説明

電動ブレーキアクチュエータ及び車両用ブレーキシステム

【課題】汎用性を向上させることにある。
【解決手段】モータシリンダ装置は、電動モータ72が設けられるアクチュエータハウジング75を有し、アクチュエータハウジング75の側面側には、電動モータ72と電気的に接続されるコネクタ99が配置され、コネクタ99は、電動モータ72のモータ軸の軸線Aと略直交する方向に延出するように設けられると共に、電動モータ72の軸線Aを基準とする複数の回転位置(例えば、一側配置、他側配置、傾斜配置)で配置可能に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキシステムに組み込まれる電動ブレーキアクチュエータ及び車両用ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のブレーキ機構として、例えば、負圧式ブースタや油圧式ブースタを用いた倍力装置が知られている。この種の倍力装置として、近年、電動モータを倍力源として利用した電動倍力装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に開示された電動倍力装置は、ブレーキペダルの操作によって進退動作する主ピストンと、前記主ピストンと相対変位可能に外嵌された筒状のブースタピストンと、前記ブースタピストンを進退動作させる電動モータとを備えた単一のまとまった機器とし構成される。
【0004】
この場合、主ピストン及びブースタピストンをマスタシリンダのピストンとして、それぞれの前端部をマスタシリンダの圧力室に臨ませ、ブレーキペダルから主ピストンに付与される入力推力と、電動モータからブースタピストンに付与されるブースタ推力とによって、マスタシリンダ内にブレーキ液圧を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−23594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された電動倍力装置では、装置全体が大型化する傾向があり、量産したときの汎用性に欠けるという問題がある。
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、汎用性を向上させることが可能な電動ブレーキアクチュエータ及び車両用ブレーキシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、操作者のブレーキ操作に応じた電気信号に基づいて電動モータにより、ブレーキ液圧を発生させる電動ブレーキアクチュエータであって、前記電動ブレーキアクチュエータは、前記電動モータが設けられるアクチュエータハウジングを有し、前記アクチュエータハウジングの側面側には、前記電動モータと電気的に接続されるコネクタが配置され、前記コネクタは、前記電動モータのモータ軸の軸線と略直交する方向に延出するように設けられると共に、前記電動モータの軸線を基準とする複数の回転位置で配置可能に設けられることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、アクチュエータハウジングの側面側にコネクタを配置し、コネクタを電動モータのモータ軸の軸線と略直交する方向に延出するように設け、コネクタが電動モータの軸線を基準とする複数の回転位置で配置可能に設けることにより、コネクタの着脱スペースを確保して前記コネクタに対するアクセスが簡便となり、アクセス性を向上させることができる。この結果、電動ブレーキアクチュエータの使い易さ(取り付け易さ)が増大し、汎用性を向上させることができる。また、車両のハンドル位置における右ハンドル仕様及び左ハンドル仕様等に容易に対応することが可能となり、より一層汎用性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明は、前記電動モータの軸線を基準とする複数の回転位置間で前記コネクタの配置方向を変更する変更手段が設けられることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、変更手段を簡素な構造によって構成し、コネクタの配置位置を簡便に変更することができる。
【0012】
さらに、本発明は、前記コネクタが、少なくとも、電源用のパワーコネクタと、センサ用のセンサコネクタとを含んで複数分割形成されることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、センサから出力される検出信号へのノイズの発生を抑制することができると共に、複数のコネクタを一体化した場合と比較して小型化を達成することができる。
【0014】
さらにまた、本発明は、前記電動モータは、有底円筒状に形成されたモータケーシングと、前記モータケーシングの開口部に径方向外側に向けて形成されたフランジ部と、前記フランジ部に設けられねじ部材が挿通される複数の挿通孔と、前記モータケーシングと一体的に連結されるエンドブロックとを備え、前記エンドブロックの前記モータケーシングとの連結部には、複数のねじ穴が形成されており、前記複数のねじ穴と該ねじ穴に対して選択的に締結される複数のねじ部材とによって、前記コネクタの配置方向を変更することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、コネクタが電動モータの軸線を基準とする複数の回転位置で配置可能に設けられることにより、例えば、車両のハンドル位置における右ハンドル仕様及び左ハンドル仕様等に容易に対応することが可能となり、より一層汎用性を向上させることができる。
【0016】
またさらに、本発明は、前記フランジ部には4つの挿通孔が設けられると共に、前記連結部には4つのねじ穴が設けられており、前記4つのねじ穴と該ねじ穴に対して選択的に締結される3つのねじ部材とによって、前記コネクタの配置方向を変更することを特徴とする。
【0017】
本発明によれは、4つのねじ穴と3つのねじ部材とによって、容易にコネクタの配置方向を変更することができる。
【0018】
またさらに、本発明は、前記挿通孔が、第1の挿通孔が前記パワーコネクタと前記センサコネクタとの間に設けられると共に、第2の挿通孔が前記電動モータの軸線に対して前記第1の挿通孔と対角線上の位置に設定され、第3の挿通孔及び第4の挿通孔が前記電動モータの軸線に対して対角線上の位置に設けられ、前記第1の挿通孔及び前記第2の挿通孔に対して、前記電動モータの軸線を基準として角度αだけ反時計回り方向に回転した位置にオフセットして設けられると共に、前記ねじ穴は、第1のねじ穴及び第2のねじ穴が前記連結部に形成された開口部を挟んで対角線上に位置し、第3のねじ穴及び第4のねじ穴のうち、前記第3のねじ穴は前記第1のねじ穴に対して前記開口部の中心を基準として角度αだけ上方向に回転した位置に設けられ、第4のねじ穴は前記第2のねじ穴に対して前記開口部の中心を基準として角度αだけ上方向に回転した位置に設けられており、前記コネクタの延出方向は、前記第1の挿通孔及び前記第2の挿通孔を結んだ直線の方向と略一致するように設定されていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、コネクタの延出方向が、第1の挿通孔及び第2の挿通孔を結んだ直線の方向と略一致するように設定されているので、各挿通孔と各ねじ穴の設定により、コネクタの延出方向の自由度を増すことが可能となる。
【0020】
またさらに、本発明は、前記複数のねじ部材が締結される挿通孔のうち、前記コネクタに近接する挿通孔が、前記コネクタのいずれの配置においても前記ねじ部材によって常に締結されることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、複数のねじ部材が締結される挿通孔のうち、コネクタに近接する挿通孔は、コネクタのいずれの配置方向においてもねじ部材によって常に締結されているので、コネクタに対する外部の連結コネクタの着脱荷重を効果的に受け止めることができる。
【0022】
またさらに、本発明は、前記ねじ部材によって常に締結される挿通孔が、前記電源用のパワーコネクタと前記センサ用のセンサコネクタとの間に設けられていることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、パワーコネクタ及びセンサコネクタのそれぞれに対する外部の連結コネクタの着脱荷重を受ける締結部を両コネクタの間に設けたので、2つの着脱荷重を受ける締結部を共用化することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、汎用性を向上させることが可能な電動ブレーキアクチュエータ及び車両用ブレーキシステムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るモータシリンダ装置が組み込まれた車両用ブレーキシステムの概略構成図である。
【図2】図1に示すモータシリンダ装置の斜視図である。
【図3】前記モータシリンダ装置の分解斜視図である。
【図4】前記モータシリンダ装置の正面図である。
【図5】第一の実施形態におけるコネクタを電動モータの一側に配置した状態を示す一部省略正面図である。
【図6】第一の実施形態におけるコネクタを図5の状態から180度反転させて電動モータの他側に配置した状態を示す一部省略正面図である。
【図7】第一の実施形態におけるコネクタを電動モータに対して傾斜させて配置した状態を示す一部省略正面図である。
【図8】第二の実施形態におけるコネクタを電動モータの一側に配置した状態を示す一部省略正面図である。
【図9】第二の実施形態におけるコネクタを図8の状態から180度反転させて電動モータの他側に配置した状態を示す一部省略正面図である。
【図10】第二の実施形態におけるコネクタを電動モータに対して傾斜させて配置した状態を示す一部省略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るモータシリンダ装置が組み込まれた車両用ブレーキシステムの概略構成図である。
【0027】
図1に示す車両用ブレーキシステム10は、通常時用として、電気信号を伝達してブレーキを作動させるバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、フェイルセイフ時用として、油圧を伝達してブレーキを作動させる旧来の油圧式のブレーキシステムの双方を備えて構成される。
【0028】
このため、図1に示すように、車両用ブレーキシステム10は、基本的に、操作者によってブレーキペダル12が操作されたときにその操作を入力(検出)する入力装置14と、ブレーキ液圧を制御するモータシリンダ装置(電動ブレーキアクチュエータ)16と、車両挙動の安定化を支援するビークルスタビリティアシスト装置18(以下、VSA装置18という、VSA;登録商標)とを別体として備えて構成されている。
【0029】
これらの入力装置14、モータシリンダ装置16、及び、VSA装置18は、例えば、ホースやチューブ等の管材で形成された液圧路によって接続されていると共に、バイ・ワイヤ式のブレーキシステムとして、入力装置14とモータシリンダ装置16とは、図示しないハーネスで電気的に接続されている。
【0030】
このうち、液圧路について説明すると、図1中の連結点A1を基準として、入力装置14の接続ポート20aと連結点A1とが第1配管チューブ22aによって接続され、また、モータシリンダ装置16の出力ポート24aと連結点A1とが第2配管チューブ22bによって接続され、さらに、VSA装置18の導入ポート26aと連結点A1とが第3配管チューブ22cによって接続されている。
【0031】
図1中の他の連結点A2を基準として、入力装置14の他の接続ポート20bと連結点A2とが第4配管チューブ22dによって接続され、また、モータシリンダ装置16の他の出力ポート24bと連結点A2とが第5配管チューブ22eによって接続され、さらに、VSA装置18の他の導入ポート26bと連結点A2とが第6配管チューブ22fによって接続されている。
【0032】
VSA装置18には、複数の導出ポート28a〜28dが設けられる。第1導出ポート28aは、第7配管チューブ22gによって右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30aのホィールシリンダ32FRと接続される。第2導出ポート28bは、第8配管チューブ22hによって左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30bのホィールシリンダ32RLと接続される。第3導出ポート28cは、第9配管チューブ22iによって右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30cのホィールシリンダ32RRと接続される。第4導出ポート28dは、第10配管チューブ22jによって左側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30dのホィールシリンダ32FLと接続される。
【0033】
この場合、各導出ポート28a〜28dに接続される配管チューブ22g〜22jによってブレーキ液がディスクブレーキ機構30a〜30dの各ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに対して供給され、各ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL内の液圧が上昇することにより、各ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動し、対応する車輪(右側前輪、左側後輪、右側後輪、左側前輪)に対して制動力が付与される。
【0034】
なお、車両用ブレーキシステム10は、例えば、エンジン(内燃機関)のみによって駆動される自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等を含む各種車両に対して搭載可能に設けられる。この車両には、例えば、四輪駆動自動車(4WD)、前輪駆動自動車(FF)、後輪駆動自動車(FR)等が含まれる。
【0035】
入力装置14は、運転者(操作者)によるブレーキペダル12の操作によって液圧を発生可能なタンデム式のマスタシリンダ34と、前記マスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36とを有する。このマスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、前記シリンダチューブ38の軸方向に沿って所定間隔離間する2つのピストン40a、40bが摺動自在に配設される。一方のピストン40aは、ブレーキペダル12に近接して配置され、プッシュロッド42を介してブレーキペダル12と連結されて直動される。また、他方のピストン40bは、一方のピストン40aよりもブレーキペダル12から離間して配置される。
【0036】
この一方及び他方のピストン40a、40bの外周面には、環状段部を介して一対のピストンパッキン44a、44bがそれぞれ装着される。一対のピストンパッキン44a、44bの間には、それぞれ、後記するサプライポート46a、46bと連通する背室48a、48bが形成される。また、一方及び他方のピストン40a、40bとの間には、ばね部材50aが配設され、他方のピストン40bとシリンダチューブ38の側端部と間には、他のばね部材50bが配設される。なお、一対のピストンパッキン44a、44bは、シリンダチューブ38の内壁側に環状溝を介して装着されるようにしてもよい。
【0037】
マスタシリンダ34のシリンダチューブ38には、2つのサプライポート46a、46bと、2つのリリーフポート52a、52bと、2つの出力ポート54a、54bとが設けられる。この場合、各サプライポート46a(46b)及び各リリーフポート52a(52b)は、それぞれ合流して第1リザーバ36内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。
【0038】
また、マスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、運転者がブレーキペダル12を踏み込む踏力に対応したブレーキ液圧を発生させる第1圧力室56a及び第2圧力室56bが設けられる。第1圧力室56aは、第1液圧路58aを介して接続ポート20aと連通するように設けられ、第2圧力室56bは、第2液圧路58bを介して他の接続ポート20bと連通するように設けられる。
【0039】
マスタシリンダ34と接続ポート20aとの間であって、第1液圧路58aの上流側には圧力センサPmが配設されると共に、第1液圧路58aの下流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第1遮断弁60aが設けられる。この圧力センサPmは、第1液圧路58a上において、第1遮断弁60aよりもマスタシリンダ34側である上流側の液圧を検知するものである。
【0040】
マスタシリンダ34と他の接続ポート20bとの間であって、第2液圧路58bの上流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第2遮断弁60bが設けられると共に、第2液圧路58bの下流側には、圧力センサPpが設けられる。この圧力センサPpは、第2液圧路58b上において、第2遮断弁60bよりもホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL側である下流側の液圧を検知するものである。
【0041】
この第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bにおけるノーマルオープンとは、ノーマル位置(通電されていないときの弁体の位置)が開位置の状態(常時開)となるように構成されたバルブをいう。なお、図1中において、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bは、ソレノイドが通電されて、図示しない弁体が作動した弁閉状態をそれぞれ示している。
【0042】
マスタシリンダ34と第2遮断弁60bとの間の第2液圧路58bには、前記第2液圧路58bから分岐する分岐液圧路58cが設けられ、前記分岐液圧路58cには、ノーマルクローズタイプ(常閉型)のソレノイドバルブからなる第3遮断弁62と、ストロークシミュレータ64とが直列に接続される。この第3遮断弁62におけるノーマルクローズとは、ノーマル位置(通電されていないときの弁体の位置)が閉位置の状態(常時閉)となるように構成されたバルブをいう。なお、図1中において、第3遮断弁62は、ソレノイドが通電されて、図示しない弁体が作動した弁開状態を示している。
【0043】
このストロークシミュレータ64は、バイ・ワイヤ制御時において、ブレーキのストロークと反力を発生させて、あたかも踏力で制動力を発生させているかのごとく操作者に思わせる装置であり、第2液圧路58b上であって、第2遮断弁60bよりもマスタシリンダ34側に配置されている。前記ストロークシミュレータ64には、分岐液圧路58cに連通する液圧室65が設けられ、前記液圧室65を介して、マスタシリンダ34の第2圧力室56bから導出されるブレーキ液(ブレーキフルード)が吸収可能に設けられる。
【0044】
また、ストロークシミュレータ64は、互いに直列に配置されたばね定数の高い第1リターンスプリング66aとばね定数の低い第2リターンスプリング66bと、前記第1及び第2リターンスプリング66a、66bによって付勢されるシミュレータピストン68とを備え、ブレーキペダル12の踏み込み前期時にペダル反力の増加勾配を低く設定し、踏み込み後期時にペダル反力を高く設定してブレーキペダル12のペダルフィーリングを既存のマスタシリンダと同等となるように設けられている。
【0045】
液圧路は、大別すると、マスタシリンダ34の第1圧力室56aと複数のホィールシリンダ32FR、32RLとを接続する第1液圧系統70aと、マスタシリンダ34の第2圧力室56bと複数のホィールシリンダ32RR、32FLとを接続する第2液圧系統70bとから構成される。
【0046】
第1液圧系統70aは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54aと接続ポート20aとを接続する第1液圧路58aと、入力装置14の接続ポート20aとモータシリンダ装置16の出力ポート24aとを接続する配管チューブ22a、22bと、モータシリンダ装置16の出力ポート24aとVSA装置18の導入ポート26aとを接続する配管チューブ22b、22cと、VSA装置18の導出ポート28a、28bと各ホィールシリンダ32FR、32RLとをそれぞれ接続する配管チューブ22g、22hとによって構成される。
【0047】
第2液圧系統70bは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54bと他の接続ポート20bとを接続する第2液圧路58bと、入力装置14の他の接続ポート20bとモータシリンダ装置16の出力ポート24bとを接続する配管チューブ22d、22eと、モータシリンダ装置16の出力ポート24bとVSA装置18の導入ポート26bとを接続する配管チューブ22e、22fと、VSA装置18の導出ポート28c、28dと各ホィールシリンダ32RR、32FLとをそれぞれ接続する配管チューブ22i、22jとを有する。
【0048】
この結果、液圧路が第1液圧系統70aと第2液圧系統70bとによって構成されることにより、各ホィールシリンダ32FR、32RLと各ホィールシリンダ32RR、32FLとをそれぞれ独立して作動させ、相互に独立した制動力を発生させることができる。
【0049】
図2は、図1に示すモータシリンダ装置の斜視図、図3は、前記モータシリンダ装置の分解斜視図、図4は、前記モータシリンダ装置の正面図である。
【0050】
電動ブレーキアクチュエータとして機能するモータシリンダ装置16は、図2に示すように、電動モータ72を含むアクチュエータ機構74と、前記アクチュエータ機構74によって付勢されるシリンダ機構(シリンダ)76とを有する。
【0051】
アクチュエータ機構74は、図3に示すように、アクチュエータハウジング75を有し、前記アクチュエータハウジング75には、電動モータ72が連結される連結部77と、シリンダ本体82が連結されるフランジ部79とが設けられる。なお、前記フランジ部79には、一対のねじ穴81bに締結される一対のねじ部材81aを介して、略菱形状のプレートからなるシリンダ本体82の他端部が締結される。
【0052】
また、前記アクチュエータハウジング75内には、図1に示すように、電動モータ72の後記するエンドブロック95内に設けられ前記電動モータ72の回転角度を検出する回転角度センサ73と、前記電動モータ72の出力軸(モータ軸)に連結されたギヤを含む複数のギヤが噛合して電動モータ72の回転駆動力を伝達するギヤ機構(減速機構)78と、前記ギヤ機構78を介して前記回転駆動力が伝達されることにより軸方向に沿って進退動作するボールねじ軸80a及びボール80bを含むボールねじ構造体80とが収容される。なお、回転角度センサ73は、例えば、レゾルバやロータリエンコーダ等によって構成される。
【0053】
図3に示すように、アクチュエータハウジング75の連結部77には、略円形状の開口部83と、シリンダ本体82側から見て矩形状の側壁85の四隅角部近傍部位に設けられた4つのねじ穴87a〜87dとがそれぞれ形成される。この場合、後記するように、4つのねじ穴87a〜87dの中から選択された一対のねじ穴87a、87b(又は87c、87d)に締結される一対のねじ部材89を介して電動モータ72がアクチュエータハウジング75に対して一体的に結合される。なお、選択されなかった残りの一対のねじ穴87c、87d(又は87a、87b)は、そのままの状態で外部に露呈される。また、前記ねじ穴の個数は、使用する場合に適宜穿孔加工等を行えばよく、事前に4つのねじ穴を設けなくてもよい。
【0054】
矩形状の側壁85に形成された複数のねじ穴87a〜87d及び前記ねじ穴87a〜87dに締結される一対のねじ部材89は、コネクタ99の配置方向を変更する変更手段として機能するものであり、コネクタ99の配置方向の変更については、後記で詳細に説明する。
【0055】
電動モータ72は、例えば、周知のサーボモータ等からなり、有底円筒状に形成されたモータケーシング91と、モータケーシング91の開口部に径方向外側に向けて形成されたフランジ部91aと、フランジ部91aに設けられねじ部材89が挿通される2つの挿通孔93と、前記モータケーシング91と一体的に連結されるエンドブロック95と、前記エンドブロック95の側面から外方に向かって突出する図示しない接続ピンを介して前記エンドブロック95に連結されるコネクタ99とを備える。なお、エンドブロック95には、フランジ部91aの各挿通孔93の位置に合わせて図示しない挿通孔が軸方向に貫通して設けられている。また、モータケーシング91内には、図示しないロータ、ステータやマグネット等が配設される。
【0056】
アクチュエータハウジング75の側面側には、電動モータ72と電気的に接続されるコネクタ99が配置される。このコネクタ99は、モータケーシング91(エンドブロック95を含んでもよい)と一体に形成されてアクチュエータハウジング75の連結部77に固定される。本実施形態では、アクチュエータハウジング75の外部であってその側面側(側部)にコネクタ99を配置することにより、前記コネクタ99に対するアクセスが簡便となり、アクセス性を向上させることができる。
【0057】
このコネクタ99は、電動モータ72に対して電力を供給する電源用のパワーコネクタ99aと、回転角度センサ73で検出された検出信号を図示しない制御手段に送給するセンサ用のセンサコネクタ99bとを有し、用途が異なる複数のコネクタが、それぞれ分割して構成される。この分割構成されたパワーコネクタ99a及びセンサコネクタ99bは、それぞれ同一方向に並設されると共に、電動モータ72の出力軸(モータ軸)の軸線と略直交する方向に延出するように設けられる。
【0058】
前記パワーコネクタ99aは、角筒状のコネクタハウジング101を有し、コネクタハウジング101の内部には、電動モータ72と電気的に接続される複数のコネクタピン103が収納される。前記センサコネクタ99bは、角筒状のコネクタハウジング105を有し、コネクタハウジング105の内部には、回転角度センサ73と電気的に接続される複数のコネクタピン(図示せず)が設けられる。
【0059】
図4に示すように、前記パワーコネクタ99aには、矢印方向(着脱方向)に沿って着脱自在な連結コネクタ107aが接続される。前記連結コネクタ107aには、コネクタピン103(図3参照)が挿通されて前記コネクタピン103と電気的に接続される図示しない端子部が設けられる。
【0060】
また、前記センサコネクタ99bには、矢印方向(着脱方向)に沿って着脱自在な連結コネクタ107bが接続される。前記連結コネクタ107bには、図示しないコネクタピンが挿通されて前記コネクタピンと電気的に接続される図示しない端子部が設けられる。なお、一方の連結コネクタ107aは、図示しないハーネスによってバッテリ等の電源と電気的に接続され、他方の連結コネクタ107bは、図示しないハーネスによって図示しない制御手段と電気的に接続される。
【0061】
シリンダ機構(シリンダ)76は、略円筒状のシリンダ本体82と、前記シリンダ本体82の外周面に直接的に付設された第2リザーバ84とを有する。前記シリンダ本体82は、アクチュエータハウジング75と分離可能に設けられ、前記アクチュエータハウジング75と前記シリンダ本体82とによって、電動ブレーキアクチュエータ本体が構成される。
【0062】
モータシリンダ装置16のシリンダ本体82に対して直付けされる第2リザーバ84を設けることにより、シリンダ本体82内における必要十分なブレーキ液量を確保することができる。第2リザーバ84は、入力装置14のマスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36と配管チューブ86で接続され、第1リザーバ36内に貯留されたブレーキ液が配管チューブ86を介して第2リザーバ84内に供給されるように設けられる。
【0063】
第2リザーバ84は、リザーバ本体109を有し、リザーバ本体109には、配管チューブ86が接続されるニップル111が設けられる。このニップル111を通じてブレーキ液がリザーバ本体109内に導入され、ニップル111の延在方向が、ブレーキ液導入方向となる。なお、リザーバ本体109からのニップル111の取り出し方向(延出方向)は、例えば、図2の仮想線で例示されるように、リザーバ本体109の種々の任意の方向に設定することが可能である。
【0064】
本実施形態では、図4に示すように、第2リザーバ84へのブレーキ液の導入方向と、コネクタ99(パワーコネクタ99a及びセンサコネクタ99b)の着脱方向とが一致するように設けられる。この結果、モータシリンダ装置16の組付時やメンテナンス時におけるアクセスが簡便となり、アクセス性を向上させることができると共に、同一方向からの組付作業及びメンテナンス作業が容易となり、作業性を向上させることができる。さらに、このような組付作業及びメンテナンス作業を遂行する作業者に対する負担を軽減させることができる。
【0065】
図1に戻って、シリンダ本体82内には、前記シリンダ本体82の軸方向に沿って所定間隔離間する第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bが摺動自在に配設される。第1スレーブピストン88aは、ボールねじ構造体80側に近接して配置され、ボールねじ軸80aの一端部に当接して前記ボールねじ軸80aと一体的に矢印X1又はX2方向に変位する。また、第2スレーブピストン88bは、第1スレーブピストン88aよりもボールねじ構造体80側から離間して配置される。
【0066】
この第1及び第2スレーブピストン88a、88bの外周面には、環状段部を介して一対のスレーブピストンパッキン90a、90bがそれぞれ装着される。一対のスレーブピストンパッキン90a、90bの間には、それぞれ、後記するリザーバポート92a、92bとそれぞれ連通する第1背室94a及び第2背室94bが形成される。また、第1及び第2スレーブピストン88a、88bとの間には、第1リターンスプリング96aが配設され、第2スレーブピストン88bとシリンダ本体82の側端部と間には、第2リターンスプリング96bが配設される。
【0067】
シリンダ機構76のシリンダ本体82には、2つのリザーバポート92a、92bと、2つの出力ポート24a、24bとが設けられる。この場合、リザーバポート92a(92b)は、第2リザーバ84内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。
【0068】
また、シリンダ本体82内には、出力ポート24aからホィールシリンダ32FR、32RL側へ出力されるブレーキ液圧を制御する第1液圧室98aと、他の出力ポート24bからホィールシリンダ32RR、32FL側へ出力されるブレーキ液圧を制御する第2液圧室98bが設けられる。
【0069】
なお、第1スレーブピストン88aと第2スレーブピストン88bとの間には、第1スレーブピストン88aと第2スレーブピストン88bの最大ストローク(最大変位距離)と最小ストローク(最小変位距離)とを規制する規制手段100が設けられ、さらに、第2スレーブピストン88bには、前記第2スレーブピストン88bの摺動範囲を規制して、第1スレーブピストン88a側へのオーバーリターンを阻止するストッパピン102が設けられ、これによって、特に、マスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧で制動するときのバックアップ時において、1系統の失陥時に他系統の失陥が防止される。
【0070】
VSA装置18は、周知のものからなり、右側前輪及び左側後輪のディスクブレーキ機構30a、30b(ホィールシリンダ32FR、ホィールシリンダ32RL)に接続された第1液圧系統70aを制御する第1ブレーキ系110aと、右側後輪及び左側前輪のディスクブレーキ機構30c、30d(ホィールシリンダ32RR、ホィールシリンダ32FL)に接続された第2液圧系統70bを制御する第2ブレーキ系110bとを有する。なお、第1ブレーキ系110aは、左側前輪及び右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第2ブレーキ系110bは、左側後輪及び右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。さらに、第1ブレーキ系110aは、車体片側の右側前輪及び右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第2ブレーキ系110bは、車体片側の左側前輪及び左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。
【0071】
この第1ブレーキ系110a及び第2ブレーキ系110bは、それぞれ同一構造からなるため、第1ブレーキ系110aと第2ブレーキ系110bで対応するものには同一の参照符号を付していると共に、第1ブレーキ系110aの説明を中心にして、第2ブレーキ系110bの説明を括弧書きで付記する。
【0072】
第1ブレーキ系110a(第2ブレーキ系110b)は、ホィールシリンダ32FR、32RL(32RR、32FL)に対して、共通する第1共通液圧路112及び第2共通液圧路114を有する。VSA装置18は、導入ポート26aと第1共通液圧路112との間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなるレギュレータバルブ116と、前記レギュレータバルブ116と並列に配置され導入ポート26a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から導入ポート26a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第1チェックバルブ118と、第1共通液圧路112と第1導出ポート28aとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1インバルブ120と、前記第1インバルブ120と並列に配置され第1導出ポート28a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第1導出ポート28a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第2チェックバルブ122と、第1共通液圧路112と第2導出ポート28bとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2インバルブ124と、前記第2インバルブ124と並列に配置され第2導出ポート28b側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2導出ポート28b側へのブレーキ液の流通を阻止する)第3チェックバルブ126とを備える。
【0073】
さらに、VSA装置18は、第1導出ポート28aと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第1アウトバルブ128と、第2導出ポート28bと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第2アウトバルブ130と、第2共通液圧路114に接続されたリザーバ132と、第1共通液圧路112と第2共通液圧路114との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2共通液圧路114側へのブレーキ液の流通を阻止する)第4チェックバルブ134と、前記第4チェックバルブ134と第1共通液圧路112との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へブレーキ液を供給するポンプ136と、前記ポンプ136の前後に設けられる吸入弁138及び吐出弁140と、前記ポンプ136を駆動するモータMと、第2共通液圧路114と導入ポート26aとの間に配置されるサクションバルブ142とを備える。
【0074】
なお、第1ブレーキ系110aにおいて、導入ポート26aに近接する液圧路上には、モータシリンダ装置16の出力ポート24aから出力され、前記モータシリンダ装置16の第1液圧室98aで制御されたブレーキ液圧を検知する圧力センサPhが設けられる。各圧力センサPm、Pp、Phで検出された検出信号は、図示しない制御手段に導入される。また、前記VSA装置18では、VSA制御がなされる他、ABS制御も含まれる。
【0075】
本実施形態に係るモータシリンダ装置16が組み込まれた車両用ブレーキシステム10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0076】
車両用ブレーキシステム10が正常に機能する正常時には、ノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bが通電により励磁されて弁閉状態となり、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第3遮断弁62が通電により励磁されて弁開状態となる。従って、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bによって第1液圧系統70a及び第2液圧系統70bが遮断されているため、入力装置14のマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧がディスクブレーキ機構30a〜30dのホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達されることはない。
【0077】
このとき、マスタシリンダ34の第2圧力室56bで発生したブレーキ液圧は、分岐液圧路58c及び弁開状態にある第3遮断弁62を経由してストロークシミュレータ64の液圧室65に伝達される。この液圧室65に供給されたブレーキ液圧によってシミュレータピストン68がばね部材66a、66bのばね力に抗して変位することにより、ブレーキペダル12のストロークが許容されると共に、擬似的なペダル反力を発生させてブレーキペダル12に付与される。この結果、運転者にとって違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
【0078】
このようなシステム状態において、図示しない制御手段は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込みを検出すると、モータシリンダ装置16の電動モータ72を駆動させてアクチュエータ機構74を付勢し、第1リターンスプリング96a及び第2リターンスプリング96bのばね力に抗して第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bを図1中の矢印X1方向に向かって変位させる。この第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bの変位によって第1液圧室98a及び第2液圧室98b内のブレーキ液圧がバランスするように加圧されて所望のブレーキ液圧が発生する。
【0079】
このモータシリンダ装置16における第1液圧室98a及び第2液圧室98bのブレーキ液圧は、VSA装置18の弁開状態にある第1、第2インバルブ120、124を介してディスクブレーキ機構30a〜30dのホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達され、前記ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動することにより各車輪に所望の制動力が付与される。
【0080】
換言すると、本実施形態に係る車両用ブレーキシステム10では、動力液圧源として機能するモータシリンダ装置16やバイ・ワイヤ制御する図示しないECU等が作動可能な正常時において、運転者がブレーキペダル12を踏むことでブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ34と各車輪を制動するディスクブレーキ機構30a〜30d(ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)との連通を第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bで遮断した状態で、モータシリンダ装置16が発生するブレーキ液圧でディスクブレーキ機構30a〜30dを作動させるという、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ方式のブレーキシステムがアクティブになる。このため、本実施形態では、例えば、電気自動車等のように、旧来から用いられていた内燃機関による負圧が存在しない車両に好適に適用することができる。
【0081】
一方、モータシリンダ装置16等が作動不能となる異常時では、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bをそれぞれ弁開状態とし、且つ、第3遮断弁62を弁閉状態としてマスタシリンダ34で発生するブレーキ液圧をディスクブレーキ機構30a〜30d(ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)に伝達して、前記ディスクブレーキ機構30a〜30d(ホィールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)を作動させるという、いわゆる旧来の油圧式のブレーキシステムがアクティブになる。
【0082】
本実施形態では、アクチュエータハウジング75の外側の側面側(側部)にコネクタ99を配置することにより、コネクタ99の着脱スペースを確保して前記コネクタ99に対するアクセスが簡便となり、アクセス性を向上させることができる。この結果、モータシリンダ装置16の使い易さが増大し、汎用性を向上させることができる。
【0083】
この場合、例えば、コネクタ99が、電動モータ72の出力軸(モータ軸)の軸線と略直交する方向に延出するように設けられることにより、より一層アクセス性を向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態では、図4に示すように、第2リザーバ84へのブレーキ液の導入方向(配管チューブ86が接続されるニップル111の延在方向)と、コネクタ99(パワーコネクタ99a及びセンサコネクタ99b)の着脱方向とが一致するように設けられることにより、モータシリンダ装置16の組付時やメンテナンス時におけるアクセスが簡便となり、アクセス性を向上させることができると共に、同一方向からの組付作業及びメンテナンス作業が容易となり、作業性を向上させることができる。さらに、このような組付作業及びメンテナンス作業を遂行する作業者に対する負担を軽減させることができる。
【0085】
図5は、第一の実施形態におけるコネクタを電動モータの一側に配置した状態を示す一部省略正面図、図6は、第一の実施形態におけるコネクタを図5の状態から180度反転させて電動モータの他側に配置した状態を示す一部省略正面図、図7は、第一の実施形態におけるコネクタを電動モータに対して傾斜させて配置した状態を示す一部省略正面図である。
【0086】
図5に示すコネクタ99の回転配置例では、一対のねじ部材89が、モータケーシング91のフランジ部91aに相互に対角線上に位置する一対の挿通孔93を介してねじ穴87a、87bに締結されて電動モータ72が連結部77に固定される。なお、一方の挿通孔93はパワーコネクタ99aとセンサコネクタ99bとの間に設けられている。この結果、上部側のパワーコネクタ99aと下部側のセンサコネクタ99bとが並設された状態で電動モータ72の横方向に沿った一側に配置される。この場合、4つのねじ穴87a〜87dの中から一対のねじ穴87a、87bが選択され、選択されなかった残りの一対のねじ穴87c、87dは、そのままの状態で外部に露呈される。
【0087】
また、図6に示すコネクタ99の回転配置例では、図5に示すコネクタ99の一側配置の状態から電動モータ72の軸線Aを回転中心として180度回転させることによりコネクタ99が反転し、一対のねじ部材89が挿通孔93を介してねじ穴87a、87bに締結されて電動モータ72が連結部77に固定される。この結果、上部側のセンサコネクタ99bと下部側のパワーコネクタ99aとが並設された状態で電動モータ72の横方向に沿った他側に配置される。この場合、電動モータ72及びコネクタ99は、図5と同一のものからなり、また、4つのねじ穴87a〜87dの中から一対のねじ穴87a、87bが選択され、選択されなかった残りの一対のねじ穴87c、87dは、そのままの状態で外部に露呈される。
【0088】
さらに、図7に示すコネクタ99の回転配置例では、一対のねじ部材89がモータケーシング91のフランジ部91aに相互に対角線上に位置する一対の挿通孔93を介して相互に対角線上に位置する他の一対のねじ穴87c、87dに締結されて電動モータ72が連結部77に固定される。この結果、コネクタ99が電動モータ72に対して傾斜した状態で配置される。この場合、4つのねじ穴87a〜87dの中から他の一対のねじ穴87c、87dが選択され、選択されなかった残りの一対のねじ穴87a、87bは、そのままの状態で外部に露呈される。また、電動モータ72及びコネクタ99は、図5と同一のものである。
【0089】
本実施形態では、図5〜図7に示すように、コネクタ99が電動モータ72の軸線Aを基準とする複数の回転位置で配置可能に設けられることにより、例えば、車両のハンドル位置における右ハンドル仕様及び左ハンドル仕様等に容易に対応することが可能となり、より一層汎用性を向上させることができる。
【0090】
また、本実施形態では、矩形状の側壁85に形成された4つのねじ穴87a〜87dと、前記ねじ穴87a〜87dに対して選択的に締結される一対のねじ部材89とによって、コネクタ99の配置方向を変更する変更手段が構成される。一対のねじ部材89が締結されるねじ穴87a〜87dを複数のねじ穴87a〜87d中から任意に選択し、選択されたねじ穴87a〜87dの位置に合うように、電動モータ72の軸線Aを回転中心としてコネクタ99を回転させることにより、コネクタ99の配置位置を変更することができる。この結果、本実施形態では、変更手段を簡素な構造によって構成し、コネクタ99の配置位置を簡便に変更することができる。
【0091】
さらに、パワーコネクタ99aとセンサコネクタ99bとの間に一方の挿通孔93が設けられ、この部位をねじ部材89によって締結するため、パワーコネクタ99a及びセンサコネクタ99bのそれぞれに対する外部の連結コネクタ107a、107b(図4参照)の着脱荷重を受ける締結部を1つの締結部で共用化することができる。
【0092】
図8は、第二の実施形態におけるコネクタを電動モータの一側に配置した状態を示す一部省略正面図、図9は、第二の実施形態におけるコネクタを図8の状態から180度反転させて電動モータの他側に配置した状態を示す一部省略正面図、図10は、第二の実施形態におけるコネクタを電動モータに対して傾斜させて配置した状態を示す一部省略正面図である。
【0093】
次に、コネクタの第二の実施形態について図8〜10を基に説明する。
本実施形態では、前述の第一の実施形態と同様にアクチュエータハウジング75の連結部77の側壁85に設けられた4つのねじ穴87e〜87hが形成されているが、これらのねじ穴87e〜87hのうち、2つのねじ穴(第1のねじ穴、第2のねじ穴)87e、87fについては、開口部83(図3参照)を挟んで対角線上に位置しており、図8中において、略水平状の配置となるように設けられている。また、これら2つのねじ穴(第1のねじ穴、第2のねじ穴)87e、87fは開口部83の中心(電動モータ72の軸線A)からの離間距離がmとなるように設定されている(図8参照)。残り2つのねじ穴(第3のねじ穴、第4のねじ穴)87g、87hについては、一方側のねじ穴87gはねじ穴87eに対して開口部83の中心(電動モータ72の軸線A)を基準として角度αだけ上方向に回転した位置に設けられ、他方側のねじ穴87hもねじ穴87fに対して開口部83の中心(電動モータ72の軸線A)を基準として角度αだけ上方向に回転した位置に設けられている。なお、2つのねじ穴(第3のねじ穴、第4のねじ穴)87g、87hも開口部83の中心(電動モータ72の軸線A)からの離間距離がmとなるように等距離に設定されている。
【0094】
一方、モータケーシング91のフランジ部91aには4つの挿通孔93a〜93dが設けられている。また、4つの挿通孔93a〜93dのうちの1つの挿通孔(第1の挿通孔)93cはパワーコネクタ99aとセンサコネクタ99bとの間に設けられ、挿通孔(第2の挿通孔)93dは電動モータ72の軸線Aに対して挿通孔(第1の挿通孔)93cと対角線上の位置に設定されている。さらに挿通孔(第3の挿通孔、第4の挿通孔)93a、93bも電動モータ72の軸線Aに対して対角線上の位置に設けられおり、挿通孔(第3・第4の挿通孔)93a、93bは挿通孔(第1の挿通孔、第2の挿通孔)93c、93dに対して、電動モータの軸線Aを基準として角度αだけ反時計回り方向に回転した位置にオフセットして設けられている。なお、4つの挿通孔93a〜93dも電動モータ72の軸線Aからの離間距離がmとなるように設定されている。また、本実施形態において、角度αは約40度に設定されている。
【0095】
また、モータケーシング91に連結されるエンドブロック95と一体に形成されるパワーコネクタ99aとセンサコネクタ99bは、前述の第一の実施形態と同様に、それぞれ同一方向に並設されると共に、電動モータ72の出力軸(モータ軸)の軸線Aと略直交する方向に延出するように設けられるが、その延出方向は、挿通孔93c、93dの中心を結んだ直線Bの方向と略一致するように設定されている。
【0096】
図8に示すコネクタ99の回転配置例では、3つのねじ部材89が、モータケーシング91のフランジ部91aの3つの挿通孔93a、93c、93dを介して3つのねじ穴87e、87f、87hに締結されて電動モータ72が連結部77に固定される。この結果、上部側のパワーコネクタ99aと下部側のセンサコネクタ99bとが並設された状態で電動モータ72の横方向に沿った一側に配置される。この場合、4つのねじ穴87e〜87hの中から3つのねじ穴87e、87f、87hが選択され、選択されなかった残りの1つのねじ穴87gはそのままの状態で外部に露呈される。
【0097】
また、図9に示すコネクタ99の回転配置例では、図8に示すコネクタ99の一側配置の状態から電動モータ72の軸線Aを回転中心として180度回転させることによりコネクタ99が反転し、3つのねじ部材89が3つの挿通孔93b、93c、93dを介して3つのねじ穴87e、87f、87hに締結されて電動モータ72が連結部77に固定される。この結果、上部側のセンサコネクタ99bと下部側のパワーコネクタ99aとが並設された状態で電動モータ72の横方向に沿った他側に配置される。この場合、電動モータ72及びコネクタ99は、図5と同一のものからなり、また、4つのねじ穴87e〜87hの中から一対のねじ穴87e、87f、87hが選択され、選択されなかった残りの1つのねじ穴87gは、そのままの状態で外部に露呈される。
【0098】
さらに、図10に示すコネクタ99の回転配置例では、3つのねじ部材89がモータケーシング91のフランジ部91aに位置する3つの挿通孔93a、93b、93cを介して3つのねじ穴87e、87f、87gに締結されて電動モータ72が連結部77に固定される。この結果、コネクタ99が電動モータ72に対して傾斜した状態で配置される。この場合、4つのねじ穴87e〜87hの中から他の3つのねじ穴87e、87f、87gが選択され、選択されなかった残りの1つのねじ穴87hは、そのままの状態で外部に露呈される。このとき、パワーコネクタ99aとセンサコネクタ99bは、その延出方向が挿通孔93c、93dを結んだ直線Bの方向と略一致するように設定されているため、その延出方向は、ねじ穴87eに対して開口部83の中心を基準としたねじ穴87gの角度α、つまり本実施形態では約40度の方向となっている。これにより、各挿通孔93a〜93dと各ねじ穴87e〜87hの設定により、コネクタ99の延出方向の自由度を増すことが可能となる。なお、電動モータ72及びコネクタ99は、図5と同一のものである。
【0099】
本実施形態によっても、図8〜図10に示すように、コネクタ99が電動モータ72の軸線Aを基準とする複数の回転位置で配置可能に設けられることにより、例えば、車両のハンドル位置における右ハンドル仕様及び左ハンドル仕様等に容易に対応することが可能となり、より一層汎用性を向上させることができる。
【0100】
また、本実施形態においては、いずれの電動モータ72の配置においても、3つのねじ部材89が締結される挿通孔93a〜93dのうち、前記コネクタ99に近接する挿通孔93cは、コネクタ99のいずれの配置方向においてもねじ部材89によって締結されるようになっているため、コネクタ99に対する連結コネクタ107a、107bの着脱荷重を効果的に受け止めることができる。さらに、パワーコネクタ99aとセンサコネクタとの間に挿通孔93cが設けられ、この部位をねじ部材89によって締結するため、パワーコネクタ99a及びセンサコネクタ99bのそれぞれに対する外部の連結コネクタ107a、107bの着脱荷重を受ける締結部を1つの締結部で共用化することができる。
【0101】
さらに、本実施形態では、矩形状の側壁85に形成された4つのねじ穴87e〜87hと、前記ねじ穴87e〜87hに対して選択的に締結される3つのねじ部材89とによって、コネクタ99の配置方向を変更する変更手段が構成される。3つのねじ部材89が締結されるねじ穴87e〜87hを4つのねじ穴87e〜87h中から任意に選択し、選択されたねじ穴87e〜87hの位置に合うように、電動モータ72の軸線Aを回転中心としてコネクタ99を回転させることにより、コネクタ99の配置位置を変更することができる。この結果、本実施形態においても、変更手段を簡素な構造によって構成し、コネクタ99の配置位置を簡便に変更することができる。さらに、本実施形態においては、3つのねじ部材89によって連結部77に電動モータ72を固定できるため、より、電動モータ72の固定剛性を高めることが可能となる。
【0102】
なお、ねじ穴87a〜87d、ねじ穴87e〜87h及びねじ部材89の個数、配置等は、その一例を示したものであり、図5〜図7、図8〜図10に示される個数に限定されるものではなく、適宜設定するようにしてもよい。
【0103】
さらに、本実施形態では、コネクタ99が、少なくとも、電源用のパワーコネクタ99aと、センサ用のセンサコネクタ99bとを含んで2つに分割構成されることにより、回転角度センサ73から出力される検出信号へのノイズの発生を抑制することができると共に、複数のコネクタを一体化した場合と比較して小型化を達成することができる。
【0104】
さらにまた、本実施形態では、汎用性を向上させることが可能なモータシリンダ装置16を備えた車両用ブレーキシステム10を得ることができる。
【符号の説明】
【0105】
10 車両用ブレーキシステム
14 入力装置
16 モータシリンダ装置(電動ブレーキアクチュエータ)
72 電動モータ
75 アクチュエータハウジング
76 シリンダ機構(シリンダ)
82 シリンダ本体
84 第2リザーバ(リザーバ)
87a〜87h ねじ穴(変更手段)
88a、88b スレーブピストン(ピストン)
89 ねじ部材(変更手段)
93、93a〜93d 挿通孔
93c コネクタに近接する挿通孔
98a、98b 液圧室
99 コネクタ
99a パワーコネクタ
99b センサコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者のブレーキ操作に応じた電気信号に基づいて電動モータにより、ブレーキ液圧を発生させる電動ブレーキアクチュエータであって、
前記電動ブレーキアクチュエータは、前記電動モータが設けられるアクチュエータハウジングを有し、前記アクチュエータハウジングの側面側には、前記電動モータと電気的に接続されるコネクタが配置され、
前記コネクタは、前記電動モータのモータ軸の軸線と略直交する方向に延出するように設けられると共に、前記電動モータの軸線を基準とする複数の回転位置で配置可能に設けられることを特徴とする電動ブレーキアクチュエータ。
【請求項2】
前記電動モータの軸線を基準とする複数の回転位置間で前記コネクタの配置方向を変更する変更手段が設けられることを特徴とする請求項1に記載の電動ブレーキアクチュエータ。
【請求項3】
前記コネクタは、少なくとも、電源用のパワーコネクタと、センサ用のセンサコネクタとを含んで複数分割形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動ブレーキアクチュエータ。
【請求項4】
前記電動モータは、有底円筒状に形成されたモータケーシングと、前記モータケーシングの開口部に径方向外側に向けて形成されたフランジ部と、前記フランジ部に設けられねじ部材が挿通される複数の挿通孔と、前記モータケーシングと一体的に連結されるエンドブロックとを備え、
前記エンドブロックの前記モータケーシングとの連結部には、複数のねじ穴が形成されており、
前記複数のねじ穴と該ねじ穴に対して選択的に締結される複数のねじ部材とによって、前記コネクタの配置方向を変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動ブレーキアクチュエータ。
【請求項5】
前記フランジ部には4つの挿通孔が設けられると共に、前記連結部には4つのねじ穴が設けられており、
前記4つのねじ穴と該ねじ穴に対して選択的に締結される3つのねじ部材とによって、前記コネクタの配置方向を変更することを特徴とする請求項4に記載の電動ブレーキアクチュエータ。
【請求項6】
前記挿通孔は、第1の挿通孔が前記パワーコネクタと前記センサコネクタとの間に設けられると共に、第2の挿通孔が前記電動モータの軸線に対して前記第1の挿通孔と対角線上の位置に設定され、第3の挿通孔及び第4の挿通孔が前記電動モータの軸線に対して対角線上の位置に設けられ、前記第1の挿通孔及び前記第2の挿通孔に対して、前記電動モータの軸線を基準として角度αだけ反時計回り方向に回転した位置にオフセットして設けられると共に、
前記ねじ穴は、第1のねじ穴及び第2のねじ穴が前記連結部に形成された開口部を挟んで対角線上に位置し、第3のねじ穴及び第4のねじ穴のうち、前記第3のねじ穴は前記第1のねじ穴に対して前記開口部の中心を基準として角度αだけ上方向に回転した位置に設けられ、前記第4のねじ穴は前記第2のねじ穴に対して前記開口部の中心を基準として角度αだけ上方向に回転した位置に設けられており、
前記コネクタの延出方向は、前記第1の挿通孔及び前記第2の挿通孔を結んだ直線の方向と略一致するように設定されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の電動ブレーキアクチュエータ。
【請求項7】
前記複数のねじ部材が締結される挿通孔のうち、前記コネクタに近接する挿通孔は、前記コネクタのいずれの配置方向においても前記ねじ部材によって常に締結されることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の電動ブレーキアクチュエータ。
【請求項8】
前記ねじ部材によって常に締結される挿通孔は、前記電源用のパワーコネクタと前記センサ用のセンサコネクタとの間に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の電動ブレーキアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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