説明

電力変換装置

【課題】部品配置に対する自由度を増大することができる電力変換装置を得ること。
【解決手段】スイッチング素子10を高温動作が可能なワイドバンドギャップ半導体によって形成し、筐体1内の上部の高温領域に配置できるようにした。スイッチング素子10をリアクトル12と共に筐体1内の上部の高温領域に配置することにより、筐体1内の温度分布がより明確となり、電解コンデンサ11やリレー13等の低発熱部品を配置する筐体1内の下部の低温領域の温度を低く保つようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置を構成する電気回路部品には、運転中に大きく発熱する部品(例えば半導体スイッチ素子、リアクトル)、発熱量は少ないが高温環境下で動作を続けると寿命が短くなる部品(例えば電解コンデンサ)、高温環境下では性能が劣化する部品、すなわち動作許容温度の低い部品(例えばリレー)が混在している。なお、これらの部品を熱的発生源であるか否かの観点から区分すれば、スイッチング素子およびリアクトルは発熱部品として区分され、電解コンデンサおよびリレーは低発熱部品として区分することができる。
【0003】
一般に、屋外に設置される太陽光発電用パワーコンディショナ(パワコン)のような電力変換装置は、トラッキングの原因となる埃の侵入や雨水の浸入を防止するため、電気回路部が密閉された筐体内に収納される。このため、電力変換装置の運転中には、スイッチング素子やリアクトル等が発する熱により、筐体内部の温度が上昇し、これに伴い電解コンデンサやリレー等の温度も上昇する。
【0004】
電解コンデンサやリレー等への熱的影響を軽減する技術として、電源部の発熱部分を収納する第1収納部と、電源部の非発熱部分と電源部以外の部品とを収納する第2収納部とを設け、これら2つの収納部を隔離、断熱した電子機器筐体が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、上記特許文献1と同様の構成がREFU Elektronik社製のパワーコンディショナであるREFUSOL11kにおいて採用されている。このREFUSOL11kでは、発熱部品であるリアクトルとその他の部品とをそれぞれ異なる収納部に収納している(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−244214号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】"PHOTON International" September 2008, "inverter tests", p.88(http://reb2b-portal.xsite.be/public/uploads/files/Photon%20International%20-%20Testresultaat%20Refusol%2011%20K%20inverter.pdf:2010年7月26日検索)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電力変換装置を構成するスイッチング素子としては、シリコン半導体により形成されたスイッチング素子を用いることが一般的である。しかしながら、シリコン半導体により形成されたスイッチング素子は、高温環境下では電力変換効率が低下するため、スイッチング素子自身を過熱から守るために充分な冷却が必要となる。このため、高温となる第1収納部内に発熱部品であるリアクトルと共にスイッチング素子を収納することは困難であり、比較的低温となる第2収納部内に電解コンデンサやリレー等と共に収納せざるを得なかった。
【0009】
一方、スイッチング素子は、電力変換装置の運転中における発熱量が大きく、スイッチング素子の周囲の温度が上昇する。このため、上記従来技術の考え方では、スイッチング素子による発熱が電解コンデンサやリレー等の低発熱部品に与える熱的影響を考慮して部品配置を行う必要があり、部品配置に対する自由度が少ない、という問題があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、部品配置に対する自由度を増大することができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる電力変換装置は、直流電力をスイッチングして交流電力に変換するスイッチング素子を含む各種部品と、各面が導体で構成された筐体と、を備え、前記各種部品は、前記スイッチング素子を含み、動作中の発熱量が大きい複数種の発熱部品と、前記発熱部品よりも動作中の発熱量が小さい複数種の低発熱部品と、に区分され、前記スイッチング素子は、ワイドバンドギャップ半導体によって形成され、前記筐体内において、前記区分した発熱部品の全てが、前記区分した低発熱部品よりも上部に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、部品配置に対する自由度を増大することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる電力変換装置の一構成例を示す図である。
【図2】図2は、Siスイッチング素子を使用した電力変換装置の一構成例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態2にかかる電力変換装置の一構成例を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態3にかかる電力変換装置の一構成例を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態4にかかる電力変換装置の一構成例を示す図である。
【図6】図6は、実施の形態5にかかる電力変換装置の一構成例を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態6にかかる電力変換装置の一構成例を示す図である。
【図8】図8は、実施の形態7にかかる電力変換装置の一構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照し、本発明の実施の形態にかかる電力変換装置について説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
本実施の形態にかかる電力変換装置としては、太陽電池モジュールから供給される直流電力を交流電力に変換し、住宅内の電気機器等の負荷および電力系統に供給するパワーコンディショナに適用する例を示している。この例では、電力変換装置の出力電力は、住宅内の電気機器等の負荷で消費されるとともに、住宅内の電気機器等の負荷により消費できない余剰電力は、電力系統に逆潮流される。曇天時や夜間など、日射量が少なく太陽電池モジュールが発電できないときには、電力系統から住宅内の電気機器等の負荷に電力が供給される。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる電力変換装置の一構成例を示す図である。図1(a)は、実施の形態1にかかる電力変換装置を構成する各部品が収納される筐体1の正面図であり、筐体1を構成する正面の電気伝導体(以下単に「導体」という)を透視した場合に見える部品の概観を示している。なお、筐体1は、各6面が全て導体で構成されている。また、図1(b)は、筐体1を側面から見た側面図であり、筐体1を構成する側面導体を透視した場合に見える部品の概観(一部の部品は省略)を示している。
【0017】
筐体1内の温度は、発熱部品によって熱せられた空気が上昇することにより、筐体1内の上部が高温となり、下部が低温となる温度分布が生じる。図1に示す例では、破線Aよりも上部の領域を高温領域とし、破線Aよりも下部の領域を低温領域として示している。
【0018】
図1に示すように、実施の形態1にかかる電力変換装置は、例えば太陽電池モジュール(図示せず)からの直流電力を昇圧または降圧する昇降圧回路(図示せず)から出力された直流電力をスイッチング制御して交流電力に変換するスイッチング素子10と、直流電力により電荷を蓄積する電解コンデンサ11と、コンデンサ(図示せず)と共にスイッチング素子10の出力から高周波成分を除去するリアクトル12と、交流電力を電力系統(図示せず)に連系するためのリレー13と、スイッチング素子10やリレー13等を制御する制御回路14と、を備えている。
【0019】
スイッチング素子10は、例えば炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)系材料、またはダイヤモンド等のワイドバンドギャップ(WBG)半導体により形成される。これらのWBG半導体によって形成されたスイッチング素子10は、高温動作(約200℃以上)が可能であるため、筐体1内において高温領域となる破線Aから上部に配置される。なお、これ以降、このスイッチング素子10をSiCスイッチング素子10として説明する。
【0020】
電解コンデンサ11は、低発熱部品であり、高温環境下では寿命が短くなるため、筐体1内において低温領域となる破線Aから下部に配置される。
【0021】
リアクトル12は、SiCスイッチング素子10と同様に、動作中の発熱量が大きい発熱部品であるため、SiCスイッチング素子10と共に破線Aから上部の高温領域に配置される。
【0022】
リレー13は、電解コンデンサ11と同様に動作中の発熱量が小さい低発熱部品であり、高温環境下では使用電圧範囲が狭くなるため、電解コンデンサ11と共に破線Aから下部の低温領域に配置される。
【0023】
制御回路14は、動作中の発熱量は比較的小さいため、電解コンデンサ11およびリレー13と共に破線Aから下部の低温領域に配置される。
【0024】
つぎに、実施の形態1にかかる電力変換装置との比較対象として、汎用的なスイッチング素子であるシリコン製のスイッチング素子(以下「Siスイッチング素子」という)を用いた電力変換装置について、図2を参照して説明する。なお、シリコンは、SiCなどと比較して、バンドギャップが狭いため、ナローバンドギャップ(NBG)半導体と呼ばれるグループに属する。
【0025】
図2は、Siスイッチング素子を使用した電力変換装置の一構成例を示す図である。図2(a)は、電力変換装置を構成する各部品が収納される筐体1の正面図であり、実施の形態1と同様に、筐体1を構成する正面導体を透視した場合に見える部品の概観を示している。図2(b)は、筐体1を側面から見た側面図であり、筐体1を構成する側面導体を透視した場合に見える部品の概観(一部の部品は省略)を示している。また、図2(c)は、筐体1の高さに対する温度分布の相対値を示している。なお、図2に示す例では、便宜上、破線Aよりも上部の領域を高温領域とし、破線Aの下方側に引かれた破線Bよりも下部の領域を低温領域としている。
【0026】
Siスイッチング素子15は、動作中の発熱量が大きい発熱部品でありながら、高温環境下では電力変換効率が低下するため、Siスイッチング素子15自身を過熱から守るために充分な冷却が必要である。このため、図2に示す例では、Siスイッチング素子15は、筐体1内において、破線Bによって区分される低温領域の上部側に配置されている。
【0027】
これに対して、電解コンデンサ11、リレー13、および制御回路14は、Siスイッチング素子15よりも上部側の高温領域と低温領域とに挟まれた領域に配置されている。また、図2に示すように、筐体1の外部に、ヒートシンク16や、ヒートシンク16に送風するファン17を設け、Siスイッチング素子15が発する熱を外部へ放熱する構造としている。
【0028】
しかしながら、このような配置構成の場合、図2(c)に示すように、Siスイッチング素子15を配置した付近、すなわち低温領域の上部側では、Siスイッチング素子15の発する熱により温度が高くなる。また、これに伴い、高温領域と低温領域とに挟まれる領域、すなわち電解コンデンサ11やリレー13が配置された領域の温度が上昇する。したがって、電解コンデンサ11やリレー13等の低発熱部品への熱的影響の軽減を考慮して部品配置を行ったり、耐熱性能を強化した特殊な部品(例えば、高温環境下で動作可能な高温仕様のリレー)を選定したりする必要がある。
【0029】
一方、SiCに代表されるワイドバンドギャップ半導体は、ナローバンドギャップ半導体と比較して耐熱性が高く、高温動作が可能である。このため、図1にも示したように、破線Aから上部の高温領域にSiCスイッチング素子10を配置することが可能となる。このとき、SiCスイッチング素子10とリアクトル12とは、共に筐体1内の高温領域に配置されることとなり、筐体1内の温度分布がより明確となる。また、高温領域の温度が従来よりも高温になるのと引き換えに、破線Aから下部の領域の温度をより低く保つことができるので、電解コンデンサ11やリレー13等の低発熱部品の配置に対する自由度が大きくなる。
【0030】
例えば、図1に示す例では、電解コンデンサ11をリレー13よりも下部に配置しているが、電解コンデンサ11をリレー13よりも上部に配置することも可能である。一方、図2に示す例では、電解コンデンサ11とリレー13を横並びで配置しているが、配置を変更する自由度は殆ど残っていないと言うことができる。
【0031】
また、実施の形態1の場合、高温領域における発熱部品の配置に対する自由度も大きくなる。例えば、図1に示す例では、リアクトル12の上部にSiCスイッチング素子10を配置しているが、リアクトル12の下部あるいは、リアクトル12の近傍にSiCスイッチング素子10を配置することも可能である。
【0032】
以上説明したように、実施の形態1の電力変換装置によれば、スイッチング素子を高温動作が可能なWBG半導体によって形成するようにしたので、スイッチング素子を筐体内上部の高温領域に配置することが可能となる。
【0033】
また、実施の形態1の電力変換装置によれば、スイッチング素子をリアクトルと共に筐体内上部の高温領域に配置することにより、筐体内の温度分布をより明確にすることができ、筐体内の下部の低温領域の温度を低く保つことができる。この作用により、電解コンデンサやリレー等の低発熱部品に対する配置の自由度を増大することができるという効果が得られる。
【0034】
また、実施の形態1の電力変換装置によれば、電解コンデンサの温度を低く保つことが可能となるので、電解コンデンサの長寿命化を図ることができる。
【0035】
さらに、実施の形態1の電力変換装置によれば、耐熱性能を強化した特殊な部品を選定する必要がなくなるので、電力変換装置を構成する部品の選択範囲を広げることができる。
【0036】
なお、WBG半導体によって形成されたスイッチング素子は、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、スイッチング素子の小型化が可能であり、この小型化されたスイッチング素子を用いることにより、このスイッチング素子を組み込んだ電力変換装置の小型化が可能となる。
【0037】
また、WBG半導体によって形成されたスイッチング素子は、耐熱性が高いことにより、ヒートシンクの削除あるいはヒートシンクの放熱フィンの小型化が可能であるので、電力変換装置のさらなる小型化が可能になる。
【0038】
さらに、WBG半導体によって形成されたスイッチング素子は、電力損失が低いため、スイッチング素子の高効率化が可能であり、延いては電力変換装置の高効率化が可能になる。
【0039】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2にかかる電力変換装置の一構成例を示す図である。なお、実施の形態1と同一または同等の構成部には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0040】
図3に示すように、実施の形態2にかかる電力変換装置では、筐体1内の上部にSiCスイッチング素子10が配置された第1収納部2と、SiCスイッチング素子10以外の構成部品が配置された第2収納部3とが、破線Aに沿って断熱機能を有する内部断熱壁18で仕切られている。これにより、第1収納部2と第2収納部3とが熱的に隔離され、第2収納部3内の温度分布の最高温度が低下し、第2収納部3内に配置される電解コンデンサ11やリレー13等は、SiCスイッチング素子10が発する熱の影響を受け難くなるという効果が得られる。
【0041】
以上説明したように、実施の形態2の電力変換装置によれば、筐体内の上部にスイッチング素子を配置して、そのスイッチング素子と他の構成部品とを、断熱機能を有する内部断熱壁で仕切るようにしたので、電解コンデンサやリレー等の低発熱部品は、スイッチング素子が発する熱の影響を受け難くなる。その結果、例えば電解コンデンサやリレー等の低発熱部品を第2収納部の上部側に配置することも可能となるので、実施の形態1よりもさらに電解コンデンサやリレー等の低発熱部品の部品配置に対する自由度を増大することができ、電解コンデンサのさらなる長寿命化を図ることができる。
【0042】
なお、図3に示す例では、SiCスイッチング素子10のみを第1収納部2に配置するようにしたが、SiCスイッチング素子10およびリアクトル12を第1収納部2に配置し、SiCスイッチング素子10およびリアクトル12以外の構成部品を第2収納部3に収納するようにすることも可能である。このようにすれば、SiCスイッチング素子10およびリアクトル12が配置された第1収納部2と、電解コンデンサ11やリレー13等が配置された第2収納部3とが熱的に隔離され、第2収納部2内の温度分布の最高温度はさらに低下し、第2収納部3内に配置される電解コンデンサ11やリレー13等の低発熱部品は、リアクトル12が発する熱の影響をも受け難くなるので、図3に示す例よりもさらに電解コンデンサ11やリレー13等の低発熱部品の部品配置に対する自由度を増大することができ、電解コンデンサ11のさらなる長寿命化を図ることができる。
【0043】
実施の形態3.
図4は、実施の形態3にかかる電力変換装置の一構成例を示す図である。なお、実施の形態1および2と同一または同等の構成部には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0044】
図4に示すように、実施の形態3にかかる電力変換装置では、SiCスイッチング素子10が配置された第1収納部2と、SiCスイッチング素子10以外の構成部品が配置された第2収納部3とが、破線Aに沿って断熱機能を有する導体で製作された内部断熱EMCシールド壁19で仕切られている。
【0045】
SiCスイッチング素子10は、スイッチング動作に伴い、高周波の放射ノイズを発生する。この放射ノイズは、リレー13や制御回路14等の誤動作の要因となる。したがって、第1収納部2内に放射ノイズの発生源となるSiCスイッチング素子10を配置し、第1収納部2と第2収納部3とを内部断熱EMCシールド壁19で仕切ることにより、リレー13や制御回路14等がSiCスイッチング素子10を発生源とする放射ノイズによる影響を受け難くしている。
【0046】
以上説明したように、実施の形態3の電力変換装置によれば、筐体内の上部にスイッチング素子を配置して、そのスイッチング素子と他の構成部品とを、断熱機能を有する導体で製作された内部断熱EMCシールド壁で仕切るようにしたので、実施の形態2の効果に加えて、リレーや制御回路等は、スイッチング素子を発生源とする放射ノイズによる影響を受け難くなり、リレーや制御回路等の誤動作を抑制することができる。
【0047】
実施の形態4.
図5は、実施の形態4にかかる電力変換装置の一構成例を示す図である。なお、実施の形態1乃至3と同一または同等の構成部には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0048】
図5に示すように、実施の形態4にかかる電力変換装置では、SiCスイッチング素子10およびリアクトル12が配置された第1収納部2と、SiCスイッチング素子10およびリアクトル12以外の構成部品が配置された第2収納部3とが、破線Aに沿って実施の形態3と同様の内部断熱EMCシールド壁19で仕切られている。
【0049】
リアクトル12は、SiCスイッチング素子10の出力波形を整形する際に、SiCスイッチング素子10と同様に、高周波の放射ノイズを発生する。したがって、第1収納部2内にノイズ発生源となるSiCスイッチング素子10およびリアクトル12を配置し、第1収納部2と第2収納部3とを内部断熱EMCシールド壁19で仕切ることにより、リレー13や制御回路14等がリアクトル12を発生源とする放射ノイズによる影響をも受け難くしている。
【0050】
また、第1収納部2内に配置されたSiCスイッチング素子10およびリアクトル12は、共に発熱部品であるので、これらSiCスイッチング素子10およびリアクトル12が配置された第1収納部2と、電解コンデンサ11やリレー13等の低発熱部品が配置された第2収納部3とが熱的に隔離されることにより、第2収納部2内の温度分布の最高温度はさらに低下する。つまり、第2収納部3内に配置される電解コンデンサ11やリレー13等の低発熱部品は、リアクトル12が発する熱の影響をも受け難くなる。
【0051】
以上説明したように、実施の形態4の電力変換装置によれば、筐体内の上部にスイッチング素子およびリアクトルを配置して、それらのスイッチング素子およびリアクトルと他の構成部品とを、断熱機能を有する導体で製作された内部断熱EMCシールド壁で仕切るようにしたので、実施の形態3の効果に加えて、リアクトルを発生源とする放射ノイズによる影響をも受け難くなり、リレーや制御回路等の誤動作をさらに抑制することができる。
【0052】
また、放射ノイズの発生源となるスイッチング素子およびリアクトルが導体である筐体および内部断熱EMCシールド壁で隔離されるので、電力変換装置の外部への放射ノイズの伝搬を低減することができる。
【0053】
また、実施の形態2と同様に、電解コンデンサやリレー等の低発熱部品は、リアクトルが発する熱の影響をも受け難くなり、実施の形態1よりもさらに電解コンデンサやリレー等の低発熱部品の部品配置に対する自由度を増大することができ、電解コンデンサのさらなる長寿命化を図ることができる。
【0054】
実施の形態5.
図6は、実施の形態5にかかる電力変換装置の一構成例を示す図である。なお、実施の形態1乃至4と同一または同等の構成部には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0055】
図6(a)は、電力変換装置の正面図を示し、図6(b)は、電力変換装置の側面図を示している。図6に示すように、実施の形態5にかかる電力変換装置では、SiCスイッチング素子10およびリアクトル12は、各面が導体で覆われた第1筐体4内に収納され、SiCスイッチング素子10およびリアクトル12以外の構成部品は、同様に各面が導体で覆われた第2筐体5内に収納され、第1筐体4内に配置された部品と第2筐体5内に配置された部品との間は、信号線20により接続されている。また、第1筐体4と第2筐体5との間は、外気が通気可能なように離されて設置されている。
【0056】
第1筐体4内に収納されたSiCスイッチング素子10およびリアクトル12は、共に発熱部品である。これらのSiCスイッチング素子10およびリアクトル12が収納された第1筐体4と、電解コンデンサ11、リレー13、および制御回路14等の部品が収納された第2筐体5とが、外気が通気可能なように離されて配置されることにより、SiCスイッチング素子10およびリアクトル12と電解コンデンサ11およびリレー13等との間の断熱が強化され、電解コンデンサ11やリレー13等の低発熱部品は、SiCスイッチング素子10およびリアクトル12が発する熱の影響をさらに受け難くなる。また、上述した実施の形態1乃至4では、SiCスイッチング素子10およびリアクトル12が発する熱は、筐体1を構成する上面導体および側面導体から排熱していたが、実施の形態5にかかる電力変換装置では、第1筐体4を構成する全ての外壁面導体から排熱することができ、実施の形態1乃至4よりもSiCスイッチング素子10およびリアクトル12の温度を低下させることができる。
【0057】
また、第1筐体4内に収納されたSiCスイッチング素子10およびリアクトル12は、共に高周波の放射ノイズの発生源でもある。一方、リレー13および制御回路14は、放射ノイズによる影響を受け易い部品である。放射ノイズの発生源であるSiCスイッチング素子10およびリアクトル12が第1筐体4内に隔離され、放射ノイズによる影響を受け易いリレー13や制御回路14等が第2筐体5内に隔離されることにより、実施の形態4よりもさらにリレー13や制御回路14等への放射ノイズによる影響を低減することができる。また、第1筐体4と第2筐体5とが非接触状態で配置されることにより、SiCスイッチング素子10およびリアクトル12からリレー13や制御回路14等への高周波の伝導ノイズも低減される。さらに、SiCスイッチング素子10およびリアクトル12が第1筐体4で隔離されるので、電力変換装置の外部への放射ノイズの伝搬を低減することができる。
【0058】
以上説明したように、実施の形態5の電力変換装置によれば、発熱部品であるスイッチング素子およびリアクトルを、各面が導体で覆われた第1筐体内に収納し、スイッチング素子およびリアクトル以外の構成部品を、同様に各面が導体で覆われた第2筐体内に収納して、第1筐体と第2筐体との間を、外気が通気可能なように離して設置するようにしたので、電解コンデンサやリレー等の低発熱部品は、スイッチング素子およびリアクトルが発する熱の影響をさらに受け難くなり、実施の形態4よりもさらに電解コンデンサやリレー等の低発熱部品の部品配置に対する自由度を増大することができ、電解コンデンサのさらなる長寿命化を図ることができる。
【0059】
また、第1筐体を構成する全ての外壁面導体からスイッチング素子およびリアクトルが発する熱を排熱することができるので、実施の形態1乃至4よりもスイッチング素子およびリアクトルの温度を低下させることができる。
【0060】
さらに、放射ノイズの発生源となるスイッチング素子およびリアクトルが第1筐体内に隔離され、放射ノイズによる影響を受け易いリレーや制御回路等が第2筐体内に隔離されるので、実施の形態4よりもさらにリレーや制御回路等への放射ノイズによる影響を低減することができ、さらには、第1筐体と第2筐体とが非接触状態で配置されることにより、伝導ノイズによる影響をも低減することができるので、リレーや制御回路等の誤動作をさらに抑制することができる。また、スイッチング素子およびリアクトルが第1筐体内に隔離されるので、電力変換装置の外部への放射ノイズの伝搬を低減することができる。
【0061】
実施の形態6.
図7は、実施の形態6にかかる電力変換装置の一構成例を示す図である。なお、実施の形態1乃至5と同一または同等の構成部には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0062】
図7(a)は、電力変換装置の正面図を示し、図7(b)は、電力変換装置を側面から見た側面図を示している。なお、図7(b)に示すように、実施の形態6にかかる電力変換装置では、実施の形態5で説明した第1筐体4を構成する外壁面導体にヒートシンク21を配置している。
【0063】
SiCスイッチング素子10およびリアクトル12が発する熱は、第1筐体4を構成する外壁面導体を介して外部に排熱されるが、例えば、電力変換装置が設置される地域、あるいは供給する電力量によっては、SiCスイッチング素子10やリアクトル12の発する熱を十分に排熱できない場合がある。このような場合に、第1筐体4を構成する外壁面導体にヒートシンク21を配置することにより、排熱面積を拡大することができ、実施の形態5よりも第1筐体4内の温度を低下させることができる。なお、図7に示す例では、第1筐体4の背面導体にヒートシンク21を配置しているが、ヒートシンク21を配置する外壁面導体はこれに限らず、上面導体あるいはその他の側面導体にヒートシンク21を配置してもよく、さらには複数の外壁面導体にそれぞれ対応する複数個のヒートシンクを配置してもよい。
【0064】
以上説明したように、実施の形態6の電力変換装置によれば、発熱部品であるスイッチング素子およびリアクトルが配置された第1筐体を構成する外壁面導体に一つあるいは複数のヒートシンクを配置するようにしたので、排熱面積を拡大することができ、実施の形態5よりも第1筐体内の温度を低下させることができる。
【0065】
なお、実施の形態6では、実施の形態5の構成に示した第1筐体の外壁面導体にヒートシンクを配置する構成について説明したが、実施の形態1において説明した筐体の上面導体、あるいは側面導体の上部にヒートシンクを配置しても、同様の効果を得ることができる。また、実施の形態2乃至4において説明した第1収納部の上面導体、あるいは側面導体にヒートシンクを配置しても、同様の効果を得ることができる。
【0066】
実施の形態7.
図8は、実施の形態7にかかる電力変換装置の一構成例を示す図である。なお、実施の形態1乃至6と同一または同等の構成部には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0067】
図8に示すように、実施の形態7にかかる電力変換装置では、SiCスイッチング素子10およびリアクトル12が配置された第1収納部2の上面導体、および側面導体の外側を外気が通気可能なように外部断熱壁22で覆われている。なお、図8では、第1収納部2と第2収納部3とを、破線Aに沿って内部断熱EMCシールド壁19で仕切る構成としているが、内部断熱壁18で仕切る構成とすることも可能である。
【0068】
筐体1の外壁面導体の温度は、第1収納部2内に収納されたSiCスイッチング素子10およびリアクトル12が発する熱により上昇するが、例えば、電力変換装置の設置状態によっては、筐体1の外壁面導体の温度が筐体1の外部に設置された物体に影響を及ぼす場合がある。このような場合に、第1収納部2の上面導体、および側面導体の外側を外気が通気可能なように外部断熱壁22で覆うことにより、外部断熱壁22の温度は、外気温度付近の温度を維持することができ、筐体1の外壁面導体の温度が筐体1の外部に設置された物体に影響することを防ぐことができる。
【0069】
以上説明したように、実施の形態7の電力変換装置によれば、スイッチング素子およびリアクトルが配置された第1収納部の上面導体、および側面導体の外側を外気が通気可能なように外部断熱壁で覆い、外部断熱壁の温度が外気温度付近の温度を維持するようにしたので、筐体の外壁面導体の温度が筐体の外部に設置された物体に影響することを防ぐことができる。
【0070】
なお、実施の形態7では、実施の形態2乃至4の構成に示した第1収納部の上面導体、および側面導体の外側を外気が通気可能なように外部断熱壁で覆う構成について説明したが、実施の形態1において説明した筐体の上面導体、および側面導体の上部の外側を外気が通気可能なように外部断熱壁で覆う構成としても、同様の効果を得ることができる。また、実施の形態5において説明した第1筐体の上面導体、および側面導体の外側を外気が通気可能なように外部断熱壁で覆う構成としても、同様の効果を得ることができる。さらには、実施の形態6において説明したヒートシンクの外側を外気が通気可能なように外部断熱壁で覆う構成としても、同様の効果を得ることができる。
【0071】
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明にかかる電力変換装置は、部品配置に対する自由度を増大することができる発明として有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 筐体、2 第1収納部、3 第2収納部、4 第1筐体、5 第2筐体、10 (SiC)スイッチング素子、11 電解コンデンサ、12 リアクトル、13 リレー、14 制御回路、15 Siスイッチング素子、16 ヒートシンク、17 ファン、18 内部断熱壁、19 内部断熱EMCシールド壁、20 信号線、21 ヒートシンク、22 外部断熱壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力をスイッチングして交流電力に変換するスイッチング素子を含む各種部品と、
各面が導体で構成された筐体と、
を備え、
前記各種部品は、
前記スイッチング素子を含み、動作中の発熱量が大きい複数種の発熱部品と、
前記発熱部品よりも動作中の発熱量が小さい複数種の低発熱部品と、
に区分され、
前記筐体は、断熱機能を有する内部断熱壁で上部の第1収納部と下部の第2収納部とに仕切られ、
前記第1収納部内に前記スイッチング素子が収納され、前記第2収納部内に前記スイッチング素子以外の前記発熱部品および前記区分した低発熱部品が収納され、
前記第2収納部内において、前記スイッチング素子以外の前記発熱部品が、前記区分した低発熱部品の全てよりも上部に配置される
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
直流電力をスイッチングして交流電力に変換するスイッチング素子を含む各種部品と、
各面が導体で構成された筐体と、
を備え、
前記各種部品は、
前記スイッチング素子を含み、動作中の発熱量が大きい複数種の発熱部品と、
前記発熱部品よりも動作中の発熱量が小さい複数種の低発熱部品と、
に区分され、
前記筐体は、断熱機能を有する内部断熱壁で上部の第1収納部と下部の第2収納部とに仕切られ、
前記第1収納部内に前記区分した発熱部品の全てが収納され、前記第2収納部内に前記区分した低発熱部品の全てが収納される
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
前記内部断熱壁は、導体で製作された内部断熱EMCシールド壁であることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1収納部の上面導体、あるいは側面導体に一つあるいは複数のヒートシンクを配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
直流電力をスイッチングして交流電力に変換するスイッチング素子を含む各種部品と、
各面が導体で構成された第1筐体と、
各面が導体で構成された第2筐体と、
を備え、
前記各種部品は、
前記スイッチング素子を含み、動作中の発熱量が大きい複数種の発熱部品と、
前記発熱部品よりも動作中の発熱量が小さい複数種の低発熱部品と、
に区分され、
前記第1筐体と前記第2筐体とは、上部の前記第1筐体と下部の前記第2筐体との間を外気が通気可能に離されて設置され、
前記区分した発熱部品の全てが前記第1筐体内に収納され、
前記区分した低発熱部品の全てが前記第2筐体内に収納される
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
前記第1筐体の外壁面導体に一つあるいは複数のヒートシンクを配置したことを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
直流電力をスイッチングして交流電力に変換するスイッチング素子を含む各種部品と、
各面が導体で構成された第1筐体と、
各面が導体で構成された第2筐体と、
を備え、
前記各種部品は、
前記スイッチング素子を含み、高周波ノイズの発生源となる複数種のノイズ源部品と、
前記ノイズ源部品以外の複数種の非ノイズ源部品と、
に区分され、
前記第1筐体と前記第2筐体とは、非接触状態で設置され、
前記区分したノイズ源部品の全てが前記第1筐体内に収納され、
前記区分した非ノイズ源部品の全てが前記第2筐体内に収納される
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
前記スイッチング素子は、ワイドバンドギャップ半導体によって形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−102696(P2013−102696A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−45917(P2013−45917)
【出願日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【分割の表示】特願2012−532819(P2012−532819)の分割
【原出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】