説明

電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置

【課題】リアクトルの配設位置を規定して総合効率を高める
【解決手段】電動機付ターボチャージャ1を形成する永久磁石同期電動機2およびターボチャージャ3と、直流電源4の供給を受ける昇圧回路5aと、前記直流電源4から入出力される電流の全てが通過するリアクトル6と、前記昇圧回路5aの出力を入力するインバータ回路7と、前記昇圧回路5aの出力端および/または前記インバータ回路7の入力端に接続されたコンデンサ8と、を備え、前記インバータ回路7の出力を電動機駆動電流として前記永久磁石同期電動機2の各相に供給して駆動する電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置Eaにおいて、前記昇圧回路5aに含まれるパワー半導体部9が取付られた取付部材に前記リアクトル6を直付した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ターボチャージャとして必要な回転範囲に亘って駆動可能で、しかも安価で実用的な電動機付ターボチャージャ装置を提供する技術が開示されている。すなわち、電力制御装置は、誘導電動機に駆動波形を与えるインバータ、インバータの出力電圧を制御するインバータ電圧制御手段、インバータへ供給する電圧を昇圧させるコンバータ、コンバータの出力電圧を制御するコンバータ電圧制御手段、制御信号発生手段を有するものである。
【0003】
この制御信号発生手段は、低速回転側でインバータ電圧制御手段を制御し、高速回転側でコンバータ電圧制御手段を制御する。ターボチャージャは、アイドリング時、1万ないし2万rpmで回転していることに着目し、回転全域に亘って波形制御に負荷のかからない簡素な矩形波を用いて誘導電動機を駆動する。
【0004】
また、この電動機付ターボチャージャの電力制御装置は、誘導電動機の低速回転側において目標回転速度の上昇に伴いインバータの出力電圧を高めるインバータ昇圧制御を実施し、誘導電動機の高速回転側において目標回転速度の上昇に伴いコンバータの出力電圧を高めるコンバータ昇圧制御を実施するように設定されている。このことにより、電力制御装置における電力制御の柔軟性が高まる。
【0005】
例えば、停車から加速する場合、電動機は1万ないし2万rpm〜超高速回転まで作動する。この時、初めインバータで電力制御の可変制御を行い、次にコンバータで電力制御の可変制御を行うことで回転が滑らかに上昇する。中間加速を行う場合、コンバータで電力制御の可変制御を行うだけで回転が滑らかに上昇するというものである。
【特許文献1】特開2005−42684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された内容には、チョークコイル(以下、「リアクトル」という)の配設位置を規定することによりリップルを減少させる技術思想と、平滑・安定用のリアクトルおよびコンデンサを適正な定数に固定化する技術思想は含まれておらず、リアクトルの配設位置によってコストダウンの余地が残されているという課題があった。また、放熱設計まで含めた総合効率を高めるという課題もあった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、リアクトルの配設位置を規定することによりリップルを減少させ、平滑・安定用のリアクトルおよびコンデンサを適正な定数に固定化して部品の共通化を図るとともに、放熱設計まで含めた総合効率を高めことによってコストダウン可能な電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明では、下記の手段を採用する。
電動機付ターボチャージャを形成する永久磁石同期電動機およびターボチャージャと、直流電源の供給を受ける昇降圧回路と、前記直流電源から入出力される電流の全てが通過するリアクトルと、前記昇降圧回路の出力を入力するインバータ回路と、前記昇降圧回路の出力端および/または前記インバータ回路の入力端に接続されたコンデンサと、を備え、前記インバータ回路の出力を電動機駆動電流として前記永久磁石同期電動機の各相に供給して駆動する電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置において、前記昇降圧回路に含まれるパワー半導体部が取付られた取付部材に前記リアクトルを直付したことを特徴とする。
【0009】
また、前記取付部材がヒートシンクであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リアクトルの配設位置を規定することにより、直流電源と昇降圧回路の間にリアクトルを介挿するための配線が不要であり、その配線があれば生じる不確定インダクタンスが生じないので、設計が容易になる。そして、リップルを減少させるとともに、平滑・安定用のコンデンサを適正な定数に固定化し、部品の共通化を図ることによってコストダウン可能な電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。なお、各図において、同一機能は同一符号を付して説明を省略する。
図1は、本実施形態に係る昇圧回路5aとインバータ回路7を一体化した電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置(以下、「本装置」ともいう)Eaの概略回路図である。
【0012】
図1の左方に示す本装置Eaは、バッテリー等の直流電源4に接続され、この直流電源4と昇圧回路5aの間に介挿されるリアクトル6と、直流電源4の供給を受ける昇降圧回路5と、この昇圧回路5aの出力を入力するインバータ回路7と、昇圧回路5aの出力端および/またはインバータ回路7の入力端に接続されたコンデンサ8と、を備えて構成されている。
【0013】
図1の右方に示す電動機付ターボチャージャ1は、永久磁石同期電動機(以下、「永久磁石同期モータ」または「モータ」ともいう)2およびターボチャージャ3により形成されている。本装置Eaは図示せぬECU(エンジン コントロール ユニット)から受けた制御信号に基づいてPWM制御されるインバータ回路7から適切な周波数の三相交流を出力し、モータ2の各相に電動機駆動電流を供給してモータ2を駆動する。なお、電動機付ターボチャージャ1のモータ2と直流電源4の間に介在する本装置Eaは、両者の間で直流/交流変換、低圧/高圧変換しながら電源供給または回生動作をするするエネルギー変換手段として機能する。
【0014】
昇圧回路5aにはパワー半導体部9と、リアクトル6およびコンデンサ8が含まれる。これらの回路定数は、昇圧回路5aの昇圧比、すなわち直流電源4の電圧を何倍に昇圧してインバータ回路7へ入力するかで決定するほか、許容リップル等も考慮して決定される。図1に示すように、リアクトル6は昇圧回路5aに一体化するように構成されている。このことは、図3(b)に沿って後述するように、リアクトル6がパワー半導体部9の取付部材に直付された構造であることを意味している。
【0015】
図2は本実施形態に係る昇圧回路5aとインバータ回路7が別ユニットの電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置Ea′の概略回路図である。図2に示すように、本装置Ea′では昇圧回路5aとインバータ回路7を別ユニットで構成し、両者の間を適宜長さの電線で接続しているが、リアクトル6が昇圧回路5aに一体化された点で、図1に示した本装置Eaと類似する構造である。昇圧回路5aとインバータ回路7を別ユニットで構成する理由は、本装置Ea′を搭載する自動車のエンジンルーム等のスペースの都合による。
【0016】
図3は本実施形態に係るリアクトル一体方式の説明図であり、(a)リアクトル6のインダクタンス(以下、「リアクタ値」ともいう)と電流リップルとの関係を説明する回路図、(b)ヒートシンク10周辺の模式構造図である。図3(a)に示すIbat(入力電流)は、昇圧回路5a′に接続されたリアクトル6単体のリアクタ値を10μHとした場合の電流リップル△Ibat(変動電流[A])であり、リアクタ値[L]に反比例する。
【0017】
また、図3(b)リアクトル一体方式として示すように、リアクトル6はヒートシンク10上にパワー半導体部9および制御回路部70と供に直付されている。パワー半導体部9はパワーON−OFFする主要素子であり、昇圧回路5a′(降圧回路5bも含めて「昇降圧回路5」と総称する)のチョッパ用FETのほかインバータ回路7用FETも含むものとする。なお、FETに限らず、サイリスタ、トランジスタ等の制御素子を用いても構わない。
【0018】
制御回路部70は昇降圧回路5用のチョッパ制御回路(図示せず)のほかインバータ回路7用の周波数制御回路(図示せず)も含むものとする。制御回路部70は、ヒートシンク10上にパワー半導体部9が直付されたその上に適当な取付手段により載置されている。ただし、ヒートシンク10上に直付されたリアクトル6およびパワー半導体部9の何れも適当な絶縁対策を施されながら良好な熱伝導が確保されている。なお、ここでいう「直付」とは、離れた位置にある機能素子を回路接続するために長い線材を用いた配線をしないことを意味する。
【0019】
このように、リアクトル6がパワー半導体部9の取付部材に直付された構造であることにより、リアクトル6単体のリアクタ値[L]のみが回路定数として安定作用する。そうすると、リアクタ値[L]の設定が単純計算だけで決定できるほか、昇降圧回路5の出力端および/またはインバータ回路7の入力端に接続されたコンデンサ8の容量値も、リアクトル6の配線距離に左右されなくて済む。したがって、リアクトル6の配線距離をなくし、図6(a)に沿って後述する配線インダクタンス=0に規定できれば、リアクトル6およびコンデンサ8の定数が無調整に定められるので設計が簡単になるほか、リアクトル6およびコンデンサ8を容量値別で多種類に亘って用意する無駄が省けるのでコストダウンにもつながる。
【0020】
図4は本実施形態に係る降圧回路5bとインバータ回路7を一体化した電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置Ebの概略回路図である。図4に示す本装置Ebは、図1に示した本装置Eaにおける昇圧回路5aを降圧回路5bに置換した点以外は同一であるため、さらなる説明は省略する。なお、昇圧回路5aと降圧回路5bの何れを用いて昇降圧回路5を構成するかは、直流電源4の電圧次第である。直流電源4の電圧が足りなければ昇圧回路5aにより昇圧し、高過ぎれば降圧回路5bにより降圧する。
【0021】
図5は本実施形態に係る降圧回路5bとインバータ回路7が別ユニットの電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置Eb′の概略回路図である。図5に示す本装置Eb′は、図2に示した本装置Ea′における昇圧回路5aを降圧回路5bに置換した点以外は同一であるため、さらなる説明は省略する。
【0022】
図6は本発明の技術思想と反対の技術思想に係るリアクトル分離方式の説明図であり、(a)リアクタ値と電流リップルとの関係を説明する回路図、(b)ヒートシンク11,12周辺の模式構造図である。図6(a)に示すIbat(入力電流)は、昇圧回路5a′に接続されたリアクトル6単体のリアクタ値を5μHとするほか、リアクトル6を回路に接続する線材に意図せず発生する配線インダクタンス61,62として1μH×2本分=2μHを加えた合計リアクタ値=5μH+2μH=7μHとした場合の電流リップル△Ibatである。
【0023】
配線インダクタンス61,62は、配線の距離(長さ)にほぼ比例してその線材に意図せず生じるインダクタンスである。この配線インダクタンス61,62の影響を、この分野の技術では無視できない。なぜならば、図6(a)からわかるように、回路設計する際に、リアクトル6単体のリアクタ値である5μHのみを生かすか、あるいは配線インダクタンスとして1μH×2本分=2μHを加えた合計リアクタ値=5μH+2μH=7μHとするかは、リアクトル6を昇降圧回路5に接続する配線距離に左右されるからである。
【0024】
その結果、昇降圧回路5の出力端および/またはインバータ回路7の入力端に接続されたコンデンサ8の容量値は、リアクトル6の配線距離に左右される。このような影響のある配線インダクタンス=1μH×2本分=2μHを有効利用するか、有害と認識するかは実施形態により異なるが、リアクトル6の配線距離をなくして配線インダクタンス=0に規定できれば、コンデンサ8の容量値が無調整に定められるので設計が簡単になるほか、コンデンサ8を容量値別で多種類に亘って用意する無駄が省けるのでコストダウンにもつながる。
【0025】
また、図6(b)リアクトル分離方式として示すように、リアクトル6はヒートシンク11上に単独で直付されている。また、別のヒートシンク12上にパワー半導体部9が直付され、その上に制御回路部70も適当な取付手段により載置されている。ただし、ヒートシンク11上に直付されたリアクトル6と、ヒートシンク12上に直付されたパワー半導体部9の何れも適当な絶縁対策を施されながら良好な熱伝導が確保されている。
【0026】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。例えば、直流電源4として用いるバッテリーの電圧、昇降圧回路5の倍数および出力電圧は適宜に設定可能である。また、永久磁石同期電動機3に代えた誘導電動機を用いても構わない。さらに回生動作するか否かの限定もなく自由である。
【0027】
そして、直流電源4から入出力する電流の全てが通過するリアクトル6を最短距離で配線することにより、総合的に効率を良くした技術は本発明に含まれる。特に、昇降圧回路5内にリアクトル6を一体に組み込むため、パワー半導体部9の載置されたヒートシンク10その他の基板等からなる取付部材にリアクトル6を直付することにより、そのリアクトル6を回路に接続する長い線材等を省略した技術思想は本発明に属するものと見なし得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る昇圧回路とインバータ回路を一体化した電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置の概略回路図である。
【図2】本実施形態に係る昇圧回路とインバータ回路が別ユニットの電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置の概略回路図である。
【図3】本実施形態に係るリアクトル一体方式の説明図であり、(a)リアクタ値と電流リップルとの関係を説明する回路図、(b)ヒートシンク周辺の模式構造図である。
【図4】本実施形態に係る降圧回路とインバータ回路を一体化した電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置の概略回路図である。
【図5】本実施形態に係る降圧回路とインバータ回路が別ユニットの電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置の概略回路図である。
【図6】本発明の技術思想と反対の技術思想に係るリアクトル分離方式の説明図であり、(a)リアクタ値と電流リップルとの関係を説明する回路図、(b)ヒートシンク周辺の模式構造図である。
【符号の説明】
【0029】
1 電動機付ターボチャージャ
2 永久磁石同期電動機(モータ)
3 ターボチャージャ
4 直流電源
5 昇降圧回路(昇圧回路5a,5a′と降圧回路5bの総称)
5a,5a′ 昇圧回路
5b 降圧回路
6 リアクトル
7 インバータ回路
8 コンデンサ
9 パワー半導体部
10 ヒートシンク(取付部材)
E(Ea,Eb) 電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置(本装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機付ターボチャージャを形成する永久磁石同期電動機およびターボチャージャと、
直流電源の供給を受ける昇降圧回路と、
前記直流電源から入出力される電流の全てが通過するリアクトルと、
前記昇降圧回路の出力を入力するインバータ回路と、
前記昇降圧回路の出力端および/または前記インバータ回路の入力端に接続されたコンデンサと、を備え、
前記インバータ回路の出力を電動機駆動電流として前記永久磁石同期電動機の各相に供給して駆動する電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置において、
前記昇降圧回路に含まれるパワー半導体部が取付られた取付部材に前記リアクトルを直付したことを特徴とする電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置。
【請求項2】
前記取付部材がヒートシンクであることを特徴とする請求項1記載の電動機付ターボチャージャ用電動機駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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