説明

電動自転車用バッテリー装置

【課題】強度と耐衝撃性や勘合性に優れたバッテリーケースを備え、高い安全性が確保された電動自転車用バッテリー装置を提供する。
【解決手段】バッテリーを収納し略箱型形状に形成された樹脂製バッテリーケースを、その長手方向が車載状態で上下方向を向くように車体フレーム側に対して着脱可能に装着される電動自転車用バッテリー装置であって、樹脂製バッテリーケースは、エラストマーを含有する、粘度平均分子量が22,000〜30,000のポリカーボネート樹脂からなることを特徴とする電動自転車用バッテリー装置による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動自転車用バッテリー装置に関するものである。詳しくは、強度と耐衝撃性や勘合性に優れたバッテリーケースを備え、高い安全性が確保された電動自転車用バッテリー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動アシスト自転車は、坂道などでも楽に走行でき、高い人気を集めている。また、近年、ペダルからの人力駆動を基本的に必要としない電気自転車も登場している。これら電動自転車(以下、電動アシスト自転車および電気自転車を併せて「電動自転車」という。)は、二次電池を電源とした電動モータの駆動力を補助的にあるいは主動力として用いるが、その電源としては、繰り返し利用が可能なニッケル水素電池、リチウムイオン電池などの二次電池が利用され、二次電池を単数または複数個接続した電池パックを内部に収容したバッテリーケースを備えたバッテリー装置が、電動自転車の本体に取り付けている。
【0003】
そして、バッテリー装置は、電池残量が不足すると、バッテリーケースが電動自転車本体から外され、家庭用コンセントに接続された専用または汎用の充電器にセットされて充電される。このためバッテリーケースは車体本体に取り付けられたバッテリー装置から着脱可能に取り付けられている。またバッテリーケースは軽くても2〜3キログラム以上の重量を有している。
【0004】
このようなバッテリーケースを充電等のため家庭内に運ぶ際、誤ってこれを落下させた場合には、ケースが割れて電池装置を露出させてしまったりする。また、ケース内に実装された充放電のための制御回路や回路基板、接続のための回路やコネクター、あるいは放熱のための放熱板等に故障を生じさせると、異常発熱や発火を引き起こす危険がある。また、収納してある二次電池を破損や破裂に至らしめると、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池は強アルカリ性の電解液を含むため、危険である。
【0005】
このため、従来、バッテリーケースを金属製にして耐衝撃性を高めたものにしているが、バッテリーケースが腐食するとか、万一ケース内で漏電がした場合には、バッテリーケースに触れると感電するという課題がある。このため、バッテリーケースを樹脂製にすることが検討され、特許文献1および2には、樹脂製バッテリーケースを用いたバッテリー装置が提案されているが、特許文献1〜2には具体的な樹脂材料については記載がないが、今までのところ、樹脂製バッテリーケースとしては、耐衝撃性の点からABS樹脂、あるいはABS樹脂の耐候性を改良したAES樹脂が使用されているのが現状である。
【0006】
また、バッテリーケースは、通常、箱型の外観形状を有するが、電池パックを収納するために、箱形を二つに割った半割ケースから通常構成され、二つの半割ケース間内部に電池パックを収容した後、両者は嵌合されて、バッテリーケースとなる。このため、バッテリーケースには、強度と耐衝撃性が優れることに加え、良好な嵌合性を有することが要求される。嵌合性が悪いと、嵌合部から外れやすく、また落下させた場合、破損や割れを生じ、安全性上、大きな問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−79219号公報
【特許文献2】特開2007−257901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、強度と耐衝撃性や勘合性に優れたバッテリーケースを備え、高い安全性が確保された電動自転車用バッテリー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定のポリカーボネート樹脂にエラストマーを配合した樹脂材料を使用し、細長状に形成されたバッテリーケースを車体フレーム側に着脱可能に装着した電動自転車用バッテリー装置が、上記目的を達成することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、バッテリーを収納し略箱型形状に形成された樹脂製バッテリーケースを、その長手方向が車載状態で上下方向を向くように車体フレーム側に対して着脱可能に装着される電動自転車用バッテリー装置であって、樹脂製バッテリーケースは、エラストマーを含有する、粘度平均分子量が22,000〜30,000のポリカーボネート樹脂からなることを特徴とする電動自転車用バッテリー装置が提供される。
【0011】
さらに、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、バッテリーケースは、長手方向に二つ割り構造に形成された樹脂製の第1のケース部材と第2のケース部材を結合して構成されることを特徴とする電動自転車用バッテリー装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電動自転車用バッテリー装置は、そのバッテリーケースが、強度、耐衝撃性や耐候性、さらに勘合性に優れるので、電動自転車用バッテリー装置に必要な強度、耐衝撃性、耐久性を有し、高い安全性を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の電動自転車用バッテリー装置を装着した電動自転車の装着箇所の斜視図である。
【図2】本発明の電動自転車用バッテリー装置におけるバッテリーケースの具体的な構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面も参照しながら、本発明の一実施形態を説明するが、本発明はこの一実施形態に限定して解釈されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の電動自転車用バッテリー装置を装着した電動自転車の装着箇所の斜視図である。
電動自転車1は、自転車本体1のサドル2の下のサドルフレーム3の後、後輪との間に、バッテリー装置4を配置している。そして、バッテリー装置4は、略箱型形状のバッテリーケース5と自転車本体1に固定されたバッテリーホルダー6からなり、バッテリーケース5は、図1に示すように、車載状態でその長手方向が上下方向を向くようにしてバッテリーホルダー6に着脱可能に装着される。
バッテリーケース5が装着された状態にあると、バッテリーケースから、バッテリーホルダー6内に設けられた図示しない接続端子を通じ、電動モータ(図示せず)に駆動用電力が供給される。
【0016】
図2は、バッテリーケース5の具体的な構造を示す斜視図である。
バッテリーケース本体5は、略箱型形状を有するが、その長手方向に二つ割り構造で形成されており、樹脂製の第1のケース部材6と樹脂製の第2のケース部材7からなり、これを結合して構成される。バッテリーケース5の内部には二次電池のバッテリーパック8が収納される。また、図示していないが、バッテリーケース5の内部には、残量検出やセル電圧・セル温度を監視し充放電制御を行うための制御基板や、基板等からの発熱を放散する放熱板等も配置される。
【0017】
また、バッテリーケース5には、第1のケース部材6と樹脂製の第2のケース部材7の片方または両方のバッテリーホルダー6側に、端子部9が設けられる。端子部9は、バッテリーホルダー7に装着したした際、バッテリーホルダー6に設けた接続端子を通じ電力を供給し、また、電池残量が不足するとバッテリーケース6から外され、家庭用コンセントに接続された専用または汎用の充電器にセットされて、端子部9より充電が行われる。
さらに、バッテリーケース6は軽くても2〜3キログラム以上の重量を有しており、これを充電のため家庭内に持ち込む際、手に提げて運ぶための取手10を設けることが好ましい。取手10は、第1のケース部材6と樹脂製の第2のケース部材7の片方または両方にまたがって、設けられる。
【0018】
そして、樹脂製の第1のケース部材6と樹脂製の第2のケース部材7との結合は、好ましくは、嵌合により、あるいは嵌合とネジ止めを併用することにより行われる。
このように、強度と耐衝撃性や勘合性に優れることが要求されるバッテリーケース5は本発明では、エラストマーを含有する、数平均分子量が22,000〜30,000のポリカーボネート樹脂を成形した樹脂製のものを使用する。
【0019】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量[Mv]が、22,000〜30,000の範囲にあることが必要で、本発明においては、このような従来射出成形用途において適用されてきた分子量よりも高い分子量範囲のものを使用する。粘度平均分子量を22,000以上とすることにより、バッテリーケース5の機械的強度をより向上させることができ、30,000以下とすることによりポリカーボネート樹脂の成形時の流動性低下を抑制して改善でき、成形を容易に行えるようになる。粘度平均分子量[Mv]は、好ましくは23,000以上であり、好ましくは28,000以下、より好ましくは27,000以下である。
【0020】
また、ポリカーボネート樹脂には、エラストマーを配合する。エラストマーの含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、その上限は好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。エラストマーの含有量が、前記下限値以下の場合は、エラストマーによる耐衝撃性向上効果が不十分となりやすく、前記の上限値を超える場合は、難燃性、耐熱性、耐衝撃性の低下、バッテリーケースの外観不良が生じやすい。
【0021】
エラストマーとしては、熱可塑性エラストマーまたはコア/シェル型グラフト共重合体タイプのエラストマーが好ましい。
熱可塑性エラストマーとは、常温ではゴム状弾性を持つ固体であるが、加熱すると粘度が低下するという、熱可塑性樹脂と溶融混合可能な性質を有する高分子物質の総称である。熱可塑性エラストマーの種類は特に制限されず、例えば、オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系およびウレタン系等が挙げられる。
コア/シェル型グラフト共重合体タイプのものとしては、ポリブタジエン含有ゴムをコア層とし、その周囲に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。
【0022】
また、ポリカーボネート樹脂には、難燃剤を含有することが好ましい。難燃剤としては有機スルホン酸金属塩及び/またはリン系難燃剤が好ましく、有機スルホン酸金属塩がより好ましい。
【0023】
有機スルホン酸金属塩を含有することで、ポリカーボネート樹脂の燃焼時の炭化層形成を促進し、難燃性をより高めることができると共に、ポリカーボネート樹脂が有する耐衝撃性等の機械的物性、耐熱性、電気的特性などの性質を良好に維持できる。
有機スルホン酸金属塩のうち、好ましいものとしては、含フッ素脂肪族スルホン酸の金属塩、含フッ素脂肪族スルホン酸イミドの金属塩、芳香族スルホン酸の金属塩、芳香族スルホンアミドの金属塩が挙げられ、含フッ素脂肪族スルホン酸金属塩が特に好ましく、具体的にはノナフルオロブタンスルホン酸カリウム等が好ましい。
有機スルホン酸金属塩の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.001〜1質量部である。含有量が少なすぎるとポリカーボネート樹脂の難燃性が不十分となる可能性があり、逆に多すぎてもポリカーボネート樹脂の熱安定性の低下、並びに、バッテリーケース5の外観不良及び機械的強度の低下が生ずる可能性がある。
【0024】
またリン系難燃剤としては、公知のリン酸エステル化合物やホスファゼン化合物を好適に用いることができる。なかでも耐熱性や機械的特性、湿熱安定性などの性質を良好に維持できることより、ホスファゼン化合物がより好ましい。
リン系難燃剤の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.5〜15質量部である。含有量が少なすぎるとポリカーボネート樹脂の難燃性が不十分となる可能性があり、逆に多すぎてもポリカーボネート樹脂の熱安定性の低下、並びに、バッテリーケース5の外観不良及び機械的強度の低下が生ずる可能性がある。
【0025】
また、ポリカーボネート樹脂には、滴下防止剤として、フッ素樹脂を、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.001〜1質量部含有することが好ましい。フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン樹脂が好ましい。フッ素樹脂の含有量が0.001質量部未満の場合は、難燃化効果が不十分となり、1質量部を超える場合は、バッテリーケースの外観不良や機械的強度の低下が生じる可能性がある。
【0026】
また、ポリカーボネート樹脂には、紫外線吸収剤を含有することが好ましく、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤がより好ましく、バッテリーケースの耐候性や機械物性が良好なものになる。
紫外線吸収剤の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上、0.5質量部以下である。0.01質量部未満の場合は、耐候性の改良効果が不十分となり、0.5質量部を超える場合は、バッテリーケース成形時に金型汚染を引き起こしやすい。
【0027】
さらに、ポリカーボネート樹脂には、酸化チタンまたはカーボンブラックを含有することが好ましい。好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.00001〜5質量部である。含有量が0.00001質量部未満では遮光性に劣り、5質量部を越えると、バッテリーケースの耐衝撃性の低下が生じる可能性があり、また、流動性や外観が低下し、バッテリーケース表面からの脱落も生じやすくなる。
【0028】
ポリカーボネート樹脂は、上記した成分に加え、リン系安定剤、フェノール系安定剤、離型剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などの各種の樹脂添加剤を含有することもできる。
【0029】
バッテリーケース5を成形するには、公知の成形方法を採用できるが、好ましくは、射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、インサート成形などにより、第1および第2のケース部材6、7を成形する。そして、バッテリーパック8や必要な基板や各種部品を収納後、両者を嵌合ならびに嵌合およびネジ止めにより結合して、バッテリーケース5とされる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0031】
実施例および比較例において、使用した成分は以下の表1の通りである。
なお、粘度平均分子量[Mv]は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて、温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、η=1.23×10−4Mv0.83 から算出した。
【0032】
【表1】

【0033】
(実施例1〜5、比較例1〜2)
[樹脂ペレットの製造]
上記表1に記した各成分を、後記表3に記した割合(質量比)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製二軸押出機(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/時間、バレル温度280℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0034】
[試験片の製造]
上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製のSE100DU型射出成形機を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形し、長さ125mm、幅13mm、厚さ1.5mmのUL試験用試験片を射出成形した。
また、上記の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製射出成形機(サイキャップM−2、型締め力75T)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で、ISO多目的試験片(3mm厚)を射出成形した。
さらに上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製のSE100DU型射出成形機を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度80℃、成形サイクル60秒の条件で射出成形し、ASTM D671に準じた曲げ疲労試験片(TYPE A)を成形した。
【0035】
[ケース部材の製造]
また、得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、東芝機械工業社製のEC160型射出成形機を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度80℃で射出成形し、長さ15cm、幅15cm、厚さ1.5mm、深さ5cmの上部が開口した箱状のケース部材を成形した。
【0036】
[難燃性評価]
上記方法で得られたUL試験用試験片(0.8mm厚)を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行った。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V−0、V−1及びV−2の難燃性を有するためには、以下の表2に示す基準を満たすことが必要となる。
【0037】
【表2】

ここで残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片の有炎燃焼を続ける時間の長さである。また、ドリップによる綿着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。さらに、5試料のうち、1つでも上記基準を満たさないものがある場合、V−2を満足しないとしてNR(not rated)と評価した。
【0038】
[耐衝撃性評価]
上述の方法で得られたISO多目的試験片(3mm厚)を用い、ISO179に準拠し、R=0.25のVノッチを入れ、23℃、及び−30℃の条件で、それぞれノッチ有りシャルピー耐衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。
【0039】
[製品強度試験評価]
上述の方法で得られたケース部材をサンシャインウエザオメーター(スガ試験機(株)製)を用い、ブラックパネル温度63±3℃、相対湿度50〜60%、光波長として300nm以下をガラスフィルターでカットしたカーボンアークを放射照度255(±10%)W/mの条件で、照射時間1000時間上記試験片に照射した後、照射面に対し2kgの錘を落下させ破断面を目視にて観察した。なお、試験は3回実施した。
破断面に著しく鋭利な亀裂が認められる場合は「×」、破断面に著しい亀裂が認められないものを「○」と判断した。
【0040】
[疲労特性評価]
上述の方法で得られた曲げ疲労試験片を用い、ASTM D671に準じ、23℃、実応力20MPaの条件で試験をし、破壊に至るまでの回数を求めた。なお試験は3回実施し、その平均値を求めた。
この疲労試験の破断に至るまでの回数が多い方が、疲労特性に優れ、バッテリーケースの勘合性に優れることを意味し好ましい。また、電動自転車の走行によって本発明の電動自転車用バッテリー装置は振動を受けるが、疲労特性に優れるバッテリーケースを用いることにより、この振動によるバッテリーケースの強度低下を防ぐ効果も得られる。
【0041】
[耐候性試験]
上述の方法で得られたケース部材を試験片とし、JIS K−7105に準じ、日本電色工業社製のSE2000型分光式色彩計で、反射法により測定した(初期YI)。さらにサンシャインウエザオメーター(スガ試験機(株)製)用い、ブラックパネル温度63±3℃、相対湿度50〜60%、光波長として300nm以下をガラスフィルターでカットしたカーボンアークを放射照度255(±10%)w/mの条件で、照射時間300時間上記試験片に照射した後に同様の手法でYIを測定した(耐候試験後YI)。
このときのΔYI(耐候試験後YI−初期YI)を求め、耐候色相の評価をした。
なお、ΔYIは成形品の黄変度を表し、この値が小さい方が屋外環境下において黄変が小さいことを意味し好ましい。
【0042】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の電動自転車用バッテリー装置は、強度と耐衝撃性や勘合性に優れたバッテリーケースを備え、高い安全性が確保された電動自転車用バッテリー装置であるので、電動アシスト自転車あるいは電気自転車のバッテリー装置として好ましく使用することができるので、産業上の利用性は非常に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーを収納し略箱型形状に形成された樹脂製バッテリーケースを、その長手方向が車載状態で上下方向を向くように車体フレーム側に対して着脱可能に装着される電動自転車用バッテリー装置であって、樹脂製バッテリーケースは、エラストマーを含有する、粘度平均分子量が22,000〜30,000のポリカーボネート樹脂からなることを特徴とする電動自転車用バッテリー装置。
【請求項2】
バッテリーケースは、長手方向に二つ割り構造に形成された樹脂製の第1のケース部材と第2のケース部材を結合して構成されることを特徴とする請求項1に記載の電動自転車用バッテリー装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−226887(P2012−226887A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91683(P2011−91683)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】