説明

電動アシスト自転車

【課題】不要に大きなブレーキ力が加わらず、快適に走行させることができる一方で、エネルギーを効率よく回収することができる電動アシスト自転車提供する。
【解決手段】ペダルを漕ぐ力によって回転駆動される駆動輪に補助動力を与える電動モータを備えた電動アシスト自転車であって、前記電動モータを、走行する速度に応じて、ブレーキ力の弱い第一回生ブレーキと該第一回生ブレーキよりもブレーキ力の強い第二回生ブレーキとを含む複数段階の回生ブレーキとして機能させるモータ制御装置を備えることを特徴とする電動アシスト自転車。また、前記モータ制御装置は、使用者のスイッチ操作によって前記電動モータを前記第一回生ブレーキよりもブレーキ力の弱い回生ブレーキとして機能させる充電モードを有するものであることを特徴とする電動アシスト自転車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダルを漕ぐ人の力(以下「人動力」という)を補助する電動モータを備えた電動アシスト自転車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自転車は、人動力によって走行するものであるが、近年においては、登り坂等を軽い力で走行できるように人動力を補助する電動モータを備えた電動アシスト自転車が種々、案出されている。
【0003】
ここで、電動アシスト自転車は、通常の自転車と同様に人がペダルを漕いで後輪を回転させて走行するものであるが、人が所定以上の力でペダルを漕ぐと、補助動力が必要であるとして電動モータを作動させて後輪に動力を加えるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の一般的な電動アシスト自転車は、電動モータを、補助動力を出力する機器として使用しているだけのものである。よって、下り坂等において速度が出すぎた場合には、使用者はブレーキをかけて速度を調整しており、従来の電動アシスト自転車においては、エネルギーを無駄にしている。
【0005】
ところで、電動モータを回生ブレーキ(発電機)として用いることは周知であり、電動アシスト自転車においても、電動モータを回生ブレーキとして機能させることでエネルギーを回収できるようにすることを想定できるが、電動モータを回生ブレーキとして単に機能させるだけでは、次のような問題を生じる。
【0006】
電動モータをブレーキ力の弱い回生ブレーキとして機能させると、急な下り坂等において、回生ブレーキのブレーキ力が足りず、速度が出すぎる場合がある。この場合には、使用者がブレーキをかけて速度を調整しなければならず、やはりエネルギーを無題にしてしまう。
【0007】
一方、電動モータをブレーキ力の強い回生ブレーキとして機能させると、電動アシスト自転車に必要以上のブレーキ力が与えられて、快適な走行速度を維持しようとすると、使用者がペダルを漕がなくてはならなくなる。
【0008】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、不要に大きなブレーキ力が加わらず、快適に走行させることができる一方で、エネルギーを効率よく回収することができる電動アシスト自転車の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「ペダルを漕ぐ力によって回転駆動される駆動輪に補助動力を与える電動モータを備えた電動アシスト自転車であって、
前記電動モータを、走行する速度に応じて、ブレーキ力の弱い第一回生ブレーキと該第一回生ブレーキよりもブレーキ力の強い第二回生ブレーキとを含む複数段階の回生ブレーキとして機能させるモータ制御装置
を備えることを特徴とする電動アシスト自転車」
である。
【0010】
上記構成の電動アシスト自転車では、電動モータを、補助動力を与える機器としてだけでなく、電動アシスト自転車の走行速度に応じてブレーキ力の異なる複数段階の回生ブレーキを生じさせる機器として機能させる。
【0011】
よって、例えば緩やかな下り坂等において、電動モータがブレーキ力の弱い第一回生ブレーキとして機能する状態では、不要に大きなブレーキ力が加わらず、使用者は、電動アシスト自転車を快適に走行させることができる。一方、急な下り坂等おいて速度が出すぎた場合には、電動モータを、第一回生ブレーキよりもブレーキ力が強い第二回生ブレーキとして機能させることで、電動アシスト自転車の速度を的確に抑制することができると共に、エネルギーを効率よく回収することができる。
【0012】
上述した手段において、
「前記モータ制御装置は、使用者のスイッチ操作によって前記電動モータを前記第一回生ブレーキよりもブレーキ力の弱い回生ブレーキとして機能させる充電モードを有するものである
ことを特徴とする電動アシスト自転車」
とするのが好適である。
【0013】
上記構成の電動アシスト自転車では、使用者のスイッチ操作によって電動モータを回生ブレーキとして強制的に機能させる充電モードを備えることから、走行中においてバッテリの充電量が不足してきた場合に、随時、バッテリの充電を行うことができ、電動アシスト自転車の利便性を向上させることができる。また、走行中においてもバッテリの充電を行うことができることから、電動アシスト自転車の不使用時において、家庭用電源によるバッテリの充電を省略することができ、この点からも、電動アシスト自転車の利便性を向上させることができる。
【0014】
なお、充電モードにおける回生ブレーキは、電動アシスト自転車の速度を積極的に抑制する第一回生ブレーキよりもブレーキ力が弱いものであることから、充電モードによって加わるブレーキ力が、電動アシスト自転車の快適な走行に大きな支障となることはない。
【0015】
上述した手段において、
「前記電動モータは、複数の電磁石を有するステータと複数の永久磁石を有するロータと備えるものであり、
前記モータ制御装置は、発電機として作動させる前記電磁石の数を異ならせることで前記電動モータをブレーキ力が異なる複数段階の回生ブレーキとして機能させるものである
ことを特徴とする電動アシスト自転車」
とするのが好適である。
【0016】
上記構成の電動アシスト自転車は、電動モータをブレーキ力の異なる複数段階の回生ブレーキとして機能させるモータ制御装置の構成を具体的に限定したものであり、発電機として作動させるステータの電磁石の数を異ならせるといった簡便な電気的制御によって、複数段階の回生ブレーキを生じさせることができる。
【発明の効果】
【0017】
上述した通り、本発明によれば、不要に大きなブレーキ力が加わらず、快適に走行させることができる一方で、エネルギーを効率よく回収することができる電動アシスト自転車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電動アシスト自転車の一例を示す概略図である。
【図2】アシストモータユニットを示す断面図である。
【図3】電動モータの概略図である。
【図4】人動力駆動機構の分解斜視図である。
【図5】人動力検出装置の概略図である。
【図6】アシストモータユニットの電気的構成を示すロック図である。
【図7】電動モータの作動状態を説明するチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る電動アシスト自転車の実施形態としての一例を、以下、図面に従って詳細に説明する。
【0020】
図1に、本発明に係る電動アシスト自転車100の一例を示す。
【0021】
この電動アシスト自転車100は、フレーム1、ハンドル2、サドル3、前輪4、後輪5等を具備する周知の自転車である。また、この電動アシスト自転車100は、使用者がペダル6を漕ぐことによって、ペダル6のスプロケット7からチェーン8を介して後輪5のスプロケット9に回転駆動力が与えられて後輪5が人動力によって回転駆動されるものである。そして、この電動アシスト自転車100では、駆動輪である後輪5が、アウトロータ型の電動モータ12を用いたアシストモータユニット10によって構成されている。また、電動アシスト自転車100の後側には、荷台を用いて、アシストモータユニット10の電源となるバッテリ11が搭載されている。
【0022】
なお、本例の電動アシスト自転車100では、タイヤを装着するリムを電動モータ12のロータ自体によって構成してあるが、これに限らず、ロータにスポークやリブを介してリムを組付け、このリムにタイヤを装着するようにしてもよい。特に、本例では、ロータのリム部分に、スポークを取付け可能な多数のスポーク取付孔が周設してあり、ロータの外側にスポークを介して別途のリムを組付けて一体化して、アシストモータユニット10よりも大径の車輪を簡便に形成することができるようにしてある。
【0023】
次に、アシストモータユニット10の詳細を図2に基づいて説明する。
【0024】
アシストモータユニット10の電動モータ12は、電磁コイルによって形成された多数の電磁石22を有するステータ29と、永久磁石62を有し、ステータ29の外側で回転するロータ69と備えたブラシレスのアウトロータ型の電動モータ12として構成されている。
【0025】
ステータ29は、電動アシスト自転車100のフレーム1に取付けられる支持軸20と、周面に多数の電磁石22が所定間隔で配設され、支持軸20に一体的に固定された円盤状のステータ本体21と、ステータ本体21の一方の側に配設され、支持軸20に一体的に固定されたブッシュ23とを備えている。
【0026】
また、ステータ本体21の他方の側には、スリーブ40が支持軸20にベアリング30,31を介して回動自在に組み付けられている。そして、このスリーブ40には、ワンウエイクラッチ9aを介して後輪5のスプロケット9が組み付けられており、電動アシスト自転車100のペダル6を漕ぐことで、前進方向のみの回転駆動力がスリーブ40に与えられる。
【0027】
一方、ロータ69は、タイヤTを装着するリム部60bが外周面に一体的に形成され、内周面に多数の永久磁石62が所定間隔で配設されたロータ本体60と、このロータ本体60に一体的に固定されたキャップ61とを備えている。ここで、ロータ本体60は、ステータ本体21のスリーブ40側の面を被覆するものであり、キャップ61は、ステータ本体21のブッシュ23側の面を被覆するものである。また、このロータ69においては、ロータ本体60がスリーブ40にベアリング50を介して回動自在に組み付けられており、キャップ61がブッシュ23にベアリング32を介して回動自在に組み付けられている。よって、ロータ69全体は、ステータ29に対して回動自在となっている。
【0028】
次に、電動モータ12の詳細について説明する。
【0029】
本例の電動モータ12では、ロータ本体60の内周面に20個の永久磁石62が配設されている一方で、図3に示すように、ステータ本体21の外周縁に18個の電磁石22(図3における三角印、丸印及び四角印の部材)が配設されている。そして、隣合う3個の電磁石22によって一つの電磁石ユニットが形成されており、ステータ29は、六つの電磁石ユニットを有するものとなっている。
【0030】
また、この電動モータ12では、ロータ69の回転が、対向する二つの電磁石ユニットを一つの相として、Iwの電流が流れるW相、Ivの電流が流れるV相、Iuの電流が流れるU相の三相の電流によって制御される。
【0031】
なお、図3では、W相の電磁石22を三角印で示し、V相の電磁石22を丸印で示し、U相の電磁石22を四角印で示してある。また、各印の黒塗り及び白抜きは、電磁石22を構成する電磁コイルの巻き方向が逆であることを示すものである。
【0032】
ところで、アシストモータユニット10は、電動モータ12の外部から与えられる人動力によってロータ69を回転させる人動力駆動機構13と、この人動力駆動機構13に所定以上の人動力が与えられたことを検出する人動力検出装置14と、この人動力検出装置14の検出に応じて電動モータ12を作動させるモータ制御装置15とを備えており、電動アシスト自転車100のペダル6を漕ぐ力が所定以上になると電動モータ12による補助動力が後輪5に加わるようにしてある。
【0033】
次に、人動力駆動機構13、人動力検出装置14及びモータ制御装置15の詳細について説明する。
【0034】
図4に示すように、人動力駆動機構13は、ステータ29の支持軸20とロータ69のロータ本体60との間に回動自在に組み付けられたスリーブ40を用いて構成されている。そして、スリーブ40は、連結部材41によってロータ本体60と一体的に連結されており、この連結部材41を通じて、電動アシスト自転車100のペダル6を漕ぐことで与えられた前進方向のみの回転駆動力がロータ本体60に伝達される。ここで、本例では、連結部材41として、C字状のバネ部材41を採用している。
【0035】
C字状のバネ部材41の両端には、当接部材42,43が設けられており、一方の当接部材42が止めネジ44によってロータ本体60に固定され、他方の当接部材43が止めネジ44によってスリーブ40に固定されている。そして、バネ部材41は、鋼板によって形成された十分な剛性を有するものとなっており、スリーブ40に回転駆動力が加わると(図5の矢印A参照)、この回転駆動力をそのままロータ本体60に伝達する(図5の矢印B参照)。
【0036】
また、バネ部材41は、周方向に所定以上の力が加わると変形するものとなっており、スリーブ40に所定以上の回転駆動力が加わることで両端が近接するように変形する(図5の矢印C参照)。ここで、バネ部材41の両端には、当接部材42,43が設けられていることから、各当接部材42,43が互いに当接することでバネ部材41のそれ以上の変形が規制され、スリーブ40の回転駆動力は、当接部材42,43の当接によってロータ本体60にそのまま伝達される。なお、スリーブ40に加わる回転駆動力が所定未満となると、バネ部材41は、近接した両端が離間して元の形状に復帰する。
【0037】
両端が近接するようにバネ部材41が変形した状態では、ロータ本体60に対してスリーブ40が回動した状態、換言すれば、スリーブ40の位相とロータ本体60の位相とにズレが生じた状態となる。そして、本例のアシストモータユニット10では、人動力検出装置14が、スリーブ40とロータ本体60との位相ズレを検出することで、人動力駆動機構13に所定以上の人動力が与えられたことを検出するものとなっている。人動力検出装置14の具体的な構成は、以下の通りである。
【0038】
図2、図4及び図5に示すように、スリーブ40及びロータ本体60には、ステータ本体21に対向する面において、ステータ29の支持軸20の周囲に多数の永久磁石40a、60aが所定間隔で配設されており、ステータ本体21のスリーブ40側の面には、スリーブ40及びロータ本体60の夫々の永久磁石40a,60aと対向するセンサ73,74を有するセンサ基板72が設けられている。
【0039】
ここで、スリーブ40の永久磁石40aとロータ本体60の永久磁石60aとは、同数であり、バネ部材41が変形しない状態、すなわちスリーブ40とロータ本体60とに位相ズレが生じていない状態において、互いに位相が合致するように配置されている。また、センサ73,74は、磁性体によって形成されたもの、所謂「磁気センサ」であり、表面近傍を磁石が通過することで起電力を生じさせるものである。よって、スリーブ40側のセンサ74及びロータ本体60側のセンサ73に生じる夫々の起電力の電圧を監視することで、スリーブ40とロータ本体60とに位相ズレが生じたか否かを判定することができる。
【0040】
また、ロータ本体60側のセンサ73の起電力を監視することで、ロータ本体60の回転速度を計測することができ、もって、電動アシスト自転車100の走行速度を計測することができる。特に本例では、ロータ本体60側のセンサ73の前後にもセンサ73a,73bを設けてあり、電動アシスト自転車100の後輪5の回転方向も検出できるようにしてある。
【0041】
ところで、スリーブ40とロータ本体60とに位相ズレが生じた状態では、スリーブ40に所定状の回転駆動力が加わっている状態、すなわち、所定以上の力でペダル6が漕がれている状態であり、後輪5に電動モータ12による補助動力を与える必要がある。よって、この状態では、電動モータ12を制御するモータ制御装置15によって、バッテリ11からの電源によって電動モータ12を作動させる。ここで、本例では、図2及び図6に示すように、モータ制御装置15が、ステータ本体21におけるスリーブ40側とは反対の面に設けられたモータ制御基板70によって構成されており、電動モータ12に内蔵されたものとなっている。また、モータ制御基板70は、上述したセンサ基板72と電気的に接続されており、センサ基板72からの信号によって電動モータ12の駆動を制御する。
【0042】
なお、モータ制御装置15を構成するモータ制御基板70は、電動モータ12に内蔵されたものであるが、このモータ制御基板70は、電動アシスト自転車100のフレーム1に固定的なステータ29に設けられていることから、電動アシスト自転車100の走行に際してロータ69が回転しても支障は生じない。また、モータ制御基板70とバッテリ11とを接続する配線71やモータ制御基板70と詳細は後述するスイッチパネル16とを接続する配線71は、フレーム1に固定的な部材であるブッシュ23に設けられた配線通路23aを通じてアシストモータユニット10の外側に引き出されていることから、電動アシスト自転車100の走行に際してロータ69が回転しても支障は生じない。
【0043】
ところで、本例では、ロータ69のキャップ61にブレーキドラム61aが一体的に設けられている。ここで、このブレーキドラム61aは、一般的な自転車の後輪のブレーキ装置に適用可能な形状・寸法に形成されており、ブッシュ23にブレーキ装置のカバー24やブレーキ部材25(帯ブレーキ装置の場合はブレーキバンド)を組付けることで、ブレーキ装置を簡単に形成できるようにしてある。なお、ブレーキドラム61aは、ロータ60のキャップ61に一体成形してもよいし、別部材として形成してボルトや溶接等によってキャップ61に一体化できるようにしてもよい。
【0044】
次に、本例の電動アシスト自転車100の使用態様を説明する。
【0045】
電動アシスト自転車100には、ハンドル2等の操作し易い部位に、図2に示すような操作パネル16が取付けられており、この操作パネル16でのスイッチ操作によってアシストモータユニット10の作動が操作される。また、本例では、電動モータ12が回生ブレーキ(発電機)として機能するように構成されている。
【0046】
操作パネル16は、3つのスイッチSW1,SW2,SW3を備えている。
【0047】
まず、スイッチSW1は、アシストモータユニット10の電源をON・OFFさせるスイッチであり、スイッチSW1を押すことで電源がONとなり、再びスイッチSW1を押すことで、電源がOFFとなる。また、電源がONとなった状態では、バッテリ11の充電量に応じてLED1〜3が点灯する。ここで、LED1〜3が全て点灯する状態は、バッテリ11の充電量が十分であることを示し、LED1,2しか点灯しない状態は、バッテリ11の充電量がやや不足することを示し、LED1しか点灯しない状態は、バッテリ11の充電量が残り僅かであり、充電を必要とすることを示すものである。
【0048】
アシストモータユニット10の電源がONとなった状態で電動アシスト自転車100を走行させると、登り坂等において補助動力が必要な場合には電動モータ12が作動して人動力を補助する。また、下り坂等において、電動アシスト自転車100が所定以上の速度になると、モータ制御基板70によって電動モータ12を制御して、電動モータ12を回生ブレーキとして機能させる。ここで、本例では、電動アシスト自転車100が第一速度以上となると、電動モータ12が第一回生ブレーキとして機能し、電動アシスト自転車100が前記第一速度よりも速い第二速度となると、電動モータ12が前記第一回生ブレーキよりもブレーキ力が大きい第二回生ブレーキとして機能するように、モータ制御基板70によって電動モータ12が制御される。
【0049】
具体的に、電動アシスト自転車100の速度は、センサ基板72によって計測できることは前述の通りであり、また、電動モータ12では、W相、V相及びU相といったような複数相の電流によって複数の電磁石22が夫々制御されるのも前述の通りである。そこで、モータ制御基板70では、センサ基板72からの信号(電動アシスト自転車100の速度)に応じて、例えば、第一回生ブレーキでは二つの相の電磁石22を回生ブレーキとして機能させ、第二回生ブレーキでは三つの相の電磁石22を回生ブレーキとして機能させるといったように、回生ブレーキとして機能させる相数を異ならせることで、ブレーキ力が異なる回生ブレーキを段階的に生じさせる。
【0050】
なお、電動モータ12が回生ブレーキとして機能する状態は、電動モータ12が発電機となる状態である。よって、電動モータ12からの電気をバッテリ11に充電させる充電回路を開くことで、電動モータ12を発電機として機能させてバッテリ11に充電を行うことができる。
【0051】
次に、スイッチSW2は、アシストモータユニット10の電動モータ12を強制的に発電機として機能させてバッテリ11に充電を行う「充電モード」のスイッチであり、例えば2秒間といったように、スイッチSW2を長押しすることで、充電モードがONとなり、LED4が点灯する。なお、このスイッチSW2のON側のスイッチ操作については、電動アシスト自転車100が停止時や所定の安全速度未満のときに操作の受付けを許容するように構成されている。
【0052】
一方、充電モードがONとなっている状態で、再びスイッチSW2を押すことで、充電モードはOFFとなるのであるが、このOFF側のスイッチ操作については、スイッチSW2を押しさえすれば、短い時間でもOFFとなる。また、アシスト自転車100が停車中であっても、走行中であっても、OFF操作については、その受付けを許容するように構成されている。
【0053】
充電モードでは、電動モータ12を発電機として機能させてバッテリ11に充電を行うものであり、ブレーキ力が生じるのであるが、平坦地等において走行の大きな抵抗とならないように、この充電モードでは、前述の第一回生ブレーキよりも小さなブレーキ力しか生じないようにしてあり、走行の支障になり難いようにしてある。具体的には、回生ブレーキとして機能させる電磁石22の相数を前述の第一回生ブレーキの相数よりも少なくして、大きなブレーキ力が発生しないようにしてある。
【0054】
最後に、スイッチSW3は、アシストモータユニット10に直接関わるものではないが、アシストモータユニット10とは別途に設けられると共にバッテリ11に接続され、電動アシスト自転車100の前側等に取付けられたライト(図示省略)を点灯・消灯させるためのスイッチであり、一度押すことでライトが点灯し、再び押すことでライトが消灯する。
【0055】
このように構成された電動アシスト自転車100では、電動モータ12が、図7に示すように作動する。ここで、図7では、電動アシスト自転車100が走行する路面の傾斜を「走行路」として模式的に示し、電動モータ12の作動状態を、補助動力として作動する側を「アシスト」として横方向の基準線よりも上向きグラフとし、発電機として作動する側を「回生」として横方向の基準線よりも下向きのグラフとして示す。
【0056】
まず、アシストモータユニット10の電源をONとした状態として、走行を開始する。平坦な走行路aを走行する場合には、電動モータ12は作動せず、電動アシスト自転車100は、電動モータ12のロータ69が人動力のみによって回転駆動されて走行する。次に、登り坂の走行路bでは、ベダル6を漕ぐ力が大きくなり、ロータ69に人動力による所定以上の回転駆動力が与えられると電動モータ12が作動して、坂道を登る人動力を補助する。次に、再び平坦な走行路cでは、補助動力を必要としなくなるため、電動モータ12は作動を停止して、電動アシスト自転車100は、ロータ69が人動力のみによって回転駆動されて走行する。次に、下り坂の走行路dでは、補助動力を必要としないばかりか、ペダル6を漕がなくても速度が増すため、第一速度以上となったら電動モータ12が第一回生ブレーキとして機能し、ブレーキ力を生じさせると共にバッテリ11への充電を行う。次に、さらに傾斜角度のきつい走行路eでは、第一速度よりも速い第二速度以上となる場合がある。この場合には、第一回生ブレーキのブレーキ力では制動が不十分であるとして、電動モータ12が第一回生ブレーキよりもブレーキ力の大きな第二回生ブレーキとして機能し、より大きなブレーキ力を生じさせると共により多くの電力をバッテリ11に充電する。
【0057】
最後に、坂道を下った後の平坦な走行路fでは、ブレーキ力を必要とせず、また、補助動力も必要としないため、電動モータ12は回生ブレーキとして機能せず、また、作動もせず、電動アシスト自転車100は、ロータ69が人動力のみによって回転駆動されて走行する。ここで、バッテリ11の充電量が不十分である場合には、操作パネル16を操作してアシストモータユニット10を「充電モード」とすることで、電動モータ12を、第一回生ブレーキよりも小さなブレーキ力しか生じない発電機として機能させて(図7における斜線部分)、不足した電力を補うことができる。
【0058】
以上、本例の電動アシスト自転車100は、下り坂等において速度が出すぎた場合に、電動モータ12が、走行する速度に応じて、ブレーキ力の弱い第一回生ブレーキ、または、第一回生ブレーキよりもブレーキ力の強い第二回生ブレーキとして機能するものである。
【0059】
よって、緩やかな下り坂等において電動モータ12が第一回生ブレーキとして機能する状態では、不要に大きなブレーキ力が加わらず、使用者は、電動アシスト自転車100を快適に走行させることができる。一方、急な下り坂等おいて、第一回生ブレーキでは速度を抑制できない場合には、電動モータ12が第一回生ブレーキよりもブレーキ力が強い第二回生ブレーキとして機能し、電動アシスト自転車100の速度を的確に抑えることができる。また、ブレーキ力の強い第二回生ブレーキは、当然、第一回生ブレーキよりも発電量が多いものであり、この第二回生ブレーキによって、エネルギーを効率よく回収することができる。
【0060】
また、本例の電動アシスト自転車100は、使用者のスイッチ操作によって電動モータ12を第一回生ブレーキよりもブレーキ力の弱い回生ブレーキとして機能させる充電モードを有するものである。
【0061】
よって、家庭用電源を用いることなく、走行中においても随時、バッテリ11の充填を行うことができ、電動アシスト自転車100としての利便性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0062】
T タイヤ
1 フレーム
2 ハンドル
3 サドル
4 前輪
5 後輪
6 ペダル
7 スプロケット
8 チェーン
9 スプロケット
9a ワンウエイクラッチ
10 アシストモータユニット
11 バッテリ
12 電動モータ
13 人動力駆動機構
14 人動力検出装置
15 モータ制御装置
16 操作パネル
20 支持軸
21 ステータ本体
22 電磁石
23 ブッシュ
23a 配線通路
24 カバー
25 ブレーキ部材
29 ステータ
30 ベアリング
31 ベアリング
32 ベアリング
40 スリーブ
40a 永久磁石
41 バネ部材(連結部材)
42 当接部材
43 当接部材
44 止めネジ
50 ベアリング
60 ロータ本体
60a 永久磁石
60b リム部
61 キャップ
61a ブレーキドラム
62 永久磁石
69 ロータ
70 モータ制御基板
71 配線
72 センサ基板
73 センサ
74 センサ
100 電動アシスト自転車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダルを漕ぐ力によって回転駆動される駆動輪に補助動力を与える電動モータを備えた電動アシスト自転車であって、
前記電動モータを、走行する速度に応じて、ブレーキ力の弱い第一回生ブレーキと該第一回生ブレーキよりもブレーキ力の強い第二回生ブレーキとを含む複数段階の回生ブレーキとして機能させるモータ制御装置
を備えることを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項2】
前記モータ制御装置は、使用者のスイッチ操作によって前記電動モータを前記第一回生ブレーキよりもブレーキ力の弱い回生ブレーキとして機能させる充電モードを有するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の電動アシスト自転車。
【請求項3】
前記電動モータは、複数の電磁石を有するステータと複数の永久磁石を有するロータと備えるものであり、
前記モータ制御装置は、発電機として作動させる前記電磁石の数を異ならせることで前記電動モータをブレーキ力が異なる複数段階の回生ブレーキとして機能させるものである
ことを特徴とする請求項1に記載の電動アシスト自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−143751(P2011−143751A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4130(P2010−4130)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(399028632)株式会社中央物産 (5)