説明

電力変換装置

【課題】半導体積層ユニットの積層方向と直交する方向に対する振動を抑制することができると共に、フレームの剛性を向上することができる電力変換装置を提供すること。
【解決手段】半導体モジュール21と冷却管22とを積層してなる半導体積層ユニット2と、半導体積層ユニット2の積層方向Xと直交する方向に開口する開放部31を有すると共に、半導体積層ユニット2を内側に配置するフレーム3と、開放部31を覆うようにフレーム3に固定されるプレート4とを備える電力変換装置1。フレーム3は開放部31と反対側から半導体積層ユニット2を支承する支承部32を有し、半導体積層ユニット2とプレート4との間には、支承部32へ向かって半導体積層ユニット2を押圧するよう付勢された弾性部材5が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換回路を構成する半導体モジュールの冷却手段を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータ回路やインバータ回路等の電力変換回路は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の動力源である交流モータに通電する駆動電流の生成に用いられる。
一般に、電気自動車やハイブリッド自動車等では、交流モータから大きな駆動トルクを確保するため大きな駆動電流が必要となってきている。それゆえ、その交流モータ向けの駆動電流を生成する上記電力変換回路においては、該電力変換回路を構成するIGBT等の電力用半導体素子を含む半導体モジュールからの発熱が大きくなる傾向にある。
【0003】
そこで、従来では、電力変換回路を構成する複数の半導体モジュールを冷却することができるように、冷媒を内部に流す複数の冷却管を半導体モジュールと積層した電力変換装置が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
また、上記特許文献1、2に示されるような、冷却管と半導体モジュールとを積層した電力変換装置9は、図6に示すごとく、半導体モジュール921と冷却管922との積層体である半導体積層ユニット92と、積層方向と直交する方向に開口する開放部931が形成されていると共に半導体積層ユニット92が内部に配置されるフレーム93と、半導体積層ユニット92を積層方向に加圧する加圧部材96とを有する。
【0004】
ところで、かかる電力変換装置9は、上述のごとく、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等、振動を受けやすい環境に設置される場合がある。
上記電力変換装置9では、加圧部材96によって、半導体積層ユニット92をフレーム93の内壁部に対して大きな力で加圧することで、半導体積層ユニット92を積層方向に固定している。そのため、上記振動が加わっても積層方向については、フレーム93に対して半導体積層ユニット92が振動することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−166819号公報
【特許文献2】特開2007−166820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、積層方向と直交する方向であって、フレーム93における開放部931の開口する方向(以下、これを開口方向という。)については、フレーム93に対する半導体積層ユニット92の固定点が少ない。そのため、振動を受けやすい環境下においては半導体積層ユニット92の剛性が不足することが考えられる。そうすると、例えば、加圧部材96と半導体積層ユニット92との間にずれが生じ、半導体積層ユニット92に対して、積層方向の加圧力が充分に伝わりにくくなってしまう。その結果、半導体モジュール921と冷却管922との充分な接触状態が得られず、半導体モジュール921の冷却機能が低下するという事態招くおそれもある。
また、場合によっては、半導体モジュール921と冷却管922との間にずれが生じるおそれもある。そうすると、両者の適切な接触位置が得られにくくなってしまう。その結果、半導体モジュール921の冷却機能が低下するという事態招くおそれもある。
さらに、フレーム93についても、開放部931が形成されているため、高い剛性を得にくい。
【0007】
なお、図示しないが、半導体積層ユニット92の一端側における冷却管922の冷媒導入管923及び冷媒排出管924をフレーム93に対して、例えば、パイプクランプ等を用いて固定することで、冷媒導入管923及び冷媒排出管924を開口方向に固定することは考え得る。しかし、この固定方法では、半導体積層ユニット92の開口方向の防振手段としては不充分である。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、積層方向と直交する方向(上記開口方向)のフレームに対する半導体積層ユニットの振動を抑制することができると共に、フレームの剛性を向上することができる電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、半導体素子を内蔵した半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットの積層方向と直交する方向に開口する開放部を有すると共に、上記半導体積層ユニットを内側に配置するフレームと、
上記開放部を覆うように上記フレームに固定されるプレートとを備え、
上記フレームは上記開放部と反対側から上記半導体積層ユニットを支承する支承部を有し、
上記半導体積層ユニットと上記プレートとの間には、上記支承部へ向かって上記半導体積層ユニットを押圧するよう付勢された弾性部材が配置されていることを特徴とする電力変換装置(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる電力変換装置は、上記半導体積層ユニットと上記プレートとの間に、上記弾性部材を配置している。これによって、上記支承部へ向かって上記半導体積層ユニットを弾性的に押圧することができる。これにより、上記半導体積層ユニットを上記開放部の開口方向に固定することができる。それゆえ、フレームに対する上記半導体積層ユニットの積層方向と直交する方向(上記開口方向)の振動を抑制することができる。その結果、上記半導体積層ユニットにおける上記冷却管と半導体モジュールとの接触状態の変化を防ぎ、上記冷却管の冷却機能の低下を防ぐことができる。
また、上記フレームの上記開放部を覆うように上記プレートがフレームに固定されるため、上記フレームの剛性を向上させることができる。
【0011】
以上のごとく、本発明によれば、半導体積層ユニットの積層方向と直交する方向(上記開口方向)の振動を抑制することができると共に、フレームの剛性を向上することができる電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1における、電力変換装置の平面説明図。
【図2】図1のA−A線断面矢視図。
【図3】実施例1における、弾性部材の配置状態の一部断面による拡大説明図。
【図4】実施例2における、電力変換装置の平面説明図。
【図5】図4のB−B線断面矢視図。
【図6】背景技術における、電力変換装置の平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記フレームの材質としては、例えば、熱伝導性に優れたアルミ材等の金属が用いられ、また、上記プレート及び上記弾性部材の材質としては、例えば、樹脂あるいはアルミ材等の金属を用いることができる。
また、上記弾性部材は、上記プレートとは別体によって形成してもよいし、上記プレートと一体形成してもよい。
【0014】
また、上記弾性部材は板バネであり、上記プレートには、上記弾性部材の少なくとも一部を係合して固定できるバネ固定部が形成されていることが好ましい(請求項2)。この場合には、弾性部材を板バネとすることで、小さい寸法にて容易に大きな付勢力を得ることができる。
また、上記バネ固定部を形成することにより、上記弾性部材の上記プレートに対する位置決め及び固定を容易かつ正確に行うことができる。これによって、上記弾性部材を正確な位置で上記半導体モジュールに当接させることができ、上記支承部へ向かって上記半導体積層ユニットを確実に押圧することができる。
【0015】
また、上記半導体モジュールは、上記開口方向における少なくとも上記開放部側に、上記開口方向と直交する端面を有すると共に、該端面からは、主電極端子及び信号端子の少なくとも一方が突出しており、上記端面における上記積層方向及び上記開口方向と直交する方向(以下、これを幅方向という。)の両縁部には、傾斜面が形成されるように面取りされた面取部が形成されており、上記弾性部材は、上記面取部と上記プレートとの間に配置されていることが好ましい(請求項3)。
【0016】
この場合には、上記弾性部材を上記面取部の傾斜面において面接触させることが可能となる。これにより、上記半導体モジュールを上記開口方向における上記支承部側のみならず上記幅方向の内側へ向かっても押圧することができる。そのため、上記半導体積層ユニットについて、上記開口方向の振動のみならず、上記幅方向の振動をも効果的に抑制することができる。
【0017】
また、上記弾性部材は、上記冷却管と上記プレートとの間に配置されていることが好ましい(請求項4)。この場合には、上記冷却管の熱を上記弾性部材を介して上記プレートに放熱させることができる。そのため、上記冷却管の放熱性を向上させることができる。
【0018】
また、上記フレームの内側には、上記半導体積層ユニットの積層方向の一方の端部に、該半導体積層ユニットを積層方向に加圧する加圧部材が配置されていることが好ましい(請求項5)。この場合には、上記積層方向に対して上記半導体積層ユニットを押圧して固定することができる。そして、かかる構成において、上記弾性部材によって、フレームに対する上記半導体積層ユニットの上記開口方向の振動を抑制できることにより、上記加圧部材と上記半導体積層ユニットとの間のずれを防ぐことができる。これによって、上記半導体積層ユニットに対する積層方向の加圧力を安定させることができる。そのため、上記半導体モジュールと上記冷却管との充分な接触状態を確保することができる。その結果、上記半導体積層ユニットにおける上記冷却管による半導体モジュールの冷却機能の低下を防ぐことができる。
【0019】
また、上記弾性部材は、上記半導体積層ユニットにおいて、上記積層方向の中心よりも上記加圧部材に近い位置に配置されていることが好ましい(請求項6)。この場合には、上記半導体積層ユニットにおける上記開口方向への振動の影響を受けやすい部分について、その振動を効果的に抑制することができる。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる、電力変換装置について、図1〜図3を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図1に示すごとく、半導体素子を内蔵した半導体モジュール21と、半導体モジュール21を冷却する冷却管22とを積層してなる半導体積層ユニット2を有する。
また、電力変換装置1は、半導体積層ユニット2の積層方向Xと直交する方向(開口方向Z)に開口する開放部31を有すると共に、半導体積層ユニット2を内側に配置するフレーム3と、開放部31を覆うようにフレーム3に固定されるプレート4を有している。
【0021】
また、図2に示すごとく、フレーム3は開放部31と反対側から半導体積層ユニット2を支承する支承部32を有する。
また、半導体積層ユニット2とプレート4との間には、支承部32へ向かって半導体積層ユニット2を押圧するよう付勢された弾性部材5が配置されている。
【0022】
弾性部材5は板バネであり、プレート4には、弾性部材5の少なくとも一部を係合して固定できるバネ固定部41が形成されている。
ここで、図3に示すごとく、弾性部材5は、半導体積層ユニット2を押圧する押圧部51と、バネ固定部41に係合する係合部52と、押圧部51と係合部52とを連結する基部53とを備えている。
【0023】
また、本例では、弾性部材5の押圧部51、係合部52、基部53は、板バネからなる弾性部材5において、以下の形状によって構成されている。すなわち、押圧部51は、加工前において平板形状をなす弾性部材5の一端側部分を、開口方向Zの下方に向かって折り曲げて形成されている折り曲げ部からなる。また、係合部52は、弾性部材5の他端側部分を開口方向Zの下方に向かって湾曲すると共に、その先端部を折り曲げ部に向かうように折り返して形成されている折り返し部からなる。そして、基部53は、押圧部51と係合部52との間の平板部からなる。
【0024】
また、バネ固定部41は、図2、図3に示すごとく、プレート4における積層方向Xと直交する方向(幅方向Y)の両側において、プレート4の下面40に形成されている。また、バネ固定部41は、プレート4において、弾性部材5の配置数に応じて積層方向Xに複数個形成されている。
また、各バネ固定部41は、プレート4の下面40からフレーム3の下方に向けて突出された突出部42と、その突出側の端部から幅方向Yの内側に向かって延出した延出部421とからなるカギ状部の内側に形成されている。
【0025】
また、図1〜図3に示すごとく、バネ固定部41を積層方向Xの両側から挟むように一対の側壁部422が形成されている。つまり、プレート4の下面40と延出部421と一対の側壁部422との間の空間部にバネ固定部41が形成されることとなる。このバネ固定部41に対して、弾性部材5における係合部52が係合されて、弾性部材5がプレート4に対して固定されている。
本例において、フレーム3、プレート4及び弾性部材5には、熱伝導性に優れた金属が用いられる。
【0026】
また、半導体モジュール21は、図2に示すごとく、開口方向Zにおける開放部31側に、開口方向Zと直交する端面210を有すると共に、端面210からは、信号端子213が突出している。また、半導体モジュール21における端面210と反対側の端面211からは、主電極端子212が突出している。
【0027】
なお、半導体モジュール21の形状は、これに限定されるものでなない。例えば、主電極端子212及び信号端子213は、各々が端面210及び端面211のどちら側から突出されてもよく、あるいは端面210及び端面211のいずれか一方側から主電極端子212及び信号端子213の両方を突出させてもよい。
【0028】
また、端面210における積層方向X及び開口方向Zと直交する方向(幅方向Y)の両縁部には、傾斜面が形成されるように面取りされた面取部215が形成されている。
そして、面取部215とプレート4との間に弾性部材5が配置されている。具体的には、面取部215に対して、弾性部材5の押圧部51が面接触するように形成されている。
また、本例では、半導体積層ユニット2におけるすべての半導体モジュール21に対して、一対の弾性部材5が積層方向Xに複数個配置されているが、弾性部材5の配置数はなんら限定されるものではない。
【0029】
また、図1に示すごとく、フレーム3の内側には、半導体積層ユニット2の積層方向Xの一方の端部23に、半導体積層ユニット2を積層方向Xに加圧する加圧部材6が配置されている。なお、加圧部材6の配置箇所は、これに限定されるものではなく、例えば、加圧部材6を、半導体積層ユニット2の積層方向Xの他方の端部25に配置してもよい。この場合、加圧部材6は、冷媒導入管223と冷媒排出管224との間に配置される。
【0030】
また、プレート4には、図1〜図3に示すごとく、半導体モジュール21の信号端子213をフレーム3の外部に向け突出させるための貫通孔からなる逃し部45が形成されている。逃し部45は、一対のバネ固定部41の間において、積層方向Xに複数形成されている。そして、逃し部45は、開口方向Zから見た形状が略長方形状をなして、各逃し部45に対して、一つの半導体モジュール21のすべての信号端子213が貫通するよう構成されている。
【0031】
ただし、逃し部45の形状、形成数については、信号端子213を逃せる構造であれば特に限定されるものではない。そのため、例えば、半導体モジュール21における一群の信号端子213ごとに外部に逃すことができように、逃し部45を正方形状に形成してもよい。あるいは、一本の信号端子213ごとに各々外部に逃すことができる貫通孔を逃し部45として形成してもよい。
【0032】
また、フレーム3には、図2に示すごとく、開放部31と反対側において支承部32が形成されている。この支承部32は、冷却管22を支承する第一支承部321と、半導体モジュール21を支承する第二支承部322とからなる。すなわち、同図に示すごとく、フレーム3の両側壁部33の下端面からフレーム3の幅方向Yの内側に向かって、一対の第一支承部321が形成されている。そして、一対の第一支承部321の内側の端部からは、下方に下がった段差部を介して、幅方向Yの内側に向かって延出されている一対の第二支承部322が形成されている。
【0033】
また、一対の第二支承部322の間には、開口方向Zに貫通した開口部34が形成されている。この開口部34から主電極端子212が突出するように、第二支承部322が半導体モジュール21を支承している。
【0034】
半導体モジュール21は、例えば、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、MOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子を内蔵してなる。また、半導体モジュール21は、スイッチング素子を樹脂モールドしてなる本体部216と、本体部216から互いに反対方向に突出した主電極端子212と、信号端子213とからなる。そして、主電極端子212からは被制御電力が半導体モジュール21に入出力され、信号端子213には、スイッチング素子を制御する制御電流が入力される。
【0035】
また、半導体積層ユニット2は、図1に示すごとく、半導体モジュール21と冷却管22とを交互に積層してなる。そして、半導体モジュール21は両主面から冷却管22によって挟持されている。また、隣り合う冷却管22の間には1個の半導体モジュール21が挟持されている。
【0036】
ここで、本例の半導体モジュール21は、半導体素子とダイオードとを、それぞれ2個ずつ内蔵した、いわゆる2in1型の半導体モジュールである。ただし、半導体モジュール21はこれに限定されるものではない。そのため、例えば、半導体素子とダイオードとを、それぞれ1個ずつ内蔵した半導体モジュールを用いてもよいし、半導体素子とダイオードとを、3個ずつ以上内蔵した半導体モジュールでもよい。
【0037】
また、複数の冷却管22は、図1に示すごとく、積層方向Xに直交する方向(幅方向Y)に長く、幅方向Yに沿って冷媒流路を内部に形成している。そして、積層方向Xに隣り合う冷却管22同士は、長手方向の両端において連結管24によって互いに連結されている。
【0038】
また、冷却管22は、積層方向Xの一端に配置された冷却管22における幅方向Yの両端部において冷媒導入管223及び冷媒排出管224を有する。これにより、冷媒導入管223から導入された冷却媒体は、連結管24を適宜通り、各冷却管22に分配されると共に、その長手方向(幅方向Y)に流通する。そして、各冷却管22を流れる間に、冷却媒体が半導体モジュール21との間で熱交換を行う。そして、熱交換により温度上昇した冷却媒体は、下流側の連結管24を適宜通り、冷却排出管224に導かれ、冷却管22から排出される。
【0039】
次に、本例の電力変換装置1についての作用効果について説明する。
本例の電力変換装置1は、半導体積層ユニット2とプレート4との間に、弾性部材5を配置している。これによって、支承部32へ向かって半導体積層ユニット2を弾性的に押圧することができる。これにより、半導体積層ユニット2を開放部31の開口方向Zに固定することができる。それゆえ、フレーム3に対する半導体積層ユニット2の積層方向Xと直交する方向(開口方向Z)の振動を抑制することができる。その結果、半導体積層ユニット2における冷却管22と半導体モジュール21との接触状態の変化を防ぎ、冷却管22の冷却機能の低下を防ぐことができる。
また、フレーム3の開放部31を覆うようにプレート4がフレーム3に固定されるため、フレーム3の剛性を向上させることができる。
【0040】
また、弾性部材5は板バネであり、プレート4には、弾性部材5の少なくとも一部を係合して固定できるバネ固定部41が形成されている。これによって、弾性部材5を板バネとすることで、小さい寸法にて容易に大きな付勢力を得ることができる。
また、バネ固定部41を形成することにより、弾性部材5のプレート4に対する位置決め及び固定を容易かつ正確に行うことができる。これによって、弾性部材5を正確な位置で半導体モジュール21に当接させることができ、支承部32へ向かって半導体積層ユニット2を確実に押圧することができる。
【0041】
また、半導体モジュール21は、開口方向Zにおける少なくとも開放部31側に、開口方向Zと直交する端面210を有すると共に、端面210からは、主電極端子212及び信号端子213の少なくとも一方が突出している。
また、端面210における積層方向X及び開口方向Zと直交する方向の両縁部には、傾斜面が形成されるように面取りされた面取部215が形成されている。
そして、弾性部材5は、面取部215とプレート4との間に配置されている。
【0042】
これによって、弾性部材5を面取部215の傾斜面において面接触させることが可能となる。これにより、半導体モジュール21を開口方向Zにおける支承部32側のみならず幅方向Yの内側へ向かっても押圧することができる。そのため、半導体積層ユニット2について、開口方向Zの振動のみならず、幅方向Yの振動をも効果的に抑制することができる。
【0043】
また、フレーム3の内側には、半導体積層ユニット2の積層方向Xの一方の端部23に、半導体積層ユニット2を積層方向Xに加圧する加圧部材6が配置されている。これによって、積層方向Xに対して半導体積層ユニット2を押圧して固定することができる。そして、かかる構成において、弾性部材5によって、フレーム3に対する半導体積層ユニット2の開口方向Zの振動を抑制できることにより、加圧部材6と半導体積層ユニット2との間のずれを防ぐことができる。これによって、半導体積層ユニット2に対する積層方向Xの加圧力を安定させることができる。そのため、半導体モジュール21と冷却管22との充分な接触状態を確保することができる。その結果、半導体積層ユニット2における冷却管22による半導体モジュール21の冷却機能の低下を防ぐことができる。
【0044】
また、弾性部材5は、半導体積層ユニット2において、積層方向Xの中心よりも加圧部材6に近い位置に配置されている。これによって、半導体積層ユニット2における開口方向Zへの振動の影響を受けやすい部分について、その振動を効果的に抑制することができる。
【0045】
以上のごとく、本例によれば、半導体積層ユニットの積層方向と直交する方向(開口方向)の振動を抑制することができると共に、フレームの剛性を向上することができる電力変換装置を提供するができる。
【0046】
(実施例2)
本例は、図4、図5に示すごとく、弾性部材5を冷却管22とプレート4との間に配置した例である。
本例において、弾性部材5は、弾性変形可能な波状部54と、波状部54の両端において弾性形成方向に立ち上がるように形成されている一対の立設部55、56とからなる。
【0047】
また、プレート4には、複数の弾性部材5に対応するように複数のバネ固定部41が形成されている。このバネ固定部41は、フレーム3の開口方向Zに向けて貫通した略長方形状の貫通孔によって構成されている。そして、バネ固定部41に対して、弾性部材5の一方側の立設部55が係合されることで、弾性部材5は、プレート4に対して位置決め固定されている。
【0048】
また、弾性部材5の他方側の立設部56を、冷却管22の上端面221に形成された溝部に係合させている。そして、プレート4をフレーム3に固定した状態において、弾性部材5の波状部54が圧縮変形している。これによって、弾性部材5は、開口方向Zにおいて、冷却管22を支承部32に向かって押圧することができる。その結果、半導体積層ユニット2をフレーム3に固定することとなる。
その他は、実施例1と同様である。
【0049】
弾性部材5は、冷却管22とプレート4との間に配置されている。これによって、冷却管22の熱を弾性部材5を介してプレート4に放熱させることができる。そのため、冷却管22の放熱性を向上させることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0050】
なお、上記実施例1及び実施例2で示した半導体積層ユニット2は、上述のごとく、半導体モジュール21と冷却管22とを交互に積層して構成されるものであるが、これに限定されるものではない。そのため、例えば、半導体モジュールの外周に冷媒流路を有して形成した冷媒流路一体型の半導体モジュールを複数積層して半導体積層ユニット2を形成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 電力変換装置
2 半導体積層ユニット
21 半導体モジュール
22 冷却管
3 フレーム
31 開放部
32 支承部
4 プレート
5 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を内蔵した半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットの積層方向と直交する方向に開口する開放部を有すると共に、上記半導体積層ユニットを内側に配置するフレームと、
上記開放部を覆うように上記フレームに固定されるプレートとを備え、
上記フレームは上記開放部と反対側から上記半導体積層ユニットを支承する支承部を有し、
上記半導体積層ユニットと上記プレートとの間には、上記支承部へ向かって上記半導体積層ユニットを押圧するよう付勢された弾性部材が配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記弾性部材は板バネであり、上記プレートには、上記弾性部材の少なくとも一部を係合して固定できるバネ固定部が形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、上記半導体モジュールは、上記開放部の開口方向における少なくとも上記開放部側に、上記開口方向と直交する端面を有すると共に、該端面からは、主電極端子及び信号端子の少なくとも一方が突出しており、
上記端面における上記積層方向及び上記開口方向と直交する方向の両縁部には、傾斜面が形成されるように面取りされた面取部が形成されており、
上記弾性部材は、上記面取部と上記プレートとの間に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、上記弾性部材は、上記冷却管と上記プレートとの間に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の電力変換装置において、上記フレームの内側には、上記半導体積層ユニットの積層方向の一方の端部に、該半導体積層ユニットを積層方向に加圧する加圧部材が配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置において、上記弾性部材は、上記半導体積層ユニットにおいて、上記積層方向の中心よりも上記加圧部材に近い位置に配置されていることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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