説明

電動工具

【課題】 複数の作業モードに設定可能な電動工具において、作業モードを簡便に判定するのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 本発明にかかる電動工具としての電動ハンマドリル101は、駆動モータ111を少なくとも制御するコントローラ171を備え、このコントローラ171は、電源投入状態において、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の投入状態を検出するスイッチ検出回路173と、スイッチ検出回路173の検出結果に基づいて作業モードを判定する演算・駆動部174と、演算・駆動部174の作業モード判定後に、非投入状態側のスイッチ部が操作されると、駆動モータ111に駆動制御信号を出力するモータ制御部176及び駆動回路177を含む構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工材に対し工具ビットによって加工作業を遂行させる電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動工具の一例としての電動打撃工具が下記特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたこの電動打撃工具は、打撃作業を行う工具ビットがモータによって駆動される構成とされ、また使用者による第1のスイッチ部の投入操作を許容するとともに、第2のスイッチ部を投入位置に固定する第1の作業モードと、第1のスイッチ部を投入位置に固定するとともに、使用者による第2のスイッチ部の投入操作を許容する第2の作業モードとの間での切り替えが可能とされた作業モード切替機構を搭載する構成とされる。
特許文献1に開示されたこの電動打撃工具によれば、各駆動モードにおいて非固定側のスイッチ部が投入操作されることによって、当該駆動モードでの工具ビットの駆動が可能とされるが、この種の電動工具の設定に際しては、更に第1及び第2のスイッチ部の投入状態を検出することによって作業モードを簡便に判定する技術が要請される。
【特許文献1】特開2006−957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、複数の作業モードに設定可能な電動工具において、作業モードを簡便に判定するのに有効な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を達成するため、本発明に係る電動工具は、複数の作業モードに設定可能な電動工具であって、モータ、工具本体、工具ビット取り付け部、工具ビット装着部、ハンドル、第1のスイッチ部、第2のスイッチ部及び制御装置を少なくとも備える。作業者は各作業モードに設定された電動工具によって、所定の作業形態の作業が可能とされる。
工具本体は、モータを収容する構成とされる。工具ビット取り付け部は、工具本体に設けられて、モータによって駆動される長軸状の工具ビットが取り付けられる取り付け部位として構成される。このとき、工具ビットは、電動工具或いは工具本体の一構成要素とされてもよいし、或いは電動工具或いは工具本体とは別の構成要素とされてもよい。ハンドルは、工具本体のうち工具ビットの長軸方向に関し工具ビット取り付け部とは反対側に設けられた作業者把持用のハンドルとして構成される。第1及び第2のスイッチ部はいずれも、それぞれ投入状態或いは非投入状態に設定可能とされるスイッチ部として構成される。制御装置は、モータを制御する装置として構成される。
【0005】
本発明では、制御装置は、更にスイッチ検出部、作業モード判定部及び駆動制御部を少なくとも備える。スイッチ検出部は、電源投入状態において、第1及び第2のスイッチ部の各々の投入状態を検出する検出部として構成される。ここでいう「電源投入状態」には、電源投入がなされた状態を広く包含され、典型的には電源投入された直後の状態によって、この電源投入状態が形成される。作業モード判定部は、スイッチ検出部の検出結果に基づいて作業モードを判定する判定部として構成される。典型的には、第1のスイッチ部が投入されていることが検出された場合に1つの作業モードであると判定され、第2のスイッチ部が投入されていることが検出された場合に別の作業モードであると判定される。これにより、複数の作業モードのうちのどの作業モードに設定されているかを簡便に判定することが可能となる。
【0006】
本発明では特に、第1及び第2のスイッチ部の投入状態をスイッチ検出部によって直接的に検出することで、新たなスイッチ部を追加する必要がないため合理的である。駆動制御部は、作業モード判定部の作業モード判定後に、非投入状態側のスイッチ部が操作されると、モータに駆動制御信号を出力する機能を果たす。これにより、第1作業モードであると判定された場合には、この第1作業モードに対応する非投入状態側のスイッチ部の投入状態が検出されたときにモータが駆動され、第2作業モードであると判定された場合には、この第2作業モードに対応する非投入状態側のスイッチ部の投入状態が検出されたときにモータが駆動される。
【0007】
また本発明に係る更なる形態の電動工具は、作業者の手動操作によって作業モードの切り替え操作が可能とされた作業モード切替部材を備える構成であるのが好ましい。また、作業モードとして、工具ビットを直線状に打撃動作させるハンマ作業形態に対応した第1ハンマモード及び第2ハンマモードを含む。第1ハンマモードでは、作業モード切替部材の手動操作に伴って、第2のスイッチ部が投入状態に保持される一方、第1のスイッチ部が投入状態或いは非投入状態に切り替え可能とされる。第2ハンマモードでは、作業モード切替部材の手動操作に伴って、第1のスイッチ部が投入状態に保持される一方、第2のスイッチ部が投入状態或いは非投入状態に切り替え可能とされる。
このような構成によれば、複数の作業モードのうちの第1ハンマモードや第2ハンマモードに設定されているかを簡便に判定することが可能となる。そして、作業モード切替部材の手動操作に伴って第1ハンマモードとされた場合には、非投入状態側の第1のスイッチ部の投入状態が検出されたときにモータが駆動され、作業モード切替部材の手動操作に伴って第2ハンマモードとされた場合には、非投入状態側の第2のスイッチ部の投入状態が検出されたときにモータが駆動される。
【0008】
また本発明に係る別の形態の電動工具は、作業者の手動操作によって作業モードの切り替え操作が可能とされた作業モード切替部材を備える構成であるのが好ましい。また、作業モードとして、工具ビットを直線状に打撃動作させつつ周方向に回転動作させるハンマドリル作業形態に対応したハンマドリルモードを含む。ハンマドリルモードでは、作業モード切替部材の手動操作に伴って、第2のスイッチ部が投入状態に保持される一方、第1のスイッチ部が投入状態或いは非投入状態に切り替え可能とされる。
このような構成によれば、複数の作業モードのうちのハンマドリルモードに設定されているかを簡便に判定することが可能となる。そして、作業モード切替部材の手動操作に伴ってハンマドリルモードとされた場合には、非投入状態側の第1のスイッチ部の投入状態が検出されたときにモータが駆動される。
【0009】
また本発明に係る更なる形態の電動工具は、作業モードとして、工具ビットの回転動作を伴うモードと、工具ビットの回転動作を伴わないモードを含み、これらのモード間の切り替え過程に、第1及び第2のスイッチ部がいずれも非投入状態に設定される切り替え過程を含む構成であるのが好ましい。この場合、モード間の切り替え過程の全部又は一部が、第1及び第2のスイッチ部がいずれも非投入状態に設定される切り替え過程とされ得る。このような構成によれば、工具ビットの回転動作を伴うモードと、工具ビットの回転動作を伴わないモードとの間の切り替え過程において、1及び第2のスイッチ部がいずれも非投入状態に設定される構成の電動工具が提供される。
【0010】
また本発明に係る更なる形態の電動工具は、常時には付勢手段によって非投入位置に付勢されるとともに、第1のスイッチ部の投入の際に付勢手段の付勢力に抗して投入位置に引き操作される第1操作部材を備えるのが好ましい。そして、ハンドルは、第1操作部材を収納可能な第1収納空間を備え、第2ハンマモードにおいて作業モード切替部材の手動操作に伴って第1のスイッチ部が投入状態に保持された状態において、第1操作部材を第1収納空間に収納する構成とされる。
このような構成によれば、第2ハンマモードにおいて作業モード切替部材の手動操作に伴って第1のスイッチ部が投入状態に保持されたとき、付勢手段の付勢力が第1操作部材を介して作業者に作用するのを防止することが可能となり、以って作業を円滑に行うのに有効とされる。
【0011】
また本発明に係る更なる形態の電動工具は、作業者の手指による押圧操作の繰り返しにともなって第2のスイッチ部の投入状態と非投入状態とを切り替え可能な第2操作部材を備えるのが好ましい。そして、工具本体は、第2操作部材を収納可能な第2収納空間を備え、第1ハンマモード或いはハンマドリルモードにおいて作業モード切替部材の手動操作に伴って第2のスイッチ部が投入状態に保持された状態において、第2操作部材を第2収納空間に収納する構成とされる。
このような構成によれば、第2操作部材が収納されているか否かを目で視ることで、作業者は現在の作業モードを容易に識別することが可能となる。
【0012】
また本発明に係る更なる形態の電動工具では、第2のスイッチ部は、第2操作部材の押圧操作時における電気的信号によって通電・遮断を行なう電子スイッチからなる構成であるのが好ましい。すなわち、この電子スイッチは、モータ電流を通電・遮断するための機械的接点を有していないスイッチとされる。このような構成によれば、第2のスイッチ部のコンパクト化を図ることができるとともに、第2操作部材を軽いタッチで押圧操作することが可能となるため操作性向上が図られる。
【0013】
また本発明に係る更なる形態の電動工具は、複数の作業モードのうちのいずれの作業モードに設定されているかを照明によって報知する報知部を備える構成であるのが好ましい。この報知部の報知態様に関しては、単一色或いは複数色による照明が点滅したり点灯したりする態様が広く包含される。このような構成によれば、作業者は現在設定されている作業モードを報知部によって容易に識別することが可能となる。
【0014】
また本発明に係る更なる形態の電動工具では、報知部は、第2のスイッチ部の投入状態に基づいて、設定されている作業モードを報知する構成であるのが好ましい。この報知部は、典型的には第2のスイッチ部が非投入状態であることを報知する態様、第2のスイッチ部が投入状態であることを報知する態様、第2のスイッチ部が非投入状態と投入状態との間で切り替わったことを報知する態様などを行なう機能を果たす。このような構成によれば、作業者は第2のスイッチ部の投入状態に基づいて、設定されている作業モードを報知部によって容易に識別することが可能となる。
【0015】
また本発明に係る更なる形態の電動工具は、工具本体とハンドルとの間に配置され、工具本体とハンドルとを工具ビットの長軸方向に関し相対移動可能に接続する防振用緩衝材を備える構成であるのが好ましい。このような構成によれば、工具ビットを駆動して所定の加工作業を行なう際、工具本体に発生する振動のハンドル側への伝達を防振用緩衝材によって防止あるいは低減することができる。なお、本発明でいう「防振用緩衝材」として、典型的にはバネ、ゴム等の緩衝材が用いられる。
【0016】
また本発明に係る更なる形態の電動工具は、第1操作部材及び第2操作部材を備え、第1操作部材はハンドルのうち工具ビット取り付け部側に設けられ、第2操作部材は工具本体のうち前記第1操作部材と対向する部位に設けられるのが好ましい。第1操作部材は、常時には付勢手段によって非投入位置に付勢されるとともに、第1のスイッチ部の投入の際に付勢手段の付勢力に抗して投入位置に引き操作される操作部材として構成される。第2操作部材は、作業者の手指による押圧操作の繰り返しに伴って第2のスイッチ部を投入状態と非投入状態に切り替え可能な操作部材として構成される。第1操作部材や第2操作部材のこのような対向配置によって、ハンドルを把持した作業者の一方の手指で第1操作部材及び第2操作部材の操作を行うことが可能となり、作業者による操作部材の操作性向上が図られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の作業モードに設定可能な電動工具において、作業モードを簡便に判定することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態につき、図1〜図14を参照して説明する。本実施の形態は、本発明にかかる「電動工具」の一例として電動ハンマドリルを用いて説明する。図1には電動ハンマドリルの全体構成が示される。図1に示すように、本実施の形態に係る電動ハンマドリル101は、概括的に見て、電動ハンマドリル101の外郭を形成する本体部103、当該本体部103の長軸方向の先端領域(図示左側)においてツールホルダ(便宜上図示を省略する)に着脱自在に取付けられた長軸状のハンマビット119、本体部103の長軸方向における他端部(図示右側)に連接された作業者が握るハンドグリップ109を主体として構成される。本体部103は、本発明における「工具本体」に対応し、ハンマビット119は、本発明における「工具ビット」に対応する。また、ハンドグリップ109は、本発明における「(作業者把持用の)ハンドル」に対応する。なお、ハンマビット119は、本発明における「工具ビット取り付け部」としてのツールホルダに取り付けられ、その長軸方向(本体部103の長軸方向)への相対的な往復動が可能に、かつその周方向への相対的な回動が規制された状態で保持される。なお、説明の便宜上、ハンマビット119側を前、ハンドグリップ109側を後という。
【0019】
本体部103は、駆動モータ111を収容したモータハウジング105と、運動変換機構113、打撃要素115、および動力伝達機構117を収容したギアハウジング107とを主体として構成されている。駆動モータ111は本発明における「モータ」に対応する。駆動モータ111は、回転軸が本体部103の長軸方向(すなわち、ハンマビット長軸方向)と概ね直交する縦方向(図1において上下方向)となるように配置される。駆動モータ111の回転出力は、運動変換機構113によって直線運動に適宜変換された上で打撃要素115に伝達され、当該打撃要素115を介してハンマビット長軸方向(図1における左右方向)への衝撃力を発生する。また、駆動モータ111の回転出力は、動力伝達機構117によって適宜減速された上でハンマビット119に回転力として伝達され、当該ハンマビット119が周方向に回転動作される。
【0020】
ハンドグリップ109は、本体部103のうちハンマビット119の長軸方向に関しツールホルダとは反対側に設けられた作業者把持用のハンドルとして構成される。このハンドグリップ109は、ハンマビット長軸方向と交差する上下方向に延在された側面視で概ねコの字形に形成されるとともに、上下方向の一端(下端)側が回動軸163を介してモータハウジング105の後端下部に前後方向に回動可能に連接され、他端(上端)側が振動吸収用のコイルバネ161を介して、モータハウジング105およびギアハウジング107の後方領域を覆うリアカバー108リアカバー108の後端上部に連接されている。コイルバネ161は、本発明における「防振用緩衝材」に対応する。これによって、本体部103からハンドグリップ109への振動の伝達が防止あるいは低減される防振構造のハンドグリップ109が構成される。
【0021】
運動変換機構113は、駆動モータ111の回転運動を直線運動に変換して打撃要素115に伝達するものであり、駆動モータ111によって駆動されるクランク軸121、クランクアーム123、ピストン125等からなるクランク機構によって構成される。ピストン125は、いわゆる打撃要素115を駆動する駆動子を構成するものであり、シリンダ127内をハンマビット長軸方向と同方向に摺動可能とされる。
【0022】
打撃要素115は、シリンダ127のボア内壁に摺動自在に配置されてピストン125の摺動動作により当該シリンダボア内の空気バネの作用を介して直線状に駆動される打撃子としてのストライカ129と、ツールホルダ内に摺動自在に配置されるとともに、ストライカ129の運動エネルギをハンマビット119に伝達する中間子としてのインパクトボルト131を主体として構成される。
【0023】
一方、ツールホルダにより保持されたハンマビット119は、駆動モータ111から動力伝達機構117を介してツールホルダと共に回転される構成とされる。動力伝達機構117は、図1に示すように、駆動モータ111によって回転駆動される中間ギア133と、中間軸135と、中間軸135と共に回転する第1ベベルギア137と、当該第1ベベルギア137と噛み合い係合し、本体部103の長軸回りに回転する第2ベベルギア139等からなり、駆動モータ111の回転をツールホルダに伝達し、更には当該ツールホルダに保持されたハンマビット119へと伝達する。
【0024】
便宜上図示を省略するが、中間ギア133と中間軸135との間には、駆動モータ111の回転出力をハンマビット119に伝達したり、遮断したりするクラッチが介装されている。クラッチは、中間軸135に対し周方向に固定された状態で軸方向には摺動可能に取り付けられており、当該中間軸135に沿って摺動することで、中間ギア133のクラッチ歯と噛み合い係合する動力伝達状態と、当該噛み合い係合が解除される動力遮断状態との間で切り替えられる。
【0025】
クラッチの切り替え動作は、ハンマビット119の作業モード(「駆動モード」ともいう)を選択する(切り替える)作業モード切替ダイヤル151の手動操作によって行なわれる。作業モード切替ダイヤル151は、本発明における「作業モード切替部材」に対応する。作業モード切替ダイヤル151は、本体部103の外側上面(クランク機構の概ね真上)に配置され、ハンマビット119の長軸線と交差する上下方向の回動軸線151a回りに水平面内で回動操作可能とされている。作業モード切替ダイヤル151が回動操作されることによって、クラッチ切替機構118を介して動力伝達機構117のクラッチを動力伝達状態あるいは動力遮断状態のいずれかに切り替えられる。なおクラッチ切替機構118は、ギアハウジング107内に配置(一部が図1に示される)され、作業モード切替ダイヤル151の回動運動を直線運動に変換してクラッチを中間軸135に沿って移動させる手段として構成されるが、本発明には直接関係しないため、詳細については説明を省略する。
【0026】
作業モードの選択は、作業モード切替ダイヤル151を回動軸線151a回りに回動操作することによってなされる。本実施の形態では、作業モード切替ダイヤル151は、第1ハンマモード、第2ハンマモード、ハンマドリルモードおよびニュートラルモードへの切替えが可能とされており、本体部103の外側表面には、作業モード切替ダイヤル151の周方向において、第1ハンマモード、第2ハンマモード、ハンマドリルモードおよびニュートラルモードを示すための適宜目印が設けられている。
【0027】
作業モード切替ダイヤル151が回動操作され、第1ハンマモードが選択されたときおよび第2ハンマモードが選択されたときには、クラッチ切替機構118によって動力伝達機構117のクラッチが動力遮断状態とされる。この状態で駆動モータ111が通電駆動されると、運動変換機構113のみが駆動される。駆動モータ111の回転出力は、運動変換機構113に伝達され、当該運動変換機構113のピストン125がシリンダ127のボア内で往復直線運動を行う。ピストン125が直線運動を行うと、それに伴い当該ピストン125からストライカ129、インパクトボルト131を経てハンマビット119が打撃動作を行う。このように、クラッチが動力遮断状態に置かれた第1ハンマモードまたは第2ハンマモードでは、ハンマビット119が打撃動作(ハンマ動作)のみを行い、被加工材(コンクリート)にハンマ作業を遂行する。
【0028】
一方、ハンマドリルモードが選択されたときには、クラッチ切替機構118によって動力伝達機構117のクラッチが動力伝達状態とされる。この状態で駆動モータ111が通電駆動されると、運動変換機構113に加えて動力伝達機構117が駆動する。駆動モータ111の回転出力は、中間ギア133、クラッチ、中間軸135、第1および第2ベベルギア137,139を介してツールホルダおよびこのツールホルダにて保持されるハンマビット119に伝達される。かくして、クラッチが動力伝達状態に置かれたハンマドリルモードでは、ハンマビット119が軸方向の打撃動作と周方向の回転動作(ドリル動作)を行い、被加工材(コンクリート)にハンマドリル作業を遂行する。
【0029】
次に駆動モータ111(ハンマビット119)を駆動・停止を操作する操作部材(スイッチ構造)につき、図6〜図9を主体にして説明する。ハンドグリップ109側には、第1スイッチ部141をオン/オフ操作する(投入状態或いは非投入状態に設定可能な)第1操作部材143が設けられ、本体部103側には、第2スイッチ部146をオン/オフ操作する(投入状態或いは非投入状態に設定可能な)第2操作部材145が設けられている。ここでいう第1スイッチ部141が、本発明における「第1のスイッチ部」に相当し、ここでいう第2スイッチ部146が、本発明における「第2のスイッチ部」に相当する。また、ここでいう第1操作部材143は、本発明における「第1操作部材」に対応し、第2操作部材145は、本発明における「第2操作部材」に対応する。第1操作部材143は、引き操作が可能なトリガ式のスイッチとして備えられ、第2操作部材145は、押し操作が可能なレバー式のスイッチとして備えられる。そして、第1操作部材143と第2操作部材145は、前後方向(ハンマビット119の長軸方向)において互いに対向状に配置され、いずれもハンドグリップ109を把持した手指での操作可能とされる。このため、片手での操作が可能となり、作業者による操作部材の操作性向上が図られる。
【0030】
第1操作部材143は、中空状をなすハンドグリップ109のハンドグリップ内部空間109bに配置されている。第1操作部材143は、ハンドグリップ109の長軸方向(ハンマビット119の長軸方向と交差する上下方向)に沿って延在されるとともに、当該延在方向の下部側において取付軸142によってハンドグリップ109に前後方向(ハンマビット119の長軸方向)に回動自在に装着されている。第1操作部材143は、第1スイッチ部141をオフ状態(「非投入状態ともいう」)とするオフ位置(「非投入位置」ともいう)と、作業者の手指により上部側を引き操作されることによって第1スイッチ部141をオン状態(「投入状態ともいう」)とするオン位置(「投入位置」ともいう)との間での回動操作が可能とされている。
【0031】
第1操作部材143は、常時には第1スイッチ部141をオフ状態に付勢するべく当該第1スイッチ部141に内蔵されたスプリング(便宜上図示を省略する)によってオン位置からオフ位置へと付勢されている。ここでいうスプリングが本発明における「付勢手段」に相当する。したがって、第1操作部材143の上部側は、引き操作されていないときは、ハンドグリップ109の前面開口部から前方へと突出するオフ位置に保持され(図6参照)、手指により引き操作された、あるいは後述するスライドプレート153によって押し込まれたオン位置では、ハンドグリップ109のハンドグリップ内部空間109bに収納されてその前面がグリップ前面の外側表面と概ね面一となるように設定されている(図7参照)。第1スイッチ部141は、内蔵されたスプリングによりオフ状態となるように付勢された自動復帰式のオン・オフスイッチとして構成されている。ここでいうハンドグリップ内部空間109bが、本発明における「第1収納空間」に相当する。
【0032】
一方、第2操作部材145は、本体部103に形成された後方内部空間103aに配置されている。ここでいう後方内部空間103aが、本発明における「第2収納空間」に相当する。この後方内部空間103aは、ギアハウジング107と当該ギアハウジング107の後面領域を覆うリアカバー108とによって囲まれる空間として備えられる。第2操作部材145は、第1操作部材143と対向してハンマビット119の長軸方向と交差する上下方向に延在される長方形の板状部材によって構成(図5参照)されるとともに、延在方向の下部側の軸部145cを受部材149によって支持されて前後方向(ハンマビット119の長軸方向)に回動自在とされる。
【0033】
なお、第2操作部材145が配置される本体部103の後方領域は、ハンマビット119から離間した領域であり、と同時にハンマビット119側から見て陰になる領域でもある。このため、当該後方領域に配置される第2操作部材145は、ハンマ作業あるいはハンマドリル作業時に発生する被加工材(コンクリート)の粉塵の影響を受け難く、防塵性が向上する。
【0034】
第2操作部材145は、手指により操作される前のオフ位置(非投入位置)と、手指により操作されて第2スイッチ部146に押圧力を加えるオン位置(投入位置)との間で回動される。第2操作部材145は、常時にはスプリング147によってオン位置からオフ位置へと付勢されており、また第2操作部材145の延在方向の略中央部後面には作業者が手指により前方へ押し操作するための押しボタン部145aが形成されている。したがって、第2操作部材145の押しボタン部145aが手指により押し操作されていないときには、第2操作部材145は、オフ位置に保持されるとともに押しボタン部145aがリアカバー108に設けた開口部108aから後方へと突出する。この状態が図6および図7に示される。なお、第2スイッチ部146としては、第2操作部材145により押されてオン状態に切替ると、再度押されるまでオン状態が維持される形式のスイッチが用いられている。
【0035】
受部材149は、第2スイッチ部146および第2操作部材145を支持する部材として備えられ、ギアハウジング107にネジ148(図5参照)によって止着される。受部材149は、複数の爪149aによって第2スイッチ部146を上下から挟んで保持する。また、受部材149は、第2操作部材145を支持する略U形の受部149bを有し、ここの受部149b内に第2操作部材145の下部領域が収容されるとともに、軸部145cが回動自在に支持される。したがって、第2操作部材145の下部領域と略U形の受部149bとが重なり合う(オーバーラップ)構造となり、ラビリンス効果によって第2操作部材145の回動軸受部への粉塵の侵入防止効果を得ることができ、前述の配置的な防塵効果と相俟って防塵性をより向上できる。
【0036】
また、第2操作部材145は、少なくとも押しボタン部145aが透光性の材料で形成されるとともに、当該押しボタン部145aの内面には、発光ダイオード(LED)のようなライト167が配置されている。このライト167は、第1操作部材143あるいは第2操作部材145の位置に応じて、すなわち選択された作業モードに応じて点灯あるいは消灯するように構成される。このことについては、後述する。
【0037】
次に、作業モード切替ダイヤル151の作業モード切替えに応じて、第1操作部材143と第2操作部材145を選択的にオン位置に強制的に固定したり、当該固定を解除して手指による操作を可能としたりするスイッチ操作手段としてのスライドプレート153につき説明する。このスライドプレート153は、図2および図6〜図13に示される。スライドプレート153は、作業モード切替ダイヤル151の作業モード切替えの回動動作に対応して偏心軸152を介してハンマビット119の長軸方向に直線状に移動される。
【0038】
スライドプレート153は、図2に示すように、ハンマビット119の長軸方向に長尺状に延在する長尺部材であり、ハンドグリップ109の本体部103との上部側連接領域109aを通してハンドグリップ109側に延在されている。スライドプレート153は、作業モード切替ダイヤル151によって第2ハンマモードT2が選択された場合には、偏心軸152によってハンドグリップ109側に向って最後端位置まで移動され、第2操作部材145の固定を解除するとともに、第1操作部材143を後方へ押してオン位置へと操作し、当該オン位置に固定する構成とされる。この状態が図2、図7、図11に示される。一方、作業モード切替ダイヤル151が第2ハンマモードT2から第1ハンマモードT1に切替え操作された場合およびハンマドリルモードHDに切替え操作された場合には、スライドプレート153はハンドグリップ109から離間する前方へと移動され、第1操作部材143の固定を解除するとともに、第2操作部材145を前方へ押してオン位置へと操作し、当該オン位置に固定する構成とされる。この状態が図8、図9、図12、図13に示される。なお、スライドプレート153と偏心軸152の連結構造の詳細については後述する。
【0039】
第1操作部材143は、図6に示すように、手指により引き操作される平断面が略U形(図4参照)の操作部材本体部143aと、当該操作部材本体部143aに対して下端部が支点(取付軸)144を中心としてスライドプレート153の移動方向(操作部材本体部143aの回動方向と同方向)に回動自在に取り付けられた平断面が略U形(図4参照)のレバー143bと、当該レバー143bを操作部材本体部143aに弾発状に連結する振動吸収用のトーションスプリング143cによって構成されている。
【0040】
レバー143bは、操作部材本体部143aの上端側に取り付けられ、操作部材本体部143aの上端面を超えて上方へと延在されるとともに、その上端部143dがスライドプレート153の後端突部153aと対向している。トーションスプリング143cは、一端がレバー143bに係止され、他端が操作部材本体部143aに係止されており、これによりレバー143bが前方へと回動するように付勢力を作用する。レバー143bに対して組付け時に付与されるトーションスプリング143cの初期荷重(取付荷重)は、手指による操作部材本体部143aの引き切り荷重(オン位置へと操作しおえたときに第1スイッチ部141に内蔵されたスプリングに作用する荷重)よりも大きく設定されている。このため、スライドプレート153が後方へと移動し、その後端突部153aでレバー143bの上端部143dを押したとき、レバー143bと操作部材本体部143aが一体状態を保持しつつ後方へと回動されることになる。すなわち、スライドプレート153による第1操作部材143のオン位置への操作は、レバー143bと操作部材本体部143aが一体化された状態で行われる構成であり、当該操作を確実に行うことができる。なお、レバー143bの前方最大回動位置は、当該レバー143bの前面が操作部材本体部143aに当接することで規定される。
【0041】
上記のトーションスプリング143cは、第1操作部材143をスライドプレート153によってオン位置に強制的に固定した状態(第2ハンマモードT2)でハンマ作業を行う場合に、本体側103に発生する主として前後方向(ハンマビット119の長軸方向)の振動を吸収し、スライドプレート153から第1操作部材143を経てハンドグリップ109へと振動が伝達することを防止あるいは低減する弾性部材として備えられる。
【0042】
第2操作部材145は、後方内部空間103a内を上方へと延在するとともに、その上端部145bがスライドプレート153に形成された長軸方向に長い長溝153b(開口)に相対移動可能に挿入されている。そして、第2操作部材145は、スライドプレート153が前方へと移動される場合に、スライドプレート153に対しコイルスプリング154を介して弾発状に連結された連係体155により前方に押されてオン位置へと移動され、当該オン位置に固定される構成とされる。
【0043】
スライドプレート153には、図2に示すように、長溝153bの後方に当該長溝153bよりも幅広の開口153cが長溝153bに連続して形成され、当該開口153c内に連係体155およびコイルスプリング154が配置されている。連係体155は、スライドプレート153に対して前後方向に相対移動可能とされ、コイルスプリング154によって前方に向けて付勢され、長溝153bと開口153cの境界に形成された段差部153fと係合する位置に保持される。なお、コイルスプリング154の付勢力は、第2操作部材145をオフ位置へと付勢するスプリング147の付勢力よりも大きい。このため、連係体155は、スライドプレート153が前方へと移動するとき、スライドプレート153と一体となって移動し、その移動途中において第2操作部材145の上端部145bと係合し、第2操作部材145をオン位置へと移動させるとともに、当該オン位置に固定する。すなわち、第2操作部材145は、スライドプレート153によってオン位置に強制的に固定された状態では、スライドプレート153とコイルスプリング147を介して弾発状に連結される。第2操作部材145がオン位置に強制的に固定された状態において、スライドプレート153が更に前方へと移動した場合には、連係体155がコイルスプリング154を圧縮しつつスライドプレート153に対し相対移動する。これにより、連係体155と第2操作部材145の係合後における、第2操作部材145の移動量とスライドプレート153の移動量との差を吸収することができる。
【0044】
なお、長溝153b内に配置されたコイルスプリング154は、互いに対向するスライドプレート153側の柱状ガイド153dと連係体155側の柱状ガイド155aに対し遊嵌状に外嵌されており、これにより安定した支持態様が得られる。
【0045】
次に、作業モード切替ダイヤル151の偏心軸152とスライドプレート153との連結構造につき主として図2を参照して説明する。スライドプレート153の前端部側には、当該スライドプレート153の移動方向(長尺方向)と交差する水平方向(左右方向)に延在する係合孔159を備えた連結部157が形成され、この係合孔159に偏心軸152が遊嵌状に係合されている。偏心軸152は、作業モード切替ダイヤル151の回動軸線151aから所定量だけ偏心した位置に設けられている。このため、作業モード切替ダイヤル151が回動軸線151a回りに回動操作されたとき、偏心軸152は、係合孔159内を延在方向(左右方向)に相対移動しつつ前後方向成分(ハンマビット119の長軸方向成分)によってスライドプレート153を前後方向に移動させる。具体的には、偏心軸152が、係合孔159の前後の係合面のうちの後側係合面159aを押すことでスライドプレート153を後方へと移動させ、前側係合面159bを押すことでスライドプレート153を前方へと移動させる。なお、偏心軸152は、最前端位置および最後端位置にあるとき、係合孔159の延在方向中央部に位置する。
【0046】
本実施の形態では、作業モード切替ダイヤル151の回動軸線151aの回りに、所定の角度(一定角度ではない)を置いて、ハンマドリルモードHD、第1ハンマモードT1、第2ハンマモードT2が設定され、ハンマドリルモードHDと第1ハンマモードT1との間および第2ハンマモードT2とハンマドリルモードHDとの間にそれぞれニュートラルモードNが設定されている。
【0047】
偏心軸152が回動軸線151a回りに後方へと回動し、第2ハンマモードT2が選択されたとき、係合孔159の中央部に位置する(偏心軸152が最後端に位置する)ように設定されている。このとき、前述したようにスライドプレート153が最後端位置まで移動され、当該スライドプレート153によって第1操作部材143が後方へと押されてオン位置に固定される(図7参照)。また、偏心軸152が第2ハンマモードT2の位置から回動軸線151aを中心として右回り(時計回り)に前方へと回動され、第1ハンマモードT1が選択されたとき、偏心軸152が係合孔159の延在方向の一端側(図12において下側)に位置し、偏心軸152が第2ハンマモードT2の位置から回動軸線151aを中心として左回り(反時計回り)に前方へと回動され、ハンマドリルモードHDが選択されたとき、偏心軸152が係合孔159の延在方向の他端側(図13において上側)に位置するように設定されている。そして、第1ハンマモードT1あるいはハンマドリルモードHDが選択されたときには、スライドプレート153が前方へと移動され、当該スライドプレート153によって第2操作部材145が前方へと押されてオン位置に固定される(図8および図9参照)。
【0048】
なお、図6および図10には第2ハンマモードT2とハンマドリルモードHDとの間のニュートラルモードNが選択された場合が示されている。このニュートラルモードNでは、スライドプレート153が概ね移動方向中間位置に置かれ、スライドプレート153の後端突部153aが第1操作部材143のレバー143bから離間し、連係体155が第2操作部材145の上端部145bから離間している。すなわち、第2ハンマモードT2とハンマドリルモードHDとの間のニュートラルモードNは、第1操作部材143および第2操作部材145をそれぞれオフ位置に置くことが可能な位置として設定されている。このニュートラルモードNでは、ハンマビット119の回転動作を伴うハンマドリルモードHDと、ハンマビット119の回転動作を伴わない第2ハンマモードT2との間の切り替え過程が、第1スイッチ部141と第2スイッチ部146がいずれも非投入状態に設定される切り替え過程とされる。従って、この態様が、本発明における「前記作業モードとして、前記工具ビットの回転動作を伴うモードと、前記工具ビットの回転動作を伴わないモードを含み、これらのモード間の切り替え過程に、前記第1及び第2のスイッチ部がいずれも非投入状態に設定される切り替え過程を含む」との態様に相当する。
【0049】
本実施の形態では、スライドプレート153の係合孔159は、前方(ハンマビット119側)に湾曲する(ハンドグリップ109側に反り返る)円弧状(弓形)に形成されている。これにより、偏心軸152が回動される際、作業モード切替ダイヤル151の回動角に対するスライドプレート153の後方への移動量が、偏心軸152の前後方向成分の移動量と異なる構成とされる。具体的には、偏心軸152が係合孔159の突状円弧面側である後側係合面159aを押しつつ最前端位置から最後端位置へと回動する場合において、スライドプレート153の後方への移動量は、回動軸線151aを横切る左右方向の軸線を境にして、偏心軸152が突状円弧面の高部から低部側へと向う前方領域(第1ハンマモードT1に向う領域およびハンマドリルモードHDと第2ハンマモードT2間のニュートラルモードNに向う領域)では偏心軸152の後方向成分の移動量よりも小さく、低部側から高部に向かう後方領域(第1ハンマモードT1あるいはニュートラルモードNを越えて第2ハンマモードT2に向う領域)では大きくなる。このように、本実施の形態では、第2ハンマモードT2が選択されたときの後方領域でのスライドプレート153の移動量を大きくしている。これにより第1操作部材143のオン位置への操作に必要なスライドプレート153の移動量を容易に確保することができる。
【0050】
なお、スライドプレート153が、偏心軸152によって係合孔159の凹状円弧面である前側係合面159bを押されて前方へと移動するときのスライドプレート153の移動量は、偏心軸152の前方向成分の移動量に比べると、偏心軸152が凹状円弧面の低部から高部側へと向う後方領域では大きく、高部から底部側へと向う前方領域では小さくなる。すなわち、上述した後方への移動時とは逆転する。
【0051】
また、本実施形態では、係合孔159の前側係合面159bには、円弧方向の中央領域に前方へと凹む逃がし凹部159cが形成されている。この逃がし凹部159cは、偏心軸152の偏心距離(回動軸線151aから偏心軸152の中心までの距離)を半径とする円弧面で形成されている。すなわち、スライドプレート153が偏心軸152によって係合孔159の前側係合面159bを押されて前方へ移動するとき、前方領域の特に前進端付近において偏心軸152が逃がし凹部159cと対向することで、その後はスライドプレート153を前方へそれ以上に移動させない構成としている。ハンマドリルモードHDあるいは第1ハンマモードT1が選択されたとき、スライドプレート153は、連係体155を介して第2操作部材145をオン位置へと移動させるが、この状態からスライドプレート153が前方へ更に移動された場合、図13に示すように、第2操作部材145を押す連係体155は、コイルスプリング154を圧縮変形させつつスライドプレート153に対して相対移動することになる。このように、前側係合面159bに逃がし凹部159cを備える構成は、スライドプレート153の前方への移動時における前端位置付近での(ハンマドリルモードHDと、他方のニュートラルモードNとの間の切替領域)、スライドプレート153に対する連係体155の相対移動量を小さくしてコイルスプリング154の不要な圧縮変形を減少する上で有効となる。
【0052】
なお、第1操作部材143における操作部材本体部143aの上端部には、角状の突起143eが形成されている。この突起143eは、作業モード切替ダイヤル151が第2ハンマモードT2に切替えられ、これに伴い後方へと移動するスライドプレート153の後端突部153aによってレバー143bの上端部143dを押された第1操作部材143がオン位置へと回動されるとき、スライドプレート153の開口153c内に突入する。この状態が図7および図11に示される。そして、第2ハンマモードT2からハンマドリルモードHDまたは第1ハンマモードT1に切替えられ、スライドプレート153が前方へ移動するときに、開口153cの後縁153eに引っ掛かることで第1操作部材143を強制的にオフ位置側へ復帰する部材として備えられている。
【0053】
また、ハンドグリップ109の本体部103との上部側連接領域109aには、前述した振動吸収用のコイルバネ161が左右2個配置され、ハンドグリップ109と本体部103とを弾発状に接続する。図2に示すように、コイルバネ161は、ハンマビット119の長軸方向を伸縮方向として当該ハンマビット119の長軸線を挟んで互いに左右に並行に配置されており、両コイルバネ161の間、従って、ハンマビット119の長軸線上にスライドプレート153が配置されている。なお、スライドプレート153およびコイルバネ161は、ゴム製の蛇腹165によって覆われている。
【0054】
次に、上記のように構成された電動ハンマドリル101の作用および使用方法を説明する。図6および図10は作業モード切替ダイヤル151の回動操作によってニュートラルモードNが選択された場合を示す。このときは、偏心軸152が係合孔159の一端側に位置し、スライドプレート153が移動方向の略中間位置にある。この状態では、図6に示すようにスライドプレート153の後端突部153aが第1操作部材143のレバー143bの上端部143dから離間し、またスライドプレート153の連係体155が第2操作部材145の上端部145bから離間している。このため、第1操作部材143および第2操作部材145が共にオフ位置にあり、第1スイッチ部141および第2スイッチ部146が共にオフ状態にあり、駆動モータ111は停止状態に置かれる。
【0055】
次に、図7および図11は作業モード切替ダイヤル151がニュートラルモードNから第2ハンマモードT2を選択した場合を示す。このときは、作業モード切替ダイヤル151の回動動作がクラッチ切替機構118を介して動力伝達機構117のクラッチに直線運動として伝達され、当該クラッチが動力遮断状態に切替えられる。と同時に、偏心軸152が最後端位置へと回動され、スライドプレート153が後方へと移動される。すると、図7に示すように、スライドプレート153の後端突部153aが第1操作部材143のレバー143bの上端部143dを後方へ押す。これにより、第1操作部材143は、操作部材本体部143aとレバー143bがトーションスプリング143cの付勢力によって一体とされた状態を維持しつつ取付軸142を中心にオン位置へと回動し、これにより第1スイッチ部141をオン状態とする。すなわち第1操作部材143は、スライドプレート153によってオン位置に強制的に固定される。
【0056】
この状態で、手指により第2操作部材145の押しボタン部145aを前方へ押すと、当該第2操作部材145が軸部145cを中心としてオン位置へと回動し、第2スイッチ部146をオン状態とする。これにより駆動モータ111が通電駆動されるが、当該通電駆動は、前述したように、第2操作部材145から手指を離しても維持される。このため、作業者は手指により第2操作部材145の押し操作を続けることなく、駆動モータ111を連続的に通電駆動し、運動変換機構113および打撃要素115を介してハンマビット119を直線状に打撃動作させ、被加工材に対してハンマ作業を連続的に行うことができる。第2ハンマモードT2は、本発明における「第2ハンマモード」に対応する。なお、ハンマ作業を止めるときは、第2操作部145を再度押し操作する。これにより第2スイッチ部146がオフ状態とされ、駆動モータ111が停止される。
【0057】
この場合、電動ハンマドリル101は、ハンドグリップ109を把持し、本体部103にハンマビット119の長軸方向の押圧力を作用させつつハンマビット119を被加工材に押し付けて加工作業を行なう。このため、ハンマビット119を被加工材に押し付けたとき、ハンドグリップ109が回動軸163を中心として本体部103に接近する前方へと相対回動する。すると、第1操作部材143のレバー143bがスライドプレート153によって更に後方へと押され、トーションスプリング153cに抗して支点144を中心に回動し、その前面が操作部材本体部143aの後面から離間する。この状態が図3に示される。すなわち、第1操作部材143は、スライドプレート153によりオン位置に強制的に固定された状態において、当該スライドプレート153と弾発状に連結された状態となる。このため、ハンマ作業中に発生する振動で、スライドプレート153が本体部103と共に振動しても、スライドプレート153から第1操作部材143への振動伝達をトーションスプリング143cによって防止あるいは低減することができる。
【0058】
図8および図12は作業モード切替ダイヤル151が第1ハンマモードT1を選択した場合を示す。このときは、動力伝達機構117のクラッチが動力遮断状態とされる。と同時に、偏心軸152が前後方向の略中央位置に置かれる。このため、スライドプレート153は、第2ハンマモードT2のときの最後端位置からみると、前方へと移動される。従って、図8に示すように、スライドプレート153の連係体155が第2操作部材145の上端部145bに係合して前方へ押す。これにより、第2操作部材145が軸部145cを支点として前方のオン位置へ回動し、第2スイッチ部146をオン状態とする。
【0059】
一方、スライドプレート153の前方への移動により、スライドプレート153の後端突部153aが第1操作部材143のレバー143bから離れる。これにより第1操作部材143の固定が解除され、当該第1操作部材143の手指による操作が可能とされる。従って、手指により第1操作部材143の操作部材本体部143aを引き操作し、第1スイッチ部141をオン状態とすれば、駆動モータ111が通電駆動され、第1スイッチ部141の引き操作を解除すれば、駆動モータ111が停止する。第1ハンマモードT1では、動力伝達機構117のクラッチが動力遮断状態にあるため、駆動モータ111が通電駆動されると、ハンマビット119が直線状の打撃動作のみを行う。このように、第1ハンマモードT1では、第1操作部材143を手指により操作し、駆動モータ111を任意に駆動あるいは停止することが可能なため、ハンマビット119により被加工材に対するハンマ作業を断続的(単発的)に行うことができる。第1ハンマモードT1は、本発明における「第1ハンマモード」に対応する。
【0060】
図9および図13は作業モード切替ダイヤル151がハンマドリルモードHDを選択した場合を示す。このときは、動力伝達機構117のクラッチが動力伝達状態に切替えられる。と同時に、偏心軸152が第1ハンマモードT1のときよりも更に前方側に回動される。このため、図13に示すように、スライドプレート153が偏心軸152によって前方へ移動されるが、当該スライドプレート153に対してコイルスプリング154を介して連結されている連係体155は、第2操作部材145がオン位置に達した時点でそれ以上の移動を阻止されるため、コイルスプリング154を圧縮変形させつつスライドプレート153に対して相対移動する。これにより、第2操作部材145とスライドプレート153の移動量の差が吸収されることになる。第2操作部材145のオン位置への回動により第2スイッチ部146がオン状態とされる。
【0061】
一方、スライドプレート153が前方に移動されたときは、第1ハンマモードT1の場合と同様、スライドプレート153の後端突部153aが第1操作部材143のレバー143bから離れ、第1操作部材143の任意の手指操作が可能となる。また、ハンマドリルモードHDでは、クラッチ切替機構118を介して動力伝達機構117のクラッチが動力伝達状態とされる。従って、ハンマドリルモードHDでは、第1操作部材143を手指により操作し、駆動モータ111を任意に駆動あるいは停止させ、ハンマビット119に直線状の打撃動作と周方向の回動動作とを行わせ、被加工材に対するハンマドリル作業を断続的(単発的)に行うことができる。ハンマドリルモードHDは、本発明における「ハンマドリルモード」に対応する。
【0062】
ここで、本実施の形態に係る電動ハンマドリル101の制御回路170に関し図14を参照しつつ説明する。図14には、本実施の形態の制御回路170の回路構成図が示されている。図14に示す制御回路170は、前述の駆動モータ111、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146に加え、コントローラ171によって構成されている。
【0063】
コントローラ171は、駆動モータ111を少なくとも制御する制御装置であって、回路電源部172、スイッチ検出回路173、演算・駆動部174、モータ制御回路電源部175、モータ制御部176、駆動回路177を含む構成とされている。ここでいうコントローラ171が、本発明における「制御装置」に相当する。
【0064】
回路電源部172は、スイッチ検出回路173及び演算・駆動部174に対する外部電源の供給部分として構成される。スイッチ検出回路173は、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146のそれぞれが投入位置にあるか或いは非投入位置にあるかを検出するスイッチ検出回路として構成される。すなわち、このスイッチ検出回路173は、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の投入状態を検出する機能を果たす。ここでいうスイッチ検出回路173が、本発明における「スイッチ検出部」に相当する。
【0065】
演算・駆動部174は、スイッチ検出回路173における検出情報に基づいて演算を行なう演算部分と、この演算結果に応じてモータ制御回路を駆動する駆動部分とを含む。特には、この演算・駆動部174の演算部分は、電源投入状態における第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の投入状態によって、ハンマビット119による作業モードを判定する処理を少なくとも行なう。ここでいう「電源投入状態」には、電源投入がなされた状態を広く包含され、典型的には電源投入された直後の状態によって、この電源投入状態が形成される。要するにこの演算・駆動部174は、スイッチ検出回路173の検出結果に基づいて作業モードを判定する機能を果たす。ここでいう演算・駆動部174が、本発明における「作業モード判定部」に相当する。
【0066】
モータ制御回路電源部175は、モータ制御回路に対する外部電源の供給部分として構成される。モータ制御部176及び駆動回路177は、駆動モータ111の駆動を制御する機構を構成する。これらモータ制御部176及び駆動回路177によって、本発明における「駆動制御部」が構成される。
【0067】
上記構成のコントローラ171では、スイッチ検出回路173によるスイッチ検出結果に基づいて、電動ハンマドリル101が第1の作業モード(前述の第2ハンマモードT2)に設定されているか、或いは第2作業モード(前述の第1ハンマモードT1若しくはハンマドリルモードHD)に設定されているかを演算・駆動部174が判定する。このような構成によれば、複数の作業モードのうちのどの作業モードに設定されているかを簡便に判定することが可能となる。特に、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の投入状態をスイッチ検出回路173によって直接的に検出することで、新たなスイッチ部を追加する必要がないため合理的である。
【0068】
以下、演算・駆動部174による電動ハンマドリル101の第1〜第4の判定結果につき説明する。
【0069】
(第1の判定結果)
電源投入時において第1スイッチ部141が投入位置にあり、且つ第2スイッチ部146が非投入位置にあることがスイッチ検出回路173によって検出されたときに、電動ハンマドリル101が第1作業モードであると判定される(第1の判定結果)。この第1作業モードでは、第1スイッチ部141が投入位置に固定されるとともに、第2スイッチ部146の投入位置と非投入位置との間の操作が有効とされている。そして、コントローラ171は、第1の判定結果に基づいて、作業モード判定後に非投入側の第2スイッチ部146が投入位置に操作されたときに駆動モータ111に駆動制御信号を出力する。これにより駆動モータ111が駆動開始される。なお、本実施の形態では、この第2スイッチ部146として特に、第2操作部材145の押圧操作時における電気的信号によって通電・遮断を行なう電子スイッチを用いることによって1クリック操作で駆動モータ111の駆動状態が継続可能とされている。この電子スイッチは、駆動モータ111のモータ電流を通電・遮断するための機械的接点を有していないスイッチとされる。このような電子スイッチによれば、第2スイッチ部146のコンパクト化を図ることができるとともに、第2操作部材145を軽いタッチで押圧操作することが可能となるため操作性向上が図られる。この第1作業モードでは、駆動モータ111の駆動後に第2スイッチ部146が非投入位置に設定されると駆動モータ111の駆動が停止される。
【0070】
(第2の判定結果)
電源投入時において第1スイッチ部141が非投入位置にあり、且つ第2スイッチ部146が投入位置にあることがスイッチ検出回路173によって検出されたときに、電動ハンマドリル101が第2作業モードであると判定される(第2の判定結果)。この第2作業モードでは、第2スイッチ部146が投入位置に固定されるとともに、第1スイッチ部141の投入位置と非投入位置との間の操作が有効とされている。そして、コントローラ171は、第2の判定結果に基づいて、作業モード判定後に非投入側の第1スイッチ部141が投入位置に操作されたときに駆動モータ111に駆動制御信号を出力する。これにより駆動モータ111が駆動開始される。
【0071】
(第3の判定結果)
電源投入時において第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の双方が投入位置にあることがスイッチ検出回路173によって検出されたときに、電動ハンマドリル101が通常状態ではないと判定される(第3の判定結果)。具体的には、工具作業前のこのタイミングにおいて、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の双方が投入位置にある状態は、使用者の誤操作や粉塵堆積等によってスイッチが押されっぱなしの状態であるか、或いはスイッチ故障である。従って、この第3の判定結果に基づいた場合、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の双方が投入位置にあるとしても、駆動モータ111の駆動がコントローラ171により禁止される。
【0072】
このとき、警告ランプ等で使用者に現在の状態が通常状態ではないことを報知するように制御されるのが好ましい。また、複数の作業モードのうちのいずれの作業モードに設定されているかを照明によって報知するのが好ましい。本実施の形態では、第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の双方が投入位置にあるとき、現在の状態が通常状態ではないことをライト167の照明によって報知することができる。この場合のライト167が、本発明における「報知部」に相当する。このような構成によれば、作業者は第2スイッチ部146の投入状態に基づいて、設定されている作業モードをライト167によって容易に識別することが可能となる。このライト167の報知態様に関しては、単一色或いは複数色による照明が点滅したり点灯したりする態様を用いることができる。このライト167は、必要に応じて、第2スイッチ部146が非投入状態であることを報知する態様、第2スイッチ部146が投入状態であることを報知する態様、第2スイッチ部146が非投入状態と投入状態との間で切り替わったことを報知する態様などを採り得る。その後、第1スイッチ部141と第2スイッチ部146のいずれか一方が非投入位置に設定されることによって、前述の第1作業モード或いは第2作業モードに移行する。
【0073】
(第4の判定結果)
電源投入時において第1スイッチ部141及び第2スイッチ部146の双方が非投入位置にあることがスイッチ検出回路173によって検出されたときに、電動ハンマドリル101が前述の第2ハンマモードT2とハンマドリルモードHDとの間のニュートラルモードにあると判定される(第4の判定結果)。このニュートラルモードでは、駆動モータ111の駆動が禁止された状態とされる。その後、このニュートラルモードから第1スイッチ部141と第2スイッチ部146のいずれか一方が投入位置に設定されることによって、前述の第1作業モード或いは第2作業モードに移行する。
【0074】
なお、スイッチ検出回路173によるスイッチ検出結果に基づく演算・駆動部174の判定は、電源投入状態において少なくとも遂行されればよく、前述のように電源投入時のタイミングで遂行されてもよいし、或いは通常の工具作業終了後等の適宜のタイミングにおいて遂行されてもよい。
【0075】
さて、本実施の形態に係る電動ハンマドリル101は、本体部103に対して下端側が回動軸163を中心にして前後方向に回動自在に連結され、上端側が振動吸収用のコイルバネ161によって連結された防振式のハンドグリップ109を備えている。このため、ハンマ作業あるいはハンマドリル作業時において、本体部103に生じた振動、特にハンマビット119の長軸方向の振動がハンドグリップ109側に伝達することをコイルバネ161によって低減することができる。
【0076】
第2ハンマモードT2を選択した状態での駆動時には、前述したように、ハンドグリップ109側に配置された第1操作部材143が本体部103側のスライドプレート153によってオン位置に強制的に固定されている。このため、剛体連結であれば、本体部103側の振動がスライドプレート153から第1操作部材143を経てハンドグリップ109に伝達されてしまうことになる。
【0077】
そこで、本実施の形態では、第1操作部材143につき、操作部材本体部143aとレバー143bによって構成するとともに、操作部材本体部143aとレバー143bをトーションスプリング143cによって連結する構成とし、トーションスプリング143cの弾性変形を利用してスライドプレート153から第1操作部材143への振動伝達を吸収する構成としている(図3参照)。すなわち、本実施の形態によれば、係る構成とすることで、第1操作部材143の防振構造につき、当該第1操作部材143側において合理的に構築したものである。これにより、第1操作部材143をオン位置に強制的に固定する第2ハンマモードT2と、第1操作部材143を作業者が任意に操作可能とする第1ハンマモードT1およびハンマドリルモードHDとの間での作業モードの選択を行なうモード選択機能と、ハンドグリップ109を本体部103に対してコイルバネ161によって接続する防振式のハンドグリップ109との両立を図ることが可能となった。
【0078】
この場合、本実施の形態では、レバー143bに対して組付け時に付与されるトーションスプリング143cの初期荷重につき、操作部材本体部143aをオン位置に操作して第1スイッチ部141をオン状態としたときに、当該第1スイッチ部141に内蔵されたオフ位置付勢用としてのスプリングに作用する荷重よりも大きく設定している。このため、第2ハンマモードT2の選択時において、第1操作部材143をオン位置に確実に固定した上で、トーションスプリング143cによる振動伝達の低減作用を得ることができる。
【0079】
なお、ハンマ作業を連続的に行う第2ハンマモードT2以外のモードでは、スライドプレート153による第1操作部材143の機械的な固定は解除される。このため、ハンドグリップ109への本体部103側からの振動伝達については、当該ハンドグリップ109と本体部103とを接続するコイルバネ161によって低減されることになる。つまり、本実施の形態に係る電動ハンマドリル101は、別の側面から見た場合、第2ハンマモードT2では、コイルバネ161とトーションスプリング143cによってハンドグリップ109の振動低減作用が遂行され、第2ハンマモードT2以外のモードでは、コイルバネ161のみによって振動低減作用が遂行される。すなわち、第2ハンマモードT2と第2ハンマモードT2以外のモードとでは、ハンドグリップ109の防振用バネ荷重が異なる構成であり、従って、このような構成を採用することで、モード選択機能と防振式ハンドグリップ109との両立を図ることが可能となる。
【0080】
また、本実施の形態では、第1ハンマモードT1あるいはハンマドリルモードHDを選択した場合において、第2操作部材145をオン位置へと押し操作するスイッチ操作用のスライドプレート153が、コイルスプリング154によって弾発状に連結された連係体155を介して第2操作部材145をオン位置へ押し操作する構成としている。このため、スライドプレート153の移動量と第2操作部材145の移動量の差を連係体155がスライドプレート153に対し相対移動することで吸収することができる。従って、スライドプレート153の移動量と第2操作部材145の移動量を、個々に任意に設定することが可能となり、設計上の自由度が高いものとなる。
【0081】
また、第1操作部材143は、第2ハンマモードT2において、スライドプレート153によってオン位置へと押し操作されたときに、ハンドグリップ109のハンドグリップ内部空間109b(第1収納空間)に収納される。この態様が、本発明における「前記ハンドルは、前記第1操作部材を収納可能な第1収納空間を備え、前記第2ハンマモードにおいて前記作業モード切替部材の手動操作に伴って前記第1のスイッチ部が投入状態に保持された状態において、前記第1操作部材を前記第1収納空間に収納する」という態様に相当する。また第2操作部材145は、第1ハンマモードT1あるいはハンマドリルモードHDにおいて、スライドプレート153によってオン位置へと押し操作されたときに、本体部103の後方内部空間103a(第2収納空間)に収納される構成である。この態様が、本発明における「前記工具本体は、前記第2操作部材を収納可能な第2収納空間を備え、前記第1ハンマモード或いはハンマドリルモードにおいて前記作業モード切替部材の手動操作に伴って前記第2のスイッチ部が投入状態に保持された状態において、前記第2操作部材を前記第2収納空間に収納する」という態様に相当する。
【0082】
このため、作業者は第1操作部材143と第2操作部材145の、収納の有無の状態を目で見ることで、現在のモードが連続的作業が可能な第2ハンマモードT2に選択されているか、それとも断続的作業が可能な第1ハンマモードT1あるいはハンマドリルモードHDに選択されているかを判別することができる。また、操作部材の収納構造によって、スプリング(付勢手段)の付勢力が第1操作部材143や第2操作部材145を介して作業者に作用するのを防止することが可能となり、以って作業を円滑に行うのに有効とされる。
【0083】
第1操作部材143と、第2操作部材145は、互いに対向状に配置されている。このため、ハンドグリップ109を把持した手指による片手操作が可能である。また、ハンドグリップ109の前方、すなわち本体部103の後端部は、ハンマビット119から離間した領域であり、またハンマビット119側から見て、陰になる領域でもある。このため、ハンマ作業あるいはハンマドリル作業時に発生する被加工材(コンクリート)の粉塵の影響を受け難いものであり、防塵性が向上する。
【0084】
また、本実施の形態では、ハンマビット119の長軸線を挟んで両側に振動吸収用のコイルバネ161を配置し、それら両コイルバネ161の間にスライドプレート153を配置する構成としている。電動ハンマドリル101は、ハンドグリップ109を把持し、本体部103にハンマビット119の長軸方向の押圧力を作用させつつハンマビット119を被加工材に押し付けて加工作業を行なう。このため、上記のように、コイルバネ161をハンマビット119の長軸線を挟んで両側配置とすることで、ハンマビット119を被加工材に押し付けて作業する際のハンドグリップ109の安定性を得ることができる。また、コイルバネ161間にスライドプレート153を配置することで、合理的な配置構造が構築される。
【0085】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、適宜変形が可能である。本実施の形態では、スライドプレート153によって第1操作部材143がオン位置に強制的に固定された状態において、スライドプレート153と第1操作部材143とを弾性部材を介して連結する構成として、第1操作部材143上に防振用のトーションスプリング143cを設けたが、この構成に替えて、例えばスライドプレート153と第1操作部材143との間に弾性部材としてのバネあるいはゴムを配置する構成にしてもよいし、スライドプレート153上に弾性部材を組み込む構成にしてもよい。スライドプレート153上に弾性部材を組み込む構成は、例えばスライドプレート153の後方領域に対し弾性部材を介して第1操作部材143の押し込み部材を前後方向に相対移動可能に連結することで実現される。
【0086】
また、本実施の形態では、作業モード切替ダイヤル151の偏心軸152とスライドプレート153との連結構造につき、係合孔159を円弧状に形成することで、スライドプレート153の移動量と偏心軸152の前後方向成分の移動量とを異ならせる構成としたが、この構成に変え、係合孔159を前後方向と交差する方向に直線状に形成しても構わない。また、作業モードの切替え動作については、回動式から直線動作式に変更しても構わない。また、本実施の形態においては、ハンマビット119の駆動モードとして第1ハンマモードT1、第2ハンマモードT2およびハンマドリルモードHDを有する場合で説明したが、これらのモード以外に更にハンマビット119に回転動作のみを行なわせるドリルモードを有する構成であっても差し支えない。
【0087】
また、本実施の形態では、第2操作部145につき、オン位置へと押し操作後、手指を離したときに当該第2操作部145がオフ位置に自動復帰する構成としたが、第2スイッチ部146と同様、押し操作後、手指を離してもオン位置に止まり、再度(次回)の押し操作によってオフ位置に戻る構成であってもよい。
【0088】
また、本実施の形態は、打撃工具として電動ハンマドリル101を例にして説明したが、ハンマビット119に打撃動作のみを行なわせるハンマに適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本実施の形態に係る電動ハンマドリルの全体構成を示す一部破断側面図である。
【図2】スイッチ操作用のスライドプレートの構成およびスライドプレートと振動吸収用のコイルバネの配置構成を説明する平面図である。
【図3】ハンドグリップ作動状態を示す断面図である。
【図4】図1のA−A線断面図である。
【図5】図1のB矢印方向から見た第2操作部材および受部材を示す図である。
【図6】作業モード切替ダイヤルにより操作されるスライドプレート、当該スライドプレートによって操作される第1操作部材および第2操作部材の作動態様を示す拡大断面図であり、ニュートラルモードが選択された状態を示す。
【図7】作業モード切替ダイヤルにより操作されるスライドプレート、当該スライドプレートによって操作される第1操作部材および第2操作部材の作動態様を示す拡大断面図であり、第2ハンマモードが選択された状態を示す。
【図8】作業モード切替ダイヤルにより操作されるスライドプレート、当該スライドプレートによって操作される第1操作部材および第2操作部材の作動態様を示す拡大断面図であり、第1ハンマモードが選択された状態を示す。
【図9】作業モード切替ダイヤルにより操作されるスライドプレート、当該スライドプレートによって操作される第1操作部材および第2操作部材の作動態様を示す拡大断面図であり、ハンマドリルモードが選択された状態を示す。
【図10】作業モード切替ダイヤルとスライドプレートの動作態様を示す図であり、ニュートラルモードが選択された場合を示す。
【図11】作業モード切替ダイヤルとスライドプレートの動作態様を示す図であり、第2ハンマモードが選択された場合を示す。
【図12】作業モード切替ダイヤルとスライドプレートの動作態様を示す図であり、第1ハンマモードが選択された場合を示す。
【図13】作業モード切替ダイヤルとスライドプレートの動作態様を示す図であり、ハンマドリルモードが選択された場合を示す。
【図14】本実施の形態の制御回路170の回路構成図である。
【符号の説明】
【0090】
101 電動ハンマドリル(電動工具)
103 本体部(工具本体)
103a 後部内部空間
105 モータハウジング
107 ギアハウジング
108 リアカバー
108a 開口部
109 ハンドグリップ
109a 上部側連接領域
109b ハンドグリップ内部空間
111 駆動モータ
113 運動変換機構
115 打撃要素
117 動力伝達機構
118 クラッチ切替機構
119 ハンマビット(工具ビット)
121 クランク軸
123 クランクアーム
125 ピストン
127 シリンダ
129 ストライカ
131 インパクトボルト
133 中間ギア
135 中間軸
137 第1ベベルギア
139 第2ベベルギア
141 第1スイッチ部
142 取付軸
143 第1操作部材
143a 操作部材本体部
143b レバー
143c トーションバネ
143d 上端部
143e 角状の突起
144 支点
145 第2操作部材
145a 押しボタン部
145b 上端部
145c 軸部
146 第2スイッチ部
147 スプリング
148 ネジ
149 受部材
149a 爪部
149b U形の受部
151 作業モード切替ダイヤル(作業モード切替部材)
151a 回動軸線
152 偏心軸(偏心軸部)
153 スライドプレート
153a 後端突部
153b 長溝
153c 開口
153d 柱状ガイド
153e 後縁
154 コイルスプリング
155 連係体
155a 柱状ガイド
157 連結部
159 係合孔
159a 後側係合面
159b 前側係合面
159c 逃がし凹部
161 振動吸収用のコイルバネ(防振用緩衝材)
163 回動軸
165 蛇腹
167 ライト
170 制御回路
171 コントローラ
172 回路電源部
173 スイッチ検出回路
174 演算・駆動部
175 モータ制御回路電源部
176 モータ制御部
177 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業モードに設定可能な電動工具であって、
モータと、
前記モータを収容する工具本体と、
前記工具本体に設けられて、前記モータによって駆動される長軸状の工具ビットが取り付けられる工具ビット取り付け部と、
前記工具本体のうち前記工具ビットの長軸方向に関し前記工具ビット取り付け部とは反対側に設けられた作業者把持用のハンドルと、
それぞれ投入状態或いは非投入状態に設定可能とされる第1及び第2のスイッチ部と、
前記モータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
電源投入状態において、前記第1及び第2のスイッチ部の各々の投入状態を検出するスイッチ検出部と、
前記スイッチ検出部の検出結果に基づいて作業モードを判定する作業モード判定部と、
前記作業モード判定部の作業モード判定後に、非投入状態側のスイッチ部が操作されると、前記モータに駆動制御信号を出力する駆動制御部と、
を含む構成であることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
請求項1に記載の電動工具であって、
作業者の手動操作によって作業モードの切り替え操作が可能とされた作業モード切替部材を備え、
前記作業モードとして、前記工具ビットを直線状に打撃動作させるハンマ作業形態に対応した第1ハンマモード及び第2ハンマモードを含み、
前記第1ハンマモードでは、前記作業モード切替部材の手動操作に伴って、前記第2のスイッチ部が投入状態に保持される一方、前記第1のスイッチ部が投入状態或いは非投入状態に切り替え可能とされ、
前記第2ハンマモードでは、前記作業モード切替部材の手動操作に伴って、前記第1のスイッチ部が投入状態に保持される一方、前記第2のスイッチ部が投入状態或いは非投入状態に切り替え可能とされることを特徴とする電動工具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動工具であって、
作業者の手動操作によって作業モードの切り替え操作が可能とされた作業モード切替部材を備え、
前記作業モードとして、前記工具ビットを直線状に打撃動作させつつ周方向に回転動作させるハンマドリル作業形態に対応したハンマドリルモードを含み、
前記ハンマドリルモードでは、前記作業モード切替部材の手動操作に伴って、前記第2のスイッチ部が投入状態に保持される一方、前記第1のスイッチ部が投入状態或いは非投入状態に切り替え可能とされることを特徴とする電動工具。
【請求項4】
請求項1に記載の電動工具であって、
前記作業モードとして、前記工具ビットの回転動作を伴うモードと、前記工具ビットの回転動作を伴わないモードを含み、これらのモード間の切り替え過程に、前記第1及び第2のスイッチ部がいずれも非投入状態に設定される切り替え過程を含むことを特徴とする電動工具。
【請求項5】
請求項2または3に記載の電動工具であって、
常時には付勢手段によって非投入位置に付勢されるとともに、第1のスイッチ部の投入の際に前記付勢手段の付勢力に抗して投入位置に引き操作される第1操作部材を備え、
前記ハンドルは、前記第1操作部材を収納可能な第1収納空間を備え、前記第2ハンマモードにおいて前記作業モード切替部材の手動操作に伴って前記第1のスイッチ部が投入状態に保持された状態において、前記第1操作部材を前記第1収納空間に収納する構成であることを特徴とする電動工具。
【請求項6】
請求項2または3に記載の電動工具であって、
作業者の手指による押圧操作の繰り返しにともなって前記第2のスイッチ部の投入状態と非投入状態とを切り替え可能な第2操作部材を備え、
前記工具本体は、前記第2操作部材を収納可能な第2収納空間を備え、前記第1ハンマモード或いはハンマドリルモードにおいて前記作業モード切替部材の手動操作に伴って前記第2のスイッチ部が投入状態に保持された状態において、前記第2操作部材を前記第2収納空間に収納する構成であることを特徴とする電動工具。
【請求項7】
請求項6に記載の電動工具であって、
前記第2のスイッチ部は、前記第2操作部材の押圧操作時における電気的信号によって通電・遮断を行なう電子スイッチからなる構成であることを特徴とする電動工具。
【請求項8】
請求項1から7のうちのいずれか1項に記載の電動工具であって、
前記複数の作業モードのうちのいずれの作業モードに設定されているかを照明によって報知する報知部を備える構成であることを特徴とする電動工具。
【請求項9】
請求項8に記載の電動工具であって、
前記報知部は、前記第2のスイッチ部の投入状態に基づいて、設定されている作業モードを報知する構成であることを特徴とする電動工具。
【請求項10】
請求項1から9のうちのいずれか1項に記載の電動工具であって、
前記工具本体と前記ハンドルとの間に配置され、前記工具本体と前記ハンドルとを前記工具ビットの長軸方向に関し相対移動可能に接続する防振用緩衝材を備える構成であることを特徴とする電動工具。
【請求項11】
請求項1から10のうちのいずれか1項に記載の電動工具であって、
常時には付勢手段によって非投入位置に付勢されるとともに、第1のスイッチ部の投入の際に前記付勢手段の付勢力に抗して投入位置に引き操作される第1操作部材と、作業者の手指による押圧操作の繰り返しに伴って前記第2のスイッチ部を投入状態と非投入状態に切り替え可能な第2操作部材とを備え、
前記第1操作部材は前記ハンドルのうち前記工具ビット取り付け部側に設けられ、前記第2操作部材は前記工具本体のうち前記前記第1操作部材と対向する部位に設けられることを特徴とする電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−221328(P2010−221328A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70707(P2009−70707)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】