説明

電力伝達用絶縁回路および電力変換装置

【課題】入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、スイッチング損失を低減することが可能な電力伝達用絶縁回路および電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力伝達用絶縁回路101は、スイッチ素子Z1およびZ2を含み、スイッチ素子Z1の第1端およびスイッチ素子Z2の第1端において受けた電力を蓄電素子C1に供給するための入力スイッチ部21と、スイッチ素子Z3およびZ4を含み、蓄電素子C1に蓄えられた電力を出力するための出力スイッチ部22と、蓄電素子C1の充電電流に基づいてスイッチ素子Z1およびスイッチ素子Z2をオフするタイミングを決定する動作、および蓄電素子C1の放電電流に基づいてスイッチ素子Z3およびスイッチ素子Z4をオフするタイミングを決定する動作の少なくとも一方を行なうための制御部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力伝達用絶縁回路および電力変換装置に関し、特に、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する電力伝達用絶縁回路および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭の交流電力を用いて電気自動車(EV:Electric Vehicle)およびプラグイン方式のハイブリッドカー(HV:Hybrid Vehicle)等の駆動用の主電池を充電するための電力変換装置が開発されている。
【0003】
このようなEV等の主電池への充電を目的とするものではないが、交流電力を直流電力に変換する電源装置用絶縁回路の一例が、たとえば、特許第3595329号公報(特許文献1)に記載されている。すなわち、この電源装置用絶縁回路は、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、上記整流回路から供給される直流電流に残存する脈流成分を低減する第1のコンデンサと、上記第1のコンデンサから供給される直流電流のプラス側およびマイナス側を同時に開閉する第1のスイッチ回路と、上記第1のスイッチ回路から供給される電流を蓄積する第2のコンデンサと、上記第2のコンデンサから供給される直流電流のプラス側およびマイナス側を同時に開閉する第2のスイッチ回路と、上記第2のスイッチ回路から供給される電流を保持するとともに負荷側に放出する第3のコンデンサとを備える。また、ONとなる時間がOFFとなる時間よりも短く設定された方形波によって構成されるコントロール信号φ1、および上記コントロール信号φ1と相補的にONするとともにON時間がOFF時間よりも短く設定されたコントロール信号φ2を生成するゲートコントロール回路を備える。上記コントロール信号φ1により上記第1のスイッチ回路の開閉を行い、上記コントロール信号φ2により上記第2のスイッチ回路の開閉を行なう。このような構成により、大きな容積を占める電源トランスを使用することなく交流電圧を直流電圧に変換し、かつ交流電源側と負荷側とを電気的に絶縁することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3595329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電源装置用絶縁回路では、第1のスイッチ回路における各スイッチ素子をオンすると、第2のコンデンサへ充電電流が流れ、電荷が蓄積され始める。そして、第2のコンデンサを通して充電電流が流れている状態で上記各スイッチ素子をオフした場合には、充電電流と上記各スイッチ素子の両端電圧との積に基づく大きなスイッチング損失が発生してしまう。
【0006】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、スイッチング損失を低減することが可能な電力伝達用絶縁回路および電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電力伝達用絶縁回路は、第1端および第2端を有する蓄電素子と、第1端、および上記蓄電素子の第1端と電気的に接続された第2端を有する第1のスイッチ素子、ならびに第1端、および上記蓄電素子の第2端と電気的に接続された第2端を有する第2のスイッチ素子を含み、上記第1のスイッチ素子の第1端および上記第2のスイッチ素子の第1端において受けた電力を上記蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、上記蓄電素子の第1端に接続された第1端、および第2端を有する第3のスイッチ素子ならびに上記蓄電素子の第2端に接続された第1端、および第2端を有する第4のスイッチ素子を含み、上記蓄電素子に蓄えられた電力を出力するための出力スイッチ部と、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子のオン・オフを制御するための制御部とを備え、上記制御部は、上記蓄電素子の充電電流に基づいて上記第1のスイッチ素子および上記第2のスイッチ素子をオフするタイミングを決定する動作、および上記蓄電素子の放電電流に基づいて上記第3のスイッチ素子および上記第4のスイッチ素子をオフするタイミングを決定する動作の少なくとも一方を行なう。
【0008】
このように、蓄電素子の充電電流または放電電流を監視する構成により、これらの電流が略ゼロになるタイミングを常時検出し、これらの電流が略ゼロになったタイミングにおいて各スイッチ素子をオフすることができる。これにより、スイッチング損失を低減して電力効率を向上させながら、各スイッチ素子の駆動周波数を最大化し、高速な動作が可能となる。また、蓄電素子のサイズを大きくする必要が無く、回路面積の増大を防ぐことができる。したがって、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、スイッチング損失を低減することができる。
【0009】
好ましくは、上記電力伝達用絶縁回路は、さらに、上記蓄電素子の充電電流および放電電流を測定するための電流検出部を備え、上記制御部は、上記電流検出部による測定結果に基づいて上記タイミングを決定する。
【0010】
このように、蓄電素子を通して流れる電流を直接監視する構成により、たとえば各蓄電素子の両端電圧を測定して当該電流が略ゼロになるタイミングを算出する構成と比べて、当該タイミングを正確に得ることができる。また、当該タイミングを簡易な処理で取得することができるため、スイッチ制御を迅速に行なうことができる。また、蓄電素子用の電流センサを設ける構成により、1つの電流センサで、蓄電素子の充電電流が略ゼロになるタイミング、および蓄電素子の放電電流が略ゼロになるタイミングを検出することができる。
【0011】
好ましくは、上記制御部は、上記入力スイッチ部における各上記スイッチ素子をオンし、かつ上記出力スイッチ部における各上記スイッチ素子をオフする第1の期間と、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフし、かつ上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオンする第2の期間とを順番に繰り返し、上記制御部は、上記第1の期間から上記第2の期間へ遷移する際に上記第1のスイッチ素子および上記第2のスイッチ素子をオフするタイミングを上記蓄電素子の充電電流に基づいて決定する動作、および上記第2の期間から上記第1の期間へ遷移する際に上記第3のスイッチ素子および上記第4のスイッチ素子をオフするタイミングを上記蓄電素子の放電電流に基づいて決定する動作の少なくとも一方を行なう。
【0012】
このような構成により、電力伝達用絶縁回路の入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する動作において、スイッチング損失を低減することができる。
【0013】
より好ましくは、上記制御部は、上記第1の期間と、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子および上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフする第3の期間と、上記第2の期間と、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子および上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフする第4の期間とをこの順番で繰り返し、上記制御部は、上記第1の期間から上記第3の期間へ遷移する際に上記第1のスイッチ素子および上記第2のスイッチ素子をオフするタイミングを上記蓄電素子の充電電流に基づいて決定する動作、および上記第2の期間から上記第4の期間へ遷移する際に上記第3のスイッチ素子および上記第4のスイッチ素子をオフするタイミングを上記蓄電素子の放電電流に基づいて決定する動作の少なくとも一方を行なう。
【0014】
このように、デッドタイムを設ける構成により、電力伝達用絶縁回路の入力側および出力側間の絶縁を確実に確保することができる。
【0015】
好ましくは、上記制御部は、上記蓄電素子の充電電流に基づいて上記第1のスイッチ素子および上記第2のスイッチ素子をオフするタイミングを決定する動作、および上記蓄電素子の放電電流に基づいて上記第3のスイッチ素子および上記第4のスイッチ素子をオフするタイミングを決定する動作の両方を行なう。
【0016】
このように、蓄電素子の充電電流が略ゼロになるタイミングにおいて入力スイッチ部における各スイッチ素子をオフする動作、および蓄電素子の放電電流が略ゼロになるタイミングにおいて出力スイッチ部における各スイッチ素子をオフする動作の両方を行なう構成により、電力伝達用絶縁回路におけるスイッチング損失を大幅に低減することができる。
【0017】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電力変換装置は、交流電力を直流電力に変換して負荷に供給するための電力変換装置であって、受けた交流電力を整流するための整流部と、上記整流部および上記負荷間を絶縁しながら、上記整流部によって整流された電力を上記負荷に伝達するための電力伝達用絶縁回路とを備え、上記電力伝達用絶縁回路は、第1端および第2端を有する蓄電素子と、上記整流部と上記蓄電素子の第1端との間に接続された第1のスイッチ素子および上記整流部と上記蓄電素子の第2端との間に接続された第2のスイッチ素子を含み、上記整流部によって整流された電力を上記蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、上記蓄電素子の第1端に接続された第1端、および第2端を有する第3のスイッチ素子ならびに上記蓄電素子の第2端に接続された第1端、および第2端を有する第4のスイッチ素子を含み、上記蓄電素子に蓄えられた電力を出力するための出力スイッチ部と、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子のオン・オフを制御するための制御部とを備え、上記制御部は、上記蓄電素子の充電電流に基づいて上記第1のスイッチ素子および上記第2のスイッチ素子をオフするタイミングを決定する動作、および上記蓄電素子の放電電流に基づいて上記第3のスイッチ素子および上記第4のスイッチ素子をオフするタイミングを決定する動作の少なくとも一方を行なう。
【0018】
このように、蓄電素子の充電電流または放電電流を監視する構成により、これらの電流が略ゼロになるタイミングを常時検出し、これらの電流が略ゼロになったタイミングにおいて各スイッチ素子をオフすることができる。これにより、スイッチング損失を低減して電力効率を向上させながら、各スイッチ素子の駆動周波数を最大化し、高速な動作が可能となる。また、蓄電素子のサイズを大きくする必要が無く、回路面積の増大を防ぐことができる。したがって、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、スイッチング損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、スイッチング損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路によるスイッチング動作を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路による電力伝達動作を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路において、制御部がキャパシタ電流に基づくスイッチ制御を行なわないと仮定した場合におけるゲート駆動信号とキャパシタ電流とを示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路におけるゲート駆動信号とキャパシタ電流とを示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路の構成を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路における各キャパシタの電圧波形を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
<第1の実施の形態>
[構成および基本動作]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【0023】
図1を参照して、電力変換装置201は、電力伝達用絶縁回路101と、整流部51とを備える。電力伝達用絶縁回路101は、キャパシタC0〜C2と、入力スイッチ部21と、出力スイッチ部22と、制御部14と、電流検出部15とを含む。入力スイッチ部21は、スイッチ素子Z1,Z2を含む。出力スイッチ部22は、スイッチ素子Z3,Z4を含む。
【0024】
電力変換装置201は、交流電源301から供給された交流電力を直流電力に変換して負荷302に供給する。負荷302は、たとえば、EVおよびプラグイン方式のHV等の駆動用の主電池である。
【0025】
整流部51は、たとえば、ダイオードブリッジを含み、交流電源301から受けた交流電力を全波整流して電力伝達用絶縁回路101へ出力する。
【0026】
電力伝達用絶縁回路101において、スイッチ素子Z1は、キャパシタC0の第1端T11と電気的に接続された第1端T1、およびキャパシタC1の第1端T13と電気的に接続された第2端T2を有する。スイッチ素子Z2は、キャパシタC0の第2端T12と電気的に接続された第1端T3、およびキャパシタC1の第2端T14と電気的に接続された第2端T4を有する。スイッチ素子Z3は、キャパシタC1の第1端T13と電気的に接続された第1端T5、およびキャパシタC2の第1端T15と電気的に接続された第2端T6を有する。スイッチ素子Z4は、キャパシタC1の第2端T14と電気的に接続された第1端T7、およびキャパシタC2の第2端T16と電気的に接続された第2端T8を有する。
【0027】
キャパシタC0は、整流部51によって整流された電力を蓄える。入力スイッチ部21は、スイッチ素子Z1の第1端T1およびスイッチ素子Z2の第1端T3において受けた電力すなわちキャパシタC0に蓄えられた電力をキャパシタC1に供給する。出力スイッチ部22は、キャパシタC1に蓄えられた電力をキャパシタC2に供給する。キャパシタC2に蓄えられた電力は、放電されて負荷302に供給される。
【0028】
制御部14は、ゲート駆動信号G1〜G4をスイッチ素子Z1〜Z4に出力することにより、スイッチ素子Z1〜Z4のオンおよびオフをそれぞれ切り替える。電力伝達用絶縁回路101は、制御部14のスイッチ制御により、整流部51および負荷302間を絶縁しながら、キャパシタC0に蓄えられた電力を負荷302に伝達する。
【0029】
電流検出部15は、たとえばホール素子であり、キャパシタC1と直列に接続される。電流検出部15は、キャパシタC1を通して流れるキャパシタ電流IC、すなわちキャパシタC1の充電電流および放電電流を測定する。
【0030】
[動作]
次に、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路が電力伝達および故障検出を行なう際の動作について図面を用いて説明する。
【0031】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路によるスイッチング動作を示す図である。
【0032】
図2を参照して、まず、制御部14は、期間T1において、スイッチ素子Z1をオンし、スイッチ素子Z2をオンし、スイッチ素子Z3をオフし、スイッチ素子Z4をオフする。これにより、キャパシタC0に蓄えられた電荷が放電され、放電された電荷がキャパシタC1に蓄えられる。スイッチ素子Z3およびZ4がオフされていることにより、整流部51および負荷302間の絶縁が確保される。
【0033】
次に、制御部14は、期間T2において、スイッチ素子Z1〜Z4をオフする。これにより、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間の絶縁を確保するためのデッドタイムが設けられる。すなわち、入力スイッチ部21における各スイッチおよび出力スイッチ部22における各スイッチを介して電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間、すなわち整流部51および負荷302間が短絡することを防ぐことができる。
【0034】
次に、制御部14は、期間T3において、スイッチ素子Z1をオフし、スイッチ素子Z2をオフし、スイッチ素子Z3をオンし、スイッチ素子Z4をオンする。これにより、キャパシタC1に蓄えられた電荷が放電され、放電された電荷がキャパシタC2に蓄えられる。スイッチ素子Z1およびZ2がオフされていることにより、整流部51および負荷302間の絶縁が確保される。
【0035】
次に、制御部14は、期間T4において、スイッチ素子Z1〜Z4をオフする。これにより、期間T2と同様に、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間の絶縁を確保するためのデッドタイムが設けられる。
【0036】
ここで、期間T1〜T4において、キャパシタC1は整流部51からの電力により充電されており、また、キャパシタC2に蓄えられた電力は放電されて負荷302に供給されている。また、期間T2およびT4においては、キャパシタC1における電荷の移動はない。
【0037】
そして、制御部14は、これら期間T1、期間T2、期間T3および期間T4をこの順番で繰り返すことにより、整流部51と協働して、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間を絶縁しながら、交流電源301からの交流電力を直流電力に変換して負荷302に供給する。
【0038】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路による電力伝達動作を示す図である。
【0039】
図3を参照して、電力伝達用絶縁回路101では、入力スイッチ部21における各スイッチ素子をオンし、かつ出力スイッチ部22における各スイッチ素子をオフすることにより、キャパシタC1を充電する動作と、入力スイッチ部21における各スイッチ素子をオフし、かつ出力スイッチ部22における各スイッチ素子をオンすることにより、キャパシタC1を放電する動作とを交互に繰り返すことにより、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間を絶縁しながら、交流電源301からの電力を負荷302に伝達する。
【0040】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路において、制御部がキャパシタ電流に基づくスイッチ制御を行なわないと仮定した場合におけるゲート駆動信号とキャパシタ電流とを示す図である。
【0041】
ゲート駆動信号G1〜G4に対するキャパシタ電流ICの波形は、理想的には図4に示すようになる。
【0042】
タイミングTAにおいて、キャパシタ電流ICすなわちキャパシタC1の充電電流が流れているときにゲート駆動信号G1およびG2を論理ローレベルにしてスイッチ素子Z1およびZ2をオフした場合には、キャパシタ電流ICとスイッチ素子Z1およびZ2の両端電圧との積に基づく大きなスイッチング損失が発生する。
【0043】
また、タイミングTBにおいて、キャパシタ電流ICすなわちキャパシタC1の放電電流が流れているときにゲート駆動信号G3およびG4を論理ローレベルにしてスイッチ素子Z3およびZ4をオフした場合には、キャパシタ電流ICとスイッチ素子Z3およびZ4の両端電圧との積に基づく大きなスイッチング損失が発生する。
【0044】
これに対して、電力伝達用絶縁回路101では、制御部14は、キャパシタC1の充電電流に基づいてスイッチ素子Z1およびスイッチ素子Z2をオフするタイミングを決定する動作、およびキャパシタC1の放電電流に基づいてスイッチ素子Z3およびスイッチ素子Z4をオフするタイミングを決定する動作を行なう。制御部14は、電流検出部15によるキャパシタ電流ICの測定結果に基づいてこれらのタイミングを決定する。
【0045】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路におけるゲート駆動信号とキャパシタ電流とを示す図である。
【0046】
図5を参照して、制御部14は、期間T1から期間T2へ遷移する際にスイッチ素子Z1およびスイッチ素子Z2をオフするタイミングをキャパシタC1の充電電流に基づいて決定する動作、および期間T3から期間T4へ遷移する際にスイッチ素子Z3およびスイッチ素子Z4をオフするタイミングをキャパシタC1の放電電流に基づいて決定する動作を行なう。
【0047】
より詳細には、制御部14は、キャパシタ電流ICが略ゼロ、すなわちキャパシタC1の充電が完了したタイミングTCで、ゲート駆動信号G1およびG2を論理ローレベルにしてスイッチ素子Z1およびZ2をオフする。
【0048】
また、制御部14は、キャパシタ電流ICが略ゼロ、すなわちキャパシタC1の放電が完了したタイミングTDで、ゲート駆動信号G3およびG4を論理ローレベルにしてスイッチ素子Z3およびZ4をオフする。
【0049】
ところで、特許文献1に記載の電源装置用絶縁回路では、第1のスイッチ回路における各スイッチ素子をオンすると、第2のコンデンサへ充電電流が流れ、電荷が蓄積され始める。そして、第2のコンデンサを通して充電電流が流れている状態で上記各スイッチ素子をオフした場合には、充電電流と上記各スイッチ素子の両端電圧との積に基づく大きなスイッチング損失が発生してしまう。
【0050】
また、キャパシタ電流ICが略ゼロになった後にスイッチ素子をオフする方法としては、ゲート駆動信号の周波数を低くする方法が考えられる。
【0051】
しかしながら、このような方法では、ゲート駆動信号の周波数が低くなることで電力伝達用絶縁回路101の出力電圧のリップルが大きくなるため、たとえば平滑用のキャパシタC2の容量を大きくする必要が生じる。そうすると、電力伝達用絶縁回路101におけるキャパシタのサイズが大きくなり、回路面積が大きくなってしまう。
【0052】
また、キャパシタ電流ICが略ゼロになるタイミングは、負荷302の動作状況および種類等によって変わるため、ゲート駆動信号G1〜G4の周波数を大幅に低くする必要が生じるか、または、キャパシタ電流ICが略ゼロになっていないタイミングでスイッチ素子をオフしてしまう可能性がある。
【0053】
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、制御部14は、キャパシタC1の充電電流に基づいてスイッチ素子Z1およびスイッチ素子Z2をオフするタイミングを決定する動作、およびキャパシタC1の放電電流に基づいてスイッチ素子Z3およびスイッチ素子Z4をオフするタイミングを決定する動作を行なう。
【0054】
すなわち、電力伝達用絶縁回路101では、キャパシタ電流ICを監視する構成により、キャパシタ電流ICが略ゼロになるタイミングを常時検出し、キャパシタ電流ICが略ゼロになったタイミングにおいて各スイッチ素子をオフすることができる。これにより、スイッチング損失を低減して電力効率を向上させながら、各スイッチ素子の駆動周波数を最大化し、高速な動作が可能となる。また、キャパシタのサイズを大きくする必要が無く、回路面積の増大を防ぐことができる。
【0055】
したがって、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、スイッチング損失を低減することができる。
【0056】
また、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、電流検出部15は、キャパシタC1の充電電流および放電電流を測定する。そして、制御部14は、電流検出部15による測定結果に基づいて各スイッチ素子をオフするタイミングを決定する。
【0057】
このように、キャパシタC1を通して流れる電流を直接監視する構成により、たとえば各キャパシタの両端電圧を測定してキャパシタ電流ICが略ゼロになるタイミングを算出する構成と比べて、当該タイミングを正確に得ることができる。また、当該タイミングを簡易な処理で取得することができるため、スイッチ制御を迅速に行なうことができる。
【0058】
また、キャパシタC1用の電流センサを設ける構成により、1つの電流センサで、キャパシタC1の充電電流が略ゼロになるタイミング、およびキャパシタC1の放電電流が略ゼロになるタイミングを検出することができる。
【0059】
また、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、制御部14は、期間T1から期間T3へ遷移する際にスイッチ素子Z1およびスイッチ素子Z2をオフするタイミングをキャパシタC1の充電電流に基づいて決定する動作、および期間T3から期間T1へ遷移する際にスイッチ素子Z3およびスイッチ素子Z4をオフするタイミングをキャパシタC1の放電電流に基づいて決定する動作を行なう。
【0060】
このような構成により、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する動作において、スイッチング損失を低減することができる。
【0061】
より詳細には、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、制御部14は、期間T1から期間T2へ遷移する際にスイッチ素子Z1およびスイッチ素子Z2をオフするタイミングをキャパシタC1の充電電流に基づいて決定する動作、および期間T3から期間T4へ遷移する際にスイッチ素子Z3およびスイッチ素子Z4をオフするタイミングをキャパシタC1の放電電流に基づいて決定する動作を行なう。
【0062】
このように、デッドタイムを設ける構成により、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間の絶縁を確実に確保することができる。
【0063】
また、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、制御部14は、キャパシタC1の充電電流に基づいてスイッチ素子Z1およびスイッチ素子Z2をオフするタイミングを決定する動作、およびキャパシタC1の放電電流に基づいてスイッチ素子Z3およびスイッチ素子Z4をオフするタイミングを決定する動作の両方を行なう。
【0064】
このように、キャパシタC1の充電電流が略ゼロになるタイミングにおいて入力スイッチ部21における各スイッチ素子をオフする動作、およびキャパシタC1の放電電流が略ゼロになるタイミングにおいて出力スイッチ部22における各スイッチ素子をオフする動作の両方を行なう構成により、電力伝達用絶縁回路101におけるスイッチング損失を大幅に低減することができる。
【0065】
なお、制御部14は、キャパシタC1の充電電流が略ゼロになるタイミングにおいて入力スイッチ部21における各スイッチ素子をオフする動作、およびキャパシタC1の放電電流が略ゼロになるタイミングにおいて出力スイッチ部22における各スイッチ素子をオフする動作の少なくとも一方を行なう構成であれば、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、スイッチング損失を低減する、という本発明の目的を達成することが可能である。
【0066】
また、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、キャパシタC1用の電流センサを設ける構成であるとしたが、これに限定するものではない。電流の検出精度が問題にならなければ、キャパシタC1用の電流センサの代わりに、キャパシタC0用の電流センサおよびキャパシタC2用の電流センサを設ける構成であってもよい。
【0067】
また、電力伝達用絶縁回路101では、キャパシタC0により、整流部51によって整流された電力が平滑化されるが、整流部51によって整流された電力を平滑化するためのキャパシタが整流部51に設けられる場合には、電力伝達用絶縁回路101においてキャパシタC0を設けない構成が可能となる。ただし、キャパシタC0を設けることにより、電力伝達用絶縁回路101への入力電流のリップルを防ぎ、回路動作の安定化を図るという効果が得られる。
【0068】
また、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路は、キャパシタC0〜C2を備える構成であるとしたが、キャパシタに限らず、コイル(インダクタ)等の他の蓄電素子を備える構成であってもよい。
【0069】
また、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、制御部14は、期間T1〜T4を繰り返す構成であるとしたが、これに限定するものではない。期間T2およびT4は理想的には設ける必要は無く、制御部14が期間T1および期間T3を順番に繰り返す構成であればよい。
【0070】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0071】
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路と比べてキャパシタ電流の測定方法を変更した電力伝達用絶縁回路に関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路と同様である。
【0072】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路の構成を示す図である。
【0073】
図6を参照して、電力変換装置202は、電力伝達用絶縁回路102と、整流部51とを備える。電力伝達用絶縁回路102は、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路と比べて、電流検出部15の代わりに出力電圧検出部10,11,12を含む。
【0074】
出力電圧検出部10は、スイッチ素子Z1の第1端T1およびスイッチ素子Z2の第1端T3間の電圧V0すなわちキャパシタC0の両端電圧V0を検出する。出力電圧検出部11は、キャパシタC1の両端電圧V1を検出する。出力電圧検出部12は、キャパシタC2の両端電圧V2を検出する。
【0075】
制御部14は、出力電圧検出部10によって検出されたキャパシタC0の両端電圧V0、出力電圧検出部11によって検出されたキャパシタC1の両端電圧V1、および出力電圧検出部12によって検出されたキャパシタC2の両端電圧V2に基づいて、キャパシタC1の充電電流が略ゼロになるタイミング、およびキャパシタC1の放電電流が略ゼロになるタイミングを取得する。
【0076】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路における各キャパシタの電圧波形を概略的に示す図である。
【0077】
図7を参照して、キャパシタC1の充電電流が略ゼロになるタイミングである期間T1の終了間際では、電圧V0および電圧V1の差が小さくなる。これを利用して、制御部14は、出力電圧検出部10の検出結果および出力電圧検出部11の検出結果に基づいて、キャパシタC1の充電電流が略ゼロになるタイミングを取得することが可能である。
【0078】
また、キャパシタC1の放電電流が略ゼロになるタイミングである期間T3の終了間際では、電圧V1および電圧V2の差が小さくなる。これを利用して、制御部14は、出力電圧検出部11の検出結果および出力電圧検出部12の検出結果に基づいて、キャパシタC1の放電電流が略ゼロになるタイミングを取得することが可能である。
【0079】
その他の構成および動作は第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0080】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
10,11,12 出力電圧検出部
14 制御部
15 電流検出部
21 入力スイッチ部
22 出力スイッチ部
51 整流部
101,102 電力伝達用絶縁回路
201,202 電力変換装置
301 交流電源
302 負荷
C0〜C2 キャパシタ
Z1,Z2,Z3,Z4 スイッチ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端および第2端を有する蓄電素子と、
第1端、および前記蓄電素子の第1端と電気的に接続された第2端を有する第1のスイッチ素子、ならびに第1端、および前記蓄電素子の第2端と電気的に接続された第2端を有する第2のスイッチ素子を含み、前記第1のスイッチ素子の第1端および前記第2のスイッチ素子の第1端において受けた電力を前記蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、
前記蓄電素子の第1端に接続された第1端、および第2端を有する第3のスイッチ素子ならびに前記蓄電素子の第2端に接続された第1端、および第2端を有する第4のスイッチ素子を含み、前記蓄電素子に蓄えられた電力を出力するための出力スイッチ部と、
前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子のオン・オフを制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、前記蓄電素子の充電電流に基づいて前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子をオフするタイミングを決定する動作、および前記蓄電素子の放電電流に基づいて前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子をオフするタイミングを決定する動作の少なくとも一方を行なう、電力伝達用絶縁回路。
【請求項2】
前記電力伝達用絶縁回路は、さらに、
前記蓄電素子の充電電流および放電電流を測定するための電流検出部を備え、
前記制御部は、前記電流検出部による測定結果に基づいて前記タイミングを決定する、請求項1に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項3】
前記制御部は、前記入力スイッチ部における各前記スイッチ素子をオンし、かつ前記出力スイッチ部における各前記スイッチ素子をオフする第1の期間と、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフし、かつ前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオンする第2の期間とを順番に繰り返し、
前記制御部は、前記第1の期間から前記第2の期間へ遷移する際に前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子をオフするタイミングを前記蓄電素子の充電電流に基づいて決定する動作、および前記第2の期間から前記第1の期間へ遷移する際に前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子をオフするタイミングを前記蓄電素子の放電電流に基づいて決定する動作の少なくとも一方を行なう、請求項1または請求項2に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の期間と、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子および前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフする第3の期間と、前記第2の期間と、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子および前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフする第4の期間とをこの順番で繰り返し、
前記制御部は、前記第1の期間から前記第3の期間へ遷移する際に前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子をオフするタイミングを前記蓄電素子の充電電流に基づいて決定する動作、および前記第2の期間から前記第4の期間へ遷移する際に前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子をオフするタイミングを前記蓄電素子の放電電流に基づいて決定する動作の少なくとも一方を行なう、請求項3に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項5】
前記制御部は、前記蓄電素子の充電電流に基づいて前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子をオフするタイミングを決定する動作、および前記蓄電素子の放電電流に基づいて前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子をオフするタイミングを決定する動作の両方を行なう、請求項1から請求項4のいずれかに記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項6】
交流電力を直流電力に変換して負荷に供給するための電力変換装置であって、
受けた交流電力を整流するための整流部と、
前記整流部および前記負荷間を絶縁しながら、前記整流部によって整流された電力を前記負荷に伝達するための電力伝達用絶縁回路とを備え、
前記電力伝達用絶縁回路は、
第1端および第2端を有する蓄電素子と、
前記整流部と前記蓄電素子の第1端との間に接続された第1のスイッチ素子および前記整流部と前記蓄電素子の第2端との間に接続された第2のスイッチ素子を含み、前記整流部によって整流された電力を前記蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、
前記蓄電素子の第1端に接続された第1端、および第2端を有する第3のスイッチ素子ならびに前記蓄電素子の第2端に接続された第1端、および第2端を有する第4のスイッチ素子を含み、前記蓄電素子に蓄えられた電力を出力するための出力スイッチ部と、
前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子のオン・オフを制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、前記蓄電素子の充電電流に基づいて前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子をオフするタイミングを決定する動作、および前記蓄電素子の放電電流に基づいて前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子をオフするタイミングを決定する動作の少なくとも一方を行なう、電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−157162(P2012−157162A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14017(P2011−14017)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】