説明

電力変換制御装置

【課題】DC−DCコンバータの電力変換効率を向上させることが可能な電力変換制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置18は、DC−DCコンバータ12の出力電流が、DC−DCコンバータ12の電力変換効率が最大となる最大効率出力電流よりも大きい場合には、DC−DCコンバータ12の出力電圧を低下させ、DC−DCコンバータ12と低圧バッテリ14とから補機負荷16に電力を供給させる。制御装置18は、DC−DCコンバータ12の出力電流が最大効率出力電流よりも小さい場合には、DC−DCコンバータ12の出力電圧を増大させて、補機負荷16と低圧バッテリ14とに電力を供給させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC−DCコンバータを制御する電力変換制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧バッテリ(例えば36V等)と低圧バッテリ(例えば12V等)とを車両に搭載し
、高電圧で走行用モータを駆動するとともに低電圧で電装系等の補機を駆動することが提案されている。低圧バッテリの電圧が低下したとき等に、高圧バッテリの出力電圧をDC−DCコンバータで降圧し、低圧バッテリを充電する構成が採用されている。一般的に、DC−DCコンバータの電力変換効率は、DC−DCコンバータに対する入力電流及び入力電圧と出力電流及び出力電圧とに応じて変動する。
【0003】
下記の特許文献1には、DC−DCコンバータの入力段と出力段とにそれぞれ電流・電圧センサを設け、電流・電圧センサからの入出力電流・電圧に基づいて、マスターDC−DCコンバータとスレーブDC−DCコンバータとを制御する電源回路が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、補機に電力を供給する低圧バッテリの温度と補機の消費電力とに応じて、DC−DCコンバータを制御し、高圧バッテリの電圧を降圧して低圧バッテリに供給する電力装置が開示されている。
【0005】
また、下記の特許文献3には、36Vバッテリの電圧変動に対応するために、DC−DCコンバータをフィードフォーワード制御し、36Vバッテリの電圧を降圧して12Vバッテリに供給する装置が開示されている。
【0006】
また、下記の特許文献4には、記憶装置に記憶されている効率データを参照し、変換効率が所定値以上となる車両の状態及びタイミングにて、DC−DCコンバータを作動させる装置が開示されている。
【0007】
また、下記の特許文献5には、交流を直流に変換する手段と直流によってモータを駆動する手段との接続点に、二次電池システムが接続されたエアコンシステムが開示されている。このエアコンシステムにおいては、二次電池システムと交流を直流に変換する手段との間に、DC−DCコンバータが設けられている。そして、エアコンの負荷が高いときのみ、二次電池システムから電力を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−235252号公報
【特許文献2】特開2004−320877号公報
【特許文献3】特開2002−315313号公報
【特許文献4】特開2005−245086号公報
【特許文献5】特開平10−117448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば高圧バッテリの出力電圧をDC−DCコンバータで降圧し、電装系等の補機を駆動する場合がある。駆動すべき補機の種類や数によっては、DC−DCコンバータに高い負荷がかかり、DC−DCコンバータの電力変換効率が低下するおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、DC−DCコンバータの電力変換効率を向上させることが可能な電力変換制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1のバッテリと、車両に搭載された補機と、前記補機に接続され前記第1のバッテリよりも電圧が低い第2のバッテリと、に接続され、前記第1のバッテリからの入力電力を変換して出力電力を前記補機と前記第2のバッテリとのうち少なくとも一方に供給するDC−DCコンバータと、前記DC−DCコンバータの出力電流が、前記DC−DCコンバータの電力変換効率が最大となる最大効率出力電流よりも大きい場合には、前記DC−DCコンバータの出力電圧を低下させ、前記DC−DCコンバータと前記第2のバッテリとから前記補機に電力を供給させる制御手段と、を有することを特徴とする電力変換制御装置である。
【0012】
また、本発明に係る電力変換制御装置であって、前記制御手段は、前記DC−DCコンバータの出力電流が前記最大効率出力電流よりも小さい場合には、前記DC−DCコンバータの出力電圧を増大させて前記補機に電力を供給させつつ前記第2のバッテリに電力を供給させて前記第2のバッテリを充電させる、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る電力変換制御装置であって、前記制御手段は、前記DC−DCコンバータの出力電流が前記最大効率出力電流よりも小さく、前記第2のバッテリの充電率が所定値未満の場合に、前記DC−DCコンバータから前記第2のバッテリに電力を供給させて前記第2のバッテリを充電させる、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る電力変換制御装置であって、前記制御手段は、前記DC−DCコンバータの出力電流が前記最大効率出力電流よりも大きい場合には、前記DC−DCコンバータの出力電圧を前記第2のバッテリの出力電圧と等しくして、前記DC−DCコンバータと前記第2のバッテリとから前記補機に電力を供給させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、DC−DCコンバータの出力電流が最大効率出力電流よりも大きい場合には、DC−DCコンバータの出力電圧を低下させ、DC−DCコンバータと低圧バッテリとから補機に電力を供給することにより、DC−DCコンバータの電力変換効率を向上させることが可能となる。
【0016】
また、本発明によると、DC−DCコンバータの出力電流が最大効率出力電流よりも小さい場合には、DC−DCコンバータの出力電圧を増大させることにより、DC−DCコンバータの電力変換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る電力変換制御装置を示すブロック図である。
【図2】DC−DCコンバータの電力変換効率の特性を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電力変換制御装置を示すブロック図である。
【図4】DC−DCコンバータの電力変換効率の特性を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電力変換制御装置を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車両の駆動装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から図4を参照して、本発明の実施形態に係る電力変換制御装置について説明する。図1及び図3は、本発明の実施形態に係る電力変換制御装置を示すブロック図である。図2及び図4は、DC−DCコンバータの電力変換効率の特性を示す図である。
【0019】
図1及び図3には、本実施形態に係る回路が示されている。図1及び図3に示す回路は、例えばハイブリット車両や電気自動車等の車両に搭載される。高圧バッテリ10と低圧バッテリ14とが設けられ、高圧バッテリ10と低圧バッテリ14との間にDC−DCコンバータ12が接続されている。DC−DCコンバータ12と低圧バッテリ14とを接続する電力ラインから分岐して補機負荷16が接続されている。制御装置18は、DC−DCコンバータ12と低圧バッテリ14とに接続され、DC−DCコンバータ12と低圧バッテリ14とを制御する。
【0020】
高圧バッテリ10には、例えば36V等の充放電可能なバッテリが用いられる。高圧バッテリ10は、DC−DCコンバータ12を介して、低圧バッテリ14と補機負荷16とに電力を供給することが可能となっている。また、高圧バッテリ10は、図示しないインバータを介して図示しない走行用モータに接続されており、走行用モータに電力を供給する。なお、高圧バッテリ10が、第1のバッテリの一例に相当する。
【0021】
低圧バッテリ14には、高圧バッテリ10よりも電圧が低いバッテリが用いられる。低圧バッテリ14には、例えば12V等の充放電可能なバッテリが用いられる。低圧バッテリ14は、補機負荷16に電力を供給することが可能となっている。また、低圧バッテリ14は、DC−DCコンバータ12を介して高圧バッテリ10から電力を受けて充電され得る。なお、低圧バッテリ14が、第2のバッテリの一例に相当する。
【0022】
DC−DCコンバータ12は、制御装置18の制御の下で動作する複数のスイッチング素子を含んで構成されている。DC−DCコンバータ12は、高圧バッテリ10から供給された電圧を低圧に変換し、低圧バッテリ14と補機負荷16とに電力を供給する。
【0023】
補機負荷16は、車両に搭載される電装系等である。補機負荷16は、DC−DCコンバータ12を介して高圧バッテリ10から電力を受けて駆動する。または、補機負荷16は、低圧バッテリ14から電力を受けて駆動してもよい。または、補機負荷16は、高圧バッテリ10と低圧バッテリ14とから電力を受けて駆動してもよい。
【0024】
制御装置18は、DC−DCコンバータ12と低圧バッテリ14とに接続され、DC−DCコンバータ12と低圧バッテリ14とを制御する。例えば、制御装置18は、DC−DCコンバータ12の出力電圧が目標の出力電圧になるように、DC−DCコンバータ12のスイッチング素子のスイッチングを制御する。また、制御装置18は、低圧バッテリ14の電圧をモニタする。
【0025】
図2及び図4に、DC−DCコンバータ12の電力変換効率の特性を示す。横軸はDC−DCコンバータ12から出力される出力電流IOUTを示し、縦軸はDC−DCコンバータの電力変換効率Eを示す。図2に示すように、電力変換効率Eは山形の特性を有し、出力電流がIMAXのときに最大変換効率EMAXとなる。IMAXを最大効率出力電流と称することとする。電力変換効率の特性を示す電力変換効率データは、例えば制御装置18に予め記憶されている。
【0026】
次に、本実施形態に係る電力変換制御装置の動作について説明する。制御装置18は、DC−DCコンバータ12から出力される出力電圧VOUTが予め設定されたデフォルトの電圧値(初期電圧値)になるように、DC−DCコンバータ12のスイッチング素子のスイッチングを制御する。デフォルトの電圧値は、例えば車両に搭載されている機器等によって予め決定されており、例えば制御装置18に記憶されている。
【0027】
そして、制御装置18は、DC−DCコンバータ12から出力される出力電流IOUTに基づいて、DC−DCコンバータ12のスイッチング素子のスイッチングを制御する。具体的には、制御装置18は、DC−DCコンバータ12の出力電流IOUTと最大効率出力電流IMAXとを比較し、出力電流IOUTと最大効率出力電流IMAXとの大小関係に基づいてDC−DCコンバータ12を制御する。
【0028】
まず、図1及び図2を参照して、出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXよりも小さい場合について説明する。例えば図2に示すように、出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXよりも小さいIMの場合には、電力変換効率Eは最大変換効率EMAXよりも低いEMとなる。この場合、制御装置18は、DC−DCコンバータ12の電力変換効率Eが最大変換効率EMAXとなるように、DC−DCコンバータ12に対する電圧指令値を上げることにより、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTを増大させる。すなわち、制御装置18は、DC−DCコンバータ12の出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXとなるように、DC−DCコンバータ12のスイッチング素子のスイッチングを制御することにより、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTを増大させる。これにより、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTと出力電流IOUTとが増大し、出力電流IOUTはIMから最大効率出力電流IMAXとなる。DC−DCコンバータ12から出力された出力電流IOUTは、低圧バッテリ14と補機負荷16とに流れる。例えば図1に示すように、DC−DCコンバータ12から低圧バッテリ14に電流IBが流れ、DC−DCコンバータ12から補機負荷16に電流IRが流れる。出力電流IOUTは、電流IBと電流IRとの和である。DC−DCコンバータ12の出力電流IOUTが増大するため、低圧バッテリ14に供給される電流IBも増大する。そのため、低圧バッテリ14の充電に寄与する電流が増大することとなる。
【0029】
以上のように、DC−DCコンバータ12の出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXよりも小さい場合には、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTと出力電流IOUTとを増大させることにより、DC−DCコンバータ12の電力変換効率を向上させることが可能となる。すなわち、補機負荷16で消費される電力が比較的少ない場合には、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTと出力電流IOUTとを増大させることにより、DC−DCコンバータ12の電力変換効率を向上させることが可能となる。
【0030】
また、出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXよりも小さいIMの場合に、低圧バッテリ14の充電率(State Of Charge:SOC)に応じて、低圧バッテリ14を充電するか否かを決めてもよい。この場合、制御装置18は、低圧バッテリ14の充電率SOCをモニタし、充電率SOCが予め設定された第1の閾値未満の場合に、DC−DCコンバータ12から低圧バッテリ14に電流IBを供給させ、低圧バッテリ14を充電させる。すなわち、低圧バッテリ12の充電率SOCが少なく、充電する必要がある場合に、DC−DCコンバータ12から低圧バッテリ14の電流IBを供給して低圧バッテリ14を充電する。充電率SOCの第1の閾値は、制御装置18に予め記憶されていてもよいし、操作者が図示しない入力装置によって第1の閾値を入力するようにしてもよい。充電率SOCの第1の閾値は任意の値でよく、一例として50%であってもよいし、30%であってもよい。例えば、低圧バッテリ14の入力段(出力段)に図示しないスイッチを設け、低圧バッテリ12の充電率SOCが第1の閾値未満の場合に、制御装置18はそのスイッチをオン状態にし、DC−DCコンバータ12から低圧バッテリ14に電流IBを供給させる。すなわち、出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXよりも小さく、低圧バッテリ14の充電率SOCが第1の閾値未満の場合は、DC−DCコンバータ12から補機負荷16に電流IRを供給するとともに、DC−DCコンバータ12から低圧バッテリ14に電流IBを供給する。一方、制御装置18は、低圧バッテリ14の充電率SOCが第1の閾値以上の場合には、スイッチをオフ状態とすることにより、DC−DCコンバータ12から低圧バッテリ14に電流IBを供給しない。例えば、低圧バッテリ14の充電率SOCが満状態に近い場合には、低圧バッテリ14を充電しない。
【0031】
次に、図3及び図4を参照して、出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXよりも大きい場合について説明する。例えば図4に示すように、出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXよりも大きいINの場合には、電力変換効率Eは最大変換効率EMAXよりも低いENとなる。この場合、制御装置18は、DC−DCコンバータ12に対する電圧指令値を下げることにより、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTを低下させる。例えば、制御装置18は、DC−DCコンバータ12の電力変換効率Eが最大変換効率EMAXとなるように、DC−DCコンバータ12に対する電圧指令値を下げることにより、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTを低下させる。すなわち、制御装置18は、DC−DCコンバータ12の出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXとなるように、DC−DCコンバータ12のスイッチング素子のスイッチングを制御することにより、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTを低下させる。これにより、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTと出力電流IOUTとが減少し、出力電流IOUTはINから最大効率出力電流IMAXとなる。一例として、制御装置18は、低圧バッテリ14をモニタし、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTが低圧バッテリ14から出力される出力電圧VLOWと等しくなるように、DC−DCコンバータ12のスイッチング素子のスイッチングを制御してもよい。これにより、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTと出力電流IOUTとが減少し、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTは低圧バッテリ14の出力電圧VLOWと等しくなる。例えば図3に示すように、低圧バッテリ14から補機負荷16に電流IBが流れ、DC−DCコンバータ12から補機負荷16に出力電流IOUTが流れる。従って、補機負荷16には、出力電流IOUTと電流IBとの和である電流IR(=IOUT+IB)が流れる。
【0032】
以上のように、DC−DCコンバータ12の出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXよりも大きい場合には、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTと出力電流IOUTとを減少させることにより、DC−DCコンバータ12の電力変換効率を向上させつつ、DC−DCコンバータ12の発熱量を低減することが可能となる。すなわち、補機負荷16で消費される電力が比較的大きい場合には、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTと出力電流IOUTとを減少させ、DC−DCコンバータ12と低圧バッテリ14とから補機負荷16に電力を供給することにより、DC−DCコンバータ12の電力変換効率Eを向上させつつ、DC−DCコンバータ12の発熱量を低減することが可能となる。DC−DCコンバータ12からの出力電流IOUTを減少させた分、低圧バッテリ14から電流IBを補機負荷16に供給することにより、補機負荷16を十分に駆動させることが可能となる。すなわち、DC−DCコンバータ12からの出力電流IOUTを減少させても、低圧バッテリ14から電流IBを補機負荷16に供給することにより、補機負荷16に電力を十分に供給することができる。
【0033】
また、出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXよりも大きいINの場合に、低圧バッテリ14の充電率SOCに応じて、低圧バッテリ14から補機負荷16に対して電流IBを供給してもよい。この場合、制御装置18は、低圧バッテリ14の充電率SOCをモニタし、充電率SOCが予め設定された第2の閾値以上の場合に、低圧バッテリ14から補機負荷16に電流IBを供給させる。すなわち、補機負荷16に対して電力を供給することが可能な程度の電力が低圧バッテリ14に残っている場合に、低圧バッテリ14から補機負荷16に電流IBを供給する。充電率SOCの第2の閾値は、制御装置18に予め記憶されていてもよいし、操作者が図示しない入力装置によって第2の閾値を入力するようにしてもよい。充電率SOCの第2の閾値は任意の値でよく、一例として50%であってもよいし、80%であってもよい。例えば、低圧バッテリ14の出力段(入力段)に図示しないスイッチを設け、低圧バッテリ12の充電率SOCが第2の閾値以上の場合に、制御装置18はそのスイッチをオン状態にし、低圧バッテリ14から補機負荷16に電流IBを供給させる。すなわち、出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXよりも大きく、低圧バッテリ14の充電率SOCが第2の閾値以上の場合は、DC−DCコンバータ12から補機負荷16に電流IRを供給するとともに、低圧バッテリ14から補機負荷16に電流IBを供給する。一方、制御装置18は、低圧バッテリ14の充電率SOCが第2の閾値未満の場合には、スイッチをオフ状態とすることにより、低圧バッテリ14から補機負荷16に電流IBを供給しない。例えば、低圧バッテリ14の充電率SOCが完全放電に近い場合には、低圧バッテリ14から補機負荷16に電流IBを供給しない。そして、図2に示すように、DC−DCコンバータ12の出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXよりも小さいIMの場合に、制御装置18は、スイッチをオン状態にすることにより、DC−DCコンバータ12から補機負荷16に電流IRを供給するとともに、DC−DCコンバータ12から低圧バッテリ14に電流IBを供給する。これにより、低圧バッテリ14が充電される。
【0034】
次に、図5を参照して、DC−DCコンバータ12の出力電流IOUTを制御する方法について説明する。図5は、本発明の実施形態に係る電力変換制御装置を示すブロック図である。
【0035】
一例として、図5に示すように、DC−DCコンバータ12の出力段に電流センサ21を設ける。電流センサ21は制御装置18に接続されている。電流センサ21は、DC−DCコンバータ12から出力される出力電流IOUTを測定し、出力電流IOUTの値を制御装置18に出力する。制御装置18は、電流センサ21によって測定された出力電流IOUTと最大効率出力電流IMAXとを比較し、上述したように、出力電流IOUTと最大効率出力電流IMAXとの大小関係に基づいて、DC−DCコンバータ12を制御する。
【0036】
DC−DCコンバータ12の出力段に電流センサ21を設ける代わりに、DC−DCコンバータ12の入力段に電流センサ22を設けてもよい。電流センサ22は、DC−DCコンバータ12に入力される入力電流IINを測定し、入力電流IINの値を制御装置18に出力する。この場合、制御装置18は、入力電流IINと、高圧バッテリ10からDC−DCコンバータ12に供給される入力電圧VINとに応じて、DC−DCコンバータ12の電力変換効率Eが最大変換効率EMAXとなるように、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTを増大又は低下させる。すなわち、制御装置18は、入力電流IINと入力電圧VINとに応じて、入力電流IINから変換される出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXとなるように、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTを増大又は低下させる。このように、制御装置18は、入力電流IINと入力電圧VINとに応じて、DC−DCコンバータ12の出力電流IOUTと出力電圧VOUTとを制御する。なお、高圧バッテリ10とDC−DCコンバータ12との間の電力ラインに図示しない電圧センサを設け、その電圧センサによって高圧バッテリ10からDC−DCコンバータ12に供給される入力電圧VINを測定すればよい。
【0037】
次に、図6を参照して、DC−DCコンバータ12の出力電流IOUTを制御する別の方法について説明する。図6は、本発明の実施形態に係る車両の駆動装置を示すブロック図である。図6には、一例としてハイブリッド車両の概略を示している。図5に示す例では、DC−DCコンバータ12の出力段又は入力段に電流センサ21又は電流センサ22を設けているが、電流センサ21,22を設けずに、DC−DCコンバータ12に入力される入力電流IINを求めてもよい。
【0038】
図6に示す回転電機MG1,MG2は、車両に搭載されるモータ・ジェネレータ(MG)であって、高圧バッテリ10から電力が供給されるときはモータとして機能し、図示しないエンジンによる駆動時、又は車両の制動時には発電機として機能する3相同期型回転電機である。回転電機MG1,MG2は、U,V,W相の3つのコイルを備えた固定子と、回転子とを含む。U,V,W相の3つのコイルの一端は、中点で互いに接続され、他端はインバータ20に接続されている。例えば、2つの回転電機MG1,MG2のうちの一方が高圧バッテリ10を充電するための発電機として用いられ、他方が主として車両走行用としての駆動モータとして用いられる。すなわち、図示しないエンジンによって一方の回転電機(例えばMG1)を駆動して発電機として用い、発電された電力を高圧バッテリ10に供給する。また、他方の回転電機(例えばMG2)を車両走行のために用いて、力行時には高圧バッテリ10から電力の供給を受けてモータとして機能して車両の車軸を駆動し、制動時には発電機として機能して回生エネルギを回収し、高圧バッテリ10に供給する。
【0039】
インバータ20は、制御装置18の制御の下で動作する複数のスイッチング素子を含んで構成され、交流電力と直流電力との間での電力変換を行う。インバータ20は、高圧バッテリ10とDC−DCコンバータ12とを接続する電力ラインから分岐して接続されている。また、インバータ20は、回転電機MG1,MG2と制御装置18とに接続されている。回転電機MG1を発電機として機能させるとき、インバータ20は、回転電機MG1からの交流電力を直流電力に変換し、高圧バッテリ10に充電電流として供給する機能を有する。また、インバータ20は、車両が力行のとき、高圧バッテリ10からの直流電力を交流電力に変換し、回転電機MG2に供給する機能を有する。また、インバータ20は、車両が制動のとき、回転電機MG2からの交流電力を直流電力に変換し、高圧バッテリ10に供給する機能を有する。
【0040】
高圧バッテリ10の出力段には電流センサ31が設けられている。電流センサ31は、高圧バッテリ10から出力された出力電流IHを測定し、出力電流IHの値を制御装置18に出力する。また、インバータ20と回転電機MG1とを接続する電力ラインには、電流センサ32が設けられている。また、インバータ20と回転電機MG2とを接続する電力ラインには、電流センサ33が設けられている。電流センサ32は、インバータ20と回転電機MG1とを接続する電力ラインに流れる電流IMG1を測定し、電流IMG1の値を制御装置18に出力する。また、電流センサ33は、インバータ20と回転電機MG2とを接続する電力ラインに流れる電流IMG2を測定し、電流IMG2の値を制御装置18に出力する。電流センサ31,32,33は、車両に設けられている既存の電流センサである。回転電機MG1,MG2をモータとして機能させる場合、インバータ20は、高圧バッテリ10から供給された入力電圧VLを昇圧し、昇圧後の出力電圧VHを回転電機MG1,MG2に供給する。例えば、回転電機MG2をモータとして機能させる場合には、インバータ20は、入力電圧VLを昇圧して出力電圧VHを回転電機MG2に供給する。また、入力電圧VLの値と出力電圧VHの値とは、インバータ20から制御装置18に出力される。
【0041】
例えば高圧バッテリ10からの直流電力を交流電力に変換して回転電機MG2に供給する場合について説明する。この場合、制御装置18は、電流センサ33が検知した電流IMG2と回転電機MG2に供給された出力電圧VHとに基づいて、回転電機MG2で消費された消費電力PMG2を求める。また、制御装置18は、インバータ20の効率から得られるインバータ20で損失される電力を取得する。例えば、インバータ20の出力電流と出力電圧とで規定される効率マップを、制御装置18に予め記憶しておく。制御装置18は、その効率マップを参照し、インバータ20で損失された電力を取得する。そして、制御装置18は、回転電機MG2で消費された消費電力PMG2に、インバータ20で損失された電力を加えることにより、高圧バッテリ10からインバータ20に供給された入力電力PINを求める。制御装置18は、入力電力PINを高圧バッテリ10から供給された入力電圧VLで除算することにより、高圧バッテリ10からインバータ20に入力した入力電流IINVを求める。そして、制御装置18は、高圧バッテリ10の出力電流IHからインバータ20の入力電流IINVを減算することにより、高圧バッテリ10からDC−DCコンバータ12に入力する入力電流IIN(=IH−IINV)を求める。高圧バッテリ10からの電力ラインは、DC−DCコンバータ12とインバータ20とに分岐しているため、高圧バッテリ10の出力電流IHからインバータ20の入力電流IINVを減算することにより、高圧バッテリ10からDC−DCコンバータ12に入力する入力電流IINを求めることができる。
【0042】
そして、制御装置18は、入力電流IINと、高圧バッテリ10からDC−DCコンバータ12に供給される入力電圧VLとに応じて、DC−DCコンバータ12の電力変換効率Eが最大変換効率EMAXとなるように、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTを増大又は低下させる。すなわち、制御装置18は、入力電流IINと入力電圧VLとに応じて、入力電流IINから電力変換される出力電流IOUTが最大効率出力電流IMAXとなるように、DC−DCコンバータ12の出力電圧VOUTを増大又は低下させる。このように、制御装置18は、入力電流IINと入力電圧VINとに応じて、DC−DCコンバータ12の出力電流IOUTと出力電圧VOUTとを制御する。
【0043】
以上のように、車両に設けられている既存の電流センサ31,32,33を用いることにより、DC−DCコンバータ12の出力段又は入力段に電流センサ21又は電流センサ22を設けなくても、DC−DCコンバータ12に入力される入力電流IINを求めて、出力電圧VOUT及び出力電流IOUTを制御することができる。電流センサ21,22を新たに追加する必要がないため、電力変換制御装置のコストの増加を抑制しつつ、DC−DCコンバータ12の電力変換効率を向上させることが可能となる。
【0044】
また、インバータ20の入力段に図示しない電流センサを設け、その電流センサによってインバータ20に入力する入力電流IINVを測定してもよい。その入力電流IINVを示す値は、電流センサから制御装置18に出力される。この場合、制御装置18は、高圧バッテリ10の出力電流IHからインバータ20の入力電流IINVを減算することにより、DC−DCコンバータ12に入力する入力電流IINを求める。
【0045】
なお、制御装置18は、一つの態様では、ハードウェア資源とソフトウェアとの協働により実現され、例えば電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。具体的には、制御装置18の機能は、記録媒体に記録された制御プログラムがメインメモリに読み出されてCPU(Central Processing Unit)により実行されることによって実現される。この制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されることも可能であるし、データ信号として通信により提供されることも可能である。ただし、制御装置18は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。また、制御装置18は、物理的に1つの装置により実現されてもよいし、複数の装置により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 高圧バッテリ、12 コンバータ、14 低圧バッテリ、16 補機負荷、18 制御装置、20 インバータ、21,22,31,32,33 電流センサ、MG1,MG2 回転電機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のバッテリと、車両に搭載された補機と、前記補機に接続され前記第1のバッテリよりも電圧が低い第2のバッテリと、に接続され、前記第1のバッテリからの入力電力を変換して出力電力を前記補機と前記第2のバッテリとのうち少なくとも一方に供給するDC−DCコンバータと、
前記DC−DCコンバータの出力電流が、前記DC−DCコンバータの電力変換効率が最大となる最大効率出力電流よりも大きい場合には、前記DC−DCコンバータの出力電圧を低下させ、前記DC−DCコンバータと前記第2のバッテリとから前記補機に電力を供給させる制御手段と、
を有することを特徴とする電力変換制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換制御装置であって、
前記制御手段は、前記DC−DCコンバータの出力電流が前記最大効率出力電流よりも小さい場合には、前記DC−DCコンバータの出力電圧を増大させて前記補機に電力を供給させつつ前記第2のバッテリに電力を供給させて前記第2のバッテリを充電させる、
ことを特徴とする電力変換制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換制御装置であって、
前記制御手段は、前記DC−DCコンバータの出力電流が前記最大効率出力電流よりも小さく、前記第2のバッテリの充電率が所定値未満の場合に、前記DC−DCコンバータから前記第2のバッテリに電力を供給させて前記第2のバッテリを充電させる、
ことを特徴とする電力変換制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電力変換制御装置であって、
前記制御手段は、前記DC−DCコンバータの出力電流が前記最大効率出力電流よりも大きい場合には、前記DC−DCコンバータの出力電圧を前記第2のバッテリの出力電圧と等しくして、前記DC−DCコンバータと前記第2のバッテリとから前記補機に電力を供給させる、
ことを特徴とする電力変換制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−244748(P2012−244748A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111974(P2011−111974)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】