説明

電動工具用集塵装置及び電動工具

【課題】通風部材の後退位置を調整する調整部材の摺動が妨げられることを軽減した電動工具用集塵装置、電動工具用集塵装置を装着した電動工具を提供する。
【解決手段】ハンマドリルを装着可能なハウジングの前端に、前方へ向けて突出して前後方向に摺動可能な通風部材61を設けて、通風部材に、吸込口と、底部64が前後方向に延びる凹溝63を有するガイドレールと、を形成して、ハウジングに、吸込口から吸い込んだ空気が通風部材を通過してハウジングに形成された吐出口に至る空気通路を形成し、その空気通路上において空気中の粉塵を集塵するフィルタを収容し、通風部材に、凹溝に沿って前後方向に摺動して、任意の摺動位置でロックすることで通風部材の後退位置を調整可能な調整部材を設けた電動工具用集塵装置であって、凹溝の底部に、凹溝の内部を外部に連通させる第1連通口67を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動ドリルやハンマドリル等の電動工具に装着される電動工具用集塵装置及び電動工具用集塵装置を装着した電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、電動ドリルを装着可能なハウジングの前端に、通風部材を突出させて、この通風部材に、吸込口と、底部が前後方向に延びる凹溝を有するガイドレールとを設けた電動工具用集塵装置が開示されている。この電動工具用集塵装置のハウジングには、通風部材が摺動可能に突出することに加えて、粉塵を集塵するフィルタが収容されると共に、前記凹溝に嵌合して摺動する調整部材が設けられて、この調整部材を任意の位置でロックすることにより、前記通風部材の後退位置(加工深さ)を調整可能としている。
【0003】
上記のように構成された電動工具用集塵装置では、調整部材の位置を調整して吸込口を被加工物の穿孔箇所等に密接させ、電動ドリルのファンの回転によって空気と共に穿孔箇所等から生じた粉塵を吸込口から吸い込んで、この粉塵を通風部材を通過させた後に前記フィルタで集塵することがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006029625号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の電動ドリル等の電動工具を装着した電動工具用集塵装置を、粉塵が多い環境で使用すると、この粉塵が通風部材の凹溝に侵入することが考えられる。このような場合には、粉塵が上記の調整部材と凹溝との間に挟まることで調整部材の摺動が妨げられることが懸念される。
【0006】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、通風部材の後退位置を調整する調整部材の摺動が妨げられることを軽減した電動工具用集塵装置、該電動工具用集塵装置を装着した電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る電動工具用集塵装置は、電動工具を装着可能なハウジングの前端に、前方へ向けて突出して前後方向に摺動可能な通風部材を設けて、前記通風部材に、吸込口と、底部が前記前後方向に延びる凹溝を有するガイドレールと、を形成して、前記ハウジングに、前記吸込口から吸い込んだ空気が前記通風部材を通過して前記ハウジングに形成された吐出口に至る空気通路を形成し、その空気通路上において前記空気中の粉塵を集塵するフィルタを収容し、前記通風部材に、前記凹溝に沿って前記前後方向に摺動して、任意の摺動位置でロックすることで前記通風部材の後退位置を調整可能な調整部材を設けた電動工具用集塵装置であって、前記凹溝の前記底部に、該凹溝の内部を外部に連通させる第1連通口を形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記通風部材に、上方を開口させた前記凹溝を形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記通風部材の内部に、前記空気が通過して、前記通風部材の前記前後方向への摺動により該前後方向へ伸縮可能なホースを収容して、前記第1連通口を、前記通風部材の内部と連通するように形成して、前記通風部材の底面に、前記内部を該通風部材の外部に連通させる第2連通口を形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の電動工具用集塵装置を装着したことを特徴とする電動工具。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明に係る電動工具用集塵装置及び請求項4の発明に係る電動工具によれば、調整部材が通風部材の凹溝に沿って摺動するときに、凹溝に侵入した粉塵を、調整部材で第1連通口まで押し運ぶことで第1連通口から凹溝の外部に排出できる。したがって、粉塵が調整部材と凹溝との間に挟まり難くできる結果、調整部材の摺動が凹溝内の粉塵で妨げられることを軽減できる。
請求項2の発明によれば、上方開口から凹溝に粉塵が侵入した場合でも、調整部材が凹溝に沿って摺動するときに、凹溝に侵入した粉塵を、調整部材で第1連通口まで押し運ぶことで第1連通口から凹溝の外部に排出できる。
請求項3の発明によれば、凹溝に侵入した粉塵を、第1連通口から通風部材の内部へ排出した後に、通風部材の第2連通口から通風部材の外部に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の電動工具用集塵装置を装着したハンマドリルの側面図である。
【図2】同電動工具用集塵装置を装着した同ハンマドリルの側断面図である。
【図3】ダストボックスを取り外した同電動工具用集塵装置の斜視図である。
【図4】同ハンマドリルを同電動工具用集塵装置から取り外すときに操作する操作ボタンの斜視図である。
【図5】同電動工具用集塵装置を構成する通風部材の要部平面図である。
【図6】同通風部材の縦断面図である。
【図7】同通風部材の要部裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図1ないし図7を参照しつつ説明する。図1及び図2には電動工具用集塵装置30(以下、集塵装置30という。)をハンマドリル1に装着した状態を示し、図3には集塵装置30を示した。ハンマドリル1は、本発明の電動工具の一例で樹脂によって形成された本体ハウジング2を備えている。図1及び図2では、左側を本体ハウジング2の前側とし、右側を本体ハウジング2の後側とする。図2に示すように本体ハウジング2内の前側下部には、出力軸3を上向きにしたモータ4を収容している。本体ハウジング2内で出力軸3の上方には、出力軸3と交差する方向に中間軸5が軸支されて、中間軸5はベベルギヤ6、6を介して出力軸3からトルク伝達される。中間軸5は、前側から順に第1ギヤ7、クラッチ8、ボススリーブ9を備えている。本体ハウジング2内で中間軸5の上方には、中間軸5と平行にツールホルダ10が軸支されて、ツールホルダ10の先端にはビット11が挿着可能とされている。ツールホルダ10の後側にはピストンシリンダ12が遊挿されて、ピストンシリンダ12の後端には、ボススリーブ9に外装されたアーム13が連結されている。ピストンシリンダ12の内部には、前側にインパクトボルト14が、その後側にインパクトボルト14を打撃するストライカ15がそれぞれ前後進可能に収容されている。第1ギヤ7は、ツールホルダ10に装着した第2ギヤ16と噛合している。
【0014】
一方、図2に示すように本体ハウジング2の後側上部には、スイッチ18及びスイッチレバー19を備えたハンドル20が形成されており、ハンドル20の下方には、電源となるバッテリーパック21が装着されている。また、本体ハウジング2の前側下部は、前面が前下がり傾斜してバッテリーパック21の前方に突出し、集塵装置30が装着される装着部22となっている。装着部22の内部にはコントローラ23が収容されて、コントローラ23には、モータ4のコイル、スイッチ18、バッテリーパック21が電気的に接続されている。さらに、装着部22の下面で左右方向の中央には、前端が前側へ開放する案内溝24が前後方向に凹設されている。
【0015】
装着部22におけるコントローラ23の前側上部には、電源用と通信用との3つのメス端子を左右方向に所定間隔をおいて並設したコネクタ25が設けられている。コネクタ25は前側が開口した角筒状とされて、コネクタ25の上面前端にはシャッター部26が上向きに一体形成されている。また装着部22の下面中央でコネクタ25の下方には、押圧片27が上下方向へ移動可能に支持されている。
【0016】
さらに、装着部22の前面におけるコネクタ25の前側には、四角形状の差込口28が開口形成されている。コネクタ25は、シャッター部26が差込口28の上側に退避して開口を差込口28の真後ろに位置させる接続位置と、シャッター部26が差込口28の真後ろに位置して開口を差込口28の下方へ退避させる非接続位置とに回転可能となっている。但し、集塵装置30をハンマドリル1に装着しない状態ではコネクタ25は、図示しないトーションスプリングによって、シャッター部26が差込口28を閉塞する非接続位置に回転付勢されている。この非接続位置で押圧片27は、下側へ退避したコネクタ25で押圧されて、装着部22を貫通して案内溝24内に突出する。
【0017】
集塵装置30は、図1及び図2に示すように側面視L字状のハウジング31を備えている。図1及び図2では、左側をハウジング31の前側とし、右側をハウジング31の後側とする。ハウジング31の後側上部には、ハンマドリル1の装着部22に嵌合する嵌合凹部32(図3参照。)が形成されている。図2に示すようにハウジング31内の後側は、仕切り部材33で、ハウジング31の前後方向に隣接するファン室34とモータ収容室35とに区画されている。
【0018】
モータ収容室35には、出力軸37を前側へ向けたモータ36が横向きに収容されている。さらにモータ収容室35には、モータ36の後側にコントローラ38が収容されている。そしてモータ収容室35内の上部右側には、ハウジング31の右側面に開口して操作ボタン39(図3及び図4参照。)を収容するボタン収容室45(図3参照。)が設けられている。この操作ボタン39は、ハンマドリル1への集塵装置30の結合状態をロックし、集塵装置30をハンマドリル1から取り外すときにボタン収容室45の内方向へ押し込み操作するもので、常態ではコイルばねによってボタン収容室45の外方向へ付勢されている。図4に示すように操作ボタン39には、上面から上向きに突出する上リブ40、40と、下面から下向きに突出する下リブ41、41とがそれぞれ形成されている。操作ボタン39の押し込み操作時には、各リブ40、41はボタン収容室45の内壁面に沿ってボタン収容室45の内方向へ案内されるようになっている。ボタン収容室45の内壁面と操作ボタン39の上面におけるリブ40、40が突出しない部分との間や、前記内壁面と操作ボタン39の下面におけるリブ41、41が突出しない部分との間には、隙間が確保されている。
【0019】
また図2に示すようにファン室34には、仕切り部材33の開口から出力軸37が進入する。出力軸37に固着された集塵用ファン50は、ファン室34に収容されている。加えて図2及び図3に示すようにハウジング31におけるファン室34の上流側には、後述するダストボックス85(図1及び図2参照。)の結合部52が形成されている。この結合部52は、前側のみが開口した凹状を呈し、結合部52の底となる仕切壁53には、集塵用ファン50の同軸上で結合部52をファン室34と連通される連通孔54が形成されている。
【0020】
図2に示すようにハウジング31の上部後面には、電源用と通信線用との3つの板状のオス端子55が後側に突出した状態で左右方向に所定間隔をおいて並設されている。ハウジング31の後部上面には、ハンマドリル1の装着部22に設けた案内溝24に嵌合する押圧レール56が、ハウジング31の前後方向に突設されている。この押圧レール56の後端には、後側へ行くに従って高さが低くなる傾斜面が形成されている。押圧レール56の左右両側には、装着部22の下部が嵌合可能な間隔で一対のガイドレール57、57(図3参照。)が前記前後方向に立設されて、各ガイドレール57の上端には、装着部22の側面に設けた結合溝(図示せず。)に嵌合可能な凸条58(図3参照。)が内側に向けて突設されている。
【0021】
また図2に示すように、ハウジング31における結合部52の上方には、前側が開口し後側がU字状にターンして結合部52の後方へ回り込む案内通路60が、ハウジング31の前後方向に形成されている。ハウジング31の前端に当たる案内通路60の前端には、通風部材61が前側へ突出して案内通路60内へ挿入可能な状態で接続されている。この通風部材61は図6に示すように断面中空形状とされている。図1、図3及び図6に示すように通風部材61の正面視右側上部には、通風部材61の前後方向(図1の左右方向)に長いガイドレール部62が形成されている。図5及び図6に示すように、ガイドレール部62には、底部64が前記前後方向に延びて上方を開口させた第1凹溝63が設けられている。またハウジング31の前端上部には、ガイドレール部62の上面に当接可能な第1凸部66(図3参照。)が下向きに形成されている。ガイドレール部62の上面を第1凸部66に沿って前後方向に摺動させることで、通風部材61は前記前後方向へスムーズに摺動することになる。なお、第1凹溝63は本発明の凹溝の一例である。
【0022】
図5及び図6に示すように第1凹溝63の底部64には、第1凹溝63の内部を外部に連通させる矩形状の第1連通口67が複数形成されている。ここでは各第1連通口67を、第1凹溝63の内部が通風部材61の内部と連通するように形成した。一方図6及び図7に示すように通風部材61の底面には、通風部材61の内部を外部に連通させる長円形状の第2連通口68が形成されている。
【0023】
さらに図6及び図7に示すように、通風部材61の正面視右側下部には、下方を開口させて前後方向に延びる第2凹溝69が形成されている。図3に示すようにハウジング31の前端下部には、通風部材61の正面視右側下部に当接可能な第2凸部70が上向きに形成されている。通風部材61のガイドレール部62の上面を第1凸部66に沿って前後方向に摺動させるときには、通風部材61の正面視右側下部も第2凸部70に沿って前後方向に案内される。加えて通風部材61の底面には、第2凹溝69内と連通する矩形状の第3連通口71(図7参照。)が複数形成されている。各第3連通口71により、通風部材61の内部を外部と連通させることが可能になる。各第3連通口71は、前後方向で各第1連通口67とはそれぞれの位置をずらした状態で配置されている。
【0024】
図1及び図3に示すように通風部材61の正面視右側面には、前後方向に延びるラック73が形成されている。そしてハウジング31の前端で正面視右側面には、通風部材61の抜け止め部材75のガイド部74が横向きに突設されている。ガイド部74には、前後方向に貫通して、通風部材61を前後方向へ摺動させるときにラック73が移動自在に入り込むガイド孔76が形成されている。また図5及び図6に示すように通風部材61の正面視右側面には、横向きに突出する係合凸部83が設けられている。この係合凸部83に抜け止め部材75の弾性係合片(図示せず。)が係合することで、通風部材61の前側への最大突出位置が規定される。さらに、通風部材61の正面視右側面には、ラック73の前後方向に摺動可能で該前後方向における任意の位置で、ラック73に対して係合可能な調整部材84が設けられている。この調整部材84は、被加工物に対するビット11の挿入深さを調整するために用いられる。常態では調整部材84の係合爪部(図示せず。)が、コイルばねによって下向きに付勢されており、調整部材84の嵌合凸部(図示せず。)が第1凹溝63に対して上方から嵌められている。係合爪部がラック73と係合することで、調整部材84はロック状態になる。
【0025】
加えて図1ないし図3に示すように、通風部材61の前端には側面視L字状のノズル77が連結されて、ノズル77の先端に吸込口78を連結させている。そして通風部材61の内部には、フレキシブルホース79(図2参照。)が収容されており、このフレキシブルホース79の前端はノズル77に連結されている。また、フレキシブルホース79の後端には、案内通路60の後端形状に沿ってU字状に折り返した筒状のダクト80が連結されている。通風部材61を前後方向に摺動させることに連動して、フレキシブルホース79は、前端がノズル77に、後端がダクト80にそれぞれ連結された状態で前後方向へ伸縮可能とされている。ダクト80の後端には吹出口81、81(図2及び図3参照。)が開口して、この吹出口81、81は、仕切り部材33を貫通して結合部52内に突出する。なお、フレキシブルホース79は本発明のホースの一例である。
【0026】
図2に示すように結合部52には、ダストボックス85が着脱可能に装着される。ダストボックス85は、直方体形状のボックス本体86と、ボックス本体86の開口にヒンジ結合される蓋体87とを備えている。蓋体87には、上下方向の一端側に入口88が、他端側に出口89がそれぞれ形成されている。ダストボックス85内には、出口89を覆う位置にフィルタユニット90が、紙製のフィルタ91のフィルタ面92を突出させた状態で装着されている。ダストボックス85を結合部52に装着した状態では、入口88にダクト80の後端が嵌合して吹出口81、81がダストボックス85内に突出し、出口89が連通孔54と対向する。
【0027】
次に集塵装置30をハンマドリル1に装着して、被加工材から生じた粉塵を集塵する動作を説明する。集塵装置30をハンマドリル1に装着する際には、ハンマドリル1の装着部22の下部にハウジング31のガイドレール57、57を合わせて装着部22がハウジング31の後部上に位置する状態で、装着部22に対して嵌合凹部32を前方から嵌合させるように集塵装置30を後方側へ摺動させる。すると、集塵装置30の押圧レール56が装着部22の案内溝24に、ガイドレール57の凸条58が装着部22の結合溝にそれぞれ嵌合して後方側へそれぞれ摺動する。このとき押圧レール56は押圧片27に当接するが、押圧レール56の傾斜面が押圧片27を上方へ押し上げるため、コネクタ25は、シャッター部26が上方へ退避して開口が差込口28の真後ろに位置する接続位置へ移動する。その後、集塵装置30のオス端子55が開放した差込口28からハンマドリル1の本体ハウジング2内に進入し、装着部22が嵌合凹部32に嵌合すると同時にオス端子55がメス端子に挿入されて電気的に接続される。
【0028】
その後操作者が、調整部材84をコイルばねの付勢力に抗して上方へ摺動させてラック73に対する係合爪部の係合を解除する。そして調整部材84の嵌合凸部を第1凹溝63に沿って摺動させ、被加工物に対するビット11の挿入深さを調整する。この調整が終了した後に操作者が調整部材84から手を離すと、コイルばねの弾性力により調整部材84が下向きに付勢される。その結果、係合爪部がラック73と係合して調整部材84がロック状態に戻る。
【0029】
続いて、操作者がハンマドリル1のスイッチレバー19を押し込み操作してスイッチ18をオンさせると、モータ4が駆動して中間軸5を回転させる。このとき、本体ハウジング10の側面に設けた切替つまみ29(図1参照。)を操作することでクラッチ8を摺動させて、第1ギヤ7のみと係合する前進位置、ボススリーブ9のみと係合する後退位置、第1ギヤ7及びボススリーブ9と同時に係合する中間位置のいずれかを選択することで、第2ギヤ16を介してツールホルダ10が回転してビット11を回転させるドリルモード、アーム13の揺動によってピストンシリンダ12を往復動させ、連動するストライカ15によってインパクトボルト14を介してビット11を打撃するハンマーモード、ツールホルダ10の回転とビット11の打撃とを同時に行うハンマードリルモードの選択が可能になる。吸込口78を被加工材の加工面に接触させた状態でハンマドリル1を前進させると、調整部材84がガイド部74に当たるまで通風部材61が後退すると共にハンマドリル1が前進し、ビット11が吸込口78を貫通して被加工材の加工が可能となる。
【0030】
また、スイッチ18のオンによってコントローラ23は、集塵装置30のコントローラ38へ電源を供給する。よってコントローラ38は、モータ36を駆動させて集塵用ファン50を回転させる。これにより、吸込口78から吸い込まれた外気は、通風部材61内のフレキシブルホース79及びダクト80を通って吹出口81、81からダストボックス85内に排出される。ダストボックス85内に排出された空気は、フィルタユニット90の前側へ回り込んでフィルタ面92からフィルタ91を通過する。フィルタ91を通過した空気は、出口89から連通孔54を介してファン室34に至り、ファン室34と集塵装置30の外部とを連通させる空気吐出口からファン室34の外部に排出される。したがって、ビット11によって被加工材の加工箇所から生じた粉塵は、吸込口78から外気と共に吸い込まれてダストボックス85内に進入し、吸込口78からフレキシブルホース79やダクト80を介して空気吐出口に至る空気通路上に位置するフィルタ91で捕捉されることになる。
【0031】
粉塵の多い場所で集塵装置30を装着したハンマドリル1を使用することで、第1凹溝63に侵入した粉塵は、調整部材84の前後方向への摺動を妨げる原因となる。この摺動の妨げを軽減するために本実施形態では、以下に説明するように第1凹溝63に侵入した粉塵を、第1連通口67から第1凹溝63の外部に排出可能とした。調整部材84を摺動させると、第1凹溝63内に上方開口から侵入した粉塵は、第1凹溝63内に嵌る調整部材84の嵌合凸部で押し運ばれる。調整部材84を摺動させる最中に嵌合凸部が第1連通口67の直近位置に到達した時点で、嵌合凸部で押し運ばれた粉塵は、第1連通口67から通風部材61の内部に排出される。よって、粉塵が第1凹溝63と調整部材84の嵌合凸部との間に挟まり難くなって、調整部材84の摺動が粉塵で妨げられることを軽減できる。
【0032】
また、第1凹溝63から通風部材61の内部に排出された粉塵は、通風部材61の底面に開口する第2連通口68や第3連通口71から通風部材61の外部へ排出される。よって、通風部材61の内部に粉塵が堆積することを抑制できる。その他にも、ラック73とガイド孔76との間に隙間が確保されているため、ラック73とガイド孔76との間に粉塵が侵入したとしても、この粉塵がラック73とガイド孔76との間に嵌り込むことを抑制できる。その結果、通風部材61を摺動させる最中に、ガイド孔76内におけるラック73の移動が粉塵で妨げられることを軽減できる。
【0033】
さらに加えて、ボタン収容室45の内壁面と操作ボタン39の上面におけるリブ40、40が突出しない部分との間や、前記内壁面と操作ボタン39の下面におけるリブ41、41が突出しない部分との間に、隙間を確保したことで、粉塵が操作ボタン39と前記内壁面との間に嵌り込むことを抑制できる。その結果、操作ボタン39の押し込み操作が粉塵で妨げられることを軽減できる。また、ボタン収容室45には、モータ収容室35と連通させる開口(図示せず。)が形成されていることから、ボタン収容室45の内壁面と操作ボタン39との間の隙間からボタン収容室45内に侵入した粉塵を、前記開口を通じてモータ収容室35内に一旦排出することも可能である。
【0034】
<本実施形態の効果>
本実施形態の集塵装置30及び集塵装置30を装着したハンマドリル1では、調整部材84が、通風部材61の第1凹溝63に沿って摺動するときに、第1凹溝63に侵入した粉塵を、調整部材84の嵌合凸部で第1連通口67まで押し運ぶことで第1連通口67から第1凹溝63の外部に排出できる。したがって、粉塵が調整部材84と第1凹溝63との間に挟まり難くできる結果、調整部材84の摺動が第1凹溝63内の粉塵で妨げられることを軽減できる。
【0035】
また、上方を開口させた第1凹溝63に、該開口から粉塵が侵入した場合でも、調整部材84が第1凹溝63に沿って摺動するときに、第1凹溝63に侵入した粉塵を、調整部材84で第1連通口67まで押し運んだ後に第1連通口67から第1凹溝63の外部に排出できる。
【0036】
さらに、第1凹溝63に侵入した粉塵を、第1連通口67から通風部材61の内部に排出した後に、通風部材61の第2連通口68から通風部材61の外部に排出できる。
【0037】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。例えば上述した実施形態とは異なり、通風部材61のガイドレール部62に設ける第1凹溝は、上方を閉塞した上でガイドレール部62の側面に開口させた形状のものであってもよい。この場合には、通風部材61に、側方から第1凹溝に嵌る調整部材84を設けてもよい。
【0038】
また、上述した実施形態とは異なり、集塵用ファンを集塵装置30に収容せずにハンマドリル1に収容して、通風部材61から集塵用ファンに至る空気通路上における集塵装置30内に配置したフィルタで、粉塵を集塵するようにしてもよい。さらに、上述した実施形態では集塵装置30をハンマドリル1に装着した例を示したが、これに限らず、集塵装置が装着可能であれば、電動ドリル等の電動工具に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1・・ハンマドリル、30・・集塵装置、31・・集塵装置のハウジング、61・・通風部材、62・・ガイドレール部、63・・第1凹溝、64・・第1凹溝の底部、66・・第1凸部、67・・第1連通口、68・・第2連通口、78・・吸込口、79・・フレキシブルホース、84・・調整部材、91・・フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具を装着可能なハウジングの前端に、前方へ向けて突出して前後方向に摺動可能な通風部材を設けて、前記通風部材に、吸込口と、底部が前記前後方向に延びる凹溝を有するガイドレールと、を形成して、前記ハウジングに、前記吸込口から吸い込んだ空気が前記通風部材を通過して前記ハウジングに形成された吐出口に至る空気通路を形成し、その空気通路上において前記空気中の粉塵を集塵するフィルタを収容し、前記通風部材に、前記凹溝に沿って前記前後方向に摺動して、任意の摺動位置でロックすることで前記通風部材の後退位置を調整可能な調整部材を設けた電動工具用集塵装置であって、
前記凹溝の前記底部に、該凹溝の内部を外部に連通させる第1連通口を形成したことを特徴とする電動工具用集塵装置。
【請求項2】
前記通風部材に、上方を開口させた前記凹溝を形成したことを特徴とする請求項1に記載の電動工具用集塵装置。
【請求項3】
前記通風部材の内部に、前記空気が通過して、前記通風部材の前記前後方向への摺動により該前後方向へ伸縮可能なホースを収容して、
前記第1連通口を、前記通風部材の内部と連通するように形成して、前記通風部材の底面に、前記内部を該通風部材の外部に連通させる第2連通口を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具用集塵装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の電動工具用集塵装置を装着したことを特徴とする電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−78831(P2013−78831A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220375(P2011−220375)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】