説明

電動作業機用制御装置及び電動作業機

【課題】明確な操作手順によってのみ電動モータが駆動する電動作業機用制御技術とその技術を採用した電動作業機を提供する。
【解決手段】作業ユニットに動力を伝達する電動モータに給電線を介して給電するバッテリユニットと、給電線に設けられた給電スイッチと、給電スイッチを制御するモータ給電制御部とが備えられている。モータ給電制御部は、主スイッチがOFF状態における副スイッチからのON状態信号に基づいて電動モータに対する始動制御を保留する無視状態を設定し、当該無視状態を副スイッチからのOFF状態信号によって解除する優先信号評価部を有し、無視状態の非設定時において主スイッチと副スイッチの両者のON状態が確認された場合に、給電スイッチを閉鎖して電動モータへの給電を可能にする制御信号を給電スイッチに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリから給電される電動モータの回転力を耕耘作業などに利用する電動作業機に搭載される電動作業機用制御装置及び電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
このような電動作業機用制御装置は、操縦部に設けられた、操作レバーや操作スイッチである操作デバイスを操作してバッテリから電動モータへの給電を制御する。このような制御装置を搭載した歩行型電動耕耘機が特許文献1から知られている。この特許文献1に記載された歩行型電動耕耘機は、モータによって動作する耕耘部と、このモータの駆動を操作するためのメインスイッチと、レバーによってON・OFFされるレバースイッチを有するハンドルとを備えている。さらに、メインスイッチがONされたときに視覚的に通報するインジケータも備えられている。ケース内に備えられたバッテリの陽極は、インジケータ、メインスイッチ、レバースイッチを介して制御部に接続されており、さらには、バッテリの陽極は、直接、制御部とも接続されている。また制御部は一方では接地されているとともに、他方ではモータと接続されている。メインスイッチを回動してONにすると、インジケータが点灯する。ハンドルにあるレバーを握ってグリップ側に引き付けることでレバースイッチをONにするとモータに電力が供給されモータが回転し、耕耘部による耕耘作業が行われる。
【0003】
この歩行型電動耕耘機では、メインスイッチのONとレバー操作によるレバースイッチのONとが成立することで、モータが回転する。2つのスイッチの操作を通じて操作者に対してモータ回転を意識させている。しかしながら、メインスイッチとレバースイッチのONが等しく扱われているため、メインスイッチをONしてからレバースイッチをONしても、あるいはレバースイッチをONしてからメインスイッチをONしても同様にモータは回転する。したがって、何らかのトラブルによりレバースイッチが不測にONとなっていた場合、あるいは操作者が無意識的にレバースイッチをONしていた場合では、メインスイッチのONにより直ちにモータが回転し、耕耘部が動作するという不都合が生じる。
【0004】
また、機体にセットするときには位置固定用の凸部を位置固定用の凹部に挿入してそのまま下に下ろすと位置固定用の足が位置固定用の穴に挿入されて位置固定がなされ、取っ手を引き上げるだけで取り出すことができるバッテリケースを備えた電動耕耘機が特許文献2から知られている。この特許文献2に記載された電動耕耘機は、ロータリ部(耕耘部)と、ロータリ部を駆動するモータと、ハンドルフレームの根元領域に電源の入り切りをする電源スイッチと、ハンドルフレームのグリップ近傍にモータの駆動を入り切りする操作レバーを備えている。操作レバーが操作されるとモータの駆動が入となり、離すとモータの駆動が切りとなる。さらに、操作レバーの近傍に初期位置では操作レバーによるモータの駆動の入り動作を禁止し、操作位置に操作するとモータの駆動の入り動作を可能とする安全装置が設けられている。
この電動耕耘機では、安全装置のおかげで、無意識に操作レバーをモータ駆動位置に操作する可能性は少なくなるが、何らかのトラブルによりスイッチ本体が不測にONとなっていた場合には、電源スイッチメのONにより直ちにモータが回転し、耕耘部が動作するという不都合は回避できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006‐55102号公報(段落番号〔0017−0026〕、図5)
【特許文献2】特開2011‐5号公報(段落番号〔0006−0025〕、図1、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、明確な操作手順によってのみ電動モータが駆動する電動作業機用制御技術とその技術を採用した電動作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による電動作業機用制御装置は、作業ユニットに動力を伝達する電動モータと、前記電動モータに給電線を介して給電するバッテリユニットと、前記給電線に設けられた給電スイッチと、操縦部に設けられるとともにON状態を示すON状態信号とOFF状態を示すOFF状態信号を出力する主スイッチ及び副スイッチと、前記給電スイッチの開閉を制御する制御信号を前記給電スイッチに出力するモータ給電制御部とを備え、前記モータ給電制御部は、前記主スイッチがOFF状態における前記副スイッチからのON状態信号に基づいて前記電動モータに対する始動制御を保留する無視状態を設定するとともに、当該無視状態を前記副スイッチからのOFF状態信号によって解除する優先信号評価部を有し、かつ前記モータ給電制御部は、前記無視状態の非設定時において前記主スイッチと前記副スイッチの両者のON状態が確認された場合に、前記給電スイッチを閉鎖して前記電動モータへの給電を可能にする制御信号を前記給電スイッチに出力する。
【0008】
この構成によれば、主スイッチがOFF状態であるときに副スイッチがON状態となれば一時的に電動モータに対する始動制御を保留して、前記副スイッチからの信号を無視する無視状態が設定される。この無視状態が設定されると、その後に主スイッチからON状態信号がおくられてくることで、主スイッチと副スイッチとの両者のON状態が確認されても、給電スイッチに対して電動モータへの給電を許可する制御信号が与えられないので、電動モータは始動しない。しかも、この無視状態は副スイッチからのOFF状態信号によって解除される。これにより、電動モータは、主スイッチがON状態となり、それから副スイッチがON状態にならない限り、始動しない。したがって、主スイッチがOFF状態において、何らかのトラブルで副スイッチがON状態になったとしても、あるいは操作者が無意識に副スイッチをON状態に操作していたとしても、無視状態が設定されるので、主スイッチがOFF状態からON状態になったとしても電動モータは始動しない。操作者が主スイッチをON状態にし、さらに副スイッチをON状態にすることで電動モータが始動するので、確実な操作手順が確立される。
【0009】
本発明の好適な実施形態の1つでは、モータ給電制御部は電動作業機から着脱可能なバッテリユニットに組み込まれている。モータ給電制御部をバッテリユニットに組み込むことで、電動作業機の機体側には埃や湿気を嫌う制御機器を配置する必要がなくなる。バッテリユニットはもともと防水を考慮されているので、この中に組み込まれたモータ給電制御部は埃や湿気から保護されることになる。
【0010】
本発明による電動作業機用制御装置を搭載した電動作業機の好適な形態として、操作者によって操縦される操縦部が左右一対のハンドルから構成され、一方のハンドルに主スイッチを設け、他方のハンドルに副スイッチを設けた場合、主スイッチの操作と副スイッチの操作とが操作者の左右の手に振り分けられ、操作手順を操作者が意識しやすくなる。
【0011】
さらに、好適な実施形態の1つでは、主スイッチが押しボタンスイッチであり、副スイッチがレバースイッチである。これにより操作者は異なった操作方法で主スイッチと副スイッチとを操作することになり、操作者の操作に対する意識付けが良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による電動モータ給電制御の基本原理を図解する模式図である。
【図2】本発明による電動管理機の外観を示す斜視図である。
【図3】電動作業機の側面図である。
【図4】電動作業機の機体部分の側面図である。
【図5】電動作業機の機体へのバッテリユニットの装着を示す側面図である。
【図6】電動作業機の機体へのバッテリユニットの装着を断面で示す正面図である。
【図7】電動作業機の制御電子系の機能ブロック図である。
【図8】電動モータ給電制御の流れを例示するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の具体的な実施の形態を説明する前に、図1を用いて本発明による電動モータ給電制御の基本原理を説明する。ここでは、電動作業機は歩行型耕耘機であり、その操縦部は左右一対のハンドルで、一方のハンドルに主スイッチが他方のハンドルに副スイッチが設けられているとする。電動モータ(以下単にモータと略称する)は、耕耘ロータとして構成された作業ユニットに回転動力を伝達する。図1の例では、バッテリからモータへの給電を制御するモータ給電制御部は、電動作業機の機体に取り出し可能に装着されるバッテリユニットにバッテリとともに組み込まれている。
【0014】
バッテリからモータへの給電線に、モータ給電制御部から出力される制御信号によって開放状態(給電状態)と閉鎖状態(遮断状態)を作り出す給電スイッチが介装されている。主スイッチはONとOFFに選択的に切り替え可能で、ONに切り替えられるとON状態信号を、OFFに切り替えられるとOFF状態信号を、モータ給電制御部に与える。同様に、副スイッチもONとOFFに選択的に切り替え可能で、ONに切り替えられるとON状態信号を、OFFに切り替えられるとOFF状態信号をモータ給電制御部に与える。
【0015】
モータ給電制御部には、主スイッチと副スイッチとに対する操作手順を管理する優先信号評価部が含まれている。この優先信号評価部は、主スイッチがOFF状態における副スイッチからのON状態信号に基づいてモータに対する始動制御の保留、つまりモータへの給電遮断を維持する無視状態を設定する。また優先信号評価部は、設定された無視状態において副スイッチからのOFF状態信号を受け取るとこの無視状態解除する。
【0016】
優先信号評価部によって無視状態が設定されていなければ、モータ給電制御部は、主スイッチと副スイッチの両者のON状態が確認された場合に、給電スイッチを閉鎖して電動モータへの給電を可能にする制御信号を給電スイッチに出力する。
【0017】
つまり、優先信号評価部は、内部状態として通常状態と無視状態とを有する。モータ給電制御部は内部状態として、主スイッチのON状態での副スイッチのON状態を示すON/ON状態、主スイッチのON状態での副スイッチのOFF状態を示すON/OFF状態、主スイッチのOFF状態での副スイッチのON状態を示すOFF/ON状態、主スイッチのOFF状態での副スイッチのOFF状態を示すOFF/OFF状態を有する。そして、OFF/ON状態の実現により通常状態から移行した無視状態は、ON/OFF状態やOFF/OFF状態の実現により通常状態に戻る。通常状態においてON/ON状態が実現すると、モータへの給電を行うために給電スイッチを閉鎖する制御信号が出力される。
【0018】
以下、本発明の具体的な実施の形態を、電動作業機を歩行型耕耘機に適用した例をとって説明する。
図2と図3とに示すように、この実施の形態で例示する歩行型耕耘機(以下単に耕耘機と略称する)1は、機体10の下部に耕耘ロータ2、前後揺動による姿勢変更が可能な操縦部としての操縦ハンドル3、耕耘ロータ2に回転動力を伝達するモータ5、モータ5の電源となるバッテリユニット4を備えている。バッテリユニット4は、機体10の後部から後方斜めに立ち上がっている支持枠14に対して、上方からの装着、上方への抜き出しが可能なように載置されている。バッテリユニット4の上面には、持ち運びに便利なように取っ手4aが設けられている。操縦ハンドル3は、いずれもアーム状の右ハンドル部3Aと左ハンドル部3Bからなり、その基端側で支持枠14の後方突出端部に揺動可能に連結されている。これにより、非使用時には操縦ハンドル3を機体前側に折り畳むことができる。モータ5の全て及びバッテリユニット4の下半分を覆う人工樹脂製のカバー11がこの耕耘機1の上面輪郭を曲面状に形作っている。二点鎖線で輪郭だけを示されている載置台100は、耕耘機1の下部が挿入されるボックス体であり、非使用時の耕耘機1の安定性と運搬性を高めるものである。
【0019】
図4から理解できるように、機体10は、実質的に、主フレーム15と伝動ケース17とから構成されている。主フレーム15はモータ5を支持するモータ支持面領域とバッテリユニット4を支持するバッテリ支持面領域を作り出しており、モータ支持面領域とバッテリ支持面領域との間は約30度の角度で屈曲している。主フレーム15の後端部には機体横断方向の水平軸回りで揺動可能な揺動アーム16が取り付けられており、揺動アーム16は、下向き姿勢(図3では実線で示す)と後向き姿勢(図3では二点鎖線で示す)との間で揺動するが、それぞれの姿勢において揺動アーム16を主フレーム15に対して固定する固定手段が設けられている。この固定手段は、簡単にはロックピンとロック孔である。
【0020】
揺動アーム16の自由端側に移動輪12が装備されており、揺動アーム16の中間部に抵抗棒13が取り付けられている。移動輪12は揺動アーム16の下向き姿勢で接地し、抵抗棒13は揺動アーム16の後向き姿勢で接地する。抵抗棒13の揺動アーム16に対する取り付け位置をピン連結法によって変更することで機体10の持ち上げ高さを変更することができる。
【0021】
伝動ケース17は、ウォーム減速機18を内蔵する側面視略L字状の左右二分割構造であり、その上端部に形成したフランジ部にモータ5がボルト連結されている。モータ5の出力軸とウォーム減速機18の入力軸は図4で点線描画されている中間伝動軸でつながれており、中間伝動軸は伝動ケース17内を垂直に延びている。ウォーム減速機18の出力は、伝動ケース17の下端部から左右に延出する耕耘ロータ2の駆動軸20に伝達される。伝動ケース17の上部には、この耕耘機1を持ち運ぶ際の把持部に使用可能なループ状で前向きに延出形成した丸パイプ鋼材からなるフロントガード19がボルト連結されている。
【0022】
図1に示すように、操縦ハンドル3を構成する右ハンドル部3A及び左ハンドル部3Bは、丸パイプ材からなり、その自由端領域にグリップ3a、3bが設けられている。操縦ハンドル3と支持枠14との間の揺動連結部30によって操縦ハンドル3を支持枠14に締め付け固定するノブ付きナット締め付け機構が設けられている。この構成から、操縦ハンドル3は、ノブ付きナットを操作することで、操縦ハンドル3を支持枠14に対する任意の姿勢に設定することができる。
【0023】
右ハンドル部3Aのグリップ3aのすぐ機体側にレバースイッチ装置31が設けられ、左ハンドル部3Bのグリップ3bのすぐ機体側に押しボタンスイッチ装置32が設けられている。レバースイッチ装置31には、グリップ3aを握っている手で操作可能なレバーの操作変位によってON/OFFされる副スイッチ82が組み込まれている。押しボタンスイッチ装置32には、押し操作によってON/OFFされる主スイッチ81が組み込まれている。この押しボタンスイッチ装置32は、操作部を回しながら押すことで主スイッチ81がON状態となるとともに、そのON状態が保持され、押し込まれた操作部をさらに押すことで操作部がホームポジションに復帰して主スイッチ81がOFF状態となる機械式的にON保持を行うタイプである。レバースイッチ装置31に組み込まれている副スイッチ82はよく知られているように、レバーをハンドル側に引き寄せ揺動させることでOFF状態からON状態となるリミットスイッチまたはその種のスイッチである。
【0024】
図4、図5、図6から明らかなように、主フレーム15のバッテリ支持面領域において、カバー11は、ボックス状の収容スペースを作り出すバッテリ収容壁体11aを形成している。バッテリユニット4は矩形横断面を有しており、当該矩形横断面はバッテリ収容壁体11aが作り出す収容スペースの矩形横断面よりも同一かやや大きな面積となるような寸法をもっている。従って、このバッテリ収容壁体11aの収容スペースに挿入されたバッテリユニット4は、バッテリ収容壁体11aの弾性によりしっかりと保持される。
【0025】
バッテリ収容壁体11aとバッテリユニット4との間で電気的接続を行うためのコネクタ9が備えられている。このコネクタ9は、バッテリユニット4の底面中央に設けられたバッテリ側コネクタ部9aと、バッテリ収容壁体11aの底面中央に設けられた機体側コネクタ部9bとからなる。ここでは、バッテリ側コネクタ部9aがソケット形で、機体側コネクタ部9bがプラグ形であるが、互いに逆であってもよい。バッテリユニット4はバッテリ収容壁体11aの弾性によって正確に中心がずれないようにバッテリ収容壁体11aによって案内されるので、重力の助けを借りたバッテリユニット4の収容スペースへの挿入により確実にバッテリ側コネクタ部9aと機体側コネクタ部9bとが接続されることになる。収容スペースに収容されたバッテリユニット4はハンドル支持枠14に設けられた、クランプ式固定具14aによって上面から押さえ付け固定される。
【0026】
コネクタ9は、バッテリユニット4からモータ5への給電を行う給電線のための端子、主スイッチ81や副スイッチ82などの信号線のための端子、さらにはアース端子など、ピンとピンソケットからなる複数の接続端子を備えている。
【0027】
次に、バッテリユニット4の内部構造、及び機体10におけるモータ5への給電配線やモータ5の駆動制御のための信号配線を、図7の機能ブロック図を用いて説明する。
バッテリユニット4は、バッテリ本体40、充電・放電スイッチユニット41、コントローラ42、電源部43、バッテリ本体40のプラス側に接続される給電線44、バッテリ本体40のマイナス側に接続されるアース線45、各種信号線46、電流切替部7を備えている。
【0028】
充電・給電スイッチユニット41は、給電線44に直列配置された給電スイッチ41aと充電スイッチ41bとを含み、それぞれはよく知られているようにFETとダイオードとで構成されている。給電スイッチ41aは、OFF状態で給電線44を遮断し、ON状態で給電線44を接続して、外部負荷に対してバッテリ本体40からの給電を可能にする。充電スイッチ41bは、充電時に給電線44を介して、図示されていない電源アダプタからの電力をバッテリ本体40に供給することを可能にする。
【0029】
コントローラ42は、実質的にはワンチップマイコンから構成されており、ハードウエア及びプログラムの実行によって、モータ5に対する給電制御を行うモータ給電制御部50と、バッテリ本体40に対する充電制御を行う充電制御部52とを作り出している。モータ給電制御部50は、主スイッチ81のON状態と副スイッチ82のON状態とに基づいて給電スイッチ41aをON状態にして、バッテリ本体40からモータ5への給電を許可し、モータ5を駆動させる。このモータ給電制御部50は、主スイッチ81のON状態に続く副スイッチ82のON状態が発生したときのみモータ5への給電を許可する牽制制御を行うために主スイッチ81からの信号と副スイッチ82からの信号の時系列評価を行う優先信号評価部51を含んでいる。
【0030】
電源部43は、バッテリユニット4の内部電源として機能し、コントローラ42や電流切替部7に給電する。
【0031】
バッテリユニット4に設けられたバッテリ側コネクタ部9aには、給電線44のための給電端子としての給電ソケット91a、第1信号線46aのためのバッテリ側端子である第1ソケット92a、第2信号線46bのためのバッテリ側端子である第2ソケット93a、第3信号線46cのためのバッテリ側端子である第3ソケット94a、第4信号線46dのためのバッテリ側端子である第4ソケット95a、第5信号線46eのためのバッテリ側端子である第5ソケット96a、アース線45のアース端子としてのアースソケット97aが設けられている。
バッテリ側コネクタ部9aに対応するように機体10側に設けられた機体側コネクタ部9bには、給電線44のための給電端子としての給電ピン91b、第1信号線46aのためのバッテリ側端子である第1ピン92b、第2信号線46bのためのバッテリ側端子である第2ピン93b、第3信号線46cのためのバッテリ側端子である第3ピン94b、第4信号線46dのためのバッテリ側端子である第4ピン95b、第5信号線46eのためのバッテリ側端子である第5ピン96b、アース線45のアース端子としてのアースピン97bが設けられている。
【0032】
電流切替部7は、耕耘機1の非作業時においてコントローラ42が省エネ目的でスリープ状態になっている時には信号線に微弱電流を流しておき、コントローラ42がウエイクアップすると信号線に微弱電流より大きな大電流を流す機能を有する。
【0033】
機体側では、モータ5のプラス接点に給電線44が接続され、モータ5のマイナス接点にアース線45が接続される。モータ5には、モータ5の過熱を検知するために、所定値以上の過熱状態でスイッチOFFする過熱スイッチ83が設けられている。この過熱スイッチ83は、一方を第2信号線46bと接続され、他方をアース線である第5信号線46eに接続されている。副スイッチ82は、一方を第2信号線46bと接続され、他方を第1信号線46aの過熱スイッチ83より上流側に接続されている。これにより、モータ過熱により過熱スイッチ8が動作した場合、副スイッチ82がON状態であっても、コントローラ42は副スイッチ82をOFF状態であるとみなすことができ、モータ5への給電を停止することができる。主スイッチ81は、一方を第3信号線46cと接続され、他方をアース線である第5信号線46eに接続されている。
【0034】
上述したように、モータ5と主スイッチ81と副スイッチ82が機体側に配置されており、主スイッチ81や副スイッチ82からの信号に基づいてモータ5の駆動を制御する制御系デバイスは全てバッテリユニット4に配置されている。つまり、モータ5の駆動制御がバッテリユニット4の給電制御に置き換えられており、バッテリユニット4が本来備えている放電制御のための放電スイッチをモータ5の駆動制御のための給電スイッチユニット41に流用しているので、機体側の電子デバイスや配線は簡素となっている。
【0035】
次に、優先信号評価部51によって行われる、主スイッチ81からの信号と副スイッチ82からの信号の時系列評価に基づく給電ルーチンを、図8のフローチャートを用いて説明する。この時系列評価の基本は、主スイッチ81がOFF状態における副スイッチ82からのON状態信号に基づいてモータ5に対する給電、つまり始動を保留する無視状態が設定され、この無視状態が副スイッチ82からのOFF状態信号によって解除されることである。また、無視状態設定されていない場合では、主スイッチ81と副スイッチ82の両者のON状態が確認された場合に、給電スイッチ41aを閉鎖してモータ5への給電を可能にする制御信号を給電スイッチ41aに出力する。
【0036】
図8で示された給電ルーチンでは、上述した無視状態を設定するためフラグとして牽制フラグが用いられている。従って、この給電ルーチンがスタートすると、まず、牽制フラグの状態がチェックされる(#01)。牽制フラグがリセットされている(無視状態が設定されていない)と、さらに主スイッチ81と副スイッチ82の状態がチェックされる(#02)。
【0037】
ステップ#02のチェックで、主スイッチ81と副スイッチ82とがON状態ならば、モータ給電制御部50から給電スイッチ41aに給電許可指令が送られ、給電スイッチ41aがON状態(給電線44の通電状態)となり、モータ5への給電が開始され、モータ5が駆動する(#03)。
ステップ#02のチェックで、主スイッチ81だけがON状態で、副スイッチ82がOFF状態ならば、副スイッチ82のOFF状態からON状態の移行を待って、モータ5への給電は待機状態となる(#04)。なお、待機状態においても、給電線44は、給電スイッチ41aによって遮断されたままである。
ステップ#02のチェックで、主スイッチ81がOFF状態にもかかわらず副スイッチ82がON状態ならば、牽制フラグがセットされる(#05)。給電線44は給電スイッチ41aによって遮断され(#06)、モータ5は停止のままである。
【0038】
ステップ#01において、牽制フラグがセットされている(無視状態が設定されている)と、さらに副スイッチ82の状態がチェックされる(#07)。
ステップ#07のチェックで、副スイッチ82がON状態ならば、牽制フラグをセットのままにしておき(無視状態の続行)、給電線44の給電スイッチ41aによる遮断が維持され(#06)、モータ5は停止のままである。
ステップ#07のチェックで、副スイッチ82がOFF状態ならば、牽制フラグがリセットされる(無視状態の解除)。給電線44は給電スイッチ41aによって遮断され(#06)、モータ5は停止のままである。
【0039】
1回の給電ルーチンは上記の流れで終了するが、この簡単な給電ルーチンが繰り返されることで、耕耘機1の作業制御が行われることになる。
【0040】
〔別実施の形態〕
〔1〕電動作業機としては、作業ユニット2に耕耘ロータを適用した電動耕耘機に限定されるのではなく、作業ユニットを適宜変更することで、電動芝刈機、電動除雪機など、種々の電動作業機に本発明は適用可能である。
〔2〕操縦部3や機体10の機械的構造は、本発明では限定されていないので、種々の形態を採用することができる。
〔3〕バッテリユニット4の断面形状も種々なものを採用可能であり、その形状に合わせて適合するような収容スペースが作り出されるようにバッテリ収容壁体11aの形状を決定するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、バッテリユニット4を搭載し、モータ5で作業ユニット2を駆動する種々の電動作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1:電動耕耘機(電動作業機)
2:耕耘ロータ(作業ユニット)
3:ハンドル(操縦部)
3a,3b:グリップ
5:電動モータ
4:バッテリユニット
9:コネクタ
31:レバースイッチ装置(レバースイッチ)
32:押しボタンスイッチ装置(押しボタンスイッチ)
10:機体
40:バッテリ
41a:給電スイッチ
42:コントローラ
44:給電線
46:信号線
50:モータ給電制御部
51:優先信号評価部
52:充電制御部
81:主スイッチ
82:副スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業ユニットに動力を伝達する電動モータと、前記電動モータに給電線を介して給電するバッテリユニットと、前記給電線に設けられた給電スイッチと、操縦部に設けられるとともにON状態を示すON状態信号とOFF状態を示すOFF状態信号を出力する主スイッチ及び副スイッチと、前記給電スイッチの開閉を制御する制御信号を前記給電スイッチに出力するモータ給電制御部とを備え、
前記モータ給電制御部は、前記主スイッチがOFF状態における前記副スイッチからのON状態信号に基づいて前記電動モータに対する始動制御を保留する無視状態を設定するとともに、当該無視状態を前記副スイッチからのOFF状態信号によって解除する優先信号評価部を有し、かつ前記モータ給電制御部は、前記無視状態の非設定時において前記主スイッチと前記副スイッチの両者のON状態が確認された場合に、前記給電スイッチを閉鎖して前記電動モータへの給電を可能にする制御信号を前記給電スイッチに出力する電動作業機用制御装置。
【請求項2】
前記モータ給電制御部は前記電動作業機から着脱可能な前記バッテリユニットに組み込まれている請求項1に記載の電動作業機用制御装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載の電動作業機用制御装置を搭載した電動作業機であって、
前記操縦部が左右一対のハンドルから構成され、一方のハンドルに前記主スイッチが設けられ、他方のハンドルに前記副スイッチが設けられている電動作業機。
【請求項4】
前記主スイッチが押しボタンスイッチであり、前記副スイッチがレバースイッチである請求項3に記載の電動作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−63052(P2013−63052A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204688(P2011−204688)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】