説明

電力ケーブル接続用具

【課題】複数の心線を有する電力ケーブル同士を短時間で簡単に接続することができる電力ケーブル接続用具を提供する。
【解決手段】柱状ブロック16の外周面に軸方向に沿って複数の心線収容溝18が形成された絶縁スペーサ12と、互いに対向する壁部24、26を有するとともに、一方の壁部に少なくとも2つのねじ穴28が形成され、絶縁スペーサの心線収容溝内に固定された断面略U字状の導体接続治具14と、導体接続治具のねじ穴に螺合されるボルト15とを具備する電力ケーブル接続用具10とする。そして、電力ケーブルの心線32を心線収容溝内に収容するとともに、心線の導体34を導体接続治具内に配置した後、ねじ穴にボルトを螺合して導体をボルトの先端と導体接続治具の他方の壁部との間に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の心線を有する複数相一括電力ケーブル同士を接続するための電力ケーブル接続用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の心線を有する複数相一括電力ケーブル同士の接続手段として、特許文献1のケーブル接続部が提案されている。特許文献1のケーブル接続部は、電気的に接続された複数本のケーブルと、それ自身の表面軸方向に形成された複数個のケーブル収納溝内に上記接続された各ケーブルの接続部を収納した絶縁ブロックと、該絶縁ブロックのケーブル収納溝を覆うべく当該絶縁ブロックのケーブル収納溝上に当てがわれた絶縁部材と、該絶縁部材の周上に設けられた保護体とよりなるものである(実用新案登録請求の範囲)。
【0003】
【特許文献1】実開昭51−119587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のケーブル接続構造は、端子金具とボルト・ナットを用いてケーブルの導体同士を電気的に接続し、このケーブルを絶縁ブロックのケーブル収納溝に収納した後、さらに絶縁ブロックのケーブル収納溝を覆うべく絶縁ブロックのケーブル収納溝上に絶縁部材を当てがうことにより、絶縁ブロックにケーブルを固定するものであるため、絶縁ブロックへのケーブルの固定作業が煩雑で、ケーブルの接続作業に手間がかかるものであった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、複数の心線を有する複数相一括電力ケーブル同士を短時間で簡単に接続することができる電力ケーブル接続用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するため、
複数の心線を有する複数相一括電力ケーブル同士を接続するための電力ケーブル接続用具であって、
絶縁体からなる柱状ブロックの外周面に軸方向に沿って複数の心線収容溝が形成された絶縁スペーサと、
互いに対向する壁部を有するとともに、一方の壁部に少なくとも2つのねじ穴が形成され、開口部を外側方に向けた状態で前記絶縁スペーサの心線収容溝内に固定された断面略U字状の導体接続治具と、
前記導体接続治具のねじ穴に螺合されるボルトとを具備し、
複数相一括電力ケーブルの心線を前記心線収容溝内に収容するとともに、心線の導体を前記導体接続治具内に配置した後、前記ねじ穴にボルトを螺合して前記導体をボルトの先端と導体接続治具の他方の壁部との間に固定することにより、複数相一括電力ケーブルの心線同士を電気的に接続することを特徴とする電力ケーブル接続用具を提供する。
【0007】
本発明の電力ケーブル接続用具は、接続する心線の両導体を絶縁スペーサの心線収容溝内に固定された導体接続治具内に配置した後、導体接続治具のねじ穴にボルトを螺合し、導体をボルトの先端と導体接続治具の他方の壁部との間に挟持して導体接続治具に両導体を固定するだけで、心線の導体同士を電気的に接続することができるので、絶縁スペーサへの心線の固定作業を短時間で簡単に行うことができ、したがって電力ケーブルの接続作業を短時間で簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電力ケーブル接続用具は、複数の心線を有する電力ケーブル同士を短時間で簡単に接続することができる。すなわち、心線を接続するための穴を有する接続用具を用いた場合は、複数の心線を同時に複数の穴に差し込む作業は難しいが、本発明の接続用具では、心線を心線収容溝内に外側方から落とし込むので、複数の心線を容易に同時に心線収容溝内に収容することができ、また、その後にボルトを回転させるだけで心線同士を接続できるので、複数の心線を有する電力ケーブル同士を短時間で簡単に接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。図1は本発明に係る電力ケーブル接続用具の一実施形態を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図2は図1の電力ケーブル接続用具の絶縁スペーサを示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図3は図1の電力ケーブル接続用具の導体接続治具を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0010】
本例の電力ケーブル接続用具10は、絶縁スペーサ12と、導体接続治具14と、ボルト15とからなる。
【0011】
絶縁スペーサ12は、絶縁体からなる柱状ブロック16の外周面に軸方向に沿って3本の心線収容溝18が形成されたものである。上記柱状ブロック16は、軸方向中間部に円柱部20を有するとともに、この円柱部20の軸方向両端部に先方に向かうに従い漸次小径となる円錐台部22が連設されたものである。また、上記円柱部20には、ボルト15を回転させる工具の挿入スペースを確保するための角形の切り欠き23が形成されている。絶縁スペーサ12を形成する絶縁体の種類に限定はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等のポリオレフィン系材料;ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系材料;フッ素系材料;ブチルゴム、クロロプレンゴム、ハイパロンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム系材料;ナイロン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等のポリアミド系材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系材料;ポリカーボネート系材料;ポリエーテル系材料;ABS、ポリスチレン等のスチレン系材料;ポリウレタン系材料;ポリサルフォン系材料;セラミックス系材料などを用いることができる。
【0012】
導体接続治具14は、互いに対向する壁部24、26を有するとともに、一方の壁部24に軸方向に所定間隔離間して2つのねじ穴28、28が形成された断面略U字状のものである。導体接続治具14は、開口部30を外側方に向けた状態で、絶縁スペーサ12の心線収容溝18内に嵌め込み式により固定されている。ただし、導体接続治具14は、接着剤等を用いて心線収容溝18内に固定したり、一体成形により固定したりしてもよい。一体導体接続治具14を形成する導体の種類に限定はないが、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属や、導電性ゴム、導電性プラスチックなどを用いることができる。
【0013】
本例の電力ケーブル接続用具10を用いて複数の心線を有する複数相一括電力ケーブル(本例では3相一括電力ケーブル)同士を接続する場合、まず、図1(a)に示すように、電力ケーブルの心線32を絶縁スペーサ12の心線収容溝内18に収容するとともに、心線32の導体34を導体接続治具14内に配置する。その後、ねじ穴28にボルト15を螺合して導体34をボルト15の先端と導体接続治具の他方の壁部26との間に挟持し(図1(c)参照)、導体接続治具14に両導体34を固定することにより、電力ケーブルの心線32同士を電気的に接続するものである。なお、図1(a)において符号36は心線32の絶縁被覆層を示す。
【0014】
本例の電力ケーブル接続用具10は、接続する心線32の両導体34を導体接続治具14内に配置した後、ねじ穴28にボルト15を螺合し、導体34をボルト15の先端と導体接続治具14の壁部との間に固定するだけで、心線32の導体34同士を電気的に接続することができるので、絶縁スペーサ12への心線32の固定作業を短時間で簡単に行うことができる。
【0015】
この場合、本例の電力ケーブル接続用具10では、絶縁スペーサ12の柱状ブロック16を、軸方向中間部に円柱部20を有するとともに、この円柱部20の軸方向両端部に先方に向かうに従い漸次小径となる円錐台部22が連設された形状としたので、心線32を円錐台部22の外面に沿わせて心線収容溝18内に容易に収容することができる。また、絶縁スペーサ12の柱状ブロック16を円柱形とした場合には、円柱の角に心線32が接触して損傷するおそれがあるが、本例の形状とした場合には、心線32に円柱の角が接触しないので、心線が損傷することを防止することができる。
【0016】
図4は本発明に係る電力ケーブル接続用具の他の実施形態を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。本例の電力ケーブル接続用具40は、図1の電力ケーブル接続用具において、ボルトを回転させる工具の挿入スペースを確保するために、切り欠きに代えて、2つの円形穴42を設けたものである。その他の構成については、本例の接続用具40は図1の接続用具と同じであるため、図4において図1と同一の構成部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0017】
図5は本発明に係る電力ケーブル接続用具のさらに他の実施形態を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。本例の電力ケーブル接続用具50は、図1の電力ケーブル接続用具において、ボルトを回転させる工具の挿入スペースを確保するために、切り欠きに代えて、1つのレーストラック形状の長穴52を設けたものである。その他の構成については、本例の接続用具40は図1の接続用具と同じであるため、図5において図1と同一の構成部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電力ケーブル接続用具の一実施形態を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図2】図1の電力ケーブル接続用具の絶縁スペーサを示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図3】図1の電力ケーブル接続用具の導体接続治具を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図4】本発明に係る電力ケーブル接続用具の他の実施形態を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図5】本発明に係る電力ケーブル接続用具のさらに他の実施形態を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【符号の説明】
【0019】
10 電力ケーブル接続用具
12 絶縁スペーサ
14 導体接続治具
15 ボルト
16 柱状ブロック
18 心線収容溝
20 円柱部
22 円錐台部
23 切り欠き
24、26 壁部
28、28 ねじ穴
30 開口部
32 心線
34 導体
36 絶縁被覆層
40 電力ケーブル接続用具
42 円形穴
50 電力ケーブル接続用具
52 長穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の心線を有する複数相一括電力ケーブル同士を接続するための電力ケーブル接続用具であって、
絶縁体からなる柱状ブロックの外周面に軸方向に沿って複数の心線収容溝が形成された絶縁スペーサと、
互いに対向する壁部を有するとともに、一方の壁部に少なくとも2つのねじ穴が形成され、開口部を外側方に向けた状態で前記絶縁スペーサの心線収容溝内に固定された断面略U字状の導体接続治具と、
前記導体接続治具のねじ穴に螺合されるボルトとを具備し、
複数相一括電力ケーブルの心線を前記心線収容溝内に収容するとともに、心線の導体を前記導体接続治具内に配置した後、前記ねじ穴にボルトを螺合して前記導体をボルトの先端と導体接続治具の他方の壁部との間に固定することにより、複数相一括電力ケーブルの心線同士を電気的に接続することを特徴とする電力ケーブル接続用具。
【請求項2】
前記絶縁スペーサの柱状ブロックは、軸方向中間部に円柱部を有するとともに、前記円柱部の軸方向両端部に先方に向かうに従い漸次小径となる円錐台部が連設されていることを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブル接続用具。
【請求項3】
前記絶縁スペーサの外周面には3本の心線収容溝が等間隔毎に形成され、3相一括電力ケーブルの接続に使用されることを特徴とする請求項1または2に記載の電力ケーブル接続用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−51112(P2010−51112A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214083(P2008−214083)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(591086843)古河電工産業電線株式会社 (40)
【Fターム(参考)】