電力変換装置
【課題】メインコンバータ3の交流入力線に単相のサブコンバータ4を直列接続した電力変換器に対し、直流側のサブコンデンサ9を初期充電する際の突入電流を簡略な構成で容易に防止する。
【解決手段】交流電流指令を生成する電流指令値演算部20をCPUで構成し、メインコンバータ3は交流電流を抑制するように制御し、交流電流が交流電流指令に追従するようにサブコンバータ4の交流側の出力電圧レベルを切り替え制御する。初期充電時には、メインコンデンサ7を充電完了後に電力変換器を起動し、メインコンバータ3を通常と同様に出力制御すると共に、サブコンバータ4内の全スイッチをオフしてサブコンデンサ7を充電する。
【解決手段】交流電流指令を生成する電流指令値演算部20をCPUで構成し、メインコンバータ3は交流電流を抑制するように制御し、交流電流が交流電流指令に追従するようにサブコンバータ4の交流側の出力電圧レベルを切り替え制御する。初期充電時には、メインコンデンサ7を充電完了後に電力変換器を起動し、メインコンバータ3を通常と同様に出力制御すると共に、サブコンバータ4内の全スイッチをオフしてサブコンデンサ7を充電する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交流直流変換機能を持つ電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電力変換装置として回生制御可能なコンバータを以下に示す。
三相のメインコンバータの各相の交流入力線に、メインコンバータの直流電圧より小さい直流電圧を有する単相のサブコンバータの交流側を直列接続して電力変換器を構成する。そして、メインコンバータを半周期に1パルスのゲートパルスにて駆動し、サブコンバータの交流端子の発生電圧を、交流電源電圧とメインコンバータの交流端子の発生電圧との差分となるように制御する。これにより、リアクトルを大きくすることなく高調波を抑制でき、電力損失および電磁ノイズも低減できる(例えば、特許文献1参照)。
また、このような電力変換装置のメインコンバータ、サブコンバータの各直流電力を蓄積する電力貯蔵器を初期充電する従来の技術を以下に示す。
系統電源と電力変換器との間に充電用抵抗あるいはリアクトルを設けて、系統電源から充電用抵抗あるいはリアクトルを介する電流経路によりメインコンバータおよびサブコンバータの直流側電力貯蔵器の初期充電を行う。これにより、初期充電時の各電力貯蔵器への突入電流を抑制できる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2007/129456
【特許文献2】国際公開WO2007/129469
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電力変換装置では、各電力貯蔵器の初期充電時に充電用抵抗あるいはリアクトルを介する電流経路にて電力貯蔵器を充電する。しかしながら、初期充電時の各電力貯蔵器への突入電流は、充電用抵抗あるいはリアクトルにより制限されても充分ではなく、この突入電流により交流電源側に電圧歪みが発生するという問題があった。また、充電用抵抗やリアクトルだけでなく、電力変換器の通常運転時にこれらをバイパスさせるリレーなどの切り換えの為の部品が必要で、部品点数も増大するものであった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解消するために成されたものであって、それぞれ直流側に電力貯蔵器を有するメインコンバータとサブコンバータとが直列接続された電力変換装置において、交流電源側の信頼性を損なうことなく簡略な構成で電力貯蔵器を初期充電することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電力変換装置は、それぞれ複数の半導体スイッチング素子を有して交流と直流との間で電力変換を行い、直流側に有した各電力貯蔵器に出力するメインコンバータおよびサブコンバータを備え、上記メインコンバータの直流電圧は上記サブコンバータの直流電圧より大きく、上記メインコンバータと交流電源との間に上記サブコンバータを配置して直列接続した電力変換器と、該電力変換器を制御する制御装置とを備える。この制御装置は、交流電流指令を生成する電流指令演算部と、上記交流電源の位相および上記交流電流指令に基づいて交流電流瞬時値を抑制するように上記メインコンバータへの第1の制御信号を生成する第1の制御部と、上記交流電流瞬時値が上記交流電流指令に追従するように上記サブコンバータへの第2の制御信号を生成する第2の制御部とを有する。また、上記制御装置は、上記メインコンバータの電力貯蔵器が充電完了した状態で上記サブコンバータの電力貯蔵器を充電する充電制御モードと、上記メインコンバータおよび上記サブコンバータの各電力貯蔵器の充電完了後に上記第1、第2の制御信号を生成して上記電力変換器を制御する通常制御モードとを有し、上記充電制御モードでは、上記第1の信号を生成して上記メインコンバータを制御すると共に、上記サブコンバータ内の上記複数の半導体スイッチング素子を全てオフさせて上記サブコンバータの電力貯蔵器を充電するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によると、通常制御モードのメインコンバータの出力制御において、交流電流瞬時値の抑制制御を行っている。このため、サブコンバータの電力貯蔵器を充電する充電制御モードでもメインコンバータを同様に制御することで、交流電流瞬時値を抑制して突入電流が流れるのを容易に防止でき、交流電源側に電圧歪みなどが発生するのを防止できる。また、通常制御と充電制御との切り替えは制御装置のみで行うことができ、電流制限のための部品や電流経路を切り換える部品も不要で、簡略な構成で交流電源側の信頼性を損なうことなくサブコンバータの電力貯蔵器を初期充電できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による電力変換装置の主回路(電力変換器)およびメインコンデンサ充電回路の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による電力変換装置の通常動作を説明する各部の波形図である。
【図3】この発明の実施の形態1による制御装置のハードウェア構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1による制御装置の電流指令値演算回路(CPU)の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1による制御装置においてメインコンバータの出力制御を担う第1の制御部の構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1による制御装置においてサブコンバータの出力制御を担う第2の制御部の構成を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1による制御装置においてサブコンバータの出力制御を担う第2の制御部の構成の一部を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1による第1の制御部によるメインコンバータの制御を説明する図である。
【図9】この発明の実施の形態1による第2の制御部によるサブコンバータの制御を説明する図である。
【図10】この発明の実施の形態1による第2の制御部によるサブコンバータの制御を説明する図である。
【図11】この発明の実施の形態1によるサブコンバータのゲート駆動信号のパターンを示す図である。
【図12】この発明の実施の形態1による電力変換装置の初期充電動作を説明するフローチャートである。
【図13】この発明の実施の形態1によるサブコンデンサの充電切り替え回路の構成を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態2による電力変換装置の主回路(電力変換器)およびメインコンデンサ充電回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による電力変換装置について説明する。図1はこの発明の実施の形態1による電力変換装置の主回路(電力変換器)およびメインコンデンサ充電回路の構成図である。電力変換器は、具体的には三相交流電源(系統電源)1からの電力を直流電力に変換して直流負荷2に供給する電力変換器である。
図1に示すように、三相交流電力を直流電力に変換するメインコンバータ3の交流ライン側の各相に、単相フルブリッジ回路から成るサブコンバータ4および交流リアクトル5が、それぞれ接続されている。メインコンバータ3は、直流側に電力貯蔵器としてのメインコンデンサ7が接続された三相2レベルコンバータで、直流電力を交流側に回生することを想定して、ダイオードを逆並列に接続したIGBT等の自己消弧型の半導体スイッチング素子6を用いている。
【0010】
ここで用いる半導体スイッチング素子6はIGBT以外にも、GCT、GTO、トランジスタ、MOSFET等でも、また自己消弧機能がないサイリスタ等でも強制転流動作が可能であればよい。また、直流負荷2に図示しないインバータ回路を介してモータ等が接続されたときの回生電力の処理で、インバータ回路部にブレーキ抵抗などが付随しており、直流電力を交流系統に回生させる必要がない場合は自己消弧型半導体素子(半導体スイッチング素子6)をダイオードに置き換えてもよい。なお、メインコンバータ3の各相(R相、S相、T相)のアームを構成するP側、N側の各半導体スイッチング素子6を、RP、RN、SP、SN、TP、TNと称す。
【0011】
サブコンバータ4は、複数のMOSFET等の自己消弧型の半導体スイッチング素子8から成る単相フルブリッジ回路と、それぞれ独立した電圧貯蔵器としてのサブコンデンサ9とを備える。この場合も、半導体スイッチング素子8はMOSFET以外にも、ダイオードを逆並列に接続したIGBT、GCT、GTO、トランジスタ等でも、また自己消弧機能がないサイリスタ等でも強制転流動作が可能であればよい。また各相サブコンバータ4の交流電源側のアームをX側アーム、負荷側のアームをY側アームと称し、P側、N側の各半導体スイッチング素子8を、XP、XN、YP、YNと称す。
そして、サブコンバータ4は、図示された極性に充電された直流電圧を交流端子間に任意の期間で出力(出力電圧:Vsub)することができる。具体的には直流電圧をVとした場合、半導体スイッチング素子8のオン・オフの組合せによってVsub={−V,0,+V}の3レベルの電圧値をサブコンバータ4の交流端子間に印加することができる。
【0012】
また、メインコンバータ3のメインコンデンサ7の電圧Vdcを検出する電圧センサ7aと、各相のサブコンバータ4のサブコンデンサ9の電圧Vbr、Vbs、Vbtを検出する電圧センサ9aと、三相交流電源1から入力される各相の交流電流i(ir、is、it)を検出する電流センサ10と、三相交流電源1の位相を検出するPLL回路11とを備える。なお、交流電流iは矢印の向きを正とする。
また、メインコンデンサ7を初期充電するために、メインコンデンサ7にバッテリ110から充電するためのDC/DCコンバータ111と、メインコンデンサ7に交流電源1から充電するためのAC/DCコンバータ113とを有するメインコンデンサ充電回路を備える。
【0013】
このように構成される電力変換器は、例えば、三相交流電源1が200V系の交流系統で、直流出力電圧であるメインコンデンサ7の電圧Vdcが250V、各相のサブコンデンサ9の電圧を60Vとした場合、メインコンバータ3を600V耐圧の素子で、サブコンバータ4を100V耐圧の素子で構成することができる。また、三相交流電源1が400V系の交流系統で、直流出力電圧であるメインコンデンサ7の電圧Vdcが500V、各相のサブコンデンサ9の電圧を60Vとした場合、メインコンバータ3を1200V耐圧の素子で、サブコンバータ4を100V耐圧の素子で構成することができる。
また、交流直流変換が可能な電力変換器は、直流側が太陽光や燃料電池等のエネルギ源で交流系統へ連系し電力授受を行うものでも良い。その場合は、メインコンデンサ7を初期充電するためのバッテリ110、コンバータ111、113は不要である。
【0014】
このように構成される電力変換器の動作について以下に説明する。図2は、メインコンバータ3の例えばR相の出力電圧Vmain、メインコンバータ3を構成する各半導体スイッチング素子6(RP、RN、SP、SN、TP、TN)のゲート駆動信号、およびR相サブコンバータ4の出力電圧Vsubの各波形を示す図である。ここでは、1相あたりの電圧を説明する。
図に示すように、メインコンバータ3の各半導体スイッチング素子6のゲート駆動信号は、電源相電圧の1周期に1パルスの信号(以下、1パルス信号と称す)である。R相の電源相電圧が正極性の時には、P側の半導体スイッチング素子RPはオン状態、N側の半導体スイッチング素子RNはオフ状態であり、R相の電源相電圧が負極性の時には、半導体スイッチング素子RPはオフ状態、半導体スイッチング素子RNはオン状態である。
【0015】
電力変換器の動作の基本は、直流出力電圧であるメインコンバータ3のメインコンデンサ7の直流電圧Vdcが維持されるように、交流−直流間で電力変換を行い、そのため交流側に電源電圧と同じ電圧である正弦波電圧を発生させるように動作する。
交流電源1の仮想中性点から見たメインコンバータ3のR相の出力電圧Vmainは、図に示すような階段状の波形となる。R相のサブコンバータ4は、半導体スイッチング素子8を細かくオン・オフして、電源相電圧とメインコンバータ3のR相の出力電圧Vmainとの差電圧を出力(出力電圧:Vsub)する。なお、サブコンバータ4のスイッチング制御についての詳細は後述するが、交流電流iは力率1となるように制御される。
【0016】
図3は、このような電力変換器を制御する制御装置12のハードウェア構成を示す図である。制御装置12は、メインコンバータ3および各相のサブコンバータ4の各半導体スイッチング素子6、8のゲート駆動信号を生成して、メインコンバータ3および各相のサブコンバータ4を制御する。なお、メインコンバータ3を制御するゲート駆動信号が第1の制御信号、各相のサブコンバータ4を制御するゲート駆動信号が第2の制御信号である。
図3に示すように、制御装置12は、CPUから成り各相の交流電流指令を演算する電流指令演算部としての電流指令値演算回路20と、コンパレータ回路30およびロジック回路40で構成されるハードロジック回路とで構成される。ロジック回路40には、FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)等が用いられる。
【0017】
コンパレータ回路30は、電圧センサ9aから得られる各相のサブコンデンサ9の電圧Vbr、Vbs、Vbtのアンバランスを検出するコンパレータ31(以下、第1のコンパレータ31と称す)と、電流センサ10から得られる各相交流電流ir、is、itの極性を検出するコンパレータ32(以下、第2のコンパレータ32と称す)と、複数のヒステリシスコンパレータから成る電流瞬時値制御回路33とを備える。電流瞬時値制御回路33は、各相交流電流ir、is、itの瞬時値が電流指令値演算回路20にて生成された各相の交流電流指令に追従するように、メインコンバータ3および各相のサブコンバータ4に対応する指令信号を出力する。
ロジック回路40は、第1、第2のコンパレータ31、32の出力に基づいて、各相のサブコンデンサ9の電圧バランスを補正するバランス補正回路41と、サブコンバータゲートパルス生成回路42と、メインコンバータゲートパルス生成回路43とを備える。
【0018】
CPUから成る電流指令値演算回路20の制御ハードウェアの詳細を図4に示す。この電流指令値演算回路20は、マイコンやDSP(Digital Signal Processor)などを用いて構成することができる。
図に示すように、電流指令値演算回路20は、電圧センサ9aから得られる各相のサブコンデンサ9の電圧Vbr、Vbs、Vbt、および電圧センサ7aから得られるメインコンデンサ7の電圧Vdcを、A/Dコンバータを介して入力し、さらに三相交流電源1の線間電圧位相を、PLL回路11等、位相検出が可能なICの出力信号からディジタル信号として入力する。各相のサブコンデンサ電圧Vbr、Vbs、Vbtを入力として、三相分の平均値であるサブコンデンサ平均電圧を回路21にて計算する。そして、サブコンデンサ平均電圧がサブコンデンサ電圧指令に追従するように、即ち差分が0になるように回路22にてPI制御した出力をメインコンデンサ電圧指令に加算し、メインコンデンサ電圧指令を調整する。そして、メインコンデンサ電圧Vdcと調整後のメインコンデンサ電圧指令との差分を電流指令生成回路24に入力する。
【0019】
また、PLL回路11から入力された線間電圧位相に基づいて、各相の基準正弦波を回路23にて演算し、該基準正弦波は電流指令生成回路24に入力される。電流指令生成回路24では、メインコンデンサ電圧Vdcと調整後のメインコンデンサ電圧指令との差分が回路25に入力され、メインコンデンサ電圧Vdcが調整後のメインコンデンサ電圧指令に追従するように、即ち差分が0になるように回路25にてPI制御して交流電流指令の振幅を演算する。そして、交流電流指令の振幅に回路23からの各相基準正弦波を乗じて各相の交流電流指令となる電流指令値を演算する。
演算された各相の交流電流指令は、D/Aコンバータを介して電流指令値演算回路20から出力される。
【0020】
このように、電流指令値演算回路20では、サブコンバータ4の直流電圧としてのサブコンデンサ平均電圧がサブコンデンサ電圧指令に追従するように、メインコンバータ3の直流電圧指令であるメインコンデンサ電圧指令を調整し、メインコンデンサ電圧Vdcがメインコンデンサ電圧指令に追従するように交流電流指令を生成する。言い換えれば、交流電流指令をコントロールすることによって、サブコンデンサ平均電圧およびメインコンデンサ電圧Vdcをそれぞれ所望の電圧に維持する。また、サブコンデンサ平均電圧を一定に制御するために、メインコンデンサ電圧指令を調整することで、サブコンバータ4は、直流部に電力供給要素を必要とせず、サブコンデンサ9のみで電圧安定化が実現できる。
また、各相の交流電流指令を基準正弦波に基づいて生成しているため、各相交流電流ir、is、itは力率1となるように制御される。
【0021】
次に、メインコンバータ3の出力制御を担う第1の制御部と各相のサブコンバータ4の出力制御を担う第2の制御部について説明する。
第1の制御部および第2の制御部は、コンパレータ回路30およびロジック回路40を、メインコンバータ3の出力制御と各相のサブコンバータ4の出力制御とのそれぞれを担う機能で2つに分けた部分で、第1の制御部の詳細を図5に、第2の制御部の詳細を図6、図7に示す。
コンパレータ回路30内の電流瞬時値制御回路33は、第1〜第3のヒステリシスコンパレータ33a〜33cを備え、第1のヒステリシスコンパレータ33aは、第1の制御部の一部となり、第2、第3のヒステリシスコンパレータ33b、33cは、第2の制御部の一部となる。なお、電流瞬時値制御回路33では、電流指令値演算回路20にて生成された交流電流指令と各相の交流電流とを比較して指令信号を出力するが、ここで扱う交流電流は交流電流瞬時値であり、以後、単に交流電流と記載する場合は、交流電流瞬時値を示すものとする。
【0022】
メインコンバータ3の出力制御を担う第1の制御部は、第1のヒステリシスコンパレータ33aとメインコンバータゲートパルス生成回路43とを備え、図5は、第1の制御部のR相部分を図示したものである。なお、S相、T相についても同様の構成である。
図5に示すように、R相のメインコンバータゲートパルス生成回路43rは、1パルス信号生成回路44と判定回路45と電流抑制回路46とを備えて、メインコンバータ3のR相の半導体スイッチング素子RP、RN用のゲート駆動信号(以下、RPゲートパルス、RNゲートパルスと称す)を生成する。
1パルス信号生成回路44は、PLL回路11からの線間電圧位相に基づいて、電源相電圧の1周期に1パルスの信号(1パルス信号)から成るRPゲートパルス、RNゲートパルスを生成する(図2参照)。
以下、R相の制御について説明するが、他の各相も同様である。
【0023】
第1のヒステリシスコンパレータ33aは、交流電流irと電流指令値演算回路20にて生成された交流電流指令との電流偏差が、所定のヒステリシス幅(±ia)を超えると異常信号をメインコンバータゲートパルス生成回路43rへ出力する。メインコンバータゲートパルス生成回路43rでは、判定回路45が第1のヒステリシスコンパレータ33aからの異常信号を入力として、電流極性が負の時、半導体スイッチング素子RPをオフさせるRP遮断信号を出力し、電流極性が正の時、半導体スイッチング素子RNをオフさせるRN遮断信号を出力する。電流抑制回路46は、1パルス信号生成回路44および判定回路45の出力が入力され、RPゲートパルス、RNゲートパルスを通常時はそのまま出力し、判定回路45からRP遮断信号、RN遮断信号が入力されたときは、RPゲートパルス、RNゲートパルスを、その期間オフさせるよう補正して出力する。この電流抑制回路46から出力されるRPゲートパルス、RNゲートパルスが、メインコンバータゲートパルス生成回路43rの出力である第1の制御信号となり、R相の半導体スイッチング素子RP、RNを駆動制御する。
【0024】
メインコンバータ3は、交流電流irが正常範囲内で変動する時は1パルス信号から成るゲート駆動信号にて制御され、交流電流irを交流電流指令に追従させる制御は、サブコンバータ4の出力制御により行っている。このサブコンバータ4の出力制御の詳細は後述するものであるが、電源電圧が瞬低や停電などで急峻に変化した場合等、サブコンバータ4の出力制御では電流制御できず、過電流に陥る場合がある。その場合、第1のヒステリシスコンパレータ33aにて交流電流irと交流電流指令との電流偏差がヒステリシス幅(±ia)を超えたこと、即ち電流異常を検出し、上述したように、電流極性に応じて、メインコンバータ3のいずれかの半導体スイッチング素子RP、RNの1パルス信号をオフにする。
【0025】
例えば、図8に示すように、交流電流irが正の時、半導体スイッチング素子RNがオンして、図示される電流経路にて電流が流れる。この時、第1のヒステリシスコンパレータ33aが、電流異常を検出すると、判定回路45はRN遮断信号を出力して、メインコンバータゲートパルス生成回路43rが出力するRNゲートパルスはオフとなる。これにより、半導体スイッチング素子RNがオフして交流電流irが抑制される。そして、交流電流irと交流電流指令との差分が、所定のヒステリシス幅(±ia)内に抑制されると再び半導体スイッチング素子RNを、元のRNゲートパルス(1パルス信号)通りにオンする。このように、電源電圧が急峻に変化した場合でも、過電流に至る前に電流抑制でき、運転継続することが可能になる。
【0026】
次に、サブコンバータ4の出力制御を担う第2の制御部は、図6に示すように、第2、第3のヒステリシスコンパレータ33b、33cと、サブコンバータゲートパルス生成回路42rとを備える。また、図7に示すように、各相のサブコンデンサ9の電圧Vbr、Vbs、Vbtのアンバランスを検出する第1のコンパレータ31と、各相交流電流ir、is、itの極性を検出する第2のコンパレータ32と、第1、第2のコンパレータ31、32の出力に基づいて、各相のサブコンデンサ9の電圧バランスを補正するバランス補正回路41とを備える。
なお、図7は三相全ての部分を示しているが、図6に示す構成は、便宜上、R相部分のみであり、S相、T相についても同様の構成である。以下、図6を用いる説明では、R相の制御について説明するが、他の各相も同様である。
【0027】
図6に示すように、電流指令値演算回路20にて生成された交流電流指令と交流電流irとの電流偏差は第2、第3のヒステリシスコンパレータ33b、33cに入力される。
第3のヒステリシスコンパレータ33cのヒステリシス幅(±i2)は、第2のヒステリシスコンパレータ33bのヒステリシス幅(±i1)より広く、第1の制御部の第1のヒステリシスコンパレータ33aのヒステリシス幅(±ia)より狭い。即ち、絶対値で比較するとi1<i2<iaとなる。第2、第3のヒステリシスコンパレータ33b、33cは、入力された電流偏差が、ヒステリシス幅を超えると異常信号を出力し、その出力はサブコンバータゲートパルス生成回路42rに入力される。そしてサブコンバータゲートパルス生成回路42rの出力である第2の制御信号としてのサブコンバータゲートパルス48rにより、R相のサブコンバータ4内の各半導体スイッチング素子を駆動制御する。
また、サブコンバータゲートパルス生成回路42rは、出力段にゲートパルス切替部100rを備え、電力変換器の起動時にサブコンデンサ9を充電する際にサブコンバータゲートパルス48rを切り替えて出力する。なお、ゲートパルス切替部100rについての詳細は、後述する。
【0028】
サブコンバータ4の出力制御の基本構成を、以下に説明する。なお、制御装置12は、通常制御モードと、起動時にサブコンデンサ9を充電する際の充電制御モードを有しており、以下の説明は通常制御モードでの出力制御である。
サブコンバータ4は、フルブリッジ構成なので、直流電圧をVとした場合、{−V、0、+V}の3レベルを選択して交流側に出力する。図9(a)、図9(b)は、交流電流指令と交流電流irとの電流偏差を横軸に、サブコンバータ4の出力電圧レベルを縦軸にして、出力電圧レベルの切替を説明する図である。この場合、第2のヒステリシスコンパレータ33bを用いて、電流偏差がヒステリシス幅(±i1)を超えると、交流電流irが抑制されるように出力電圧レベルを切り替える。
この出力電圧レベルの切替は、図9(a)のように{−V}、{0}間の切替と、図9(b)のように{0}、{+V}間の切替との2種のモードがある。このモードは、PLL回路11からサブコンバータゲートパルス生成回路42rに入力される線間電圧位相に基づいて判定されるサブコンバータ4の出力極性に応じて決定される。そして、半導体スイッチング素子XP、XN、YP、YNへのゲート駆動信号であるサブコンバータゲートパルス48のスイッチングパターンの切替により、出力電圧レベルが切り替わる。
【0029】
上記のように、交流電流irを交流電流指令に追従させるように出力電圧レベルを切り替えるが、電源電圧位相の変動や位相検出系の遅れ等があると、サブコンバータ4の出力極性が乱れ、交流電流irは所望の範囲を逸脱する可能性がある。電流偏差が第2のヒステリシスコンパレータ33bのヒステリシス幅(±i1)を超えて、出力電圧レベルを切り替えても戻らない場合の補正を図10(a)、図10(b)に基づいて以下に示す。
図10(a)、図10(b)は、交流電流指令と交流電流irとの電流偏差を横軸に、サブコンバータ4の出力電圧レベルを縦軸にして、出力電圧レベルの切替を説明する図である。この場合、第2のヒステリシスコンパレータ33bを用いて、電流偏差がヒステリシス幅(±i1)を超えると交流電流irが抑制されるように出力電圧レベルを切り替え、さらに、第3のヒステリシスコンパレータ33cを用いて、電流偏差がヒステリシス幅(±i2)を超えると交流電流irが抑制されるように出力電圧レベルをさらに切り替える。
【0030】
図10(a)に示すように、電流偏差がマイナス方向に増加しΔi1を超えたときに、出力電圧レベルを{+V}から{0}に切り替えても、電流偏差(絶対値)が減少せず、増加し続けてΔi2を超えると、出力電圧レベルをさらに{0}から{−V}に切り替えて、強制的に電流極性を変化させて電流偏差(絶対値)を低減させる。また、図10(b)に示すように、電流偏差がプラス方向に増加しΔi1を超えたときに、出力電圧レベルを{−V}から{0}に切り替えても、電流偏差が減少せず、増加し続けてΔi2を超えると、出力電圧レベルをさらに{0}から{+V}に切り替えて強制的に電流極性を変化させて電流偏差(絶対値)を低減させる。
このように、通常制御モードでのサブコンバータ4の出力制御は、交流電流指令と交流電流irとの電流偏差が小さくなるように、サブコンバータ4の交流側の出力電圧レベルを切り替える制御である。そして、このような出力電圧レベルの切り替えを行うサブコンバータゲートパルス48rがサブコンバータゲートパルス生成回路42rにて生成される。
【0031】
図6に示すように、サブコンバータゲートパルス生成回路42rでは、第2、第3のヒステリシスコンパレータ33b、33cの出力が、フリップフロップ回路FF1、FF2、FF3に入力され、パルス信号として出力される。フリップフロップFF1は、第2のヒステリシスコンパレータ33bの出力に基づいて、出力電流制御の基本制御信号RX(以下、電流制御信号RXと称す)を出力し、電流制御信号RXは、サブコンバータ4のX側アームの駆動信号源となる。
また、PLL回路11からの線間電圧位相がサブコンバータゲートパルス生成回路42rに入力され、回路47にてサブコンバータ4の出力極性を判定して出力極性を切り替えるための極性制御信号RYを生成する。サブコンバータ4の極性制御信号RYは、サブコンバータ4のY側アームの駆動信号源に用いられる。なお、サブコンバータ4の出力極性は、図2で示したサブコンデンサの出力電圧Vsubを想定して位相から判定する。
【0032】
上記電流制御信号RX、極性制御信号RYから、半導体スイッチング素子XP、XN、YP、YNへのゲート駆動信号であるサブコンバータゲートパルス48rは、図11に示すようにA〜Dの4種のスイッチングパターンで決定できる。このサブコンバータゲートパルス48rの決定に先立ち、後述する各相サブコンデンサ電圧のバランス制御により得られたシフト補正信号としてのレベルシフト方向信号DLSと補正許可信号PPとに基づいて、電流制御信号RX、極性制御信号RYを所定のロジックで変更する。そして、フリップフロップ回路FF2、FF3から、第2、第3のヒステリシスコンパレータ33b、33cの出力に基づいた電流制御信号が出力され、該出力に応じて、サブコンバータ4の出力電圧レベルをさらに切り替えて強制的に電流極性を変化させるように、サブコンバータゲートパルス48rは修正されて出力される。
【0033】
以上のように、交流電流指令と交流電流irとの電流偏差が小さくなるように、サブコンバータ4の交流側の出力電圧レベルを切り替える制御を行う。この電流制御は各相毎に行われるのに対し、用いられる交流電流指令は、電流指令値演算回路20において各相のサブコンデンサ電圧Vbr、Vbs、Vbtの平均値であるサブコンデンサ平均電圧を用いて演算したものである。このため制御の信頼性を高めるため、サブコンバータ4の出力制御を担う第2の制御部は、図7に示す回路構成を有して、各相のサブコンデンサ9の電圧バランスを補正する。そして、生成されたレベルシフト方向信号DLSと補正許可信号PPは、各相のサブコンバータゲートパルス生成回路42(42r)に入力され、サブコンバータゲートパルス48は、各相のサブコンデンサ9の電圧がバランスするように出力される。
【0034】
図7に示すように、第1のコンパレータ31は、電圧センサ9aから得られる各相のサブコンデンサ9の電圧Vbr、Vbs、Vbtのアンバランスを検出し、第2のコンパレータ32は、電流センサ10から得られる各相交流電流ir、is、itの極性を検出する。そして、第1、第2のコンパレータ31、32の出力と、各相のサブコンバータゲートパルス生成回路42(42r)内で生成された各相の電流制御信号RX、SX、TX、極性制御信号RY、SY、TYに基づいて、バランス補正回路41により、レベルシフト方向信号DLSと補正許可信号PPを生成する。バランス補正回路41内では、まず、第1、第2のコンパレータ31、32の出力に基づいて、サブコンバータ4の全相の出力電圧レベルの正負いずれかの方向にシフトさせる要否を判定し、各相の電流制御信号RX、SX、TX、極性制御信号RY、SY、TYに基づいて、実際の制御に合致したレベルシフト方向信号DLSと補正許可信号PPを生成する。
【0035】
具体的には、三相のうち、ある相のサブコンデンサ9の電圧が上限しきい値を超え、交流電流極性が負、もしくは、サブコンデンサ9の電圧が下限しきい値以下で、交流電流極性が正、即ち、交流電源1から負荷2の方向に電流が流れている条件となった時に、各相のサブコンバータ4の出力電圧レベルを各相同時にプラス方向へシフトさせる補正要と判定する。ただし、いずれかの相が{+V}で出力していた場合はシフト動作しない様に修正してレベルシフト方向信号DLSを出力する。また、ある相のサブコンデンサ9の電圧が上限しきい値を超え、交流電流が正、もしくは、サブコンデンサ9の電圧が下限しきい値以下で、交流電流が負の条件となった時に、各相のサブコンバータ4の出力電圧レベルを各相同時にマイナス方向へシフトさせる補正要と判定する。ただし、いずれかの相が{−V}で出力していた場合はシフト動作しない様に修正してレベルシフト方向信号DLSを出力する。
【0036】
そして、レベルシフト方向信号DLSにより、サブコンバータ4の直流電圧であるサブコンデンサ9の電圧バランスを保つ制御が為されるが、所定の時間間隔でレベルシフト動作を制限するための補正許可信号PPを生成する。これは、サブコンデンサ9の電圧のバランス制御が、上述した交流電流を交流電流指令に追従させる電流制御より効果が大きく、電流制御が発散する恐れを回避するもので、バランス制御量を調節することで適切な制御が可能になる。ここで、レベルシフト動作を許可、禁止するタイミングとその時比率については、自由に設定することができる。
【0037】
このように、サブコンデンサ9の電圧バランスが崩れた場合に、{−V、0、+V}から成るサブコンバータ4の出力電圧レベルを三相同時にレベルシフトすることで、各相のエネルギ収支をコントロールして、サブコンデンサ9の電圧バランスを安定に保つことができる。そして、このようなサブコンデンサ9の電圧のバランス制御をしつつ、交流電流を交流電流指令に追従させる電流制御を行う。
【0038】
この電力変換装置は、交流電力を一定の直流電力に変換する通常制御モード時には、入力力率制御を行ういわゆる高力率コンバータ動作をする。この場合、電源電圧の急峻な変化などの場合を除いて、サブコンバータ4の交流側の出力電圧レベルを切り替えるスイッチング制御のみで、交流電流を増加、減少させて交流電流の瞬時値を交流電流指令に追従させ、メインコンバータ3は交流電源1の位相に同期した1周期に1パルスのスイッチングのみでよい。このようにメインコンバータ3は低周波数でスイッチングし、電圧レベルの小さなサブコンバータ4を交流電流を抑制させるように高周波でスイッチングして、交流電流の瞬時値制御を行うため、CPUの能力に依らず高速な電流制御が実現できる。また、サブコンバータ4による交流電流の瞬時値制御は、2種のヒステリシス幅を用いた2段構成のヒステリシスコンパレータ33b、33cを用いるため、電源電圧に擾乱が生じた場合でも、安定して電流制御を継続することができ、制御の信頼性が向上する。
【0039】
そして、サブコンバータ4の出力制御では電流制御できず、さらに電流偏差が(±ia)を超えて大きくなると、メインコンバータ3の1パルス信号をオフにして過電流を抑制するため、電源電圧が瞬低や停電などで急峻に変化した場合等でも制御不能に陥ることなく、電力変換装置の運転を継続することが出来る。
また、サブコンバータ4の交流側の出力電圧レベルを切り替えるスイッチング制御は、三相のサブコンデンサ9の電圧をバランスさせるように出力電圧レベルをシフトさせる補正を施して行うため、各相のサブコンデンサ電圧がバランスして所定電圧に維持される。
【0040】
またこのような制御は、上述したように、交流電流指令を生成する電流指令値演算回路20以外の部分である、第1、第2の制御部を、コンパレータ回路30およびロジック回路40で構成されるハードロジック回路に集約して構成できる。このため、電流指令値演算回路20のみをCPUで構成すればよく、高価で複雑なCPUを要することがなく、さらに、CPUに取り込む情報の数が少ないためA/D変換器の数が低減でき、周辺回路の構成も簡便となる。従って、安価で簡便な制御装置12で、高速で信頼性の高い電流制御が実現できる。
【0041】
また、メインコンバータ3は低周波数でスイッチングし、電圧レベルの小さなサブコンバータ4を交流電流を抑制させるように高周波でスイッチングする構成であるため、交流リアクトル5も小型で良く、サブコンバータ4の半導体スイッチング素子の素子耐圧については、メインコンバータ3に使用する素子耐圧の5分の1程度の素子で良いので、オン抵抗の小さい低耐圧の素子で構成できる。
【0042】
次に、このように構成される電力変換装置の起動時におけるメインコンデンサ7とサブコンデンサ9の初期充電について説明する。図12は、メインコンデンサ7とサブコンデンサ9の初期充電動作を示すフローチャートである。
まず、電力変換装置の起動時に各コンデンサ7、9の初期充電を開始すると(S0)、主回路の電力変換器が停止した状態で、メインコンデンサ7を充電する。これは、交流電源1からAC/DCコンバータ113を介して、あるいはバッテリ110からDC/DCコンバータ111を介して充電する。メインコンデンサ7の電圧がほぼ0の状態から充電する際は交流電源1から充電し、電力変換装置が異常により停止し、その後、再起動する際などの場合はバッテリ110から充電する。交流電源1から充電する場合もAC/DCコンバータ113により制御されて充電動作を行うため、突入電流などの問題は発生しない(S1)。
【0043】
メインコンデンサ7の充電が完了すると(S2)、電力変換器を起動する。このとき、制御装置12は充電制御モードで起動する(S3)。そして、電力変換器を運転して各サブコンデンサ9を充電する。制御装置12のサブコンバータゲートパルス生成回路42から出力されるサブコンバータゲートパルス48は、出力段に設けられたゲートパルス切替部100にて切り替えられ、各サブコンバータ4内の半導体スイッチング素子は全てオフするように制御される。メインコンバータ3は通常制御モードと同様に生成される第1の制御信号により制御される。即ち、メインコンバータ3は、交流電流が正常範囲内で変動する時は交流電源1の位相に基づく1パルス信号から成るゲート駆動信号で制御され、交流電流の異常時にはゲート駆動信号はオフし、交流電流を抑制するように制御される。これにより、交流電流を抑制しつつ各サブコンデンサ9が充電される(S4)。
【0044】
全相のサブコンデンサ9の充電が完了したかどうか判定し(S5)、全相の充電完了前で、各相いずれかのサブコンデンサ9の充電完了を検出すると(S6)、充電未完了のサブコンデンサ9のみ充電を継続する。これは、充電完了したサブコンデンサ9をパスするスルーモード(充電停止)になるように、サブコンバータゲートパルス48はゲートパルス切替部100にて切り替えられて、対応するサブコンバータ4内の所定の半導体スイッチング素子はオンされる。残りのサブコンバータ4は、全半導体スイッチング素子がオフされた状態を継続する。ここでもメインコンバータ3は通常制御モードと同様に生成される第1の制御信号により制御され、交流電流を抑制しつつ充電未完了のサブコンデンサ9が充電される(S7)。
ステップS5にて全相のサブコンデンサ9の充電が完了すると、各コンデンサ7、9の初期充電は完了し(S8)、制御装置12は通常制御モードで電力変換器を制御する。即ち、第1の制御信号を用いてメインコンバータ3を制御し、交流電流瞬時値が交流電流指令に追従するように生成された第2の制御信号を用いて各サブコンバータ4を制御し、電力変換器の通常運転に移行する(S9)。
【0045】
図13は、サブコンバータ4へのゲートパルスをサブコンデンサ充電時に切り替えるための充電切り替え回路200の例を示す図である。この充電切り替え回路200は、制御装置12のサブコンバータゲートパルス生成回路42内にあり、ゲートパルス切替部100(100r、100s、100t)を備えて、ゲートパルス切替部100(100r、100s、100t)は、サブコンバータゲートパルス生成回路42(42r、42s、42t)内でサブコンバータゲートパルス48(48r、48s、48t)の出力段に挿入される。なお、図6ではR相分のサブコンバータゲートパルス生成回路42r内のゲートパルス切替部100rの位置のみを示している。
図13に示すように、充電切り替え回路200は、ゲートパルス切替部100と、各相のサブコンデンサ9の充電完了を判定するコンパレータ101〜103と、各相の充電完了フラグを生成するフリップフロップ104〜106と、AND回路107とを備え、ゲートパルス切替部100は、フリップフロップ104〜106の出力によりサブコンバータ4へのゲートパルスを切り替えて出力する。
【0046】
初期充電開始時に、メインコンデンサ7の充電が完了すると、電力変換器を充電制御モードで起動するが、このとき、コンバータ起動信号が充電切り替え回路200に入力される。コンバータ起動信号はフリップフロップ104〜106に入力され、フリップフロップ104〜106の出力はリセットされる。これによりサブコンバータゲートパルス生成回路42から出力される全てのサブコンバータゲートパルス48はオフ状態となる。この状態は、上述した初期充電動作におけるステップS4の状態で、全相のサブコンデンサ9が充電される。
【0047】
次に、例えばR相のサブコンデンサ9だけが充電完了したとすると、コンパレータ101およびフリップフロップ104の出力のみ「H」に変化して、R相のサブコンバータ4へのゲートパルスであるXPOUT(R)とYPOUT(R)がオフ、XNOUT(R)とYNOUT(R)がオンとなる。この状態は、上述した初期充電動作におけるステップS7の状態で、R相のサブコンバータ4はサブコンデンサ9をパスするスルーモード(充電停止)になり、充電未完了のS相、T相のサブコンデンサ9のみ充電を継続する。
【0048】
全相のサブコンデンサ9が充電完了するとフリップフロップ104〜106の出力が全て「H」になり、AND回路107の出力が「H」となる。これによりゲートパルス切替部100内の各セレクタ108の出力が「L」に固定されていた状態から、ゲートパルス切替部100に入力される前状態である各相のXPINおよびYPINに切り替わり、上述したステップS9で示したように通常制御モードでの制御が開始される。
【0049】
この実施の形態では、電力変換装置の起動時に、電力変換器の起動に先立って、メインコンデンサ7を交流電源1からAC/DCコンバータ113を介して、あるいはバッテリ110からDC/DCコンバータ111を介して充電する。その後、電力変換器を起動して、充電制御モードによりメインコンバータ3およびサブコンバータ4を出力制御することで各サブコンデンサ9を充電する。そして、全てのコンデンサ7、9の充電が完了すると、通常制御モードによりメインコンバータ3およびサブコンバータ4を出力制御する。
メインコンバータ3は、通常制御モード、充電制御モードの双方で同様に第1の制御信号にて制御され、即ち、交流電流が正常範囲内で変動する時は交流電源1の位相に基づく1パルス信号から成るゲート駆動信号で制御され、交流電流の異常時にはゲート駆動信号はオフし、交流電流を抑制するように制御される。
サブコンバータ4は、通常制御モードでは、交流電流が交流電流指令に追従するように生成された第2の制御信号により制御されているが、充電制御モードでは、充電対象のサブコンデンサ9を備えたサブコンバータ4内の半導体スイッチング素子を全てオフしてサブコンデンサ9を充電する。
【0050】
このように、サブコンデンサ9を充電する充電制御モードでもメインコンバータ3を通常制御モードと同様に制御するため、交流電流を抑制して突入電流が流れるのを容易に防止でき、交流電源側に電圧歪みなどが発生するのを防止できる。また、充電制御と通常制御の切り替えは制御装置12のみで行うため、従来のように電流制限のための部品や電流経路を切り換える部品も不要で、簡略な構成で交流電源側の信頼性を損なうことなくサブコンデンサ9を初期充電できる。
【0051】
また、制御装置12は、充電切り替え回路200を備えて、電力変換器の起動時には充電制御モードに、全相のサブコンデンサ9が充電完了したことを検出して通常制御モードに切り替えるため、充電制御と通常制御の切り替えを制御装置12のみで容易で確実に行えて、通常制御に速やかに移行できる。
【0052】
また、メインコンデンサ7は、交流電源1からAC/DCコンバータ113を介して、あるいはバッテリ110からDC/DCコンバータ111を介して充電するため、メインコンデンサ7の充電時に突入電流などの問題は発生しない。さらに、メインコンデンサ7を充電した後に、電力変換器を起動してサブコンデンサ9を充電するようにしたため、充電制御モードでのサブコンデンサ9の充電が信頼性よく実施でき、上述した効果が確実に得られる。
【0053】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、交流側を三相交流とし、サブコンバータ4は各相で1個としたが、各相で複数個のサブコンバータ4を直列接続しても良い。また、交流側を単相交流としても良い。
図14は、この発明の実施の形態2による電力変換装置の主回路(電力変換器)およびメインコンデンサ充電回路の構成を示す図である。図14に示すように、電力変換器は、単相の交流電源1aからの交流電力を直流電力に変換する単相フルブリッジ回路から成るメインコンバータ3aの交流ライン側に、上記実施の形態1と同様のサブコンバータ4が2個直列接続され、さらに交流リアクトル5が接続されている。メインコンバータ3aは、直流側に電力貯蔵器としてのメインコンデンサ7が接続され、直流電力を交流側に回生することを想定して、ダイオードを逆並列に接続したIGBT等の自己消弧型の半導体スイッチング素子6を用いている。その他の構成は上記実施の形態1と同様である。
【0054】
この場合も、上記実施の形態1と同様に、制御装置12は、充電制御モードと通常制御モードとを有して電力変換器を制御する。また、電力変換装置の起動時に上記実施の形態1の初期充電動作と同様に、メインコンデンサ7およびサブコンデンサ9を充電する(図12参照)。
即ち、電力変換装置の起動時に各コンデンサ7、9の初期充電を開始すると(S0)、まず主回路の電力変換器が停止した状態で、メインコンデンサ7を、交流電源1からAC/DCコンバータ113を介して、あるいはバッテリ110からDC/DCコンバータ111を介して充電する(S1)。
メインコンデンサ7の充電が完了すると(S2)、電力変換器を充電制御モードで起動する(S3)。そして、電力変換器を運転して各サブコンデンサ9を充電する。メインコンバータ3は通常制御モードと同様に生成される第1の制御信号により制御され、各サブコンバータ4内の半導体スイッチング素子は全てオフするように制御される(S4)。
全てのサブコンデンサ9の充電が完了したかどうか判定し(S5)、全ての充電は未完了で、いずれかのサブコンデンサ9の充電完了を検出すると(S6)、充電完了したサブコンバータ4はスルーモード(充電停止)に切り替え、充電未完了のサブコンデンサ9のみ半導体スイッチング素子は全てオフして充電を継続する(S7)。
ステップS5にて全相のサブコンデンサ9の充電が完了すると、各コンデンサ7、9の初期充電は完了し(S8)、制御装置12は通常制御モードで電力変換器を制御し、電力変換器の通常運転に移行する(S9)。
【0055】
この実施の形態においても、サブコンデンサ9を充電する充電制御モードにおいてメインコンバータ3を通常制御モードと同様に制御することで、交流電流を抑制して突入電流が流れるのを容易に防止でき、交流電源側に電圧歪みなどが発生するのを防止できる。また、充電制御と通常制御の切り替えは制御装置12のみで行うため、簡略な構成で交流電源側の信頼性を損なうことなくサブコンデンサ9を初期充電でき、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
また、電圧レベルが大きなメインコンバータ3は低周波数でスイッチングし、電圧レベルの小さなサブコンバータ4を交流電流を抑制させるように高周波でスイッチングする構成は、実施の形態1と同様であるが、この実施の形態では、2個のサブコンバータ4を直列接続することで発生電圧を分担できるため、各サブコンバータ4の電圧レベルをさらに小さくでき、スイッチング損失をさらに低減できる。これにより電力変換装置の効率を向上させ、さらに電磁ノイズも減らすことができる。
【0056】
なお、2個のサブコンバータ4のサブコンデンサ9の電圧は異なるものでも良く、電圧比率(Vsub1とVsub2の比率)を、例えば、2:1や3:1など、製品仕様に合わせて設定することができる。例えばメインコンデンサ7の電圧とVsub1とVsub2との電圧比が4:2:1の関係であると、メインコンバータ3aと2つのサブコンバータ4の組み合わせにより、これらの発生電圧の総和で0〜7の8階調の電圧を交流側に発生することができる。このため、より正弦波に近い滑らかな電圧波形が電力変換器の交流側に得られ、高調波をより抑制することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 三相交流電源、1a 交流電源、3,3a メインコンバータ、
4 サブコンバータ、7 電力貯蔵器としてのメインコンデンサ、7a 電圧センサ、
9 電力貯蔵器としてのサブコンデンサ、9a 電圧センサ、10 電流センサ、
11 PLL回路、12 制御装置、
20 電流指令演算部としての電流指令値演算回路、
33a 第1のヒステリシスコンパレータ、33b 第2のヒステリシスコンパレータ、33c 第3のヒステリシスコンパレータ、
42,42r サブコンデンサゲートパルス生成回路、
43,43r メインコンバータゲートパルス生成回路、
48(48r,48s,48t) 第2の制御信号としてのサブコンバータゲートパルス、
100(100r,100s,100t) ゲートパルス切替部、
111 DC/DCコンバータ、113 AC/DCコンバータ、
200 充電切り替え回路、i 交流電流(瞬時値)。
【技術分野】
【0001】
この発明は、交流直流変換機能を持つ電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電力変換装置として回生制御可能なコンバータを以下に示す。
三相のメインコンバータの各相の交流入力線に、メインコンバータの直流電圧より小さい直流電圧を有する単相のサブコンバータの交流側を直列接続して電力変換器を構成する。そして、メインコンバータを半周期に1パルスのゲートパルスにて駆動し、サブコンバータの交流端子の発生電圧を、交流電源電圧とメインコンバータの交流端子の発生電圧との差分となるように制御する。これにより、リアクトルを大きくすることなく高調波を抑制でき、電力損失および電磁ノイズも低減できる(例えば、特許文献1参照)。
また、このような電力変換装置のメインコンバータ、サブコンバータの各直流電力を蓄積する電力貯蔵器を初期充電する従来の技術を以下に示す。
系統電源と電力変換器との間に充電用抵抗あるいはリアクトルを設けて、系統電源から充電用抵抗あるいはリアクトルを介する電流経路によりメインコンバータおよびサブコンバータの直流側電力貯蔵器の初期充電を行う。これにより、初期充電時の各電力貯蔵器への突入電流を抑制できる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2007/129456
【特許文献2】国際公開WO2007/129469
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電力変換装置では、各電力貯蔵器の初期充電時に充電用抵抗あるいはリアクトルを介する電流経路にて電力貯蔵器を充電する。しかしながら、初期充電時の各電力貯蔵器への突入電流は、充電用抵抗あるいはリアクトルにより制限されても充分ではなく、この突入電流により交流電源側に電圧歪みが発生するという問題があった。また、充電用抵抗やリアクトルだけでなく、電力変換器の通常運転時にこれらをバイパスさせるリレーなどの切り換えの為の部品が必要で、部品点数も増大するものであった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解消するために成されたものであって、それぞれ直流側に電力貯蔵器を有するメインコンバータとサブコンバータとが直列接続された電力変換装置において、交流電源側の信頼性を損なうことなく簡略な構成で電力貯蔵器を初期充電することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電力変換装置は、それぞれ複数の半導体スイッチング素子を有して交流と直流との間で電力変換を行い、直流側に有した各電力貯蔵器に出力するメインコンバータおよびサブコンバータを備え、上記メインコンバータの直流電圧は上記サブコンバータの直流電圧より大きく、上記メインコンバータと交流電源との間に上記サブコンバータを配置して直列接続した電力変換器と、該電力変換器を制御する制御装置とを備える。この制御装置は、交流電流指令を生成する電流指令演算部と、上記交流電源の位相および上記交流電流指令に基づいて交流電流瞬時値を抑制するように上記メインコンバータへの第1の制御信号を生成する第1の制御部と、上記交流電流瞬時値が上記交流電流指令に追従するように上記サブコンバータへの第2の制御信号を生成する第2の制御部とを有する。また、上記制御装置は、上記メインコンバータの電力貯蔵器が充電完了した状態で上記サブコンバータの電力貯蔵器を充電する充電制御モードと、上記メインコンバータおよび上記サブコンバータの各電力貯蔵器の充電完了後に上記第1、第2の制御信号を生成して上記電力変換器を制御する通常制御モードとを有し、上記充電制御モードでは、上記第1の信号を生成して上記メインコンバータを制御すると共に、上記サブコンバータ内の上記複数の半導体スイッチング素子を全てオフさせて上記サブコンバータの電力貯蔵器を充電するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によると、通常制御モードのメインコンバータの出力制御において、交流電流瞬時値の抑制制御を行っている。このため、サブコンバータの電力貯蔵器を充電する充電制御モードでもメインコンバータを同様に制御することで、交流電流瞬時値を抑制して突入電流が流れるのを容易に防止でき、交流電源側に電圧歪みなどが発生するのを防止できる。また、通常制御と充電制御との切り替えは制御装置のみで行うことができ、電流制限のための部品や電流経路を切り換える部品も不要で、簡略な構成で交流電源側の信頼性を損なうことなくサブコンバータの電力貯蔵器を初期充電できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による電力変換装置の主回路(電力変換器)およびメインコンデンサ充電回路の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による電力変換装置の通常動作を説明する各部の波形図である。
【図3】この発明の実施の形態1による制御装置のハードウェア構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1による制御装置の電流指令値演算回路(CPU)の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1による制御装置においてメインコンバータの出力制御を担う第1の制御部の構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1による制御装置においてサブコンバータの出力制御を担う第2の制御部の構成を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1による制御装置においてサブコンバータの出力制御を担う第2の制御部の構成の一部を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1による第1の制御部によるメインコンバータの制御を説明する図である。
【図9】この発明の実施の形態1による第2の制御部によるサブコンバータの制御を説明する図である。
【図10】この発明の実施の形態1による第2の制御部によるサブコンバータの制御を説明する図である。
【図11】この発明の実施の形態1によるサブコンバータのゲート駆動信号のパターンを示す図である。
【図12】この発明の実施の形態1による電力変換装置の初期充電動作を説明するフローチャートである。
【図13】この発明の実施の形態1によるサブコンデンサの充電切り替え回路の構成を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態2による電力変換装置の主回路(電力変換器)およびメインコンデンサ充電回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による電力変換装置について説明する。図1はこの発明の実施の形態1による電力変換装置の主回路(電力変換器)およびメインコンデンサ充電回路の構成図である。電力変換器は、具体的には三相交流電源(系統電源)1からの電力を直流電力に変換して直流負荷2に供給する電力変換器である。
図1に示すように、三相交流電力を直流電力に変換するメインコンバータ3の交流ライン側の各相に、単相フルブリッジ回路から成るサブコンバータ4および交流リアクトル5が、それぞれ接続されている。メインコンバータ3は、直流側に電力貯蔵器としてのメインコンデンサ7が接続された三相2レベルコンバータで、直流電力を交流側に回生することを想定して、ダイオードを逆並列に接続したIGBT等の自己消弧型の半導体スイッチング素子6を用いている。
【0010】
ここで用いる半導体スイッチング素子6はIGBT以外にも、GCT、GTO、トランジスタ、MOSFET等でも、また自己消弧機能がないサイリスタ等でも強制転流動作が可能であればよい。また、直流負荷2に図示しないインバータ回路を介してモータ等が接続されたときの回生電力の処理で、インバータ回路部にブレーキ抵抗などが付随しており、直流電力を交流系統に回生させる必要がない場合は自己消弧型半導体素子(半導体スイッチング素子6)をダイオードに置き換えてもよい。なお、メインコンバータ3の各相(R相、S相、T相)のアームを構成するP側、N側の各半導体スイッチング素子6を、RP、RN、SP、SN、TP、TNと称す。
【0011】
サブコンバータ4は、複数のMOSFET等の自己消弧型の半導体スイッチング素子8から成る単相フルブリッジ回路と、それぞれ独立した電圧貯蔵器としてのサブコンデンサ9とを備える。この場合も、半導体スイッチング素子8はMOSFET以外にも、ダイオードを逆並列に接続したIGBT、GCT、GTO、トランジスタ等でも、また自己消弧機能がないサイリスタ等でも強制転流動作が可能であればよい。また各相サブコンバータ4の交流電源側のアームをX側アーム、負荷側のアームをY側アームと称し、P側、N側の各半導体スイッチング素子8を、XP、XN、YP、YNと称す。
そして、サブコンバータ4は、図示された極性に充電された直流電圧を交流端子間に任意の期間で出力(出力電圧:Vsub)することができる。具体的には直流電圧をVとした場合、半導体スイッチング素子8のオン・オフの組合せによってVsub={−V,0,+V}の3レベルの電圧値をサブコンバータ4の交流端子間に印加することができる。
【0012】
また、メインコンバータ3のメインコンデンサ7の電圧Vdcを検出する電圧センサ7aと、各相のサブコンバータ4のサブコンデンサ9の電圧Vbr、Vbs、Vbtを検出する電圧センサ9aと、三相交流電源1から入力される各相の交流電流i(ir、is、it)を検出する電流センサ10と、三相交流電源1の位相を検出するPLL回路11とを備える。なお、交流電流iは矢印の向きを正とする。
また、メインコンデンサ7を初期充電するために、メインコンデンサ7にバッテリ110から充電するためのDC/DCコンバータ111と、メインコンデンサ7に交流電源1から充電するためのAC/DCコンバータ113とを有するメインコンデンサ充電回路を備える。
【0013】
このように構成される電力変換器は、例えば、三相交流電源1が200V系の交流系統で、直流出力電圧であるメインコンデンサ7の電圧Vdcが250V、各相のサブコンデンサ9の電圧を60Vとした場合、メインコンバータ3を600V耐圧の素子で、サブコンバータ4を100V耐圧の素子で構成することができる。また、三相交流電源1が400V系の交流系統で、直流出力電圧であるメインコンデンサ7の電圧Vdcが500V、各相のサブコンデンサ9の電圧を60Vとした場合、メインコンバータ3を1200V耐圧の素子で、サブコンバータ4を100V耐圧の素子で構成することができる。
また、交流直流変換が可能な電力変換器は、直流側が太陽光や燃料電池等のエネルギ源で交流系統へ連系し電力授受を行うものでも良い。その場合は、メインコンデンサ7を初期充電するためのバッテリ110、コンバータ111、113は不要である。
【0014】
このように構成される電力変換器の動作について以下に説明する。図2は、メインコンバータ3の例えばR相の出力電圧Vmain、メインコンバータ3を構成する各半導体スイッチング素子6(RP、RN、SP、SN、TP、TN)のゲート駆動信号、およびR相サブコンバータ4の出力電圧Vsubの各波形を示す図である。ここでは、1相あたりの電圧を説明する。
図に示すように、メインコンバータ3の各半導体スイッチング素子6のゲート駆動信号は、電源相電圧の1周期に1パルスの信号(以下、1パルス信号と称す)である。R相の電源相電圧が正極性の時には、P側の半導体スイッチング素子RPはオン状態、N側の半導体スイッチング素子RNはオフ状態であり、R相の電源相電圧が負極性の時には、半導体スイッチング素子RPはオフ状態、半導体スイッチング素子RNはオン状態である。
【0015】
電力変換器の動作の基本は、直流出力電圧であるメインコンバータ3のメインコンデンサ7の直流電圧Vdcが維持されるように、交流−直流間で電力変換を行い、そのため交流側に電源電圧と同じ電圧である正弦波電圧を発生させるように動作する。
交流電源1の仮想中性点から見たメインコンバータ3のR相の出力電圧Vmainは、図に示すような階段状の波形となる。R相のサブコンバータ4は、半導体スイッチング素子8を細かくオン・オフして、電源相電圧とメインコンバータ3のR相の出力電圧Vmainとの差電圧を出力(出力電圧:Vsub)する。なお、サブコンバータ4のスイッチング制御についての詳細は後述するが、交流電流iは力率1となるように制御される。
【0016】
図3は、このような電力変換器を制御する制御装置12のハードウェア構成を示す図である。制御装置12は、メインコンバータ3および各相のサブコンバータ4の各半導体スイッチング素子6、8のゲート駆動信号を生成して、メインコンバータ3および各相のサブコンバータ4を制御する。なお、メインコンバータ3を制御するゲート駆動信号が第1の制御信号、各相のサブコンバータ4を制御するゲート駆動信号が第2の制御信号である。
図3に示すように、制御装置12は、CPUから成り各相の交流電流指令を演算する電流指令演算部としての電流指令値演算回路20と、コンパレータ回路30およびロジック回路40で構成されるハードロジック回路とで構成される。ロジック回路40には、FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)等が用いられる。
【0017】
コンパレータ回路30は、電圧センサ9aから得られる各相のサブコンデンサ9の電圧Vbr、Vbs、Vbtのアンバランスを検出するコンパレータ31(以下、第1のコンパレータ31と称す)と、電流センサ10から得られる各相交流電流ir、is、itの極性を検出するコンパレータ32(以下、第2のコンパレータ32と称す)と、複数のヒステリシスコンパレータから成る電流瞬時値制御回路33とを備える。電流瞬時値制御回路33は、各相交流電流ir、is、itの瞬時値が電流指令値演算回路20にて生成された各相の交流電流指令に追従するように、メインコンバータ3および各相のサブコンバータ4に対応する指令信号を出力する。
ロジック回路40は、第1、第2のコンパレータ31、32の出力に基づいて、各相のサブコンデンサ9の電圧バランスを補正するバランス補正回路41と、サブコンバータゲートパルス生成回路42と、メインコンバータゲートパルス生成回路43とを備える。
【0018】
CPUから成る電流指令値演算回路20の制御ハードウェアの詳細を図4に示す。この電流指令値演算回路20は、マイコンやDSP(Digital Signal Processor)などを用いて構成することができる。
図に示すように、電流指令値演算回路20は、電圧センサ9aから得られる各相のサブコンデンサ9の電圧Vbr、Vbs、Vbt、および電圧センサ7aから得られるメインコンデンサ7の電圧Vdcを、A/Dコンバータを介して入力し、さらに三相交流電源1の線間電圧位相を、PLL回路11等、位相検出が可能なICの出力信号からディジタル信号として入力する。各相のサブコンデンサ電圧Vbr、Vbs、Vbtを入力として、三相分の平均値であるサブコンデンサ平均電圧を回路21にて計算する。そして、サブコンデンサ平均電圧がサブコンデンサ電圧指令に追従するように、即ち差分が0になるように回路22にてPI制御した出力をメインコンデンサ電圧指令に加算し、メインコンデンサ電圧指令を調整する。そして、メインコンデンサ電圧Vdcと調整後のメインコンデンサ電圧指令との差分を電流指令生成回路24に入力する。
【0019】
また、PLL回路11から入力された線間電圧位相に基づいて、各相の基準正弦波を回路23にて演算し、該基準正弦波は電流指令生成回路24に入力される。電流指令生成回路24では、メインコンデンサ電圧Vdcと調整後のメインコンデンサ電圧指令との差分が回路25に入力され、メインコンデンサ電圧Vdcが調整後のメインコンデンサ電圧指令に追従するように、即ち差分が0になるように回路25にてPI制御して交流電流指令の振幅を演算する。そして、交流電流指令の振幅に回路23からの各相基準正弦波を乗じて各相の交流電流指令となる電流指令値を演算する。
演算された各相の交流電流指令は、D/Aコンバータを介して電流指令値演算回路20から出力される。
【0020】
このように、電流指令値演算回路20では、サブコンバータ4の直流電圧としてのサブコンデンサ平均電圧がサブコンデンサ電圧指令に追従するように、メインコンバータ3の直流電圧指令であるメインコンデンサ電圧指令を調整し、メインコンデンサ電圧Vdcがメインコンデンサ電圧指令に追従するように交流電流指令を生成する。言い換えれば、交流電流指令をコントロールすることによって、サブコンデンサ平均電圧およびメインコンデンサ電圧Vdcをそれぞれ所望の電圧に維持する。また、サブコンデンサ平均電圧を一定に制御するために、メインコンデンサ電圧指令を調整することで、サブコンバータ4は、直流部に電力供給要素を必要とせず、サブコンデンサ9のみで電圧安定化が実現できる。
また、各相の交流電流指令を基準正弦波に基づいて生成しているため、各相交流電流ir、is、itは力率1となるように制御される。
【0021】
次に、メインコンバータ3の出力制御を担う第1の制御部と各相のサブコンバータ4の出力制御を担う第2の制御部について説明する。
第1の制御部および第2の制御部は、コンパレータ回路30およびロジック回路40を、メインコンバータ3の出力制御と各相のサブコンバータ4の出力制御とのそれぞれを担う機能で2つに分けた部分で、第1の制御部の詳細を図5に、第2の制御部の詳細を図6、図7に示す。
コンパレータ回路30内の電流瞬時値制御回路33は、第1〜第3のヒステリシスコンパレータ33a〜33cを備え、第1のヒステリシスコンパレータ33aは、第1の制御部の一部となり、第2、第3のヒステリシスコンパレータ33b、33cは、第2の制御部の一部となる。なお、電流瞬時値制御回路33では、電流指令値演算回路20にて生成された交流電流指令と各相の交流電流とを比較して指令信号を出力するが、ここで扱う交流電流は交流電流瞬時値であり、以後、単に交流電流と記載する場合は、交流電流瞬時値を示すものとする。
【0022】
メインコンバータ3の出力制御を担う第1の制御部は、第1のヒステリシスコンパレータ33aとメインコンバータゲートパルス生成回路43とを備え、図5は、第1の制御部のR相部分を図示したものである。なお、S相、T相についても同様の構成である。
図5に示すように、R相のメインコンバータゲートパルス生成回路43rは、1パルス信号生成回路44と判定回路45と電流抑制回路46とを備えて、メインコンバータ3のR相の半導体スイッチング素子RP、RN用のゲート駆動信号(以下、RPゲートパルス、RNゲートパルスと称す)を生成する。
1パルス信号生成回路44は、PLL回路11からの線間電圧位相に基づいて、電源相電圧の1周期に1パルスの信号(1パルス信号)から成るRPゲートパルス、RNゲートパルスを生成する(図2参照)。
以下、R相の制御について説明するが、他の各相も同様である。
【0023】
第1のヒステリシスコンパレータ33aは、交流電流irと電流指令値演算回路20にて生成された交流電流指令との電流偏差が、所定のヒステリシス幅(±ia)を超えると異常信号をメインコンバータゲートパルス生成回路43rへ出力する。メインコンバータゲートパルス生成回路43rでは、判定回路45が第1のヒステリシスコンパレータ33aからの異常信号を入力として、電流極性が負の時、半導体スイッチング素子RPをオフさせるRP遮断信号を出力し、電流極性が正の時、半導体スイッチング素子RNをオフさせるRN遮断信号を出力する。電流抑制回路46は、1パルス信号生成回路44および判定回路45の出力が入力され、RPゲートパルス、RNゲートパルスを通常時はそのまま出力し、判定回路45からRP遮断信号、RN遮断信号が入力されたときは、RPゲートパルス、RNゲートパルスを、その期間オフさせるよう補正して出力する。この電流抑制回路46から出力されるRPゲートパルス、RNゲートパルスが、メインコンバータゲートパルス生成回路43rの出力である第1の制御信号となり、R相の半導体スイッチング素子RP、RNを駆動制御する。
【0024】
メインコンバータ3は、交流電流irが正常範囲内で変動する時は1パルス信号から成るゲート駆動信号にて制御され、交流電流irを交流電流指令に追従させる制御は、サブコンバータ4の出力制御により行っている。このサブコンバータ4の出力制御の詳細は後述するものであるが、電源電圧が瞬低や停電などで急峻に変化した場合等、サブコンバータ4の出力制御では電流制御できず、過電流に陥る場合がある。その場合、第1のヒステリシスコンパレータ33aにて交流電流irと交流電流指令との電流偏差がヒステリシス幅(±ia)を超えたこと、即ち電流異常を検出し、上述したように、電流極性に応じて、メインコンバータ3のいずれかの半導体スイッチング素子RP、RNの1パルス信号をオフにする。
【0025】
例えば、図8に示すように、交流電流irが正の時、半導体スイッチング素子RNがオンして、図示される電流経路にて電流が流れる。この時、第1のヒステリシスコンパレータ33aが、電流異常を検出すると、判定回路45はRN遮断信号を出力して、メインコンバータゲートパルス生成回路43rが出力するRNゲートパルスはオフとなる。これにより、半導体スイッチング素子RNがオフして交流電流irが抑制される。そして、交流電流irと交流電流指令との差分が、所定のヒステリシス幅(±ia)内に抑制されると再び半導体スイッチング素子RNを、元のRNゲートパルス(1パルス信号)通りにオンする。このように、電源電圧が急峻に変化した場合でも、過電流に至る前に電流抑制でき、運転継続することが可能になる。
【0026】
次に、サブコンバータ4の出力制御を担う第2の制御部は、図6に示すように、第2、第3のヒステリシスコンパレータ33b、33cと、サブコンバータゲートパルス生成回路42rとを備える。また、図7に示すように、各相のサブコンデンサ9の電圧Vbr、Vbs、Vbtのアンバランスを検出する第1のコンパレータ31と、各相交流電流ir、is、itの極性を検出する第2のコンパレータ32と、第1、第2のコンパレータ31、32の出力に基づいて、各相のサブコンデンサ9の電圧バランスを補正するバランス補正回路41とを備える。
なお、図7は三相全ての部分を示しているが、図6に示す構成は、便宜上、R相部分のみであり、S相、T相についても同様の構成である。以下、図6を用いる説明では、R相の制御について説明するが、他の各相も同様である。
【0027】
図6に示すように、電流指令値演算回路20にて生成された交流電流指令と交流電流irとの電流偏差は第2、第3のヒステリシスコンパレータ33b、33cに入力される。
第3のヒステリシスコンパレータ33cのヒステリシス幅(±i2)は、第2のヒステリシスコンパレータ33bのヒステリシス幅(±i1)より広く、第1の制御部の第1のヒステリシスコンパレータ33aのヒステリシス幅(±ia)より狭い。即ち、絶対値で比較するとi1<i2<iaとなる。第2、第3のヒステリシスコンパレータ33b、33cは、入力された電流偏差が、ヒステリシス幅を超えると異常信号を出力し、その出力はサブコンバータゲートパルス生成回路42rに入力される。そしてサブコンバータゲートパルス生成回路42rの出力である第2の制御信号としてのサブコンバータゲートパルス48rにより、R相のサブコンバータ4内の各半導体スイッチング素子を駆動制御する。
また、サブコンバータゲートパルス生成回路42rは、出力段にゲートパルス切替部100rを備え、電力変換器の起動時にサブコンデンサ9を充電する際にサブコンバータゲートパルス48rを切り替えて出力する。なお、ゲートパルス切替部100rについての詳細は、後述する。
【0028】
サブコンバータ4の出力制御の基本構成を、以下に説明する。なお、制御装置12は、通常制御モードと、起動時にサブコンデンサ9を充電する際の充電制御モードを有しており、以下の説明は通常制御モードでの出力制御である。
サブコンバータ4は、フルブリッジ構成なので、直流電圧をVとした場合、{−V、0、+V}の3レベルを選択して交流側に出力する。図9(a)、図9(b)は、交流電流指令と交流電流irとの電流偏差を横軸に、サブコンバータ4の出力電圧レベルを縦軸にして、出力電圧レベルの切替を説明する図である。この場合、第2のヒステリシスコンパレータ33bを用いて、電流偏差がヒステリシス幅(±i1)を超えると、交流電流irが抑制されるように出力電圧レベルを切り替える。
この出力電圧レベルの切替は、図9(a)のように{−V}、{0}間の切替と、図9(b)のように{0}、{+V}間の切替との2種のモードがある。このモードは、PLL回路11からサブコンバータゲートパルス生成回路42rに入力される線間電圧位相に基づいて判定されるサブコンバータ4の出力極性に応じて決定される。そして、半導体スイッチング素子XP、XN、YP、YNへのゲート駆動信号であるサブコンバータゲートパルス48のスイッチングパターンの切替により、出力電圧レベルが切り替わる。
【0029】
上記のように、交流電流irを交流電流指令に追従させるように出力電圧レベルを切り替えるが、電源電圧位相の変動や位相検出系の遅れ等があると、サブコンバータ4の出力極性が乱れ、交流電流irは所望の範囲を逸脱する可能性がある。電流偏差が第2のヒステリシスコンパレータ33bのヒステリシス幅(±i1)を超えて、出力電圧レベルを切り替えても戻らない場合の補正を図10(a)、図10(b)に基づいて以下に示す。
図10(a)、図10(b)は、交流電流指令と交流電流irとの電流偏差を横軸に、サブコンバータ4の出力電圧レベルを縦軸にして、出力電圧レベルの切替を説明する図である。この場合、第2のヒステリシスコンパレータ33bを用いて、電流偏差がヒステリシス幅(±i1)を超えると交流電流irが抑制されるように出力電圧レベルを切り替え、さらに、第3のヒステリシスコンパレータ33cを用いて、電流偏差がヒステリシス幅(±i2)を超えると交流電流irが抑制されるように出力電圧レベルをさらに切り替える。
【0030】
図10(a)に示すように、電流偏差がマイナス方向に増加しΔi1を超えたときに、出力電圧レベルを{+V}から{0}に切り替えても、電流偏差(絶対値)が減少せず、増加し続けてΔi2を超えると、出力電圧レベルをさらに{0}から{−V}に切り替えて、強制的に電流極性を変化させて電流偏差(絶対値)を低減させる。また、図10(b)に示すように、電流偏差がプラス方向に増加しΔi1を超えたときに、出力電圧レベルを{−V}から{0}に切り替えても、電流偏差が減少せず、増加し続けてΔi2を超えると、出力電圧レベルをさらに{0}から{+V}に切り替えて強制的に電流極性を変化させて電流偏差(絶対値)を低減させる。
このように、通常制御モードでのサブコンバータ4の出力制御は、交流電流指令と交流電流irとの電流偏差が小さくなるように、サブコンバータ4の交流側の出力電圧レベルを切り替える制御である。そして、このような出力電圧レベルの切り替えを行うサブコンバータゲートパルス48rがサブコンバータゲートパルス生成回路42rにて生成される。
【0031】
図6に示すように、サブコンバータゲートパルス生成回路42rでは、第2、第3のヒステリシスコンパレータ33b、33cの出力が、フリップフロップ回路FF1、FF2、FF3に入力され、パルス信号として出力される。フリップフロップFF1は、第2のヒステリシスコンパレータ33bの出力に基づいて、出力電流制御の基本制御信号RX(以下、電流制御信号RXと称す)を出力し、電流制御信号RXは、サブコンバータ4のX側アームの駆動信号源となる。
また、PLL回路11からの線間電圧位相がサブコンバータゲートパルス生成回路42rに入力され、回路47にてサブコンバータ4の出力極性を判定して出力極性を切り替えるための極性制御信号RYを生成する。サブコンバータ4の極性制御信号RYは、サブコンバータ4のY側アームの駆動信号源に用いられる。なお、サブコンバータ4の出力極性は、図2で示したサブコンデンサの出力電圧Vsubを想定して位相から判定する。
【0032】
上記電流制御信号RX、極性制御信号RYから、半導体スイッチング素子XP、XN、YP、YNへのゲート駆動信号であるサブコンバータゲートパルス48rは、図11に示すようにA〜Dの4種のスイッチングパターンで決定できる。このサブコンバータゲートパルス48rの決定に先立ち、後述する各相サブコンデンサ電圧のバランス制御により得られたシフト補正信号としてのレベルシフト方向信号DLSと補正許可信号PPとに基づいて、電流制御信号RX、極性制御信号RYを所定のロジックで変更する。そして、フリップフロップ回路FF2、FF3から、第2、第3のヒステリシスコンパレータ33b、33cの出力に基づいた電流制御信号が出力され、該出力に応じて、サブコンバータ4の出力電圧レベルをさらに切り替えて強制的に電流極性を変化させるように、サブコンバータゲートパルス48rは修正されて出力される。
【0033】
以上のように、交流電流指令と交流電流irとの電流偏差が小さくなるように、サブコンバータ4の交流側の出力電圧レベルを切り替える制御を行う。この電流制御は各相毎に行われるのに対し、用いられる交流電流指令は、電流指令値演算回路20において各相のサブコンデンサ電圧Vbr、Vbs、Vbtの平均値であるサブコンデンサ平均電圧を用いて演算したものである。このため制御の信頼性を高めるため、サブコンバータ4の出力制御を担う第2の制御部は、図7に示す回路構成を有して、各相のサブコンデンサ9の電圧バランスを補正する。そして、生成されたレベルシフト方向信号DLSと補正許可信号PPは、各相のサブコンバータゲートパルス生成回路42(42r)に入力され、サブコンバータゲートパルス48は、各相のサブコンデンサ9の電圧がバランスするように出力される。
【0034】
図7に示すように、第1のコンパレータ31は、電圧センサ9aから得られる各相のサブコンデンサ9の電圧Vbr、Vbs、Vbtのアンバランスを検出し、第2のコンパレータ32は、電流センサ10から得られる各相交流電流ir、is、itの極性を検出する。そして、第1、第2のコンパレータ31、32の出力と、各相のサブコンバータゲートパルス生成回路42(42r)内で生成された各相の電流制御信号RX、SX、TX、極性制御信号RY、SY、TYに基づいて、バランス補正回路41により、レベルシフト方向信号DLSと補正許可信号PPを生成する。バランス補正回路41内では、まず、第1、第2のコンパレータ31、32の出力に基づいて、サブコンバータ4の全相の出力電圧レベルの正負いずれかの方向にシフトさせる要否を判定し、各相の電流制御信号RX、SX、TX、極性制御信号RY、SY、TYに基づいて、実際の制御に合致したレベルシフト方向信号DLSと補正許可信号PPを生成する。
【0035】
具体的には、三相のうち、ある相のサブコンデンサ9の電圧が上限しきい値を超え、交流電流極性が負、もしくは、サブコンデンサ9の電圧が下限しきい値以下で、交流電流極性が正、即ち、交流電源1から負荷2の方向に電流が流れている条件となった時に、各相のサブコンバータ4の出力電圧レベルを各相同時にプラス方向へシフトさせる補正要と判定する。ただし、いずれかの相が{+V}で出力していた場合はシフト動作しない様に修正してレベルシフト方向信号DLSを出力する。また、ある相のサブコンデンサ9の電圧が上限しきい値を超え、交流電流が正、もしくは、サブコンデンサ9の電圧が下限しきい値以下で、交流電流が負の条件となった時に、各相のサブコンバータ4の出力電圧レベルを各相同時にマイナス方向へシフトさせる補正要と判定する。ただし、いずれかの相が{−V}で出力していた場合はシフト動作しない様に修正してレベルシフト方向信号DLSを出力する。
【0036】
そして、レベルシフト方向信号DLSにより、サブコンバータ4の直流電圧であるサブコンデンサ9の電圧バランスを保つ制御が為されるが、所定の時間間隔でレベルシフト動作を制限するための補正許可信号PPを生成する。これは、サブコンデンサ9の電圧のバランス制御が、上述した交流電流を交流電流指令に追従させる電流制御より効果が大きく、電流制御が発散する恐れを回避するもので、バランス制御量を調節することで適切な制御が可能になる。ここで、レベルシフト動作を許可、禁止するタイミングとその時比率については、自由に設定することができる。
【0037】
このように、サブコンデンサ9の電圧バランスが崩れた場合に、{−V、0、+V}から成るサブコンバータ4の出力電圧レベルを三相同時にレベルシフトすることで、各相のエネルギ収支をコントロールして、サブコンデンサ9の電圧バランスを安定に保つことができる。そして、このようなサブコンデンサ9の電圧のバランス制御をしつつ、交流電流を交流電流指令に追従させる電流制御を行う。
【0038】
この電力変換装置は、交流電力を一定の直流電力に変換する通常制御モード時には、入力力率制御を行ういわゆる高力率コンバータ動作をする。この場合、電源電圧の急峻な変化などの場合を除いて、サブコンバータ4の交流側の出力電圧レベルを切り替えるスイッチング制御のみで、交流電流を増加、減少させて交流電流の瞬時値を交流電流指令に追従させ、メインコンバータ3は交流電源1の位相に同期した1周期に1パルスのスイッチングのみでよい。このようにメインコンバータ3は低周波数でスイッチングし、電圧レベルの小さなサブコンバータ4を交流電流を抑制させるように高周波でスイッチングして、交流電流の瞬時値制御を行うため、CPUの能力に依らず高速な電流制御が実現できる。また、サブコンバータ4による交流電流の瞬時値制御は、2種のヒステリシス幅を用いた2段構成のヒステリシスコンパレータ33b、33cを用いるため、電源電圧に擾乱が生じた場合でも、安定して電流制御を継続することができ、制御の信頼性が向上する。
【0039】
そして、サブコンバータ4の出力制御では電流制御できず、さらに電流偏差が(±ia)を超えて大きくなると、メインコンバータ3の1パルス信号をオフにして過電流を抑制するため、電源電圧が瞬低や停電などで急峻に変化した場合等でも制御不能に陥ることなく、電力変換装置の運転を継続することが出来る。
また、サブコンバータ4の交流側の出力電圧レベルを切り替えるスイッチング制御は、三相のサブコンデンサ9の電圧をバランスさせるように出力電圧レベルをシフトさせる補正を施して行うため、各相のサブコンデンサ電圧がバランスして所定電圧に維持される。
【0040】
またこのような制御は、上述したように、交流電流指令を生成する電流指令値演算回路20以外の部分である、第1、第2の制御部を、コンパレータ回路30およびロジック回路40で構成されるハードロジック回路に集約して構成できる。このため、電流指令値演算回路20のみをCPUで構成すればよく、高価で複雑なCPUを要することがなく、さらに、CPUに取り込む情報の数が少ないためA/D変換器の数が低減でき、周辺回路の構成も簡便となる。従って、安価で簡便な制御装置12で、高速で信頼性の高い電流制御が実現できる。
【0041】
また、メインコンバータ3は低周波数でスイッチングし、電圧レベルの小さなサブコンバータ4を交流電流を抑制させるように高周波でスイッチングする構成であるため、交流リアクトル5も小型で良く、サブコンバータ4の半導体スイッチング素子の素子耐圧については、メインコンバータ3に使用する素子耐圧の5分の1程度の素子で良いので、オン抵抗の小さい低耐圧の素子で構成できる。
【0042】
次に、このように構成される電力変換装置の起動時におけるメインコンデンサ7とサブコンデンサ9の初期充電について説明する。図12は、メインコンデンサ7とサブコンデンサ9の初期充電動作を示すフローチャートである。
まず、電力変換装置の起動時に各コンデンサ7、9の初期充電を開始すると(S0)、主回路の電力変換器が停止した状態で、メインコンデンサ7を充電する。これは、交流電源1からAC/DCコンバータ113を介して、あるいはバッテリ110からDC/DCコンバータ111を介して充電する。メインコンデンサ7の電圧がほぼ0の状態から充電する際は交流電源1から充電し、電力変換装置が異常により停止し、その後、再起動する際などの場合はバッテリ110から充電する。交流電源1から充電する場合もAC/DCコンバータ113により制御されて充電動作を行うため、突入電流などの問題は発生しない(S1)。
【0043】
メインコンデンサ7の充電が完了すると(S2)、電力変換器を起動する。このとき、制御装置12は充電制御モードで起動する(S3)。そして、電力変換器を運転して各サブコンデンサ9を充電する。制御装置12のサブコンバータゲートパルス生成回路42から出力されるサブコンバータゲートパルス48は、出力段に設けられたゲートパルス切替部100にて切り替えられ、各サブコンバータ4内の半導体スイッチング素子は全てオフするように制御される。メインコンバータ3は通常制御モードと同様に生成される第1の制御信号により制御される。即ち、メインコンバータ3は、交流電流が正常範囲内で変動する時は交流電源1の位相に基づく1パルス信号から成るゲート駆動信号で制御され、交流電流の異常時にはゲート駆動信号はオフし、交流電流を抑制するように制御される。これにより、交流電流を抑制しつつ各サブコンデンサ9が充電される(S4)。
【0044】
全相のサブコンデンサ9の充電が完了したかどうか判定し(S5)、全相の充電完了前で、各相いずれかのサブコンデンサ9の充電完了を検出すると(S6)、充電未完了のサブコンデンサ9のみ充電を継続する。これは、充電完了したサブコンデンサ9をパスするスルーモード(充電停止)になるように、サブコンバータゲートパルス48はゲートパルス切替部100にて切り替えられて、対応するサブコンバータ4内の所定の半導体スイッチング素子はオンされる。残りのサブコンバータ4は、全半導体スイッチング素子がオフされた状態を継続する。ここでもメインコンバータ3は通常制御モードと同様に生成される第1の制御信号により制御され、交流電流を抑制しつつ充電未完了のサブコンデンサ9が充電される(S7)。
ステップS5にて全相のサブコンデンサ9の充電が完了すると、各コンデンサ7、9の初期充電は完了し(S8)、制御装置12は通常制御モードで電力変換器を制御する。即ち、第1の制御信号を用いてメインコンバータ3を制御し、交流電流瞬時値が交流電流指令に追従するように生成された第2の制御信号を用いて各サブコンバータ4を制御し、電力変換器の通常運転に移行する(S9)。
【0045】
図13は、サブコンバータ4へのゲートパルスをサブコンデンサ充電時に切り替えるための充電切り替え回路200の例を示す図である。この充電切り替え回路200は、制御装置12のサブコンバータゲートパルス生成回路42内にあり、ゲートパルス切替部100(100r、100s、100t)を備えて、ゲートパルス切替部100(100r、100s、100t)は、サブコンバータゲートパルス生成回路42(42r、42s、42t)内でサブコンバータゲートパルス48(48r、48s、48t)の出力段に挿入される。なお、図6ではR相分のサブコンバータゲートパルス生成回路42r内のゲートパルス切替部100rの位置のみを示している。
図13に示すように、充電切り替え回路200は、ゲートパルス切替部100と、各相のサブコンデンサ9の充電完了を判定するコンパレータ101〜103と、各相の充電完了フラグを生成するフリップフロップ104〜106と、AND回路107とを備え、ゲートパルス切替部100は、フリップフロップ104〜106の出力によりサブコンバータ4へのゲートパルスを切り替えて出力する。
【0046】
初期充電開始時に、メインコンデンサ7の充電が完了すると、電力変換器を充電制御モードで起動するが、このとき、コンバータ起動信号が充電切り替え回路200に入力される。コンバータ起動信号はフリップフロップ104〜106に入力され、フリップフロップ104〜106の出力はリセットされる。これによりサブコンバータゲートパルス生成回路42から出力される全てのサブコンバータゲートパルス48はオフ状態となる。この状態は、上述した初期充電動作におけるステップS4の状態で、全相のサブコンデンサ9が充電される。
【0047】
次に、例えばR相のサブコンデンサ9だけが充電完了したとすると、コンパレータ101およびフリップフロップ104の出力のみ「H」に変化して、R相のサブコンバータ4へのゲートパルスであるXPOUT(R)とYPOUT(R)がオフ、XNOUT(R)とYNOUT(R)がオンとなる。この状態は、上述した初期充電動作におけるステップS7の状態で、R相のサブコンバータ4はサブコンデンサ9をパスするスルーモード(充電停止)になり、充電未完了のS相、T相のサブコンデンサ9のみ充電を継続する。
【0048】
全相のサブコンデンサ9が充電完了するとフリップフロップ104〜106の出力が全て「H」になり、AND回路107の出力が「H」となる。これによりゲートパルス切替部100内の各セレクタ108の出力が「L」に固定されていた状態から、ゲートパルス切替部100に入力される前状態である各相のXPINおよびYPINに切り替わり、上述したステップS9で示したように通常制御モードでの制御が開始される。
【0049】
この実施の形態では、電力変換装置の起動時に、電力変換器の起動に先立って、メインコンデンサ7を交流電源1からAC/DCコンバータ113を介して、あるいはバッテリ110からDC/DCコンバータ111を介して充電する。その後、電力変換器を起動して、充電制御モードによりメインコンバータ3およびサブコンバータ4を出力制御することで各サブコンデンサ9を充電する。そして、全てのコンデンサ7、9の充電が完了すると、通常制御モードによりメインコンバータ3およびサブコンバータ4を出力制御する。
メインコンバータ3は、通常制御モード、充電制御モードの双方で同様に第1の制御信号にて制御され、即ち、交流電流が正常範囲内で変動する時は交流電源1の位相に基づく1パルス信号から成るゲート駆動信号で制御され、交流電流の異常時にはゲート駆動信号はオフし、交流電流を抑制するように制御される。
サブコンバータ4は、通常制御モードでは、交流電流が交流電流指令に追従するように生成された第2の制御信号により制御されているが、充電制御モードでは、充電対象のサブコンデンサ9を備えたサブコンバータ4内の半導体スイッチング素子を全てオフしてサブコンデンサ9を充電する。
【0050】
このように、サブコンデンサ9を充電する充電制御モードでもメインコンバータ3を通常制御モードと同様に制御するため、交流電流を抑制して突入電流が流れるのを容易に防止でき、交流電源側に電圧歪みなどが発生するのを防止できる。また、充電制御と通常制御の切り替えは制御装置12のみで行うため、従来のように電流制限のための部品や電流経路を切り換える部品も不要で、簡略な構成で交流電源側の信頼性を損なうことなくサブコンデンサ9を初期充電できる。
【0051】
また、制御装置12は、充電切り替え回路200を備えて、電力変換器の起動時には充電制御モードに、全相のサブコンデンサ9が充電完了したことを検出して通常制御モードに切り替えるため、充電制御と通常制御の切り替えを制御装置12のみで容易で確実に行えて、通常制御に速やかに移行できる。
【0052】
また、メインコンデンサ7は、交流電源1からAC/DCコンバータ113を介して、あるいはバッテリ110からDC/DCコンバータ111を介して充電するため、メインコンデンサ7の充電時に突入電流などの問題は発生しない。さらに、メインコンデンサ7を充電した後に、電力変換器を起動してサブコンデンサ9を充電するようにしたため、充電制御モードでのサブコンデンサ9の充電が信頼性よく実施でき、上述した効果が確実に得られる。
【0053】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、交流側を三相交流とし、サブコンバータ4は各相で1個としたが、各相で複数個のサブコンバータ4を直列接続しても良い。また、交流側を単相交流としても良い。
図14は、この発明の実施の形態2による電力変換装置の主回路(電力変換器)およびメインコンデンサ充電回路の構成を示す図である。図14に示すように、電力変換器は、単相の交流電源1aからの交流電力を直流電力に変換する単相フルブリッジ回路から成るメインコンバータ3aの交流ライン側に、上記実施の形態1と同様のサブコンバータ4が2個直列接続され、さらに交流リアクトル5が接続されている。メインコンバータ3aは、直流側に電力貯蔵器としてのメインコンデンサ7が接続され、直流電力を交流側に回生することを想定して、ダイオードを逆並列に接続したIGBT等の自己消弧型の半導体スイッチング素子6を用いている。その他の構成は上記実施の形態1と同様である。
【0054】
この場合も、上記実施の形態1と同様に、制御装置12は、充電制御モードと通常制御モードとを有して電力変換器を制御する。また、電力変換装置の起動時に上記実施の形態1の初期充電動作と同様に、メインコンデンサ7およびサブコンデンサ9を充電する(図12参照)。
即ち、電力変換装置の起動時に各コンデンサ7、9の初期充電を開始すると(S0)、まず主回路の電力変換器が停止した状態で、メインコンデンサ7を、交流電源1からAC/DCコンバータ113を介して、あるいはバッテリ110からDC/DCコンバータ111を介して充電する(S1)。
メインコンデンサ7の充電が完了すると(S2)、電力変換器を充電制御モードで起動する(S3)。そして、電力変換器を運転して各サブコンデンサ9を充電する。メインコンバータ3は通常制御モードと同様に生成される第1の制御信号により制御され、各サブコンバータ4内の半導体スイッチング素子は全てオフするように制御される(S4)。
全てのサブコンデンサ9の充電が完了したかどうか判定し(S5)、全ての充電は未完了で、いずれかのサブコンデンサ9の充電完了を検出すると(S6)、充電完了したサブコンバータ4はスルーモード(充電停止)に切り替え、充電未完了のサブコンデンサ9のみ半導体スイッチング素子は全てオフして充電を継続する(S7)。
ステップS5にて全相のサブコンデンサ9の充電が完了すると、各コンデンサ7、9の初期充電は完了し(S8)、制御装置12は通常制御モードで電力変換器を制御し、電力変換器の通常運転に移行する(S9)。
【0055】
この実施の形態においても、サブコンデンサ9を充電する充電制御モードにおいてメインコンバータ3を通常制御モードと同様に制御することで、交流電流を抑制して突入電流が流れるのを容易に防止でき、交流電源側に電圧歪みなどが発生するのを防止できる。また、充電制御と通常制御の切り替えは制御装置12のみで行うため、簡略な構成で交流電源側の信頼性を損なうことなくサブコンデンサ9を初期充電でき、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
また、電圧レベルが大きなメインコンバータ3は低周波数でスイッチングし、電圧レベルの小さなサブコンバータ4を交流電流を抑制させるように高周波でスイッチングする構成は、実施の形態1と同様であるが、この実施の形態では、2個のサブコンバータ4を直列接続することで発生電圧を分担できるため、各サブコンバータ4の電圧レベルをさらに小さくでき、スイッチング損失をさらに低減できる。これにより電力変換装置の効率を向上させ、さらに電磁ノイズも減らすことができる。
【0056】
なお、2個のサブコンバータ4のサブコンデンサ9の電圧は異なるものでも良く、電圧比率(Vsub1とVsub2の比率)を、例えば、2:1や3:1など、製品仕様に合わせて設定することができる。例えばメインコンデンサ7の電圧とVsub1とVsub2との電圧比が4:2:1の関係であると、メインコンバータ3aと2つのサブコンバータ4の組み合わせにより、これらの発生電圧の総和で0〜7の8階調の電圧を交流側に発生することができる。このため、より正弦波に近い滑らかな電圧波形が電力変換器の交流側に得られ、高調波をより抑制することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 三相交流電源、1a 交流電源、3,3a メインコンバータ、
4 サブコンバータ、7 電力貯蔵器としてのメインコンデンサ、7a 電圧センサ、
9 電力貯蔵器としてのサブコンデンサ、9a 電圧センサ、10 電流センサ、
11 PLL回路、12 制御装置、
20 電流指令演算部としての電流指令値演算回路、
33a 第1のヒステリシスコンパレータ、33b 第2のヒステリシスコンパレータ、33c 第3のヒステリシスコンパレータ、
42,42r サブコンデンサゲートパルス生成回路、
43,43r メインコンバータゲートパルス生成回路、
48(48r,48s,48t) 第2の制御信号としてのサブコンバータゲートパルス、
100(100r,100s,100t) ゲートパルス切替部、
111 DC/DCコンバータ、113 AC/DCコンバータ、
200 充電切り替え回路、i 交流電流(瞬時値)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数の半導体スイッチング素子を有して交流と直流との間で電力変換を行い、直流側に有した各電力貯蔵器に出力するメインコンバータおよびサブコンバータを備え、上記メインコンバータの直流電圧は上記サブコンバータの直流電圧より大きく、上記メインコンバータと交流電源との間に上記サブコンバータを配置して直列接続した電力変換器と、
交流電流指令を生成する電流指令演算部と、上記交流電源の位相および上記交流電流指令に基づいて交流電流瞬時値を抑制するように上記メインコンバータへの第1の制御信号を生成する第1の制御部と、上記交流電流瞬時値が上記交流電流指令に追従するように上記サブコンバータへの第2の制御信号を生成する第2の制御部とを有して上記電力変換器を制御する制御装置とを備え、
上記制御装置は、
上記メインコンバータの電力貯蔵器が充電完了した状態で上記サブコンバータの電力貯蔵器を充電する充電制御モードと、上記メインコンバータおよび上記サブコンバータの各電力貯蔵器の充電完了後に上記第1、第2の制御信号を生成して上記電力変換器を制御する通常制御モードとを有し、
上記充電制御モードでは、上記第1の制御信号を生成して上記メインコンバータを制御すると共に、上記サブコンバータ内の上記複数の半導体スイッチング素子を全てオフさせて上記サブコンバータの電力貯蔵器を充電することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
上記制御装置は、上記充電制御モードと上記通常制御モードとの切り替え回路を備え、該切り替え回路は、上記メインコンバータの電力貯蔵器が充電完了した状態で上記電力変換器を起動する際に上記充電制御モードとし、上記サブコンバータの電力貯蔵器の充電完了を検出して上記通常制御モードに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
コンバータを有して上記メインコンバータの電力貯蔵器を初期充電する手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
上記第1の制御部は、上記交流電源の位相に基づいて生成されるパルス信号を、上記交流電流指令と上記交流電流瞬時値との偏差が所定値を超える時に、上記交流電流瞬時値を抑制するようにオフして上記第1の制御信号を生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
上記第1の制御部は、ヒステリシスコンパレータを備えて上記第1の制御信号を生成することを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
上記第2の制御部は、ヒステリシスコンパレータを備えて、上記交流電流指令と上記交流電流瞬時値との偏差が小さくなるように上記サブコンバータの交流側の出力電圧レベルを切り替える上記第2の制御信号を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
上記電力変換器は、上記サブコンバータを複数個備え、
上記制御装置は、上記充電制御モードにおいて、上記各サブコンバータの各電力貯蔵器の充電完了を個別に検出し、充電完了したサブコンバータに対し、該サブコンバータ内の所定の半導体スイッチング素子をオンして該電力貯蔵器をパスさせ、残りのサブコンバータの電力貯蔵器のみを充電することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
上記電力変換器は、三相の上記メインコンバータの各相交流電力線にそれぞれ上記サブコンバータを直列接続したことを特徴とする請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
上記電力変換器は、上記メインコンバータの交流電力線に上記複数のサブコンバータを直列接続したことを特徴とする請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項1】
それぞれ複数の半導体スイッチング素子を有して交流と直流との間で電力変換を行い、直流側に有した各電力貯蔵器に出力するメインコンバータおよびサブコンバータを備え、上記メインコンバータの直流電圧は上記サブコンバータの直流電圧より大きく、上記メインコンバータと交流電源との間に上記サブコンバータを配置して直列接続した電力変換器と、
交流電流指令を生成する電流指令演算部と、上記交流電源の位相および上記交流電流指令に基づいて交流電流瞬時値を抑制するように上記メインコンバータへの第1の制御信号を生成する第1の制御部と、上記交流電流瞬時値が上記交流電流指令に追従するように上記サブコンバータへの第2の制御信号を生成する第2の制御部とを有して上記電力変換器を制御する制御装置とを備え、
上記制御装置は、
上記メインコンバータの電力貯蔵器が充電完了した状態で上記サブコンバータの電力貯蔵器を充電する充電制御モードと、上記メインコンバータおよび上記サブコンバータの各電力貯蔵器の充電完了後に上記第1、第2の制御信号を生成して上記電力変換器を制御する通常制御モードとを有し、
上記充電制御モードでは、上記第1の制御信号を生成して上記メインコンバータを制御すると共に、上記サブコンバータ内の上記複数の半導体スイッチング素子を全てオフさせて上記サブコンバータの電力貯蔵器を充電することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
上記制御装置は、上記充電制御モードと上記通常制御モードとの切り替え回路を備え、該切り替え回路は、上記メインコンバータの電力貯蔵器が充電完了した状態で上記電力変換器を起動する際に上記充電制御モードとし、上記サブコンバータの電力貯蔵器の充電完了を検出して上記通常制御モードに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
コンバータを有して上記メインコンバータの電力貯蔵器を初期充電する手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
上記第1の制御部は、上記交流電源の位相に基づいて生成されるパルス信号を、上記交流電流指令と上記交流電流瞬時値との偏差が所定値を超える時に、上記交流電流瞬時値を抑制するようにオフして上記第1の制御信号を生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
上記第1の制御部は、ヒステリシスコンパレータを備えて上記第1の制御信号を生成することを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
上記第2の制御部は、ヒステリシスコンパレータを備えて、上記交流電流指令と上記交流電流瞬時値との偏差が小さくなるように上記サブコンバータの交流側の出力電圧レベルを切り替える上記第2の制御信号を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
上記電力変換器は、上記サブコンバータを複数個備え、
上記制御装置は、上記充電制御モードにおいて、上記各サブコンバータの各電力貯蔵器の充電完了を個別に検出し、充電完了したサブコンバータに対し、該サブコンバータ内の所定の半導体スイッチング素子をオンして該電力貯蔵器をパスさせ、残りのサブコンバータの電力貯蔵器のみを充電することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
上記電力変換器は、三相の上記メインコンバータの各相交流電力線にそれぞれ上記サブコンバータを直列接続したことを特徴とする請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
上記電力変換器は、上記メインコンバータの交流電力線に上記複数のサブコンバータを直列接続したことを特徴とする請求項7に記載の電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【公開番号】特開2011−147198(P2011−147198A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3565(P2010−3565)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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