説明

電力増幅装置

【課題】広い出力ダイナミックレンジに渡って高効率、低歪み、低雑音の特性を維持することができる電力増幅装置を提供する。
【解決手段】入力信号Vinは、LOGアンプ1と差分アンプ2に入力される。LOGアンプ1は、入力信号Vinを対数変換し、対数変換した信号Vを差分アンプ2と第1パワーアンプ3に出力する。差分アンプ2は、入力信号Vinと信号Vとの差分を求め、差分して得られた信号Vを第2パワーアンプ4に出力する。第1パワーアンプ3は、信号Vを電力増幅して合成器5に信号Vを出力し、第2パワーアンプ4は、信号Vを電力増幅して合成器5に信号Vを出力する。合成器5は、信号Vと信号Vとを合成して信号Voutを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LINC(Linear Amplification with Nonlinear Component)方式の電力増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の送信回路(例えば、特許文献1参照)では、入力信号はデルタシグマ変調器でデルタシグマ変調され、増幅器へ入力され、信号が増幅される。入力信号がデルタシグマ変調器で2値あるいは多値の電圧に変換されるため、増幅器の非線形性は問題とならない。したがって、増幅器には高効率アンプを使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−048703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の送信回路では、増幅器は、一定出力であれば、高効率、低歪み、低雑音の特性を維持できるが、出力が低下すると、効率、歪みまたは雑音特性が劣化してしまい、広い出力ダイナミックレンジに渡って良好な特性を維持することができない、という問題がある。また、PAPR(Peak-to-Average Power Ratio)が大きい64QAMなどで変調された無線信号を増幅する場合においては、無線信号が小さく入力される場合が多いため、無線信号が上述の増幅器で増幅されると歪んでしまう、という問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、信号の歪みを抑え、信号出力の質が高くなる電力増幅装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の電力増幅装置は、入力信号を対数変換し、対数変換された信号を出力するLOGアンプと、前記入力信号と前記LOGアンプで対数変換された信号との差分を出力する差分アンプと、前記LOGアンプで対数変換された信号を電力増幅する第1パワーアンプと、前記差分アンプから出力された信号を電力増幅する第2パワーアンプと、前記第1パワーアンプで電力増幅された信号と前記第2パワーアンプで電力増幅された信号とを合成する合成器とを備えること特徴とする。
【0007】
本発明の電力増幅装置は、前記第1パワーアンプの電源電圧を前記第2パワーアンプの電源電圧より低くすることが好ましい。
【0008】
また、本発明の電力増幅装置は、前記入力信号のピーク電力対平均電力比が大きい場合に、前記第1パワーアンプの電源電圧を前記第2パワーアンプの電源電圧より低くすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、信号の歪みを抑え、信号出力の質が高くなる電力増幅装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の電力増幅装置の実施の形態を示す回路構成図である。
【図2】第1パワーアンプ(第1PA)と第2パワーアンプ(第2PA)と合成器の出力電圧特性を示す図である。
【図3】図2に示す出力電圧特性をグラフに表した図である。
【図4】本発明の電力増幅装置と標準の電力増幅装置の消費電力特性を示す図である。
【図5】図4に示す消費電力特性をグラフに表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の電力増幅装置の回路構成図である。本実施の形態の電力増幅装置は、LINC(Linear Amplification using Nonlinear Component)方式の増幅装置である。図1に示す電力増幅装置は、LOGアンプ1と、差分アンプ2と、第1パワーアンプ3と、第2パワーアンプ4と、合成器5と、電源6と、電源7とにより構成される。
【0012】
LOGアンプ1は、信号を対数変換し、差分アンプ2は、2つの信号の差分を出力する。第1パワーアンプ3と第2パワーアンプ4とは、信号を電力増幅する同一特性の電力増幅器である。合成器5は、2つの信号を合成する。電源6は、第1パワーアンプ3に電源電圧を供給し、電源7は、第1パワーアンプ4に電源電圧を供給する。ここで、第1パワーアンプ3の電源電圧を第2パワーアンプ4の電源電圧より低くする。また、合成器5は、損失の少ないトランス方式を採用する。
【0013】
次に、本実施の形態の電力増幅装置の動作を説明する。入力信号Vinは、LOGアンプ1と差分アンプ2に入力される。LOGアンプ1は、入力信号Vinを対数変換し、対数変換された信号Vを差分アンプ2と第1パワーアンプ3に出力する。差分アンプ2は、入力信号Vinと信号Vとの差分を求め、差分して得られた信号Vを第2パワーアンプ4に出力する。第1パワーアンプ3は、信号Vを電力増幅して合成器5に信号Vを出力し、第2パワーアンプ4は、信号Vを電力増幅して合成器5に信号Vを出力する。合成器5は、信号Vと信号Vとを合成して信号Voutを出力する。
【0014】
図2は、第1パワーアンプ(第1PA)と第2パワーアンプ(第2PA)と合成器の出力電圧特性を示す図であり、図3は、図2に示す出力電圧特性をグラフに表したものである。図3において、横軸は入力信号Vin(V)を表し、縦軸は出力電圧(V)を表す。ここでVin1.5Vまでの場合は、第1パワーアンプ(第1PA)3は1.59Vまで出力する。また、同様に、第2パワーアンプ(第2PA)4は4.41Vまで出力する。したがって、合成器5は、Vout6.00Vまで出力する。そこで、パワーアンプを理想状態で駆動することを考えて、第1パワーアンプ3の電源電圧を1.59Vにし、第2パワーアンプ4の電源電圧を4.41Vにする。
【0015】
図4は、本実施の形態の電力増幅装置と標準の電力増幅装置の消費電力特性を示す図であり、図5は、図4に示す消費電力特性をグラフに表したものである。図5において、横軸は入力信号Vin(V)を表し、縦軸は消費電力(W)を表す。LINC方式を採用した本実施の形態の電力増幅装置を使用したときの消費電力をパワーNLと表示し、線形性の標準の電力増幅装置を使用したときの消費電力をパワーLと表示している。これらの図から、本実施の形態の電力増幅装置の消費電力は、標準の電力増幅装置よりも少ないことが分かる。また、図4に示すように、Vin0.1〜1.5Vに渡って、改善率は39〜46%であり、本実施の形態の電力増幅装置は、標準の電力増幅装置よりも平均で42%ほど消費電力が少なくなっている。
【0016】
上述のように、本実施の形態の電力増幅装置は、第1パワーアンプ3の電源電圧を第2パワーアンプ4の電源電圧より低くすることで、広い出力ダイナミックレンジに渡って第1パワーアンプ3と第2パワーアンプ4の合成出力の効率を改善できる。
【0017】
一般には合成器の損失が加わるために、本実施の形態の電力増幅装置は、入力信号が小さい場合に効率が改善できる。例えば、PAPR(Peak-to-Average Power Ratio:ピーク電力対平均電力比)が大きい64QAM(64 Quadrature Amplitude Modulation)などの変調出力は、信号が小さい場合が多いため、本実施の形態の電力増幅装置によれば、このような場合において、増幅時の効率を改善できることが十分期待できる。
【0018】
また、本実施の形態の電力増幅装置は、歪や雑音の発生が少なくなくなり、出力の質を高めることができる。
【符号の説明】
【0019】
1 LOGアンプ
2 差分アンプ
3 第1パワーアンプ
4 第2パワーアンプ
5 合成器
6、7 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を対数変換し、対数変換された信号を出力するLOGアンプと、
前記入力信号と前記LOGアンプで対数変換された信号との差分を出力する差分アンプと、
前記LOGアンプで対数変換された信号を電力増幅する第1パワーアンプと、
前記差分アンプから出力された信号を電力増幅する第2パワーアンプと、
前記第1パワーアンプで電力増幅された信号と前記第2パワーアンプで電力増幅された信号とを合成する合成器と、
を備えること特徴とする電力増幅装置。
【請求項2】
前記第1パワーアンプの電源電圧を前記第2パワーアンプの電源電圧より低くすることを特徴とする請求項1に記載の電力増幅装置。
【請求項3】
前記入力信号のピーク電力対平均電力比が大きい場合に、前記第1パワーアンプの電源電圧を前記第2パワーアンプの電源電圧より低くすることを特徴とする請求項1に記載の電力増幅装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−165054(P2012−165054A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21807(P2011−21807)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】