説明

電動機およびそれを備えた電気機器

【課題】軸受の電食に起因する電動機の劣化を抑制した電動機およびそれを備えた電気機器を提供する。
【解決手段】固定子巻線12を巻装した固定子鉄心11を含む固定部材を絶縁樹脂13にてモールド一体成形した固定子10と、シャフト16を中心に固定子10に対向して配置された回転子14と、シャフト16を回転自在に支持する2つの軸受15a、15bと、それらの軸受を固定するブラケット17とを備え、2つの軸受15a、15bのいずれか片側の軸受の外輪と内輪との間を電気的に絶縁状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機およびそれを備えた電気機器に関するもので、特に軸受の電食に起因する電動機の劣化を抑制するように改良された電動機およびそれを備えた電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電動機はパルス幅変調(Pulse Width Modulation)方式(以下、PWM方式という)のインバータにより駆動する方式を採用するケースが多くなってきている。こうしたPWM方式のインバータ駆動の場合、巻線の中性点電位が零とならないため、軸受の外輪と内輪間に電位差(以下、軸電圧という)を発生させる。軸電圧は、スイッチングによる高周波信号を含んでおり、軸電圧が軸受内部の油膜の絶縁破壊電圧に達すると、軸受内部に微小電流(以下、軸電流という)が流れ軸受内部に電食が発生する。電食が進行した場合、軸受内輪、軸受外輪または軸受ボールである転動体に波状摩耗現象が発生して異常音に至ることがあり、電動機における不具合の主要因の1つとなっている。
【0003】
従来、電食を抑制するためには、以下のような対策が考えられている。
(1)軸受内輪と軸受外輪を導通状態にする。
(2)軸電圧を低減する。
(3)軸受内輪と軸受外輪を絶縁状態にする。
【0004】
上記(1)の具体的方法としては、軸受の潤滑剤を導電性にすることが挙げられる。但し、導電性潤滑剤は、時間経過とともに導電性が悪化することや摺動信頼性に欠けるなどの課題がある。また、回転軸にブラシを設置し、導通状態にする方法も考えられるが、この方法もブラシ摩耗粉やスペースが必要となるなどの課題がある。
【0005】
上記(2)の具体的方法としては、固定子鉄心と導電性を有した金属製のブラケットとを電気的に短絡させることで、静電容量を変化させて軸電圧を低減する方法が、従来、公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一般的に、洗濯機や食器洗い乾燥機などの水まわりで使用され、感電のおそれのある電動機は、充電部の絶縁(基礎絶縁)以外に、独立した絶縁を追加(以下、付加絶縁という)する必要がある。一方、これ以外のエアコン室内機、エアコン室外機、給湯機、空気清浄機などに使用される電動機は、感電のおそれがないため、付加絶縁は必要としない。したがって、エアコン室内機、エアコン室外機、給湯機、空気清浄機などに使用される電動機は、回転子を絶縁構造としていないために、回転子側(軸受内輪側)のインピーダンスは、低い状態にある。
【0007】
それに対して、固定子側(軸受外輪側)は、絶縁構造となっているため、インピーダンスは高い状態にある。この場合、軸受内輪側の電位は高いのに対して軸受外輪側の電位は低いためアンバランス状態となり、高い軸電圧が発生してしまうこととなる。そして、このような高い軸電圧により軸受に電食が発生する可能性があった。
【0008】
このような状態を避けるために、特許文献1は、固定子鉄心とブラケットとを短絡させることで、その間の静電容量成分をなくし、上述したように固定子側(軸受外輪側)のインピーダンスを低くしている。そして、固定子側のインピーダンスを回転子側(軸受内輪側)のインピーダンスに近似させることで、軸受の内外輪間の電位差である軸電圧も低く
している。
【0009】
ところが、特許文献1のような方法は、インピーダンスを低くするので電圧降下が少なくなり、軸受の内輪側の電圧に加えて外輪側の電圧も高くなる。このため、電動機の使用環境や固定子と回転子の組立精度バラツキなどによって、インピーダンスのバランスが崩れてしまうと、逆に軸電圧が高くなりやすく電食も発生しやすくなってしまうというケースも可能性として考察された。
【0010】
また、上記(3)の具体的方法としては、電動機に使用される複数個の軸受全てに対して、内部の鉄転動体を電気的絶縁材であるセラミックスに変更することが従来、公知である(例えば、特許文献2参照)。この方法は、電食抑制の効果は非常に高いが、コストが高くなるという課題があった。
【0011】
ところで、近年、例えば特許文献1にも開示されているように、固定子側の固定子鉄心などの固定部材をモールド材などで一体にモールドして、信頼性を高めたモールド電動機が提案されている。さらに、モールドの一部分である樹脂ハウジングで軸受も固定するような構造とすることにより、簡易な構成でモールド電動機を実現できる。一方、軸受を固定する強度を考えた場合、樹脂などのモールド材による固定に比べて、金属製のブラケットによる固定のほうが強度的に勝っている。このため、近年では、電動機に要求される固定強度に応じて、軸受が、選択的に金属製ブラケットやモールド材により固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−159302号公報
【特許文献2】特開2007−16846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
電動機は通常2つの軸受でシャフトを支持するが、上述したモールド電動機のように片側の軸受を金属製のブラケットで固定し、反対側の軸受を樹脂ハウジングで固定した場合、電食の発生という観点から、次のような課題があった。すなわち、金属製のブラケットは導電性であるのに対して、樹脂ハウジングは強固な絶縁性能を有している。このため、樹脂ハウジング側の軸受の内外輪間には、軸電流が流れにくいのに対し、導電性であるブラケット側では絶縁性能が低下し軸受の内外輪間に軸電流が流れやすい状態となり、金属製のブラケット側の軸受に電食が発生しやすくなってしまうというような状況が考察される。
【0014】
このように、例えば2つの軸受の固定部材の材質が異なると、一方の軸受に集中して電食が発生しやすくなる。さらには、例えば、2つの軸受をそれぞれ金属製のブラケットで固定した場合でも、ブラケットの大きさや位置によって絶縁性能がアンバランスとなり、一方の軸受に電食が集中しやすくなることもあった。このような現象が生じると、電動機の寿命は一方の軸受に依存してしまうことになる。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、軸受の電食に起因する電動機の劣化を抑制した電動機およびそれを備えた電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電動機は、巻線を巻装した固定子鉄心を含む固定部材を絶縁樹脂にてモールド一体成形した固定子と、シャフトを中心に固定子に対
向して配置された回転子と、シャフトを回転自在に支持する2つの軸受と、軸受を固定するブラケットとを備え、2つの軸受のいずれか片側の軸受の外輪と内輪との間を電気的に絶縁状態にした構成である。
【0017】
このような構成により、絶縁状態にした片側の軸受には軸電流が流れにくくなり、電食による劣化の進行を抑えることができる。すなわち、電食が発生しやすい片側の軸受にはこのような絶縁状態にした軸受を使用し、電食が発生しにくい側の軸受には一般的な鉄転動体を有した軸受を使用することで、軸受の電食による互いの寿命を近似させることができる。その結果、電動機の寿命を伸ばすことができる。
【0018】
また、本発明の電動機は、軸受が、外輪と内輪との間に複数個配置される転動体を有し、片側の軸受において、その外輪、その内輪およびその転動体のうち、少なくとも1つを電気的絶縁材料によって形成した構成である。このような構成により、軸受の外輪、内輪および転動体のいずれかが電気的絶縁材料で形成されているため、形成された軸受内部を流れる軸電流を低減できる。
【0019】
また、本発明の電動機は、電気的絶縁材料が、セラミックス材料で形成された構成である。このような構成により、セラミックス材料は高抵抗であるため、形成された軸受内部を流れる軸電流を低減できる。
【0020】
また、本発明の電動機は、2つの軸受のうち、一方の軸受をブラケットに固定し、他方の軸受を絶縁樹脂に固定した構成である。また、本発明の電動機は、2つの軸受を、大きさの異なったそれぞれのブラケットに固定した構成であってもよい。また、本発明の電動機は、上記ブラケットが金属製である。
【0021】
このような構成により、2つの軸受に対する絶縁性能がアンバランスであっても、電食が発生しやすい片側の軸受には絶縁状態にした軸受を使用し、電食が発生しにくい側の軸受には一般的な鉄転動体を有した軸受を使用することで、軸受の電食による互いの寿命を近似させることができ、軸受の電食に起因する電動機の劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電動機およびそれを備えた電気機器によれば、2つの軸受の電食による互いの寿命を近似させることができ、電動機としての寿命を伸ばすことができる。このため、軸受の電食に起因する電動機の劣化を抑制した電動機およびそれを備えた電気機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態における電動機を搭載したエアコン室外機の内部構成図
【図2】本発明の実施の形態1における電動機の断面を示した構造図
【図3】本発明の実施の形態2における電動機の断面を示した構造図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本実施形態の電動機およびそれを備えた電気機器について、図面を用いて説明する。
【0025】
(実施の形態1)
図1はエアコンの室外機の内部構成を示す図である。エアコン室外機101は、筐体111の内部に電動機108を搭載している。その電動機108は回転軸にファン112を取り付けており、送風用電動機として機能する。そして、筐体111の底板102に立設した仕切り板104により、圧縮機室106と熱交換器室109とに区画されている。圧
縮機室106には圧縮機105が配設され、熱交換器室109には熱交換器107および前記送風用の電動機108が配設されている。また仕切り板104の上部には電装品箱110が配設されている。電動機108は電装品箱110内に収容された電動機駆動装置103により駆動され、ファン112が回転することで、矢印のように熱交換器107を通して熱交換器室109に送風する。
【0026】
次に、図2を用いて、電動機108について詳細に説明する。図2は本発明の実施の形態1における電動機の断面を示した構造図である。電動機108はブラシレスモータで、回転子が固定子の内周側に回転自在に配置されたインナロータ型となっている。
【0027】
固定子鉄心11には固定子鉄心11を絶縁する樹脂であるインシュレータ22が介在して、巻線としての固定子巻線12が巻装されている。そして、このような固定子鉄心11は他の固定部材とともにモールド材としての絶縁樹脂13にてモールド成形されている。本実施の形態では、これらの部材をこのようにモールド一体成形することにより、外形が概略円筒形状をなす固定子10が構成されている。
【0028】
固定子10の内側には、空隙を介して回転子14が挿入されている。回転子14は回転子鉄心31を含む円板状の回転体30と、回転体30の中央を貫通するようにして回転体30を締結したシャフト16とを有している。回転子鉄心31は、固定子10の内周側に対向して周方向に、永久磁石である複数のフェライト樹脂磁石32保持しており、回転子鉄心31とフェライト樹脂磁石32とが一体成形されている。このように、固定子10の内周側と回転体30の外周側とが対向するように配置されている。
【0029】
回転子14のシャフト16には、シャフト16を支持する2つの軸受15a、15bが取り付けられている。軸受15a、15bは外輪と内輪との間に複数の転動体を有した円筒形状のベアリングであり、その内輪側がシャフト16に固定されている。
【0030】
図2では、シャフト16がブラシレスモータ本体から突出した側となる出力軸側において、軸受15bがシャフト16を支持し、その反対側(以下、反出力軸側と呼ぶ)において、軸受15aがシャフト16を支持している。そして、反出力軸側の軸受15aは、導電性を有した金属製のブラケット17により、その外輪側が固定されている。また、出力軸側の軸受15bは、モールド一体成形する絶縁樹脂13により、その外輪側が固定されている。以上のような構成により、シャフト16が2つの軸受15a、15bに支承され、回転子14が回転自在に回転する。
【0031】
ここで、反出力軸側の軸受15aの外輪41と内輪42とを電気的に絶縁状態にするために、反出力軸側の軸受15aの転動体40を電気的絶縁材料であるセラミックス材料で構成している。一方、出力軸側の軸受15bは、内輪、外輪および転動体が一般的な鉄材料により形成されている。すなわち、本実施の形態のブラシレスモータは、2つの軸受15a、15bのうち、外輪41と内輪42との間を電気的に絶縁状態にした一方の軸受15aを金属製のブラケット17に固定し、他方の軸受15bを絶縁樹脂13に固定している。
【0032】
以上のように構成された本ブラシレスモータに対して、接続線50を介して各相に電圧を供給することにより、固定子巻線12に駆動電流が流れ、固定子鉄心11から磁界が発生する。そして、固定子鉄心11からの磁界とフェライト樹脂磁石32からの磁界とにより、それら磁界の極性に応じて吸引力および反発力が生じ、これらの力によってシャフト16を中心に回転子14が回転する。
【0033】
さらに詳細に説明すると、図2に示すように、出力軸側における絶縁樹脂13の形状は
、本ブラシレスモータ本体から出力軸方向へと突出する本体突出部13aを有した形状である。本体突出部13aの内側は中空円筒状となる形状を有している。この中空円筒状の中空円筒部の径は軸受15bの外周径とほぼ等しく、この中空円筒部に軸受15bを挿入することにより、軸受15bは絶縁樹脂13に固定されることになる。
【0034】
これに対し、反出力軸側の軸受15aに対しては、固定子10の外周径とほぼ等しい外周径の金属製のブラケット17により固定している。ブラケット17は概略円板形状であり、円板の中央部に軸受15aの外周径とほぼ等しい径の突出部17aを有しており、この突出部17aの内側は中空となっている。この突出部17aの内側に軸受15aを挿入するとともに、ブラケット17の外周に設けた接続端部と固定子10の接続端部とが嵌合するように、ブラケット17を固定子10に圧入することにより、本ブラシレスモータが形成される。このように構成することで、組立作業の容易化を図るとともに、軸受15aの外輪側は金属製のブラケット17に固定されるため、軸受15aを強固に固定できる。
【0035】
ところで、以上のように構成されたブラシレスモータを電気的にみると、まず、軸電圧を発生させる信号の発生源としては、PWM方式の高周波のスイッチングで駆動される固定子巻線12を巻装した固定子鉄心11が主な発生源と考えられる。そして、上述したように、回転子側(軸受内輪側)のインピーダンスは低く、固定子側(軸受外輪側)は高い状態にある。
【0036】
すなわち、回転子側のインピーダンスとして、固定子鉄心11から軸受15a、15bの内輪までの間を考えると、固定子鉄心11と回転体30とはわずかな空隙を介して対面しているとともに、回転体30およびシャフト16は導電体であるため、この間のインピーダンスは低い状態といえる。さらに、この間のインピーダンスは低いため、固定子鉄心11から発生した高周波信号は減衰せずに軸受15a、15bの内輪に達し、その結果、軸受15a、15bの内輪には高電位の高周波の電圧が生じるものと考えられる。
【0037】
これに対し、固定子側のインピーダンスとして、固定子鉄心11から軸受15a、15bの外輪までの間を考えると、例えば軸受15bの外輪に接続された絶縁樹脂13の本体突出部13aは、固定子鉄心11からある程度の間隔を持って導電性の材料などを介さずに配置されるため、この間のインピーダンスは高い状態といえる。また、軸受15aの外輪41に接続された金属性のブラケット17は、導電体であるため、軸受15a側のインピーダンスは、軸受15b側のインピーダンスよりは低くなっている。さらに、これらの間のインピーダンスは回転子側のインピーダンスよりは高い。このため、固定子鉄心11から発生した高周波電流は減衰して軸受15a、15bの外輪に達し、その結果、軸受15a、15bの外輪には回転子側より低電位の高周波電圧が生じるものと考えられる。
【0038】
すなわち、固定子側と回転子側とを比較したとき、固定子側と回転子側とのインピーダンスがアンバランス状態であるため、軸受15a、15bの内輪と外輪との間に電位差、すなわち軸電圧が生じ、軸受15a、15bに軸電流が流れることになる。そして、このような軸電流の流れによって内輪と外輪との間での磨耗が加速され、電食と呼ばれる磨耗劣化が進行すると考えられる。
【0039】
さらに、金属性のブラケット17で固定した軸受15aと絶縁樹脂13で固定した軸受15bとを比較したとき、両方の軸受15a、15bとも鉄転動体を配置したと仮定すると、軸受15bよりもインピーダンスが低い側となる軸受15aのほうの軸電流が多く流れるものと考察される。
【0040】
このように、固定子側(軸受外輪側)の構成が異なるため、出力軸側の軸受15aと反出力軸側の軸受15bとのインピーダンスがアンバランス状態となり、2つの軸受15a
、15bに流れる軸電流の値は各々で異なることになる。そして、絶縁樹脂13で固定された軸受15bの内外輪間には軸電流が流れにくいのに対し、導電性であるブラケット17で固定された軸受15aの内外輪間には、軸電流が流れやすくなる状況が考えられる。
【0041】
このため、本実施の形態のブラシレスモータは、同一軸受で比較した場合に軸電流が大きくなると考えられる側の軸受、すなわち軸受15aの転動体40をセラミックス材料とし、軸受15aの外輪41と内輪42との間の電気的な絶縁を強固にしている。これによって、軸受15aの内外輪間に流れる軸電流を抑制できるため、軸電流によって生じる電食の進行を抑えることが可能になる。一方、軸受15bの内外輪間には軸電流が流れにくい構造であるため、軸受15bの転動体を一般的な鉄転動体としても電食は発生しにくい。
【0042】
よって、電食によって軸受が劣化するまでの寿命を考えた場合、軸受15aと軸受15bとの互いの寿命が近似することになるため、結果として本ブラシレスモータの寿命を伸ばすことができる。さらに、一方の軸受のみにセラミックス材料の転動体を用いればよいため、軸受全てにセラミックス材料の転動体を用いるような構成に比べて、コストを抑えることができる。
【0043】
なお、以上の説明では、出力軸側の軸受15aに流れる軸電流が、反出力軸側の軸受15bに流れる軸電流より大きいため、軸受15aの転動体40をセラミックス材料とした一例を挙げて説明した。しかし、例えば、軸受15aを固定するブラケット17の大きさや形状、さらには、固定子鉄心11から軸受15aまでの間隔と軸受15bまでの間隔との差、その間の絶縁樹脂13の状態など、構造によって、出力軸側の軸受15aと反出力軸側の軸受15bとのインピーダンスは異なる。すなわち、上述した例とは逆に、同一軸受での比較において、金属製のブラケットで固定した側の軸受に流れる軸電流のほうが小さくなるような場合もあり得る。このため、その際には、金属製のブラケットで固定しない側の軸受の転動体をセラミックス材料にすることは言うまでもない。
【0044】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2における他の構成の電動機の断面を示した構造図である。図3では2つの軸受15a、15bそれぞれを金属製のブラケットで固定するような構成例を示している。すなわち、図3に示すように、出力軸側の軸受15bは、ブラケット17よりも径の小さいブラケット19を介して絶縁樹脂13に固定されている。
【0045】
このように、2つの軸受15a、15bそれぞれを金属製のブラケットで固定するような構成であっても、ブラケットの大きさなどや電動機の構造によって、出力軸側の軸受15bと反出力軸側の軸受15aとのインピーダンスは異なり、軸電流も異なることになる。すなわち、このような構成であっても、軸電流が大きくなるほうの軸受の転動体をセラミックス材料にすればよい。
【0046】
なお、上記実施の形態1および2では、軸受の転動体をセラミックス材料にする構成としているが、外輪、内輪のいずか一方、もしくは転動体を含む全てを電気的絶縁材料として、例えばセラミックス材料とする場合においても、同様の効果が得られる。
【0047】
また、回転子が固定子の内周側に回転自在に配置されたインナロータ型の電動機の例を挙げて説明したが、回転子が固定子の外周側に配置されたアウタロータ型、さらには内外周両側に回転子を配置したツインロータ型の電動機において上述したように軸電流が大きいほうの軸受の外輪と内輪を電気的に絶縁状態にする構成とすることによっても、同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、エアコン室外機に搭載されるブラシレスモータを取り上げたが、その他の電気機器に搭載される電動機、例えば、各種家電用機器に使用されるブラシレスモータや、各種情報機器に搭載されるブラシレスモータ、産業機器に使用されるブラシレスモータにも適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の電動機は、電食に起因する電動機の劣化を抑制できるため、主に電動機の高寿命化および低価格化が要望される機器で、例えばエアコン室内機、エアコン室外機、給湯機、空気清浄機などに搭載される電動機に有効である。
【符号の説明】
【0050】
10 固定子
11 固定子鉄心
12 固定子巻線
13 絶縁樹脂
14 回転子
15a、15b 軸受
16 シャフト
17、19 ブラケット
30 回転体
31 回転子鉄心
32 フェライト樹脂磁石
40 転動体
41 外輪
42 内輪
101 エアコン室外機
103 電動機駆動装置
108 電動機
112 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線を巻装した固定子鉄心を含む固定部材を絶縁樹脂にてモールド一体成形した固定子と、
シャフトを中心に前記固定子に対向して配置された回転子と、
前記シャフトを回転自在に支持する2つの軸受と、
前記軸受を固定するブラケットとを備え、
前記2つの軸受のいずれか片側のみの軸受の外輪と内輪との間を電気的に絶縁状態にしたことを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記軸受は、外輪と内輪との間に複数個配置される転動体を有し、
前記軸受の外輪、内輪および転動体のうち、少なくとも1つを電気的絶縁材料によって形成したことを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記電気的絶縁材料が、セラミックス材料であることを特徴とする請求項2に記載の電動機。
【請求項4】
前記2つの軸受のうち、一方の軸受を前記ブラケットに固定し、他方の軸受を前記絶縁樹脂に固定したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電動機。
【請求項5】
前記2つの軸受を、大きさの異なったそれぞれのブラケットに固定したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電動機。
【請求項6】
前記ブラケットは金属製であることを特徴とする請求項4または5に記載の電動機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電動機を搭載したことを特徴とする電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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