に、電荷回収容量5の電荷によってコモン電位を上げた後において、所望のコモン電位まで上がらなかった分の電位を補うために、電流増幅部3がコモン電位を上げる動作を開始(NPNトランジスタON)し、不足分のコモン電位を所望の電位まで上げる。このとき、ダイオード4の順電圧特性によって、電荷回収容量5端の電位は変化せずに電気的に切断された状態となる。
【0026】
図2に示すように、データ線駆動回路9から出力される平均電位が周期的に±ΔVpだけ変動する場合において、電荷回収容量5端の電位振幅は(ΔVp−2VF)×Cp/(Cs+Cp)となり、振幅の中心が設定電位となる。すなわち、ΔVpが正方向に変動するとき、電荷回収容量5端の電位は設定電位を基準にすると(ΔVp−2VF)×Cp/2(Cs+Cp)だけ大きくなり、コモン電位のピークは(ΔVp−2VF)×Cp/2(Cs+Cp)+VFだけ大きくなる。
【0027】
上記に記載のように、コモン電位生成回路にて電力が消費される(電流IBが流れる)のは、データ線駆動回路9の出力平均電位が下がるときである。
【0028】
従来では、データ線駆動回路9の出力平均電位がΔVpだけ下がると、変動分のコモン電位を元に戻すために必要な電荷量はΔVp×Cpとなる。すなわち、実際のコモン電位の変動はΔVp×Cp/(Cs+Cp)程度であるが、コモン電位部での総容量がCs+Cpであるため、変動分のコモン電位を元に戻すために必要な電荷は{ΔVp×Cp/(Cs+Cp)}×(Cs+Cp)からΔVp×Cpとなる。
【0029】
一方、本実施形態1では、コモン電位の変動は(ΔVp−2VF)×Cp/2(Cs+Cp)+VFであり、電荷回収容量(Cs)5がダイオード4によって電気的に切断された状態であるため、コモン電位部での総容量はCpとなる。従って、変動分のコモン電位を元に戻すために必要な電荷は{(ΔVp−2VF)×Cp/2(Cs+Cp)+VF}Cpとなる。
【0030】
ここで、ΔVp>2VFの場合では、コモン電位を戻すために必要な電荷{(ΔVp−2VF)×Cp/2(Cs+Cp)+VF}Cpは、必ずΔVp×Cpよりも小さくなるため、本実施形態1によるコモン電位生成回路にて消費される電流量が減少したことが分かる。
【0031】
このように、従来では、ΔVpが正方向に変動すると、電流増幅部3のPNPトランジスタを介して電荷を引き抜いていた。しかし、本実施形態1では、電荷を電荷回収容量5に充電し、ΔVpが負方向に変動するときに電荷回収容量5に充電した電荷を再利用しており、上記の動作を簡単な構成により実現している。
【0032】
また、ΔVp<2VFの場合では、ダイオード4は導通せずに電荷回収容量5端の電位の振幅がなくなるため、本回路自体がない場合と同じであるため、従来と同様にコモン電位を戻すために必要な電荷はΔVp×Cpであり、従来よりも大きくなることはない。
【0033】
上記では、ダイオード4を流れる電流の特性や差動アンプ2の動特性は無視していた。仮に、ダイオード4への電流が流れにくく、かつ差動アンプ2のスルーレートが高いと、ΔVpの変動にともなってコモン電位が変動し、ダイオード4を介して電荷回収容量5に電荷が充電または放電し始めるが、電荷回収容量5に対して十分に充放電されないうちに、動作の速い差動アンプ2が電流増幅部3をバイアスしてコモン電位を設定電位まで戻してしまう。従って、電荷の回収や再利用が十分になされずに、コモン電位生成回路での電流消費を低減(コモン電位生成回路の低電力化)させる効果が減少してしまう。コモン電位生成回路での低電力化の効果を高めるためには、電荷回収容量5の容量を大きくし、低VF−高IFのダイオード4を使用してできるだけ早く電荷回収容量5の電荷を充放電させ、差動アンプ2は必要な範囲でスルーレートが遅いものを選択すればよい。また、差動アンプ2のスルーレートが調整できない場合は、無効機能を備えた差動アンプ2を用いるなど構造や制御が多少複雑となるが、データ線駆動回路9の出力平均電位が変動した後の一定期間、差動アンプ2の動作を止めるなどすればよい。
【0034】
〈実施形態2〉
一般的に、ドット反転方式の液晶表示装置内部にて使用される電源電圧には、論理回路電位、ゲートオン電位、ゲートオフ電位、アナログ電位、コモン電位などが使用され、論理回路電位=3.3V、ゲートオン電位=20V、ゲートオフ電位=−5V、アナログ電位=10V、コモン電位=4V程度に設定されることが多い。本実施形態2では、上記の各電圧値を用いて説明するが、これらの電源は単一入力電源電位または複数の電源電位から生成される。入力電源電位は、3.3V程度が主に用いられており、液晶表示装置のサイズの増大に従って消費電力が増加するため、5V、12Vと高電圧化していく傾向にある。本実施形態では、一例として、入力電源電圧を3.3Vの単一入力電源を用いて説明する。
【0035】
アナログ電位はデータ線駆動回路9の電源として用いられており、データ線駆動回路9はアナログ電源電位と基準電位(GND)との間に接続され、例えば1V〜9V間において任意の電圧を出力することができる。また、コモン電位は4V程度に設定されており、図5に示すような従来のコモン電位生成回路にて備えられる3つの電源にはアナログ電位の10Vが使用されている。このように、従来のコモン電位生成回路において、図8に示される電流IB[A]は10Vの電源電位から消費されるため、消費電力は10×IB[W]となる。
【0036】
図3は、本発明の実施形態2によるコモン電位生成回路の概略構成図である。図3に示すように、容量性負荷に印加する出力電位(コモン電位)を生成する電位生成回路(コモン電位生成回路)であって、所定の設定電位が正入力に入力されて出力電位が負入力に負帰還される差動アンプ2(差動増幅器)と、差動アンプ2からの出力を容量結合によって入力して増幅し出力電位を容量結合によって出力する電流増幅部3と、出力電位を直流バイアスする直流バイアス手段とを備えており、直流バイアス手段は、差動アンプ2の出力と出力電位との間に直列に接続された抵抗10およびダイオード4(逆並列ダイオード)であることを特徴とする。なお、本実施形態2では、差動アンプ2および電圧調整部1に接続されている電位はアナログ電位の10Vであり、電流増幅部3のみアナログ電位と異なり論理回路電位の3.3Vに接続されているものとする。また、電流増幅部3に接続される各容量は十分に大きいものとする。
【0037】
図3に示すコモン電位生成回路について説明する。
【0038】
コモン電位の初期値を、例えば電源投入直後として0Vとする。電位調整部1の設定電圧は4Vであるため、差動アンプ2は出力電圧を上昇させる。差動アンプ2の出力電圧が上昇すると電流増幅部3がバイアスされるが、電流増幅部3に接続されている電源電圧が3.3Vであるためコモン電位は最大3.3Vまでしか上げることができないが、差動アンプ2の出力端から直列に接続された抵抗10およびダイオード4を介して電荷が供給されてコモン電位は設定電位となる。
【0039】
実施形態1と同様に、データ線駆動回路9の出力平均電位が変化すると、コモン電位も変化する。このとき、差動アンプ2は変動方向とは逆方向の電位を出力するが、出力された電位がコモン電位に対してダイオード4の順方向電圧±VF未満の場合には電流が流れない。一方、コモン電位に対してVFより僅かに大きくなると、差動アンプ2の出力端から直列に接続された抵抗10およびダイオード4を介して電流が流れ始めるが、抵抗があるため電流がある程度制限される。しかし、同時に電流増幅部3のベースがバイアスされ始め、大きな電流が電流増幅部3から流れ出す。その結果、容量結合されているコモン電位は増加して設定電位で安定する。
【0040】
このように、図3に示すようなコモン電位生成回路において、差動アンプ2の出力端から直列に接続された抵抗10およびダイオード4は直流電流をバイアスするために設けられており、電流増幅部3ではコモン電位の変動分を元に戻すよう補正するために設けられている。図6に示すように、コモン電位とデータ線駆動回路9とは容量(Cp)8を介しているため、直流電流がデータ線駆動回路9側に流れることはない(実際には、非常に小さなリーク電流はある)。従って、図8に示す電流IBはコモン電位の変動を抑制するために用いられ、コモン電位生成回路にて消費される。なお、差動アンプ2などのバイアス電流も消費されるが、ここでは省略する。
【0041】
従来のコモン電位生成回路では、電流IBは10Vのアナログ電位電源から消費されていたので消費電力は10IB[W]であったが、本実施形態2では、電流IBは3.3Vの電位電源から消費されるため消費電力は3.3VIB[W]となり、従来よりも消費電力が減少したことが分かる。なお、上記は、コモン電位に対して差動アンプ2の出力から電流が流れないことを前提としているが、電流増幅部3ではおよそIB/トランジスタのhFE程度しか流れず、また差動アンプ2の出力端から直列に接続された抵抗10およびダイオード4の経路では、ダイオードの順電圧および抵抗によって電流が流れにくくなっているため、ほぼ無視することができる。
【0042】
差動アンプ2の出力端から直列に接続された抵抗10およびダイオード4について説明する。仮にダイオード4がないと仮定すると、差動アンプ2から出力される電位がコモン電位より僅かにずれただけで電流が流れてしまい、この電流はアナログ電位の10Vから供給されるため消費電力が増大してしまう。それを防止するために直列に接続している抵抗10の値を大きくすればよいのだが、例えば電源投入時などでは直流電位が抵抗10を介してバイアスされるため、安定するまで時間がかかってしまう。上記の問題は、抵抗10およびダイオード4を直列に接続する図3のような回路構成とすることにより解決することができる。
【0043】
本実施形態2における電流増幅部3の電源には、0−3.3Vの電源を使用しているが、例えば3.3−10Vの電源でもよく、例えば論理回路電位等の別の回路で2.5Vを生成しているような場合、0−2.5Vとするとさらに低電力化することができる。すなわち、電流増幅部3をコモン電位に対して容量結合させることによって、最も効率的な電位を選定することができ消費電力を低減することが可能となる。
【0044】
図3に示すコモン電位生成回路では、差動アンプ2の電源を直流値を決定するために都合の良い10Vに設定している。しかし、図4に示すコモン電位生成回路では、電流増幅部3と同様の3.3Vの電源を電位調整部1、差動アンプ2に用いることができる。
【0045】
図4は、本発明の実施形態2による他のコモン電位生成回路の概略構成図である。図4に示すように、容量性負荷に印加する出力電位(コモン電位)を生成する電位生成回路(コモン電位生成回路)であって、所定の設定電位が正入力に入力されて出力電位が負入力に負帰還される差動アンプ2(差動増幅器)と、差動アンプ2からの出力に応じて出力電位が容量結合によって出力されるように、差動アンプ2からの出力を増幅し出力電位を容量結合によって出力する電流増幅部3と、出力電位を直流バイアスする直流バイアス手段とを備えており、直流バイアス手段は、第1および第2の電源間の電位を抵抗分割する回路を含むことを特徴とする。本実施形態では電位調整部1、差動アンプ2、および電流増幅部3に論理回路電源電位3.3Vが使用され、直流点バイアス手段にはアナログ電源電位が使用されている。
【0046】
ここで、直流バイアス手段7がないと、それ以外の回路のみでは所望の直流電位4Vまでのバイアス手段がないため、何らかの手段が必要になる。最も簡単なバイアス手段は、図4に示すような抵抗分圧であり、図4では10Vのアナログ電位を抵抗分圧してからコモン電位にバイアスしている。このとき、定常的に電流が流れ続けるため、電力が消費されてしまうので、あまり好ましくないが、電源投入時の立ち上がり時間がある程度遅くてもよい場合は抵抗値を大きくすることで定常的な消費電力を低減することができる。また、別のバイアス手段を用いてもよい。差動アンプ2および電位調整部1の電源は3.3Vであるため、コモン電位の設定電位である4Vを直接出力することができないが、図4のように非反転増幅回路の構成とすることによって、正帰還端子のk倍(k≧1)の電位を制御することが可能となる。図4では、差動アンプ2と電流増幅部3は同電位の範囲内で動作するため容量結合する必要はない。
【0047】
以上のことから、電流増幅部3と同様の3.3Vの電源を電位調整部1、差動アンプ2に用いるため、消費電力が低減されたコモン電位生成回路となる。
【0048】
また、図3および図4に示すコモン電位生成回路において、実施形態1のような直列に接続された電荷回収容量および逆並列ダイオードをさらに備えてもよい。すなわち、一端が基準電位(安定電位)に接続された電荷回収容量5と、電荷回収容量5の他端と出力電位(コモン電位)との間に接続された逆並列ダイオード4とをさらに備えてもよい(図示せず)。このようにすることによって、さらに消費電力の低減を図ることができる。
【0049】
上記の実施形態1および実施形態2に記載の電位生成回路は、コモン電位を生成する回路として備える液晶表示装置に適用可能である。実施形態1および実施形態2に記載のコモン電位生成回路を液晶表示装置に備えることによって、消費電力を低減した液晶表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 電圧調整部、2 差動アンプ、3 電流増幅部、4 ダイオード、5 電荷回収容量、6 平滑化容量、7 直流点バイアス手段、8 容量、9 データ線駆動回路、10 抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量性負荷に印加する出力電位を生成する電位生成回路であって、
所定の設定電位が正入力に入力され前記出力電位が負入力に負帰還される差動増幅器を備え、
前記差動増幅器からの出力に応じて前記出力電位が容量結合によって出力され、
前記出力電位を直流バイアスする直流バイアス手段と、
を備える、電位生成回路。
【請求項2】
前記差動増幅器からの出力を増幅し、前記出力電位を容量結合によって出力する電流増幅部をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の電位生成回路。
【請求項3】
前記直流バイアス手段は、第1および第2の電源間の電位を抵抗分割する回路を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電位生成回路。
【請求項4】
一端が安定電位に接続された電荷回収容量と、
前記電荷回収容量の他端と前記出力電位との間に接続された逆並列ダイオードと、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電位生成回路。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電位生成回路は、コモン電位を生成する回路として備えられることを特徴とする、液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−84012(P2013−84012A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−16306(P2013−16306)
【出願日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【分割の表示】特願2008−113622(P2008−113622)の分割
【原出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】