説明

電力ケーブル接続部

【課題】地絡事故時に電力ケーブル接続部を固定する固定金具が破断するおそれの少ない電力ケーブル接続部を提供する。
【解決手段】電力ケーブル接続部本体13を覆う保護ケース14a、14bが固定金具4で把持され、保護ケースの周方向の一部に、保護ケースの内圧上昇時に保護ケースが裂ける周方向の位置を制御する裂け位置制御溝31が保護ケースの軸線方向に形成された電力ケーブル接続部において、保護ケース14a、14bは、軸線方向における電力ケーブルの外部半導電層1cの端部位置Sより軸線方向の外側の位置で固定金具4により把持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル接続部に関するものであり、特に接続部で地絡事故が発生した場合における接続部周囲の他のケーブル等の損傷防止対策が講じられた電力ケーブル接続部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブル接続部で地絡事故が発生した場合、接続部内の圧力が急上昇して、保護ケースが破裂し、接続部の構成部材が周囲に飛散することがある。電力ケーブルが共同溝や洞道などに布設されている場合には、接続部の構成部材が周囲に飛散すると、電力ケーブル接続部の周囲に配置されている他のケーブルや設備に損傷を与えるおそれがある。これを防止するため、保護ケースが破裂した時に接続部の構成部材が飛散する方向を所望する方向へ限定できるようにした電力ケーブル接続部が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
従来の電力ケーブル接続部を図4に示す(特許文献1の図1参照)。
図4において、1は電力ケーブル、10は電力ケーブル1,1を接続する電力ケーブル接続部、2は電力ケーブル1が布設された共同溝や洞道などの壁、3は壁2(又は床)に固定された電力ケーブル接続部10の支持金具、4は電力ケーブル接続部10を接続部の中央部で支持金具3に固定する固定金具である。電力ケーブル接続部10は、導体接続部11と接続部絶縁体12とからなる接続部本体13、接続部本体13を覆う保護ケース14(通常は銅管)、接続部本体13と保護ケース14の間に充填された防水コンパウンド15等から構成されている。
【0004】
この電力ケーブル接続部10は、保護ケース14の周方向の一部に、保護ケース14を裂け易くするための裂け位置制御溝31(特許文献1の図1ではスリット10)が軸線方向(長手方向、以下同じ)に連続して形成されており、裂け位置制御溝31を壁2側に向けて固定金具4により固定されている。
【0005】
このような構成にすると、地絡事故により接続部10内の圧力が急上昇した場合、保護ケース14が裂け位置制御溝31に沿って裂けるため、接続部の構成部材は壁2に向かって飛散するようになり、接続部10の上部等に配置された他のケーブルや設備の損傷を与えるおそれがないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−157353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図4のような従来の電力ケーブル接続部について地絡試験を実施した結果、次のような問題があることが判明した。すなわち、保護ケース14に裂け位置制御溝31を設けることにより地絡時における接続部の構成部材の飛散方向を制御することはできるが、保護ケース14が裂ける時の力で保護ケース14を固定していた固定金具4が破断し、固定金具4の一部が意図した飛散方向とは全く異なる方向へ飛散してしまうという現象が生じた。つまり、接続部を固定する固定金具の飛散方向は制御することができず、周囲のケーブルや設備等を損傷させる危険性があることが分かった。
【0008】
また、引用文献1には溝を十字状に形成することも記載されているが、溝を十字状にしただけでは上記危険性を回避することは困難である。
【0009】
上記の問題を解決する手法としては、固定金具を厚肉にして剛性を高めることが考えられるが、巨大な地絡エネルギーに耐えうる構造とするためには、接続部を固定するという本来の目的から外れて固定金具を過度に剛性の高い構造にしなければならず、重量増加により作業性が悪化すること及びコストが大幅にアップしてしまうという問題が生じる。
【0010】
したがって、本発明の目的は、地絡事故時に電力ケーブル接続部を固定する固定金具が破断するおそれの少ない電力ケーブル接続部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、電力ケーブル接続部での地絡事故は、電力ケーブルの外部半導電層の切断端部かそれより内側で発生することが殆どであるところ、従来の電力ケーブル接続部は保護ケースを固定する固定金具が接続部の中央部に位置していたため、地絡事故による接続部の破裂力を固定金具がもろに受けることになり、固定金具が破断する結果となっていたことを実験により確認し、固定金具の位置を変える構造とすることで上記問題を解決できる本発明に到った。
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成事項からなる。
[1]電力ケーブルの接続部本体を覆う保護ケースが固定部材で固定され、前記保護ケースの周方向の一部に、前記保護ケースの内圧上昇時に前記保護ケースが裂ける周方向の位置を制御する裂け位置制御溝が前記保護ケースの軸線方向に形成された電力ケーブル接続部において、前記保護ケースは、前記電力ケーブルの外部半導電層の切断端部よりも軸線方向の外側の位置で前記固定部材により固定されていることを特徴とする電力ケーブル接続部。
[2]前記裂け位置制御溝は、その一端(外端)が前記電力ケーブルの外部半導電層の切断端部と同じ位置か、当該位置より軸線方向の内側に位置するように形成されていることを特徴とする上記[1]記載の電力ケーブル接続部。
[3]前記裂け位置制御溝は、その一端(外端)が前記電力ケーブルの外部半導電層の切断端部の位置より軸線方向の外側で、かつ前記固定部材の位置より軸線方向の内側に位置するように形成されていることを特徴とする上記[1]記載の電力ケーブル接続部。
[4]前記裂け位置制御溝の前記一端(外端)とT字状に交わるように前記保護ケースの周方向に、前記保護ケースが裂ける軸線方向の範囲を規制する縁切り溝を形成したことを特徴とする上記[2]に記載の電力ケーブル接続部。
[5]前記縁切り溝は、前記裂け位置制御溝の前記一端(外端)から周方向の両側へそれぞれ中心角で45度ずつの範囲内で形成されていることを特徴とする上記[4]に記載の電力ケーブル接続部。
[6]前記保護ケースの端部に接続されたフランジと、前記フランジの接続工程において前記保護ケースに形成された保護ケース焼鈍し部とを有し、前記裂け位置制御溝は、その他端(内端)が前記フランジから離隔した位置になるように、かつ前記保護ケース焼鈍し部に位置するように形成されていることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の電力ケーブル接続部。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地絡事故時に電力ケーブル接続部を固定する固定金具が破断するおそれの少ない電力ケーブル接続部を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)は本発明の第1の実施形態に係る電力ケーブル接続部の側面図であり、(B)は同接続部の断面図である。
【図2】図1及び図3の電力ケーブル接続部における裂け位置制御溝の形を示す断面図である。
【図3】(A)は本発明の第2の実施形態に係る電力ケーブル接続部の側面図であり、(B)は同接続部の断面図である。
【図4】(A)は従来の電力ケーブル接続部の側面図であり、(B)は同接続部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔本発明の第1の実施形態〕
図1の(A)は本発明の第1の実施形態に係る電力ケーブル接続部の側面図であり、(B)は同接続部の断面図である。図1において、先に説明した図4と同一部分には同一符号を付してある。なお、1aは電力ケーブル1の導体、1bは絶縁層、1cは外部半導電層、1dは半導電テープ巻き層、1eは金属シースである。また、16は接続部絶縁体12(ゴムユニット)の両端の谷埋め導電テープ巻き層、17は谷埋め絶縁テープ巻き層16の外側に巻かれた絶縁テープ巻き層である。電力ケーブル接続部10は、上記テープ巻き層16、17を有し、導体接続部11と接続部絶縁体12とからなる接続部本体13、接続部本体13を覆う保護ケース14、接続部本体13と保護ケース14の間に充填された防水コンパウンド15等の構成部材から構成されている。
【0016】
この電力ケーブル接続部10は、保護ケースが第一の保護ケース14a、第二の保護ケース14b、第三の保護ケース14cで構成され、第一の保護ケース14aと第二の保護ケース14bは接続部21で接続され、第二の保護ケース14bと第三の保護ケース14cは両側の電力ケーブル1、1の遮蔽層を電気的に縁切りする絶縁筒18を介して接続されている。
【0017】
第一の保護ケース14aと第二の保護ケース14bは、接続部本体13を覆っている。第三の保護ケース14cと絶縁筒18は省略される場合もある。
【0018】
第一の保護ケース14aと第二の保護ケース14bは、電力ケーブル1の外部半導電層1cの切断端部(図1中の位置S)より軸線方向の外側の位置で固定金具4により把持されている。固定金具4に限られず、他の固定部材を使用することもできる。固定金具4の位置は、位置Sより軸線方向の外側の位置であれば特に限定されるものではないが、位置Sから5〜250mm外側の位置であることが好ましく、10〜200mm外側の位置であることがより好ましい。
なお、本発明の実施の形態の説明において、「軸線方向の外側」とは軸線方向に電力ケーブル接続部中央から離れる側をいい、「軸線方向の内側」とは軸線方向に電力ケーブル接続部中央に近付く側をいう。
【0019】
第一の保護ケース14aと第二の保護ケース14bの周方向の一部の外周面には、保護ケース14a、14bの内圧上昇時に保護ケース14a、14bが裂ける周方向の位置を制御する裂け位置制御溝31が保護ケース14a、14bの軸線方向に形成されている。保護ケース14a、14bのそれぞれに形成された裂け位置制御溝31は、軸線方向に一直線上にあることが好ましい。また、裂け位置制御溝31は、複数本形成してもよく、保護ケース14a、14bの内周面に形成してもよい。
【0020】
保護ケース14a、14bに形成された裂け位置制御溝31は、それぞれのその一端(以下、外端という)が電力ケーブル1の外部半導電層1cの切断端部(図1中の位置S)より軸線方向の若干内側に位置するように形成されている。外端が固定金具4の位置まで延びていないこと、すなわち、外端が固定金具4から離れていれば(好ましくは10mm以上離れていること)、その位置は特に限定されるものではないが、外端が位置Sと同じ位置か、当該位置より軸線方向の内側に位置することが好ましく、位置Sと同じ位置か、位置Sから100mm以内の内側の位置であることがより好ましい。
【0021】
また、裂け位置制御溝31の接続部21側の他端(以下、内端という)を、接続部21から15mm〜20mm以上離して形成することが望ましい。接続部21は、通常、銅管(保護ケース)の端部を拡径して接続することにより構成されるため、保護ケース14a、14bの端部まで溝31を設けると、端部において地絡事故時に裂け易く、かつ円周方向へ拡がり易くなり、接続部の構成材料の飛散方向を制御する働きが損なわれるおそれがある。
【0022】
また、上記外端とT字状に交わるように保護ケース14a、14bの周方向に、保護ケース14a、14bが裂ける軸線方向の範囲を規制する縁切り溝32が形成されている。
【0023】
縁切り溝32は、裂け位置制御溝31の上記外端から周方向の両側へそれぞれ中心角で45度ずつの範囲内で形成されていることが好ましい。縁切り溝32の周方向の長さが短すぎると、裂け位置制御溝31に沿う保護ケース14a、14bの裂けが固定金具4側へ進展するのを阻止する働きが弱くなり、また周方向の長さが長すぎると、地絡事故時に接続部の構成部材の飛散方向を制御する働きが損なわれるおそれがある。上記の範囲内に形成すると、保護ケース14a、14bの裂けが固定金具4側へ進展するのを効率的に阻止できると共に、地絡事故時に接続部の構成部材の飛散方向をより確実に制御することができる。
【0024】
また、裂け位置制御溝31の断面形状は、図2に示すように、四角形にすることが好ましく、例えば、保護ケース14a、14bの厚さPが3mmの場合、裂け位置制御溝31の深さQは1mm程度(厚さPの30%程度)、溝幅Rは1.5mm程度(厚さPの50%程度)にすることが好ましい。断面形状を四角形にすることにより、応力集中しやすい角部が2ヶ所形成されるため、裂け位置制御溝31が速やか、かつ一直線上に裂ける効果が得られやすい。
縁切り溝32の断面形状についても同様である。
【0025】
(第1の実施形態の効果)
電力ケーブル接続部での地絡事故は、電力ケーブル1の外部半導電層1cの切断端部(図1中の位置S)かそれより内側で発生するが、この電力ケーブル接続部は、接続部保護ケース14a、14bを把持し固定する固定金具4を、電力ケーブルの外部半導電層1cの端部位置Sより外側に位置させたため、固定金具4が接続部の破裂力をもろに受けるおそれがなくなる。
【0026】
したがって、本実施形態によれば、地絡事故時に電力ケーブル接続部を固定する固定金具が破断するおそれの少ない電力ケーブル接続部を提供することができる。
【0027】
また、軸線方向の裂け位置制御溝31を、その外端が電力ケーブルの外部半導電層1cの切断端部(図1中の位置S)と同じ位置か、当該位置より軸線方向の内側に位置するように形成すると共に、裂け位置制御溝31の外端とT字状に交わるように周方向に縁切り溝32を形成したため、保護ケース14a、14bの破裂範囲が縁切り溝32によって規制され、固定金具4にまで広がり難くなる。
【0028】
したがって、本実施形態によれば、電力ケーブル接続部10の構成部材の飛散方向を制御できると共に、接続部の地絡事故による破裂力で固定金具4が破断、飛散するのを抑制して周囲の他のケーブルや設備等の損傷を防ぐことができる電力ケーブル接続部を提供することができる。
【0029】
〔本発明の第2の実施形態〕
図3の(A)は本発明の第2の実施形態に係る電力ケーブル接続部の側面図であり、(B)は同接続部の断面図である。図3において、先に説明した図4及び図1と同一部分には同一符号を付してある。なお、1aは電力ケーブル1の導体、1bは絶縁層、1cは外部半導電層、1dは半導電テープ巻き層、1eは金属シースである。また、16は接続部絶縁体12(ゴムユニット)の両端の谷埋め導電テープ巻き層、17は谷埋め絶縁テープ巻き層16の外側に巻かれた絶縁テープ巻き層である。電力ケーブル接続部10は、上記テープ巻き層16、17を有し、導体接続部11と接続部絶縁体12とからなる接続部本体13、接続部本体13を覆う保護ケース14、接続部本体13と保護ケース14の間に充填された防水コンパウンド15等の構成部材から構成されている。
【0030】
この電力ケーブル接続部10は、保護ケースが第一の保護ケース14a、第二の保護ケース14b、第三の保護ケース14cで構成され、第一の保護ケース14aと第二の保護ケース14bはフランジ22aで接続され、第二の保護ケース14bと第三の保護ケース14cは両側の電力ケーブル1、1の遮蔽層を電気的に縁切りする絶縁筒18を介して接続されている。
【0031】
第一の保護ケース14aと第二の保護ケース14bは、接続部本体13を覆っている。第三の保護ケース14cと絶縁筒18は省略される場合もある。
【0032】
第一の保護ケース14aと第二の保護ケース14bは、それぞれの内側の端部にフランジ22aが接続されており、そのフランジ22aの接続工程において高温にさらされ焼鈍し状態となることで形成された強度の弱い保護ケース焼鈍し部22bを有している。保護ケース焼鈍し部22bは、他の保護ケースの部位、例えば固定金具4による固定部位付近に比べ強度が弱く裂けやすい。この為、保護ケース内の圧力上昇時、焼鈍し部が速やかに裂け、接続部内部の圧力を開放することができ、保護ケースが裂ける軸線方向の範囲を規制できる。
【0033】
固定金具4の位置については、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0034】
第一の保護ケース14aと第二の保護ケース14bの周方向の一部の外周面には、保護ケース14a、14bの内圧上昇時に保護ケース14a、14bが裂ける周方向の位置を制御する裂け位置制御溝31が保護ケース14a、14bの軸線方向に形成されている。保護ケース14a、14bのそれぞれに形成された裂け位置制御溝31は、軸線方向に一直線上にあることが好ましい。また、裂け位置制御溝31は、複数本形成してもよく、保護ケース14a、14bの内周面に形成してもよい。
【0035】
保護ケース14a、14bに形成された裂け位置制御溝31は、それぞれの外端が電力ケーブル1の外部半導電層1cの切断端部(図3中の位置S)位置より軸線方向の外側に位置するとともに、固定金具4の位置より軸線方向の内側に位置するように形成されている。外端が固定金具4の位置まで延びていないこと、すなわち、外端が固定金具4から離れた位置(好ましくは10mm以上離れていること)にあることが重要である。
【0036】
また、裂け位置制御溝31は、フランジ22a側の内端が保護ケース14a、14bに形成された保護ケース焼鈍し部22bの位置に形成されるが、そのフランジ22aの接続箇所から離れた位置に形成されることになる。その離隔距離はフランジ22a側から10mm〜50mmの範囲内で離れるように形成されることが好ましい。裂け位置制御溝31の内端がフランジ22aの接続箇所から離れすぎると、強度が比較的弱い保護ケース焼鈍し部22bの範囲から離れるため、裂け位置制御溝31に沿う保護ケース14a、14bの裂けが固定金具4側へ進展するのを阻止する働きが弱くなり、また裂け位置制御溝31の内端がフランジ22aの接続箇所の際まで達した場合、接続箇所自体に溝加工を施してしまい気密性を損ねてしまうおそれがある。上記の範囲内で離れるように形成すると、保護ケース14a、14bの裂けが固定金具4側へ進展するのを効率的に阻止できると共に、地絡事故時に接続部の構成部材の飛散方向をより確実に制御することができる。
【0037】
また、第1の実施形態と同様に縁切り溝32を設けてもよいが、第2の実施形態においては、保護ケース焼鈍し部22bが存在し、裂け位置制御溝31をその内端が上記範囲内の位置となるように形成しているため、第1の実施形態の場合に比べてその必要性は低い。
【0038】
また、裂け位置制御溝31の断面形状は、第1の実施形態と同様、図2に示すように、四角形にすることが好ましく、例えば、保護ケース14a、14bの厚さPが3mmの場合、裂け位置制御溝31の深さQは1mm程度(厚さPの30%程度)、溝幅Rは1.5mm程度(厚さPの50%程度)にすることが好ましい。断面形状を四角形にすることにより、応力集中しやすい角部が2ヶ所形成されるため、裂け位置制御溝31が速やか、かつ一直線上に裂ける効果が得られやすい。
【0039】
(第2の実施形態の効果)
電力ケーブル接続部での地絡事故は、電力ケーブル1の外部半導電層1cの切断端部(図3中の位置S)かそれより内側で発生するが、この電力ケーブル接続部は、接続部保護ケース14a、14bを把持し固定する固定金具4を、電力ケーブルの外部半導電層1cの端部位置Sより外側に位置させたため、固定金具4が接続部の破裂力をもろに受けるおそれがなくなる。
【0040】
したがって、本実施形態によれば、地絡事故時に電力ケーブル接続部を固定する固定金具が破断するおそれの少ない電力ケーブル接続部を提供することができる。
【0041】
また、軸線方向の裂け位置制御溝31を、それぞれの外端が電力ケーブル1の外部半導電層1cの切断端部(図3中の位置S)位置より軸線方向の外側に位置するとともに、固定金具4の位置より軸線方向の内側に位置するように形成し、かつそれぞれの内端が保護ケース14a、14bに接続しているフランジ22aの接続箇所から離れた位置になるように、かつ保護ケース14a、14bの保護ケース焼鈍し部22bに位置するように形成したことにより、接続部内の圧力上昇時、強度の弱い保護ケース焼鈍し部22bが速やかに破裂し圧力を放出することで、保護ケース14a、14bの破裂範囲を規制し、固定金具4にまで広がり難くなる。
【0042】
したがって、本実施形態によれば、電力ケーブル接続部10の構成部材の飛散方向を制御できると共に、接続部の地絡事故による破裂力で固定金具4が破断、飛散するのを抑制して周囲の他のケーブルや設備等の損傷を防ぐことができる電力ケーブル接続部を提供することができる。
【符号の説明】
【0043】
1:電力ケーブル、1a:導体、1b:絶縁層、1c:外部半導電層、1d:半導電テープ巻き層、1e:金属シース
2:壁、3:支持金具、4:固定金具
10:電力ケーブル接続部
11:導体接続部、12:接続部絶縁体、13:接続部本体
14,14a〜14c:保護ケース、15:防水コンパウンド
16:谷埋め導電テープ巻き層、17:絶縁テープ巻き層、18:絶縁筒
21:接続部、22a:フランジ、22b:保護ケース焼鈍し部
31:裂け位置制御溝、32:縁切り溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルの接続部本体を覆う保護ケースが固定部材で固定され、前記保護ケースの周方向の一部に、前記保護ケースの内圧上昇時に前記保護ケースが裂ける周方向の位置を制御する裂け位置制御溝が前記保護ケースの軸線方向に形成された電力ケーブル接続部において、
前記保護ケースは、前記電力ケーブルの外部半導電層の切断端部よりも軸線方向の外側の位置で前記固定部材により固定されていることを特徴とする電力ケーブル接続部。
【請求項2】
前記裂け位置制御溝は、その一端(外端)が前記電力ケーブルの外部半導電層の切断端部と同じ位置か、当該位置より軸線方向の内側に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の電力ケーブル接続部。
【請求項3】
前記裂け位置制御溝は、その一端(外端)が前記電力ケーブルの外部半導電層の切断端部の位置より軸線方向の外側で、かつ前記固定部材の位置より軸線方向の内側に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の電力ケーブル接続部。
【請求項4】
前記裂け位置制御溝の前記一端(外端)とT字状に交わるように前記保護ケースの周方向に、前記保護ケースが裂ける軸線方向の範囲を規制する縁切り溝を形成したことを特徴とする請求項2に記載の電力ケーブル接続部。
【請求項5】
前記縁切り溝は、前記裂け位置制御溝の前記一端(外端)から周方向の両側へそれぞれ中心角で45度ずつの範囲内で形成されていることを特徴とする請求項4に記載の電力ケーブル接続部。
【請求項6】
前記保護ケースの端部に接続されたフランジと、前記フランジの接続工程において前記保護ケースに形成された保護ケース焼鈍し部とを有し、前記裂け位置制御溝は、その他端(内端)が前記フランジから離隔した位置になるように、かつ前記保護ケース焼鈍し部に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力ケーブル接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−217475(P2011−217475A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81744(P2010−81744)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(501304803)株式会社ジェイ・パワーシステムズ (89)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【Fターム(参考)】