電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構および液面高さ調整方法
【課題】電動機ユニットの高回転領域の冷媒の液面高さを中回転領域および小回転領域よりも高くし、高回転領域での冷却効果を高める電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構および液面高さ調整方法を得る。
【解決手段】電動機ユニット1の下部にオイル溜り部(冷媒溜り部)5を設け、該オイル溜り部5の上側にオイル貯留部(冷媒貯留部)6を設ける。また、オイル溜り部5のオイル(冷媒)Rをオイル貯留部6に供給するオイル供給通路(冷媒供給通路)7を設け、オイル貯留部6に溜めたオイルRをオイル溜り部5に還流可能にする。オイル供給通路7に、第1の弁100およびバイパス通路9を設けて、電動機2の高回転領域におけるオイル溜り部5のオイルレベル(液面高さ)Lを、電動機2の中回転領域および小回転領域におけるオイルレベルLよりも高く調整する。
【解決手段】電動機ユニット1の下部にオイル溜り部(冷媒溜り部)5を設け、該オイル溜り部5の上側にオイル貯留部(冷媒貯留部)6を設ける。また、オイル溜り部5のオイル(冷媒)Rをオイル貯留部6に供給するオイル供給通路(冷媒供給通路)7を設け、オイル貯留部6に溜めたオイルRをオイル溜り部5に還流可能にする。オイル供給通路7に、第1の弁100およびバイパス通路9を設けて、電動機2の高回転領域におけるオイル溜り部5のオイルレベル(液面高さ)Lを、電動機2の中回転領域および小回転領域におけるオイルレベルLよりも高く調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構および液面高さ調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ギアユニットの内部を油浴潤滑させる際に、例えば、特許文献1では、回転軸で駆動する機械式のオイルポンプによって、ユニット下部に溜めた冷媒としてのオイルをユニット上部のオイルタンクに一時的に溜めるようになっている。そして、オイルタンクの貯留量が所定量以上で、溜めたオイルをユニット下部に戻すことでオイルレベル(冷媒の液面高さ)を調整するようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−69962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来のオイルレベル調整機構では、オイルポンプが回転軸で駆動されるため、回転軸の回転数が上昇した場合、オイルポンプの吐出量が増大し、オイルタンクに蓄溜されるオイル量が増え、ユニット下部のオイルレベルは低下する。
【0005】
このため、冷却効果を特に必要とする高回転領域では、撹拌抵抗が小さいにもかかわらずオイルレベルが低くなってステータやロータの冷却性能が不足するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、高回転領域の冷媒の液面高さを中回転領域および小回転領域よりも高く維持し、高回転領域での冷却効果を高めるようにした電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構および液面高さ調整方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電動機のロータとステータを冷却する冷媒の液面高さを調整する電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構である。電動機ユニットの下部に設けられた冷媒溜り部の冷媒の一部を溜め、かつ、溜めた冷媒を前記冷媒溜り部に還流可能な冷媒貯留部と、前記冷媒溜り部の冷媒を前記冷媒貯留部に供給する冷媒供給通路と、該冷媒供給通路に設けられ電動機の高回転領域における前記冷媒溜り部の液面高さを電動機の中回転領域における液面高さよりも高く調整する液面高さ調整部と、を備えたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液面高さ調整部によって、冷媒溜り部における液面高さを、電動機の高回転領域で中回転領域および小回転領域よりも高く調整できるので、高回転領域での冷却効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明にかかるオイルレベル調整機構(液面高さ調整機構)を備えた電動機ユニットの第1の実施形態を示す側断面図である。
【図2】図2は、図1に示す電動機ユニットのケーシングを半断面した斜視図である。
【図3】図3は、図1中I−I線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図2中II−II線に沿った断面図である。
【図5】図5は、図1に示す電動機ユニットのオイル供給通路に設けられる第1の弁の外観斜視図である。
【図6】図6は、図5に示す第1の弁の分解斜視図である。
【図7】図7は、図5に示す第1の弁の作動状態を示し、(a)は開弁状態の断面図、(b)は閉弁状態の断面図である。
【図8】図8は、図1に示す電動機ユニットのオイル循環経路を概略的に示す断面図である。
【図9】図9は、第1の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される特性の全体的な傾向を示し、(a)は回転数と圧力損失との関係のグラフ、(b)は回転数と流量との関係のグラフ、(c)は回転数とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図10】図10は、第1の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される回転数と撹拌抵抗との関係のグラフである。
【図11】図11は、従来のオイルレベル調整機構の回転数と撹拌抵抗との関係のグラフである。
【図12】図12は、本発明にかかるオイルレベル調整機構を備えた電動機ユニットの第2の実施形態を示す図8に対応した概略的な断面図である。
【図13】図13は、第2の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される特性の全体的な傾向を示し、(a)は回転数と圧力損失との関係のグラフ、(b)は回転数と流量との関係のグラフ、(c)は回転数とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図14】図14は、本発明にかかるオイルレベル調整機構を備えた電動機ユニットの第3の実施形態を示す図8に対応した概略的な断面図である。
【図15】図15は、第3の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される特性の全体的な傾向を示し、(a)は回転数と圧力損失との関係のグラフ、(b)は回転数と流量との関係のグラフ、(c)は回転数とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図16】図16は、第3の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される時間とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図17】図17は、本発明にかかるオイルレベル調整機構を備えた電動機ユニットの第4の実施形態を示す図8に対応した概略的な断面図である。
【図18】図18は、第4の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される特性の全体的な傾向を示し、(a)は回転数と圧力損失との関係のグラフ、(b)は回転数と流量との関係のグラフ、(c)は回転数とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図19】図19は、第4の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される時間とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図20】図20は、本発明にかかるオイルレベル調整機構を備えた電動機ユニットの第5の実施形態を示す図8に対応した概略的な断面図である。
【図21】図21は、第5の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される特性の全体的な傾向を示し、(a)は回転数と圧力損失との関係のグラフ、(b)は回転数と流量との関係のグラフ、(c)は回転数とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図22】図22は、第5の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される時間とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図23】図23は、本発明にかかるオイルレベル調整機構を備えた電動機ユニットの第6の実施形態を示す図8に対応した概略的な断面図である。
【図24】図24は、第6の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される回転数とオイルレベルとの関係のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
[第1の実施形態]
【0011】
図1〜図11は、本発明にかかるオイルレベル調整機構(冷媒の液面高さ調整機構)10を備えた電動機ユニット1の第1の実施形態を示す。電動機ユニット1は、図1に示すように、電動機2と、この電動機2を収納するケーシング3とを備えている。
【0012】
電動機2は、外周に永久磁石21を設けた円盤状のロータ22と、このロータ22の外周に所定の隙間をもって配置されると共にコイル23を各磁極毎に巻回した環状のステータ24と、ロータ22の回転を外部に伝える回転軸25と、を備えている。回転軸25にはフランジ部25aが形成されており、このフランジ部25aにロータ22が一体に結合されることにより、ロータ22と回転軸25とは一体に回転するようになっている。
【0013】
ケーシング3は、内周にステータ24を固定した筒状の外周壁31と、この外周壁31の一端側の開口を閉止する第1の閉塞壁32と、外周壁31の他端側の開口を閉止する第2の閉塞壁33とで構成されている。このとき、第1の閉塞壁32は、互いに重ね合わせて結合される外側壁34と厚肉の内側壁35とで構成されている。
【0014】
第1の閉塞壁32における径方向中心部には外側壁34側にベアリング41が設けられ、このベアリング41によって回転軸25の一端部(図中左端部)が回転支持される。また、第1の閉塞壁32と回転軸25との間は、内側壁35側に設けたオイルシール42によって密封される。
【0015】
他方、第2の閉塞壁33の径方向中心部にはボス部36が一体に結合され、このボス部36に設けたベアリング43によって回転軸25の他端部(図中右端部)が回転支持される。また、ボス部36と回転軸25との間はオイルシール44によって密封される。
【0016】
ケーシング3の内側の下部はオイル溜り部(冷媒溜り部)5となっており、このオイル溜り部5に所定量のオイル(冷媒)Rが溜められている。この溜められたオイルRは電動機2のロータ22やステータ24を冷却する冷媒として用いられる。つまり、オイル溜り部5には、少なくともロータ22の下端部が浸漬される高さ程度にオイルRが溜められており、そのオイルRがロータ22の回転によって撹拌されることでロータ22やステータ24が冷却されるようになっている。
【0017】
第1の閉塞壁32には、オイル溜り部5のオイルRの一部を溜めることができるオイル貯留部(冷媒貯留部)6が設けられている。このオイル貯留部6は、内側壁35の外側面の略上半部に第1の閉塞壁32と同心状となる円弧状の溝として形成され、その溝の外側が外側壁34で閉止されることで、図2に示すように、アーチ状の密閉空間となっている。
【0018】
このとき、アーチ状のオイル貯留部6は、図3に示すように、頂部6cを境にして両端部6e1、6e2が下方に下がった形状となる。ここで、頂部6cは、オイル貯留部6における最も高い部位であり、かつ、左右方向の中心でもある。従って、オイル貯留部6にオイルRが溜められる際に、両端部6e1、6e2に振り分けて溜められることになり、それら両端部6e1、6e2の弧状空間部はそれぞれ小貯留部61、62となっている。これら2つの小貯留部61、62は、それぞれの上部に位置する頂部6cで互いに連通される。
【0019】
小貯留部61、62のそれぞれの下端部にはオイル還流通路(冷媒還流通路)63、64が設けられ、これらオイル還流通路63、64は、オイル溜り部5の上方において内側壁35の内面に開口(開口部63a、64a)している。従って、それぞれの小貯留部61、62に溜められたオイルRは、オイル還流通路63、64を介してオイル溜り部5に戻されることになる。
【0020】
このとき、オイル還流通路63、64の断面積は、小貯留部61、62の断面積、つまり、オイル貯留部6の断面積よりも十分に小さくなっている。これにより、オイル貯留部6に供給されるオイルRの量が、オイル還流通路63、64から排出されるオイル量を超えたときに、オイルRはオイル貯留部6に溜められていくことになる。尚、小貯留部は2つに限ることなく3つ以上設けることもできる。
【0021】
オイル溜り部5の下部とオイル貯留部6の頂部となる頂部6cとがオイル供給通路(冷媒供給通路)7によって連通され、このオイル供給通路7を介してオイル溜り部5のオイルRの一部がオイル貯留部6に供給される。なお、オイル供給通路7は、上流側(図2,3の下側)から下流側(図2,3の上側)に向けて、細径部7C,細径部7Bおよび太径部7Aから一体に形成されている。
【0022】
オイル供給通路7の途中(細径部7Bと細径部7Cとの間)には、電動機2の回転軸25によって駆動される機械式のオイルポンプ8が設けられ、電動機2の稼働によってオイル溜り部5のオイルRがオイルポンプ8によってオイル貯留部6へと供給される。オイルポンプ8は、図1に示すように、ベアリング41とオイルシール42との間に位置して内側壁35に組み込まれている。
【0023】
オイルポンプ8としては、例えば歯車ポンプを用いることができるが、これに限ることなく回転軸25の回転によって駆動される機械式のポンプであればよい。従って、機械式のオイルポンプ8を用いたことにより、電動機2の回転数が上昇するとオイルポンプ8の吐出量が増大するため、オイル供給通路7を介してオイル貯留部6に供給されるオイルRの量が増す。すると、オイル貯留部6に溜まるオイルRの量が増量する反面、オイル溜り部5のオイルRの量が減少してオイルレベルLが低くなる。
【0024】
一方、これとは逆に電動機2の回転数が低い場合は、オイルポンプ8の吐出量が少ないためオイル貯留部6に溜まるオイルRの量が減少し、オイル溜り部5のオイルレベル(液面高さ)Lが高くなる。従って、オイルレベルLは高回転領域で最も低くなり、それよりも回転数が低い中回転領域や低回転領域でオイルレベルLは高回転領域に比較して高くなる。このようにオイルレベルLが変化すると、ロータ22の下部がオイルRに浸漬される深さが変化してロータ22によるオイルRの撹拌量が変化する。尚、高回転能力を有する電動機2は、それの高回転領域ではオイルRの引きずりトルクが低下する傾向となる。
【0025】
従って、高回転領域よりもオイルレベルLが高くなる中回転領域では、ロータ22がオイルR内に浸漬される深さが深くなり、かつ、ロータ22の引きずりトルクが高回転領域に比べて大きくなる。このため、従来では図11中の特性線S1に示すように、中回転領域で撹拌抵抗が顕著に大きくなってしまう。
【0026】
一方、高回転領域で冷却効果を確保するためには、高回転領域でのオイルレベルLをある程度高くする必要がある。ところが、このように、高回転領域でオイルレベルLを高くしようとすると、中回転領域でのオイルレベルLを更に高く設定する必要があり、その中回転領域の撹拌抵抗が更に増大してしまう。このため、高回転領域でのオイルレベルLを高く維持した状態で、中回転領域および小回転領域のオイルレベルLをより低くして撹拌抵抗を小さくすることが望まれる。
【0027】
ここで、本実施形態では、図1および図2に示すように、オイル供給通路7がオイル貯留部6に連通するオイル流入口(冷媒流入口)7aに、オイル貯留部6に流入するオイル流量に応じて開口面積(弁開度)が変化する第1の弁100を設ける。また、本実施形態では、オイル供給通路7の第1の弁100とオイルポンプ8との間をオイル溜り部5に連通するバイパス通路9を設ける。
【0028】
そして、オイル溜り部5のオイルRの一部をオイル供給通路7を介してオイル貯留部6に供給する工程と、このオイル溜り部5からオイル貯留部6へ送るオイル供給量およびオイル貯留部6からオイル溜り部5に戻すオイル量を調整する工程とを設ける。そして、電動機2の高回転領域におけるオイル溜り部5のオイルレベルLを、電動機2の中回転領域および小回転領域におけるオイルレベルLよりも高くするようになっている。
【0029】
第1の弁100の開度が変化すると、オイル溜り部5からオイル貯留部6に供給されるオイルRの量が変化して、オイル溜り部5のオイルレベルLを調整できるようになる。このとき、第1の弁100は、高回転領域のオイルレベルLが中回転領域および小回転領域のオイルレベルLよりも高くなるように調整する機能を有する。
【0030】
バイパス通路9は、オイル供給通路7が形成された内側壁35の内部に形成される。このとき、バイパス通路9の断面積は、オイル供給通路7の細径部7Bの断面積よりも十分に大きく形成されており、また、太径部7Aは、このバイパス通路9と略同じ断面積となっている。
【0031】
従って、オイル供給通路7のオイル流入口7aはバイパス通路9と略同じ大径となっている。そして、図2に示すように、このオイル流入口7aの内周に形成された雌ねじ部に、後述する弁ハウジング101の雄ねじ部101aがねじ込まれて第1の弁100が取り付けられる。
【0032】
また、図2から図4に示すように、バイパス通路9の下端部はオイル溜り部5のオイルレベルLよりも上方に位置しており、そのバイパス通路9の下端部はオリフィス9aとなってケーシング3内に開口されている。
【0033】
そして、第1の弁100とバイパス通路9とによってオイルレベル調整部(液面高さ調整部)が構成されている。また、本実施形態のオイルレベル調整機構10は、オイル貯留部6、オイル供給通路7、オイルポンプ8および上記オイルレベル調整部によって構成されている。
【0034】
第1の弁100は、連続的に開度変化する弁であってもよいし、ON・OFF式の開閉弁であってもよい。本実施形態では、図5から図7に示すように、後者のON・OFF式の開閉弁によって第1の弁100が構成される。この第1の弁100は常開式の開閉弁となっている。
【0035】
即ち、第1の弁100は、外周に雄ねじ部101aを切った有底筒状の弁ハウジング101と、この弁ハウジング101内に収容される弁体102と、この弁体102を開弁方向に付勢する圧縮スプリング103とによって構成されている。
【0036】
弁ハウジング101は、それの内側に弁体102が軸方向の移動を許容して収納され、一端(図6中下方)にオイル導入口101bと他端(図6中上方)に弁座101cを設けた弁室101dが形成されている。弁座101cは、一定の傾斜角をもったコーン形状に形成される。また、弁ハウジング101のオイル導入口101bとは反対側の端壁101eには、弁室101dと連通する吐出口101fが形成されている。更に、弁ハウジング101の端壁101eの内側には、吐出口101fと同心状に形成された座面101gが設けられている。
【0037】
弁体102は、全体的に弁室101dの内径よりも僅かに小さい外径となる略円盤状に形成され、弁座101cに対向する端面側に、この弁座101cのコーン面に沿ったテーパ部102aが形成されている。また、弁体102の外周部には、周方向に略等間隔をもってオイルRを通過させるための複数の溝部102bがギア状に形成されている。更に、テーパ部102aの先端中心部にはスプリング受け面102cが形成されている。
【0038】
圧縮スプリング103は、弁ハウジング101の座面101gと弁体102のスプリング受面102cとの間に圧縮状態で介装される。従って、弁体102は、圧縮スプリング103によりテーパ部102aが弁座101cから離れる方向、つまり開弁方向に常時付勢される。尚、弁室101dに収納された弁体102は、オイル導入口101bの内周部に設けられた内向きフランジ101hによって抜止めされる。
【0039】
第1の弁100は、オイルポンプ8が稼働しない時、また、電動機2の回転数が低くてオイルポンプ8の吐出量が所定量よりも少ない時は、図7(a)に示すように、弁体102は圧縮スプリング103の付勢力で開弁された状態となる。この開弁状態では、オイル導入口101bから流入したオイルRが弁体102の溝部102bを通過した後、テーパ部102aと弁座101cとの間を経由して吐出口101fから流出される。
【0040】
他方、電動機2の回転数が高くなってオイルポンプ8の吐出量が所定量以上になると、図7(b)に示すように、弁体102は圧縮スプリング103の付勢力に抗して移動して閉弁状態となる。この閉弁状態では、弁体102のテーパ部102aが弁座101cに密接してオイルRの通過が遮断される。
【0041】
以上の構成になる電動機ユニット1は、図8に示すように簡素化して示すことができる。このような電動機ユニット1では、電動機2の回転数が上昇するとオイルポンプ8の吐出量も増大されるため、バイパス通路9およびオイル貯留部6への通路の圧力損失が高まる。このとき、バイパス通路9の圧力損失が大きくなるように予めオリフィス9aの径が決定されている。
【0042】
そして、電動機2の回転数が所定の回転数に達すると、オイルポンプ8の吐出圧力によって第1の弁100が閉弁して圧力損失は無限大(図9(a)参照)となり、オイル貯留部6に供給されるオイルRの流量はゼロとなる。これにより、オイルポンプ8から吐出されたオイルRは全てバイパス通路9を経由してオイル溜り部5へと戻される(図9(b)参照)。これにより、オイルレベルLは高回転領域で上昇される(図9(c)参照)。尚、図9(a)の圧力損失特性を示すグラフおよび図9(b)の流量を示すブラフ中、破線はオイル貯留部6に関する特性、実線はバイパス通路9に関する特性である。このことは以下の実施形態で述べる図13、図15、図18および図21の(a)、(b)で同様とする。
【0043】
勿論、電動機2が所定の回転数に達するまでは、その回転数に比例してオイルポンプ8の吐出量は増大するため、オイルレベルLは徐々に低下していくことになる。そして、所定の回転数を超えた場合、つまり、高回転領域では第1の弁100が閉弁して高いオイルレベルLを確保できるため、中回転領域ではオイルレベルLを従来に比較して予め低く設定しておくことが可能となる。
【0044】
従って、図10に示すように、中回転領域のオイルレベルLを低く設定しておくことにより、引きずりトルクの大きな中回転領域では同図中実線に示すように撹拌抵抗を大幅に低下させることができる。尚、図10中の破線は、図11に示した特性線S1である。
【0045】
以上説明したように、第1の実施形態のオイルレベル調整機構10によれば、第1の弁100とバイパス通路9とからなるオイルレベル調整部を設けたので、オイル溜り部6のオイルレベルLを、電動機2の高回転領域で中回転領域よりも高くできる。これにより、高回転領域での冷却効果を高めることができる。また、高回転領域のオイルレベルLを高くできるので、中回転領域のオイルレベルLを予め低く設定しておくことができる。これにより、中回転領域での撹拌抵抗を小さく維持できる。従って、本実施形態では、電動機2の高回転領域での冷却効果を高めつつ、中回転領域の撹拌抵抗を小さく維持できる。
【0046】
また、本実施形態によれば、オイルレベル調整部を第1の弁100とバイパス通路9とによって構成したので、機械式のオイルポンプ8の吐出圧力の変化を利用してオイルレベルLを調整できるため、構造の簡素化およびコスト削減を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態のオイルレベル調整方法によれば、オイル溜り部5のオイルRの一部をオイル貯留部6に供給する工程と、このオイル貯留部6へのオイル供給量およびオイル貯留部6からオイル溜り部5に戻すオイル量を調整する工程とを設けてある。従って、高回転領域におけるオイル溜り部5のオイルレベルLを、中回転領域におけるオイルレベルLよりも高くする際に、オイル貯留部6に供給するオイルRの量を制御すればよいので、制御がより簡単となりかつ精度を高めることができる。
[第2の実施形態]
【0048】
図12および図13は、本発明の第2の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
本実施形態のオイルレベル調整機構10Aが第1の実施形態と主に異なる点は、図12に示すように、バイパス通路9に、オイル溜り部5に流入するオイル流量に応じて開口面積が変化する第2の弁110を設けたことにある。勿論、本実施形態にあっても第1の実施形態で述べたように、オイル供給通路7には第1の弁100が設けられている。
【0049】
第2の弁110は、第1の弁100(図5から図7参照)と同様の構造になっている。
【0050】
第2の弁110は、図12に示すように、弁ハウジング111と弁体112との間には引張りスプリング113が介装され、この引張りスプリング113によって弁体112を閉弁方向に付勢する常閉式の開閉弁として構成される。つまり、第2の弁110は、バイパス通路9にオイルRが流入していないとき、または、流入するオイルRの量が少ないときは閉弁状態となっている。そして、バイパス通路9に流入するオイルRの量が所定量以上となったとき、つまり、第1の弁100が閉弁したときに第2の弁110が開弁するようになっている。つまり、第1の弁100と第2の弁110とは、それぞれの開閉タイミングが逆となる関係にある。
【0051】
従って、本実施形態では、電動機2の回転数が所定の回転数に達すると、オイルポンプ8の吐出圧力によって第1の弁100が閉弁して圧力損失は無限大となり、オイル貯留部6に供給されるオイルRの流量はゼロとなる(図13(a)参照)。また、これと略同時に第2の弁110が開弁して、オイルポンプ8から吐出されたオイルRは全てバイパス通路9を経由してオイル溜り部5へと流入する(図13(b)参照)。これにより、オイルレベルLは高回転領域で上昇する(図13(c)参照)。
【0052】
以上説明したように、第2の実施形態のオイルレベル調整機構10Aによれば、オイル溜り部6のオイルレベルLを、電動機2の高回転領域で中回転領域および低回転領域よりも高くできるので、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
また、これに加えて本実施形態では、バイパス通路9に第2の弁110を設けたので、第1の弁100が閉弁してはじめて第2の弁110が開弁し、バイパス通路9にオイルRの通過が許容される。従って、バイパス通路9に第1の実施形態で述べたオリフィス9aを設ける必要が無くなるため、圧力損失を低減してオイルポンプ8の機械損失を抑制することができる。
[第3の実施形態]
【0054】
図14から図16は、本発明の第3の実施形態を示し、第2の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
本実施形態のオイルレベル調整機構10Bが第2の実施形態と主に異なる点は、図14に示すように、オイル還流通路63、64に、第2の弁110と連動して開口面積が変化する第3の弁120を設けたことにある。この第3の弁120の構造は、第2の弁110と同じである。
【0055】
第3の弁120はON・OFF式の開閉弁として構成され、第2の弁110とは開閉タイミングが同期するように連動している。つまり、第2の弁110が閉弁状態にあるときは第3の弁120も閉弁状態にあり、第2の弁110が開弁されたときに第3の弁120も開弁される。第2の弁110と第3の弁120とを連動させる連動手段121は、機械式であってもよく、また、電気式であってもよく、更には、流体圧式等であってもよい。
【0056】
従って、本実施形態のオイルレベル調整機構10Bでは、電動機2の回転数が所定の回転数に達するまでは第2の弁110および第3の弁120が共に閉弁状態にあるため、バイパス通路9およびオイル還流通路63、64は遮断状態となる。そして、電動機2の回転数が所定の回転数を超えて高回転領域になると、第2の弁110および第3の弁120が共に開弁して、バイパス通路9およびオイル還流通路63、64が開放状態となる。これにより、バイパス通路9からオイル供給通路7のオイルRがオイル溜め部5に流出するとともに、オイル還流通路63、64からオイル貯留部6のオイルRがオイル溜め部5に流出する。
【0057】
従って、本実施形態では、電動機2の回転数が所定の回転数に達すると、オイルポンプ8の吐出圧力によって第1の弁100が閉弁して圧力損失は無限大となり、オイル貯留部6に供給されるオイルRの流量はゼロとなる(図15(a)参照)。これにより、オイルポンプ8から吐出されたオイルRは全てバイパス通路9を経由してオイル溜り部5へと流入し、かつ、オイル貯留部6のオイルRはオイル還流通路63、64からオイル溜り部5へと流入する(図15(b)参照)。このため、オイルレベルLは高回転領域で破線状態から実線状態へと大きく上昇される(図15(c)参照)。
【0058】
以上説明したように、第3の実施形態のオイルレベル調整機構10Bによれば、バイパス通路9に第2の弁110を設けてあるので、第2の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。勿論、第1の実施形態と同様にオイル溜り部6のオイルレベルLを、電動機2の高回転領域で中回転領域および小回転領域よりも高くできる。
【0059】
また、これに加えて本実施形態では、オイル還流通路63、64に、第2の弁110と連動して開口面積が変化する第3の弁120を設けてある。これにより、電動機2の高回転領域ではバイパス通路7およびオイル貯留部6のオイルRを全てオイル溜り部5に迅速に戻すことができる。従って、中回転領域から高回転領域へと電動機2の回転数が遷移したときに、図16に示すように、その過渡的なオイルレベルLの上昇の応答性を破線状態から実線状態へと向上させることができる。
[第4の実施形態]
【0060】
図17から図19は、本発明の第4の実施形態を示し、第2の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
本実施形態のオイルレベル調整機構10Cが第2の実施形態と主に異なる点は、図17に示すように、オイル流入口7aを、2つの小貯留部61、62のうち一方の小貯留部62に優先的にオイル供給される位置に配置したことにある。
【0061】
また、優先的にオイル供給される小貯留部62のオイル還流通路64の断面積よりも他方の小貯留部61のオイル還流通路63の断面積を大きくしたことにある。
【0062】
即ち、本実施形態では、アーチ状に形成されたオイル貯留部6の両端部6e1、6e2に2つの小貯留部61、62が配置されている。このため、一方の小貯留部62に優先的にオイル供給するために、オイル流入口7aを、オイル貯留部6の頂部6cから小貯留部62側に所定距離だけ移動した位置に形成してある。よって、オイル流入口7aは、頂部6cよりも下側に配置されている。
【0063】
従って、オイル供給通路7を介して供給されるオイルRは、まず、一方の小貯留部62に流入し、この小貯留部62が充満たされた後に連通部となる頂部6cからオーバーフローして他方の小貯留部61に流入される。このとき、他方側のオイル還流通路63の断面積を、一方側のオイル還流通路64よりも大きく形成してあるので、一方の小貯留部62がオーバーフローした後は、他方の小貯留部61のオイルRが迅速にオイル溜り部5に流出されることになる。
【0064】
従って、本実施形態では、電動機2の回転数が所定の回転数に達すると、オイルポンプ8の吐出圧力によって第1の弁100が閉弁して圧力損失は無限大となり、オイル貯留部6に供給されるオイルRの流量はゼロとなる(図18(a)参照)。これにより、オイルポンプ8から吐出されたオイルRは全てバイパス通路9を経由してオイル溜り部5へと流入する(図18(b)参照)。また、これに加えて、オイル貯留部6にオイル供給される際、一方の小貯留部62が充満した後は他方の小貯留部61からオイルRが多量に溜り部5に戻される。これにより、オイルレベルLは、バイパス通路9からの還流と相俟って高回転領域で破線状態から実線状態へと大きく上昇される(図18(c)参照)。
【0065】
以上説明したように第4の実施形態のオイルレベル調整機構10Cによれば、バイパス通路9に第2の弁110を設けてあるので、オイルレベルLを高回転領域で中回転領域および小回転領域よりも高くしつつ、第2の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0066】
また、これに加えて本実施形態では、オイル貯留部6へのオイル流入口7aを、2つの小貯留部61、62のうち一方の小貯留部62側に移動させ、この小貯留部62に優先的にオイル供給させてある。これにより、最初は一方の小貯留部62からオイル溜り部5にオイルRを戻すのであるが、その小貯留部62がオーバーフローした後は、2つの小貯留部61、62からオイルRをオイル溜り部5に迅速に還流させることができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、優先的にオイル供給される小貯留部62のオイル還流通路64の断面積よりも他方の小貯留部61のオイル還流通路63の断面積を大きくしてある。これにより、優先的にオイル供給される一方の小貯留部62がオーバーフローした後は、オイル貯留部6のオイルRを更に迅速にオイル溜り部5に戻すことができる。従って、中回転領域から高回転領域へと電動機2の回転数が遷移したときに、図19に示すように、その過渡的なオイルレベルLの上昇の応答性を破線状態から実線状態へと向上させることができる。
【0068】
尚、本実施形態では、一方の小貯留部62に優先的にオイルRを供給する場合を述べたが、オイル流入口7aを他方の小貯留部61側に移動して、この小貯留部61に優先的にオイルRを供給するようにしてもよい。また、小貯留部を3つ以上設けた場合は、それら複数の小貯留部のうちの一部を優先的にオイル供給される小貯留部としておけばよい。
[第5の実施形態]
【0069】
図20から図22は、本発明の第5の実施形態を示し、第2の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
本実施形態のオイルレベル調整機構10Dが第2の実施形態と主に異なる点は、図20に示すように、2つの小貯留部61、62の側面にそれぞれオイル排出口(冷媒排出口)61a、62aを設けたことにある。
【0070】
また、2つの小貯留部61、62に設けたオイル排出口61a、62aの高さを互いに異ならせ、高位置のオイル排出口の開口面積を低位置のオイル排出口の開口面積よりも大きくしたことにある。
【0071】
即ち、オイル排出口61a、62aは、小貯留部61、62のオイル溜り部5に対向する内側面の頂部近傍にそれぞれ形成されており、一方の小貯留部61のオイル排出口61aよりも他方の小貯留部62のオイル排出口62aを高位置に形成してある。
【0072】
尚、本実施形態では、それぞれのオイル排出口61a、62aは上下方向に2つずつ形成されているが、各オイル排出口61a、62aは1つ或いは3つ以上であってもよい。
【0073】
このようにオイル排出口61a、62aを設けたことにより、それぞれの小貯留部61、62にオイルRが充満状態近くまで溜められると、それぞれのオイル排出口61a、62aからオイルRがオイル溜り部5へと排出される。このとき、低位置に形成したオイル排出口61aからオイルRが排出され、その後、高位置に形成したオイル排出口62aからオイルRが排出されることになる。勿論、それぞれの小貯留部61、62に溜められたオイルRは、それぞれのオイル還流通路62、63からもオイル溜り部5に戻されるようになっている。
【0074】
また、高位置のオイル排出口62aの開口面積が低位置のオイル排出口61aの開口面積よりも大きくなっているので、後から排出されるオイル排出口62aのオイル排出量がオイル排出口61aよりも多くなる。
【0075】
従って、本実施形態では、電動機2の回転数が所定の回転数に達すると、オイルポンプ8の吐出圧力によって第1の弁100が閉弁して圧力損失は無限大となり、オイル貯留部6に供給されるオイルRの流量はゼロとなる(図21(a)参照)。これにより、オイルポンプ8から吐出されたオイルRは全てバイパス通路9を経由してオイル溜り部5へと流入し、かつ、オイル貯留部6のオイルRはオイル還流通路63、64およびオイル排出口61a、62aからオイル溜り部5へと流入する(図21(b)参照)。また、これに加えて2つの小貯留部61、62の側面にオイル排出口61a、62aからある一定量のオイルRをオイル溜り部5へと迅速に排出できる。これにより、オイルレベルLは、バイパス通路9からの還流と相俟って高回転領域で破線状態から実線状態へと大きく上昇される(図21(c)参照)。
【0076】
以上説明したように、第5の実施形態のオイルレベル調整機構10Bによれば、バイパス通路9に第2の弁110を設けてあるので、オイルレベルLを高回転領域で中回転領域および小回転領域よりも高くしつつ、第2の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0077】
また、これに加えて本実施形態では、2つの小貯留部61、62の側面にオイル排出口61a、62aをそれぞれ設けてある。これにより、小貯留部61、62にオイルRが充満状態近くまで溜められると、それぞれのオイル排出口61a、62aからある一定量のオイルRをオイル溜り部5へと迅速に排出できる。従って、中回転領域から高回転領域に回転数が遷移した時の過渡的なオイルレベルL上昇の応答性を向上させることができる。
【0078】
更に、本実施形態によれば、2つの小貯留部61、62に設けたオイル排出口61a、62aの高さを互いに異ならせ、高位置のオイル排出口62aの開口面積を低位置のオイル排出口61aの開口面積よりも大きくしてある。これにより、オイルRの排出タイミングが遅れる高位置のオイル排出口62aから多くのオイルRを排出させることができる。従って、中回転領域から高回転領域へと電動機2の回転数が遷移したときに、図22に示すように、その過渡的なオイルレベルLの上昇の応答性を破線状態から実線状態へと更に向上させることができる。
【0079】
尚、本実施形態では一方の小貯留部62側のオイル排出口62aを、他方の小貯留部61側のオイル排出口61aよりも高位置に設けたが、それらの高低関係を逆にしてもよい。
[第6の実施形態]
【0080】
図23および図24は、本発明の第6の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
本実施形態のオイルレベル調整機構10Eが第1の実施形態と主に異なる点は、図23に示すように、オイルレベル調整部を、オイル供給通路7に設けられオイル供給量を任意に制御可能な電動ポンプ130で構成したことにある。この場合、バイパス通路9は廃止されるとともに、電動機2の回転軸25に設けていた機械式のオイルポンプ8も廃止される。
【0081】
つまり、オイル溜り部5のオイルRは、電動ポンプ130のみによってオイル貯留部6に供給されるようになっている。勿論、この場合にあってもオイル貯留部6のオイルRは、オイル還流通路63、64を介してオイル溜り部5に戻される。
【0082】
電動ポンプ130は、電動機2の回転数に応じて吐出量が制御されるようになっている。例えば、低回転領域では従来と略同等の吐出量とし、中回転領域では引きずりトルクによる撹拌抵抗を考慮して吐出量を多くし、高回転領域では中回転領域よりも吐出量を少なくする。これにより、図24に示すように、オイル溜り部5のオイルレベルLは、上記各実施形態で述べたと同様に中回転領域よりも高回転領域で高くすることができる。
【0083】
以上説明したように第6の実施形態のオイルレベル調整機構10Eによれば、電動機2の回転数に応じて制御される電動ポンプ130によって、オイル溜り部5のオイルRをオイル貯留部6に供給するようになっている。これにより、バイパス通路9や各種弁100、110、120およびオイル排出口61a、62aが不要となり、オイルレベル調整機構10Eの構造を簡素化することができる。また、オイルレベルLを電動ポンプ130によって緻密に制御できるようになるため、中回転領域での撹拌抵抗を低減しつつ高回転領域での冷却効果をより高めることができる。
【0084】
ところで、本発明のオイルレベル調整機構(冷媒の液面高さの調整機構)は、前記各実施形態に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能である。例えば、オイル貯留部6は、ケーシング3の第1の閉塞壁32内に一体に組み込むことなく、ケーシング3から分離した独立タンクとして設けてもよい。また、オイル貯留部6はアーチ状に限ることなく、オイルRを効率良く溜め、かつ、複数の小貯留部を設けることができる形状であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、電動機ユニットにおける冷媒の液面高さの調整機構に用いることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 電動機ユニット
2 電動機
22 ロータ
24 ステータ
5 オイル溜り部(冷媒溜り部)
6 オイル貯留部(冷媒貯留部)
61、62 小貯留部
61a、62a オイル排出口(冷媒排出口)
7 オイル供給通路(冷媒供給通路)
7a オイル流入口(冷媒流入口)
9 バイパス通路(液面高さ調整部)
100 第1の弁(液面高さ調整部)
110 第2の弁
120 第3の弁
R オイル(冷媒)
L オイルレベル(液面高さ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構および液面高さ調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ギアユニットの内部を油浴潤滑させる際に、例えば、特許文献1では、回転軸で駆動する機械式のオイルポンプによって、ユニット下部に溜めた冷媒としてのオイルをユニット上部のオイルタンクに一時的に溜めるようになっている。そして、オイルタンクの貯留量が所定量以上で、溜めたオイルをユニット下部に戻すことでオイルレベル(冷媒の液面高さ)を調整するようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−69962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来のオイルレベル調整機構では、オイルポンプが回転軸で駆動されるため、回転軸の回転数が上昇した場合、オイルポンプの吐出量が増大し、オイルタンクに蓄溜されるオイル量が増え、ユニット下部のオイルレベルは低下する。
【0005】
このため、冷却効果を特に必要とする高回転領域では、撹拌抵抗が小さいにもかかわらずオイルレベルが低くなってステータやロータの冷却性能が不足するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、高回転領域の冷媒の液面高さを中回転領域および小回転領域よりも高く維持し、高回転領域での冷却効果を高めるようにした電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構および液面高さ調整方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電動機のロータとステータを冷却する冷媒の液面高さを調整する電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構である。電動機ユニットの下部に設けられた冷媒溜り部の冷媒の一部を溜め、かつ、溜めた冷媒を前記冷媒溜り部に還流可能な冷媒貯留部と、前記冷媒溜り部の冷媒を前記冷媒貯留部に供給する冷媒供給通路と、該冷媒供給通路に設けられ電動機の高回転領域における前記冷媒溜り部の液面高さを電動機の中回転領域における液面高さよりも高く調整する液面高さ調整部と、を備えたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液面高さ調整部によって、冷媒溜り部における液面高さを、電動機の高回転領域で中回転領域および小回転領域よりも高く調整できるので、高回転領域での冷却効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明にかかるオイルレベル調整機構(液面高さ調整機構)を備えた電動機ユニットの第1の実施形態を示す側断面図である。
【図2】図2は、図1に示す電動機ユニットのケーシングを半断面した斜視図である。
【図3】図3は、図1中I−I線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図2中II−II線に沿った断面図である。
【図5】図5は、図1に示す電動機ユニットのオイル供給通路に設けられる第1の弁の外観斜視図である。
【図6】図6は、図5に示す第1の弁の分解斜視図である。
【図7】図7は、図5に示す第1の弁の作動状態を示し、(a)は開弁状態の断面図、(b)は閉弁状態の断面図である。
【図8】図8は、図1に示す電動機ユニットのオイル循環経路を概略的に示す断面図である。
【図9】図9は、第1の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される特性の全体的な傾向を示し、(a)は回転数と圧力損失との関係のグラフ、(b)は回転数と流量との関係のグラフ、(c)は回転数とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図10】図10は、第1の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される回転数と撹拌抵抗との関係のグラフである。
【図11】図11は、従来のオイルレベル調整機構の回転数と撹拌抵抗との関係のグラフである。
【図12】図12は、本発明にかかるオイルレベル調整機構を備えた電動機ユニットの第2の実施形態を示す図8に対応した概略的な断面図である。
【図13】図13は、第2の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される特性の全体的な傾向を示し、(a)は回転数と圧力損失との関係のグラフ、(b)は回転数と流量との関係のグラフ、(c)は回転数とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図14】図14は、本発明にかかるオイルレベル調整機構を備えた電動機ユニットの第3の実施形態を示す図8に対応した概略的な断面図である。
【図15】図15は、第3の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される特性の全体的な傾向を示し、(a)は回転数と圧力損失との関係のグラフ、(b)は回転数と流量との関係のグラフ、(c)は回転数とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図16】図16は、第3の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される時間とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図17】図17は、本発明にかかるオイルレベル調整機構を備えた電動機ユニットの第4の実施形態を示す図8に対応した概略的な断面図である。
【図18】図18は、第4の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される特性の全体的な傾向を示し、(a)は回転数と圧力損失との関係のグラフ、(b)は回転数と流量との関係のグラフ、(c)は回転数とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図19】図19は、第4の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される時間とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図20】図20は、本発明にかかるオイルレベル調整機構を備えた電動機ユニットの第5の実施形態を示す図8に対応した概略的な断面図である。
【図21】図21は、第5の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される特性の全体的な傾向を示し、(a)は回転数と圧力損失との関係のグラフ、(b)は回転数と流量との関係のグラフ、(c)は回転数とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図22】図22は、第5の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される時間とオイルレベルとの関係のグラフである。
【図23】図23は、本発明にかかるオイルレベル調整機構を備えた電動機ユニットの第6の実施形態を示す図8に対応した概略的な断面図である。
【図24】図24は、第6の実施形態のオイルレベル調整機構で達成される回転数とオイルレベルとの関係のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
[第1の実施形態]
【0011】
図1〜図11は、本発明にかかるオイルレベル調整機構(冷媒の液面高さ調整機構)10を備えた電動機ユニット1の第1の実施形態を示す。電動機ユニット1は、図1に示すように、電動機2と、この電動機2を収納するケーシング3とを備えている。
【0012】
電動機2は、外周に永久磁石21を設けた円盤状のロータ22と、このロータ22の外周に所定の隙間をもって配置されると共にコイル23を各磁極毎に巻回した環状のステータ24と、ロータ22の回転を外部に伝える回転軸25と、を備えている。回転軸25にはフランジ部25aが形成されており、このフランジ部25aにロータ22が一体に結合されることにより、ロータ22と回転軸25とは一体に回転するようになっている。
【0013】
ケーシング3は、内周にステータ24を固定した筒状の外周壁31と、この外周壁31の一端側の開口を閉止する第1の閉塞壁32と、外周壁31の他端側の開口を閉止する第2の閉塞壁33とで構成されている。このとき、第1の閉塞壁32は、互いに重ね合わせて結合される外側壁34と厚肉の内側壁35とで構成されている。
【0014】
第1の閉塞壁32における径方向中心部には外側壁34側にベアリング41が設けられ、このベアリング41によって回転軸25の一端部(図中左端部)が回転支持される。また、第1の閉塞壁32と回転軸25との間は、内側壁35側に設けたオイルシール42によって密封される。
【0015】
他方、第2の閉塞壁33の径方向中心部にはボス部36が一体に結合され、このボス部36に設けたベアリング43によって回転軸25の他端部(図中右端部)が回転支持される。また、ボス部36と回転軸25との間はオイルシール44によって密封される。
【0016】
ケーシング3の内側の下部はオイル溜り部(冷媒溜り部)5となっており、このオイル溜り部5に所定量のオイル(冷媒)Rが溜められている。この溜められたオイルRは電動機2のロータ22やステータ24を冷却する冷媒として用いられる。つまり、オイル溜り部5には、少なくともロータ22の下端部が浸漬される高さ程度にオイルRが溜められており、そのオイルRがロータ22の回転によって撹拌されることでロータ22やステータ24が冷却されるようになっている。
【0017】
第1の閉塞壁32には、オイル溜り部5のオイルRの一部を溜めることができるオイル貯留部(冷媒貯留部)6が設けられている。このオイル貯留部6は、内側壁35の外側面の略上半部に第1の閉塞壁32と同心状となる円弧状の溝として形成され、その溝の外側が外側壁34で閉止されることで、図2に示すように、アーチ状の密閉空間となっている。
【0018】
このとき、アーチ状のオイル貯留部6は、図3に示すように、頂部6cを境にして両端部6e1、6e2が下方に下がった形状となる。ここで、頂部6cは、オイル貯留部6における最も高い部位であり、かつ、左右方向の中心でもある。従って、オイル貯留部6にオイルRが溜められる際に、両端部6e1、6e2に振り分けて溜められることになり、それら両端部6e1、6e2の弧状空間部はそれぞれ小貯留部61、62となっている。これら2つの小貯留部61、62は、それぞれの上部に位置する頂部6cで互いに連通される。
【0019】
小貯留部61、62のそれぞれの下端部にはオイル還流通路(冷媒還流通路)63、64が設けられ、これらオイル還流通路63、64は、オイル溜り部5の上方において内側壁35の内面に開口(開口部63a、64a)している。従って、それぞれの小貯留部61、62に溜められたオイルRは、オイル還流通路63、64を介してオイル溜り部5に戻されることになる。
【0020】
このとき、オイル還流通路63、64の断面積は、小貯留部61、62の断面積、つまり、オイル貯留部6の断面積よりも十分に小さくなっている。これにより、オイル貯留部6に供給されるオイルRの量が、オイル還流通路63、64から排出されるオイル量を超えたときに、オイルRはオイル貯留部6に溜められていくことになる。尚、小貯留部は2つに限ることなく3つ以上設けることもできる。
【0021】
オイル溜り部5の下部とオイル貯留部6の頂部となる頂部6cとがオイル供給通路(冷媒供給通路)7によって連通され、このオイル供給通路7を介してオイル溜り部5のオイルRの一部がオイル貯留部6に供給される。なお、オイル供給通路7は、上流側(図2,3の下側)から下流側(図2,3の上側)に向けて、細径部7C,細径部7Bおよび太径部7Aから一体に形成されている。
【0022】
オイル供給通路7の途中(細径部7Bと細径部7Cとの間)には、電動機2の回転軸25によって駆動される機械式のオイルポンプ8が設けられ、電動機2の稼働によってオイル溜り部5のオイルRがオイルポンプ8によってオイル貯留部6へと供給される。オイルポンプ8は、図1に示すように、ベアリング41とオイルシール42との間に位置して内側壁35に組み込まれている。
【0023】
オイルポンプ8としては、例えば歯車ポンプを用いることができるが、これに限ることなく回転軸25の回転によって駆動される機械式のポンプであればよい。従って、機械式のオイルポンプ8を用いたことにより、電動機2の回転数が上昇するとオイルポンプ8の吐出量が増大するため、オイル供給通路7を介してオイル貯留部6に供給されるオイルRの量が増す。すると、オイル貯留部6に溜まるオイルRの量が増量する反面、オイル溜り部5のオイルRの量が減少してオイルレベルLが低くなる。
【0024】
一方、これとは逆に電動機2の回転数が低い場合は、オイルポンプ8の吐出量が少ないためオイル貯留部6に溜まるオイルRの量が減少し、オイル溜り部5のオイルレベル(液面高さ)Lが高くなる。従って、オイルレベルLは高回転領域で最も低くなり、それよりも回転数が低い中回転領域や低回転領域でオイルレベルLは高回転領域に比較して高くなる。このようにオイルレベルLが変化すると、ロータ22の下部がオイルRに浸漬される深さが変化してロータ22によるオイルRの撹拌量が変化する。尚、高回転能力を有する電動機2は、それの高回転領域ではオイルRの引きずりトルクが低下する傾向となる。
【0025】
従って、高回転領域よりもオイルレベルLが高くなる中回転領域では、ロータ22がオイルR内に浸漬される深さが深くなり、かつ、ロータ22の引きずりトルクが高回転領域に比べて大きくなる。このため、従来では図11中の特性線S1に示すように、中回転領域で撹拌抵抗が顕著に大きくなってしまう。
【0026】
一方、高回転領域で冷却効果を確保するためには、高回転領域でのオイルレベルLをある程度高くする必要がある。ところが、このように、高回転領域でオイルレベルLを高くしようとすると、中回転領域でのオイルレベルLを更に高く設定する必要があり、その中回転領域の撹拌抵抗が更に増大してしまう。このため、高回転領域でのオイルレベルLを高く維持した状態で、中回転領域および小回転領域のオイルレベルLをより低くして撹拌抵抗を小さくすることが望まれる。
【0027】
ここで、本実施形態では、図1および図2に示すように、オイル供給通路7がオイル貯留部6に連通するオイル流入口(冷媒流入口)7aに、オイル貯留部6に流入するオイル流量に応じて開口面積(弁開度)が変化する第1の弁100を設ける。また、本実施形態では、オイル供給通路7の第1の弁100とオイルポンプ8との間をオイル溜り部5に連通するバイパス通路9を設ける。
【0028】
そして、オイル溜り部5のオイルRの一部をオイル供給通路7を介してオイル貯留部6に供給する工程と、このオイル溜り部5からオイル貯留部6へ送るオイル供給量およびオイル貯留部6からオイル溜り部5に戻すオイル量を調整する工程とを設ける。そして、電動機2の高回転領域におけるオイル溜り部5のオイルレベルLを、電動機2の中回転領域および小回転領域におけるオイルレベルLよりも高くするようになっている。
【0029】
第1の弁100の開度が変化すると、オイル溜り部5からオイル貯留部6に供給されるオイルRの量が変化して、オイル溜り部5のオイルレベルLを調整できるようになる。このとき、第1の弁100は、高回転領域のオイルレベルLが中回転領域および小回転領域のオイルレベルLよりも高くなるように調整する機能を有する。
【0030】
バイパス通路9は、オイル供給通路7が形成された内側壁35の内部に形成される。このとき、バイパス通路9の断面積は、オイル供給通路7の細径部7Bの断面積よりも十分に大きく形成されており、また、太径部7Aは、このバイパス通路9と略同じ断面積となっている。
【0031】
従って、オイル供給通路7のオイル流入口7aはバイパス通路9と略同じ大径となっている。そして、図2に示すように、このオイル流入口7aの内周に形成された雌ねじ部に、後述する弁ハウジング101の雄ねじ部101aがねじ込まれて第1の弁100が取り付けられる。
【0032】
また、図2から図4に示すように、バイパス通路9の下端部はオイル溜り部5のオイルレベルLよりも上方に位置しており、そのバイパス通路9の下端部はオリフィス9aとなってケーシング3内に開口されている。
【0033】
そして、第1の弁100とバイパス通路9とによってオイルレベル調整部(液面高さ調整部)が構成されている。また、本実施形態のオイルレベル調整機構10は、オイル貯留部6、オイル供給通路7、オイルポンプ8および上記オイルレベル調整部によって構成されている。
【0034】
第1の弁100は、連続的に開度変化する弁であってもよいし、ON・OFF式の開閉弁であってもよい。本実施形態では、図5から図7に示すように、後者のON・OFF式の開閉弁によって第1の弁100が構成される。この第1の弁100は常開式の開閉弁となっている。
【0035】
即ち、第1の弁100は、外周に雄ねじ部101aを切った有底筒状の弁ハウジング101と、この弁ハウジング101内に収容される弁体102と、この弁体102を開弁方向に付勢する圧縮スプリング103とによって構成されている。
【0036】
弁ハウジング101は、それの内側に弁体102が軸方向の移動を許容して収納され、一端(図6中下方)にオイル導入口101bと他端(図6中上方)に弁座101cを設けた弁室101dが形成されている。弁座101cは、一定の傾斜角をもったコーン形状に形成される。また、弁ハウジング101のオイル導入口101bとは反対側の端壁101eには、弁室101dと連通する吐出口101fが形成されている。更に、弁ハウジング101の端壁101eの内側には、吐出口101fと同心状に形成された座面101gが設けられている。
【0037】
弁体102は、全体的に弁室101dの内径よりも僅かに小さい外径となる略円盤状に形成され、弁座101cに対向する端面側に、この弁座101cのコーン面に沿ったテーパ部102aが形成されている。また、弁体102の外周部には、周方向に略等間隔をもってオイルRを通過させるための複数の溝部102bがギア状に形成されている。更に、テーパ部102aの先端中心部にはスプリング受け面102cが形成されている。
【0038】
圧縮スプリング103は、弁ハウジング101の座面101gと弁体102のスプリング受面102cとの間に圧縮状態で介装される。従って、弁体102は、圧縮スプリング103によりテーパ部102aが弁座101cから離れる方向、つまり開弁方向に常時付勢される。尚、弁室101dに収納された弁体102は、オイル導入口101bの内周部に設けられた内向きフランジ101hによって抜止めされる。
【0039】
第1の弁100は、オイルポンプ8が稼働しない時、また、電動機2の回転数が低くてオイルポンプ8の吐出量が所定量よりも少ない時は、図7(a)に示すように、弁体102は圧縮スプリング103の付勢力で開弁された状態となる。この開弁状態では、オイル導入口101bから流入したオイルRが弁体102の溝部102bを通過した後、テーパ部102aと弁座101cとの間を経由して吐出口101fから流出される。
【0040】
他方、電動機2の回転数が高くなってオイルポンプ8の吐出量が所定量以上になると、図7(b)に示すように、弁体102は圧縮スプリング103の付勢力に抗して移動して閉弁状態となる。この閉弁状態では、弁体102のテーパ部102aが弁座101cに密接してオイルRの通過が遮断される。
【0041】
以上の構成になる電動機ユニット1は、図8に示すように簡素化して示すことができる。このような電動機ユニット1では、電動機2の回転数が上昇するとオイルポンプ8の吐出量も増大されるため、バイパス通路9およびオイル貯留部6への通路の圧力損失が高まる。このとき、バイパス通路9の圧力損失が大きくなるように予めオリフィス9aの径が決定されている。
【0042】
そして、電動機2の回転数が所定の回転数に達すると、オイルポンプ8の吐出圧力によって第1の弁100が閉弁して圧力損失は無限大(図9(a)参照)となり、オイル貯留部6に供給されるオイルRの流量はゼロとなる。これにより、オイルポンプ8から吐出されたオイルRは全てバイパス通路9を経由してオイル溜り部5へと戻される(図9(b)参照)。これにより、オイルレベルLは高回転領域で上昇される(図9(c)参照)。尚、図9(a)の圧力損失特性を示すグラフおよび図9(b)の流量を示すブラフ中、破線はオイル貯留部6に関する特性、実線はバイパス通路9に関する特性である。このことは以下の実施形態で述べる図13、図15、図18および図21の(a)、(b)で同様とする。
【0043】
勿論、電動機2が所定の回転数に達するまでは、その回転数に比例してオイルポンプ8の吐出量は増大するため、オイルレベルLは徐々に低下していくことになる。そして、所定の回転数を超えた場合、つまり、高回転領域では第1の弁100が閉弁して高いオイルレベルLを確保できるため、中回転領域ではオイルレベルLを従来に比較して予め低く設定しておくことが可能となる。
【0044】
従って、図10に示すように、中回転領域のオイルレベルLを低く設定しておくことにより、引きずりトルクの大きな中回転領域では同図中実線に示すように撹拌抵抗を大幅に低下させることができる。尚、図10中の破線は、図11に示した特性線S1である。
【0045】
以上説明したように、第1の実施形態のオイルレベル調整機構10によれば、第1の弁100とバイパス通路9とからなるオイルレベル調整部を設けたので、オイル溜り部6のオイルレベルLを、電動機2の高回転領域で中回転領域よりも高くできる。これにより、高回転領域での冷却効果を高めることができる。また、高回転領域のオイルレベルLを高くできるので、中回転領域のオイルレベルLを予め低く設定しておくことができる。これにより、中回転領域での撹拌抵抗を小さく維持できる。従って、本実施形態では、電動機2の高回転領域での冷却効果を高めつつ、中回転領域の撹拌抵抗を小さく維持できる。
【0046】
また、本実施形態によれば、オイルレベル調整部を第1の弁100とバイパス通路9とによって構成したので、機械式のオイルポンプ8の吐出圧力の変化を利用してオイルレベルLを調整できるため、構造の簡素化およびコスト削減を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態のオイルレベル調整方法によれば、オイル溜り部5のオイルRの一部をオイル貯留部6に供給する工程と、このオイル貯留部6へのオイル供給量およびオイル貯留部6からオイル溜り部5に戻すオイル量を調整する工程とを設けてある。従って、高回転領域におけるオイル溜り部5のオイルレベルLを、中回転領域におけるオイルレベルLよりも高くする際に、オイル貯留部6に供給するオイルRの量を制御すればよいので、制御がより簡単となりかつ精度を高めることができる。
[第2の実施形態]
【0048】
図12および図13は、本発明の第2の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
本実施形態のオイルレベル調整機構10Aが第1の実施形態と主に異なる点は、図12に示すように、バイパス通路9に、オイル溜り部5に流入するオイル流量に応じて開口面積が変化する第2の弁110を設けたことにある。勿論、本実施形態にあっても第1の実施形態で述べたように、オイル供給通路7には第1の弁100が設けられている。
【0049】
第2の弁110は、第1の弁100(図5から図7参照)と同様の構造になっている。
【0050】
第2の弁110は、図12に示すように、弁ハウジング111と弁体112との間には引張りスプリング113が介装され、この引張りスプリング113によって弁体112を閉弁方向に付勢する常閉式の開閉弁として構成される。つまり、第2の弁110は、バイパス通路9にオイルRが流入していないとき、または、流入するオイルRの量が少ないときは閉弁状態となっている。そして、バイパス通路9に流入するオイルRの量が所定量以上となったとき、つまり、第1の弁100が閉弁したときに第2の弁110が開弁するようになっている。つまり、第1の弁100と第2の弁110とは、それぞれの開閉タイミングが逆となる関係にある。
【0051】
従って、本実施形態では、電動機2の回転数が所定の回転数に達すると、オイルポンプ8の吐出圧力によって第1の弁100が閉弁して圧力損失は無限大となり、オイル貯留部6に供給されるオイルRの流量はゼロとなる(図13(a)参照)。また、これと略同時に第2の弁110が開弁して、オイルポンプ8から吐出されたオイルRは全てバイパス通路9を経由してオイル溜り部5へと流入する(図13(b)参照)。これにより、オイルレベルLは高回転領域で上昇する(図13(c)参照)。
【0052】
以上説明したように、第2の実施形態のオイルレベル調整機構10Aによれば、オイル溜り部6のオイルレベルLを、電動機2の高回転領域で中回転領域および低回転領域よりも高くできるので、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
また、これに加えて本実施形態では、バイパス通路9に第2の弁110を設けたので、第1の弁100が閉弁してはじめて第2の弁110が開弁し、バイパス通路9にオイルRの通過が許容される。従って、バイパス通路9に第1の実施形態で述べたオリフィス9aを設ける必要が無くなるため、圧力損失を低減してオイルポンプ8の機械損失を抑制することができる。
[第3の実施形態]
【0054】
図14から図16は、本発明の第3の実施形態を示し、第2の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
本実施形態のオイルレベル調整機構10Bが第2の実施形態と主に異なる点は、図14に示すように、オイル還流通路63、64に、第2の弁110と連動して開口面積が変化する第3の弁120を設けたことにある。この第3の弁120の構造は、第2の弁110と同じである。
【0055】
第3の弁120はON・OFF式の開閉弁として構成され、第2の弁110とは開閉タイミングが同期するように連動している。つまり、第2の弁110が閉弁状態にあるときは第3の弁120も閉弁状態にあり、第2の弁110が開弁されたときに第3の弁120も開弁される。第2の弁110と第3の弁120とを連動させる連動手段121は、機械式であってもよく、また、電気式であってもよく、更には、流体圧式等であってもよい。
【0056】
従って、本実施形態のオイルレベル調整機構10Bでは、電動機2の回転数が所定の回転数に達するまでは第2の弁110および第3の弁120が共に閉弁状態にあるため、バイパス通路9およびオイル還流通路63、64は遮断状態となる。そして、電動機2の回転数が所定の回転数を超えて高回転領域になると、第2の弁110および第3の弁120が共に開弁して、バイパス通路9およびオイル還流通路63、64が開放状態となる。これにより、バイパス通路9からオイル供給通路7のオイルRがオイル溜め部5に流出するとともに、オイル還流通路63、64からオイル貯留部6のオイルRがオイル溜め部5に流出する。
【0057】
従って、本実施形態では、電動機2の回転数が所定の回転数に達すると、オイルポンプ8の吐出圧力によって第1の弁100が閉弁して圧力損失は無限大となり、オイル貯留部6に供給されるオイルRの流量はゼロとなる(図15(a)参照)。これにより、オイルポンプ8から吐出されたオイルRは全てバイパス通路9を経由してオイル溜り部5へと流入し、かつ、オイル貯留部6のオイルRはオイル還流通路63、64からオイル溜り部5へと流入する(図15(b)参照)。このため、オイルレベルLは高回転領域で破線状態から実線状態へと大きく上昇される(図15(c)参照)。
【0058】
以上説明したように、第3の実施形態のオイルレベル調整機構10Bによれば、バイパス通路9に第2の弁110を設けてあるので、第2の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。勿論、第1の実施形態と同様にオイル溜り部6のオイルレベルLを、電動機2の高回転領域で中回転領域および小回転領域よりも高くできる。
【0059】
また、これに加えて本実施形態では、オイル還流通路63、64に、第2の弁110と連動して開口面積が変化する第3の弁120を設けてある。これにより、電動機2の高回転領域ではバイパス通路7およびオイル貯留部6のオイルRを全てオイル溜り部5に迅速に戻すことができる。従って、中回転領域から高回転領域へと電動機2の回転数が遷移したときに、図16に示すように、その過渡的なオイルレベルLの上昇の応答性を破線状態から実線状態へと向上させることができる。
[第4の実施形態]
【0060】
図17から図19は、本発明の第4の実施形態を示し、第2の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
本実施形態のオイルレベル調整機構10Cが第2の実施形態と主に異なる点は、図17に示すように、オイル流入口7aを、2つの小貯留部61、62のうち一方の小貯留部62に優先的にオイル供給される位置に配置したことにある。
【0061】
また、優先的にオイル供給される小貯留部62のオイル還流通路64の断面積よりも他方の小貯留部61のオイル還流通路63の断面積を大きくしたことにある。
【0062】
即ち、本実施形態では、アーチ状に形成されたオイル貯留部6の両端部6e1、6e2に2つの小貯留部61、62が配置されている。このため、一方の小貯留部62に優先的にオイル供給するために、オイル流入口7aを、オイル貯留部6の頂部6cから小貯留部62側に所定距離だけ移動した位置に形成してある。よって、オイル流入口7aは、頂部6cよりも下側に配置されている。
【0063】
従って、オイル供給通路7を介して供給されるオイルRは、まず、一方の小貯留部62に流入し、この小貯留部62が充満たされた後に連通部となる頂部6cからオーバーフローして他方の小貯留部61に流入される。このとき、他方側のオイル還流通路63の断面積を、一方側のオイル還流通路64よりも大きく形成してあるので、一方の小貯留部62がオーバーフローした後は、他方の小貯留部61のオイルRが迅速にオイル溜り部5に流出されることになる。
【0064】
従って、本実施形態では、電動機2の回転数が所定の回転数に達すると、オイルポンプ8の吐出圧力によって第1の弁100が閉弁して圧力損失は無限大となり、オイル貯留部6に供給されるオイルRの流量はゼロとなる(図18(a)参照)。これにより、オイルポンプ8から吐出されたオイルRは全てバイパス通路9を経由してオイル溜り部5へと流入する(図18(b)参照)。また、これに加えて、オイル貯留部6にオイル供給される際、一方の小貯留部62が充満した後は他方の小貯留部61からオイルRが多量に溜り部5に戻される。これにより、オイルレベルLは、バイパス通路9からの還流と相俟って高回転領域で破線状態から実線状態へと大きく上昇される(図18(c)参照)。
【0065】
以上説明したように第4の実施形態のオイルレベル調整機構10Cによれば、バイパス通路9に第2の弁110を設けてあるので、オイルレベルLを高回転領域で中回転領域および小回転領域よりも高くしつつ、第2の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0066】
また、これに加えて本実施形態では、オイル貯留部6へのオイル流入口7aを、2つの小貯留部61、62のうち一方の小貯留部62側に移動させ、この小貯留部62に優先的にオイル供給させてある。これにより、最初は一方の小貯留部62からオイル溜り部5にオイルRを戻すのであるが、その小貯留部62がオーバーフローした後は、2つの小貯留部61、62からオイルRをオイル溜り部5に迅速に還流させることができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、優先的にオイル供給される小貯留部62のオイル還流通路64の断面積よりも他方の小貯留部61のオイル還流通路63の断面積を大きくしてある。これにより、優先的にオイル供給される一方の小貯留部62がオーバーフローした後は、オイル貯留部6のオイルRを更に迅速にオイル溜り部5に戻すことができる。従って、中回転領域から高回転領域へと電動機2の回転数が遷移したときに、図19に示すように、その過渡的なオイルレベルLの上昇の応答性を破線状態から実線状態へと向上させることができる。
【0068】
尚、本実施形態では、一方の小貯留部62に優先的にオイルRを供給する場合を述べたが、オイル流入口7aを他方の小貯留部61側に移動して、この小貯留部61に優先的にオイルRを供給するようにしてもよい。また、小貯留部を3つ以上設けた場合は、それら複数の小貯留部のうちの一部を優先的にオイル供給される小貯留部としておけばよい。
[第5の実施形態]
【0069】
図20から図22は、本発明の第5の実施形態を示し、第2の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
本実施形態のオイルレベル調整機構10Dが第2の実施形態と主に異なる点は、図20に示すように、2つの小貯留部61、62の側面にそれぞれオイル排出口(冷媒排出口)61a、62aを設けたことにある。
【0070】
また、2つの小貯留部61、62に設けたオイル排出口61a、62aの高さを互いに異ならせ、高位置のオイル排出口の開口面積を低位置のオイル排出口の開口面積よりも大きくしたことにある。
【0071】
即ち、オイル排出口61a、62aは、小貯留部61、62のオイル溜り部5に対向する内側面の頂部近傍にそれぞれ形成されており、一方の小貯留部61のオイル排出口61aよりも他方の小貯留部62のオイル排出口62aを高位置に形成してある。
【0072】
尚、本実施形態では、それぞれのオイル排出口61a、62aは上下方向に2つずつ形成されているが、各オイル排出口61a、62aは1つ或いは3つ以上であってもよい。
【0073】
このようにオイル排出口61a、62aを設けたことにより、それぞれの小貯留部61、62にオイルRが充満状態近くまで溜められると、それぞれのオイル排出口61a、62aからオイルRがオイル溜り部5へと排出される。このとき、低位置に形成したオイル排出口61aからオイルRが排出され、その後、高位置に形成したオイル排出口62aからオイルRが排出されることになる。勿論、それぞれの小貯留部61、62に溜められたオイルRは、それぞれのオイル還流通路62、63からもオイル溜り部5に戻されるようになっている。
【0074】
また、高位置のオイル排出口62aの開口面積が低位置のオイル排出口61aの開口面積よりも大きくなっているので、後から排出されるオイル排出口62aのオイル排出量がオイル排出口61aよりも多くなる。
【0075】
従って、本実施形態では、電動機2の回転数が所定の回転数に達すると、オイルポンプ8の吐出圧力によって第1の弁100が閉弁して圧力損失は無限大となり、オイル貯留部6に供給されるオイルRの流量はゼロとなる(図21(a)参照)。これにより、オイルポンプ8から吐出されたオイルRは全てバイパス通路9を経由してオイル溜り部5へと流入し、かつ、オイル貯留部6のオイルRはオイル還流通路63、64およびオイル排出口61a、62aからオイル溜り部5へと流入する(図21(b)参照)。また、これに加えて2つの小貯留部61、62の側面にオイル排出口61a、62aからある一定量のオイルRをオイル溜り部5へと迅速に排出できる。これにより、オイルレベルLは、バイパス通路9からの還流と相俟って高回転領域で破線状態から実線状態へと大きく上昇される(図21(c)参照)。
【0076】
以上説明したように、第5の実施形態のオイルレベル調整機構10Bによれば、バイパス通路9に第2の弁110を設けてあるので、オイルレベルLを高回転領域で中回転領域および小回転領域よりも高くしつつ、第2の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0077】
また、これに加えて本実施形態では、2つの小貯留部61、62の側面にオイル排出口61a、62aをそれぞれ設けてある。これにより、小貯留部61、62にオイルRが充満状態近くまで溜められると、それぞれのオイル排出口61a、62aからある一定量のオイルRをオイル溜り部5へと迅速に排出できる。従って、中回転領域から高回転領域に回転数が遷移した時の過渡的なオイルレベルL上昇の応答性を向上させることができる。
【0078】
更に、本実施形態によれば、2つの小貯留部61、62に設けたオイル排出口61a、62aの高さを互いに異ならせ、高位置のオイル排出口62aの開口面積を低位置のオイル排出口61aの開口面積よりも大きくしてある。これにより、オイルRの排出タイミングが遅れる高位置のオイル排出口62aから多くのオイルRを排出させることができる。従って、中回転領域から高回転領域へと電動機2の回転数が遷移したときに、図22に示すように、その過渡的なオイルレベルLの上昇の応答性を破線状態から実線状態へと更に向上させることができる。
【0079】
尚、本実施形態では一方の小貯留部62側のオイル排出口62aを、他方の小貯留部61側のオイル排出口61aよりも高位置に設けたが、それらの高低関係を逆にしてもよい。
[第6の実施形態]
【0080】
図23および図24は、本発明の第6の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
本実施形態のオイルレベル調整機構10Eが第1の実施形態と主に異なる点は、図23に示すように、オイルレベル調整部を、オイル供給通路7に設けられオイル供給量を任意に制御可能な電動ポンプ130で構成したことにある。この場合、バイパス通路9は廃止されるとともに、電動機2の回転軸25に設けていた機械式のオイルポンプ8も廃止される。
【0081】
つまり、オイル溜り部5のオイルRは、電動ポンプ130のみによってオイル貯留部6に供給されるようになっている。勿論、この場合にあってもオイル貯留部6のオイルRは、オイル還流通路63、64を介してオイル溜り部5に戻される。
【0082】
電動ポンプ130は、電動機2の回転数に応じて吐出量が制御されるようになっている。例えば、低回転領域では従来と略同等の吐出量とし、中回転領域では引きずりトルクによる撹拌抵抗を考慮して吐出量を多くし、高回転領域では中回転領域よりも吐出量を少なくする。これにより、図24に示すように、オイル溜り部5のオイルレベルLは、上記各実施形態で述べたと同様に中回転領域よりも高回転領域で高くすることができる。
【0083】
以上説明したように第6の実施形態のオイルレベル調整機構10Eによれば、電動機2の回転数に応じて制御される電動ポンプ130によって、オイル溜り部5のオイルRをオイル貯留部6に供給するようになっている。これにより、バイパス通路9や各種弁100、110、120およびオイル排出口61a、62aが不要となり、オイルレベル調整機構10Eの構造を簡素化することができる。また、オイルレベルLを電動ポンプ130によって緻密に制御できるようになるため、中回転領域での撹拌抵抗を低減しつつ高回転領域での冷却効果をより高めることができる。
【0084】
ところで、本発明のオイルレベル調整機構(冷媒の液面高さの調整機構)は、前記各実施形態に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能である。例えば、オイル貯留部6は、ケーシング3の第1の閉塞壁32内に一体に組み込むことなく、ケーシング3から分離した独立タンクとして設けてもよい。また、オイル貯留部6はアーチ状に限ることなく、オイルRを効率良く溜め、かつ、複数の小貯留部を設けることができる形状であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、電動機ユニットにおける冷媒の液面高さの調整機構に用いることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 電動機ユニット
2 電動機
22 ロータ
24 ステータ
5 オイル溜り部(冷媒溜り部)
6 オイル貯留部(冷媒貯留部)
61、62 小貯留部
61a、62a オイル排出口(冷媒排出口)
7 オイル供給通路(冷媒供給通路)
7a オイル流入口(冷媒流入口)
9 バイパス通路(液面高さ調整部)
100 第1の弁(液面高さ調整部)
110 第2の弁
120 第3の弁
R オイル(冷媒)
L オイルレベル(液面高さ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機ユニットの内部に収容したステータとロータとを有する電動機を冷却する冷媒の液面高さを調整する電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構であって、
前記電動機ユニットの下部に設けられ、冷媒を溜める冷媒溜り部と、
該冷媒溜り部の上側に配置され、前記冷媒溜り部の冷媒の一部を溜めると共に前記冷媒溜り部に還流可能な冷媒貯留部と、
前記冷媒溜り部の冷媒を前記冷媒貯留部に供給する冷媒供給通路と、
電動機の高回転領域における前記冷媒溜り部の冷媒の液面高さを、電動機の中回転領域および低回転領域における液面高さよりも高く調整する液面高さ調整部と、を備えたことを特徴とする電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構。
【請求項2】
前記液面高さ調整部は、前記冷媒貯留部に流入する冷媒流量に応じて開口面積が変化する第1の弁と、
前記第1の弁と前記冷媒溜り部とを連通するバイパス通路と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構。
【請求項3】
前記バイパス通路に、前記冷媒溜り部に流入する冷媒流量に応じて開口面積が変化する第2の弁を設けたことを特徴とする請求項2に記載の電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構。
【請求項4】
前記冷媒貯留部の下部と前記冷媒溜り部とを連通する冷媒還流通路に、前記第2の弁と連動して開口面積が変化する第3の弁を設けたことを特徴とする請求項3に記載の電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構。
【請求項5】
前記冷媒貯留部は、それぞれの頂部で互いに連通する複数の小貯留部を有し、
前記冷媒供給通路における前記冷媒貯留部に連通する冷媒流入口を、冷媒貯留部の前記頂部よりも下側に配置したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構。
【請求項6】
前記冷媒流入口が設けられた側の所定の小貯留部における前記冷媒還流通路の断面積よりも、前記所定の小貯留部以外の他の小貯留部の前記冷媒還流通路の断面積を大きくしたことを特徴とする請求項5に記載の電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構。
【請求項7】
前記複数の小貯留部の側面に、前記冷媒溜り部に冷媒を流出させる冷媒排出口をそれぞれ設け、これらの冷媒排出口の高さを互いに異ならせ、高位置の冷媒排出口の開口面積を低位置の冷媒排出口の開口面積よりも大きくしたことを特徴とする請求項5または6に記載の電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構。
【請求項8】
電動機ユニットの内部に収容したステータとロータとを有する電動機を冷却する冷媒の液面高さを調整する電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整方法であって、
電動機ユニットの下部に設けた冷媒溜り部の冷媒の一部を冷媒供給通路を介して冷媒貯留部に供給する工程と、該冷媒貯留部への冷媒供給量および冷媒貯留部から前記冷媒溜り部に戻す冷媒量を調整する工程と、を有し、電動機の高回転領域における前記冷媒溜り部の液面高さを、中回転領域および小回転領域における液面高さよりも高くすることを特徴とする電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整方法。
【請求項1】
電動機ユニットの内部に収容したステータとロータとを有する電動機を冷却する冷媒の液面高さを調整する電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構であって、
前記電動機ユニットの下部に設けられ、冷媒を溜める冷媒溜り部と、
該冷媒溜り部の上側に配置され、前記冷媒溜り部の冷媒の一部を溜めると共に前記冷媒溜り部に還流可能な冷媒貯留部と、
前記冷媒溜り部の冷媒を前記冷媒貯留部に供給する冷媒供給通路と、
電動機の高回転領域における前記冷媒溜り部の冷媒の液面高さを、電動機の中回転領域および低回転領域における液面高さよりも高く調整する液面高さ調整部と、を備えたことを特徴とする電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構。
【請求項2】
前記液面高さ調整部は、前記冷媒貯留部に流入する冷媒流量に応じて開口面積が変化する第1の弁と、
前記第1の弁と前記冷媒溜り部とを連通するバイパス通路と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構。
【請求項3】
前記バイパス通路に、前記冷媒溜り部に流入する冷媒流量に応じて開口面積が変化する第2の弁を設けたことを特徴とする請求項2に記載の電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構。
【請求項4】
前記冷媒貯留部の下部と前記冷媒溜り部とを連通する冷媒還流通路に、前記第2の弁と連動して開口面積が変化する第3の弁を設けたことを特徴とする請求項3に記載の電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構。
【請求項5】
前記冷媒貯留部は、それぞれの頂部で互いに連通する複数の小貯留部を有し、
前記冷媒供給通路における前記冷媒貯留部に連通する冷媒流入口を、冷媒貯留部の前記頂部よりも下側に配置したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構。
【請求項6】
前記冷媒流入口が設けられた側の所定の小貯留部における前記冷媒還流通路の断面積よりも、前記所定の小貯留部以外の他の小貯留部の前記冷媒還流通路の断面積を大きくしたことを特徴とする請求項5に記載の電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構。
【請求項7】
前記複数の小貯留部の側面に、前記冷媒溜り部に冷媒を流出させる冷媒排出口をそれぞれ設け、これらの冷媒排出口の高さを互いに異ならせ、高位置の冷媒排出口の開口面積を低位置の冷媒排出口の開口面積よりも大きくしたことを特徴とする請求項5または6に記載の電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整機構。
【請求項8】
電動機ユニットの内部に収容したステータとロータとを有する電動機を冷却する冷媒の液面高さを調整する電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整方法であって、
電動機ユニットの下部に設けた冷媒溜り部の冷媒の一部を冷媒供給通路を介して冷媒貯留部に供給する工程と、該冷媒貯留部への冷媒供給量および冷媒貯留部から前記冷媒溜り部に戻す冷媒量を調整する工程と、を有し、電動機の高回転領域における前記冷媒溜り部の液面高さを、中回転領域および小回転領域における液面高さよりも高くすることを特徴とする電動機ユニットにおける冷媒の液面高さ調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−115851(P2013−115851A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257285(P2011−257285)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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