電力変換装置
【課題】安価で且つ、精度よくチョッパ回路の出力電流の演算が可能な電力変換装置を得る。
【解決手段】チョッパ回路16と、このチョッパ回路の出力電流i0を検出する検出抵抗4と、この検出抵抗の端子間の電位差を差動検出信号voとして出力する差動検出回路6と、この差動検出回路からの差動検出信号voを、チョッパ回路16の制御信号D1で補正して、チョッパ回路の出力電流i0を演算する演算手段13を備えた電力変換装置。
【解決手段】チョッパ回路16と、このチョッパ回路の出力電流i0を検出する検出抵抗4と、この検出抵抗の端子間の電位差を差動検出信号voとして出力する差動検出回路6と、この差動検出回路からの差動検出信号voを、チョッパ回路16の制御信号D1で補正して、チョッパ回路の出力電流i0を演算する演算手段13を備えた電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、負荷へ給電するチョッパ回路の出力電流の電流値を、高い精度で演算することのできる電流検出機能を具備した電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータやコンバータといった電力変換装置の多くは、チョッパ回路として第1の電位と第2の電位の間に接続される上段電力用半導体素子と、第2の電位と基準電位との間に接続される下段電力用半導体素子とを備える。そして、所望の位相幅信号(デューティー比)に基づいて、少なくともチョッパ回路の上段電力用半導体素子若しくは下段電力用半導体素子のいずれかをオンオフさせることで、第1の電位と第2の電位の間で電力変換を行う。例えば、このような電力変換装置で三相交流回転機を駆動するインバータに適用する場合、第1の電位と基準電位の間に直流電源を接続し、所望の位相幅を適切に与えるとともに、この位相幅に基づいて上段電力用半導体素子と下段電力用半導体素子とをスイッチングすることによって、基準電位に対する第2の電位を交流にしている。即ち、基準電位に対して直流となる第1の電位を、交流となる第2の電位に電力変換を行っている。このような電力変換をU相、V相、W相のそれぞれに施すことによって、三相交流回転機を駆動するインバータでは直流から三相交流に電力変換を行っている。
【0003】
三相交流回転機を駆動する場合、電力変換装置が給電する電流と三相交流回転機のトルクとの間には密接な関係があり、電流の検出精度が不十分であると、三相交流回転機のトルクリプルや回転むら、異音の発生要因となってしまう。
例えば、車両に搭載される電動パワーステアリング装置が具備する三相交流回転機を駆動する場合、トルクリプルの発生はハンドルの振動となって現れるので、電流を精度良く検出してトルクリプルを極力小さくしたいとの要求がある。
電力変換装置の出力電流を検出する方法としては、電流トランスを用いる方法や、ホール電流センサを用いる方法がある。
電流トランスを用いる方法は直流電流が検出できないので、停止状態や低回転で駆動する用途では利用できない。また、車両に搭載する電力変換装置の場合、温度、湿度、振動、発塵など過酷な環境での動作が必要となり、ホール電流センサのホール素子より検出抵抗の方が頑健性の面で有利である。
【0004】
そこで、特許文献1に記載される従来の電力変換装置では、上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子とが直列接続され、上アームのスイッチング素子が直流電源の正極側に接続されるとともに、下アームのスイッチング素子が直流電源の負極側に接続される三相分のアーム回路、この三相分のアーム回路のうちの少なくとも二相分の下アームのスイッチング素子にそれぞれ直列に挿入され、下アームのスイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出用抵抗素子を備え、上記電流に基づいて生成された三相の電圧指令波信号と搬送波とを比較して、パルス幅変調により上アーム及び下アームのスイッチング素子をオンオフ制御し、電力変換装置が給電する電流を得るようにしている。
【0005】
また、例えば特許文献2に記載される従来の電力変換装置では、駆動回路によりPWM
制御される負荷の電源側に設けたシャント抵抗を有する電流検出手段を備え、PWM制
御信号のオンオフのそれぞれにおいてシャント抵抗の両端電圧の電位差を検出し、オフ時に検出された電圧をオフセット電圧として、オン時に検出された電圧とオフセット電圧との差に基づいて、負荷に流れる電流を検出するようにしている。
【0006】
また、例えば特許文献3に記載される従来の電力変換装置では、ゲート回路を有するパ
ワー素子により直流電力をモータ駆動用の交流電力に変換するインバータの出力回路に直列に電流検出抵抗を挿入し、この電流検出抵抗の両端に生じる電位差をシグマデルタ変調されたデジタル信号に変換するシグマデルタ変調器と、前記デジタル信号を電気的に絶縁して伝達する電気絶縁性結合器と、伝達された信号を復調するデジタルフィルタと、このデジタルフィルタの出力に基づきインバータのゲート回路を制御する制御信号発生回路とを備えることで、電力変換装置が給電する電流を得るようにしている。
【0007】
また、例えば特許文献4に記載される従来の電力変換装置では、上アームスイッチング素子及び下アームスイッチング素子によってモータを駆動し、モータのバッテリ陽極の電位を基準とする第1の基準電圧源と、グランド電位を基準とする第2の基準電圧源と、上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子の接続点とモータの端子の間に設けられたシャント抵抗と、このシャント抵抗の電位に基づいて上記第1及び第2の基準電圧源の一方からの電圧を出力する切り替え手段と、該切り替え手段の出力と上記シャント抵抗の両端の電圧の間の電位差をそれぞれ分圧して2つの電圧信号を生成する分圧手段と、該分圧手段によって生成された2つの電圧信号を入力し、シャント抵抗に流れる電流値と電流の方向に基づいて所定の増幅率で増加又は減少する電圧を出力する増幅手段を備え、電力変換装置が給電する電流を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−017671号公報(請求項1、図1)
【特許文献2】特開2006−262677号公報(請求項1,2、図1,4)
【特許文献3】特開平7−015972号公報(請求項1、図1)
【特許文献4】特開2006−064596号公報(請求項1、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来の電力変換装置では、次のような問題があった。
特許文献1に記載の従来の電力変換装置では、電流を検出する電流検出用抵抗素子が下アームのスイッチング素子に直列に挿入されているので、下アームのスイッチング素子に流れる電流を得ることができるものの、上アームのスイッチング素子に流れる電流は得ることができない。従って、上アームのスイッチング素子がオン、下アームのスイッチング素子がオフする期間の電流を得ることができないため、スイッチング素子のオンオフ指令に制約が生じる問題があった。このような電力変換装置によって三相交流回転機を駆動すると、スイッチング素子のオンオフ指令の制約によって電力変換装置が出力できる最大電圧も制約を受けるといった問題があった。
【0010】
また、特許文献2に記載の従来の電力変換装置では、PWM制御信号のオフ時に検出された電圧をオン時に検出された電圧のオフセット電圧として、負荷に流れる電流を検出するようにしているので、シャント抵抗はPWM制御信号のオフ時に電流が流れない経路に配置する制約があり、PWM制御信号のオフ時でも電流が流れる経路の電流を検出することができない問題があった。
【0011】
また、特許文献3に記載の従来の電力変換装置では、ゲート回路を有するパワー素子により直流電力をモータ駆動用の交流電力に変換するインバータの出力回路に直列に電流検出抵抗を挿入し、この電流検出抵抗の両端に生じる電位差から電流を得るようにしているので、特許文献1のようなスイッチング素子のオンオフ指令に制約を受けないという利点がある。しかしながら、デジタル信号を電気的に絶縁して伝達するので、絶縁側にも電源が必要となる問題や、ホトカップラといった電気絶縁性結合器を必要とするので、装置が高価になるといった問題があった。
【0012】
さらに、特許文献4に記載の従来の電力変換装置では、上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子の接続点と、モータの端子の間に設けられたシャント抵抗の電位差を、非絶縁で検出して電流を得ているので、スイッチング素子のオンオフ指令の制約もなく、絶縁するための電源も不要である。しかしながら、切り替え手段の構成には、シャント抵抗の電位が比較的高いときに第1の基準電圧源の電圧を出力するPNPトランジスタと、シャント抵抗の電位が比較的低いときに第2の基準電圧源の電圧を出力するNPNトランジスタとが必要であり、装置が高価になるといった問題があった。
【0013】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、安価で且つ、精度良くチョッパ回路の出力電流の演算が可能な電流検出機能を備えた電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係る電力変換装置は、チョッパ回路と、このチョッパ回路の出力電流を検出する検出抵抗と、この検出抵抗の端子間の電位差を差動検出信号として出力する差動検出回路と、この差動検出回路からの差動検出信号を、前記チョッパ回路の制御信号で補正して、前記チョッパ回路の出力電流を演算する演算手段とを備えたものである。
【0015】
また、演算手段は、チョッパ回路の制御信号である位相幅信号に基づいてチョッパ回路をオンオフするためのスイッチング信号を演算するとともに、前記差動検出信号に基づいて前記チョッパ回路の出力電流を演算するよう構成され、前記チョッパ回路は、第1の電位と第2の電位の間に接続される上段電力用半導体素子と、前記第2の電位と基準電位との間に接続される下段電力用半導体素子によって構成され、前記検出抵抗は前記第2の電位と第3の電位との間に接続され、前記差動検出回路は、前記第2の電位と前記第3の電位との電位差を検出するように構成されたものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明の電力変換装置によれば、差動検出信号をチョッパ回路の制御信号で補正するようにしたので、同相電圧に起因するオフセット変化に対応したチョッパ回路の出力電流の演算が可能となり、安価で且つ、高い精度で電流検出が可能な電力変換装置を得ることができる。
【0017】
また、この発明の電力変換装置によれば、電流検出抵抗を第2の電位と第3の電位との間に接続するようにしたので、チョッパ回路の上段電力用半導体素子若しくは下段電力用半導体素子のオンオフに関わらず、第2の電位から第3の電位へ給電される電流を得ることができる。
【0018】
上述した、またその他の、この発明の目的、特徴、効果は、以下の実施の形態における詳細な説明および図面の記載からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1における電力変換装置の全体構成を示す図である。
【図2】実施の形態1における演算手段の内部構成を示す図である。
【図3】実施の形態1の演算手段における、所望の位相幅信号D1と搬送波信号C1に基づいて、上段電力用半導体素子と下段電力用半導体素子を動作させたときの電流i0、差動検出信号vo、差動検出信号誤差voe、差動検出信号にローパスフィルタ処理した信号vofの関係を説明するための図である。
【図4】この発明の実施の形態2における電力変換装置の全体構成を示す図である。
【図5】実施の形態2における演算手段の内部構成を示す図である。
【図6】実施の形態2の演算手段における所望の位相幅信号D1と搬送波信号C1に基づいたスイッチング信号G1及びG2の演算について説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態3における演算手段の内部構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態4における演算手段の内部構成を示す図である。
【図9】実施の形態4の演算手段における時刻と各信号の関係を示したものである。
【図10】この発明の実施の形態5における演算手段の内部構成を示す図である。
【図11】実施の形態5における選択器の動作を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態5における時刻と各信号の関係を示したものである。
【図13】この発明の実施の形態6における演算手段の内部構成を示す図である。
【図14】実施の形態6における選択器の動作を示すフローチャートである。
【図15】実施の形態6における時刻と各信号の関係を示したものである。
【図16】この発明の実施の形態7における演算手段の内部構成を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態8における差動検出回路の内部構成を示す図である。
【図18】この発明の実施の形態10の電力変換装置の全体構成を示す図である。
【図19】この発明の実施の形態11の電力変換装置の全体構成を示す図である。
【図20】この発明の実施の形態12の電力変換装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における電力変換装置の全体構成を示す図である。
図1において、電力変換装置15には、電位差v1を有する直流電圧源1と電気的負荷5が接続されている。電力変換装置15はチョッパ回路16、差動検出回路6、演算手段13、位相幅信号発生器14を具備しており、チョッパ回路16の制御信号として、位相幅信号発生器14が出力する位相幅信号D1、演算手段13が出力するスイッチング信号S1が存在する。位相幅信号D1は、チョッパ回路16が備える上段電力用半導体素子2と下段電力用半導体素子3の通電期間の比に相当し、0〜1の間で変化する。
この位相幅信号D1はデューティ比とも呼ばれる。スイッチング信号S1はチョッパ回路16が備える上段電力用半導体素子2をオンオフさせるための信号である。
【0021】
電位差v1を有する直流電圧源1の負極には接地電位が接続され、直流電圧源1の正極はチョッパ回路16が備える上段電力用半導体素子2の端子に接続される。上段電力用半導体素子2はスイッチング信号S1がTRUEでオン、FALSEでオフする。上段電力用半導体
素子2の他端子には下段電力用半導体素子3の端子と抵抗値R0[Ω]の検出抵抗4の端子が接続され、下段電力用半導体素子3の他端子には接地電位が接続される。下段電力用半導体素子3は、接地電位から下段電力用半導体素子の方向へ電流が流れようとしたときオン、下段電力用半導体素子から接地電位へ電流が流れようとしたときオフとなる。
本実施の形態1では、上段電力用半導体素子2は、MOS-FETやIGBTといった半導体スイッ
チング素子によって構成し、下段電力用半導体素子3はダイオードといった半導体整流素子によって構成する。
【0022】
上段電力用半導体素子2がオンしている期間は、第2の電位v2は第1の電位v1と同電位となる。また、電気的負荷5はコイルと抵抗の直列回路負荷であり、コイルを通る電流値は必ず連続的に変化するので、上段電力用半導体素子2がオンからオフに変化すると、電流i0は基準電位からダイオードである電力用半導体素子3を通過して電気的負荷5に給電される。検出抵抗4の他端子には電気的負荷5の端子が接続され、電気的負荷5の他端子には接地電位が接続される。
【0023】
ここで、接地電位を基準電位とし、直流電圧源1の正極側電位を第1の電位v1、上段電力用半導体素子2と下段電力用半導体素子3の接続点の電位を第2の電位v2、検出抵
抗4と電気的負荷5の接続点の電位を第3の電位v3と定義する。また、検出抵抗4を通過して電気的負荷5に給電される電流をi0とする。
なお、電気的負荷5として、本実施の形態1ではコイルと抵抗の直列回路負荷としたが、電気的負荷の組合せに制約はなく、コンデンサやバッテリなどを直列や並列に接続するようにしても良い。
【0024】
差動検出回路6は第2の電位v2と第3の電位v3との電位差を検出して、差動検出信号voを出力する。この差動検出回路6は、オペアンプ7と抵抗8〜12によって構成される。オペアンプ7の負の差動入力端子と第3の電位v3の間には抵抗値R1[Ω]の抵抗8が接続され、オペアンプ7の負の差動入力端子とオペアンプ7の出力端子の間には抵抗値R2[Ω]の抵抗9が接続される。
オペアンプ7の正の差動入力端子と第2の電位v2の間には抵抗値R3[Ω]の抵抗10が接続され、オペアンプ7の正の差動入力端子と任意の電位vccの間には、抵抗値R4[Ω]の抵抗11が接続されるとともに、オペアンプ7の正の差動入力端子と接地電位の間には抵抗値R5[Ω]の抵抗12が接続される。
なお、抵抗8〜12の選択は抵抗値R1〜R5の間に次の式(1)、(2)の関係が成り立つように行う。
【0025】
R1=R3 ・・・・・ ・(1)
2×R2=R4=R5 ・・ ・(2)
【0026】
任意の電位vccはオペアンプ7の出力である差動検出信号voのオフセット値を定めるものであり、電流i0に応じて、差動検出信号voはvcc/2[V]を中心にして変化する。そして、電流i0が零の場合、差動検出信号voの出力はvcc/2[V]となる。例えば、vccを前記基準電位、即ち接地電位で与えると、差動検出信号voは基準電位を中心に電流i0の符号に応じて正負に変化する。また、vccを5[V]に設定すると差動検出信号voは2.5[V]が中心値となって電流i0に応じて変化する。
さらに差動検出回路6を、接地電位に対して非絶縁で構成することにより、差動検出回路6は正負両電源を必要とせず、安価な正側の片電源だけで構成することができる。
【0027】
演算手段13は、位相幅信号発生器14から得た所望の位相幅信号D1に基づいて上段電力用半導体素子2をオンオフさせるためのスイッチング信号S1を演算するとともに、差動検出信号voに基づいて検出抵抗4を通過する電流i0を演算し、演算電流i1として出力する。
【0028】
図2は実施の形態1における演算手段13の内部構成を示す図である。図2において、搬送波発生器20は、最小値0、最大値1、周期Tc[秒]の三角波状の搬送波信号C1を出力する。この周期Tc[秒]はPWM変調におけるキャリア周期とも呼ばれる。
比較器21はTRUE若しくはFALSEの値を有する信号S1を出力する。
比較器21は位相幅信号D1と搬送波信号C1の大小関係を比較し、D1≧C1の場合、信号S1としてTRUEを出力するとともに、D1<C1の場合、信号S1としてFALSEを出
力する。
【0029】
ゲイン演算器25は、位相幅信号D1に対してゲインKoffを乗算した結果を補正信号vocとして出力する。
ローパスフィルタ26は、差動検出信号voに対してローパスフィルタ処理した信号をvofとして出力する。ローパスフィルタ26の時定数は、搬送波信号の周期Tcの略1倍以上且つ略20倍以下となるように設定する。この時定数の設定ついては、後ほど説明する。
加減算器27はローパスフィルタ処理した信号vofに、オフセット設定器28から得
たオフセット信号voffを加算すると共に、ゲイン演算器25から得た補正信号vocを減算した結果をゲイン演算器29に出力する。
ゲイン演算器29は加減算器27の出力をK倍した結果を演算電流i1として出力する。
【0030】
図3は演算手段13における所望の位相幅信号D1と搬送波信号C1に基づいて、上段電力用半導体素子2を動作させたときの、電流i0、差動検出信号vo、差動検出信号誤差voe、差動検出信号voに対してローパスフィルタ処理をした信号vofの関係を説明するための図である。
図3では、時刻が経過するにつれ、所望の位相幅信号D1が単調増加している場合を扱うが、所望の位相幅信号D1として0.5を中心とした交流信号で与えれば、第2の電位は第1の電位と基準電位との中間電位を中心とした交流電圧とすることもできる。
図3において、1段目は位相幅信号D1と搬送波信号C1の波形である。位相幅信号D1は0〜1の間で変化する。搬送波信号C1は最小値0、最大値1、周期Tcである。
2段目はスイッチング信号S1の波形である。信号S1は、比較器21によって位相幅信号D1と搬送波信号C1の大小関係がD1≧C1の場合はTRUE、D1<C1の場合はFALSEとなる。
【0031】
第2の電位v2は信号S1に第1の電位v1を乗算した値に概ね一致する。
その結果、電流i0は図3の3段目に示すような波形となる。
差動検出信号voはvcc/2[V]を中心にして電流i0に応じて変化し、図3の4段目に示すような波形となる。
図3の4段目のvoの波形は、vcc/2[V]を中心にして電流i0に比例した値とスイッチング信号S1に比例した値の和となっている。
差動検出回路6が理想的な動作をする場合、差動検出信号voの波形はvcc/2[V]を中心にした電流i0に比例した波形となるが、実際には完全な同相除去はできないので、差動検出信号voの波形は、図3の4段目のような波形となる。
【0032】
ここで同相除去について説明をする。
電流i0、第2の電位v2、任意の電位vccと、差動検出信号voとの間には、以下の(3)式の関係が成り立つ。
【0033】
vo=K1×i0+K2×v2+K3×vcc ・・・・(3)
ここで、K1、K2、K3は、以下の(4)〜(6)式で定義する定数である。
【0034】
K1=−(R2÷R1)×R0 ・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
K2={R1×R4×R5−R2×R3×(R5+R4)}
÷{R1×(R3×R4+R3×R5+R4×R5)} ・・・(5)
K3={(R1+R2)×R3×R5}
÷{R1×(R3×R4+R3×R5+R4×R5)} ・・・(6)
【0035】
ゲイン演算器29が乗算するゲインKは(3)式における1/K1に相当する。
従って、K=−R1÷(R2×R0)で与えれば良い。
特に、R1〜R5の間に前記(1)、(2)式の関係が成り立つ場合、K2=0、K3=1/2となるので、差動検出信号voは以下の(7)式のようになる。
【0036】
vo=K1×i0+vcc/2 ・・・・・(7)
【0037】
しかしながら、実際に差動検出回路6を構成する場合、抵抗値R1〜R5にばらつきが存在する。その結果、(5)式はK2≠0となるので、差動検出信号voは(3)式で与えられる。
この(3)式の右辺第2項を除去することができれば、差動検出信号voはvcc/2を中心として電流i0に比例した望ましい波形になる。
この(3)式の右辺第2項の除去が同相除去である。
【0038】
図3の5段目は差動検出信号誤差voeであり、K1×i0≪v2の場合、(3)式の右辺第2項が支配的となり、以下の(8)式の関係が成り立つ。
voe≒K2×v2 ・・・・・(8)
【0039】
図3の6段目は差動検出信号voに対してローパスフィルタ処理をした信号vofである。この信号vofは(3)式の右辺に対してローパスフィルタ処理したものと同じである。K1は一定値であるので、(3)式右辺第1項に対してローパスフィルタ処理を行うと、電流i0に対してフィルタ処理した値をK1倍した値となる。同様にK2も一定値であるので、(3)式右辺第2項に対してローパスフィルタ処理を行うと、差動検出信号誤差voeに対してフィルタ処理した値をK2倍した値となる。
【0040】
ここで、差動検出信号誤差voeに対してローパスフィルタ処理した値について考察する。差動検出信号誤差voeは第2の電位v2に比例する。第2の電位v2は、チョッパ回路16によって平均値が位相幅信号D1に第1の電位v1を乗算した値に一致するように制御されている。本実施の形態1におけるローパスフィルタ26の時定数は、搬送波信号の周期Tcに対して略1倍以上且つ略20倍以下の時定数となるフィルタとしている。周期Tcに対して略1倍以上の時定数を有するフィルタを差動検出信号誤差voeに対して介するようにすることで、第2の電位v2に比例する差動検出信号誤差voeも平均化され、位相幅信号D1に比例した値となる。
【0041】
なお、差動検出信号誤差voeを平均化するために必要なローパスフィルタ26の時定数は略20倍もあれば十分であり、これより大きな時定数にすると、平均化できる長所に加え、検出遅れに起因する短所も現れる。このように、差動検出信号誤差voeに対してローパスフィルタ処理した値は位相幅信号D1に比例した値と見なして良い。
また、K3とvccはそれぞれ一定値であるので(3)式右辺第3項は一定値であり、右辺第3項に対してローパスフィルタ処理を行っても、その値は変化しない。
【0042】
以上を勘案し、この発明の実施の形態1においては、位相幅信号D1に対してゲイン演算器25でゲインKoffを乗算することで差動検出信号誤差voeに相当する補正信号vocとして算出し、差動検出信号voをローパスフィルタ処理した信号vofから補正信号vocを減算することによって同相除去を行っている。
【0043】
なお、第2の電位v2は、第1の電位v1と位相幅信号D1の積に略一致する。第1の電位v1が一定値の場合は、ゲインKoffも一定であるが、第1の電位v1が変化する場合は、差動検出信号誤差voeも第1の電位v1の変化に応じて変化する。このような第1の電位v1が変化する場合、ゲインKoffは、第1の電位v1に応じて可変となるようにしても良い。
【0044】
以上のように、この発明の実施の形態1の電力変換装置によれば、差動検出信号voをチョッパ回路の制御信号で補正するようにしたので、同相電圧に起因するオフセット変化に応じた電流値の演算が可能となり、高い精度で電流検出が可能となる。
【0045】
また、特許文献1に記載の従来の電力変換装置では、上段電力用半導体素子がオンすると検出抵抗に電流が給電されず、電流を得るためには上段電力用半導体素子をオフする期間を設ける必要があったが、本実施の形態1では、検出抵抗を第2の電位と第3の電位との間に接続するようにしたので、上段電力用半導体素子若しくは下段電力用半導体素子の
オンオフに関わらず、第2の電位v2から第3の電位v3へ給電される電流を得ることができる。
【0046】
また、演算手段13は、チョッパ回路の制御信号である位相幅信号D1に比例した値に基づいて補正信号vocを算出するので、位相幅信号の変化に応じた補正を行うことで同相除去が可能であり、第2の電位から第3の電位へ給電される電流を正確に得ることができる。
【0047】
また、特許文献1や特許文献2に記載されているような従来の電力変換装置では、チョッパ回路のオンオフによって、検出抵抗を通過する電流とチョッパ回路の出力電流が一致する場合としない場合がある。従って、このような従来の電力変換装置において差動検出信号にローパスフィルタを介する場合、搬送波信号の周期に対して略1倍以上の時定数にすると検出抵抗に電流が給電されている時の値と給電されていない時の値が混在してしまい電流検出できない。
一方、本実施の形態1では、検出抵抗を通過する電流とチョッパ回路の出力電流は同一であり、差動検出信号に介するローパスフィルタの時定数に制約はない。
【0048】
また、演算手段13は、差動検出信号voに対してフィルタを介するにあたり、フィルタの時定数を搬送波信号の周期に対して略1倍以上且つ略20倍以下となるようにしたので、演算した電流値i1はスイッチング信号のオンオフに伴う変化の影響が抑制され、位相幅信号で補正することができる。その結果、搬送波と非同期で差動増幅信号をアナログ/デジタル変換しても、精度よい電流検出値を得ることができる。
なお、K2の値は差動検出回路の抵抗値から求めても良いが、実験的にK2を測定して得ても良い。
【0049】
実施の形態2.
実施の形態1では、チョッパ回路が備える下段電力用半導体素子をダイオードで構成するとともに、上段電力用半導体素子は演算手段が出力するスイッチング信号S1に基づいてオンオフするようにしていたが、チョッパ回路が備える上段電力用半導体素子と下段電力用半導体素子は、それぞれ演算手段が出力するスイッチング信号G1、G2に基づいてオンオフするように構成しても良い。
図4は、このような、この発明の実施の形態2の電力変換装置の全体構成を示す図であり、図中、実施の形態1と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
【0050】
図4において、電力変換装置15aは、チョッパ回路16a、差動検出回路6、演算手段13a、位相幅信号発生器14、検出抵抗4を具備しており、チョッパ回路16aの制御信号として、位相幅信号発生器14が出力する位相幅信号D1、演算手段13aが出力するスイッチング信号G1、G2が存在する。
位相幅信号D1は、チョッパ回路16aが備える上段電力用半導体素子2aと下段電力用半導体素子3aの通電期間の比に相当し、0〜1の間で変化する。この位相幅信号D1はデューティ比とも呼ばれる。スイッチング信号G1はチョッパ回路16aが備える上段電力用半導体素子2aをオンオフさせるための信号であり、スイッチング信号G2はチョッパ回路16aが備える下段電力用半導体素子3aをオンオフさせるための信号である。
【0051】
電位差v1を有する直流電圧源1の負極には接地電位が接続され、直流電圧源1の正極はチョッパ回路16aが備える上段電力用半導体素子2aの端子に接続される。上段電力用半導体素子2aはスイッチング信号G1がTRUEでオン、FALSEでオフする。上段電力用
半導体素子2aの他端子には下段電力用半導体素子3aの端子と抵抗値R0[Ω]の検出抵抗4の端子が接続され、下段電力用半導体素子3aの他端子には接地電位が接続される
。下段電力用半導体素子3aはスイッチング信号G2がTRUEでオン、FALSEでオフする。
【0052】
この実施の形態2では、上段電力用半導体素子2a及び下段電力用半導体素子3aは、MOS-FETやIGBTといった半導体スイッチング素子によって構成する。
このようにチョッパ回路16aが備える下段電力用半導体素子3aがMOS-FETであっても
スイッチング信号G2を後述するように与えれば、実施の形態1と同様の動作にすることができる。
下段電力用半導体素子がダイオードの場合とMOS-FETの場合とを比較すると、ダイオー
ドはMOS-FETより簡素で安価という長所がある一方、MOS-FETはダイオードよりも導通損失や発熱が小さいという長所がある。
【0053】
図5は実施の形態2の演算手段13aの内部構成を示す図である。
演算手段13aは、位相幅信号発生器14から得た所望の位相幅信号D1に基づいて、上段電力用半導体素子2a及び下段電力用半導体素子3aのそれぞれをオンオフさせるためのスイッチング信号G1及びG2を演算するとともに、差動検出信号voに基づいて検出抵抗4を通過する電流i0を演算し、演算電流i1として出力する。
演算手段13aでは、前記実施の形態1の演算手段13に対して、遅延器22、AND演算器23、NOR演算器24を追加している。
【0054】
遅延器22は、信号S1に対して所定の時間Tdだけ遅延した信号をS2として出力する。この所定時間Td[秒]は短絡防止時間、或いはデッドタイムとして知られており、上段電力用半導体素子と下段電力用半導体素子が同時にオンして第1の電位と基準電位との間で短絡による過電流が発生しないようにするための時間である。
本実施の形態2における遅延時間Tdは、5×10-6[秒]以下に設定する。
AND演算器23は、信号S1と信号S2の論理積を演算し、スイッチング信号G1として出力する。NOR演算器24は信号S1と信号S2の否定論理和を演算し、スイッチング信号G2として出力する。
【0055】
図6は、演算手段13aにおける所望の位相幅信号D1と搬送波信号C1に基づいたスイッチング信号G1及びG2の演算について説明するための図である。
図6において、1段目は位相幅信号D1と搬送波信号C1の波形である。位相幅信号D1は0〜1の間で変化する。搬送波信号C1は最小値0、最大値1、周期Tcである。信号S1は、比較器21によって位相幅信号D1と搬送波信号C1の大小関係がD1≧C1の場合はTRUE、D1<C1の場合はFALSEとなる。信号S2は、信号S1に対して所定の時
間Tdだけ遅延した信号である。
スイッチング信号G1は信号S1とS2の論理積(AND)を演算したものであり、スイッチング信号G2は信号S1とS2の否定論理和(NOR)を演算したものである。
スイッチング信号G1、G2をこのように演算することによって、スイッチング信号G1、G2は図6の4段目及び5段目の関係となる。
即ち、スイッチング信号G1とG2は交互にオンし、且つ、G1とG2が同時にオンすることを防止するように遅延時間Tdだけは同時にオフする期間が設けられている。
【0056】
以上のように、この発明の実施の形態2の電力変換装置は、チョッパ回路が備える上段電力用半導体素子および下段電力用半導体素子を共に、スイッチング信号G1、G2に基づいてオンオフする電力用半導体スイッチング素子で構成したものであって、この実施の形態2によっても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を得ることができるものである。
【0057】
実施の形態3.
実施の形態2における演算手段13aは演算電流i1を連続して更新するようにしてい
たが、演算電流i1を任意のタイミングで離散的に更新するものに置換しても良い。
図7は、このようなこの発明の実施の形態3における演算手段13bの内部構成を示す図であり、図中、実施の形態2と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
【0058】
図7において、ホールド器30は、位相幅信号D1及びローパスフィルタ26の出力vofを任意のタイミングでホールドしてvohとして出力するものであり、このホールド器30以外は実施の形態2の演算手段13aと同じである。
位相幅信号D1も、ローパスフィルタ26の出力vofも連続的に変化するので、ホールド器30がホールドするタイミングに制約は無く、演算電流i1を離散的に更新するタイミングは任意である。
【0059】
上述の特許文献1や特許文献2に記載されているような従来の電力変換装置では、検出抵抗に電流が給電されていない値をホールドしてしまう可能性があるので、演算電流を離散的に更新する場合、チョッパ回路の下段半導体素子がオンするタイミングに同期して差動検出信号をホールドしなければならない制約が伴うが、実施の形態3の電力変換装置では、このような制約はなく、演算手段13bは搬送波信号C1と非同期で信号vof及び位相幅信号D1をアナログ/デジタル変換しても良く、これによりホールドタイミングが不正確な安価なホールド器であっても精度良い電流検出値を得ることができる。
【0060】
実施の形態4.
前記実施の形態における演算手段は、演算電流i1の補正量を位相幅信号に基づいて得ていたが、スイッチング信号G1、G2、若しくは比較器21が出力する信号S1に基づいて演算電流i1の補正量を得るものに置換しても良い。
図8は、このような、この発明の実施の形態4における演算手段13cの内部構成を示す図であり、図中、実施の形態1〜3と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
【0061】
図8において、第1の補正量設定器31は第1の補正量Voff1を出力し、第2の補正量
設定器32は第2の補正量Voff2を出力する。
選択器33は補正信号vocとして信号S1がTRUEの場合は第1の補正量Voff1を出力し
、信号S1がFALSEの場合は第2の補正量Voff2を出力する。
【0062】
図9は本実施の形態4の演算手段13cにおける時刻と各信号の関係を示したものである。図9において、1段目は位相幅信号D1と搬送波信号C1、2段目は信号S1、3段目は電流i0、4段目は差動検出信号vo、5段目は差動検出信号誤差voe、をそれぞれプロットしている。第2の電位v2は、上段電力用半導体素子2がオンしている場合は第1の電位と同電位であり、下段電力用半導体素子3がオンしている場合は基準電位と同電位である。換言すると、遅延時間Tdを無視すれば、信号S1がTRUEの場合、第2の電位v2は第1の電位と同電位であり、信号S1がFALSEの場合、第2の電位v2は基準電
位と同電位である。従って、差動検出信号誤差voeについて前述の(8)式が成り立てば、差動検出信号誤差voeは、信号S1がTRUEの場合とFALSEの場合の2通りと見なし
て良い。
【0063】
信号S1がTRUEの場合、第2の電位v2は第1の電位と同電位であるので、差動検出誤差voeは(8)式のv2にv1を代入したK2×v1である。
また、信号S1がFALSEの場合、第2の電位v2は基準電位と同電位であるので、差動検
出誤差voeは(8)式のv2に0を代入した0(=K2×0)である。
そこで、第1の補正量設定器31はK2×v1を出力するように設定しておき、第2の補正量設定器32は0を出力するように設定しておくことによって、選択器33は正確な
補正信号vocを出力することができる。
【0064】
なお、信号S1と信号S2、スイッチング信号G1、スイッチング信号G2の関係は図6に示した関係であって、通常遅延時間Tdは無視できる程度であるので、選択器33の入力として、信号S1の代わりに信号S2、スイッチング信号G1、スイッチング信号G2のいずれを用いても、同様の効果を得ることが可能である。
【0065】
また、第1の補正量Voff1及び第2の補正量Voff2の設定値として、オフセット設定器28が出力するオフセット信号Voffの値を包含させておけば、オフセット設定器28を省略できる。
また、第1の補正量Voff1は、第2の電位v2が第1の電位v1であるときの補正量であ
る。第1の電位v1が一定値の場合は、第1の補正量Voff1を一定とすれば良いが、第1
の電位v1が変化する場合は、第1の補正量Voff1を第1の電位v1に応じて可変にすれ
ば良いことは言うまでもない。
【0066】
以上のように、この発明の実施の形態4における演算手段13cは、スイッチング信号G1、G2のオンオフに応じて第1の補正量と第2のオフセット補正量の何れかを選択するようにしたので、位相幅信号D1毎の補正量演算を省いて2通りの補正量だけで正確な電流演算ができる効果がある。
【0067】
実施の形態5.
実施の形態4における演算手段13cは演算電流i1を連続して更新するようにしていたが、演算電流i1を離散的に更新するものに置換するようにしても良い。
図10は、このようなこの発明の実施の形態5における演算手段13dの内部構成を示す図であり、図中、実施の形態4と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
【0068】
図10において、選択器33dは、位相幅信号D1と搬送波信号C1に基づき、差動検出信号voを後述するタイミングでホールドしてvohとして出力すると共に、補正信号vocとして第1の補正量Voff1又は第2の補正量Voff2の何れかを選択して出力する。
【0069】
図11は、選択器33dの動作を示す流れ図(フローチャート)である。
ステップS100で選択器33dは動作を開始する。
ステップS101で位相幅信号D1が0.5より大きいか否かを判断する。位相幅信号D1が0.5より大きい場合、ステップS102にてΔT秒待機する。本実施の形態5では、ΔT秒の整数倍が搬送波信号C1の半周期Tc/2秒となるようにΔT秒を設定する。なお、設定するΔT[秒]は搬送波信号C1の半周期Tc/2[秒]の整数倍が望ましいが、ΔT≪Tc/2であれば整数倍で
なくても良い。
ステップS103は、搬送波信号C1が0か否かを判断する。搬送波信号C1が0の場合、ステップS104にて、補正信号vocとして第1の補正量Voff1を選択し、ステップS105にて
vohを更新することで、vohは搬送波信号C1=0時点のvoになる。
ステップS103で搬送波信号C1が0でない場合は、ステップS102を実行する。
また、ステップS101で位相幅信号D1が0.5以下の場合、ステップS106にてΔT秒待機する。
【0070】
ステップS107は、搬送波信号C1が1か否かを判断する。搬送波信号C1が1の場合、ステップS108にて、補正信号vocとして第2の補正量Voff2を選択し、ステップS105に
てvohを更新することで、vohは搬送波信号C1=1時点のvoになる。
また、ステップS107で搬送波信号C1が1でない場合は、ステップS106を実行する。
【0071】
図11のフローチャートに従えば、位相幅信号D1が0.5より大きい場合は搬送波信号
C1=0となるタイミング(三角波状の搬送波信号C1が谷となるタイミング)で差動検出信号をホールドし、位相幅信号D1が0.5以下の場合は搬送波信号C1=1となるタイ
ミング(三角波状の搬送波信号C1が山となるタイミング)で差動検出信号をホールドする。
【0072】
図12は本実施の形態5における時刻と各信号の関係を示したものである。
図12において、1段目は位相幅信号D1と搬送波信号C1、2段目は信号S1、3段目は電流i0、4段目は差動検出信号voとホールドした信号voh、5段目は補正信号
voc、をそれぞれプロットしている。
図12の期間Aは位相幅信号D1が0.5以下の期間であり、期間Bは位相幅信号D1が0.5より大きい期間である。
位相幅信号D1が0.5以下の期間Aでは、搬送波信号C1が1のタイミング、即ち三角
波状の搬送波信号C1が山となるタイミングで差動検出信号voをホールドしてvohとして出力する。そして、期間Aでは補正信号vocとして第2の補正量Voff2を選択して
出力する。
また、位相幅信号D1が0.5より大きい期間Bでは、搬送波信号C1が0のタイミング
、即ち三角波状の搬送波信号C1が谷となるタイミングで差動検出信号voをホールドしてvohとして出力する。そして、期間Bでは補正信号vocとして第1の補正量Voff1
を選択して出力する。
【0073】
位相幅信号D1が0.5以下の期間Aでは、信号S1はTRUEの期間よりFALSEの期間が長く、搬送波信号C1が1のタイミングは信号S1がFALSEである。
位相幅信号D1が0.5より大きい期間Bでは、信号S1はFALSEの期間よりTRUEの期間が長く、搬送波信号C1が0のタイミングは信号S1がTRUEである。
このように動作させることによって、信号S1はTRUE、FALSEのパルス期間の長い方の差
動検出信号voをホールドしてvohを得ることになる。
【0074】
このような構成によって、実施の形態5における演算手段13dは、位相幅信号D1が0.5よりも大きい場合は、上段電力用半導体素子2aがオンとなる期間、即ち、信号S1
がTRUEの期間に差動検出信号voをホールドするようになる。そして、位相幅信号D1が0.5以下の場合は、下段電力用半導体素子がオンとなる期間、即ち信号S1がFALSEの期間に差動検出信号voをホールドするようになる。その結果、必ず、信号S1の状態が、TRUE若しくはFALSEを持続する期間の長い条件で差動検出信号voをホールドする。
換言すると、TRUE若しくはFALSEが短期間で変化する時に差動検出信号voをホールドす
る必要がないので、ホールドするタイミングが、三角波状の搬送波信号C1の山、または谷から多少ずれても信号S1の状態に変化はない。
【0075】
上述の特許文献1や特許文献2に記載の従来の電力変換装置では、下段電力用半導体素子がオンとなるタイミングで差動検出信号をホールドする必要があったが、位相幅信号D1が1に近づくと、下段電力用半導体素子がオンする期間は短期間であり、差動検出信号をホールドするタイミングは高い精度が要求される問題があった。
本実施の形態5の電力変換装置では、TRUE若しくはFALSEが短期間で変化する時に差動検
出信号voをホールドする必要がないので、差動検出信号voをホールドするタイミングの許容範囲が広くなり、処理時間に伴う遅延を有する安価な回路を用いても、精度良く電流値を得ることが可能である。
なお、本実施の形態5では、一例としてステップS101において位相幅信号D1の分岐条件を0.5に設定した場合について示したが、位相幅信号D1の分岐条件は0より大きく且つ1より小さい範囲であれば、0.5以外の数値でも良いことは言うまでもない。
【0076】
実施の形態6.
前記実施の形態5における演算手段13dは、差動検出信号voをホールドして演算電流i1を出力するようにしていたが、差動検出信号voの代わりに差動検出信号voにローパスフィルタを介したvofをホールドするものに置換するようにしても良い。
図13は、このような、この発明の実施の形態6における演算手段13eの内部構成を示す図であり、図中、実施の形態5と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
【0077】
図13において、ローパスフィルタ40は、差動検出信号voを後述する時定数でフィルタリングし、この結果を信号vofとして選択器33eに出力する。
選択器33eは、位相幅信号D1と搬送波信号C1に基づき、信号vofを後述するタイミングでホールドしてvohとして出力するとともに、補正信号vocとして第1の補正量Voff1または第2の補正量Voff2の何れかを選択して出力する。
【0078】
図14は、選択器33eの動作を示すフローチャートであり、図中、実施の形態5と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
ステップS110ではステップS104またはステップS108の処理が終わると、ΔT2[秒]だけ待機する。このステップS110によって、三角波状の搬送波信号の山又は谷のタイミングからΔT2だけ遅延したタイミングで選択器33eの信号vohを更新するようになる。ΔT2は0[秒]以上で且つ、搬送波信号C1の4分の1周期、即ちTc/4 [秒]以下に設定する。特に、ΔT2=0[秒]の場合、選択器33eは選択器33dと同一になる。
【0079】
図15は本実施の形態6における時刻と各信号の関係を示したものである。
図15において、1段目は位相幅信号D1と搬送波信号C1、2段目は信号S1、3段目は電流i0、4段目は差動検出信号誤差voe、5段目はローパスフィルタ40と同じ時定数のフィルタで差動検出信号誤差voeをフィルタ処理した信号voef、6段目は差動検出信号voとホールドした信号voh、をそれぞれプロットしている。
図15の3段目のように、電流i0は、信号S1が変化するタイミング、即ち、電力用半導体素子がオン、オフするタイミングでリンギングと呼ばれる振動が発生する。このリンギングが発生しているタイミングで選択器が信号をホールドすると、演算手段が出力する演算電流i1にリンギングに起因した誤差が生じる。
本実施の形態6におけるローパスフィルタ40は、このリンギングの影響を除去するように作用する。
【0080】
ここで、ローパスフィルタ40の時定数について考察する。
図15の4段目は差動検出誤差voeであり、この差動検出誤差voeに対してローパスフィルタ40と同じ時定数のフィルタでフィルタ処理した波形が図15の5段目のvoefである。図15のように位相幅信号D1が0.5より大きい場合、選択器33eは上述したように三角波状の搬送波信号C1が谷となるタイミングからΔT2[秒]だけ遅延したタイミングでvofをホールドする。ΔT2は0[秒]以上で且つ、搬送波信号C1の4分の1
周期、即ちTc/4 [秒]以下に設定しているので、選択器33eが信号vofをホールドす
るのは図15中の期間Cにおける何れかとなる。
換言すると、信号vofのホールドは、ΔT2を0〜Tc/4[秒]の範囲で変更することにより、図中期間C内の任意のタイミングでホールドすることになり、図15の例ではΔT2をTc/8[秒]に設定して図中の▲印のタイミングで信号vofをホールドしている。
【0081】
位相幅信号D1が0.5より大きい場合、選択器33eがホールドした信号vofが含有
する誤差voefは第1の補正量Voff1に相当する値になっていれば、選択器33eが選
択する補正量として第1の補正量Voff1が妥当な値となる。
図15の5段目を見て判るように位相幅信号D1が0.5より大きい場合は、信号S1がTRU
Eの期間で信号vofをホールドするようにしているので、voefは信号S1がFALSEからTRUEに変化してから0 [秒]以上Tc/2[秒]以下の期間の値となるので、ローパスフィルタ40の時定数は搬送波信号C1の周期の1/2倍以下の時定数としておけば良い。また、ローパスフィルタ40の時定数を搬送波信号C1の周期の1/20倍以上にしておけば、搬送波信号に対するvoの変化は十分捕捉できる。
即ち、ローパスフィルタ40の時定数は搬送波信号C1の周期の1/20倍以上1/2倍以下の時定数としておけば良い。
【0082】
特に、期間Cでホールドするようにすれば、信号voefは信号S1がFALSEからTRUE
に変化してからTc/4[秒]以上Tc/2[秒]以下の期間の値となる。
換言すると、選択器33eが信号vofをホールドして良い期間は搬送波の1/2周期以上であるので、差動検出信号voに対して、搬送波信号周期の1/4倍以上1/2倍以下の時定数となるフィルタを設けても、差動検出信号誤差voeはホールドするタイミングでは定常状態となっており、好ましい。その結果、リンギングなどに起因する検出ノイズの抑制が可能となり、選択器33eが選択する補正量として第1の補正量Voff1が妥当な値とな
る。
【0083】
特許文献1や特許文献2に記載されているような従来の電力変換装置では、下段電力用半導体素子がオンとなるタイミングで差動信号をホールドする構成であるため、図15のような場合、信号S1がFALSEの期間だけ検出抵抗に電流が給電されるので、ホールドす
る期間も信号S1がFALSEの期間になる。
位相幅信号D1が1に近づくほど、FALSEの期間は短くなる。位相幅信号の範囲が高いほど、電力変換装置の利用率が高く、一般的な用途では位相幅信号は0.95以上を確保したい。この場合、信号S1がFALSEの期間は搬送波信号の周期の1/20となる。
従って、本実施の形態6のような搬送波信号周期の1/20倍以上1/2倍以下の時定数となる
フィルタを設けてしまうと、差動検出信号誤差voeが過渡状態でホールドすることになり、選択器33eが選択する補正量を第1の補正量Voff1または第2の補正量Voff2といった2通りで与えることはできず、その結果、リンギングなどに起因するノイズ抑制の効果を得ることができない。
【0084】
しかしながら、本実施の形態6の電力変換装置によれば、差動検出信号voに対して搬送波信号C1の周期Tcの略1/20以上、且つ略1/2以下の時定数となるフィルタを介した値vofに基づいて、演算電流i1を演算するようにしたので、リンギングなどに起因するノイズの影響を受けることなく、安定で正確な演算電流i1を演算することが可能である。
【0085】
実施の形態7.
前記実施の形態6では、演算手段は、第1の補正量と第2の補正量を備え、演算電流i1を演算するための補正量として、スイッチング信号G1、G2のオンオフに応じて第1の補正量と第2の補正量の何れかを選択し、加算して補正するようにしていたが、電力用半導体素子で発生する電圧降下が電流の大きさに略比例する場合は、v2の電位、即ち、差動検出信号誤差voeの大きさも電力用半導体素子を通過する電流の大きさに応じて変化する。電力用半導体素子で発生する電圧降下が電流の大きさに略比例する場合は、電流i0に対する差動検出信号voの増幅率が変化したように反映される。
上段電力用半導体素子と下段電力用半導体素子に異なる種類の電力用半導体素子を用いると、電力用半導体素子で発生する電圧降下の大きさと電流i0の比例関係の係数は、スイッチング信号G1、G2のオンオフの状態によって異なる。
そこで、前記実施の形態6に加えて、スイッチング信号G1、G2のオンオフと略同期して変化する信号S1に応じて第3の補正量と第4の補正量の何れかを選択し、乗算して補正するようにしても良い。
【0086】
図16は、このような、この発明の実施の形態7における演算手段13fの内部構成を示す図であり、図中、実施の形態6と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
実施の形態6の演算手段13eでは、ゲイン演算器29で加減算器27の出力をK倍するようにしていた。本実施の形態7の演算手段13fでは、第3の補正量K1を出力する第3の補正量設定器50と、第4の補正量K2を出力する第4の補正量設定器51とを備えている。
選択器33fは、加減算器27へ出力する補正量として第1の補正量Voff1を選択した
場合は、乗算器52へ出力する補正量として第3の補正量K1を選択し、加減算器27へ出力する補正量として第2の補正量Voff2を選択した場合は、乗算器52へ出力する補正
量として第4の補正量K2を選択する。
【0087】
このように、演算電流i1を演算するための補正量として、加算的に演算電流i1を補正するVoff1, Voff2に加え、乗算的に演算電流i1を補正する第3の補正量K1、第4の補正量K2を加えることで、より正確に演算電流i1を演算することが可能となる。
【0088】
実施の形態8.
前述の実施の形態においては、差動検出回路6は1つのオペアンプで差動検出と信号増幅の2つの役割を担うものについて示したが、差動検出回路内部にオペアンプを2つ設けることによって、差動検出の役割と信号増幅の役割を分担させる差動検出回路6gに置換しても良い。
図17は、このような、この発明の実施の形態8における差動検出回路6gの内部構成を示す図であり、図中、前述の実施の形態と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
【0089】
図17において、差動検出回路6gは、差動検出の役割を担うオペアンプ7と、信号増幅の役割を担うオペアンプ66の計2つのオペアンプを具備する。
ここで、抵抗8〜12の選択は、抵抗値R1〜R5の間に以下の(9)、(10)式の関係が成り立つように行う。
【0090】
R1=R2=R3 ・・・・・・(9)
2×R1=R4=R5 ・・・・(10)
【0091】
抵抗8〜12の抵抗値R1〜R5をこのように与えることによって、オペアンプ7の出力は電位差(v3−v2)を増幅することなく、差動検出することができる。また、抵抗値R1〜R5の大きさの種類は2通りだけであり、抵抗11、12はR1と同じ抵抗値の抵抗を直列接続で与えたり、或いは抵抗8〜10をR4と同じ抵抗値の抵抗を並列接続で与えたりすることによって、抵抗8〜12を同一ロットの同じ抵抗で構成することが可能である。その結果、抵抗ばらつきに起因する同相電圧に伴う検出誤差を低減させることができる。そして、抵抗60〜65の抵抗値R10〜R15を適切に与えることによって、オペアンプ7の出力を所望の倍率で増幅した値をオペアンプ66から出力させることができる。
【0092】
以上のように、実施の形態8の差動検出回路によれば、差動検出の役割を担うオペアンプと信号増幅の役割を担うオペアンプの計2つのオペアンプを具備する構成にすることよって、差動検出の役割を担うオペアンプに接続される抵抗8〜12は同一ロットで構成することが可能である。同一ロットの抵抗値のばらつきは異なるロットの抵抗値のばらつきよりも相対的に小さいので、抵抗8〜12の抵抗ばらつきと同相電圧によって発生する誤差を小さくすることができる。その結果、差動検出信号voに生じる誤差を小さくすることができる効果がある。
【0093】
実施の形態9.
前述したように、車両に搭載する電力変換装置の場合、温度、湿度、振動、発塵など過酷な環境での動作が必要となり、ホール電流センサのホール素子より検出抵抗の方が頑健性の面で有利である。そこで、前記実施の形態1において、電力変換装置15の第1の電位v1は車両に搭載されたバッテリ1の正極に接続され、第3の電位v3は車両に搭載された電気的負荷5に接続され、基準電位GNDは車体接地又はバッテリの負極に接続されるように構成しても良い。
【0094】
このように構成することによって、温度、湿度、振動、発塵といった車両の搭載に必要な制約条件を満たしつつ、電気的負荷にバッテリ電圧よりも低い電圧を印加するとともに、電気的負荷に給電する電流値i0を正確に得ることができる効果がある。
【0095】
実施の形態10.
前記実施の形態9では電力変換装置の第1の電位がバッテリに接続され、第3の電位が電気的負荷に接続される場合を扱ったが、電力変換装置の第1の電位には電気的負荷が接続され、第3の電位にはコイルを介してバッテリの正極が接続され、前記基準電位は車体接地又はバッテリの負極に接続するようにしても良い。
図18はこのような、この発明の実施の形態10における電力変換装置の全体構成を示す図であり、図中、前述の実施の形態と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
【0096】
図18において、電力変換装置15hはチョッパ回路16h、検出抵抗4、差動検出回路6、演算手段13、位相幅信号発生器14を具備しており、チョッパ回路16hの制御信号として、位相幅信号発生器14が出力する位相幅信号D1、演算手段13が出力するスイッチング信号S1が存在する。
位相幅信号D1は、チョッパ回路16hが備える下段電力用半導体素子3hの通電期間と非通電期間の比に相当し、0〜1の間で変化する。下段電力用半導体素子3hがオンしている期間は、第2の電位v2は基準電位GNDと同電位となる。また、電気的負荷5hはコンデンサと抵抗の並列回路負荷である。
【0097】
また、チョッパ回路16hの上段電力用半導体素子2hと下段電力用半導体素子3hとの接続点に、検出抵抗4の一端が接続され、検出抵抗4の他端にはコイル80を介して直流電圧源1hの正極端子が接続される。
なお、チョッパ回路16hと電気的負荷5hの接続点の電位は第1の電位v1、検出抵抗4とチョッパ回路16hの接続点の電位は第2の電位v2、検出抵抗とコイル80との接続点の電位は第3の電位v3である。
【0098】
コイル80を通る電流値i0は必ず連続的に変化するので、下段電力用半導体素子3hがオンからオフに変化すると、電流i0は第2の電位v2からダイオードである上段電力用半導体素子2hを通過して電気的負荷5hに給電される。
なお、この実施の形態10においては、チョッパ回路16hが備える上段電力用半導体素子は半導体整流素子であるダイオードにしているが、MOS-FETやIGBTといった半導体スイ
ッチング素子で構成しても、適切なスイッチングを行えば本実施の形態と同様の動作が可能である。上段電力用半導体素子がMOS-FETの場合とダイオードの場合とを比較すると、MOS-FETはダイオードよりも導通損失や発熱が小さいという長所がある一方、ダイオードはMOS-FETより簡素且つ安価という長所がある。
スイッチング信号S1はチョッパ回路16hが備える下段電力用半導体素子3hをオンオフさせるための信号である。
【0099】
このような構成によって、実施の形態10によれば、電気的負荷5hが接続される第1の電位v1を直流電圧源1hの正極側の電位よりも高い電位とすることができる。
特に、車両に搭載する電力変換装置の場合、温度、湿度、振動、発塵など過酷な環境での動作が必要となり、ホール電流センサのホール素子より検出抵抗の方が頑健性の面で有利である。そこで、電力変換装置15hの第1の電位v1を車両に搭載された電気的負荷5hに接続し、コイル80を介して、第3の電位v3を直流電圧源1hとして車両に搭載されたバッテリの正極に接続するようにすれば、温度、湿度、振動、発塵といった車両の搭載に必要な制約条件を満たしつつ、直流電圧源1hの正極側電位よりも高い電圧を電気的負荷5hに印加することができるとともに、直流電圧源1hから給電される電流値i0を正確に得られる効果がある。
【0100】
実施の形態11.
前述の実施の形態では、電気的負荷として、抵抗やコイル、コンデンサによって構成されたものを扱ったが、電気的負荷は直流回転機であっても良い。
図19は本実施の形態11における電力変換装置の全体構成を示す図であり、前記実施の形態と同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものである。
【0101】
図19において、電力変換装置15iには、直流電圧源1と直流回転機70と電圧指令発生器71とが接続される。この電力変換装置15iは、第1のチョッパ回路16xと、第2のチョッパ回路16yと、位相幅演算器72と、検出抵抗4と、差動検出回路6と
第1の演算手段13xと、第2の演算手段13yから構成されている。
直流回転機70はx相とy相の2端子を有しており、x相は検出抵抗4を介してチョッパ回路16xに接続されている。また、直流回転機70のy相はチョッパ回路16yに接続されている。電圧指令発生器71は直流回転機70のx相にチョッパ回路16xが印加すべき電圧の指令値vx*と、直流回転機70のy相にチョッパ回路16yが印加すべき電圧の指令値vy*とを出力する。
【0102】
なお、vx*、vy*のそれぞれが取り得る範囲は、−0.5×v1〜+0.5×v1[V]で
ある。位相幅演算器72には、予め直流電圧源1の端子間電位差v1が記憶されており、以下の(11)、(12)式に基づいて位相幅信号D1x、D1yの演算を行う。
D1x=vx*÷v1+0.5 ・・・・(11)
D1y=vy*÷v1+0.5 ・・・・(12)
【0103】
vx*、vy*のそれぞれが取り得る範囲から判るように、位相幅信号D1x、D1yのそれぞれが取り得る範囲は0〜1となる。演算手段13xは前記実施の形態に記載の演算手段13と同一構成である。
演算手段13xは、位相幅信号D1xに基づいて第1のチョッパ回路16xの上段電力用半導体素子2xをオンオフさせるためのスイッチング信号G1xと、下段電力用半導体素子3xをオンオフさせるためのスイッチング信号G2xとを出力するとともに、差動検出回路6から得た差動検出信号voに基づいて演算電流i1を演算する。
演算手段13yは、演算手段13xに対して演算電流i1の演算を廃したものであり、位相幅信号D1yに基づいて、第2のチョッパ回路16yの上段電力用半導体素子2yをオンオフさせるためのスイッチング信号G1yと、下段電力用半導体素子3yをオンオフさせるためのスイッチング信号G2xとを出力する。
【0104】
チョッパ回路16x、検出抵抗4、差動検出回路6、演算手段13xの接続に着目すれば、実施の形態1のチョッパ回路16、検出抵抗4、差動検出回路6、演算手段13から構成される接続と共通であり、本実施の形態11のチョッパ回路についても同じ原理で動作できる。従って、実施の形態2以降の構成を用いても直流回転機70を駆動しつつ、演
算電流i1を得ることができることは言うまでもない。
【0105】
また、車両に搭載する電力変換装置の場合、温度、湿度、振動、発塵など過酷な環境での動作が必要となり、ホール電流センサのホール素子より検出抵抗の方が頑健性の面で有利である。そこで、直流電圧源1を車両に搭載されたバッテリで与え、電力変換装置15iの第1の電位v1は該バッテリの正極に接続され、電力変換装置15iの第3の電位v3は車両に搭載された直流回転機に接続され、基準電位GNDは車体接地又はバッテリの負極に接続するようにすると良い。このように接続することで、温度、湿度、振動、発塵といった車両の搭載に必要な制約条件を満たしつつ、直流回転機70にバッテリ電圧よりも低い電圧を印加するとともに、直流回転機70に給電する電流値を正確に得る電力変換装置を得ることができる。
【0106】
実施の形態12.
前記実施の形態11では、電気的負荷として直流回転機が接続されたものを扱ったが、電気的負荷は交流回転機であっても良い。
図20は、このような、この発明の実施の形態12における電力変換装置の全体構成を示す図であり、前記実施の形態と同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものである。
図20において、電力変換装置15jには、直流電圧源1と交流回転機70jと電圧指令発生器71jとが接続される。この電力変換装置15jは、第1のチョッパ回路16uと、第2のチョッパ回路16vと、第3のチョッパ回路16wと、第1の演算手段13uと、第2の演算手段13vと、第3の演算手段13wと、位相幅演算器72jと、第1の検出抵抗4uと、第2の検出抵抗4vと、第1の差動検出回路6uと、第2の差動検出回路6vとから構成されている。
【0107】
第1のチョッパ回路16u、第1の検出抵抗4u、第1の差動検出回路6u、第1の演算手段13uの接続に着目すれば、実施の形態1のチョッパ回路16、検出抵抗4、差動検出回路6、演算手段13から構成される接続と共通であり、本実施の形態12のチョッパ回路についても同じ原理で動作できる。
第2のチョッパ回路16v、第2の検出抵抗4v、第2の差動検出回路6v、第2の演算手段13vの接続についても同じである。また、第3のチョッパ回路16w、第3の演算手段13wの接続については、前記実施の形態11の第2のチョッパ回路16y、第2の演算手段13yの接続と共通であり、本実施の形態12のチョッパ回路についても同じ原理で動作できる。
また、これらの接続について、実施の形態2以降の構成を用いて交流回転機70jを駆動すれば、精度の良い演算電流i1が得られることは言うまでもない。
【0108】
また、車両に搭載する電力変換装置の場合、温度、湿度、振動、発塵など過酷な環境での動作が必要となり、ホール電流センサのホール素子より検出抵抗の方が頑健性の面で有利である。そこで、直流電圧源1を車両に搭載されたバッテリで与え、電力変換装置15jの第1の電位v1は該バッテリの正極に接続され、電力変換装置15jの第3の電位v3は車両に搭載された交流回転機に接続され、基準電位GNDは車体接地又はバッテリの負極に接続するようにすると良い。このように接続することで、温度、湿度、振動、発塵といった車両の搭載に必要な制約条件を満たしつつ、交流回転機70jにバッテリ電圧よりも低い電圧を印加するとともに、交流回転機70jに給電する電流値を正確に得る電力変換装置を得ることができる。
なお、本実施の形態12では、交流回転機70jの三相電流のうちの二相を検出する場合を扱ったが、三相電流のそれぞれを検出できるように検出抵抗と差動検出を三相すべてに具備する構成にしても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0109】
1 直流電圧源、2 上段電力用半導体素子、3 下段電力用半導体素子、
4 検出抵抗、5 電気的負荷、6 差動検出回路、7 オペアンプ、
8〜12 抵抗、13 演算手段、14 位相幅信号発生器、15 電力変換装置、
16 チョッパ回路、20 搬送波信号発生器、26 ローパスフィルタ、
v1 第1の電位、v2 第2の電位、v3 第3の電位、
i0 出力電流、i1 演算電流、vo 差動検出信号、D1 位相幅信号、
S1、G1、G2 スイッチング信号、C1 搬送波信号、
voe 差動検出信号誤差、voc 補正信号
【技術分野】
【0001】
この発明は、負荷へ給電するチョッパ回路の出力電流の電流値を、高い精度で演算することのできる電流検出機能を具備した電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータやコンバータといった電力変換装置の多くは、チョッパ回路として第1の電位と第2の電位の間に接続される上段電力用半導体素子と、第2の電位と基準電位との間に接続される下段電力用半導体素子とを備える。そして、所望の位相幅信号(デューティー比)に基づいて、少なくともチョッパ回路の上段電力用半導体素子若しくは下段電力用半導体素子のいずれかをオンオフさせることで、第1の電位と第2の電位の間で電力変換を行う。例えば、このような電力変換装置で三相交流回転機を駆動するインバータに適用する場合、第1の電位と基準電位の間に直流電源を接続し、所望の位相幅を適切に与えるとともに、この位相幅に基づいて上段電力用半導体素子と下段電力用半導体素子とをスイッチングすることによって、基準電位に対する第2の電位を交流にしている。即ち、基準電位に対して直流となる第1の電位を、交流となる第2の電位に電力変換を行っている。このような電力変換をU相、V相、W相のそれぞれに施すことによって、三相交流回転機を駆動するインバータでは直流から三相交流に電力変換を行っている。
【0003】
三相交流回転機を駆動する場合、電力変換装置が給電する電流と三相交流回転機のトルクとの間には密接な関係があり、電流の検出精度が不十分であると、三相交流回転機のトルクリプルや回転むら、異音の発生要因となってしまう。
例えば、車両に搭載される電動パワーステアリング装置が具備する三相交流回転機を駆動する場合、トルクリプルの発生はハンドルの振動となって現れるので、電流を精度良く検出してトルクリプルを極力小さくしたいとの要求がある。
電力変換装置の出力電流を検出する方法としては、電流トランスを用いる方法や、ホール電流センサを用いる方法がある。
電流トランスを用いる方法は直流電流が検出できないので、停止状態や低回転で駆動する用途では利用できない。また、車両に搭載する電力変換装置の場合、温度、湿度、振動、発塵など過酷な環境での動作が必要となり、ホール電流センサのホール素子より検出抵抗の方が頑健性の面で有利である。
【0004】
そこで、特許文献1に記載される従来の電力変換装置では、上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子とが直列接続され、上アームのスイッチング素子が直流電源の正極側に接続されるとともに、下アームのスイッチング素子が直流電源の負極側に接続される三相分のアーム回路、この三相分のアーム回路のうちの少なくとも二相分の下アームのスイッチング素子にそれぞれ直列に挿入され、下アームのスイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出用抵抗素子を備え、上記電流に基づいて生成された三相の電圧指令波信号と搬送波とを比較して、パルス幅変調により上アーム及び下アームのスイッチング素子をオンオフ制御し、電力変換装置が給電する電流を得るようにしている。
【0005】
また、例えば特許文献2に記載される従来の電力変換装置では、駆動回路によりPWM
制御される負荷の電源側に設けたシャント抵抗を有する電流検出手段を備え、PWM制
御信号のオンオフのそれぞれにおいてシャント抵抗の両端電圧の電位差を検出し、オフ時に検出された電圧をオフセット電圧として、オン時に検出された電圧とオフセット電圧との差に基づいて、負荷に流れる電流を検出するようにしている。
【0006】
また、例えば特許文献3に記載される従来の電力変換装置では、ゲート回路を有するパ
ワー素子により直流電力をモータ駆動用の交流電力に変換するインバータの出力回路に直列に電流検出抵抗を挿入し、この電流検出抵抗の両端に生じる電位差をシグマデルタ変調されたデジタル信号に変換するシグマデルタ変調器と、前記デジタル信号を電気的に絶縁して伝達する電気絶縁性結合器と、伝達された信号を復調するデジタルフィルタと、このデジタルフィルタの出力に基づきインバータのゲート回路を制御する制御信号発生回路とを備えることで、電力変換装置が給電する電流を得るようにしている。
【0007】
また、例えば特許文献4に記載される従来の電力変換装置では、上アームスイッチング素子及び下アームスイッチング素子によってモータを駆動し、モータのバッテリ陽極の電位を基準とする第1の基準電圧源と、グランド電位を基準とする第2の基準電圧源と、上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子の接続点とモータの端子の間に設けられたシャント抵抗と、このシャント抵抗の電位に基づいて上記第1及び第2の基準電圧源の一方からの電圧を出力する切り替え手段と、該切り替え手段の出力と上記シャント抵抗の両端の電圧の間の電位差をそれぞれ分圧して2つの電圧信号を生成する分圧手段と、該分圧手段によって生成された2つの電圧信号を入力し、シャント抵抗に流れる電流値と電流の方向に基づいて所定の増幅率で増加又は減少する電圧を出力する増幅手段を備え、電力変換装置が給電する電流を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−017671号公報(請求項1、図1)
【特許文献2】特開2006−262677号公報(請求項1,2、図1,4)
【特許文献3】特開平7−015972号公報(請求項1、図1)
【特許文献4】特開2006−064596号公報(請求項1、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来の電力変換装置では、次のような問題があった。
特許文献1に記載の従来の電力変換装置では、電流を検出する電流検出用抵抗素子が下アームのスイッチング素子に直列に挿入されているので、下アームのスイッチング素子に流れる電流を得ることができるものの、上アームのスイッチング素子に流れる電流は得ることができない。従って、上アームのスイッチング素子がオン、下アームのスイッチング素子がオフする期間の電流を得ることができないため、スイッチング素子のオンオフ指令に制約が生じる問題があった。このような電力変換装置によって三相交流回転機を駆動すると、スイッチング素子のオンオフ指令の制約によって電力変換装置が出力できる最大電圧も制約を受けるといった問題があった。
【0010】
また、特許文献2に記載の従来の電力変換装置では、PWM制御信号のオフ時に検出された電圧をオン時に検出された電圧のオフセット電圧として、負荷に流れる電流を検出するようにしているので、シャント抵抗はPWM制御信号のオフ時に電流が流れない経路に配置する制約があり、PWM制御信号のオフ時でも電流が流れる経路の電流を検出することができない問題があった。
【0011】
また、特許文献3に記載の従来の電力変換装置では、ゲート回路を有するパワー素子により直流電力をモータ駆動用の交流電力に変換するインバータの出力回路に直列に電流検出抵抗を挿入し、この電流検出抵抗の両端に生じる電位差から電流を得るようにしているので、特許文献1のようなスイッチング素子のオンオフ指令に制約を受けないという利点がある。しかしながら、デジタル信号を電気的に絶縁して伝達するので、絶縁側にも電源が必要となる問題や、ホトカップラといった電気絶縁性結合器を必要とするので、装置が高価になるといった問題があった。
【0012】
さらに、特許文献4に記載の従来の電力変換装置では、上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子の接続点と、モータの端子の間に設けられたシャント抵抗の電位差を、非絶縁で検出して電流を得ているので、スイッチング素子のオンオフ指令の制約もなく、絶縁するための電源も不要である。しかしながら、切り替え手段の構成には、シャント抵抗の電位が比較的高いときに第1の基準電圧源の電圧を出力するPNPトランジスタと、シャント抵抗の電位が比較的低いときに第2の基準電圧源の電圧を出力するNPNトランジスタとが必要であり、装置が高価になるといった問題があった。
【0013】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、安価で且つ、精度良くチョッパ回路の出力電流の演算が可能な電流検出機能を備えた電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係る電力変換装置は、チョッパ回路と、このチョッパ回路の出力電流を検出する検出抵抗と、この検出抵抗の端子間の電位差を差動検出信号として出力する差動検出回路と、この差動検出回路からの差動検出信号を、前記チョッパ回路の制御信号で補正して、前記チョッパ回路の出力電流を演算する演算手段とを備えたものである。
【0015】
また、演算手段は、チョッパ回路の制御信号である位相幅信号に基づいてチョッパ回路をオンオフするためのスイッチング信号を演算するとともに、前記差動検出信号に基づいて前記チョッパ回路の出力電流を演算するよう構成され、前記チョッパ回路は、第1の電位と第2の電位の間に接続される上段電力用半導体素子と、前記第2の電位と基準電位との間に接続される下段電力用半導体素子によって構成され、前記検出抵抗は前記第2の電位と第3の電位との間に接続され、前記差動検出回路は、前記第2の電位と前記第3の電位との電位差を検出するように構成されたものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明の電力変換装置によれば、差動検出信号をチョッパ回路の制御信号で補正するようにしたので、同相電圧に起因するオフセット変化に対応したチョッパ回路の出力電流の演算が可能となり、安価で且つ、高い精度で電流検出が可能な電力変換装置を得ることができる。
【0017】
また、この発明の電力変換装置によれば、電流検出抵抗を第2の電位と第3の電位との間に接続するようにしたので、チョッパ回路の上段電力用半導体素子若しくは下段電力用半導体素子のオンオフに関わらず、第2の電位から第3の電位へ給電される電流を得ることができる。
【0018】
上述した、またその他の、この発明の目的、特徴、効果は、以下の実施の形態における詳細な説明および図面の記載からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1における電力変換装置の全体構成を示す図である。
【図2】実施の形態1における演算手段の内部構成を示す図である。
【図3】実施の形態1の演算手段における、所望の位相幅信号D1と搬送波信号C1に基づいて、上段電力用半導体素子と下段電力用半導体素子を動作させたときの電流i0、差動検出信号vo、差動検出信号誤差voe、差動検出信号にローパスフィルタ処理した信号vofの関係を説明するための図である。
【図4】この発明の実施の形態2における電力変換装置の全体構成を示す図である。
【図5】実施の形態2における演算手段の内部構成を示す図である。
【図6】実施の形態2の演算手段における所望の位相幅信号D1と搬送波信号C1に基づいたスイッチング信号G1及びG2の演算について説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態3における演算手段の内部構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態4における演算手段の内部構成を示す図である。
【図9】実施の形態4の演算手段における時刻と各信号の関係を示したものである。
【図10】この発明の実施の形態5における演算手段の内部構成を示す図である。
【図11】実施の形態5における選択器の動作を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態5における時刻と各信号の関係を示したものである。
【図13】この発明の実施の形態6における演算手段の内部構成を示す図である。
【図14】実施の形態6における選択器の動作を示すフローチャートである。
【図15】実施の形態6における時刻と各信号の関係を示したものである。
【図16】この発明の実施の形態7における演算手段の内部構成を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態8における差動検出回路の内部構成を示す図である。
【図18】この発明の実施の形態10の電力変換装置の全体構成を示す図である。
【図19】この発明の実施の形態11の電力変換装置の全体構成を示す図である。
【図20】この発明の実施の形態12の電力変換装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における電力変換装置の全体構成を示す図である。
図1において、電力変換装置15には、電位差v1を有する直流電圧源1と電気的負荷5が接続されている。電力変換装置15はチョッパ回路16、差動検出回路6、演算手段13、位相幅信号発生器14を具備しており、チョッパ回路16の制御信号として、位相幅信号発生器14が出力する位相幅信号D1、演算手段13が出力するスイッチング信号S1が存在する。位相幅信号D1は、チョッパ回路16が備える上段電力用半導体素子2と下段電力用半導体素子3の通電期間の比に相当し、0〜1の間で変化する。
この位相幅信号D1はデューティ比とも呼ばれる。スイッチング信号S1はチョッパ回路16が備える上段電力用半導体素子2をオンオフさせるための信号である。
【0021】
電位差v1を有する直流電圧源1の負極には接地電位が接続され、直流電圧源1の正極はチョッパ回路16が備える上段電力用半導体素子2の端子に接続される。上段電力用半導体素子2はスイッチング信号S1がTRUEでオン、FALSEでオフする。上段電力用半導体
素子2の他端子には下段電力用半導体素子3の端子と抵抗値R0[Ω]の検出抵抗4の端子が接続され、下段電力用半導体素子3の他端子には接地電位が接続される。下段電力用半導体素子3は、接地電位から下段電力用半導体素子の方向へ電流が流れようとしたときオン、下段電力用半導体素子から接地電位へ電流が流れようとしたときオフとなる。
本実施の形態1では、上段電力用半導体素子2は、MOS-FETやIGBTといった半導体スイッ
チング素子によって構成し、下段電力用半導体素子3はダイオードといった半導体整流素子によって構成する。
【0022】
上段電力用半導体素子2がオンしている期間は、第2の電位v2は第1の電位v1と同電位となる。また、電気的負荷5はコイルと抵抗の直列回路負荷であり、コイルを通る電流値は必ず連続的に変化するので、上段電力用半導体素子2がオンからオフに変化すると、電流i0は基準電位からダイオードである電力用半導体素子3を通過して電気的負荷5に給電される。検出抵抗4の他端子には電気的負荷5の端子が接続され、電気的負荷5の他端子には接地電位が接続される。
【0023】
ここで、接地電位を基準電位とし、直流電圧源1の正極側電位を第1の電位v1、上段電力用半導体素子2と下段電力用半導体素子3の接続点の電位を第2の電位v2、検出抵
抗4と電気的負荷5の接続点の電位を第3の電位v3と定義する。また、検出抵抗4を通過して電気的負荷5に給電される電流をi0とする。
なお、電気的負荷5として、本実施の形態1ではコイルと抵抗の直列回路負荷としたが、電気的負荷の組合せに制約はなく、コンデンサやバッテリなどを直列や並列に接続するようにしても良い。
【0024】
差動検出回路6は第2の電位v2と第3の電位v3との電位差を検出して、差動検出信号voを出力する。この差動検出回路6は、オペアンプ7と抵抗8〜12によって構成される。オペアンプ7の負の差動入力端子と第3の電位v3の間には抵抗値R1[Ω]の抵抗8が接続され、オペアンプ7の負の差動入力端子とオペアンプ7の出力端子の間には抵抗値R2[Ω]の抵抗9が接続される。
オペアンプ7の正の差動入力端子と第2の電位v2の間には抵抗値R3[Ω]の抵抗10が接続され、オペアンプ7の正の差動入力端子と任意の電位vccの間には、抵抗値R4[Ω]の抵抗11が接続されるとともに、オペアンプ7の正の差動入力端子と接地電位の間には抵抗値R5[Ω]の抵抗12が接続される。
なお、抵抗8〜12の選択は抵抗値R1〜R5の間に次の式(1)、(2)の関係が成り立つように行う。
【0025】
R1=R3 ・・・・・ ・(1)
2×R2=R4=R5 ・・ ・(2)
【0026】
任意の電位vccはオペアンプ7の出力である差動検出信号voのオフセット値を定めるものであり、電流i0に応じて、差動検出信号voはvcc/2[V]を中心にして変化する。そして、電流i0が零の場合、差動検出信号voの出力はvcc/2[V]となる。例えば、vccを前記基準電位、即ち接地電位で与えると、差動検出信号voは基準電位を中心に電流i0の符号に応じて正負に変化する。また、vccを5[V]に設定すると差動検出信号voは2.5[V]が中心値となって電流i0に応じて変化する。
さらに差動検出回路6を、接地電位に対して非絶縁で構成することにより、差動検出回路6は正負両電源を必要とせず、安価な正側の片電源だけで構成することができる。
【0027】
演算手段13は、位相幅信号発生器14から得た所望の位相幅信号D1に基づいて上段電力用半導体素子2をオンオフさせるためのスイッチング信号S1を演算するとともに、差動検出信号voに基づいて検出抵抗4を通過する電流i0を演算し、演算電流i1として出力する。
【0028】
図2は実施の形態1における演算手段13の内部構成を示す図である。図2において、搬送波発生器20は、最小値0、最大値1、周期Tc[秒]の三角波状の搬送波信号C1を出力する。この周期Tc[秒]はPWM変調におけるキャリア周期とも呼ばれる。
比較器21はTRUE若しくはFALSEの値を有する信号S1を出力する。
比較器21は位相幅信号D1と搬送波信号C1の大小関係を比較し、D1≧C1の場合、信号S1としてTRUEを出力するとともに、D1<C1の場合、信号S1としてFALSEを出
力する。
【0029】
ゲイン演算器25は、位相幅信号D1に対してゲインKoffを乗算した結果を補正信号vocとして出力する。
ローパスフィルタ26は、差動検出信号voに対してローパスフィルタ処理した信号をvofとして出力する。ローパスフィルタ26の時定数は、搬送波信号の周期Tcの略1倍以上且つ略20倍以下となるように設定する。この時定数の設定ついては、後ほど説明する。
加減算器27はローパスフィルタ処理した信号vofに、オフセット設定器28から得
たオフセット信号voffを加算すると共に、ゲイン演算器25から得た補正信号vocを減算した結果をゲイン演算器29に出力する。
ゲイン演算器29は加減算器27の出力をK倍した結果を演算電流i1として出力する。
【0030】
図3は演算手段13における所望の位相幅信号D1と搬送波信号C1に基づいて、上段電力用半導体素子2を動作させたときの、電流i0、差動検出信号vo、差動検出信号誤差voe、差動検出信号voに対してローパスフィルタ処理をした信号vofの関係を説明するための図である。
図3では、時刻が経過するにつれ、所望の位相幅信号D1が単調増加している場合を扱うが、所望の位相幅信号D1として0.5を中心とした交流信号で与えれば、第2の電位は第1の電位と基準電位との中間電位を中心とした交流電圧とすることもできる。
図3において、1段目は位相幅信号D1と搬送波信号C1の波形である。位相幅信号D1は0〜1の間で変化する。搬送波信号C1は最小値0、最大値1、周期Tcである。
2段目はスイッチング信号S1の波形である。信号S1は、比較器21によって位相幅信号D1と搬送波信号C1の大小関係がD1≧C1の場合はTRUE、D1<C1の場合はFALSEとなる。
【0031】
第2の電位v2は信号S1に第1の電位v1を乗算した値に概ね一致する。
その結果、電流i0は図3の3段目に示すような波形となる。
差動検出信号voはvcc/2[V]を中心にして電流i0に応じて変化し、図3の4段目に示すような波形となる。
図3の4段目のvoの波形は、vcc/2[V]を中心にして電流i0に比例した値とスイッチング信号S1に比例した値の和となっている。
差動検出回路6が理想的な動作をする場合、差動検出信号voの波形はvcc/2[V]を中心にした電流i0に比例した波形となるが、実際には完全な同相除去はできないので、差動検出信号voの波形は、図3の4段目のような波形となる。
【0032】
ここで同相除去について説明をする。
電流i0、第2の電位v2、任意の電位vccと、差動検出信号voとの間には、以下の(3)式の関係が成り立つ。
【0033】
vo=K1×i0+K2×v2+K3×vcc ・・・・(3)
ここで、K1、K2、K3は、以下の(4)〜(6)式で定義する定数である。
【0034】
K1=−(R2÷R1)×R0 ・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
K2={R1×R4×R5−R2×R3×(R5+R4)}
÷{R1×(R3×R4+R3×R5+R4×R5)} ・・・(5)
K3={(R1+R2)×R3×R5}
÷{R1×(R3×R4+R3×R5+R4×R5)} ・・・(6)
【0035】
ゲイン演算器29が乗算するゲインKは(3)式における1/K1に相当する。
従って、K=−R1÷(R2×R0)で与えれば良い。
特に、R1〜R5の間に前記(1)、(2)式の関係が成り立つ場合、K2=0、K3=1/2となるので、差動検出信号voは以下の(7)式のようになる。
【0036】
vo=K1×i0+vcc/2 ・・・・・(7)
【0037】
しかしながら、実際に差動検出回路6を構成する場合、抵抗値R1〜R5にばらつきが存在する。その結果、(5)式はK2≠0となるので、差動検出信号voは(3)式で与えられる。
この(3)式の右辺第2項を除去することができれば、差動検出信号voはvcc/2を中心として電流i0に比例した望ましい波形になる。
この(3)式の右辺第2項の除去が同相除去である。
【0038】
図3の5段目は差動検出信号誤差voeであり、K1×i0≪v2の場合、(3)式の右辺第2項が支配的となり、以下の(8)式の関係が成り立つ。
voe≒K2×v2 ・・・・・(8)
【0039】
図3の6段目は差動検出信号voに対してローパスフィルタ処理をした信号vofである。この信号vofは(3)式の右辺に対してローパスフィルタ処理したものと同じである。K1は一定値であるので、(3)式右辺第1項に対してローパスフィルタ処理を行うと、電流i0に対してフィルタ処理した値をK1倍した値となる。同様にK2も一定値であるので、(3)式右辺第2項に対してローパスフィルタ処理を行うと、差動検出信号誤差voeに対してフィルタ処理した値をK2倍した値となる。
【0040】
ここで、差動検出信号誤差voeに対してローパスフィルタ処理した値について考察する。差動検出信号誤差voeは第2の電位v2に比例する。第2の電位v2は、チョッパ回路16によって平均値が位相幅信号D1に第1の電位v1を乗算した値に一致するように制御されている。本実施の形態1におけるローパスフィルタ26の時定数は、搬送波信号の周期Tcに対して略1倍以上且つ略20倍以下の時定数となるフィルタとしている。周期Tcに対して略1倍以上の時定数を有するフィルタを差動検出信号誤差voeに対して介するようにすることで、第2の電位v2に比例する差動検出信号誤差voeも平均化され、位相幅信号D1に比例した値となる。
【0041】
なお、差動検出信号誤差voeを平均化するために必要なローパスフィルタ26の時定数は略20倍もあれば十分であり、これより大きな時定数にすると、平均化できる長所に加え、検出遅れに起因する短所も現れる。このように、差動検出信号誤差voeに対してローパスフィルタ処理した値は位相幅信号D1に比例した値と見なして良い。
また、K3とvccはそれぞれ一定値であるので(3)式右辺第3項は一定値であり、右辺第3項に対してローパスフィルタ処理を行っても、その値は変化しない。
【0042】
以上を勘案し、この発明の実施の形態1においては、位相幅信号D1に対してゲイン演算器25でゲインKoffを乗算することで差動検出信号誤差voeに相当する補正信号vocとして算出し、差動検出信号voをローパスフィルタ処理した信号vofから補正信号vocを減算することによって同相除去を行っている。
【0043】
なお、第2の電位v2は、第1の電位v1と位相幅信号D1の積に略一致する。第1の電位v1が一定値の場合は、ゲインKoffも一定であるが、第1の電位v1が変化する場合は、差動検出信号誤差voeも第1の電位v1の変化に応じて変化する。このような第1の電位v1が変化する場合、ゲインKoffは、第1の電位v1に応じて可変となるようにしても良い。
【0044】
以上のように、この発明の実施の形態1の電力変換装置によれば、差動検出信号voをチョッパ回路の制御信号で補正するようにしたので、同相電圧に起因するオフセット変化に応じた電流値の演算が可能となり、高い精度で電流検出が可能となる。
【0045】
また、特許文献1に記載の従来の電力変換装置では、上段電力用半導体素子がオンすると検出抵抗に電流が給電されず、電流を得るためには上段電力用半導体素子をオフする期間を設ける必要があったが、本実施の形態1では、検出抵抗を第2の電位と第3の電位との間に接続するようにしたので、上段電力用半導体素子若しくは下段電力用半導体素子の
オンオフに関わらず、第2の電位v2から第3の電位v3へ給電される電流を得ることができる。
【0046】
また、演算手段13は、チョッパ回路の制御信号である位相幅信号D1に比例した値に基づいて補正信号vocを算出するので、位相幅信号の変化に応じた補正を行うことで同相除去が可能であり、第2の電位から第3の電位へ給電される電流を正確に得ることができる。
【0047】
また、特許文献1や特許文献2に記載されているような従来の電力変換装置では、チョッパ回路のオンオフによって、検出抵抗を通過する電流とチョッパ回路の出力電流が一致する場合としない場合がある。従って、このような従来の電力変換装置において差動検出信号にローパスフィルタを介する場合、搬送波信号の周期に対して略1倍以上の時定数にすると検出抵抗に電流が給電されている時の値と給電されていない時の値が混在してしまい電流検出できない。
一方、本実施の形態1では、検出抵抗を通過する電流とチョッパ回路の出力電流は同一であり、差動検出信号に介するローパスフィルタの時定数に制約はない。
【0048】
また、演算手段13は、差動検出信号voに対してフィルタを介するにあたり、フィルタの時定数を搬送波信号の周期に対して略1倍以上且つ略20倍以下となるようにしたので、演算した電流値i1はスイッチング信号のオンオフに伴う変化の影響が抑制され、位相幅信号で補正することができる。その結果、搬送波と非同期で差動増幅信号をアナログ/デジタル変換しても、精度よい電流検出値を得ることができる。
なお、K2の値は差動検出回路の抵抗値から求めても良いが、実験的にK2を測定して得ても良い。
【0049】
実施の形態2.
実施の形態1では、チョッパ回路が備える下段電力用半導体素子をダイオードで構成するとともに、上段電力用半導体素子は演算手段が出力するスイッチング信号S1に基づいてオンオフするようにしていたが、チョッパ回路が備える上段電力用半導体素子と下段電力用半導体素子は、それぞれ演算手段が出力するスイッチング信号G1、G2に基づいてオンオフするように構成しても良い。
図4は、このような、この発明の実施の形態2の電力変換装置の全体構成を示す図であり、図中、実施の形態1と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
【0050】
図4において、電力変換装置15aは、チョッパ回路16a、差動検出回路6、演算手段13a、位相幅信号発生器14、検出抵抗4を具備しており、チョッパ回路16aの制御信号として、位相幅信号発生器14が出力する位相幅信号D1、演算手段13aが出力するスイッチング信号G1、G2が存在する。
位相幅信号D1は、チョッパ回路16aが備える上段電力用半導体素子2aと下段電力用半導体素子3aの通電期間の比に相当し、0〜1の間で変化する。この位相幅信号D1はデューティ比とも呼ばれる。スイッチング信号G1はチョッパ回路16aが備える上段電力用半導体素子2aをオンオフさせるための信号であり、スイッチング信号G2はチョッパ回路16aが備える下段電力用半導体素子3aをオンオフさせるための信号である。
【0051】
電位差v1を有する直流電圧源1の負極には接地電位が接続され、直流電圧源1の正極はチョッパ回路16aが備える上段電力用半導体素子2aの端子に接続される。上段電力用半導体素子2aはスイッチング信号G1がTRUEでオン、FALSEでオフする。上段電力用
半導体素子2aの他端子には下段電力用半導体素子3aの端子と抵抗値R0[Ω]の検出抵抗4の端子が接続され、下段電力用半導体素子3aの他端子には接地電位が接続される
。下段電力用半導体素子3aはスイッチング信号G2がTRUEでオン、FALSEでオフする。
【0052】
この実施の形態2では、上段電力用半導体素子2a及び下段電力用半導体素子3aは、MOS-FETやIGBTといった半導体スイッチング素子によって構成する。
このようにチョッパ回路16aが備える下段電力用半導体素子3aがMOS-FETであっても
スイッチング信号G2を後述するように与えれば、実施の形態1と同様の動作にすることができる。
下段電力用半導体素子がダイオードの場合とMOS-FETの場合とを比較すると、ダイオー
ドはMOS-FETより簡素で安価という長所がある一方、MOS-FETはダイオードよりも導通損失や発熱が小さいという長所がある。
【0053】
図5は実施の形態2の演算手段13aの内部構成を示す図である。
演算手段13aは、位相幅信号発生器14から得た所望の位相幅信号D1に基づいて、上段電力用半導体素子2a及び下段電力用半導体素子3aのそれぞれをオンオフさせるためのスイッチング信号G1及びG2を演算するとともに、差動検出信号voに基づいて検出抵抗4を通過する電流i0を演算し、演算電流i1として出力する。
演算手段13aでは、前記実施の形態1の演算手段13に対して、遅延器22、AND演算器23、NOR演算器24を追加している。
【0054】
遅延器22は、信号S1に対して所定の時間Tdだけ遅延した信号をS2として出力する。この所定時間Td[秒]は短絡防止時間、或いはデッドタイムとして知られており、上段電力用半導体素子と下段電力用半導体素子が同時にオンして第1の電位と基準電位との間で短絡による過電流が発生しないようにするための時間である。
本実施の形態2における遅延時間Tdは、5×10-6[秒]以下に設定する。
AND演算器23は、信号S1と信号S2の論理積を演算し、スイッチング信号G1として出力する。NOR演算器24は信号S1と信号S2の否定論理和を演算し、スイッチング信号G2として出力する。
【0055】
図6は、演算手段13aにおける所望の位相幅信号D1と搬送波信号C1に基づいたスイッチング信号G1及びG2の演算について説明するための図である。
図6において、1段目は位相幅信号D1と搬送波信号C1の波形である。位相幅信号D1は0〜1の間で変化する。搬送波信号C1は最小値0、最大値1、周期Tcである。信号S1は、比較器21によって位相幅信号D1と搬送波信号C1の大小関係がD1≧C1の場合はTRUE、D1<C1の場合はFALSEとなる。信号S2は、信号S1に対して所定の時
間Tdだけ遅延した信号である。
スイッチング信号G1は信号S1とS2の論理積(AND)を演算したものであり、スイッチング信号G2は信号S1とS2の否定論理和(NOR)を演算したものである。
スイッチング信号G1、G2をこのように演算することによって、スイッチング信号G1、G2は図6の4段目及び5段目の関係となる。
即ち、スイッチング信号G1とG2は交互にオンし、且つ、G1とG2が同時にオンすることを防止するように遅延時間Tdだけは同時にオフする期間が設けられている。
【0056】
以上のように、この発明の実施の形態2の電力変換装置は、チョッパ回路が備える上段電力用半導体素子および下段電力用半導体素子を共に、スイッチング信号G1、G2に基づいてオンオフする電力用半導体スイッチング素子で構成したものであって、この実施の形態2によっても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を得ることができるものである。
【0057】
実施の形態3.
実施の形態2における演算手段13aは演算電流i1を連続して更新するようにしてい
たが、演算電流i1を任意のタイミングで離散的に更新するものに置換しても良い。
図7は、このようなこの発明の実施の形態3における演算手段13bの内部構成を示す図であり、図中、実施の形態2と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
【0058】
図7において、ホールド器30は、位相幅信号D1及びローパスフィルタ26の出力vofを任意のタイミングでホールドしてvohとして出力するものであり、このホールド器30以外は実施の形態2の演算手段13aと同じである。
位相幅信号D1も、ローパスフィルタ26の出力vofも連続的に変化するので、ホールド器30がホールドするタイミングに制約は無く、演算電流i1を離散的に更新するタイミングは任意である。
【0059】
上述の特許文献1や特許文献2に記載されているような従来の電力変換装置では、検出抵抗に電流が給電されていない値をホールドしてしまう可能性があるので、演算電流を離散的に更新する場合、チョッパ回路の下段半導体素子がオンするタイミングに同期して差動検出信号をホールドしなければならない制約が伴うが、実施の形態3の電力変換装置では、このような制約はなく、演算手段13bは搬送波信号C1と非同期で信号vof及び位相幅信号D1をアナログ/デジタル変換しても良く、これによりホールドタイミングが不正確な安価なホールド器であっても精度良い電流検出値を得ることができる。
【0060】
実施の形態4.
前記実施の形態における演算手段は、演算電流i1の補正量を位相幅信号に基づいて得ていたが、スイッチング信号G1、G2、若しくは比較器21が出力する信号S1に基づいて演算電流i1の補正量を得るものに置換しても良い。
図8は、このような、この発明の実施の形態4における演算手段13cの内部構成を示す図であり、図中、実施の形態1〜3と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
【0061】
図8において、第1の補正量設定器31は第1の補正量Voff1を出力し、第2の補正量
設定器32は第2の補正量Voff2を出力する。
選択器33は補正信号vocとして信号S1がTRUEの場合は第1の補正量Voff1を出力し
、信号S1がFALSEの場合は第2の補正量Voff2を出力する。
【0062】
図9は本実施の形態4の演算手段13cにおける時刻と各信号の関係を示したものである。図9において、1段目は位相幅信号D1と搬送波信号C1、2段目は信号S1、3段目は電流i0、4段目は差動検出信号vo、5段目は差動検出信号誤差voe、をそれぞれプロットしている。第2の電位v2は、上段電力用半導体素子2がオンしている場合は第1の電位と同電位であり、下段電力用半導体素子3がオンしている場合は基準電位と同電位である。換言すると、遅延時間Tdを無視すれば、信号S1がTRUEの場合、第2の電位v2は第1の電位と同電位であり、信号S1がFALSEの場合、第2の電位v2は基準電
位と同電位である。従って、差動検出信号誤差voeについて前述の(8)式が成り立てば、差動検出信号誤差voeは、信号S1がTRUEの場合とFALSEの場合の2通りと見なし
て良い。
【0063】
信号S1がTRUEの場合、第2の電位v2は第1の電位と同電位であるので、差動検出誤差voeは(8)式のv2にv1を代入したK2×v1である。
また、信号S1がFALSEの場合、第2の電位v2は基準電位と同電位であるので、差動検
出誤差voeは(8)式のv2に0を代入した0(=K2×0)である。
そこで、第1の補正量設定器31はK2×v1を出力するように設定しておき、第2の補正量設定器32は0を出力するように設定しておくことによって、選択器33は正確な
補正信号vocを出力することができる。
【0064】
なお、信号S1と信号S2、スイッチング信号G1、スイッチング信号G2の関係は図6に示した関係であって、通常遅延時間Tdは無視できる程度であるので、選択器33の入力として、信号S1の代わりに信号S2、スイッチング信号G1、スイッチング信号G2のいずれを用いても、同様の効果を得ることが可能である。
【0065】
また、第1の補正量Voff1及び第2の補正量Voff2の設定値として、オフセット設定器28が出力するオフセット信号Voffの値を包含させておけば、オフセット設定器28を省略できる。
また、第1の補正量Voff1は、第2の電位v2が第1の電位v1であるときの補正量であ
る。第1の電位v1が一定値の場合は、第1の補正量Voff1を一定とすれば良いが、第1
の電位v1が変化する場合は、第1の補正量Voff1を第1の電位v1に応じて可変にすれ
ば良いことは言うまでもない。
【0066】
以上のように、この発明の実施の形態4における演算手段13cは、スイッチング信号G1、G2のオンオフに応じて第1の補正量と第2のオフセット補正量の何れかを選択するようにしたので、位相幅信号D1毎の補正量演算を省いて2通りの補正量だけで正確な電流演算ができる効果がある。
【0067】
実施の形態5.
実施の形態4における演算手段13cは演算電流i1を連続して更新するようにしていたが、演算電流i1を離散的に更新するものに置換するようにしても良い。
図10は、このようなこの発明の実施の形態5における演算手段13dの内部構成を示す図であり、図中、実施の形態4と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
【0068】
図10において、選択器33dは、位相幅信号D1と搬送波信号C1に基づき、差動検出信号voを後述するタイミングでホールドしてvohとして出力すると共に、補正信号vocとして第1の補正量Voff1又は第2の補正量Voff2の何れかを選択して出力する。
【0069】
図11は、選択器33dの動作を示す流れ図(フローチャート)である。
ステップS100で選択器33dは動作を開始する。
ステップS101で位相幅信号D1が0.5より大きいか否かを判断する。位相幅信号D1が0.5より大きい場合、ステップS102にてΔT秒待機する。本実施の形態5では、ΔT秒の整数倍が搬送波信号C1の半周期Tc/2秒となるようにΔT秒を設定する。なお、設定するΔT[秒]は搬送波信号C1の半周期Tc/2[秒]の整数倍が望ましいが、ΔT≪Tc/2であれば整数倍で
なくても良い。
ステップS103は、搬送波信号C1が0か否かを判断する。搬送波信号C1が0の場合、ステップS104にて、補正信号vocとして第1の補正量Voff1を選択し、ステップS105にて
vohを更新することで、vohは搬送波信号C1=0時点のvoになる。
ステップS103で搬送波信号C1が0でない場合は、ステップS102を実行する。
また、ステップS101で位相幅信号D1が0.5以下の場合、ステップS106にてΔT秒待機する。
【0070】
ステップS107は、搬送波信号C1が1か否かを判断する。搬送波信号C1が1の場合、ステップS108にて、補正信号vocとして第2の補正量Voff2を選択し、ステップS105に
てvohを更新することで、vohは搬送波信号C1=1時点のvoになる。
また、ステップS107で搬送波信号C1が1でない場合は、ステップS106を実行する。
【0071】
図11のフローチャートに従えば、位相幅信号D1が0.5より大きい場合は搬送波信号
C1=0となるタイミング(三角波状の搬送波信号C1が谷となるタイミング)で差動検出信号をホールドし、位相幅信号D1が0.5以下の場合は搬送波信号C1=1となるタイ
ミング(三角波状の搬送波信号C1が山となるタイミング)で差動検出信号をホールドする。
【0072】
図12は本実施の形態5における時刻と各信号の関係を示したものである。
図12において、1段目は位相幅信号D1と搬送波信号C1、2段目は信号S1、3段目は電流i0、4段目は差動検出信号voとホールドした信号voh、5段目は補正信号
voc、をそれぞれプロットしている。
図12の期間Aは位相幅信号D1が0.5以下の期間であり、期間Bは位相幅信号D1が0.5より大きい期間である。
位相幅信号D1が0.5以下の期間Aでは、搬送波信号C1が1のタイミング、即ち三角
波状の搬送波信号C1が山となるタイミングで差動検出信号voをホールドしてvohとして出力する。そして、期間Aでは補正信号vocとして第2の補正量Voff2を選択して
出力する。
また、位相幅信号D1が0.5より大きい期間Bでは、搬送波信号C1が0のタイミング
、即ち三角波状の搬送波信号C1が谷となるタイミングで差動検出信号voをホールドしてvohとして出力する。そして、期間Bでは補正信号vocとして第1の補正量Voff1
を選択して出力する。
【0073】
位相幅信号D1が0.5以下の期間Aでは、信号S1はTRUEの期間よりFALSEの期間が長く、搬送波信号C1が1のタイミングは信号S1がFALSEである。
位相幅信号D1が0.5より大きい期間Bでは、信号S1はFALSEの期間よりTRUEの期間が長く、搬送波信号C1が0のタイミングは信号S1がTRUEである。
このように動作させることによって、信号S1はTRUE、FALSEのパルス期間の長い方の差
動検出信号voをホールドしてvohを得ることになる。
【0074】
このような構成によって、実施の形態5における演算手段13dは、位相幅信号D1が0.5よりも大きい場合は、上段電力用半導体素子2aがオンとなる期間、即ち、信号S1
がTRUEの期間に差動検出信号voをホールドするようになる。そして、位相幅信号D1が0.5以下の場合は、下段電力用半導体素子がオンとなる期間、即ち信号S1がFALSEの期間に差動検出信号voをホールドするようになる。その結果、必ず、信号S1の状態が、TRUE若しくはFALSEを持続する期間の長い条件で差動検出信号voをホールドする。
換言すると、TRUE若しくはFALSEが短期間で変化する時に差動検出信号voをホールドす
る必要がないので、ホールドするタイミングが、三角波状の搬送波信号C1の山、または谷から多少ずれても信号S1の状態に変化はない。
【0075】
上述の特許文献1や特許文献2に記載の従来の電力変換装置では、下段電力用半導体素子がオンとなるタイミングで差動検出信号をホールドする必要があったが、位相幅信号D1が1に近づくと、下段電力用半導体素子がオンする期間は短期間であり、差動検出信号をホールドするタイミングは高い精度が要求される問題があった。
本実施の形態5の電力変換装置では、TRUE若しくはFALSEが短期間で変化する時に差動検
出信号voをホールドする必要がないので、差動検出信号voをホールドするタイミングの許容範囲が広くなり、処理時間に伴う遅延を有する安価な回路を用いても、精度良く電流値を得ることが可能である。
なお、本実施の形態5では、一例としてステップS101において位相幅信号D1の分岐条件を0.5に設定した場合について示したが、位相幅信号D1の分岐条件は0より大きく且つ1より小さい範囲であれば、0.5以外の数値でも良いことは言うまでもない。
【0076】
実施の形態6.
前記実施の形態5における演算手段13dは、差動検出信号voをホールドして演算電流i1を出力するようにしていたが、差動検出信号voの代わりに差動検出信号voにローパスフィルタを介したvofをホールドするものに置換するようにしても良い。
図13は、このような、この発明の実施の形態6における演算手段13eの内部構成を示す図であり、図中、実施の形態5と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
【0077】
図13において、ローパスフィルタ40は、差動検出信号voを後述する時定数でフィルタリングし、この結果を信号vofとして選択器33eに出力する。
選択器33eは、位相幅信号D1と搬送波信号C1に基づき、信号vofを後述するタイミングでホールドしてvohとして出力するとともに、補正信号vocとして第1の補正量Voff1または第2の補正量Voff2の何れかを選択して出力する。
【0078】
図14は、選択器33eの動作を示すフローチャートであり、図中、実施の形態5と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
ステップS110ではステップS104またはステップS108の処理が終わると、ΔT2[秒]だけ待機する。このステップS110によって、三角波状の搬送波信号の山又は谷のタイミングからΔT2だけ遅延したタイミングで選択器33eの信号vohを更新するようになる。ΔT2は0[秒]以上で且つ、搬送波信号C1の4分の1周期、即ちTc/4 [秒]以下に設定する。特に、ΔT2=0[秒]の場合、選択器33eは選択器33dと同一になる。
【0079】
図15は本実施の形態6における時刻と各信号の関係を示したものである。
図15において、1段目は位相幅信号D1と搬送波信号C1、2段目は信号S1、3段目は電流i0、4段目は差動検出信号誤差voe、5段目はローパスフィルタ40と同じ時定数のフィルタで差動検出信号誤差voeをフィルタ処理した信号voef、6段目は差動検出信号voとホールドした信号voh、をそれぞれプロットしている。
図15の3段目のように、電流i0は、信号S1が変化するタイミング、即ち、電力用半導体素子がオン、オフするタイミングでリンギングと呼ばれる振動が発生する。このリンギングが発生しているタイミングで選択器が信号をホールドすると、演算手段が出力する演算電流i1にリンギングに起因した誤差が生じる。
本実施の形態6におけるローパスフィルタ40は、このリンギングの影響を除去するように作用する。
【0080】
ここで、ローパスフィルタ40の時定数について考察する。
図15の4段目は差動検出誤差voeであり、この差動検出誤差voeに対してローパスフィルタ40と同じ時定数のフィルタでフィルタ処理した波形が図15の5段目のvoefである。図15のように位相幅信号D1が0.5より大きい場合、選択器33eは上述したように三角波状の搬送波信号C1が谷となるタイミングからΔT2[秒]だけ遅延したタイミングでvofをホールドする。ΔT2は0[秒]以上で且つ、搬送波信号C1の4分の1
周期、即ちTc/4 [秒]以下に設定しているので、選択器33eが信号vofをホールドす
るのは図15中の期間Cにおける何れかとなる。
換言すると、信号vofのホールドは、ΔT2を0〜Tc/4[秒]の範囲で変更することにより、図中期間C内の任意のタイミングでホールドすることになり、図15の例ではΔT2をTc/8[秒]に設定して図中の▲印のタイミングで信号vofをホールドしている。
【0081】
位相幅信号D1が0.5より大きい場合、選択器33eがホールドした信号vofが含有
する誤差voefは第1の補正量Voff1に相当する値になっていれば、選択器33eが選
択する補正量として第1の補正量Voff1が妥当な値となる。
図15の5段目を見て判るように位相幅信号D1が0.5より大きい場合は、信号S1がTRU
Eの期間で信号vofをホールドするようにしているので、voefは信号S1がFALSEからTRUEに変化してから0 [秒]以上Tc/2[秒]以下の期間の値となるので、ローパスフィルタ40の時定数は搬送波信号C1の周期の1/2倍以下の時定数としておけば良い。また、ローパスフィルタ40の時定数を搬送波信号C1の周期の1/20倍以上にしておけば、搬送波信号に対するvoの変化は十分捕捉できる。
即ち、ローパスフィルタ40の時定数は搬送波信号C1の周期の1/20倍以上1/2倍以下の時定数としておけば良い。
【0082】
特に、期間Cでホールドするようにすれば、信号voefは信号S1がFALSEからTRUE
に変化してからTc/4[秒]以上Tc/2[秒]以下の期間の値となる。
換言すると、選択器33eが信号vofをホールドして良い期間は搬送波の1/2周期以上であるので、差動検出信号voに対して、搬送波信号周期の1/4倍以上1/2倍以下の時定数となるフィルタを設けても、差動検出信号誤差voeはホールドするタイミングでは定常状態となっており、好ましい。その結果、リンギングなどに起因する検出ノイズの抑制が可能となり、選択器33eが選択する補正量として第1の補正量Voff1が妥当な値とな
る。
【0083】
特許文献1や特許文献2に記載されているような従来の電力変換装置では、下段電力用半導体素子がオンとなるタイミングで差動信号をホールドする構成であるため、図15のような場合、信号S1がFALSEの期間だけ検出抵抗に電流が給電されるので、ホールドす
る期間も信号S1がFALSEの期間になる。
位相幅信号D1が1に近づくほど、FALSEの期間は短くなる。位相幅信号の範囲が高いほど、電力変換装置の利用率が高く、一般的な用途では位相幅信号は0.95以上を確保したい。この場合、信号S1がFALSEの期間は搬送波信号の周期の1/20となる。
従って、本実施の形態6のような搬送波信号周期の1/20倍以上1/2倍以下の時定数となる
フィルタを設けてしまうと、差動検出信号誤差voeが過渡状態でホールドすることになり、選択器33eが選択する補正量を第1の補正量Voff1または第2の補正量Voff2といった2通りで与えることはできず、その結果、リンギングなどに起因するノイズ抑制の効果を得ることができない。
【0084】
しかしながら、本実施の形態6の電力変換装置によれば、差動検出信号voに対して搬送波信号C1の周期Tcの略1/20以上、且つ略1/2以下の時定数となるフィルタを介した値vofに基づいて、演算電流i1を演算するようにしたので、リンギングなどに起因するノイズの影響を受けることなく、安定で正確な演算電流i1を演算することが可能である。
【0085】
実施の形態7.
前記実施の形態6では、演算手段は、第1の補正量と第2の補正量を備え、演算電流i1を演算するための補正量として、スイッチング信号G1、G2のオンオフに応じて第1の補正量と第2の補正量の何れかを選択し、加算して補正するようにしていたが、電力用半導体素子で発生する電圧降下が電流の大きさに略比例する場合は、v2の電位、即ち、差動検出信号誤差voeの大きさも電力用半導体素子を通過する電流の大きさに応じて変化する。電力用半導体素子で発生する電圧降下が電流の大きさに略比例する場合は、電流i0に対する差動検出信号voの増幅率が変化したように反映される。
上段電力用半導体素子と下段電力用半導体素子に異なる種類の電力用半導体素子を用いると、電力用半導体素子で発生する電圧降下の大きさと電流i0の比例関係の係数は、スイッチング信号G1、G2のオンオフの状態によって異なる。
そこで、前記実施の形態6に加えて、スイッチング信号G1、G2のオンオフと略同期して変化する信号S1に応じて第3の補正量と第4の補正量の何れかを選択し、乗算して補正するようにしても良い。
【0086】
図16は、このような、この発明の実施の形態7における演算手段13fの内部構成を示す図であり、図中、実施の形態6と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
実施の形態6の演算手段13eでは、ゲイン演算器29で加減算器27の出力をK倍するようにしていた。本実施の形態7の演算手段13fでは、第3の補正量K1を出力する第3の補正量設定器50と、第4の補正量K2を出力する第4の補正量設定器51とを備えている。
選択器33fは、加減算器27へ出力する補正量として第1の補正量Voff1を選択した
場合は、乗算器52へ出力する補正量として第3の補正量K1を選択し、加減算器27へ出力する補正量として第2の補正量Voff2を選択した場合は、乗算器52へ出力する補正
量として第4の補正量K2を選択する。
【0087】
このように、演算電流i1を演算するための補正量として、加算的に演算電流i1を補正するVoff1, Voff2に加え、乗算的に演算電流i1を補正する第3の補正量K1、第4の補正量K2を加えることで、より正確に演算電流i1を演算することが可能となる。
【0088】
実施の形態8.
前述の実施の形態においては、差動検出回路6は1つのオペアンプで差動検出と信号増幅の2つの役割を担うものについて示したが、差動検出回路内部にオペアンプを2つ設けることによって、差動検出の役割と信号増幅の役割を分担させる差動検出回路6gに置換しても良い。
図17は、このような、この発明の実施の形態8における差動検出回路6gの内部構成を示す図であり、図中、前述の実施の形態と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
【0089】
図17において、差動検出回路6gは、差動検出の役割を担うオペアンプ7と、信号増幅の役割を担うオペアンプ66の計2つのオペアンプを具備する。
ここで、抵抗8〜12の選択は、抵抗値R1〜R5の間に以下の(9)、(10)式の関係が成り立つように行う。
【0090】
R1=R2=R3 ・・・・・・(9)
2×R1=R4=R5 ・・・・(10)
【0091】
抵抗8〜12の抵抗値R1〜R5をこのように与えることによって、オペアンプ7の出力は電位差(v3−v2)を増幅することなく、差動検出することができる。また、抵抗値R1〜R5の大きさの種類は2通りだけであり、抵抗11、12はR1と同じ抵抗値の抵抗を直列接続で与えたり、或いは抵抗8〜10をR4と同じ抵抗値の抵抗を並列接続で与えたりすることによって、抵抗8〜12を同一ロットの同じ抵抗で構成することが可能である。その結果、抵抗ばらつきに起因する同相電圧に伴う検出誤差を低減させることができる。そして、抵抗60〜65の抵抗値R10〜R15を適切に与えることによって、オペアンプ7の出力を所望の倍率で増幅した値をオペアンプ66から出力させることができる。
【0092】
以上のように、実施の形態8の差動検出回路によれば、差動検出の役割を担うオペアンプと信号増幅の役割を担うオペアンプの計2つのオペアンプを具備する構成にすることよって、差動検出の役割を担うオペアンプに接続される抵抗8〜12は同一ロットで構成することが可能である。同一ロットの抵抗値のばらつきは異なるロットの抵抗値のばらつきよりも相対的に小さいので、抵抗8〜12の抵抗ばらつきと同相電圧によって発生する誤差を小さくすることができる。その結果、差動検出信号voに生じる誤差を小さくすることができる効果がある。
【0093】
実施の形態9.
前述したように、車両に搭載する電力変換装置の場合、温度、湿度、振動、発塵など過酷な環境での動作が必要となり、ホール電流センサのホール素子より検出抵抗の方が頑健性の面で有利である。そこで、前記実施の形態1において、電力変換装置15の第1の電位v1は車両に搭載されたバッテリ1の正極に接続され、第3の電位v3は車両に搭載された電気的負荷5に接続され、基準電位GNDは車体接地又はバッテリの負極に接続されるように構成しても良い。
【0094】
このように構成することによって、温度、湿度、振動、発塵といった車両の搭載に必要な制約条件を満たしつつ、電気的負荷にバッテリ電圧よりも低い電圧を印加するとともに、電気的負荷に給電する電流値i0を正確に得ることができる効果がある。
【0095】
実施の形態10.
前記実施の形態9では電力変換装置の第1の電位がバッテリに接続され、第3の電位が電気的負荷に接続される場合を扱ったが、電力変換装置の第1の電位には電気的負荷が接続され、第3の電位にはコイルを介してバッテリの正極が接続され、前記基準電位は車体接地又はバッテリの負極に接続するようにしても良い。
図18はこのような、この発明の実施の形態10における電力変換装置の全体構成を示す図であり、図中、前述の実施の形態と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示すものとする。
【0096】
図18において、電力変換装置15hはチョッパ回路16h、検出抵抗4、差動検出回路6、演算手段13、位相幅信号発生器14を具備しており、チョッパ回路16hの制御信号として、位相幅信号発生器14が出力する位相幅信号D1、演算手段13が出力するスイッチング信号S1が存在する。
位相幅信号D1は、チョッパ回路16hが備える下段電力用半導体素子3hの通電期間と非通電期間の比に相当し、0〜1の間で変化する。下段電力用半導体素子3hがオンしている期間は、第2の電位v2は基準電位GNDと同電位となる。また、電気的負荷5hはコンデンサと抵抗の並列回路負荷である。
【0097】
また、チョッパ回路16hの上段電力用半導体素子2hと下段電力用半導体素子3hとの接続点に、検出抵抗4の一端が接続され、検出抵抗4の他端にはコイル80を介して直流電圧源1hの正極端子が接続される。
なお、チョッパ回路16hと電気的負荷5hの接続点の電位は第1の電位v1、検出抵抗4とチョッパ回路16hの接続点の電位は第2の電位v2、検出抵抗とコイル80との接続点の電位は第3の電位v3である。
【0098】
コイル80を通る電流値i0は必ず連続的に変化するので、下段電力用半導体素子3hがオンからオフに変化すると、電流i0は第2の電位v2からダイオードである上段電力用半導体素子2hを通過して電気的負荷5hに給電される。
なお、この実施の形態10においては、チョッパ回路16hが備える上段電力用半導体素子は半導体整流素子であるダイオードにしているが、MOS-FETやIGBTといった半導体スイ
ッチング素子で構成しても、適切なスイッチングを行えば本実施の形態と同様の動作が可能である。上段電力用半導体素子がMOS-FETの場合とダイオードの場合とを比較すると、MOS-FETはダイオードよりも導通損失や発熱が小さいという長所がある一方、ダイオードはMOS-FETより簡素且つ安価という長所がある。
スイッチング信号S1はチョッパ回路16hが備える下段電力用半導体素子3hをオンオフさせるための信号である。
【0099】
このような構成によって、実施の形態10によれば、電気的負荷5hが接続される第1の電位v1を直流電圧源1hの正極側の電位よりも高い電位とすることができる。
特に、車両に搭載する電力変換装置の場合、温度、湿度、振動、発塵など過酷な環境での動作が必要となり、ホール電流センサのホール素子より検出抵抗の方が頑健性の面で有利である。そこで、電力変換装置15hの第1の電位v1を車両に搭載された電気的負荷5hに接続し、コイル80を介して、第3の電位v3を直流電圧源1hとして車両に搭載されたバッテリの正極に接続するようにすれば、温度、湿度、振動、発塵といった車両の搭載に必要な制約条件を満たしつつ、直流電圧源1hの正極側電位よりも高い電圧を電気的負荷5hに印加することができるとともに、直流電圧源1hから給電される電流値i0を正確に得られる効果がある。
【0100】
実施の形態11.
前述の実施の形態では、電気的負荷として、抵抗やコイル、コンデンサによって構成されたものを扱ったが、電気的負荷は直流回転機であっても良い。
図19は本実施の形態11における電力変換装置の全体構成を示す図であり、前記実施の形態と同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものである。
【0101】
図19において、電力変換装置15iには、直流電圧源1と直流回転機70と電圧指令発生器71とが接続される。この電力変換装置15iは、第1のチョッパ回路16xと、第2のチョッパ回路16yと、位相幅演算器72と、検出抵抗4と、差動検出回路6と
第1の演算手段13xと、第2の演算手段13yから構成されている。
直流回転機70はx相とy相の2端子を有しており、x相は検出抵抗4を介してチョッパ回路16xに接続されている。また、直流回転機70のy相はチョッパ回路16yに接続されている。電圧指令発生器71は直流回転機70のx相にチョッパ回路16xが印加すべき電圧の指令値vx*と、直流回転機70のy相にチョッパ回路16yが印加すべき電圧の指令値vy*とを出力する。
【0102】
なお、vx*、vy*のそれぞれが取り得る範囲は、−0.5×v1〜+0.5×v1[V]で
ある。位相幅演算器72には、予め直流電圧源1の端子間電位差v1が記憶されており、以下の(11)、(12)式に基づいて位相幅信号D1x、D1yの演算を行う。
D1x=vx*÷v1+0.5 ・・・・(11)
D1y=vy*÷v1+0.5 ・・・・(12)
【0103】
vx*、vy*のそれぞれが取り得る範囲から判るように、位相幅信号D1x、D1yのそれぞれが取り得る範囲は0〜1となる。演算手段13xは前記実施の形態に記載の演算手段13と同一構成である。
演算手段13xは、位相幅信号D1xに基づいて第1のチョッパ回路16xの上段電力用半導体素子2xをオンオフさせるためのスイッチング信号G1xと、下段電力用半導体素子3xをオンオフさせるためのスイッチング信号G2xとを出力するとともに、差動検出回路6から得た差動検出信号voに基づいて演算電流i1を演算する。
演算手段13yは、演算手段13xに対して演算電流i1の演算を廃したものであり、位相幅信号D1yに基づいて、第2のチョッパ回路16yの上段電力用半導体素子2yをオンオフさせるためのスイッチング信号G1yと、下段電力用半導体素子3yをオンオフさせるためのスイッチング信号G2xとを出力する。
【0104】
チョッパ回路16x、検出抵抗4、差動検出回路6、演算手段13xの接続に着目すれば、実施の形態1のチョッパ回路16、検出抵抗4、差動検出回路6、演算手段13から構成される接続と共通であり、本実施の形態11のチョッパ回路についても同じ原理で動作できる。従って、実施の形態2以降の構成を用いても直流回転機70を駆動しつつ、演
算電流i1を得ることができることは言うまでもない。
【0105】
また、車両に搭載する電力変換装置の場合、温度、湿度、振動、発塵など過酷な環境での動作が必要となり、ホール電流センサのホール素子より検出抵抗の方が頑健性の面で有利である。そこで、直流電圧源1を車両に搭載されたバッテリで与え、電力変換装置15iの第1の電位v1は該バッテリの正極に接続され、電力変換装置15iの第3の電位v3は車両に搭載された直流回転機に接続され、基準電位GNDは車体接地又はバッテリの負極に接続するようにすると良い。このように接続することで、温度、湿度、振動、発塵といった車両の搭載に必要な制約条件を満たしつつ、直流回転機70にバッテリ電圧よりも低い電圧を印加するとともに、直流回転機70に給電する電流値を正確に得る電力変換装置を得ることができる。
【0106】
実施の形態12.
前記実施の形態11では、電気的負荷として直流回転機が接続されたものを扱ったが、電気的負荷は交流回転機であっても良い。
図20は、このような、この発明の実施の形態12における電力変換装置の全体構成を示す図であり、前記実施の形態と同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものである。
図20において、電力変換装置15jには、直流電圧源1と交流回転機70jと電圧指令発生器71jとが接続される。この電力変換装置15jは、第1のチョッパ回路16uと、第2のチョッパ回路16vと、第3のチョッパ回路16wと、第1の演算手段13uと、第2の演算手段13vと、第3の演算手段13wと、位相幅演算器72jと、第1の検出抵抗4uと、第2の検出抵抗4vと、第1の差動検出回路6uと、第2の差動検出回路6vとから構成されている。
【0107】
第1のチョッパ回路16u、第1の検出抵抗4u、第1の差動検出回路6u、第1の演算手段13uの接続に着目すれば、実施の形態1のチョッパ回路16、検出抵抗4、差動検出回路6、演算手段13から構成される接続と共通であり、本実施の形態12のチョッパ回路についても同じ原理で動作できる。
第2のチョッパ回路16v、第2の検出抵抗4v、第2の差動検出回路6v、第2の演算手段13vの接続についても同じである。また、第3のチョッパ回路16w、第3の演算手段13wの接続については、前記実施の形態11の第2のチョッパ回路16y、第2の演算手段13yの接続と共通であり、本実施の形態12のチョッパ回路についても同じ原理で動作できる。
また、これらの接続について、実施の形態2以降の構成を用いて交流回転機70jを駆動すれば、精度の良い演算電流i1が得られることは言うまでもない。
【0108】
また、車両に搭載する電力変換装置の場合、温度、湿度、振動、発塵など過酷な環境での動作が必要となり、ホール電流センサのホール素子より検出抵抗の方が頑健性の面で有利である。そこで、直流電圧源1を車両に搭載されたバッテリで与え、電力変換装置15jの第1の電位v1は該バッテリの正極に接続され、電力変換装置15jの第3の電位v3は車両に搭載された交流回転機に接続され、基準電位GNDは車体接地又はバッテリの負極に接続するようにすると良い。このように接続することで、温度、湿度、振動、発塵といった車両の搭載に必要な制約条件を満たしつつ、交流回転機70jにバッテリ電圧よりも低い電圧を印加するとともに、交流回転機70jに給電する電流値を正確に得る電力変換装置を得ることができる。
なお、本実施の形態12では、交流回転機70jの三相電流のうちの二相を検出する場合を扱ったが、三相電流のそれぞれを検出できるように検出抵抗と差動検出を三相すべてに具備する構成にしても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0109】
1 直流電圧源、2 上段電力用半導体素子、3 下段電力用半導体素子、
4 検出抵抗、5 電気的負荷、6 差動検出回路、7 オペアンプ、
8〜12 抵抗、13 演算手段、14 位相幅信号発生器、15 電力変換装置、
16 チョッパ回路、20 搬送波信号発生器、26 ローパスフィルタ、
v1 第1の電位、v2 第2の電位、v3 第3の電位、
i0 出力電流、i1 演算電流、vo 差動検出信号、D1 位相幅信号、
S1、G1、G2 スイッチング信号、C1 搬送波信号、
voe 差動検出信号誤差、voc 補正信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョッパ回路と、
このチョッパ回路の出力電流を検出する検出抵抗と、
この検出抵抗の端子間の電位差を差動検出信号として出力する差動検出回路と、
この差動検出回路からの前記差動検出信号を、前記チョッパ回路の制御信号で補正して、前記チョッパ回路の出力電流を演算する演算手段、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記チョッパ回路の制御信号である位相幅信号に基づいてチョッパ回路をオンオフするためのスイッチング信号を演算するとともに、前記差動検出信号に基づいてチョッパ回路の出力電流を演算するよう構成され、前記チョッパ回路は、第1の電位と第2の電位の間に接続される上段電力用半導体素子と、前記第2の電位と基準電位との間に接続される下段電力用半導体素子によって構成され、前記検出抵抗は前記第2の電位と第3の電位との間に接続され、前記差動検出回路は、前記第2の電位と前記第3の電位との電位差を検出するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記演算手段は、第1の補正量と第2の補正量を備え、前記チョッパ回路の出力電流を演算するための補正量として、前記スイッチング信号のオンオフに応じて、前記第1の補正量と前記第2の補正量の何れかを選択することを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記演算手段は、前記スイッチング信号を得るための搬送波を発生する搬送波発生器と、前記搬送波と同期して前記差動検出信号をホールドするホールド器とを備え、前記差動検出信号がホールドされた時点のスイッチング信号に応じて、前記第1の補正量と前記第2の補正量の何れかを選択することを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記位相幅信号が所定値よりも大きい場合は、前記上段電力用半導体素子がオンしている期間に前記差動検出信号をホールドし、且つ、前記第1の補正量に基づいて前記出力電流を演算するとともに、前記位相幅信号が所定値よりも小さい場合は、前記下段電力用半導体素子がオンしている期間に前記差動検出信号をホールドし、且つ、前記第2の補正量に基づいて前記出力電流を演算することを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記演算手段は、前記差動検出信号に対して前記搬送波周期の略1/20以上且つ略1/2以下の時定数となるフィルタを介した前記差動検出信号の値に基づいて、前記出力電流を演算するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記演算手段は、更に第3の補正量と第4の補正量を備え、前記チョッパ回路の出力電流を演算するための補正量として、前記第1の補正量が選択された場合には前記第3の補正量を選択して乗算し、前記第2の補正量が選択された場合には前記第4の補正量を選択して乗算するようにしたことを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記演算手段は、前記チョッパ回路の制御信号である位相幅信号に比例した値に基づいて前記差動検出信号の補正量を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記演算手段は、チョッパ回路をオンオフするためのスイッチング信号を得るための搬送波を発生する搬送波発生器を備え、前記差動検出信号に対して前記搬送波周期の略1倍
以上且つ略20倍以下の時定数となるフィルタを介した前記差動検出信号の値に基づいて、前記出力電流を演算するようにしたことを特徴とする請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記電力変換装置の第1の電位は車両に搭載されたバッテリの正極に接続され、前記第3の電位は車両に搭載された電気的負荷に接続され、前記基準電位は車体接地又はバッテリの負極に接続されたことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記電力変換装置の第1の電位は電気的負荷に接続され、前記第3の電位は車両に搭載されたバッテリの正極に接続され、前記基準電位は車体接地又はバッテリの負極に接続されたことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記差動検出回路は、前記基準電位に対して非絶縁回路で構成したことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項1】
チョッパ回路と、
このチョッパ回路の出力電流を検出する検出抵抗と、
この検出抵抗の端子間の電位差を差動検出信号として出力する差動検出回路と、
この差動検出回路からの前記差動検出信号を、前記チョッパ回路の制御信号で補正して、前記チョッパ回路の出力電流を演算する演算手段、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記チョッパ回路の制御信号である位相幅信号に基づいてチョッパ回路をオンオフするためのスイッチング信号を演算するとともに、前記差動検出信号に基づいてチョッパ回路の出力電流を演算するよう構成され、前記チョッパ回路は、第1の電位と第2の電位の間に接続される上段電力用半導体素子と、前記第2の電位と基準電位との間に接続される下段電力用半導体素子によって構成され、前記検出抵抗は前記第2の電位と第3の電位との間に接続され、前記差動検出回路は、前記第2の電位と前記第3の電位との電位差を検出するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記演算手段は、第1の補正量と第2の補正量を備え、前記チョッパ回路の出力電流を演算するための補正量として、前記スイッチング信号のオンオフに応じて、前記第1の補正量と前記第2の補正量の何れかを選択することを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記演算手段は、前記スイッチング信号を得るための搬送波を発生する搬送波発生器と、前記搬送波と同期して前記差動検出信号をホールドするホールド器とを備え、前記差動検出信号がホールドされた時点のスイッチング信号に応じて、前記第1の補正量と前記第2の補正量の何れかを選択することを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記位相幅信号が所定値よりも大きい場合は、前記上段電力用半導体素子がオンしている期間に前記差動検出信号をホールドし、且つ、前記第1の補正量に基づいて前記出力電流を演算するとともに、前記位相幅信号が所定値よりも小さい場合は、前記下段電力用半導体素子がオンしている期間に前記差動検出信号をホールドし、且つ、前記第2の補正量に基づいて前記出力電流を演算することを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記演算手段は、前記差動検出信号に対して前記搬送波周期の略1/20以上且つ略1/2以下の時定数となるフィルタを介した前記差動検出信号の値に基づいて、前記出力電流を演算するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記演算手段は、更に第3の補正量と第4の補正量を備え、前記チョッパ回路の出力電流を演算するための補正量として、前記第1の補正量が選択された場合には前記第3の補正量を選択して乗算し、前記第2の補正量が選択された場合には前記第4の補正量を選択して乗算するようにしたことを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記演算手段は、前記チョッパ回路の制御信号である位相幅信号に比例した値に基づいて前記差動検出信号の補正量を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記演算手段は、チョッパ回路をオンオフするためのスイッチング信号を得るための搬送波を発生する搬送波発生器を備え、前記差動検出信号に対して前記搬送波周期の略1倍
以上且つ略20倍以下の時定数となるフィルタを介した前記差動検出信号の値に基づいて、前記出力電流を演算するようにしたことを特徴とする請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記電力変換装置の第1の電位は車両に搭載されたバッテリの正極に接続され、前記第3の電位は車両に搭載された電気的負荷に接続され、前記基準電位は車体接地又はバッテリの負極に接続されたことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記電力変換装置の第1の電位は電気的負荷に接続され、前記第3の電位は車両に搭載されたバッテリの正極に接続され、前記基準電位は車体接地又はバッテリの負極に接続されたことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記差動検出回路は、前記基準電位に対して非絶縁回路で構成したことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−60759(P2012−60759A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200927(P2010−200927)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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