説明

電力制御装置

【課題】停電が復旧すると自動的に電磁接触器が閉路して負荷への電力供給を再開できる電力制御装置を提供すること。
【解決手段】 電磁接触器を介して電気機器に電力を供給する電力制御装置において、
前記電磁接触器が停電により開路した後、前記電磁接触器の制御系が動作中に復電したら自動的に閉路して負荷への電力供給を再開することを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力制御装置に関し、詳しくは、停電が復旧した時の負荷への電力供給再開制御に関するものである。
【0002】
たとえば液晶ドライバICテスタでは、ICテスタに商用電源を供給する電力制御装置として、複数系統のアラーム検知信号により電磁接触器を制御するとともに、アラーム系統や内部のコンピュータなどの主要部分を無停電電源装置(以下UPSという)でバックアップするように構成されている。
【0003】
図5は、従来の電力制御装置の一例を示すブロック図である。図5の電力制御装置10において、商用電源に接続されているMB(メインブレーカー)11がオンになると、PS(電源装置)12とMC(電磁接触器)13に交流電力が供給される。PS12は安全のための各種監視センサや緊急停止スイッチなどの複数のアラーム検知器よりなるアラーム検知系14に所定の直流電力を供給するが、MC13は自動的にはオンにならない。
【0004】
これは、MB11をオフ/オンする行為をアラームに対するリセットとみなし、リセットをしても自動的には電力が供給されない安全設計となっているためである。すなわち、リセットの後、MB11はオンで全てのアラーム検知系14が正常監視状態であれば、自動復帰型の手動スイッチ15を押下することでMC13がオンとなり、負荷である電気機器20とUPS16へ電力が供給される。
【0005】
電気機器20内のコンピュータ関連機器へはUPS16から出力される交流電力が供給され、停電などに対するバックアップ電源となる。また、UPS16から出力される交流電力はMB11から直接接続されているPS12にも供給され、停電時でも必要な所定期間アラーム検知系14が動作するように構成されている。
【0006】
アラーム検知系14は、前述の複数のアラーム検知器のいずれかが電気機器20における監視対象部分のアラーム状態を検出することにより、保持型スイッチ17を介してMC13をオフにする。
【0007】
ところで、MC13のオフは、MC13を構成する図示しない駆動コイルへの商用電源供給をMB11でオフすることにより行えるが、MC13はアラーム発生などでもオフになるのに対して、MC13のオンは手動スイッチ15の押下でのみ可能である。MC13がオンの状態でアラームが発生すると、保持型スイッチ17は自動的にMC13をオフにする。保持型スイッチ17は位置保持型であるため、MB11をオフ/オンするか停電によりPS12への電力供給が停止して停電が復旧するまでは手動スイッチ15の押下は無効になってしまう。
【0008】
また、MC13がオンの状態で停電が発生すると、MC13の駆動コイルに電流が流れなくなることでMC13はオフになってしまう。停電は電気機器20に起因しない事故なので保持型スイッチ17は作動しないが、停電が復旧した場合にMC13をオンにするためには改めて手動スイッチ15を押下する必要がある。
【0009】
特許文献1には、無停電電源装置を用いた電力制御装置の構成が記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開平5−252664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
すなわち、電気機器20に起因するアラームとは関係のない停電によってMC13がオフになった後に停電が復旧してもMC13が自動的にオンしないために、停電によりUPS16でコンピュータをバックアップしている最中に停電が復旧した場合やMC13がオフになる程度の瞬停であっても、手動スイッチ15の押下という手動操作によって電気機器20を立ち上げ直す必要がある。
【0012】
本発明は、このような課題を解決するものであり、停電が復旧すると自動的に電磁接触器が閉路して負荷への電力供給を再開できる電力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
電磁接触器を介して電気機器に電力を供給する電力制御装置において、
前記電磁接触器が停電により開路した後、前記電磁接触器の制御系が動作中に復電したら自動的に閉路して負荷への電力供給を再開することを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電力制御装置において、
前記電磁接触器の制御系は、無停電電源装置で駆動されることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の電力制御装置において、
前記負荷は、ICテスタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、停電が復旧すると自動的に電磁接触器が閉路して負荷への電力供給を再開できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、図5と共通する部分には同一符号を付けている。図1の電力制御装置10において、UPS16には自動スイッチ18の駆動部が接続されていて、その接点はUPS16が出力中は自動的にオン状態に保持されるものであり、手動スイッチ15の接点と並列に接続されている。
【0018】
図1の構成において、MC13がオンになっていて電気機器20に電力が供給されている正常状態とし、UPS16も正常運転中とすると、自動スイッチ18はオンになっている。このような正常状態で停電が発生すると、MC13はオフになるが、UPS16は設定された所定のバックアップ期間中はバッテリ運転により所定の出力を保持することになり、自動スイッチ18はオン状態を持続する。このUPS16によるバックアップ期間中に停電が復旧すれば、自動スイッチ18のオン接点は手動スイッチ15の接点と並列に接続されていることから、MC13は停電の復旧により自動的にオンになる。
【0019】
図2は、図1のスイッチ系統の具体的な接続例図である。MC13は、電路を開閉する図示しない主接点の他に、駆動用のMCコイル13aや制御用の補助接点13bなどで構成されている。手動スイッチ15は、押しボタン式スイッチ15aとリレーRL1で構成されている。リレーRL1のコイルRL1aはPS12に接続され、リレーRL1の接点RL1bは補助接点13bと並列に接続されている。
【0020】
接点17aは保持型スイッチ17の一部を構成するものであり、アラームが発生していない間はオン状態を保持し、いずれかのアラームが発生するとそれ以降はオフ状態を保持する。自動スイッチ18はたとえばリレーRL2で構成されている。リレーRL2のコイルRL2aはUPS16に接続され、リレーRL2の接点RL2bは押しボタン式スイッチ15aと並列に接続されている。
【0021】
MC13の制御系は、保持型スイッチ17の接点17aと制御用の補助接点13bと駆動用のMCコイル13aが直列接続されていて、MB11を介して出力される商用電源で駆動される。制御用の補助接点13bと並列接続されたリレーRL1の接点RL1bは、自動復帰型の押しボタン式スイッチ15aを押下したときのみオンになる。リレーRL1の接点RL1bがオンになるとMC13がオンになり、MC13の制御系は自己保持状態になる。そして、リレーRL2のコイルRL2aはUPS16に接続されているので、リレーRL2の接点RL2bはUPS16が出力している間はオンになる。
【0022】
MB11をオンにすると、アラームが発生していなければ保持型スイッチ17の接点17aはオンになり、MC13とリレーRL1の接点RL1bおよびリレーRL2の接点RL2bはオフになってMCコイル13aに電流は流れない。ボタン式スイッチ15aを押下すると、リレーRL1の接点RL1bがオンとなり、MCコイル13aに電流が流れてMC13がオンになってMC13の制御系は自己保持状態となる。
【0023】
図5に示す従来例のスイッチ系統の具体的な接続は、図2から、UPS16に接続されているリレーRL2のコイルRL2aと、押しボタン式スイッチ15aと並列に接続されているリレーRL2の接点RL2bを取り除いた状態になる。このような状態において、押しボタン式スイッチ15aから手を離すとリレーRL1がオフになり、停電によりMC13がオフになると停電が復旧しても再度押しボタン式スイッチ15aを押下しないかぎりMCコイル13aに電流は流れない。
【0024】
これに対し、図1の構成では自動スイッチ18として用いるリレーRL2のコイルRL2aをUPS16で駆動しているため、UPS16がバックアップ中であればボタン式スイッチ15aと並列に接続されているリレーRL2の接点RL2bはオンであり、その結果補助接点13bと並列に接続されているリレーRL1の接点RL1bもオンになる。したがって、この間に停電が復旧すればMCコイル13aに電流が流れてMC13は自動的にオンになる。
【0025】
なお、上記実施例では自動スイッチ18としてUPS16で直接駆動する交流リレーの例を示したが、UPS16の出力に接続されUPS16からの電力供給後に動作する既存のAC/DCコンバータの出力で駆動すれば、自動スイッチ18として直流リレーを用いることもできる。
【0026】
図3は図2に示したリレーRL2の接続の変形例であって、図2にリレーRL3を追加したものであり、図3の接続でも図2と同様の効果が期待できる。図3において、リレーRL2のコイルRL2aの一端とリレーRL3のコイルRL3aの一端はPS12の一端に並列接続され、リレーRL2のコイルRL2aの他端はリレーRL3の第1の接点RL3bを介してPS12の他端に接続され、リレーRL3のコイルRL3aの他端はMC13の第2の補助接点13cとリレーRL3の第2の接点RL3cとの並列回路を介してPS12の他端に接続されている。
【0027】
このような構成において、MC13の第2の補助接点13cがオンになるまではリレーRL3の第1の接点RL3bおよび第2の接点RL3cもオンにならないが、一旦MC13の第2の補助接点13cがオンになればPS12への電力供給が停止するまでリレーRL3の第1の接点RL3bおよび第2の接点RL3cはオンのままになり、図2のリレーRL2の接点RL2bもオン状態を続ける。このように図2の回路にリレーRL3を追加するだけで安価に実現できる。
【0028】
なお、図3の接続は、UPS16が無い構成の場合にも適用できる。すなわち、PS12の負荷率を低くして出力保持時間を長く設定することにより、MC13の接点保持時間以上の瞬停耐性が実現できる。
【0029】
図4は本発明の他の実施例の説明図であり、図2と共通する部分には同一の符号を付けている。図4では、アラームを検出していない正常動作時に、MC13をオフにする手動スイッチ(ACオフスイッチ)19を追加したものである。
【0030】
具体的には、手動スイッチ19は、押しボタン式スイッチ19aとリレーRL4で構成されている。すなわち、図2のPS12に接続されているリレーRL2の接点RL2bと押しボタン式スイッチ15aの並列回路とリレーRL1のコイルRL1aとの直列回路と並列に、リレーRL4のコイルRL4aと押しボタン式の常閉スイッチ15bの直列回路およびリレーRL4の接点RL4bと押しボタン式スイッチ19aの並列回路が直列接続されている。一方、MC13の制御系の補助接点13bとリレーRL1の接点RL1bの並列回路とMCコイル13aの間には、リレーRL4の常閉接点RL4cが接続されている。
【0031】
ここで、押しボタン式スイッチ19aを押下する場合は停電と異なり故意にMC13をオフにするので、アラーム発生時に準じて自動的にMC13がオンとならないことが条件となる。ただし、アラームでオフするのではないため、リセット無しでもMC13のオンが可能であり、手動スイッチ15が有効である。これを実現するために図2の接続に加えて、自動復帰型の押しボタン式スイッチ19aとリレーRL4を図4のように接続し、押しボタン式の常閉スイッチ15bを追加している。押しボタン式スイッチ19aの押下でリレーRL4の常閉接点RL4cが開となりMC13がオフになる。そして、リレーRL4の接点RL4bとリレーRL4のコイルRL4aが同時に自己保持状態になるので、押しボタン式スイッチ15aを押下した場合のみリレーRL4の常閉接点RL4cが閉となり、再度MC13をオンにできる。
【0032】
このようにMC13をオフにする手動スイッチ(ACオフスイッチ)が必要な場合は、自動復帰型手動スイッチ15を2接点形とし、リレーRL4を追加するだけで実現可能である。なお、図4の場合も、リレーRL2のコイルRL2aの駆動系に図3を採用することにより安価に実現できる。
【0033】
なお、上記実施例では、液晶ドライバICテスタの例について説明したが、各種の電気機器の電力制御装置としても有効である。
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、停電が復旧すると自動的に電磁接触器が閉路して負荷への電力供給を再開できる電力制御装置を提供することができ、ICテスタなどの電力制御装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1のスイッチ系統の具体的な接続例図である。
【図3】図2に示したリレーRL2の接続の変形例である。
【図4】本発明の他の実施例の説明図である。
【図5】従来の電力制御装置の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
10 電力制御装置
11 MB(メインブレーカー)
12 PS(電源装置)
13 MC(電磁接触器)
14 アラーム検知系
15 手動スイッチ
16 UPS(無停電電源装置)
17 保持型スイッチ
18 自動スイッチ
19 手動スイッチ(ACオフスイッチ)
20 電気機器(負荷)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁接触器を介して電気機器に電力を供給する電力制御装置において、
前記電磁接触器が停電により開路した後、前記電磁接触器の制御系が動作中に復電したら自動的に閉路して負荷への電力供給を再開することを特徴とする電力制御装置。
【請求項2】
前記電磁接触器の制御系は、無停電電源装置で駆動されることを特徴とする請求項1記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記負荷は、ICテスタであることを特徴とする請求項1または2に記載の電力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−296744(P2009−296744A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146381(P2008−146381)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】