説明

電力系統連携システム

【課題】 複数の電力系統ごとに存在する情報伝送手段を接続する回線と、同様に複数の電力系統ごとに存在する転送遮断手段を接続する回線とを維持するための維持管理コストを抑制することができる電力系統連携システムを提供する。
【解決手段】
電力系統100、200内の発電設備の運転状態に関する情報を送信する情報伝送手段112、212と、所定の条件を満たした際に電力系統100、200からの電力の供給を遮断する転送遮断手段111、211とを具備し、情報伝送手段112は、連携して電力を供給する電力系統に設けられた情報伝送手段212に接続されると共に、転送遮断手段111は、連携して電力を供給する電力系統に設けられた転送遮断手段211に接続され、情報伝送手段間と転送遮断手段間とは同一回線20を介して接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電力系統を連結すると共に複数の電力系統を連携させて電力を供給する電力系統連携システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気事業者は複数の電力系統を連結させると共にそれらを連携させて電力を供給してきた。具体的には、電気事業者は水力電力系統、火力電力系統、風量電力系統、原子力電力系統などを連結すると共にそれらを連携させて、電力需要に応じた電力を顧客に供給してきた。
【0003】
そして、現在では、近年の電力自由化により、電気事業者は自社内の複数の電力系統を連結させると共にそれらを連携させるだけでなく、他の電気事業者の電力系統とも連結させると共にそれらと自社内の電力系統を連携させて電力を供給している。具体的には、各電気事業者の技術力や設備などの違いから、図5に示すような電力系統連携システムを構築し、電力需要に応じた電力を顧客に供給している。図5は従来の電力系統連携システムを示す概略図である。
【0004】
図5に示すように、この電力系統連携システム500は、X社の電力系統600とY社の電力系統700とが配電線510を介して連結されており、その配電線510を通して、電力系統600及び電力系統700により発電された電力を顧客800に供給することができるようになっている。そして、電力系統600及び電力系統700には、転送遮断装置610、710がそれぞれ設けられると共に、回線520を介してそれらが接続されており、一方の転送遮断装置から他方の転送遮断装置に電力供給が停止したことを示す信号を送信することができると共に、他方の転送遮断装置からの電力供給が停止したことを示す信号を受信した際に、一方の電力系統からの電力供給を停止させることができ、通常とは異なる電圧・周波数の電力が顧客800に供給されるのを防止することができるようになっている。さらに、電力系統600及び電力系統700には情報伝送装置(CDT)620、720がそれぞれ設けられると共に、回線530、540を介して電力系統600、700の外に設けられた集約情報伝送装置900にそれぞれ接続されており、電力系統600、700内の発電設備の運転状態に関する情報を集約情報伝送装置900に送信することで、電力系統600、700内の発電設備の運転状態を集中監視することができるようになっている。
【0005】
しかしながら、この電力系統連携システム500では、転送遮断装置610と転送遮断装置710とを接続する回線520と、情報伝送装置620、720と集約情報伝送装置900とをそれぞれ接続する回線530、540とが必要となり、回線の設置コスト及び維持管理コストが高くなるという問題があった。
【0006】
また、例えば、集約情報伝送装置900がX社内に設けられていた場合には、集約情報伝送装置900と、別会社であるY社の電力系統内に設けられた情報伝送装置720とが回線530を介して直接接続されることになるので、X会社の電力系統を管理する管理システムのセキュリティー上の問題が生じる可能性があり、X社の信頼性が低下するという問題があった。
【0007】
一方、発電装置の単独運転を防止するための単独運転防止システムが提案されているが(例えば、特許文献1参照)、発電設備の運転状況に関する情報を送信する情報伝送装置については何ら考慮されていないという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−187442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑み、複数の電力系統ごとに存在する情報伝送手段を接続する回線と、同様に複数の電力系統ごとに存在する転送遮断手段を接続する回線とを設置するための設置コスト及びそれらを維持するための維持管理コストを抑制することができる電力系統連携システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、複数の電力系統を連結すると共に前記複数の電力系統を連携させて電力を供給する電力系統連携システムであって、前記電力系統ごとに設置されて電力系統内の発電設備の運転状態に関する情報を送信する情報伝送手段と、前記電力系統ごとに設置されて所定の条件を満たした際に電力系統からの電力の供給を遮断する転送遮断手段とを具備し、前記情報伝送手段は連携して電力を供給する電力系統に設けられた情報伝送手段に接続されると共に、前記転送遮断手段は連携して電力を供給する電力系統に設けられた転送遮断手段に接続され、前記情報伝送手段間と前記転送遮断手段間とは同一回線を介して接続されることを特徴とする電力系統連携システムにある。
【0011】
かかる第1の態様では、1つの回線を介して、各電力系統内の発電設備の運転状況に関する情報を互いに送受信することができると共に、一方の電力系統からの電力供給が停止した際に、他方の電力系統からの電力供給を停止させることができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の電力系統連携システムにおいて、前記情報伝送手段と前記転送遮断手段とが同一の装置に具備されていることを特徴とする電力系統連携システムにある。
【0013】
かかる第2の態様では、電力系統連携システムをより小型化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電力系統連携システムによると、1つの回線を介して、各電力系統内の発電設備の運転状況に関する情報を互いに送受信することができると共に一方の電力系統からの電力供給が停止した際に、他方の電力系統からの電力供給を停止させることができるので、複数の電力系統ごとに存在する情報伝送手段を接続する回線と、同様に複数の電力系統ごとに存在する転送遮断手段を接続する回線とを設置するための設置コスト及びそれらを維持するための維持管理コストを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0016】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る電力系統連携システムを示す概略図である。図1に示すように、本実施形態に係る電力系統連携システム1は、電力系統100と電力系統200とが配電線10を介して連結されており、その配電線10を通して、電力系統100及び電力系統200により発電された電力を顧客300に供給することができるようになっている。
【0017】
そして、電力系統100及び電力系統200には転送遮断送信装置110、210がそれぞれ設けられると共にそれらが回線20を介して接続されている。さらに、電力系統100に設けられた転送遮断送信装置110は、回線30を介して、電力系統100、200の外に設けられた集約情報伝送装置400に接続されている。
【0018】
転送遮断送信装置110、210は、転送遮断手段111、211をそれぞれ具備しており、例えば送電線事故などが発生して、一方の電力系統からの電力供給が停止した際に、一方の転送遮断手段から他方の転送遮断手段に電力供給が停止したことを示す信号を送信すると共に、回線20を介して、他方の転送遮断手段からの電力供給が停止したことを示す信号を受信した際に、一方の電力系統からの電力供給を停止させて、通常とは異なる電圧・周波数の電力が顧客300に供給されるのを防止することができるようになっている。
【0019】
また、転送遮断送信装置110、210は、情報伝送手段112、212をそれぞれ具備しており、転送遮断手段111、211と同様に回線20を介して、それぞれの電力系統内の発電設備の運転状況に関する情報を送受信できるようになっている。さらに、転送遮断送信装置110は、情報伝送手段112により、回線30を介して、電力系統100内の発電設備の運転状況に関する情報だけでなく、回線20を介して転送された電力系統200内の発電設備の運転状況に関する情報をも集約情報伝送装置400に送信することができるようになっている。
【0020】
このように電力系統連携システム1を構成することにより、1つの回線を介して、各電力系統内の発電設備の運転状況に関する情報を互いに送受信して最終的に集約情報伝送装置400に送信することができると共に、一方の電力系統からの電力供給が停止した際に、他方の電力系統からの電力供給を停止させることができるので、従来と比較して回線数を削減することができると共に回線の管理コストを抑制することができる。すなわち、回線20を介して、電力系統100の転送遮断送信装置110と電力系統200の転送遮断送信装置210とを接続することにより、電力系統200の電力供給が停止したことを示す信号と電力系統200の発電設備の運転状況に関する情報とを転送遮断送信装置110に送信することができるので、従来の電力系統連携システムと比較して回線数を削減することができると共に回線の管理コストを抑制することができる。
【0021】
また、本実施形態では、転送遮断送信装置110、210内に、転送遮断手段111、211及び情報伝送手段112、212を具備させているので、従来のように情報伝送手段と転送遮断手段とをそれぞれ別個の装置で構成した電力系統連携システムよりも小型化することができる。
【0022】
さらに、本実施形態では、電力系統200内の発電設備の運転状況に関する情報を、電力系統100内に設けられた転送遮断送信装置110を経由して、集約情報伝送装置400に送信するようになっているので、従来の電力系統連携システムよりも安全性及び信頼性を向上させることができる。すなわち、電力系統200と集約情報伝送装置400とが直接接続されていないので、従来の電力系統連携システムよりも安全性及び信頼性を向上させることができる。以下に、本実施形態に係る電力系統連携システム1を構成する各構成要素について説明する。
【0023】
電力系統100、200は同一の電気事業者が所有するものであっても、異なる電気事業者が所有するものであってもよい。また、電力系統100、200は、発電設備を有するものであれば特に限定されない。例えば、1つの発電設備のみを有する電力系統であってもよいし、複数の発電設備を有する電力系統であってもよい。さらに、電力系統100、200は、どのような発電設備を有するものであってもよく、例えば火力発電設備、水力発電設備、風力発電設備、地熱発電設備、又は原子力発電設備を有するものであってもよい。
【0024】
配電線10は、電力系統100及び電力系統200から供給された電力を顧客300に配電することができるものであれば特に限定されない。
【0025】
回線20は、転送遮断送信装置110、210間を接続することができるものであれば特に限定されず、例えば専用回線、電話回線、インターネットなどであってもよい。
【0026】
回線30は、転送遮断送信装置110と集約情報伝送装置400とを接続することができるものであれば特に限定されず、例えば専用回線、電話回線、インターネットなどであってもよい。
【0027】
転送遮断送信装置110、210は、転送遮断手段111、211及び情報伝送手段112、212をそれぞれ具備するものであれば特に限定されず、例えば専用計算機や一般的なパーソナルコンピュータであってもよい。
【0028】
転送遮断手段111、211は、一方の電力系統からの電力供給が停止した際に、他方の電力系統の転送遮断手段に電力供給が停止したことを示す信号を送信すると共に、回線20を介して、他方の電力系統の転送遮断手段からの電力供給が停止したことを示す信号を受信した際に、一方の電力系統からの電力供給を停止させることができるものであれば特に限定されない。転送遮断手段111、211としては、例えば転送遮断送信装置110、210内に転送遮断回路を設けておき、一方の電力系統からの電力供給が停止した際に、他方の電力系統の転送遮断手段に電力供給が停止したことを示す信号を送信すると共に、他方の電力系統の転送遮断手段からの電力供給が停止したことを示す信号を受信した際に、一方の電力系統の転送遮断回路を動作させて電力系統からの電力供給を停止させるプログラムなどが挙げられる。
【0029】
情報伝送手段112、212は、電力系統100、200内の発電設備の運転状況に関する情報を送受信することができるものであれば特に限定されない。情報伝送手段112、212としては、例えば電力系統200内の発電設備の運転状況に関する情報を収集して送信するプログラムなどが挙げられる。
【0030】
集約情報伝送装置400は、各電力系統100、200内の発電設備の運転状況に関する情報を収集し、保存することができるものであれば特に限定されず、例えば専用計算機や一般的なパーソナルコンピュータであってもよい。
【0031】
以下に、電力系統連携システム1の動作について説明する。まず、電力系統200からの電力供給が停止した際の電力系統連携システム1の動作について説明する。図2は、電力系統200からの電力供給が停止した際の電力系統連携システム1の動作を示すシーケンスである。図2に示すように、電力系統200からの電力供給停止が検知されると(S1−1)、転送遮断送信装置210の転送遮断手段211により、電力供給が停止したことを示す信号が電力系統100の転送遮断送信装置110に送信される(S1−2)。そして、その信号が転送遮断送信装置110に受信されると、転送遮断手段111により、転送遮断送信装置110に設けられた転送遮断回路が作動し(S1−3)、電力系統100からの電力供給が停止される(S1−4)。
【0032】
このようにして、電力系統200からの電力供給が停止した際に、電力系統100からの電力供給を停止させることができる。
【0033】
次に、電力系統200内の発電設備の運転状況に関する情報が集約情報伝送装置400に送信される際の電力系統連携システム1の動作について説明する。図3は、電力系統200内の発電設備の運転状況に関する情報が集約情報伝送装置400に送信される際の電力系統連携システム1の動作を示すシーケンスである。図3に示すように、電力系統200内の発電設備の運転状況に関する情報が集められる(S2−1)と共に、電力系統100内の発電設備の運転状況に関する情報が集められる(S2−2)。そして、集められた電力系統200内の発電設備の運転状況に関する情報は、転送遮断送信装置210の情報伝送手段212により、その情報が転送遮断送信装置110に送信される(S2−3)。その情報が転送遮断送信装置110に受信されると、その情報は、転送遮断送信装置110に設けられた情報伝送手段112により、集められた電力系統100内の発電設備の運転状況に関する情報と共に集約情報伝送装置400に送信される(S2−4)。なお、電力系統100内の発電設備の運転状況に関する情報及び電力系統200内の発電設備の運転状況に関する情報は、同時に集められてもよいし、一方が先に集められてもよい。
【0034】
このようにして、電力系統200内の発電設備の運転状況に関する情報を集約情報伝送装置400に送信することができる。
【0035】
(他の実施形態)
実施形態1では、回線20を介して、電力系統100の転送遮断送信装置110と電力系統200の転送遮断送信装置210とを接続することにより、1つの回線を介して、各電力系統100、200内の発電設備の運転状況に関する情報を互いに送受信して最終的に集約情報伝送装置400に送信することができると共に、一方の電力系統からの電力供給が停止した際に、他方の電力系統からの電力供給を停止させることができるようになっていたが、図4に示すような電力系統連携システム1Aを構成してもよい。具体的には、図4に示すように、回線50を介して、さらに電力系統200の転送遮断送信装置210と集約情報伝送装置400とを接続するようにしてもよい。
【0036】
回線50は、電力系統200の転送遮断送信装置210と集約情報伝送装置400とを接続することができるものであれば特に限定されず、例えば専用回線、電話回線、インターネットなどであってもよい。なお、その他の構成要素は上述した電力系統連携システム1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
このように電力系統連携システム1Aを構成した場合には、通常は、電力系統200内の発電設備の運転状況に関する情報は、回線50を介して集約情報伝送装置400に送信される。しかしながら、回線50が何らかの障害により使用することができなくなった場合であっても、実施形態1で説明したように、回線20と転送遮断送信装置110を経由して、電力系統200内の発電設備の運転状況に関する情報を集約情報伝送装置400に送信することができるので、電力系統連携システムの信頼性をより向上させることができる。すなわち、回線50が使用できなくなった場合であっても、回線20及び転送遮断送信装置110をバイパスとして利用することにより、電力系統200内の発電設備の運転状況に関する情報を集約情報伝送装置400に送信することができるので、電力系統連携システムの信頼性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態1に係る電力系統連携システムを示す概略図である。
【図2】電力系統からの電力供給が停止した際の電力系統連携システムの動作を示すシーケンスである。
【図3】電力系統内の発電設備の運転状況に関する情報が集約情報伝送装置に送信される際の電力系統連携システムの動作を示すシーケンスである。
【図4】他の実施形態に係る電力系統連携システムを示す概略図である。
【図5】従来の電力系統連携システムを示す概略図である。
【符号の説明】
【0039】
1、1A 電力系統連携システム
10 配電線
20、30、50 回線
100、200 電力系統
110、210 転送遮断送信装置
111、211 転送遮断手段
112、212 情報伝送手段
300 顧客
400 集約情報伝送装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力系統を連結すると共に前記複数の電力系統を連携させて電力を供給する電力系統連携システムであって、
前記電力系統ごとに設置されて電力系統内の発電設備の運転状態に関する情報を送信する情報伝送手段と、
前記電力系統ごとに設置されて所定の条件を満たした際に電力系統からの電力の供給を遮断する転送遮断手段とを具備し、
前記情報伝送手段は連携して電力を供給する電力系統に設けられた情報伝送手段に接続されると共に、前記転送遮断手段は連携して電力を供給する電力系統に設けられた転送遮断手段に接続され、
前記情報伝送手段間と前記転送遮断手段間とは同一回線を介して接続されることを特徴とする電力系統連携システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力系統連携システムにおいて、前記情報伝送手段と前記転送遮断手段とが同一の装置に具備されていることを特徴とする電力系統連携システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−159373(P2007−159373A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355261(P2005−355261)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】