説明

電力損失低減装置、光ドライブシステム、光データ記憶システム、電力損失低減方法

光学ドライブシステムにおいて、高速に「パワーダウンを出る」タイミングを有する「パワーダウン状態」が提供される。これらのタイミング要件を満足するため、制御部は、システムを通常の電力供給モードから省電力モードへ切り替える。焦点及び半径サーボループは、閉に保たれる。またチルトは、ゼロに低減される。つまりチルト補正機構は一時的に無効にされる。パワーダウンモードから読み出し/記録動作を比較的迅速に開始するため(及び読み出しスポットからディスクの外径へ逸れることを避けるため)、システムは、照射スポットが一時停止モードの開始されるセクターアドレスに到達する度に、照射スポットをジャンプさせ1トラック戻すよう、構成される。スレッジモーター制御部は、無効にされる。また平均半径アクチュエーター電圧(つまり、半径サーボループによる制御される半径アクチュエーター制御部に印加される平均電圧)は、ジャンプして戻る時を決定するために利用される。従って、アドレス読み出し機能は、もはや必要とされない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、光ディスクドライブのパワーダウン装置に関連し、より詳細には、特に光データドライブの一時停止モードの間に、再生又は記録速度を妥協することなく電力消費を最小限に抑えるために、光データドライブ内のパワーダウン機能を有効にする方法及び装置に関連する。このような光データドライブ内で用いられる記憶媒体の例は、例えば、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD、ブルーレイ(Blue Ray)等である。これらの例では、光学記憶媒体は、ディスク形状を有する。
【背景技術】
【0002】
光データ記憶システムは、大容量のデータをディスクに格納する手段を提供する。従来、良く知られているように、光ディスクは、少なくとも1つのトラックを有し、このトラックは書き込まれたデータを収容可能である。ディスクは、読み出し専用ディスクであるよう実施される。つまり、ディスクはトラックに記録されたデータを有し製造され、このデータはディスクから読み出しのみ可能である。しかしながら、ユーザーにディスクへデータを記録させる書き込み可能な光ディスクもまた知られている。例えば、ディスクは、通常、ブランクディスク、つまりトラック構造を有するがトラックに記録されたデータを有さないディスクとして製造される。同様に、ディスクドライブは、読み出し専用装置、つまり記録されたディスクから情報の読み出しのみ可能な装置として設計されて良い。しかしながら、ディスクドライブはまた、記録可能なディスクのトラックに情報を書き込むよう設計されて良い。
【0003】
図1を参照する。図1は、知られている光ディスクプレーヤーの例であり、光ディスク1からの信号を再生する光ピックアップ2、ピックアップ2により光ディスク1から再生されたRF信号を均一化し成形するRF装置3、及び同期クロックを用いデジタルデータを読み出すために、RF装置3から出力されるバイナリデータと同期した位相を有するクロック信号を生成する同期装置7、読み出したデジタルデータを復号し本来の画像又は音声データを得るMPEG復号器5、及び光ピックアップ2を移動するスレッジモーター11を有する。ディスクプレーヤーは、光ディスク1を回転するスピンドルモーター12、スレッジモーター11及びスピンドルモーター12を駆動する駆動装置、及び光ピックアップ2及び駆動装置8を制御するサーボ装置6を更に有する。マイクロプロセッサー9は、サーボ装置6及びデジタル信号処理装置4の全体の動作を管理する。またメモリー10は、マイクロプロセッサー9に必要なデータを格納する。
【0004】
物理的には、光ディスクの情報を担う部分は、螺旋状のトラックを形成するよう配置された一連のピット、又はバンプである。データは、個々のピットの長さ及びピット間の距離の長さに符号化される。光ディスクに反射されたレーザービームは、ピット及び距離により変調され、そして同様に変調された電気信号、又はトラックデータ信号を生成する検出器により受信される。
【0005】
一般に、光データ記憶システムでは、光ディスクが回転するので、情報信号が記録される信号表面は、機械の精度、回転精度、等に依存し、度垂直方向の動きの影響をある程受けやすい。情報信号を正確に読み出すため、システムは、標準的に、対物レンズ(光源からの光ビームの焦点を対象に合わせる)及び情報記憶媒体の間の距離を一定に維持するよう配置され構成されたフォーカシング機能を設けている。言い換えると、対物レンズを駆動し信号表面の垂直方向の動きを補償する焦点サーボシステムが利用され、対物レンズが常にレーザービームの焦点を信号表面に合わせる。
【0006】
更に、光記憶システムの知られている種類は、情報記憶媒体の目的のトラックに焦点の合った光スポットを生じるためのトラッキング機能を設ける。トラッキング機能の達成により、検出信号(情報記憶媒体の目的のトラックと光スポットの間の距離に相当する)は、情報記憶媒体に反射された光ビームに応じて生成される。検出信号は、A/D変換器によりデジタル信号に変換される。デジタル信号に対応し、対物レンズは、デジタルサーボシステムにより駆動される。品質、つまり誤差信号に対する耐性は、チルトの増大に従い低減される。一般に、チルトの誤差信号の感度は、アドレス読み出しに必要な信号の感度より低い。
【0007】
纏めると、従って、光情報担体の記録及び再生装置は、逸脱又はトラッキングのような誤差、半径及び/又は焦点誤差を補償するため、サーボ制御回路を有する。誤差信号は、光走査装置の測定値から引き出され、サーボ装置内で処理され、制御信号を形成する。これら制御信号は、光走査装置のアクチュエーターへ供給される。
【0008】
データを光ディスクに記録する従来の方法は、以下に簡単に説明される。図1を参照して以上に説明された構成のメモリー10はまた、例えば、DRAMを有し(中でも特に)光ディスク1に記録されるべき圧縮データを保持する一過性記憶として知られている。従って、セクターアドレスAから開始し、データがセクターアドレスBまで光ディスクに記録される場合を考える。アドレスAからアドレスBまでの記録動作の後、システムは、アドレスBにおいて、所謂、一時停止モード又は状態に入る。同時に圧縮データが、一過性記憶へ更に供給される。この一時停止モードでは、記録は、一時的に中断されるが、次の記録動作が開始するべきディスク上の位置は、維持される。この一時停止状態では、従来のシステムでは、全てのサーボループ(焦点、半径、チルト、PLLの)は、アクティブである。またアドレス情報、つまりレーザービームがトラッキングしているディスク上のアドレスは、ディスクから読み出される。サーボ制御システムのトラッキング機能を用いると、実際のアドレスと所望のアドレス(この場合、アドレスB)の間の差異に基づき、単一トラックのジャンプが実行され、レーザービーム又はスポットをアドレスBの直前の位置に保持する。一過性記憶がある閾値レベルより上に満たされ、そしてアドレスBからアドレスCまでの記録動作を実行する新しい記録コマンドが発行されると、システムは一時停止モード又は状態を出て、そして通常動作モードに再び入る。記録は、アドレスBで開始し、アドレスCで終了する。アドレスCで、再び一時停止モード又は状態に入る。
【0009】
以上に説明されたシステムでは、スポットがアドレスB(アドレスBは、次の記録動作の開始アドレス)の直前のディスクのある位置の周りを回る(又は繰り返しジャンプして戻る)という事実を考慮し、(20ms程度の)個々のコマンドの受信に続き、迅速に記録が開始する。しかしながら、サーボループの全て及び集積回路がアクティブのままであるので、以上に説明された一時停止モード中でさえ、電力損失が非常に大きい。当業者は、従来の記録/一時停止機構が、以上に説明された記録/一時停止機構に類似していることを理解するだろう。
【0010】
一般に電力損失の問題、及び温度に関する電力損失の影響は、光ドライブに関し次第に重要になってきている。いくつかの場合には、電力損失及び結果として生じる温度への影響は、システムの性能を直接制限する。しかしながら、今日の装置では、増大する電力損失を対処するため、高機能な熱管理システムがドライブソフトウェアに統合されている。
【0011】
熱管理のある態様は、全てのサーボ機能(焦点、半径、チルト、等)がオフに切り替えられる(低)パワーダウン状態として知られる概念の利用を含む。更に、多くの集積回路は、パワーダウン状態に入る。時間期間Tpdの間、このパワーダウン状態になった後、システムは、再び「起動」し、つまり集積回路はアクティブモードに戻り、及びサーボ機能は再び開始し得る。システムの動作中、ドライブは、如何なる読み出し/記録動作も要求されない場合、パワーダウン状態に入り得る。結果として、平均電力損失、及び従って温度は、低減する。
【0012】
パワーダウン状態は、以下の2つの場合に利用され得る。
i)低ビットレートの読み出し/記録ストリームの間。例えば、DVDディスクからのMP3ファイルの再生。この場合、ドライブのデータ転送レートは、平均の所要データレートより非常に高いので、ドライブは一部の時間の間のみ読み出しする。
ii)所謂、デューティサイクルモードにおいて(詳細は、本出願人の係属中の出願PHNL030054に記載される)。このデューティサイクルモード(DCM)では、ドライブは、所定の期間Taの後、書き込み/読み出し処理を中断し、そしてパワーダウン状態に入る。勿論、平均データ転送レートは、約Tpd/(Ta+Tpd)×100%という式に従い低下する。
【0013】
記録の間、現在のデータドライブで用いられる従来のパワーダウン機構を、以下に説明する。以上に参照されたDCMモードでは、アドレスBにおける記録の終了時(つまり、システムが以上に説明された一時停止モード又は状態に入ると)にパワーダウンモードに入る。ある時間Tpaの後(低電力損失で)、記録は、再びアドレスBにおいて続行し、そしてシステムは、先ず「起動し」、一時停止モードに戻る。言い換えると、パワーダウン機能は、次の2つの遷移を有する。1)パワーダウンに入る、及び2)パワーダウンを出る。
【0014】
図2を参照する。図2は、これら遷移の両方に含まれる基本的動作のシーケンスを説明する。図2aを参照すると、「パワーダウンに入る」の後に、次の動作シーケンスが続く。
a)パワーダウンを無効にする。
b)チルト補償機構をオフに切り替える。チルトをゼロに設定する。
c)半径サーボループをオフに切り替える。
d)焦点サーボループをオフに切り替える。
e)レーザーをオフに切り替える。及び
f)ICをパワーダウンモードにする。
【0015】
同様に、「パワーダウンを出る」は、基本的に「パワーダウンに入る」機能の逆である。図2bを参照すると、以下の動作シーケンスを有する。
a)ICを起動する。
b)レーザーをオンに切り替える。
c)焦点ループをオンに切り替える。
d)半径ループをオンに切り替える。
e)前のチルト値を事前にセットする。
f)再び一時停止モードに入る(アドレスBの前の軌道)。
【0016】
この機構は、現在のデータ装置で用いられている。書き込み又は読み出しコマンドを受信すると、ドライブは可能な限り速く反応するべきなので、「パワーダウンを出る」ために要する時間は、特に重要である。データ記憶システムでは、この要件は特に重要ではない。しかしながら、この要件は、リアルタイム要件のため、ビデオレコーダー等では特に困難な問題である。以上に説明されたDCMのタイミングの態様、及び特に「パワーダウンを出る」時間は、現在のオーディオビジュアル(AV)製品においてDCMの利用が実用的でないことを意味する。「パワーダウンを出る」時、時間を要する焦点キャプチャー及び障害時に可能性のあるリカバリーは、以上に説明されたDCM機能を、AV製品等で利用不可能にする。
【0017】
以上に説明されたように、知られている光データドライブでは、読み出し又は記録のために、光スポットをディスクのトラック上に位置付けることが必要である。読み出しスポットの位置は、対物レンズの位置により決定される。読み出しスポット、及び従って対物レンズの位置付けは、2方向に行われるべきである。(ディスクからの及びディスクに向かう)焦点及び半径方向である。これは対物レンズを移動させることにより行われる。対物レンズは、アクチュエーターに取り付けられる。このアクチュエーターは、焦点を制御し及び半径のトラッキングのために利用される。しかしながら、ストロークは限られている。また半径のトラッキングでは、大きなストロークが必要なので、アクチュエーター全体がスレッジ上を移動する。スレッジもまた、大きいストロークで半径方向に制御される。スレッジはまた、光ピックアップ装置(OPU)として知られている。またレーザー及び光検出器はまた、OPUに取り付けられる。スレッジ制御は、標準的に、スレッジステッパーモーターを用い有効にされる。
【0018】
従って、当業者に知られているように、焦点トラッキングは、1段階で達成され、半径制御は2段階で実行される。アクチュエーターを用いる調整段階及びスレッジモーターを用いる進路段階である。これら全てのループが終了し、そしてスポットがディスク上の正しい位置にある場合、システムがトラッキングしていると称される。
【0019】
一方、半径チルト制御は、標準的に、別個のループであり、最も知られているシステムでは、この半径チルト制御は、アクチュエーターの一部である。従来の光記録構成では、アクチュエーターは、一般に2次元のアクチュエーターを有していた(つまり、チルト制御を有さない)。しかしながら、現在のドライブでは、焦点、半径(調整)及びチルトを制御する3次元アクチュエーターが知られている。この制御のチルト補償ブランチは、特に多くの電力を消費する。
【0020】
従って、標準的な光ディスクドライブは、トラッキング機能(つまり、焦点及び半径制御ループ、x及びz位置)を提供するサーボ電子機器及びy軸周りの回転に関する補償を提供する(半径)チルト補償機能を有する。再び図1を参照すると、標準的な光ドライブは、スピンドルモーター12を駆動し光ディスク1を回転する駆動装置8、及び光ピックアップ2を半径方向に移動するスレッジモーター11を有する。光ピックアップ2は、光ディスク1に記録されたデジタル信号を読み出し、そして収集されたビームを電気信号に変換する。スレッジモーター11は、光ピックアップ2を半径方向に移動する。またサーボ装置6は、フォーカシング及びトラッキング誤差信号に関連して、光ピックアップ2の垂直方向及び半径方向の位置を制御する。トラッキング誤差信号(TE)は、光検出器(PD)からの出力の低周波数成分を用いる。RF装置3は、光ピックアップ2により生成されたアナログ高周波数信号を均一化し成形する。そしてデジタル信号処理装置4は、RF装置3から出力されたバイナリデータを処理する。マイクロプロセッサー9は、各構成要素の全体の動作を管理する。
【0021】
(達成されるべきトラックジャンプ動作を有効にするために)トラッキング制御が一時的に停止された場合に、トラッキング制御を有効にし、正確なトラックジャンプ動作を実行する装置を設けることが知られている。例えば、特許文献1は、光ディスクドライブのサーボ制御装置を記載している。この装置では、ディスク偏心度が測定され、測定されたディスク偏心度に対応する補償値が計算され格納される。格納された補償値は、トラック探索モードで利用され、従ってディスク偏心度又は不完全な製造工程及びディスクの取り付け誤差により生じたチルトにも拘わらず、より安定した正確なトラック探索動作が達成される。トラックジャンプ動作が要求された場合、現在のトラック及び目的のトラックの間の横切るべきトラックの数が計算され、以上に説明された補償値に従い調整される。そしてジャンプパルスは、次に、光ピックアップ内に設置されたトラッキングアクチュエーターに印加され、従ってレーザービームスポットは、現在のトラックから目的のトラックへある所定の軌道に沿って動き得る。トラックジャンプ動作が行われる間、トラバースカウンターは、光ピックアップ2により読み出された高周波数信号から生成されたバイナリ信号であるトラバース信号の数を計数する。計数されたトラバース信号の数を受信すると、マイクロプロセッサー9は、トラッキングアクチュエーターが、計算されたトラック数をジャンプした後、確実に目的のトラックで止まるよう、サーボ装置6を制御する。ジャンプ動作を完了すると、マイクロプロセッサー9は、目的のトラックからのデータの読み出しを再開する。その間、一時停止コマンドが受信された場合、内側に向けてのトラックジャンプ動作は、ディスクが1回、回転する度に実行される。ジャンプ開始点は、トラック追従制御を再開させる基準レベルを変化することにより制御される。そしてジャンプ開始点は元の位置から開始する。
【0022】
しかしながら、特許文献1の構成では、トラック追従制御は、トラックジャンプコマンドに応じて一時的に停止されるが、実際にはオフに切り替えられず、従って結果として電力損失を低減しない。更に、本発明の目的とは反対に、記載された構成では、適切な期間又は動作モードの間に電力損失を低減は提供されない。
【0023】
特許文献2は、光ディスクドライブシステムを記載している。特許文献2では、光ディスク1に書き込まれるべき圧縮データを保持する一過性メモリー10が、最大レベルに達した時、データは、メモリー10が空になるまで、書き込みモードの光ディスクに書き込まれる。制御部は、次に、光ディスク1上のデータの書き込みを禁止し、そして同時に、圧縮データがメモリー10へ更に転送される間、省電力モードに入る。メモリー10に格納されたデータ量が基準レベルに達した時、制御部は、システムを省電力モードから通常電力供給へ切り替え、そしてピックアップ2を移動させ、メモリー10が再び空になるまで光ディスク1へのデータ書き込みを開始する。省電力モードは、焦点及びトラッキング制御及び、任意的に、レーザーをオフに切り替えることにより有効になる。更に、書き込まれるべき光ディスク1の次のセクターのアドレスが格納される。省電力は、記録/再生サーボ回路、焦点誤差信号生成器、トラッキング誤差信号発生器、エコライザー、PLL、速度制御信号生成器、レーザーパワー制御部、焦点制御部、トラッキング制御部、トラバース制御部、スピンドルモーター制御部、焦点回路、トラッキング回路及びレーザーの全ての構成要素への電力の供給を削減することにより達成される。これは、通常電力供給モードに対して電力消費を有意に低減させる。しかしながら、電力の供給が再開され、その手順で焦点制御及びトラッキング制御がオンに切り替えられると、トラッキング制御部は、ピックアップ2に、アドレスが格納されたセクターを有する光ディスク1のトラックターンの1つをシークさせ、そしてセクターがピックアップ2に到達するまでピックアップ2の接続を周期的に切る。従って、システムが省電力モードから通常電力供給モードへ切り替えられた場合、書き込み又は読み出しコマンドが事実上実行され得るまで、有意な時間長が経過する。この時間は、大部分は時間を要する焦点キャプチャー及び障害した場合の可能なリカバリーのためである。これは、オーディオビジュアル製品等のようなリアルタイム用途においてこの省電力方法を不適切にする。
【特許文献1】米国特許第6552973B1号明細書
【特許文献2】米国特許第6496456B2号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
そこで、改良された構成を考案した。本発明の目的は、光データドライブでパワーダウン機能を有効にする方法及び装置を提供することである。これにより、低電力状態は有効になり得るが、この間、新たに受信した読み出し/記録コマンドを処理するため、システムを比較的速く「起動する」ことが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明によると、連続する読み出し/記録動作の間に光ドライブシステムにおいて電力損失を低減する方法が提供される。前記システムは、線源、照射スポットをデータ記憶媒体上で読み出し/記録動作を実行するよう要求された位置に方向付けるフォーカシング手段、及び少なくとも1つのチルト補償機構を有するサーボ制御構成を有する。前記方法は、前記チルト補償機構をオフに切り替える段階、及び前記チルト補償機構が動作不能の間、前記照射スポットを前記光記憶媒体上の実質的に同一の位置に戻させる又は維持させる段階を有する。
【0026】
また本発明によると、連続する読み出し/記録動作の間に光ドライブシステムにおいて電力損失を低減する装置が提供される。前記システムは、線源、照射スポットをデータ記憶媒体上で読み出し/記録動作を実行するよう要求された位置に方向付けるフォーカシング手段、及び少なくとも1つのチルト補償機構を有するサーボ制御構成を有する。前記装置は、前記チルト補償機構をオフに切り替える手段、及び前記チルト補償機構が動作不能の間、前記照射スポットを前記光記憶媒体上の実質的に同一の位置に戻させる又は維持させる手段を有する。
【0027】
本発明は、線源、照射スポットをデータ記憶媒体上で読み出し/記録動作を実行するよう要求された位置に方向付けるフォーカシング手段、少なくともチルト補償機構を有するサーボ制御構成、及び連続する読み出し/記録動作の間、光ドライブシステムにおいて電力損失を低減する以上に定められた装置を有する光ドライブシステムに及ぶ。本発明は、以上に定められた光ドライブシステムを有する光データ記憶システムに更に及ぶ。
【0028】
知られている光データドライブでは、読み出し又は記録のために、光スポットをディスクのトラック上に位置付ける必要がある。読み出しスポットの位置は、対物レンズの位置により決定される。読み出しスポット、及び従って対物レンズの位置付けは、2方向に行われるべきである。(ディスクからの及びディスクに向かう)焦点及び半径方向である。これは対物レンズを移動させることにより行われる。対物レンズは、アクチュエーターに取り付けられる。このアクチュエーターは、焦点を制御し及び半径のトラッキングのために利用される。しかしながら、ストロークは限られている。また半径のトラッキングでは、大きなストロークが必要なので、アクチュエーター全体がスレッジを移動する。スレッジもまた、大きいストロークで半径方向に制御される。スレッジはまた、光ピックアップ装置(OPU)として知られている。またレーザー及び光検出器はまた、OPUに取り付けられる。スレッジ制御は、標準的に、スレッジステッパーモーターを用い有効にされる。
【0029】
従って、当業者に知られているように、焦点トラッキングは、1段階で達成され、半径制御は2段階で実行される。アクチュエーターを用いる調整段階及びスレッジモーターを用いる進路段階である。これら全てのループが終了し、そしてスポットがディスク上の正しい位置にある場合、システムがトラッキングしていると称される。
【0030】
一方、半径チルト制御は、標準的に、別個のループであり、最も知られているシステムでは、この半径チルト制御は、アクチュエーターの一部である。従来の光記録構成では、アクチュエーターは、一般に2次元アクチュエーターを有していた(つまり、チルト制御を有さない)。しかしながら、現在のドライブでは、焦点、半径(調整)及びチルトを制御する3次元アクチュエーターが知られている。この制御のチルト補償ブランチ(brach)は、特に多くの電力を消費する。
【0031】
従って、本発明は、チルト補償機構がオフに切り替えられることを可能にすることにより、以上に説明された従来技術に関連する問題を克服すると同時に、少なくともスポット位置を確実に維持する。
【0032】
ある実施例では、サーボ制御構成により提供される機能と無関係に、(半径)チルト補償機構だけが、連続する読み出し/記録動作の間の電力損失を低減するため、オフに切り替えられ得る。しかしながら、原則的には少なくとも、焦点及びディスクの半径トラッキングに影響しない如何なる機構も、連続する読み出し/記録動作の間にオフに切り替えられ得る。例えば、原則的に、両方のチルト値が連続する読み出し/記録動作の間でゼロに設定され得る場合、半径チルト及び接線のチルトの両方を補償するアクチュエーターが、設けられ得る。チルト補償機構(及び必要に応じて、如何なる他の機構)をオフに切り替える手段は、サーボ制御構成により提供される他の補償機構を制御するマイクロプロセッサーに組み込まれ得ることが望ましい。
【0033】
照射スポットが維持される又は照射スポットが戻る光記憶媒体上の位置は、有益なことに、前の読み出し/記録動作が終了した光記憶媒体上のアドレスと対応する。
【0034】
光ドライブシステムは、有益なことに、線源及びフォーカシング手段を有する光ピックアップ装置、光ピックアップ装置内又は光ピックアップ装置に取り付けられ、光ピックアップ装置の半径調整制御を実行するアクチュエーター、及び光ピックアップ装置の動きを制御し、光ピックアップ装置の半径進路制御を実行するスレッジモーターを有する。装置は、有益なことに、望ましくはチルト補償機構がオフに切り替えられた後に、スレッジモーター機能を無効にする手段を有する。
【0035】
好適な実施例では、照射スポットは、半径アクチュエーター電圧、及びより望ましくは平均半径アクチュエーター電圧測定値を用い、光記憶媒体上の同一の位置に維持され、又は戻る。従って、好適な方法では、チルト補償機構がオフに切り替えられる前に、平均半径アクチュエーター電圧は読み取られ、そして基準として設定される。チルト補償機構がオフに切り替えられると、平均半径アクチュエーター電圧は、1回以上、望ましくは周期的に再び読み取られる。読み取られた平均半径アクチュエーター電圧が基準より大きい場合、照射スポットは、有益なことに1トラックだけジャンプして戻る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の以上の及び他の態様は、以下に説明される実施例を参照した説明から明らかであろう。
【0037】
本発明の実施例は、例として以下の図を参照し説明される。
【0038】
本発明は、「パワーダウンを出る」保証されたタイミングを有するパワーダウンを決定する。これらのタイミング要件を満足するため、制御部は、システムを通常の電力供給モードから省電力モードへ切り替える。焦点及び光線のサーボループは、閉に保たれる。またチルトは、ゼロに低減される。つまりチルト補正機構は一時的に無効にされる。勿論、結果として生じる電力の削減は、チルト補償機構で浪費される電力に限られ、以上に説明されたような従来のパワーダウン機能における省電力より少ない。しかしながら、特にオーディオビジュアル用途では、サーボ制御のチルト補償ブランチは、特に比較的高いチルト値を有するディスクに対して、チルト補償ブランチにおける電力損失が非常に高いという意味で、電力損失の最も支配的な要因の1つである。別の考えは、例えばDVDからのMP3ファイルの再生は、システムを比較的長い時間の間、一時停止モードに維持させ得る。
【0039】
本発明のパワーダウンモードから読み出し/記録動作を比較的迅速に開始するため(及び読み出しスポットからディスクの外径へ逸れることを避けるため)、本発明の例である実施例において、レーザービームスポットが一時停止モードの開始されるセクターアドレスに到達する度に、照射スポットをジャンプさせ1トラック戻すことが提案される。しかしながら、チルト補償機構がオフに切り替えられるので、アドレス読み出しは信頼できない。従って、本願明細書により提供される解決案は、スレッジモーター制御部を無効にし、平均半径アクチュエーター電圧(つまり、放射サーボループによる制御される半径アクチュエーター制御部に印加される平均電圧)を利用し、ジャンプして戻る時を決定する。従って、アドレス読み出し機能は、もはや必要とされない。
【0040】
図3aを参照すると、本発明の例である実施例の「パワーダウンに入る」手順は以下の段階を有する。
a)平均半径アクチュエーター電圧Urを読み出す。Urref=Urを設定する。
b)チルト補償機構をオフに切り替える。チルトをゼロに設定する。
c)スレッジステッピングを無効にする。
d)平均半径アクチュエーター電圧Urを読み出す。
e)Ur>Urrefの場合、ジャンプして1トラック戻る。
f)如何なる起動コマンドも受信されない場合、d)へ行く。その他の場合、「パワーダウンを出る」。
【0041】
対応する「パワーダウンを出る」手順は、図3bを参照すると、以下を有する。
a)事前にチルト値を設定する。
b)(アドレス読み出しに基づき)(従来の)一時停止モードに入る。
【0042】
この「パワーダウンを出る」手順は、元のパワーダウン手順より明らかに非常に速い。そしてこの「パワーダウンを出る」手順は、オーディオビジュアル(AV)ドライブのような重要なリアルタイム要件を有するシステムにおいて安全に利用され得る。以上に説明されたジャンプしてトラックを戻る処理を実行する代わりに、単に半径ループを開始することが可能であることが明らかである。しかしながら、これは結果として過度の電力損失及び半径と焦点のクロストークによる雑音を生じる(つまり、半径方向のトラックの横断は、焦点の誤差信号において観察され、焦点制御ループにおいて擾乱として動作する)。
【0043】
本発明は、低減されたチルト、及び従って削減された電力損失を有するパワーダウン状態を提供する。パワーダウン状態は、(次の読み出し/記録動作の前提条件である)正しいアドレスにおいて、非常に迅速に一時停止モードへ戻され得る。アドレス読み出しの必要は、平均半径アクチュエーター電圧を利用しトラックジャンプを起こすことにより回避される。
【0044】
纏めると、従って、電力損失は、光学装置において重要な課題である。現在の光データドライブは、パワーダウン機能を備えている。このようなパワーダウン状態では、電力損失は非常に低いが、如何なる読み出し/記録動作もできない。新たな読み出し/記録コマンドを開始するため、ドライブは、先ず従来の構成では有意な時間長を要し得る「起動」を要求される(駆動装置を有効にする、サーボを初期化する、等が要求される)。データドライブでは、この起動時間は重要な課題ではない。しかし、ビデオレコーダー等のようなリアルタイム用途では、この起動時間は重要な課題である。従来のデータドライブのパワーダウン機構は、極めて厳しいリアルタイム要件を満たさないので、一般に例えばAV機器で利用されない。従って、本発明は、光学ドライブにおいて低電力状態を有効にし、次に「起動し」新たに受信した読み出し/記録コマンドを比較的迅速に処理する方法及び装置を提供する。この低減されたパワーダウン状態では、以上に説明されたように、チルト補償機構だけがオフに切り替えられる。(チルト補償がないために)信頼できないアドレス読み出しは、平均半径アクチュエーター電圧を用い、スポットを要求された固定位置に維持するために要求される単一のトラックジャンプを起こすことにより回避される。
【0045】
本発明は、中でもDVD又はブルーレイ(BD)ビデオプレーヤーのような用途とともに重要なリアルタイム要件及び条件を有する光ディスク装置における利用に特に適する。
【0046】
本発明は好適な実施例を参照して説明されたが、当業者には、特許請求の範囲に記載された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、説明された実施例に変形及び変更がされ得ることが明らかであろう。更に、請求項では、括弧内の如何なる参照符号も、請求項を制限すると見なされるべきではない。「有する」の表現は、請求項に記載された以外の構成要素又は段階の存在を排除するものではない。単数の表記は、複数を排除するものではない。複数の手段を列挙した装置の請求項では、これら複数の手段は、1つ及び同一のハードウェア要素により実施され得る。手段が相互に異なる独立請求項で引用されることは、これら手段の組み合わせが効果的に利用できないことを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】標準的な光データドライブを示す図である。
【図2】aは、従来技術による「パワーダウンに入る」機能を形成する基本的手順を説明するフロー図である。bは、従来技術による「パワーダウンから出る」機能を形成する基本的手順を説明するフロー図である。
【図3a】本発明の実施例の例による「パワーダウンに入る」機能を形成する基本的手順を説明するフロー図である。
【図3b】本発明の実施例の例による「パワーダウンを出る」機能を形成する基本的手順を説明するフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、連続する読み出し/記録動作の間に光ドライブシステムにおいて電力損失を低減し、前記システムは、線源、照射スポットをデータ記憶媒体上で読み出し/記録動作を実行するよう要求された位置に方向付けるフォーカシング手段、及び少なくとも1つのチルト補償機構を有するサーボ制御構成を有し、前記装置は、前記チルト補償機構をオフに切り替える手段、及び前記チルト補償機構が動作不能の間、前記照射スポットを前記光記憶媒体上の実質的に同一の位置に戻させる又は維持させる手段を有する、電力損失低減装置。
【請求項2】
前記サーボ制御構成は、焦点及び半径トラッキング機能を有する複数の補償機構を有し、及び前記保証機構の1つ以上は、前記焦点及び半径トラッキング機能を除き、連続する読み出し/記録動作の間の電力損失を低減するためにオフに切り替えられる、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記照射スポットが維持される又は前記照射スポットが戻る前記光記憶媒体上の位置は、有益なことに、前の読み出し/記録動作が終了した前記光記憶媒体上のアドレスと対応する、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
光ドライブシステムであって、線源、照射スポットをデータ記憶媒体上で読み出し/記録動作を実行するよう要求された位置に方向付けるフォーカシング手段、少なくともチルト補償機構を有するサーボ制御構成、及び請求項1乃至3の何れか1項記載の装置、を有する、光ドライブシステム。
【請求項5】
前記線源及びフォーカシング手段を有する光ピックアップ装置、及び前記光記憶媒体に関連し前記光ピックアップ装置の動きを半径方向に制御するスレッジモーター、及び前記スレッジモーター機能を無効にする手段を有する装置、を更に有する、請求項4記載の光ドライブシステム。
【請求項6】
前記スレッジモーター機能は、無効にされる、請求項5記載の光ドライブシステム。
【請求項7】
前記照射スポットは、半径アクチュエーター電圧測定値を用い、前記光記憶媒体上の同一の位置に維持される又は戻される、請求項4乃至6の何れか1項記載の光ドライブシステム。
【請求項8】
前記照射スポットは、平均半径アクチュエーター電圧測定値を用い、前記光記憶媒体上の同一の位置に維持される又は戻される、請求項7記載の光ドライブシステム。
【請求項9】
前記チルト補償機構がオフに切り替えられる前に、前記平均半径アクチュエーター電圧は読み出され及び基準として設定され、及び前記チルト補償機構がオフに切り替えられると、前記平均半径アクチュエーター電圧は、1回以上、再び読み出され、及び前記読み出された平均半径アクチュエーター電圧の値が前記基準に対し、ある所定の閾値より大きい絶対差分を有する場合、前記照射スポットは、前記光記憶媒体上で1トラック分だけジャンプして戻される、請求項8記載の光ドライブシステム。
【請求項10】
光データ記憶システムであって、請求項4乃至9の何れか1項記載の光ドライブシステムを有する、光データ記憶システム。
【請求項11】
方法であって、連続する読み出し/記録動作の間に光ドライブシステムにおいて電力損失を低減し、前記システムは、線源、照射スポットをデータ記憶媒体上で読み出し/記録動作を実行するよう要求された位置に方向付けるフォーカシング手段、及び少なくとも1つのチルト補償機構を有するサーボ制御装置を有し、前記方法は、前記チルト補償機構をオフに切り替える段階、及び前記チルト補償機構が動作不能の間、前記照射スポットを前記光記憶媒体上の実質的に同一の位置に戻させる又は維持させる段階を有する、電力損失低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2007−533059(P2007−533059A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507877(P2007−507877)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051079
【国際公開番号】WO2005/101402
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】