説明

電力供給車両

【課題】外部機器への電力供給が可能なハイブリット自動車において、供給用電力が蓄電された蓄電池内の電力を適切に維持すること。
【解決手段】給電システム100では、外部機器200の使用予定時間が設定入力されると、外部機器200の使用予定電力量に基づいて、高圧バッテリー120の目標充電率を決定する。走行開始後は、高圧バッテリー120の残存充電率を監視し、残存充電率が目標充電率の下限値以上である場合はモーター走行を許可する。残存充電率が目標充電率の下限値未満となった場合、発電機を駆動させるとともに、モーター走行を停止し、残存充電率が目標充電率の上限値以上となると、発電機の駆動を停止するとともに、再度モーター走行を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に駆動される発電機の発電エネルギーまたは車両の回生エネルギーによって充電される蓄電装置を有し、前記車両の停止中に前記蓄電装置から前記車両外部の外部機器へ電力供給する電力供給車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関と電動機とを搭載し、その一方または両方で車輪を駆動する電動車両が知られている。これらの電動車両は、走行中に蓄電装置の残存充電率(残存充電量)が低下した場合は、車両に搭載された発電機で発電し、蓄電装置の残存充電率を維持するよう制御されている。たとえば、下記特許文献1では、車両が走行する経路の標高情報を取得して、経路に登板区間がある場合には、その区間を登りきれるだけの電力を残しながら(必要な場合は発電しながら)走行する技術が開示されている(たとえば、下記特許文献1参照)。
【0003】
また、近年は、発電効率の良い商用電力源からの電力を取り入れ、電動車両の蓄電装置を充電することで電動機による走行範囲を広げ、内燃機関の運転機会をより減らして二酸化炭素削減を達成する技術が開発されている。このような商用電力源を利用する電動車両は、通常の電動車両に比べ大型の蓄電装置を搭載している。
【0004】
さらに、近年、電動車両に搭載された大型の蓄電装置内の電力を利用して、商用電力の供給できない場所でも電化製品を使用可能とする技術が開発されている。このような技術を用いると、たとえば、車両での移動先や停電時に電化製品を使用することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−354612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、このような大型蓄電装置を積む車両であっても、蓄電装置の残存充電率(残存充電量)が低下した場合は、車両に搭載された発電機で発電し、蓄電装置の残存充電率を維持するよう内燃機関の運転を開始する。車両での移動先で外部機器を使用する場合、外部機器の使用時には車両が走行した後なので、バッテリーの残存充電率が十分に確保することができないという問題点が挙げられる。バッテリーの残存充電率が十分でない状態で外部機器を使用しようとすると、発電機による発電が開始されるが、この発電機はエンジンによって駆動されるので、騒音や振動、排気ガスなどが発生し、外部機器を使用しようとしている環境においては、好ましくない可能性がある。
【0007】
上述した特許文献1は、走行用電力を確保する技術であるため、走行後の外部機器の使用については考慮されていない。また、一般的なハイブリット自動車においても、常時一定の充電率は確保されているものの、確保する充電率(目標充電率)は固定値であるため、外部機器用の電力を確保することはできておらず、たとえば電子レンジ等の電力使用量の大きな外部機器を使用すると内燃機関が作動し充電を開始する頻度が多くなる。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、自車両に搭載され蓄電装置から外部機器への電力供給が可能であり、蓄電装置内の蓄電量を適切に維持できる電力供給車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる電力供給車両は、車両に搭載される内燃機関に駆動される発電機の発電エネルギーまたは車両の回生エネルギーによって充電される蓄電装置を有し、前記車両の停止中に前記蓄電装置から前記車両外部の外部機器へ電力供給する電力供給車両であって、前記車両は外部機器への供給予定電力量を設定する供給予定電力量設定手段と、前記車両の走行中における前記蓄電装置の目標充電量を前記供給予定電力量に基づいて決定する決定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、外部機器の使用予定電力量に基づいて走行中に蓄電装置を充電しておくので、車両停止中に車両外部の外部機器に電力供給している間も内燃機関を運転する必要がなく、必要以上に発電機を稼働することもない。このため、騒音や振動を気にすることなく、これらの外部機器を使用できる。さらに内燃機関から排気ガスが発生することを防止できるので、密閉された空間においてこれら車両および外部機器を用いることができ、場所を選ばず電力供給が可能となる。
【0011】
請求項2の発明によれば、蓄電装置の電力量に余力がある際は、電動機による走行が可能となり、内燃機関の運転機会を減らすことができるため、二酸化炭素を減らすことができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、使用する外部機器の種類を指定することによって、外部機器が使用する電力量から目標充電量を算出し、それに応じて充電するので、内燃機関の不必要な運転を減らし二酸化炭素を減らすことができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、外部機器の種類とともに、その使用時間を入力するので、さらに精度よく供給予定電力量を算出可能であり、内燃機関の不必要な運転をさらに削減することができる。
【0014】
請求項5の発明によれば、蓄電装置が外部電源から充電可能であるため、内燃機関による発電機会を抑制することができる。また、目標充電量までは電動機による走行も可能であるため、内燃機関の運転機会をさらに減少させることができ、排出する二酸化炭素を大幅に減らすことができる。
【0015】
請求項6の発明によれば、商用電力へ変換する装置を車載するので、当該車両があればどこでも商用電力を用いる外部機器の使用が可能となり、災害時などにも場所を選ばず電力の供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態にかかる給電システム100の構成を示す説明図である。
【図2】車両ECU140と車両各部との接続を示すブロック図である。
【図3】車両ECU140の機能的構成を示ブロック図である。
【図4】決定部303による目標充電率の算出方法を模式的に示す説明図である。
【図5】給電システム100による発電制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】高圧バッテリー120の残存充電率の一例を示すグラフである。
【図7】給電インターフェースを外付けにした場合の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる電力供給車両の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる給電システム100の構成を示す説明図である。実施の形態にかかる給電システム100は、プラグインハイブリット自動車である車両110(電力供給車両)に搭載された高圧バッテリー120(蓄電装置)から、外部機器200に給電して、外部機器200を使用するためのシステムである。これにより、たとえば、車両110で移動した先や停電中などに外部機器200を使用することが可能となる。
【0019】
高圧バッテリー120には、外部電源から供給される供給電力と、車両110内に搭載された発電機130または車両110の回生エネルギーで発電された発電電力と、の2種類の電力が蓄電される。供給電力は、充電リッド111に接続された充電ケーブル112を介して外部電源から供給され、充電器113を介して高圧バッテリー120に蓄電される。
【0020】
発電電力は、エンジン131(内燃機関)を用いて発電機130を駆動することによって発電される。エンジン131は、燃料タンク137に蓄積されたガソリンによって駆動される。また、発電電力は、車両110の回生エネルギーによって、モーター133によって発電された電力であってもよい。発電機130で発電された発電電力は、DC−DCインバータ132を介して高圧バッテリー120に蓄電される。また、発電機130で発電された発電電力は、同じくDC−DCインバータ132を介して12Vバッテリー121にも蓄電される。12Vバッテリー121に蓄電された電力は、後述する車両ECU140やインターフェース150の制御に用いられる。
【0021】
高圧バッテリー120に蓄電された電力は、上述したように外部機器200にも使用されるが、本来的には車両110を駆動するための電力である。この場合、高圧バッテリー120に蓄電された電力は、DC−DCインバータ132を介してモーター133に供給され、モーター133が回転する。モーター133の回転によって駆動機構134が駆動され、車軸135を回転させることによってタイヤ136が回転し、車両110が走行する。また、タイヤ136は、エンジン131の駆動によって回転させてもよい。以下、モーター133の駆動によってタイヤ136を回転させる場合を「モーター走行」、エンジン131の駆動によってタイヤ136を回転させる場合を「エンジン走行」という。
【0022】
高圧バッテリー120に蓄電された電力を外部機器200に使用する場合、高圧バッテリー120とDC−ACインバータ161(変換装置)を介して設けられたコンセント口162に、外部機器200の電源プラグ163を挿入することによって電力の供給を受けることが可能である。DC−ACインバータ161は、高圧バッテリー120内の電力を、外部機器200で使用可能な形(商用電力)に変換する。コンセント口162からは直流(AC)100Vの電流が供給される。DC−ACインバータ161の動作は、インターフェース150によって制御される。
【0023】
車両ECU140は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
【0024】
図2は、車両ECU140と車両各部との接続を示すブロック図である。図1では図示を省略したが、車両ECU140は、エンジン131、発電機130、高圧バッテリー120、モーター133、インターフェース150、DC−DCインバータ132とインターフェース部を介して接続され、それら各部との間で情報の授受をおこない、各部の制御を司る。
【0025】
また、車両ECU140は、ユーザからの設定入力を受け付けるユーザインターフェース210と接続される。ユーザインターフェース210は、たとえば、車両に搭載されたナビゲーション装置やユーザの保有する携帯電話端末、スマートフォンなどを用いることができる。車両ECU140とユーザインターフェース210との接続は有線および無線のいずれでもよいが、無線の場合は図示しないレシーバなどを用いてデータをやり取りする。
【0026】
ユーザインターフェース210には、外部機器200の種類および使用予定時間が入力される。使用予定時間としては、たとえば、コンセント口164の使用予定時間、すなわち、DC−ACインバータ161の使用予定時間を入力する。また、たとえば、具体的な使用機器(たとえば、テレビ、パソコン、ラジカセなど)を挙げて、それぞれの使用予定時間を入力してもよい。
【0027】
さらに、車両ECU140は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することによって、図3に示す設定入力部301(選択手段、入力手段)、算出部302(算出手段)、決定部303(決定手段)、判断部304(判断手段)、駆動部305を実現する。
【0028】
図3は、車両ECU140の機能的構成を示ブロック図である。設定入力部301は、外部機器200の種類および使用予定時間の設定入力を受け付ける。設定入力部301は、たとえば、ユーザインターフェース210を介して、外部機器200の種類および使用予定時間の設定入力を受け付ける。なお、外部機器200の使用予定時間として、DC−ACインバータ161(コンセント口164)の使用予定時間を設定してもよい。この方法であれば、外部機器200の種類や使用個数を特定しなくてもよいため、ユーザからの設定入力が簡単におこなうことができる。また、ユーザから外部機器200の使用予定時間ではなく、使用予定電力量が入力された場合は、入力された使用予定電力量をそのまま設定すればよい。なお、外部機器の使用予定電力量は、車両110から外部機器への供給予定電力量となる。すなわち、以下の説明において、「使用予定電力量」は「供給予定電力量」と同意である。
【0029】
算出部302は、外部機器200の使用電力量を算出する。算出部302は、たとえば、設定入力部301で設定入力された使用予定時間に基づいて、外部機器200の使用電力量を算出する。この場合、算出部302は、外部機器200の最大出力値と使用予定時間との積を使用予定電力量として設定する。設定入力部301および算出部302によって、供給予定電力量設定手段が実現される。
【0030】
決定部303は、車両110の走行中における高圧バッテリー120の目標充電率(または目標充電量)を、外部機器200へ供給する電力量(供給予定電力量)に基づいて決定する。決定部303は、たとえば、算出部302で算出された外部機器200の使用予定電力量が、高圧バッテリー120の蓄電容量に対して占める割合に基づいて目標充電率を決定する。より詳細には、決定部303は、高圧バッテリー120の蓄電容量に対して使用予定電力量が占める割合に、外部機器200の使用が予定されていない場合の高圧バッテリーの目標充電率を加算して、目標充電率を決定する。
【0031】
図4は、決定部303による目標充電率の算出方法を模式的に示す説明図である。まず、ユーザインターフェース210を介して外部機器200(ここでは、DC−ACインバータ161)の使用予定時間401が入力される。DC−ACインバータ161の最大出力値402は既知であるので、この最大出力値402と使用予定時間401とを掛け合わせることによって、使用予定電力量403を算出することができる(本実施の形態においては、この処理は算出部303がおこなう)。
【0032】
つぎに、高圧バッテリー120の蓄電容量404の値を用いて、使用予定電力量403を除算する。これにより、外部機器200の使用に用いられる電力量が高圧バッテリー120の蓄電容量に対して占める割合(占有率)405を算出することができる。つづいて、外部機器の使用が予定されていない場合(通常時)のバッテリーの目標充電率406を占有率405にたし合わせる。これにより、外部機器200の使用時の目標充電率407を決定することができる。
【0033】
なお、決定部303は、目標充電率を所定の幅を有する数値帯として決定する。これは、目標充電率に上限値および下限値を設定し、残存充電率が上限値および下限値の範囲内にあれば目標充電率を満たすとするものである。また、上述した通常時の目標充電率についても所定の幅を有する数値帯として設定されているものとする。
【0034】
図3の説明に戻り、判断部304は、高圧バッテリー120の残存充電率(残存充電量)に基づいて、モーター133による駆動力での走行を許可するか否かを判断する。判断部304は、たとえば、高圧バッテリー120の残存充電率を監視し、残存充電率が目標充電率より少なくなるまでは、モーター133による駆動力での走行を許可する。より詳細には、判断部304は、車両110の走行中に継続的に高圧バッテリー120から残存充電率の情報を取得し、残存充電率の値と目標充電率の下限値とを比較して、残存充電率の値が目標充電率の下限値以上であるかを判断する。判断部304は、残存充電率の値が目標充電率の下限値以上の場合は、モーター133による駆動力での走行を許可する。そして、残存充電率の値が目標充電率の下限値よりも小さくなった場合は、エンジン131による駆動力での走行に切り替えるとともに、駆動部305に発電機130の駆動を指示する。
【0035】
駆動部305は、残存充電率が目標充電率未満となった場合、発電機130を駆動させる。より詳細には、駆動部305は、残存充電率が目標充電率の下限値未満となった場合に発電機130を駆動し、残存充電率が目標充電率の上限値以上となる前に発電機130の駆動を停止させる。これにより、発電機130による過剰な発電を防止することができ、効率面および二酸化炭素排出面で有利な外部電源からの供給電力の使用割合を高めることができる。
【0036】
また、判断部304は、発電機130の駆動によって高圧バッテリー120の残存充電率が目標充電率の下限値以上となった場合は、再びモーター133による駆動力での走行を許可する。これにより、エンジン131の稼働時間を最小限にして、車両110からの二酸化炭素排出量も低減させることができる。
【0037】
図5は、給電システム100による発電制御処理の手順を示すフローチャートである。図5のフローチャートにおいて、給電システム100は、まず、ユーザインターフェース210を介して外部機器200の使用予定時間が入力されるまで待機する(ステップS501:Noのループ)。使用予定時間が入力されると(ステップS501:Yes)、給電システム100は、算出部302によって外部機器200の使用予定電力量を算出する(ステップS502)。
【0038】
つぎに、給電システム100は、決定部303によって外部機器200を使用する場合の目標充電率を決定する(ステップS503)。つづいて、給電システム100は、判断部304によって高圧バッテリー120の残存充電率を取得して(ステップS504)、残存充電率が目標充電率の下限値以上か否かを判断する(ステップS505)。
【0039】
残存充電率が目標充電率の下限値以上である場合(ステップS505:Yes)、判断部304は、モーター133による駆動力での走行(モーター走行)を許可する(ステップS506)。一方、残存充電率が目標充電率の下限値未満の場合は(ステップS505:No)、判断部304は、モーター走行を停止するとともに、駆動部305によって発電機130を駆動させる(ステップS507)。残存充電率が目標充電率の上限値より大きくなるまでは(ステップS508:Noのループ)、駆動部305によって発電機130の駆動が継続される。そして、残存充電率が目標充電率の上限値より大きくなると(ステップS508:Yes)、駆動部305は発電機130の駆動を停止するとともに、判断部304によって再度モーター走行が許可される(ステップS509)。
【0040】
給電システム100は、外部機器200の使用が開始されるまでは(ステップS510:No)、ステップS504に戻り、以降の処理をくり返す。そして、外部機器200の使用が開始されると(ステップS510:Yes)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0041】
図6は、高圧バッテリー120の残存充電率の一例を示すグラフである。図6のグラフにおいて、縦軸は残存充電率、横軸は時刻をそれぞれ示しており、時刻T0において走行を開始した場合の残存充電率の時間変化が示されている。縦軸には、通常時(外部機器200の使用を予定しない場合)の目標充電率Aおよび外部機器200を使用する場合の目標充電率Bが示されている。目標充電率Aおよび目標充電率Bは、それぞれ所定の幅を有する数値帯として設定されている。なお、使用下限Cとは、これ以上残存充電率が低下すると車両110の使用ができなくなる値である。
【0042】
図6には、系列Dおよび系列Eが示されている。系列Dおよび系列Eとでは、外部機器200の使用予定設定(図5のステップS501)のタイミングが異なる。系列Dでは、走行を開始して間もなく、残存充電率が比較的大きいタイミング(時刻TD1)で外部機器200の使用予定設定が行われている。一方、系列Eでは、走行を開始してある程度の時間が経過した後、残存充電率が比較的小さいタイミング(時刻TE3)で外部機器200の使用予定設定が行われている。
【0043】
系列Dでは、使用予定設定後、残存充電率が外部機器使用時の目標充電率Bの下限値となったタイミング(時刻TD2)で発電機130による発電が開始される。そして、残存充電率が目標充電率Bの上限値となると(時刻TD3)、発電機130が停止される。給電システム100では、このような処理をくり返して、残存充電率が目標充電率Bの範囲を保つようにしている。
【0044】
一方、系列Eでは、時刻TE1で残存充電率が通常時の目標充電率Aの下限値となっているため、発電機130による発電が開始され、残存充電率が目標充電率Aの上限値となると(時刻TE2)、発電機130が停止される。また、時刻TE3で外部機器200の使用予定設定が行われると、その時点の残存充電率が外部機器使用時の目標充電率Bの下限値を下回っているため、すぐに発電機130による発電が開始される。そして、残存充電率が目標充電率Bの上限値となると(時刻TE4)、発電機130が停止され、その後は残存充電率が目標充電率Bの範囲を保つように制御される。
【0045】
なお、図6では、系列Dおよび系列Eのいずれにおいても、外部機器200の使用予定設定を車両110の走行開始後におこなっているが、外部機器200の使用予定設定は車両110の走行を開始する前におこなってもよい。その場合は、走行開始直後から残存充電率が目標充電率Bの範囲を保つように制御される。
【0046】
以上説明したように、実施の形態にかかる給電システム100は、外部機器200の使用予定電力量に基づいて走行中に高圧バッテリー120を充電しておくので、車両停止中に外部機器200に電力供給している間はエンジン131を運転する必要がなく、必要以上に発電機130を稼働することない。このため、騒音や振動を気にすることなく、これらの外部機器200を使用することができる。さらにエンジン131から排気ガスが発生することを防止できるので、密閉された空間においてこれら車両および外部機器200を用いることができ、場所を選ばず電力供給が可能となる。
【0047】
また、給電システム100は、高圧バッテリー120の電力量に余力がある際は、モーター133による走行が可能となり、エンジン131の運転機会を減らすことができるため、二酸化炭素を減らすことができる。また、外部機器200が使用する電力量から目標充電量を算出し、それに応じて充電するので、エンジン131の不必要な運転を減らし二酸化炭素を減らすことができる。
【0048】
また、給電システム100は、高圧バッテリー120が外部電源から充電可能であるため、エンジン131による発電機会を抑制することができ、さらに目標充電量まではモーター133による走行も可能であるため、エンジン131の運転機会がさらに減少することで、二酸化炭素を大幅に減らすことができる。また、給電システム100は、商用電力へ変換する装置を車載するので、当該車両があればどこでも商用電力を用いる外部機器200の使用が可能となり、災害時などにも場所を選ばず電力の供給が可能となる。
【0049】
なお、本実施の形態では、車両110の車体内に外部機器200への給電インターフェースを備えるものとしたが、給電インターフェースを独立した装置としてもよい。このような構成においても、本実施の形態にかかる給電システム100と同様の処理により、発電機の制御をおこなうことができる。
【0050】
図7は、給電インターフェースを外付けにした場合の構成例を示す説明図である。外付け給電インターフェース700は、車両800とのインターフェース701、DC−ACインバータ702、コンセント口703によって構成される。インターフェース701には、車両800からの高圧電流が供給される。インターフェース701の駆動用電力は、車両800のシガーライターから供給される。車両800からの高圧電流は、DC−ACインバータ702を介してコンセント口703から外部機器200へと供給される。
【符号の説明】
【0051】
100……給電システム、110……車両、111……充電リッド、112……充電ケーブル、113……充電器、120……高圧バッテリー、121……12Vバッテリー、130……発電機、131……エンジン、132……DC−DCインバータ、133……モーター、134……駆動機構、135……車軸、136……タイヤ、137……燃料タンク、150……インターフェース、161……DC−ACインバータ、162……コンセント口、163……電源プラグ、164……コンセント口、200 ……外部機器、210……ユーザインターフェース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される内燃機関に駆動される発電機の発電エネルギーまたは前記車両の回生エネルギーによって充電される蓄電装置を有し、前記車両の停止中に前記蓄電装置から前記車両外部の外部機器へ電力供給する電力供給車両であって、
外部機器への供給予定電力量を設定する供給予定電力量設定手段と、
前記車両の走行中における前記蓄電装置の目標充電量を前記供給予定電力量に基づいて決定する決定手段と、
を有することを特徴とする電力供給車両。
【請求項2】
前記車両は、
前記蓄電装置から供給される電力によって駆動可能な電動機と、
前記蓄電装置の残存充電量に基づいて、前記電動機による駆動力での走行を許可するか否かを判断する判断手段と、をさらに有し、
前記判断手段は、前記残存充電量が前記目標充電量を上回るときは、前記電動機による駆動力での走行を許可することを特徴とする請求項1に記載の電力供給車両。
【請求項3】
前記供給予定電力量設定手段は、前記外部機器の種類を選択する選択手段と、
前記選択手段からの情報により供給予定電力量を算出する算出手段と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電力供給車両。
【請求項4】
前記供給予定電力量設定手段は、前記選択手段により選択した外部機器の使用時間を入力する入力手段を有することを特徴とする請求項3に記載の電力供給車両。
【請求項5】
前記蓄電装置は、外部電源からの供給電力によっても充電可能なことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の電力供給車両。
【請求項6】
前記蓄電装置に充電された電力を前記外部機器へ供給する電力に変換する変換装置を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の電力供給車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107519(P2013−107519A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254576(P2011−254576)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】