説明

電力系統事故波形データ検索装置、及び記録媒体

【課題】電力系統の事故原因を推定し対応策を見いだす作業は作業者の技量に頼って過去のデータを検索するために熟練技術者が行うとしても時間がかかる。
【解決手段】電力系統の事故の少なくとも事故波形データの分類結果が事故毎に蓄積されたデータベースを有するデータ格納部21と、検索の条件として指定される事故の少なくとも事故波形データの分類結果と合致するデータをデータ格納部21の分類済みデータ21bから検索するデータ検索部24とを備えた電力系統事故波形データ検索装置であって、データ格納部21に蓄積された分類済みデータ21bは、事故波形データが所定のルールに基づき分類された結果であり且つ指定される事故の現象に対応する電力系統の物理的条件に基づき区別されており、データ検索部24が分類済みデータ21bから検索する場合、指定される事故の現象に応じて検索対象を物理的条件に基づく区別を利用して絞り込んで検索する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力系統の例えば、電圧・電流波形データを集約してなる電力系統事故波形データベース、及び、その事故波形データベースを用いた電力系統事故波形データ検索装置等に関し、詳しくは、例えば、送電線・母線・変圧器の電圧・電流を計測して電気事故発生時に電圧波形や電流波形を記録する送配電系統に設置された記録装置(総合記録装置または自動オシログラフ装置または単にオシロという)にて記録された電圧・電流波形データを収集した送配電系統事故波形データベースシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
送配電系統には電力系統事故時の事故波形を波形データとして収集する記録装置(総合記録装置または自動オシログラフ装置または単にオシロという)が設置されていて、それには波形データだけではなく発電所名や変電所名のようなデータ収集場所名、データの収集日時、どの送・配電線路のデータかといった線路名称、各チャンネルのデータ毎に電圧波形か電流波形かの区別、データのサンプリング周波数、データサンプル数、各線路電圧のVT比、各線路電流のCT比、などが記録され、ネットワーク回線を経由してサーバー装置にデータ送信されている(これらのデータを以下「記録データ」または単に「データ」という)。
【0003】
一方、送・配電線保守部門の担当者は上記「記録データ」を見てどのような事故か(地絡か、短絡か)、事故はどの相か、事故継続時間はどの程度か、再送電は成功したか、事故箇所はどの辺りか、を確認してから事故発生現場に巡視・点検に向かう。
【0004】
電力系統の事故は雷撃、他物接触、劣化による絶縁破壊、雪害、地震・風水害による設備故障など様々な原因で発生する。事故時の電圧・電流波形は事故原因や電圧階級、中性点接地方式といった系統条件により様々な形となり、熟練技術者が過去の記憶を辿りながら事故原因を推定し、対応策を考えつつ事故巡視に向かうのが常である。
【0005】
一方、上位電力系統から電力が供給される負荷設備の分野では、その負荷設備に供給される電源の電圧・電流波形の高調波成分分析結果をデータベース化して蓄積し、類似の高調波成分が現れた場合に事故予兆として検出し、迅速に対応できるようにする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、これとは別に、回転機系の分野では、回転機の軸振動波形データを記憶してデータベース化し、事故予兆をいち早く検出する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−29003号公報
【特許文献2】特許第4373350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の電力系統の事故原因を推定し、対応策を見いだす作業は、熟練技術者でなければ行えず、その過去の事故データから必要なデータを探し出そうとする場合、その検索作業は作業者の技量に頼るところが大きく、また、たとえ熟練技術者が行うとしてもサーバー上の該当データをマニュアル操作で検索したり事故波形のタイプを判断したり事故原因を推定したりする作業には時間がかかるという課題を有していた。
【0009】
そこで、仮に、上記のように作業者の技量に頼ることなく作業を自動化しようとした場合、データを集めることは既存の技術でも実現でき、既存のデータベースソフトウエアを使用した場合、日付やデータ収集場所などの情報をキー(手掛かり)にして検索することは容易であるものの、波形の類似性といった曖昧な要件でデータ検索するにはそれを何らかの形で数値化し、その数値の取り得る範囲をキー(手掛かり)として検索することが必要である。
【0010】
よって、これらは汎用のデータベースシステムのみでは実現できるものではない。
【0011】
また、特許文献1に記載の高調波成分の計算方法では高速フーリエ変換処理が用いられており、あくまで特定の負荷設備の故障現象に対応したものであって、これを仮に、送配電系統の事故の原因の推定作業に適用しようとすると、対象となるデータ量が遥かに多くその実施形態のままでは使えない。
【0012】
また、特許文献2に記載の方法は、あくまで、回転機械の軸振動の異常発生初期の偶発的な異常振動現象を、振動振幅が小さくても確実に検知する技術を開示したものであり、多様性に富む電力送配電系統事故において、事故原因の推定などにこれをそのまま適用できるものではない。
【0013】
本発明は、この様な従来の電力系統事故における上記課題を考慮して、事故データの検索を迅速に行える電力系統事故波形データ検索装置、及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の発明は送配電系統で収集された事故波形データから設置場所の情報、電圧階級、中性点接地方式、系統容量、線路長、などの「送配電系統の物理的条件に関する情報」、データ記録日時、気象条件などの「データ収録時の環境条件に関する情報」、および、地絡事故か短絡事故か、事故は1線か2線か3線かといった事故の様相(以下事故様相という)、事故時の電圧値、電流値、波形の図形的特徴の分析結果などの「事故波形を分析して得られる情報」を波形データとともにデータベースとして記憶させ、それらのパラメータを元に過去の類似の事故波形を検索し、合わせて記録されている事故原因、復旧方法等の「事故後に調査して取得できる情報」を要領よく分類整理して、検索・表示させ、新たな事故データから事故原因を推定でき、過去の類似事故事例からそのときの事故対応の内容やその結果が判るようにすることであり、新たに収録された未経験な事故データに対してもそれを分析し、数値化して類似の波形データを素早く検索できるようにすることで、事故対応に活用できるシステムを構築するものである。
【0015】
課題を解決するための本願の発明の第1の要点は、電力系統における事故について、事故毎に事故波形データが所定のルールに基づいて分類された分類結果が、検索の条件として指定される事故の現象(例えば、短絡電流成分が含まれるか否か)に対応する、電力系統の物理的性質(例えば、電力系統の短絡容量の相違と中性点接地方式の相違)に基づいて区別され、格納されているデータ格納部と、前記データ格納部に格納されている少なくとも前記事故波形データの前記分類結果を検索対象として、検索の条件として指定される事故波形データの分類結果と合致するものを検索する場合、指定される事故の現象に応じて、検索対象を物理的性質に基づく区別を利用して検索対象を絞り込む(それが例えば短絡電流が流れた事故ならば短絡容量がほぼ同じ系統を対象に検索し、また、例えば短絡電流が流れてない事故ならば中性点接地方式が同じ系統を対象に検索するというように検索対象を絞り込む)検索部とを備えた点である。
【0016】
本願の発明者はデータを電力系統の物理的性質である系統の短絡容量や中性点接地方式で予め分類しておいて、一度に検索するデータ数を減らした上で、瞬時変化分、実効値変化分、低周波変動分を元に波形データを精査し、波形の特徴を抽出していく方法が、漫然と全データを対象にしてFFTや高調波分析するよりも効果的であることに気付き、個々に波形の特徴を分析する方法を考案したのである。
【0017】
本願の発明の第2の要点は
波形の図形的特徴分析において波形データのサンプル値、波形データから算出した1サンプル毎の差分(以下瞬時変化分という)、交流の1周期分のデータの移動平均的解析値から算出した実効値の変化(以下実効値変化分という)、および交流の1周期分のデータから算出したオフセット量の変化(以下波形の直流成分または低周波変動成分という)の各々の情報から、それらが特定のタイミングの範囲内に別途に定めた閾値を超えて変化したか否かの判定結果からパルス状波形や矩形波、鋸波、半波整流波形など、どのような特徴的な波形が含まれているかを判断したことである。
【0018】
波形の特徴分析には、特許文献2にあるようにフーリエ解析(FFT)が使われるのが一般的である。しかし、地絡や短絡といった電気事故が殆どの場合に電圧や電流波形の急変を伴い、かつ、その継続時間は大抵の場合、商用周波数の数サイクル(約100ms)間程度であるが、データは事故前数百msから事故後数百msまで記録されるのでデータ全体でFFTをおこなうのは無駄である。また、FFTの結果と波形の形状とは必ずしも一定の関係があるわけではなく、たとえば矩形波と単なる歪み波とをFFTの結果だけから区別することは困難である。
【0019】
本願の発明による装置(以下本願装置という)は、収集したデータを記憶するデータ格納部と、記憶されたデータの特徴を抽出する特徴抽出部と、抽出された特徴によってデータを分類するデータ分類部と、分類されたデータを検索する検索部と、検索条件を入力する端末装置と、検索結果を表示する表示装置とを備えている。
【0020】
本願装置のデータ格納部は、収集された事故波形データに付随して記録されている設置場所の情報、電圧階級、中性点接地方式、系統の短絡容量、線路長、などの「送配電系統の物理的条件に関する情報」と、データ記録日時、気象条件などの「データ収録時の環境条件に関する情報」と、事故様相、事故時の電圧値、電流値、波形の図形的特徴の分析結果などの「事故波形を分析して得られる情報」と、事故状況、事故原因、復旧方法などの「事故後に調査して取得できる情報」と、を各々の事故波形データ毎に格納している。
【0021】
また、上記「事故後に調査して取得できる情報」には、更に、事故の発生区間、事故による停電の区間、事故による保護リレーによる再閉路の成否、及び進展事故の有無の内、少なくとも一つが含まれている構成であっても良い。
【0022】
尚、ここで、事故による停電の区間とは、事故によって遮断器が開放され無電圧となっている区間のことをいう。
【0023】
また、事故による保護リレーによる再閉路の成否について以下に説明する。送電系統での事故とは送電中に変電所の遮断器が開放され停電区間が発生した場合をいい、事故には修理の必要な電気工作物の損壊を伴う事故以外に雷撃などによるアーク放電のみの事故もある。雷撃などで空気の絶縁破壊によって起こった事故の場合は変電所の遮断器を開放すると事故除去ができ、修理は不要であることが多い。その場合も含めて、保護リレーが動作して遮断器が開放された場合は一定時間後に自動的に再投入が実施される。これを再閉路という。このとき既に事故除去できていればそのまま送電再開となるが、これを再閉路成功といい、再度過電流などで遮断器が開放された場合は再閉路失敗という。架空線路の場合は約80%が雷撃事故であり再閉路成功の場合が多いが、まれに他物接触など修理の必要な事故もある。この場合は再閉路失敗となる。いわば再閉路失敗の場合が本当の事故なのでこの再閉路成否の結果の記録は事故の程度を認識する上で重要なデータとなる。
【0024】
また、「進展事故の有無」の意味について説明する。たとえば一線地絡事故の結果、事故相の対地電圧が零Vに近くなることで健全相の対地電圧が√3倍に上昇するとその相でも絶縁破壊が起こって二線地絡に進展することがある。当然三線地絡も有り得る。このように一線地絡が、二線地絡や三線地絡に進展した場合を進展事故という。事故原因の検討には最初の事故が何だったかが重要であるが、事故の被害がどの程度かの被害想定には最終状態での短絡電流がどの程度だったかなどの情報分析が必要で、複数の事故様相を含む複雑な事故か一事故様相のみの単純事故かは事故分析において重要な情報となる。
【0025】
本願装置の特徴抽出部はデータベースに新たなデータが追加される度にその波形の瞬時値データからその波形にパルス状波形成分、鋸波成分、矩形波成分、高調波成分、低周波振動成分、半波整流波形成分といった特徴のある波形の成分が含まれるか否かを判定し、また、その事故が一線地絡か、二線地絡か、三線地絡か、二線短絡か、三線短絡かといった事故様相を判定する。
【0026】
本願装置のデータ分類部は既に格納されているデータおよび、特徴抽出部で判定された特徴データに基づいてデータを分類し、データの選別や並べ替えをおこなう。
【0027】
本願装置のデータ検索部は新たな事故波形データ収集時に自動的に、もしくは利用者が端末装置から指示することによって、上記「送配電系統の物理的条件に関する情報」と、上記「データ収録時の環境条件に関する情報」と、上記「事故波形を分析して得られる情報」をもとに過去のデータを検索し、一致している情報要素の数が多い順にデータをソートし、各々に付随して記録されている上記「事故後に調査して取得できる情報」を表示装置に出力する。
【0028】
本願装置の以上の構成によれば、複雑かつ多様性に富んだ送配電系統の事故現象を事故波形やそれに付随して記録されているデータを分析・整理してデータベース化することで、送配電系統事故分析の未経験者でも即座に活用でき、事故対応の取れる情報を提供しうるデータベースシステムを構築出来る。
【0029】
また、上記構成によれば、膨大な事故データの中から、例えば、電圧・電流波形やリレー応動の特徴などを手掛かりに必要な事故のデータを素早く検索でき、また未経験の事故に対しても過去の類似事故データを容易に検索・表示できるデータベースシステムを提供出来る。
【0030】
これにより、事故原因の推定作業を自動化できる。即ち、例えば、サーバー装置に蓄積された記録データからデータベースを構築し、そのデータベースに格納されたデータの検索・比較・分類を行い、過去の類似の事故波形データを検索してそのときの事故状況、事故原因、事故対応やその結果を容易に抽出することが出来る。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、事故データの検索を迅速に行える電力系統事故波形データ検索装置、電力系統事故波形データ検索方法等を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置の構成を説明するためのブロック図
【図2】本実施の形態により分類される代表的な事故波形例(波形パターン)を示す図
【図3】本実施の形態の波形判定処理を説明するためのフロー図
【図4】本実施の形態の波形パターンの判定が実施された事故波形データのデータ格納部におけるデータベースの一構築例を示す概念図
【図5】本実施の形態のデータ格納部に格納される鋸波の一波形例
【図6】本実施の形態の鋸波の判定方法を説明するための鋸波の模式図
【図7】本実施の形態の鋸波の判定方法を説明するためのフロー図
【図8】本実施の形態の鋸波の波形と、そのサンプル毎の差分を同じグラフ上にプロットした差分波形とを示す図
【図9】本実施の形態における正常な交流波形(正弦波)と、そのサンプル毎の差分を同じグラフ上にプロットした差分波形とを示す図
【図10】本実施の形態のデータ格納部に格納される単発パルス波の一波形例
【図11】(a):本実施の形態の単発パルス波の判定方法を説明するための単発パルス波の一波形例、(b):図11(a)に示す単発パルス波の差分データと差分の絶対値を表した図
【図12】本実施の形態の単発パルス波の判定方法を説明するためのフロー図
【図13】本実施の形態の単発パルス波の波形と、そのサンプル毎の差分を同じグラフ上にプロットした差分波形とを示す図
【図14】本実施の形態のデータ格納部に格納される周期的なパルス波の一波形例
【図15】本実施の形態の周期的なパルス波の判定方法を説明するための周期的なパルス波の模式図
【図16】本実施の形態の周期的なパルス波の判定方法を説明するためのフロー図
【図17】(a):本実施の形態の間欠発振高調波の判定方法を説明するための間欠発振高調波の一波形例、(b):図17(a)に示す間欠発振高調波の差分データと差分の絶対値を表した図
【図18】本実施の形態の間欠発振高調波の判定方法を説明するためのフロー図
【図19】本実施の形態のデータ格納部に格納される部分的高調波の一波形例
【図20】本実施の形態の部分的高調波の判定方法を説明するための部分的高調波の模式図
【図21】本実施の形態の部分的高調波の判定方法を説明するためのフロー図
【図22】本実施の形態の部分的高調波の波形と、そのサンプル毎の差分(絶対値ではない)を同じグラフ上にプロットした差分波形とを示す図
【図23】(a)〜(d):本実施の形態のデータ格納部に格納される歪み波の波形例
【図24】本実施の形態の歪み波の判定方法を説明するための歪み波の模式図
【図25】本実施の形態の歪み波の判定方法を説明するためのフロー図
【図26】本実施の形態のデータ格納部に格納される低周波数成分重畳波形の波形例
【図27】本実施の形態の低周波数成分重畳波形の判定方法を説明するためのフロー図
【図28】本実施の形態のデータ格納部に格納される半波整流波形の一波形例
【図29】本実施の形態の半波整流波形の判定方法を説明するためのフロー図
【図30】(a):本実施の形態の半波整流波形の判定方法を説明するための半波整流波形の一波形例と、その差分値をプロットした差分波形とを示す図、(b):図30(a)に示す差分波形から計算した実効値/√2と相関値をプロットした図
【図31】本実施の形態の半波電圧欠落波形の判定方法を説明するためのフロー図
【図32】本実施の形態のデータ格納部に格納される事故前微少Vo・Io付波形の波形例
【図33】本実施の形態の事故前微少Vo・Io付波形の判定方法を説明するための周期的なパルス波の模式図
【図34】本実施の形態の事故前微少Vo・Io付波形の判定方法を説明するためのフロー図
【図35】本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置の表示部(図示省略)の検索画面の一例を示す図
【図36】(a)、(b):本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置の表示部に表示される検索項目の一例を示す図
【図37】本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置の表示部(図示省略)の検索画面の一例を示す図
【図38】本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置において検索にかけられた最近の某変電所での事故波形例
【図39】本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置において図38の波形例に類似するものとして検索されて抽出された過去の事故波形例1(事故原因は鳥獣接触)
【図40】本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置において図38の波形例に類似するものとして検索されて抽出された過去の事故波形例2(事故原因は鳥獣接触)
【図41】本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置において図38の波形例に類似するものとして検索されて抽出された過去の事故波形例3(事故原因は鳥獣接触)
【図42】本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置において検索にかけられた事故波形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態について以下に詳細に説明する。
【0034】
まず、図面を参照しながら、本発明の電力系統事故波形データ検索装置の一実施の形態としての電力系統事故波形データ検索装置の構成について説明する。
【0035】
尚、本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置は、本発明の電力系統事故波形データベース構築装置の一実施の形態でもある。
【0036】
図1は、本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置の構成を説明するためのブロック図である。
【0037】
図1に示す様に、波形記録装置10a、10b、10cは、例えば、変電所等の電力系統における、系統事故の発生前の状態から系統事故が終了するまでの一連の電圧・電流波形データを自動記録する装置(総合記録装置または自動オシログラフ装置または単にオシロという)であり、所定のネットワーク1(11)に接続されている。
【0038】
また、電力系統事故波形データ検索装置20は、上記電力系統における、例えば過去の事故波形データを後述する所定のルールで分類し、その分類結果を含む各種関連データをデータベースとして構築すると共に、そのデータベースに格納されているデータを検索対象として、例えば、少なくとも、過去の事故の波形データあるいは新たな事故の波形データと、合致するデータを検索して抽出する装置であり、上記ネットワーク1に接続されている。
【0039】
ここで、電力系統事故波形データ検索装置20の構成について更に説明する。
【0040】
電力系統事故波形データ検索装置20は、未分類データ21aと分類済みデータ21bと検索結果のデータ21cを格納するためのデータ格納部21と、未分類データ21aからデータの特徴を抽出し、データ分類部23へ出力する特徴抽出部22と、特徴抽出部22によって抽出されたデータの特徴に応じてデータを分類して分類済みデータ21bへ送るデータ分類部23と、分類済みデータ21bを利用してデータ検索を行い検索結果を検索結果のデータ21cへ送るデータ検索部24と備えている。データ分類部23は波形分類プログラム23aを備えており、データ検索部24はデータ検索プログラム24aを備えている。
【0041】
電力系統事故波形データ装置20は、上記ネットワーク1(11)に接続されたデータサーバー(図示省略)より送信されてくるオシロデータを、規定されたプロトコルに従い受信し、波形データとその他の各種関連データを未分類データ21aとしてデータ格納部21に保存する。
【0042】
データ分類部23は、分類済みデータ21bによるデータベースを構築する際には、波形分類プログラム23aを用いて、特徴抽出部22から送られてくる未分類の事故波形データを対象として分類し、その分類結果を分類済みデータ21bとしてデータ格納部21に格納する手段である。
【0043】
また、データ検索部24は、データ検索を行う際には、データ検索プログラム24aを用いて、上述の様にデータ格納部21に分類済みデータ21bとして既に格納されている事故データを検索対象として、所定条件に合致する事故データを効率的に抽出し、その抽出結果を検索結果のデータ21cとしてデータ格納部21に格納する手段である。
【0044】
また、Webアプリケーション26は、ネットワーク2(12)に接続された端末装置13a、13b等によるデータ検索などの要求に対して、データ格納部21に格納されている分類済みデータ21bのデータベースを検索対象として、データ検索部24に検索処理を行わせて、抽出された検索結果のデータ25を端末装置13a、13bに返信する手段である。
【0045】
以上の構成の下、次に、図面を参照しながら、電力系統事故波形データ検索装置20の動作を説明するとともに、本発明の電力系統事故波形データ検索方法の一実施の形態についても同時に説明する。
【0046】
ここでは、まず、(1)電力系統事故波形データベースを構築する場面を説明し、その後、(2)構築されたデータベースを活用する場面を説明する。
【0047】
(1)データベースの構築:
1−1)まず、電力系統事故波形データ検索装置20の使用者は、電力系統事故波形データ検索装置20に設けられている表示部の画面(図示省略)を見ながら、同装置20に接続されているキーボードやマウス等の入力端末部(図示省略)を操作することにより、すでに波形記録装置10a〜10cにより収集されている過去の全ての事故データに基づいた新たなデータベースの構築を指示する。
【0048】
使用者からの上記指示により、電力系統事故波形データ検索装置20は、ネットワーク1(11)に接続されているデータサーバー(図示省略)を介して、同ネットワーク1(11)に接続されている波形記録装置10a〜10cで事故毎に収集された「事故に関する各種データ」と、事故毎に記録された事故原因及び復旧方法等の「事故後に調査して取得された情報」を受信して、その受信データに含まれる波形データ及びその他のデータは、未分類データ21aとしてデータ格納部21に格納する。
【0049】
ここで、事故に関する各種データとしては、例えば、波形記録装置10の設置場所の情報、電圧階級、中性点接地方式、系統容量、及び線路長などの「送配電系統の物理的条件に関する情報」、データ記録日時、及び気象条件などの「データ収録時の環境条件に関する情報」、並びに、地絡事故か短絡事故か、事故は1線か2線か3線かといった事故の様相(以下事故様相という)、事故時の電圧値、及び電流値を含む波形データを含む。
【0050】
1−2)事故データなどの受信及び格納が完了すると、次は、特徴抽出部22が未分類データ21aから得たデータに対して特徴を抽出し、データ分類部23が、波形分類プログラム23aを用いて、特徴抽出部22から送られてくる各波形データに対して、波形の図形的特徴に着目して、何れの波形パターンに属するのかを決める分類処理を行う。本実施の形態の上記分類による代表的な波形パターンは、図2に示す様に、鋸波、単発パルス、周期的パルス、間欠発振型高調波、部分的高調波、ひずみ波形、低周波成分の重畳、半波整流波形、半波電圧欠落、及び、事故前微少Vo(零相電圧),Io(零相電流)付波形の10種類である。
【0051】
ここで、図2は、本実施の形態により分類される代表的な事故波形例(波形パターン)を示す図である。
【0052】
波形の図形的特徴の分析は、通常のデータベースシステムのソフトウエアのみでは実現できず、別途に図形の認識手法を検討し、それにしたがってデータベースソフトと相まって動作するアプリケーションソフトウエア(波形分類プログラム23a)を作成する必要が有る。
【0053】
そこで、本実施の形態の波形分類プログラム23aでは、図3に示す様に、波形の図形的特徴分析において、波形データから算出した1サンプル毎の差分(以下、瞬時変化分ともいう)の状態に着目した第1の波形判定処理(ステップS101)と、交流の1周期分のデータから算出したオフセット量の変化(以下、波形の低周波変動分ともいう)に着目した第2の波形判定処理(ステップS102)と、交流の一定周期分(図29と図31では1/2周期分の実効値と相関値を演算し、図34では、1/4周期分の実効値を演算している)のデータの移動平均的解析値から算出した実効値の変化(以下、実効値変化分ともいう)に着目した第3の波形判定処理(ステップS103)とを、波形データ毎にそれぞれ実施して、図4に示す様に、その判定結果(図4中では、「波形の図形的特徴の分析結果」として示した)を、一件の事故データに含まれる他のデータ(単に、他のデータとも呼ぶ)と対応させてデータ格納部21に分類済みデータ21bとして記録する(ステップS104)。
【0054】
全ての事故波形データについての波形判定処理が完了するまで、上記ステップS101〜S104が繰り返される(ステップS105)。全ての事故波形データについての波形判定処理が完了すると、次の処理動作へ進む。
【0055】
ここで、図3は、本実施の形態の波形判定処理を説明するためのフロー図である。図3に示す各ステップでの処理内容については、更に、後述する。
【0056】
また、図4は、過去の事故データに対して、波形パターンの判定が実施された事故波形データの分類済みデータ21bとして格納されたデータベースの一構築例を示す概念図である。
【0057】
ところで、本実施の形態の大きな特徴の一つは(第1の特徴)、データベースの構築処理、及び後述するデータ検索処理において、データベースソフトウエアに電力系統事故波形認識用ソフトウエア(上記、波形パターンの判定処理用のソフトウエア)を多数の事故波形を分析した経験的知識に基づいて作成しリンクさせたことである。
【0058】
これに対して、従来、波形の特徴分析には、上記特許文献1にあるようにフーリエ解析(FFT)が使われるのが一般的であった。しかし、本実施の形態の様に、データ件数が1万件〜数万件に達する場合、個々にあらゆる時間断面でFFTを行なうには時間が掛かりすぎる欠点がある。また、FFTの結果と波形の形状とは必ずしも一定の関係があるわけではなく、たとえば矩形波と単なる歪み波とをFFTの結果だけから区別することは困難である。
【0059】
更に、もう一つの特徴(第2の特徴)は、データ数が数万件と多くなった場合に無駄な検索を減らすために、データベースの構築において、事故波形データを、電力系統の物理的性質であるそれぞれの系統の短絡容量の違い及び、中性点接地方式の違いにより、予め複数種類に分類したことである。即ち、図4に示す様に、本実施の形態のデータ格納部21において構築した分類済みデータ21bとしての事故波形データベースは、それぞれの系統の短絡容量(1000MVA以上、1000MVA未満〜100MVA以上、100MVA未満〜10MVA、10MVA未満〜)の相違によって予め分類されており、且つ中性点接地方式(直接接地方式か、抵抗接地方式か、非接地方式かなど)の相異によって予め分類されている。この分類は、それぞれの系統の短絡事故(短絡電流が流れる2線以上の地絡事故を含む)時の現象が、それぞれの系統の短絡容量(背後インピーダンスともいう)に依存し、またそれぞれの系統の地絡事故時の現象が、それぞれの系統の接地抵抗値に依存して変わることに着目したものである。
【0060】
即ち、類似の事故波形データを検索する際に、データベースに蓄積されている全データを対象とした検索を行なうのは時間の無駄であるため、データベース構築時において、電力系統の物理的属性による事前の分類を行なっておくことは、後述する検索処理の時間短縮に効果的である。
【0061】
この様に、本願の発明者は、データベース構築に際し、データを電力系統の物理的性質である系統の短絡容量の違い、及び、中性点接地方式の違いで予め分類しておいて、例えば、新たに発生した事故波形データについて、データベースに蓄積された過去のデータと合致するデータの抽出処理を行う場合、次の様に処理する構成を考えた。
【0062】
即ち、まず、新たな事故の波形データに対して、瞬時変化分(第1の波形判定処理)、実効値変化分(第3の波形判定処理)、及び低周波変動分(第2の波形判定処理)を元に波形データを精査して波形パターンを決定し、且つ、その新たな事故において、短絡電流成分が流れていれば、系統の短絡容量の違いに着目して同一分類のデータを検索対象とし、地絡電流のみの場合は、系統の中性点方式の違いに着目して同一分類のデータを検索対象とする構成を考えた。
【0063】
例えば、雷撃によるAB相二線地絡事故は、A相とB相が共に鉄塔などとアーク閃絡を起こすが、地絡事故でありながらAB相間に大きな短絡電流が流れるので、これに類似する波形は、データベースに格納された全ての事故波形データの中から、系統の短絡容量が類似する範囲の系統の事故波形データを検索対象として検索する。この様に、事故の様相が分類上は地絡事故であっても、短絡電流成分が含まれているか否かによって、それぞれの電力系統の物理的性質の違いに応じて検索対象を決定している。尚、二線地絡事故以外に、三線地絡事故、異回線二線地絡事故、あるいは一線地絡事故から進展した二線地絡事故なども、分類上は地絡事故であるが、短絡電流が流れる。
【0064】
これにより、データベースにおける検索対象としてのデータ数を大幅に減らすことが出来るのである。そして、この様な構成によれば、従来の様に波形の特徴分析において、漫然とFFTや高調波分析するよりも効率的であることに気付き、個々に波形の特徴を分析する方法を構築したのである。これは地絡や短絡といった電気事故が殆どの場合に電圧や電流波形の急変を伴い各々独特の波形パターンを呈するという電気事故の特徴による。
【0065】
1−3)次に、上述した波形判定処理について更に説明する。
【0066】
1−3−1)第1の波形判定処理について:
波形記録装置10a〜10cから送られてくる事故波形データは、波形記録装置10a〜10cにおいて所定のサンプリング周期でサンプリングされた電圧・電流データ(アナログデータ)が、A/D変換されたデジタルデータである。従って、未分類データ21aとしてデータ格納部21に格納されている事故波形データの一例としては、例えば、図5に示すような、c相電圧波形が挙げられる。図6は、鋸波の判定方法を説明するために、鋸波を模式的に表した図である。図6では、縦軸がa〜c相の何れかの電圧を示し、横軸が時間である。ここで、図中の黒丸は、サンプリングの時点での電圧レベルを表している。
【0067】
以下、図2のNo.1〜No.6に示した鋸波〜ひずみ波形のそれぞれの波形パターンの判定方法について具体的に説明する。
【0068】
i)鋸波の判定方法について:
鋸波は、図6に示した通り、約1/2サイクル期間(図中、t1とt2の間隔に対応する)毎に、1サンプリング前のサンプル値との値が急変する時点(図中、t1、t2で示した)があり、急変の直後の1/4サイクル程度の期間(図中、t1とt2の間隔の約半分の間隔に対応する)は、電圧の値がほとんど零で変化がない。
【0069】
そこで、鋸波のこの様な変化特性に着目して、鋸波であるか否かの分類を行う。
【0070】
図6において、時間的に隣り合うサンプル値同士の差分の絶対値が、最初に所定の閾値Lを超えた時点(図6中のt1時点)と、その時刻t1から1/2サイクル後に閾値Lを超えた時点(図中のt2時点)との間で、サンプル値、差分の絶対値ともに閾値Lを超える前の時点(図中のt1時点の直前)での振幅値の例えば10%未満のサンプル値を示すサンプリング点を抽出し、横軸上でのその区間幅Twが1/8サイクルより大きければ,鋸波(もしくは定常時無入力の周期的パルス)と判断する。
【0071】
鋸波の判定方法は、以上の観点から定めたものであり、次に、図7を用いて、上記判定処理の流れを更に説明する。図7は、鋸波の判定方法を説明するためのフロー図である。
【0072】
即ち、図7に示す様に、事故波形データ毎に、データ格納部21から読み出された波形のデジタルデータについて、サンプリングの順番を示すサンプリング番号がkであるデータのサンプル値と、その1つ前(k−1)にサンプリングされたデータのサンプル値との差分の絶対値、即ち、|k番目のサンプル値−(k−1)番目のサンプル値|を求め(ステップS201)、求めた差分の絶対値が、波形分類プログラム23aに予め設定されている閾値Lより大きいか否かを判断する(ステップS202)。大きければ、ステップS203に進み、大きくなければ、ステップS206へ進む。
【0073】
尚、ステップS200では、後述する急変点の検出数Cに0を設定する。
【0074】
ステップS203では、ある差分の絶対値が閾値Lを超えた時点(図6のt1時点)の直後以降において計測される差分の絶対値が、閾値Lを超える前の時点(図6のt1時点の直前)での振幅値の例えば10%未満となるサンプリング点が、1/8サイクル期間以上連続するか否かを判定し、連続すればステップS204へ進み、連続しなければステップS206へ進む。
【0075】
尚、ここで、閾値Lの決め方について説明する。
【0076】
即ち、閾値Lは記録データ上の最高振幅の正弦波が入力された時の差分値の最大値+検出マージンである。差分値の最大値は正弦波の微分をとることによって求められる。
【0077】
fsをサンプリング周波数、Vpを記録データの最大値とすると、次式Aが成立する。
【0078】
d/dk(Vp×sin(ωk/fs))=Vp × ω/fs × cos(ωk/fs)・・・・・式A
この最大値は Vp × ω/fs となる。
【0079】
ここで、ωは、系統周波数をfc(50 or 60 Hz)とすると、ω=2πfcであるので、この最大値は、Vp ×2πfc /fsとも表される。
【0080】
つまり、閾値L =Vp × 2πfc /fs+検出マージン
として決めることが出来る。
【0081】
ステップS204では、更に、差分の絶対値が閾値Lを超えた時点(図6のt1時点)から、1/2サイクル期間の後で、再び閾値Lを超えるサンプリング点が存在するか否かを判定し、存在すればステップS205へ進み、無ければステップS206へ進む。
【0082】
ステップS205では、急変点の検出数Cに1をプラスし、次のサンプリング対象となるサンプリング番号に、1/2サイクル期間におけるデータのサンプリング数をプラスして、ステップS206へ進み、サンプリング番号kを1増やす。
【0083】
ステップS207では、サンプリング番号kが、この判定フローにおいて判定対象となった波形データを構成する全てのデータ数(全てのサンプリング数に対応)に達したか否かを判定し、達していなければ、ステップS201に戻って、再びステップS201以降の処理を繰り返し、達しておれば、ステップS208へ進む。
【0084】
ステップS208では、急変点の検出数Cが3を超えているか否かを判定し、超えておれば、ステップS209へ進み、判定対象の波形データを「鋸波」に分類する。また、超えていなければ、ステップS210へ進み、「鋸波」ではないと判断して、後述する次の波形判定処理へ進む。
【0085】
尚、図8において、鋸波の波形101とそのサンプル毎の差分(絶対値ではない)を同じグラフ上にプロットした差分波形101dを示す。また、参考として、正常な交流波形(正弦波)102とそのサンプル毎の差分を同じグラフ上にプロットした差分波形102dを図9に示す。
【0086】
ii)単発パルスの判定方法について:
次に、図10に示す様な単発パルス波の判定方法について、図11、12を参照しながら説明する。
【0087】
ここで、図10は、縦軸をVo電圧、横軸を時間として表した単発パルス波の波形例であり、図11(a)は、単発パルス波の判定方法を説明するために、単発パルス波を模式的に表した図である。図11(a)の縦軸は例えばVo電圧、横軸は時間を表しており、図11(b)の縦軸は、図11(a)に示した波形データにおける時間的に隣り合うサンプル値同士の差分値(電圧)であり、横軸は時間を表している。そして、図11(b)では、差分データを◆の点で示して破線で繋ぎ、その差分の絶対値を●の点で示して実線で繋いだ。尚、図11(b)では、差分値をプロットする時点を、その差分が生じた時点の一つ前のサンプリング点に表示したが、双方の時点を一致させて表してもよいことは言うまでもない。
【0088】
また、図12は、単発パルス波の判定方法を説明するためのフロー図である。
【0089】
図12に示す様に、単発パルス波形の検出方法は次の手順で行なう。
1)ステップS301では、未分類データ21aから読み出された、例えば図11(a)に示した様な波形データにおいて、サンプリングの順番に従って、即ち波形データの先頭部より順に、予め全てのサンプリングデータに対して差分値を求めておく(図11(b)参照)。
2)ステップS302では、データの先頭部よりサンプリングの順にその差分の絶対値が特定の閾値(Lとする)より大きいかどうかを調べる。大きい場合は、ステップS303へ進み、大きくない場合は、ステップS309へ進む。
【0090】
尚、図12では、サンプリング番号k、k’に対応する時刻(又は時点)を、tk、tk’(k、k’は1以上の整数であり、k<k’)と表した。
【0091】
図11(b)では、閾値Lが、約3.8kVに設定されており、tk時点で差分の絶対値が閾値Lより大きいことを検出した後、ステップS303へ進む。
3)ステップS303では、差分の絶対値が特定の閾値Lを超えた後、その時刻(図11(b)では、tk時点)から後方で差分値の符号が変わる点を見つける。
【0092】
図11(b)では、差分値の符号がプラス値であったtk時点の後、tk’時点において差分値の符号がマイナス値に変わっている。
4)ステップS304では、ステップS302とステップS303で得られたtk時点とtk’時点における波形データの電圧値の平均振幅値を求める(変化50%位置)。
【0093】
図11(a)では、平均振幅値は約12kVを示している。
5)ステップS305では、差分の絶対値が閾値Lを超えた時刻であるtk時点(図11(b)参照)以降において、波形データの振幅値がステップS303で求めた「変化50%位置」をクロスする点(図11(a)のtc時点に対応)を求め、ステップS303で求めたtk’時点との時間差tw(ms)を求める。
【0094】
図11(a)では、tc時点として示した。
6)ステップS306では、ステップS305で求めた時間差twが、特定の閾値(T(ms)とする)以上であるか否かを判定して、T(ms)以上であればパルスではないと判断してステップS309へ進み、T(ms)未満であればステップS307へ進む。
7)ステップS307では、ステップS304で求めた「変化50%位置」をクロスする点(図11(a)のtc時点に対応)以降において、予め設定された設定サイクル以上の期間で、閾値Lより大きい差分値がないかどうか探し、無ければステップS308へ進み、あればステップS309へ進む。
8)ステップS308では、判定対象の波形データを「単発パルス」として分類処理し、その後、後述する次の波形判定処理へ進む。
9)ステップS309では、サンプリング番号kを1増やす。
10)ステップS310では、サンプリング番号kが、この判定フローにおいて判定対象となった波形データを構成する全てのデータ数(全てのサンプリング数に対応)に達したか否かを判定し、達していなければ、ステップS302に戻って、再びステップS302以降の処理を繰り返し、達しておれば、ステップS311へ進み、「単発パルス」ではないと判定して、後述する次の波形判定処理へ進む。
【0095】
尚、図13において、単発パルス波の波形301とそのサンプル毎の差分(絶対値ではない)を同じグラフ上にプロットした差分波形301dを示す。
【0096】
iii)周期的パルスの判定方法について:
次に、図14に示す様な周期的パルス波の判定方法について、図15,16を参照しながら説明する。
【0097】
尚、周期的パルス波形とは,本来の交流波形に一定の間隔で周期的にパルス状の波形が重畳された形の波形である。電力系統の入力信号は交流であり、電圧の高くなった時点でアーク放電が起こりやすいので、周期的パルス波形は交流波形の1サイクルもしくは0.5サイクル毎のように電源波形に同期した形で見受けられることが多い。
【0098】
ここで1サイクルとは、計測する系統周波数の1周期の時間に相当し,50Hzであれば,1/50秒=0.02秒=20ms,60Hzであれば,1/60秒≒0.016666…秒=16.666666…msに相当する。
【0099】
図14では、1サイクル間隔で周期的なパルス状の波形が重畳された波形例を示しており、縦軸をVc電圧、横軸を時間として表した。
【0100】
また、図15は、周期的パルス波の判定方法を説明するために、1/2サイクル間隔で周期的なパルス状の波形が重畳された周期的パルス波を模式的に表した図であり、縦軸は例えばVc電圧、横軸は時間を表している。また、図16は、周期的パルス波の判定方法を説明するためのフロー図である。
【0101】
図16に示す様に、周期的パルス波形の検出方法は次の手順で行なう。
1)ステップS401では、ステップS301と同様に、未分類データ21aから読み出された、例えば図14に示した様な波形データにおいて、サンプリングの順番に従って、即ち波形データの先頭部より順に、予め全てのサンプリングデータに対して差分値を求めておく。
2)ステップS402では、データの先頭部よりサンプリングの順にその差分の絶対値が特定の閾値(Lとする)より大きいかどうかを調べる。大きい場合は、ステップS403へ進み、大きくない場合は、ステップS410へ進む。
【0102】
尚、図16では、サンプリング番号k、k’、k’’に対応する時刻(又は時点)を、tk、tk’、tk’’(k、k’、k’’は1以上の整数であり、k<k’≦k’’)と表した。
3)ステップS403では、差分の絶対値が閾値Lを超えた時刻をt1として、区間[t1、t1+1/4サイクル期間]において、
i)差分値の符号が変化する時刻t1’を求めるとともに、
ii)時刻t1での差分値の符号と逆の符号の差分値であって、且つその絶対値が閾値Lを超える時刻t1’’を求める。
【0103】
尚、図15に示す波形データでは、t1’=t1’’となる場合の波形例を示した。
4)ステップS404では、時刻t1’での波形データのサンプリング値と、時刻t1’’での波形データのサンプリング値との差分の絶対値を求め、その求めた絶対値が所定の設定値L’より大きく、且つ、時刻t1’’が存在しているとの条件を満たすか否かを判定し、その条件を満たす場合はステップS405へ進み、満たさない場合はステップS410へ進む。
【0104】
本願明細書での、閾値Lと設定値L’の違いについて説明する。
【0105】
閾値Lは、各検出手法共通の値で,正弦波と違う波形を検出したい時に使う値の意味合いで用いた用語である。一方設定値L’は、「パルスのピークの値」と「パルス検出点の値」との差分との比較に用いており、パルスのピーク値の判断に用いる閾値という意味合いの用語である。
5)ステップS405では、時刻t1から1/2サイクル期間が経過した後において、その絶対値が閾値Lを超える差分値が存在するか否かを判定し、存在する場合はステップS406へ進み、存在しなければステップS410へ進む。
6)ステップS406では、ステップS405において存在が確認されたその差分値に対応する時刻をt2として、区間[t2、t2+1/4サイクル期間]において、
i)差分値の符号が変化する時刻t2’を求めるとともに、
ii)時刻t2での差分値の符号と逆の符号の差分値であって、且つその絶対値が閾値Lを超える時刻t2’’を求める。
【0106】
図15に示す波形データでは、t2’=t2’’となる場合の波形例を示した。
7)ステップS407では、ステップS404と同様に、時刻t2’での波形データのサンプリング値と、時刻t2’’での波形データのサンプリング値との差分の絶対値を求め、その求めた絶対値が所定の設定値L’より大きく、且つ、時刻t2’’が存在しているとの条件を満たすか否かを判定し、その条件を満たす場合はステップS408へ進み、満たさない場合はステップS410へ進む。
8)ステップS408では、区間[t1’’、t2]において、所定の閾値L2を超える差分値が存在しないかどうかを調べ、存在しなければステップS409へ進み、存在すればステップS410へ進む。
9)ステップS409では、判定対象の波形データを「周期パルス(1/2サイクル間隔)」に分類処理し、その後、後述する次の波形判定処理へ進む。
10)ステップS410では、サンプリング番号kを1増やす。
11)ステップS411では、サンプリング番号kが、この判定フローにおいて判定対象となった波形データを構成する全てのデータ数(全てのサンプリング数に対応)に達したか否かを判定し、達していなければ、ステップS402に戻って、再びステップS402以降の処理を繰り返し、達しておれば、ステップS412へ進み、ステップS412では、「周期パルス」ではないとして処理する。
12)さらに、図16に示す判定フローのステップS405における判定条件である「1/2サイクル」を「1サイクル」に代えた点を除いて上記ステップS401〜S412と同様の判定処理をして得られた判定結果との論理和をとったものを最終的な判定結果とする。これにより、図14に示した1サイクル間隔で周期的なパルス状の波形が重畳された波形例についても、「周期的パルス波」として正しく判定できる。その後、後述する次の波形判定処理へ進む。
【0107】
尚、閾値Lの値は、正常時における要素の最大値を振幅とした正弦波が理論上とりうる最大の差分の値とする。
【0108】
iv)間欠発振高調波(周期的発振)の判定方法について:
次に、図17(a)に示す様な間欠発振高調波の判定方法について、図17(a)、図17(b)、図18を参照しながら説明する。
【0109】
ここで、図17(a)は、間欠発振高調波の判定方法を説明するための波形例であり、図17(b)は、図17(a)の波形データにおける時間的に隣り合うサンプル値同士の差分値(電圧)を表した図である。図17(b)では、差分データを◆の点で示して破線で繋ぎ、その差分の絶対値を●の点で示して実線で繋いだ。
【0110】
また、図18は、間欠発振高調波の判定方法を説明するためのフロー図である。
【0111】
図18に示す様に、間欠発振高調波波形の検出方法は次の手順で行なう。
1)ステップS501では、未分類データ21aから読み出された、例えば図17(a)に示した様な波形データにおいて、サンプリングの順番に従って、即ち波形データの先頭部より順に、予め全てのサンプリングデータに対して差分値を求めておく(図17(b)参照)。また、サンプリング番号kに対して0を設定し、検出数Cに対して0を設定する。
2)ステップS502では、データの先頭部よりサンプリングの順にその差分の絶対値が特定の閾値(Lとする)より大きいかどうかを調べる。大きい場合は、ステップS503へ進み、大きくない場合は、ステップS506へ進む。
【0112】
尚、図18では、サンプリング番号kに対応する時刻(又は時点)を、tk(kは1以上の整数である)と表した。
3)ステップS503では、差分の絶対値が閾値Lを超えた時刻をt1として、区間[t1、t1+1/2サイクル期間]において、差分の絶対値が閾値Lを超えた後、差分値の符号が変化する点(n)をカウントする。
【0113】
また、差分値の符号最終変化点を時刻te(又は時点te)とする。ここで、差分値の符号最終変化点は、時刻teの後、1/10サイクル期間より長い間、差分値の符号が無変化という条件で決定する。
【0114】
図17(b)では、閾値Lが縦軸メモリの4に設定されており、差分の絶対値が閾値Lを超えるt1の時点、t1+1/2サイクル期間の時点、及び、teの時点を示した。
4)ステップS504では、ステップS503で求めた値から、te−t1の期間が、交流波形の数サイクル(別途に設定するサイクル数)より大きいか否かを調べて、大きければステップS505へ進み、未満なら間欠ではなく普通の高調波と判断して、ステップS506へ進む。
5)ステップS505では、検出数Cを1増やし、サンプリング番号kに対して、時刻teに対応するサンプリング番号を代入する。
6)ステップS506では、サンプリング番号kを1増やす。
7)ステップS507では、サンプリング番号kが、この判定フローにおいて判定対象となった波形データを構成する全てのデータ数(全てのサンプリング数に対応)に達したか否かを判定し、達していなければ、ステップS502に戻って、再びステップS502以降の処理を繰り返し、達しておれば、ステップS508へ進む。
8)ステップS508では、検出数Cに関して、設定で決まる回数以上で成立すれば(例えば、1事故波形中に3回とか5回とか、要するに単発のノイズではないことを判定できれば良い)、ステップS509へ進み、判定対象の波形データを「間欠発振高調波」であると判断する。一方、成立しなければ、ステップS510へ進み、「間欠発振高調波」ではないと判断する。
【0115】
その後、後述する次の波形判定処理へ進む。
【0116】
v)部分的高調波の判定方法について:
次に、図19に示す様な事故の先頭部分で発生する部分的高調波の判定方法について、図20、21を参照しながら説明する。
一般に高調波といえば,DFT(Discrete Fourier Transform)などの周波数領域で高周波を求めるものが一般的であるが,本願では波形の特徴を利用して検出する。日本の電力系統で観測される高調波でもっともよくみられる第5次の高調波(基本波の5倍の周波数)を検出するため、図19におけるAサイクル(高調波発生部分の商用周波のサイクル数),B回(Aの区間における波形の傾きの符号の変化回数)の値はB/A=5×2が成立する値とする。
【0117】
ここで、図20は、部分的高調波の判定方法について説明するための波形例を模式的に表した図であり、縦軸は例えば波形データの振幅であり、横軸は時間を表している。また、図21は、部分的高調波の判定方法を説明するためのフロー図である。
【0118】
図21に示す様に、部分的高調波の検出方法は次の手順で行なう。
1)ステップS601では、ステップS301と同様に、未分類データ21aから読み出された、例えば図20に示した様な波形データにおいて、予め全てのサンプリングデータに対して差分値を求めておく。
2)ステップS602では、サンプリング番号kが、この判定フローにおいて判定対象となった波形データを構成する全てのデータ数(全てのサンプリング数に対応)に達したか否かを判定し、達していなければステップS603へ進む。一方、達しておれば、ステップS609へ進み、高調波・部分的発振なしとの判定処理を行い、後述する次の波形判定処理へ進む。
3)ステップS603では、差分の絶対値が閾値Lより大きいか否かを調べ、大きければステップS605へ進み、大きくなければステップS608へ進む。
4)ステップS604では、差分の絶対値が閾値Lを超えた時刻t1(波形データの先頭部からkサンプル目に対応)から、Aサイクル期間内(例えば、判定対象の波形データの○○サイクル期間内)において、差分の符号が変化する回数を数えて、ステップS605へ進む。
5)ステップS605では、ステップS604でカウントされた符号の変化回数がB回(例えば、20回)以上であり、且つ符号の変化点の間隔がTc(ms)(例えば、50ms)以内であるとの条件を満たすか否かを調べ、満たす場合はステップS606へ進み、満たさなければステップS607へ進む。
6)ステップS606では、判定対象の波形データが「部分的高調波」であるとの判定処理を行い、その後、後述する次に波形判定処理へ進む。
7)ステップS607では、サンプリング番号kに対して、時刻t1から設定サイクル期間以内(Tc(ms)以内)において、最後に符号が変化した時点に対応するサンプリング番号を代入して、ステップS608へ進む。
8)ステップS608では、サンプリング番号kを1増やし、ステップS602へ戻る。
【0119】
尚、図22において、部分的高調波の波形601と、そのサンプル毎の差分(絶対値ではない)を同じグラフ上にプロットした差分波形601dを示す。
【0120】
vi)ひずみ波形の判定方法について:
次に、図23(a)〜(d)に示す様なひずみ波形の判定方法について、図24、25を参照しながら説明する。
【0121】
ここで、図24は、ひずみ波形の判定方法について説明するための波形例を模式的に表した図であり、縦軸は例えば波形データの振幅であり、横軸は時間を表している。また、図25は、ひずみ波形の判定方法を説明するためのフロー図である。
【0122】
尚、ひずみ波形の抽出はひずみ波抽出フィルタを用いて行なう。ひずみ波抽出フィルタは、矩形波抽出フィルタの前段部分と、歪み波を取り除く部分を組み合わせたものである。
【0123】
図25に示す様に、ひずみ波の検出方法は、次の手順で行なう。
1)ステップS701では、サンプリング番号kが、この判定フローにおいて判定対象となった波形データを構成する全てのデータ数(全てのサンプリング数に対応)を超えたか否かを判定し、超えていなければステップS702へ進む。一方、超えておれば、この判定処理は終了して、後述する次の波形判定処理へ進む。
2)ステップS702では、差分の絶対値が閾値Lを超える時刻t1と、その時刻t1から1/2サイクル期間経過した以降での差分の絶対値が閾値Lを超える時刻t2とを求めて、ステップS703へ進む。
3)ステップS703では、ステップS702において、時刻t1と、時刻t2とがともに存在するかどうかを判断して、存在すればステップS704へ進み、存在しなければステップS707へ進みサンプリング番号kを1増やし、ステップS701へ戻る。
4)ステップS704では、時刻t1からt2の間で、波形データの最大の振幅値をとる時刻tmaxを求め、その時刻tmaxとt1との間が所定の閾値(1/8サイクル期間)以上であるとの条件を満たすか否かを調べ、その条件を満たせばステップS705へ進み、満たさなければステップS707へ進む。
5)ステップS705では、判定対象の波形データが「ひずみ波形」であるとの判定処理を行い、ステップS706へ進む。
6)ステップS706では、サンプリング番号kに対して、時刻t2に対応するサンプリング番号を代入して、ステップS701へ戻る。
【0124】
1−3−2)第2の波形判定処理について:
ここでは、図2のNo.7に示した低周波数成分が重畳された場合の波形パターンの判定方法について具体的に説明する。
【0125】
i)低周波数成分重畳波形の判定方法について:
次に、図26に示す様な低周波数成分が重畳された波形例801〜803などの判定方法について、図27を参照しながら説明する。
【0126】
ここで、図27は、低周波数成分重畳波形の判定方法を説明するためのフロー図である。
【0127】
低周波数成分重畳波形の検出は次の方法で行なっている。
まず交流波形の1サイクル分の平均値を求める。交流の平均値といえば一般には絶対値化された後の平均値をいうが、ここでは重畳した低周波数成分を検出するのが目的であるので単純な平均値をいうものとする。即ち、単純に1サイクル分の移動平均をとることによって低周波数成分を求め,ある閾値Lをこえる部分が連続で2サイクル以上あるときに、低周波数成分ありと判定する。
【0128】
より具体的には、低周波数成分重畳波形の検出方法は、図27に示す様な手順で行なう。
1)ステップS801では、後述するカウンタC、最大連続カウンタCmaxなどの変数を初期化して、ステップS802へ進む。
2)ステップS802では、サンプリング番号kが、判定対象の波形データを構成する全てのデータ数(全てのサンプリング数に対応)から1サイクル期間あたりのデータ数を差し引いた結果得られるデータ数より小さいか否かを判定し、小さければステップS803へ進み、小さくなければ、ステップS810へ進む。
3)ステップS803では、サンプリング番号kに対応する時点から1サイクル期間までの波形データの振幅値の単純な平均値M[k,k+1サイクル]を求め、ステップS804へ進む。
4)ステップS804では、平均値M[k,k+1サイクル]の絶対値|M|が、閾値Lを超えているか否かを調べ、超えている場合はステップS805へ進み、超えていない場合はステップS807へ進む。
5)ステップS805では、閾値Lを超えた回数をカウントするカウンタCを1増やし、ステップS806へ進む。
6)ステップS806では、サンプリング番号kを1増やし、ステップS802へ戻る。
7)ステップS807では、カウンタCの値が、最大連続カウンタCmaxの値より大きいか否かを調べ、大きい場合はステップS808へ進み、大きくない場合はステップS809へ進む。ここで、最大連続カウンタCmaxは、ステップS804〜S805、及び、ステップS808〜S809等の働きにより、カウントCが連続して1ずつ増加する場合における最大のカウント数を記録することが出来る。
8)ステップS808では、最大連続カウンタCmaxに対して、カウンタCの値を代入して、ステップS809へ進む。
9)ステップS809では、閾値を超えたことをカウントするカウンタCに0を代入して、ステップS806へ進む。
10)ステップS810では、最大連続カウンタCmaxの値がNサイクル(例えば、2サイクル)以上に相当するとの条件を満たすか否かを調べ、満たす場合はステップS811へ進み、判定対象の波形データが、「低周波数成分重畳波形」であるとの判定処理を行い、後述する次の波形判定処理へ進む。一方、満たさない場合はステップS812へ進み、判定対象の波形データが、「低周波数成分重畳波形」ではないとの判定処理を行い、後述する次の波形判定処理へ進む。
【0129】
尚、本発明の「オフセット量の変化の情報」に基づいて分類することの一例が、ステップS810で、最大連続カウンタCmaxの値がNサイクル(例えば、2サイクル)以上に相当するか否かを判定して低周波成分の有無を判別する動作に対応している。
【0130】
1−3−3)第3の波形判定処理について:
ここでは、図2のNo.8〜No.10に示した半波整流波形〜事故前微少Vo、Io付波形のそれぞれの波形パターンの判定方法について説明する。
【0131】
i)半波整流波形の判定方法について:
ここでは、図28に示す様な、半波整流波形の波形例901〜903等の判定方法について、図29、30(a)、(b)を参照しながら説明する。
【0132】
図29は、半波整流波形の判定方法を説明するためのフロー図である。図30(a)は、判定対象となった半波整流状の波形例904と、その波形データの差分値を■でプロットした差分波形グラフ905を示す図であり、図30(b)は、図29の説明に用いる図である。図30(b)では、実効値/√2を◆でプロットした実効値グラフ906と、1/2サイクル期間において差分データ×cosωtの和をとって平均し絶対値をとった値を■でプロットした相関値グラフ907を示す。ここで、ωは、判定対象となった波形(例えば、波形例904)の角速度である。
【0133】
図29に示す様に、半波整流波形の検出は次の手順で行なっている。
1)ステップS901では、データ格納部21の未分類データ21aから読み出された、例えば、図28に示す様な波形データ(図30(a)の◆でプロットした波形例904参照)において、予め全てのサンプリングデータに対して1つ前のデータとの差分をとる処理を行う(微分をとるようなもの)(図30(a)の■でプロットした差分波形グラフ905参照)。
2)ステップS902では、図27のステップS802と同様、サンプリング番号kが、判定対象の波形データを構成する全てのデータ数(全てのサンプリング数に対応)から1サイクル期間あたりのデータ数を差し引いた結果得られるデータ数より小さいか否かを判定し、小さければステップS903へ進み、小さくなければ、ステップS913へ進み、判定対象の波形データは「半波整流波形」ではないと判定処理して、後述する次の波形判定処理へと進む。
3)ステップS903では、ステップS901で算出した差分データの1/2サイクル分の実効値を計算する。(図30(b)の第1のグラフ906参照)
即ち、例えば、図30(b)の第1のグラフ906で示された最も左端(サンプリング番号k=1の差分データに対応)の◆の点906[t1]の実効値を求める場合について説明する。この場合、図30(a)の差分波形グラフ905において、横軸の最も左端の■の点905t1と、その点から、差分波形グラフの1/2サイクル期間だけ右に移動した点905[t1+1/2サイクル]との間にある全ての差分値の二乗の平均値の平方根を計算することによって求める。尚、サンプリング番号kが順次増加するに従って、実効値を計算する期間としての1/2サイクルの期間は、図30(a)の横軸の右方向へ順次移動することになる。
4)ステップS904では、ステップS901で算出した差分データの1/2サイクル期間において、差分データ×cosωtの和をとって平均し、絶対値をとる。(図30(b)の相関値グラフ907参照)
5)ステップS905では、ステップS903で求めた実効値/√2と、ステップS904で求めた「差分データ×cosωt」(相関値)との差が、所定値A未満であるか否かを調べ、未満であればステップS906へ進み、未満でなければステップS912へ進む。
【0134】
即ち、図30(b)では、実効値/√2と、「差分データ×cosωt」とがほぼ同じになるタイミングを各サンプリングで探し、○で囲んだ5つの領域Ra〜Reとして示した。
6)ステップS906では、ステップS905で両者の差が所定値A(図30(b)では、ほぼ0)未満であると判定された時のサンプリング番号kより前の1/2サイクル期間と、k+1/2サイクル期間の後の1/2サイクル期間における差分データの実効値をそれぞれ計算する。
7)ステップS907では、ステップS906で求めた、前の1/2サイクル期間における差分データの実効値と、後の1/2サイクル期間における差分データの実効値とが、双方とも所定値B(図30(b)では、ほぼ0)未満であるか否かを調べ、未満であればステップS908へ進み、未満でなければステップS912へ進む。
【0135】
尚、図30(b)では、サンプリング番号kの差分データに対応する点906[tk](ステップS905の条件を満たす点)の前の1/2サイクル期間における差分データの実効値を示す点(同図の領域Rf参照)と、後の1/2サイクル期間における差分データの実効値を示す点(同図の領域Rg参照)との双方がほぼ0(所定値Bの一例)であるので、ステップS907の条件を満たすことが分かる。
8)ステップS908では、半波整流検出カウンタを1増やして、ステップS909へ進む。
9)ステップS909では、半波整流検出カウンタの値が2以上であるか否かを調べ、2以上であればステップS910へ進み、判定対象波形データが「半波整流波形」であるとの判定処理をして、後述する次の波形判定処理へ進む。一方、2以上でなければステップS911へ進む。
10)ステップS911では、サンプリング番号kを1/2サイクル分増やし、ステップS912へ進む。
11)ステップS912では、サンプリング番号kを1増やし、ステップS902へ戻る。
【0136】
ii)半波電圧欠落の判定方法について:
ここでは、図2のNo.8の波形例の欄に示す様な波形に対する半波電圧欠落波形の判定方法について、図31を参照しながら説明する。
【0137】
図31は、半波電圧欠落波形の判定方法を説明するためのフロー図である。尚、判定対象となる波形は、電圧要素のみである。
【0138】
図31に示す様に、半波電圧欠落波形の検出は次の手順で行なっている。
1)ステップS1001では、図29のステップS901と同様に、未分類データ21aから読み出された、波形データにおいて、予め全てのサンプリングデータに対して1つ前のデータとの差分をとる処理を行う。
2)ステップS1002では、図29のステップS902と同様、サンプリング番号kが、判定対象の波形データを構成する全てのデータ数(全てのサンプリング数に対応)から1サイクル期間あたりのデータ数を差し引いた結果得られるデータ数より小さいか否かを判定し、小さければステップS1003へ進み、小さくなければ、ステップS1010へ進む。
3)ステップS1003では、図29のステップS903とステップS904で説明した処理と同じ処理を行う。
4)ステップS1004では、図29のステップS905で説明した処理と同じ処理を行う。
5)ステップS1005では、ステップS1004で、実効値と相関値との差が所定値A未満であると判定された時のサンプリング番号kより前の1サイクル期間と、k+1/2サイクル期間の後の1サイクル期間における差分データの実効値をそれぞれ計算する。
6)ステップS1006では、ステップS1005で求めた、サンプリング番号kから後の1/2サイクル期間の差分データの実効値が所定値B未満であり、かつ、サンプリング番号kより前の1サイクル期間における差分データの実効値が所定値C以上であり、かつ、k+1/2サイクル期間の後の1サイクル期間における差分データの実効値が所定値C以上であるか否かを調べ、この条件を満たす場合はステップS1007へ進み、満たさなければステップS1009へ進む。
【0139】
尚、ここで、所定値A、B、Cについて説明する。
【0140】
即ち、所定値Aは、定常電圧/√2の5%(実効値/√2と差分データ×cosωtがともに定常電圧/√2でほとんど差が無いことを検知するための値)であり、所定値Bは、定常電圧の5%(1/2サイクル前後の実効値がほぼ0であるかどうかを確認するための値)であり、所定値Cは、定常電圧の95%(ほぼ定常値であるかどうかを確認するための値)である。
7)ステップS1007では、半波欠落検出カウンタを1増やして、ステップS1009へ進む。
8)ステップS1008では、サンプリング番号kを1/2サイクル分増やし、ステップS1009へ進む。
11)ステップS1009では、サンプリング番号kを1増やし、ステップS1002へ戻る。
【0141】
iii)事故前微少Vo、Io付波形の判定方法について:
ここでは、図32に示す様な事故前に微少なIo(零相電流)、Vo(零相電圧)の変化が見られる事故前微少Vo・Io付波形の判定方法について、図33、34を参照しながら説明する。
【0142】
図33は、事故前微少Vo・Io付波形の判定方法について説明するための波形例を模式的に表した図であり、縦軸は例えば波形データの振幅(Vo、Io)であり、横軸は時間を表している。図33において、先頭からt(p)までが事故前の全サンプル数に相当する。また、図34は、事故前微少Vo・Io付波形の判定方法を説明するためのフロー図である。
【0143】
図34に示す様に、事故前微小Vo,Io付波形の検出は、Vo、Ioの要素データについて1/4サイクルの演算幅で実効値演算を行い(ステップS1101参照)、その値が設定値より大きい時(ステップS1102参照)、事故前微小Vo、Io付波形と判定する(ステップS1103参照)。ただし、判定は、最初のサンプリング(サンプリング番号k1)の時点(図33の時刻t(k1)参照)を起点としてオシロデータの起動前時間−2サイクルまで(図33の時刻t(ke)参照)の時間範囲で行う(ステップS1105参照)。
【0144】
一方、実効値が設定値より大きくないと判定した時(ステップS1102参照)、サンプリング番号kを1増やし(ステップS1104参照)、サンプリング番号kから1/4サイクル期間の演算幅が、事故発生時点(図33の時刻t(p)を参照)から2サイクル期間以上前に有るかどうかを判定し(ステップS1105参照)、有ると判定すればステップS1106へ進み、事故前微小Vo、Io付波形ではないと判定する(ステップS1106参照)。また、ステップS1105で有ると判定されない場合は、ステップS1102へ戻る。
【0145】
以上が個々の波形の特徴の分析手法である。
【0146】
一般に電力系統事故波形の場合、事故部分の波形の継続時間は交流波形の数サイクル間のみである。また、短絡事故の場合も地絡事故の場合もアーク閃絡することが多く、電圧・電流の急激な変化を伴うので、漫然と波形の全体に渡ってFFT演算を施して高調波成分などを抽出た場合と比較すると、波形の差分から変化点を検出した場合の方が遥かに高速に事故波形部分を検出できるのである。これは電力系統事故波形の場合のみに言えることであって、一般的に成立する考え方ではない。たとえば地震波形のように継続時間が長い波形の場合は成り立たない。
(2)構築されたデータベースの活用:
2−1)新たな事故が発生した場合:
ここでは、新たに発生した事故波形データについて、データ検索プログラム24aを用いて、データベースに蓄積された過去のデータと、少なくとも一つ以上の項目(例えば、波形パターンなどの項目)で一致しているデータを探し出す検索処理を行う場合について説明する。
【0147】
i)まず、電力系統事故波形データ検索装置20の使用者あるいは、ネットワーク2(12)に接続されている端末装置13a〜13bの使用者は、キーボードやマウス等の入力端末部からの入力により、新たに発生した事故データを分類対象として、波形分類プログラム23aを起動させる。これにより、データ分類部23は、上記の項目(1)「データベースの構築」で説明した処理方法と同様の手順により、新たに発生した事故データを対象として、波形パターンの判定処理を行い、その判定結果と他のデータとを、図4に示した様に、分類済みデータ21bとしてデータ格納部21のデータベースに格納する。ここでは、新たな事故は、波形パターンが典型的な歪み波形であり(図2参照)、短絡電流成分が含まれておらず、且つ、その電力系統の中性点接地方式が直接接地系に属していることが分析されているとする。従って、後述する項目iii)での検索対象は、系統の中性点接地方式の違いに着目して、3つに分類されている各接地系の内、類似する系統の事故波形データとして、直接接地系に分類されている同一分類のデータに絞っている(図4参照)。。
【0148】
尚、分類対象となる新たに発生した事故データは、上記分類動作を開始する前に、既に波形記録装置10a〜10cの何れかの装置から電力系統事故波形データ検索装置20に送信されて来ており、未分類データ21aとして、データ格納部21に格納されているものとする。
【0149】
ii)次に、上記使用者は、キーボードやマウス等の入力端末部からの入力により、分類済みデータ21bとして既にデータ格納部21に格納されている過去の事故データを検索対象として、検索の条件の一つとして指定される上記波形パターンを有する上記の新たな事故データと類似度の高いデータを抽出するために、データ検索プログラム24aを起動させる。
【0150】
これにより、検索条件を入力するための画面(図35参照)が電力系統事故波形データ検索装置20または、端末装置13a、13bの表示部に表示される。図35は、本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置20または、端末装置13a、13bの表示部に表示される、検索条件を入力して検索結果を表示するための画面の一例である。
【0151】
ここで、検索条件とは、検索対象としての過去の事故データの中から、使用者が検索しようとする新たな事故データとの関係で、類似点をより多く有する過去の事故データを絞り込むために必要な入力項目であり、検索項目の一例を、図36(a)、(b)に示す。図36(a)、(b)は、本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置20または、端末装置13a、13bの表示部に表示される検索項目の一例を示す図である。
【0152】
本実施の形態では、検索条件の入力方法としては、上記「送配電系統の物理的条件に関する情報」と、上記「データ収録時の環境条件に関する情報」と、上記「事故波形を分析して得られる情報」と、上記「事故後に調査して取得できる情報」の内、未定の情報を除き、全てのデータ項目について、入力画面に表示されているチェックボックスを利用して、該当する箇所にチェックを入れる。例えば、新たな事故データの波形パターンが、・・・・であることは上述した通りであるから、図35の「波形パターン」の欄3501に表示された複数のチェックボックスについては、「ひずみ波形」のチェックボックスにのみチェックを入れる。
【0153】
尚、本発明の「検索の条件として指定される事故波形データの分類結果」の一例が、図35の「波形パターン」の欄3501のチェックボックスに入力された、新たに発生した事故の事故波形データについての「波形パターン」である。
【0154】
また、同一又は類似の事故波形データを漏れなく検索できる様にするためには、検索対象の範囲を広く網羅する必要があるので、この検索処理を実施している時が、2009年の12月であるとして、図35では、例えば、「発生時刻:年」は2009年以前の全てのデータを対象とし、「発生時刻:月」は1月〜12月を指定し、その他、「事故様相」、「電圧階級」、「事故除去時間」、「天候」及び、「事故原因(例えば、自然劣化、山崩れ・雪崩れ、風雨、氷雪、雷、地震、火災、水害、鳥獣接触、など)」等の項目欄は、全てのチェックボックスにチェックを入れている。
【0155】
iii)検索条件の入力が完了すると、データ検索部24は、分類済みデータ21bとしてデータ格納部21に格納されている過去の事故データの内、直接接地系に分類されている同一分類のデータを検索対象として、上記の新たな事故データと類似するデータの検索を開始する。ここでは、検索対象として、データベースに格納されている過去の事故データを全て検索するのでは無く、事故波形データ群の内、直接接地系に分類されている同一分類のデータに絞っているのは、上記の新たな事故データが、短絡電流成分を含んでおらず、且つ、その電力系統の中性点接地方式が直接接地系に属していることが上記の通り既に判明しているからである。これにより、検索時間が短縮出来るという効果を発揮する。
【0156】
検索の結果、データ検索部24は、一致しているデータ項目(情報要素)の数が多い順(即ち、類似度が高い順)に過去の事故データをソートして、それぞれに付随して記録されている「事故後に調査して取得できる情報」(図4参照)を出力画面(図37参照)に表示し、上記検索結果を、検索結果のデータ21cとしてデータ格納部21に格納する。また、データ検索部24は、例えば、端末装置13a、13bの使用者からのネットワーク2(12)を介した要求に応じて、検索結果のデータ25を送信する。
【0157】
ここで、図37は、電力系統事故波形データ検索装置20または、端末装置13a、13bに表示される検索画面上覧3710と、検索画面下欄3720を示す図である。検索画面上覧3710では、各検索条件の入力例と、それぞれの検索条件単独で検索した場合のヒット件数が検索結果3710aとして表示されており、各検索条件のAND(積集合)で検索した場合のヒット件数が最終検索結果3710bとして表示されている(図中では、最終検索結果は5件)。また、検索画面下欄3720は、最終検索結果としてヒットした5件の事故データが抽出されて表示された例を示している。ここで、検索条件は必要に応じて表示/非表示を切り替えられる様になっている。図35は全ての検索条件を表示している例であるが、図37では、検索条件の一部として、事故の発生時刻、事故様相、電圧階級に限って表示させた例を示す。
【0158】
この様に、本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置20によれば、熟練技術者でなくても、電圧・電流波形やリレー応動の特徴などを手掛かりに必要な事故のデータを素早く検索でき、また未経験の事故に対しても過去の類似事故データを容易に検索・表示できる。そのため、新たな事故が発生した場合、事故原因の推定、及び復旧方法が迅速に決定できるという効果を発揮する。
【0159】
図38は最近収録された事故波形の一例である。この原因は当初不明であったが、本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置20を用いることで、過去に某変電所で収録された図39、図40、図41の事故波形とその特徴が類似していることが即座に検索された。
【0160】
図39、図40、図41の事故波形の事故原因は鳥獣接触であったが図38の事故波形の事故原因も同様であろうということが推察され、その後の現場巡視および事故処理結果から確かに鳥獣接触が原因であることが確かめられた。
【0161】
2−2)過去の事故データを格納したデータベースとしての分類済みデータ21bの中から、検索しようとする事故データを指定する場合:
この場合、使用者が検索しようとする事故データが、新たに発生した事故では無く、過去に起こった事故であって、既に分類済みデータ21bとしてデータ格納部21に格納された中の一つである点で、上記2−1)の場合と異なる。
【0162】
よって、ここでの電力系統事故波形データ検索装置20の動作は、上記項目2−1のi)で述べた、新たに発生した事故の波形分類動作が必要ない点を除き、基本的に同じである。
【0163】
尚、「事故後に調査して取得できる情報」の、事故状況、事故原因、復旧方法等は、既にデータベースに格納されているが、検索対象を広目にしたい場合には、検索条件として絞り込む必要は無いため、例えば、事故原因に関するチェックボックスの全てにチェックを入れても良い。
【0164】
図42は遮断器投入時のトランスの突入電流の波形(半波整流波形)である。このような波形が過去に何件有ったかを調査したい場合、従来は担当者が過去の事故波形記録ファイル(紙ファイル)を1ページずつ繰って見て調べていたが本実施の形態の電力系統事故波形データ検索装置20によれば、即座に該当波形が検索可能である。
【0165】
また、上記実施の形態では、本発明のデータ格納部の一例であるデータ格納部21が、事故波形データと、波形記録装置10a等の設置場所の情報、電圧階級、中性点接地方式、系統の短絡容量、線路長、などの「送配電系統の物理的条件に関する情報」と、データ記録日時、気象条件などの「データ収録時の環境条件に関する情報」と、事故様相、事故時の電圧値、電流値、事故波形データの図形的特徴の分類結果(波形パターン)などの「事故波形を分析して得られる情報」と、事故状況、事故原因、復旧方法などの「事故後に調査して取得できる情報」とを各々の事故波形データ毎に集めて構成されている場合について説明したが、これに限らず例えば、事故波形データの上記分類結果の他に、事故波形データの情報と、送配電系統の物理的条件に関する情報の全部又は一部と、データ収録時の環境条件に関する情報の全部又は一部と、事故波形を分析して得られる情報の全部又は一部と、事故後に調査して取得できる情報の全部又は一部との内、少なくとも何れか一つの情報が格納されている構成であっても良い。
【0166】
また、上記実施の形態では、本発明の特徴抽出部とデータ分類部の一例である、特徴抽出部22とデータ分類部23と波形分類プログラム23aとを含む構成要素が、一つの事故波形データに対して、事故波形データのサンプリング値に基づいて得られた差分の情報を用いた分類処理(第1の波形判定処理)と、事故波形データに基づいて得られたオフセット量の情報を用いた分類処理(第2の波形判定処理)と、事故波形データの実効値の情報を用いた分類処理(第3の波形判定処理)とを全て実施して、事故波形データ毎の波形パターンを決定する場合について説明したが、これに限らず例えば、第1の波形判定処理、第2の波形判定処理、第3の波形判定処理の内、少なくとも何れか一つの判定処理の結果から波形パターンを決定する構成でも良い。この構成の場合、3種類の判定処理を実施する場合に比べて、検索対象から抽出される事故データの件数が平均的に見て増える可能性があるが、従来に比べてより迅速に、過去の類似事故データを検索できるという効果を発揮する。
【0167】
また、上記実施の形態では、検索の条件として指定される事故波形データの分類結果(波形パターン)が、データ分類部23と波形分類プログラム23aとを含む構成要素(本発明のデータ分類部の一例に該当する)により、自動的に判定されて分類済みデータ21bとしてデータ格納部21に格納される場合について説明したが、これに限らず例えば、使用者自身が、新たな事故の波形データか過去の事故の波形データかによらず、何れの波形パターンに属するかを判断して、その判断による分類結果を、入力端末部から入力することにより、分類済みデータ21bとしてデータ格納部21に格納される構成でもよい。
【0168】
また、上記実施の形態では、データ分類部23が波形分類プログラム23aにより、第1の波形判定処理S101、第2の波形判定処理S102、及び第3の波形判定処理S103を、この順番で順次処理する場合について説明したが、これに限らず例えば、波形判定処理の順番はどの様な順番でも良い。
【0169】
また、上記実施の形態では、検索条件として、図36に示した項目を採用する場合について説明したが、これに限らず例えば、検索条件として、波形パターン以外の項目のいずれを採用するかは、適宜選択可能にしても良いし、また、適宜変更可能にしても良い。
【0170】
また、上記実施の形態では、本発明の電力系統事故波形データ検索装置の一例として電力系統事故波形データ検索装置20が、事故波形データを分類し、分類済みデータ21bとしてデータ格納部21にデータベースを構築する機能をも兼ね備えた場合について説明したが、これに限らず例えば、電力系統事故波形データ検索装置20が、上記機能を兼ね備えていない構成でも良い。即ち、この場合の、上記実施の形態本発明の電力系統事故波形データ検索装置20の別の例としての電力系統事故波形データ検索装置は、図1を代用して説明すると、事故データの検索機能は有するが、波形データの分類機能は有さない構成であってデータ検索プログラム24aは有するが、波形分類プログラム23aは有さない構成であって、その他の構成は図1と基本的に同じになる。ただし、この場合、データ格納部21には、事故波形データ毎の波形パターンが既に波形分類された所定のデータベースが予め構築されて格納されていることが前提となり、その所定のデータベースは、電力系統における事故について、その事故毎に少なくとも事故波形データが、上述した第1の波形判定処理、第2の波形判定処理、及び、第3の波形判定処理の少なくとも何れか一つの波形判定処理に基づいて分類された分類結果(波形パターン)が、例えば図4に示す様に、事故データを電力系統の物理的性質である系統の短絡容量の違い、及び、中性点接地方式の違いで予め分類して格納されている構成であれば良い。
【0171】
また、上記実施の形態では、本発明の電力系統事故波形データ検索装置の一例として、データベースを構築する機能と共に、構築したデータベースを活用して類似する事故波形を抽出する機能をも備えた電力系統事故波形データ検索装置20について説明したが、これに限らず例えば、データベースを活用して類似する事故波形を抽出する機能を備えない構成でも良い。即ち、この場合の、本発明の電力系統事故波形データ検索装置の別の例としての波形データベース構築装置は、図1を代用して説明すると、波形データの分類機能は有しているが、事故データの検索機能は有さない構成であって、波形分類プログラム23aは有しているが、データ検索プログラム24aは有さない構成であり、その他の構成は図1と基本的に同じになる。
【0172】
また、上記実施の形態では、検索対象となる事故データを絞り込むために、事後毎のデータを、データベース構築の際に、電力系統の物理的性質である系統の短絡容量の違い、及び、中性点接地方式の違いで予め分類しておく場合を説明したが、これに限らず例えば、事故波形データの分類結果によってグループ分けしてデータベースに格納する構成でも良い。この場合でも、検索対象となる事故データを絞り込むことが出来るので効率的な検索が行える。
【0173】
尚、以上説明したことから明らかな様に、第1の本発明は、
送配電系統に設置され、系統事故時の電圧・電流波形を事故前部から一定時間記録し、通信回線を介してそのデータをサーバーに収集することのできる電力系統事故波形データ収集システムのデータを集めて成る電力系統事故波形データ検索装置であって、
収集したデータを記憶するデータ格納部と、記憶されたデータの特徴を抽出する特徴抽出部と、抽出された特徴によってデータを分類するデータ分類部と、分類されたデータを検索する検索部と、検索条件を入力する端末装置と、検索結果を表示する表示装置とを備え、
前記データ格納部は、収集された事故波形データに付随して記録されている設置場所の情報、電圧階級、中性点接地方式、系統の短絡容量、及び線路長の内、少なくとも一つを含む「送配電系統の物理的条件に関する情報」と、
データ記録日時、及び気象条件の内、少なくとも一つを含む「データ収録時の環境条件に関する情報」と、
事故様相、事故時の電圧値、電流値、及び波形の図形的特徴の分析結果の内、少なくとも一つを含む「事故波形を分析して得られる情報」と、
事故状況、事故原因、及び復旧方法の内、少なくとも一つを含む「事故後に調査して取得できる情報」と、
を各々の事故波形データ毎に格納し、
前記特徴抽出部はデータベースに新たなデータが追加される度にその波形の瞬時値データからその波形にパルス状波形成分、鋸波成分、矩形波成分、高調波成分、低周波振動成分、半波整流波形成分の少なくとも何れか一つが含まれるか否かを判定し、また、その事故が一線地絡か、二線地絡か、三線地絡か、二線短絡か、三線短絡かといった事故様相を判定し、
前記データ分類部は既に格納されているデータおよび、前記特徴抽出部で判定された特徴データに基づいてデータを分類し、データの選別や並べ替えをおこない、
新たな事故波形データ収集時に自動的に、もしくは利用者が端末装置から指示することによって、前記「送配電系統の物理的条件に関する情報」と、前記「データ収録時の環境条件に関する情報」と、前記「事故波形を分析して得られる情報」をもとに過去のデータを検索し、一致している情報要素の数が多い順にデータをソートし、各々に付随して記録されている前記「事故後に調査して取得できる情報」を表示装置に出力することを特徴とした電力系統事故波形データ検索装置であって、
上記波形の図形的特徴の分析結果によるデータ検索時に、短絡電流が流れる2線以上の地絡事故に起因するデータを含む短絡事故データの場合は系統の短絡容量がほぼ同じデータグループ内で検索し、地絡事故データの場合は中性点接地方式が同じデータグループ内で検索することを特徴とした電力系統事故波形データ検索装置である。
【0174】
また、第2の本発明は、
既に収集された事故波形データに対して、そのうちの一個を指定し、それに付随して記録されている前記「送配電系統の物理的条件に関する情報」と、前記「データ収録時の環境条件に関する情報」と、前記「事故波形を分析して得られる情報」と前記「事故後に調査して取得できる情報」とにおいて、利用者が端末装置から上記情報の少なくとも一つ以上を指定することで、その情報が合致する他のデータを検索し、その結果抽出されたデータに関する前記情報を出力することを特徴とした、上記第1の本発明の電力系統事故波形データ検索装置である。
【0175】
また、第3の本発明は、
前記「事故後に調査して取得できる情報」が、更に、事故の発生区間、事故による停電の区間、事故による保護リレーによる再閉路の成否、及び進展事故の有無の内、少なくとも一つを含む、上記第1又は、第2の本発明の電力系統事故波形データ検索装置である。
【0176】
また、第4の本発明は、
電力系統における事故について、前記事故毎に少なくとも事故波形データが、前記事故波形データのサンプリング値に基づいて得られた差分に関する情報に基づいて分類された分類結果が格納されているデータ格納部と、
前記データ格納部に格納されている少なくとも前記事故波形データの前記分類結果を検索対象として、検索の条件として指定される事故波形データの分類結果と合致するものを検索する検索部と、
を備えた、電力系統事故波形データ検索装置である。
【0177】
また、第5の本発明は、
前記差分に関する情報は、前記事故波形データの時間的に直前のサンプリング値との差分が、少なくとも予め定められた閾値を超えたか否かを含む情報である、上記第4の本発明の電力系統事故波形データ検索装置である。
【0178】
また、第6の本発明は、
電力系統における事故について、前記事故毎に少なくとも事故波形データが、前記事故波形データに基づいて得られた実効値に関する情報に基づいて分類された分類結果が格納されているデータ格納部と、
前記データ格納部に格納されている少なくとも前記事故波形データの前記分類結果を検索対象として、検索の条件として指定される事故波形データの分類結果と合致するものを検索する検索部と、
を備えた、電力系統事故波形データ検索装置である。
【0179】
また、第7の本発明は、
前記実効値に関する情報は、前記事故波形データの一定周期分のデータから算出された実効値の変化の情報である、上記第6の本発明の電力系統事故波形データ検索装置である。
【0180】
また、第8の本発明は、
電力系統における事故について、前記事故毎に少なくとも事故波形データが、前記事故波形データに基づいて得られたオフセット量に関する情報または直流分に関する情報に基づいて分類された分類結果が格納されているデータ格納部と、
前記データ格納部に格納されている少なくとも前記事故波形データの前記分類結果を検索対象として、検索の条件として指定される事故波形データの分類結果と合致するものを検索する検索部と、
を備えた、電力系統事故波形データ検索装置である。
【0181】
また、第9の本発明は、
前記オフセット量に関する情報は、前記事故波形データの一定周期分のデータから算出されたオフセット量の変化の情報である、上記第8の本発明の電力系統事故波形データ検索装置である。
【0182】
また、第10の本発明は、
上記第1〜9の何れか一つの本発明の電力系統事故波形データ検索装置の前記検索部の機能を、コンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体であって、コンピュータにより処理可能な記録媒体である。
【0183】
尚、本発明のプログラムの一例は、上述した本発明の電力系統事故波形データ検索装置の少なくともデータ検索部の機能を、または、電力系統事故波形データ検索装置による処理方法の少なくとも検索処理ステップの動作をコンピュータにより実行させるプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
【0184】
又、本発明の記録媒体の一例は、上述した本発明の電力系統事故波形データ検索装置のデータ検索部の全部又は一部の機能を、または、電力系統事故波形データ検索装置による処理方法の各ステップの全部又は一部の動作をコンピュータにより実行させるプログラムを記録した記録媒体であり、コンピュータにより読み取り可能且つ、読み取られた前記プログラムが前記コンピュータと協動して前記動作を実行する記録媒体である。
【0185】
又、本発明の上記「各ステップの動作」とは、前記ステップの全部又は一部の動作を意味する。
【0186】
又、本発明のプログラムの一利用形態は、コンピュータにより読み取り可能な、ROM等の記録媒体に記録され、コンピュータと協働して動作する態様であっても良い。
【0187】
又、本発明のプログラムの一利用形態は、インターネット等の伝送媒体、光・電波・音波等の伝送媒体中を伝送し、コンピュータにより読みとられ、コンピュータと協働して動作する態様であっても良い。
【0188】
又、上述した本発明のコンピュータは、CPU等の純然たるハードウェアに限らず、ファームウェアや、OS、更に周辺機器を含むものであっても良い。
【0189】
尚、以上説明した様に、本発明の構成は、ソフトウエア的に実現しても良いし、ハードウェア的に実現しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明にかかる電力系統事故波形データ検索装置、及び記録媒体によれば、事故データの検索を迅速に行えるという効果を有し、電圧・電流波形データを集約してなる電力系統事故波形データベース構築装置、その事故波形データベースを用いた電力系統事故波形データ検索装置、及び電力系統事故波形データ検索方法等として有用である。
【符号の説明】
【0191】
10a〜10c 波形記録装置1〜3
11 ネットワーク1
12 ネットワーク2
13a、13b 端末装置
20 電力系統事故波形データ検索装置
21 データ格納部
22 特徴抽出部
23 データ分類部
24 データ検索部
23a 波形分類プログラム
24a データ検索プログラム
25 検索結果のデータ
26 Webアプリケーション


【特許請求の範囲】
【請求項1】
送配電系統に設置され、系統事故時の電圧・電流波形を事故前部から一定時間記録し、通信回線を介してそのデータをサーバーに収集することのできる電力系統事故波形データ収集システムのデータを集めて成る電力系統事故波形データ検索装置であって、
収集したデータを記憶するデータ格納部と、記憶されたデータの特徴を抽出する特徴抽出部と、抽出された特徴によってデータを分類するデータ分類部と、分類されたデータを検索する検索部と、検索条件を入力する端末装置と、検索結果を表示する表示装置とを備え、
前記データ格納部は、収集された事故波形データに付随して記録されている設置場所の情報、電圧階級、中性点接地方式、系統の短絡容量、及び線路長の内、少なくとも一つを含む「送配電系統の物理的条件に関する情報」と、
データ記録日時、及び気象条件の内、少なくとも一つを含む「データ収録時の環境条件に関する情報」と、
事故様相、事故時の電圧値、電流値、及び波形の図形的特徴の分析結果の内、少なくとも一つを含む「事故波形を分析して得られる情報」と、
事故状況、事故原因、及び復旧方法の内、少なくとも一つを含む「事故後に調査して取得できる情報」と、
を各々の事故波形データ毎に格納し、
前記特徴抽出部はデータベースに新たなデータが追加される度にその波形の瞬時値データからその波形にパルス状波形成分、鋸波成分、矩形波成分、高調波成分、低周波振動成分、半波整流波形成分の少なくとも何れか一つが含まれるか否かを判定し、また、その事故が一線地絡か、二線地絡か、三線地絡か、二線短絡か、三線短絡かといった事故様相を判定し、
前記データ分類部は既に格納されているデータおよび、前記特徴抽出部で判定された特徴データに基づいてデータを分類し、データの選別や並べ替えをおこない、
新たな事故波形データ収集時に自動的に、もしくは利用者が端末装置から指示することによって、前記「送配電系統の物理的条件に関する情報」と、前記「データ収録時の環境条件に関する情報」と、前記「事故波形を分析して得られる情報」をもとに過去のデータを検索し、一致している情報要素の数が多い順にデータをソートし、各々に付随して記録されている前記「事故後に調査して取得できる情報」を表示装置に出力することを特徴とした電力系統事故波形データ検索装置であって、
上記波形の図形的特徴の分析結果によるデータ検索時に、短絡電流が流れる2線以上の地絡事故に起因するデータを含む短絡事故データの場合は系統の短絡容量がほぼ同じデータグループ内で検索し、地絡事故データの場合は中性点接地方式が同じデータグループ内で検索することを特徴とした電力系統事故波形データ検索装置。
【請求項2】
既に収集された事故波形データに対して、そのうちの一個を指定し、それに付随して記録されている前記「送配電系統の物理的条件に関する情報」と、前記「データ収録時の環境条件に関する情報」と、前記「事故波形を分析して得られる情報」と前記「事故後に調査して取得できる情報」とにおいて、利用者が端末装置から上記情報の少なくとも一つ以上を指定することで、その情報が合致する他のデータを検索し、その結果抽出されたデータに関する前記情報を出力することを特徴とした、請求項1に記載の電力系統事故波形データ検索装置。
【請求項3】
前記「事故後に調査して取得できる情報」が、更に、事故の発生区間、事故による停電の区間、事故による保護リレーによる再閉路の成否、及び進展事故の有無の内、少なくとも一つを含む、請求項1又は、請求項2に記載の電力系統事故波形データ検索装置。
【請求項4】
電力系統における事故について、前記事故毎に少なくとも事故波形データが、前記事故波形データのサンプリング値に基づいて得られた差分に関する情報に基づいて分類された分類結果が格納されているデータ格納部と、
前記データ格納部に格納されている少なくとも前記事故波形データの前記分類結果を検索対象として、検索の条件として指定される事故波形データの分類結果と合致するものを検索する検索部と、
を備えた、電力系統事故波形データ検索装置。
【請求項5】
前記差分に関する情報は、前記事故波形データの時間的に直前のサンプリング値との差分が、少なくとも予め定められた閾値を超えたか否かを含む情報である、請求項4に記載の電力系統事故波形データ検索装置。
【請求項6】
電力系統における事故について、前記事故毎に少なくとも事故波形データが、前記事故波形データに基づいて得られた実効値に関する情報に基づいて分類された分類結果が格納されているデータ格納部と、
前記データ格納部に格納されている少なくとも前記事故波形データの前記分類結果を検索対象として、検索の条件として指定される事故波形データの分類結果と合致するものを検索する検索部と、
を備えた、電力系統事故波形データ検索装置。
【請求項7】
前記実効値に関する情報は、前記事故波形データの一定周期分のデータから算出された実効値の変化の情報である、請求項6に記載の電力系統事故波形データ検索装置。
【請求項8】
電力系統における事故について、前記事故毎に少なくとも事故波形データが、前記事故波形データに基づいて得られたオフセット量に関する情報または直流分に関する情報に基づいて分類された分類結果が格納されているデータ格納部と、
前記データ格納部に格納されている少なくとも前記事故波形データの前記分類結果を検索対象として、検索の条件として指定される事故波形データの分類結果と合致するものを検索する検索部と、
を備えた、電力系統事故波形データ検索装置。
【請求項9】
前記オフセット量に関する情報は、前記事故波形データの一定周期分のデータから算出されたオフセット量の変化の情報である、請求項8に記載の電力系統事故波形データ検索装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一つに記載の電力系統事故波形データ検索装置の前記検索部の機能を、コンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体であって、コンピュータにより処理可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2012−249395(P2012−249395A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118406(P2011−118406)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(592061599)株式会社近計システム (14)
【Fターム(参考)】