説明

電動車両のバッテリ温度調整構造

【課題】部品点数の増加を抑えた上でバッテリを加温可能な電動車両のバッテリ温度調整構造を提供する。
【解決手段】外気を流通させるダクト41内に、駆動用バッテリ2と、少なくともモータドライバを含む駆動用電装部品(制御ユニット35)とが収容され、前記ダクト41には、バッテリ収容部46への吸気入口46aを開閉する前ルーバー38と、ドライバ収容部47からの下排気出口47bを開閉する後ルーバー39と、各収容部46,47間を区画する隔壁45とが設けられ、前記隔壁45には連通孔48が設けられ、前記バッテリ2の低温時には前記各ルーバー38,39が閉じ、前記バッテリ2の高温時には前記各ルーバー38,39が開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両のバッテリ温度調整構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両のバッテリ温度調整構造において、バッテリを収容するダクトを有し、バッテリの周囲に走行風入口と走行風出口とから大気に連通する空気通路を形成すると共に、バッテリの温度に応じて前記走行風入口を開閉する開閉弁を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。これは、バッテリ温度が高いときには、前記開閉弁が開くことにより走行風をダクト内に流入させてバッテリを冷却し、バッテリ温度が低いときには、前記開閉弁が閉じることによりエンジン冷却後の温風をダクト内に流入させてバッテリを暖めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3660466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の電動車両(EV)のように、エンジン(内燃機関)を持たずモータ(電動機)のみで走行する車両においては、バッテリをエンジン熱で温めることができず、バッテリを加温する場合には別途加温装置が必要となり、部品点数を増加させるという課題が生じる。
【0005】
そこで本発明は、部品点数の増加を抑えた上でバッテリを加温可能な電動車両のバッテリ温度調整構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、
駆動用バッテリ(2)からの電力によりモータ(3a)を駆動させて走行する電動車両(1)のバッテリ温度調整構造において、
前記バッテリ(2)の下方に、少なくともモータドライバ(26)を含む駆動用電装部品(35)を配置し、
車両前方からの外気を前記バッテリ(2)及び駆動用電装部品(35)の配置部位に導入する吸気ダクト(43)と、前記駆動用電装部品(35)の熱を帯びた空気を前記バッテリ(2)の配置部位へ導く連通部(48)と、前記連通部(48)における空気の流れを制御する制御手段(38,39)とを備えることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、
前記バッテリ(2)と駆動用電装部品(35)とが、一つの収容体(41)に形成されたバッテリ収容部(46)と駆動用部品収容部(47)とにそれぞれ収容されるとともに、
前記収容体(41)には、前記バッテリ収容部(46)と駆動用部品収容部(47)とを区画する隔壁(45)を設け、
前記連通部(48)が、前記隔壁に形成されることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、
前記収容体(41)は、前記吸気ダクト(43)と連結し、
前記制御手段(38,39)は、前記駆動用バッテリ(2)を収容するバッテリ収容部(46)への吸気入口(46a)を開閉する入口側開閉弁(38)と、前記駆動用電装部品(35)を収容する駆動用部品収容部(47)からの排気出口(47b)を開閉する出口側開閉弁(39)とから構成され、
前記駆動用バッテリ(2)の低温時には、前記入口側開閉弁(38)が前記吸気入口(46a)を閉じると共に、前記出口側開閉弁(39)が前記排気出口(47b)を閉じ、
前記駆動用バッテリ(2)の高温時には、前記入口側開閉弁(38)が前記吸気入口(46a)を開くと共に、前記出口側開閉弁(39)が前記排気出口(47b)を開くことを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、
前記駆動用部品収容部(47)の直上に前記バッテリ収容部(46)が配置されることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、
前記連通部(48)が、前記各収容部(46,47)の流路面積よりも小さい開口面積の連通孔(48)からなることを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、
前記収容体(41)に空気流通用のファン(37)が設けられることを特徴とする。
請求項7に記載した発明は、
前記駆動用バッテリ(2)の低温時には、前記ファン(37)の駆動を停止することを特徴とする。
請求項8に記載した発明は、
前記隔壁(45)が、前記駆動用バッテリ(2)のヒートシンクからなることを特徴とする。
請求項9に記載した発明は、
前記収容体(41)にサブバッテリ(28)が配置されることを特徴とする。
請求項10に記載した発明は、
前記サブバッテリ(28)が、前記収容体(41)内に設けられた凹部(49)に収容されることを特徴とする。
請求項11に記載した発明は、
前記駆動用電装部品(35)の下方に前記モータ(3a)が配置されることを特徴とする。
請求項12に記載した発明は、
前記モータ(3a)における前記駆動用電装部品(35)を接続する接続端子(3c)が、前記モータ(3a)の上方に突出することを特徴とする。
請求項13に記載した発明は、
前記駆動用バッテリ(2)が複数の単バッテリ(2a)を結線してなり、前記各単バッテリ(2a)間の隙間にバッテリ出力ハーネス(2c)及びコンタクタ(25)が配置されることを特徴とする。
請求項14に記載した発明は、
前記電動車両(1)は、車体の前方から車両側面を覆うカウリング(21)を備え、車体フレーム(11)のヘッドパイプ(12)から左右一対のメインフレーム(13)の後部の間で、前記左右メインフレーム(13)の下方に走行用の前記モータ(3a)を搭載したレース用スポーツバイクであり、
前記吸気ダクト(43)は、前記カウリング(21)の先端部に開口されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、電動車両において、もともと存在する駆動用電装部品が発生する熱を効率良く利用し、且つ走行風(外気)を導入しながら、駆動用バッテリの加温および冷却装置を別途設けることなく、部品点数の増加を抑えた上で、駆動用バッテリをそれぞれの装置を制御する制御手段によって適切な温度状態に維持することができる。
請求項2に記載した発明によれば、共通の収容体に駆動用バッテリと駆動用電装部品をコンパクトに収容することができ、比較的高圧な駆動用バッテリと駆動用電装部品とを繋ぐ高圧ハーネスを短くできると共に、この高圧ハーネスが外部に露出しないようにすることができる。
請求項3に記載した発明によれば、駆動用バッテリの温度に応じて各開閉弁を開閉させるという簡単な構成で、低温時の駆動用バッテリの加温や、走行中の高温時の駆動用バッテリや駆動用電装部品の冷却を行うことができる。
請求項4に記載した発明によれば、駆動用電装部品により暖められた空気を効率よくバッテリ収容部に流入させることができる。
請求項5に記載した発明によれば、連通部の構成を簡単にしながら、バッテリ高温時には連通部での空気の流れを抑制し、各収容部での空気の流れを促進して駆動用バッテリ及び駆動用電装部品の冷却性を向上できる。
請求項6に記載した発明によれば、停車時や低速走行時にも駆動用バッテリ及び駆動用電装部品に冷却風を供給できる。
請求項7に記載した発明によれば、バッテリ低温時における駆動用バッテリの加温を促進できると共に、ファンの駆動に伴うエネルギー消費を低減できる。
請求項8に記載した発明によれば、バッテリ低温時には駆動用電装部品の熱を駆動用バッテリに伝わり易くしてその加温を促進できると共に、バッテリ高温時には駆動用バッテリの熱引き性を向上できる。
請求項9に記載した発明によれば、駆動用バッテリ及び駆動用電装部品とサブバッテリとの間のハーネスを短くできる。
請求項10に記載した発明によれば、サブバッテリをダクト内に収容しながらダクト内の空気抵抗の増加を抑制できる。
請求項11に記載した発明によれば、駆動用バッテリ、駆動用電装部品及びモータを近接配置してこれらを繋ぐ高圧ハーネスを短くできると共に、マスの集中にも寄与できる。
請求項12に記載した発明によれば、駆動用電装部品とモータとを繋ぐ高圧ハーネスを短くできる。
請求項13に記載した発明によれば、各単バッテリ間の隙間をバッテリ出力ハーネス及びコンタクタの配置スペースとして利用できると共に、各単バッテリ間に隙間を形成することで冷却性を向上できる。
請求項14に記載した発明によれば、バッテリを加温することにより、より大きな出力が期待でき、レース車両としての高出力化に寄与できる上に、レース走行での大きな走行風を利用しながら、バッテリの高温化も防ぐことができる。従って、レース用のスポーツバイクにおける電動車両として、有効な構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態における鞍乗り型電動車両の左側面図である。
【図2】上記鞍乗り型電動車両の要部の構成図である。
【図3】上記鞍乗り型電動車両のダクトにおけるバッテリ低温時の説明図である。
【図4】上記ダクトにおけるバッテリ高温時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。
【0010】
図1に示す鞍乗り型電動車両(電動車両)1は、車体中央上部に走行用のバッテリ(駆動用バッテリ)2を搭載すると共に、車体中央下部には走行用のモータユニット3を搭載し、バッテリ2からの電力によりモータユニット3を駆動させると共に、その駆動力を駆動輪たる後輪4に伝達して走行する。なお、図中矢印FRは車両前方を、矢印UPは車両上方をそれぞれ示す。
【0011】
鞍乗り型電動車両1は自動二輪車の態様をなし、レース用のスポーツバイクの車体に走行用のモータユニット3を搭載したものであって、その前輪5は左右一対のフロントフォーク6の下端部に軸支され、左右フロントフォーク6の上部はステアリングステム7を介して車体フレーム11前端のヘッドパイプ12に操向可能に枢支される。ステアリングステム7(又はフロントフォーク6)の上部には操向ハンドル8が取り付けられる。
【0012】
ヘッドパイプ12からは左右一対のメインフレーム13が後下がりに後方に延出し、左右メインフレーム13の後端部からは左右一対のピボットフレーム14が下方に延出する。左右ピボットフレーム14にはピボット14aを介してスイングアーム15の前端部が上下揺動可能に枢支され、スイングアーム15の後端部には後輪4が軸支される。鞍乗り型電動車両1の車体前部は、その前方、側方及び下方からカウリング21により覆われる。ヘッドパイプ12から左右メインフレーム13の後部までの間であって左右メインフレーム13の下方には、前記モータユニット3が搭載される。
【0013】
左右メインフレーム13の後端部及び左右ピボットフレーム14からは、シートフレーム16が後上がりに後方に延出する。シートフレーム16上には乗員着座用のシート9が支持される。シートフレーム16の周囲はシートカウル22により覆われる。シートフレーム16を含む車体フレーム11は、複数種の金属部材を溶接や締結等により一体に結合してなる。シート9の前方には、左右メインフレーム13の上縁よりも上方に膨出するシート前カバー23が配置される。シート前カバー23は、シート9に着座した乗員の両膝間に挟み込まれる。
【0014】
バッテリ2は、例えば前後に並ぶ複数(図では四つ)の単バッテリ2aからなり、これらを直列に結線することで所定の高電圧(48〜72V)を発生させる。各単バッテリ2aは例えば厚板状をなし、車両前後方向と直交するように起立して配置される。各単バッテリ2aは互いに前後に隙間を空けて配置される。各単バッテリ2aは適宜充放電可能なエネルギーストレージであり、例えばリチウムイオンバッテリ、ニッケル水素バッテリ、鉛バッテリ等からなる。
【0015】
各単バッテリ2aの上端には結線用の端子2bが突設される。各単バッテリ2aの例えば最後部のものの端子2bには、バッテリ2全体の出力ケーブル(バッテリ出力ハーネス)2cが接続される。出力ケーブル2cの途中には後述するコンタクタ25が介設され、このコンタクタ25が出力ケーブル2cと共に最後部の単バッテリ2aとその直前の単バッテリ2aとの間の隙間に配置される。
【0016】
バッテリ2は、その下部前側が左右メインフレーム13間に入り込んだ状態で、後述するダクト(収容体)41を介して車体フレーム11に固定的に支持される。なお、バッテリ2を充電等のために車体に対して着脱自在としてもよい。
【0017】
バッテリ2の直下には前記モータユニット3が位置し、このモータユニット3が車体フレーム11に固定的に支持される。モータユニット3は左右方向に沿う回転軸線C1を有するモータ本体3aを有し、このモータ本体3aの駆動軸3bと後輪4とが例えばチェーン式の伝動機構4aを介して連係される。モータユニット3は例えばVVVF(variable voltage variable frequency)制御による可変速駆動がなされる。
【0018】
モータ本体3aの駆動軸3bには、前記伝動機構4aのドライブスプロケット等の駆動部材4bが直接支持される。なお、モータユニット3が手動又は自動の変速機やクラッチ及び減速機構等を介して後輪4を駆動する構成であってもよい。モータ本体3aの上部(軸線C1よりも上方の部位)における例えば前側には、その径方向外側を指向するように三相の接続端子3cが斜め上前方に向けて突設される。各接続端子3cには、後述する制御ユニット35から延びる給電ケーブル35aが接続される。
【0019】
モータユニット3は、無段変速機を有する如く変速制御されるが、有段変速機を有する如く変速制御される構成としてもよい。この場合、車速やアクセル操作に応じて自動変速するオートマチックモードと、変速スイッチやシフトペダルの操作に応じて手動で変速するマニュアルモードとを選択可能としてもよい。
【0020】
図2に示すように、バッテリ2からの電力は、不図示のメインスイッチと連動するコンタクタ25を介してモータドライバたるPDU(power driver unit)26に供給され、PDU26にて直流から三相交流に変換された後に、三相交流モータであるモータ本体3aに供給される。また、バッテリ2からの出力電圧は、DC−DCコンバータ(以下、単にコンバータという)27を介して降圧されて、12Vのサブバッテリ28や灯火器等の一般電装部品29、後述するファン37やルーバー38,39、並びにECU(electric control unit)31等の制御系部品に供給される。
【0021】
バッテリ2は、例えばAC100Vの電源に接続した充電器32により充電される。バッテリ2の充放電状況や温度等はBMU(battery managing unit)33に監視され、この情報がECU31と共有される。ECU31にはスロットル(アクセル)センサ34からの出力要求情報が入力され、この出力要求情報に基づきECU31がPDU26を介してモータ本体3aを駆動制御する。PDU26及びECU31は一体の制御ユニット35として構成される。なお、充電器32は車載されなくてもよい。また、単バッテリ2aの種類によってはサブバッテリ28を無くしてもよい。
【0022】
図1に示すように、鞍乗り型電動車両1は、車体の前後端部に渡って延設されてその長手方向に沿って外気を流通させるダクト41を有する。
ダクト41は、その前後中間部にて流路を拡大するように形成される電装収容部42と、この電装収容部42の前端下部から前方に延出する吸気ダクト43と、電装収容部42の後端下部から後方に延びる排気ダクト44とを一体に有する。
【0023】
電装収容部42は、左右メインフレーム13間かつモータユニット3の上方に位置し、その上部を前記シート前カバー23内に入り込ませる。電装収容部42は、その下部内側に略水平な板状の隔壁45を固設し、この隔壁45の上方の空間をバッテリ2を収容するバッテリ収容部46とし、隔壁45の下方の空間を前記制御ユニット35を収容するドライバ収容部47とする。すなわち、バッテリ2及び制御ユニット35が単一(共通)のダクト41内に配置される。
【0024】
ダクト41は、その管形成部分が例えば樹脂成形品で構成されるのに対し、前記隔壁45はアルミ合金等の比較的熱伝導率の高い部材で構成される。隔壁45はバッテリ2のヒートシンクでもあり、この隔壁45上にバッテリ2が直接載置される。隔壁45には各収容部46,47間を連通する複数の連通孔48が形成される。各連通孔48は前記各単バッテリ2a間の隙間に対応する位置に設けられる。連通孔48の開口面積は各収容部46,47の流路面積よりも十分に小さくされる。
【0025】
隔壁45の前端部には、バッテリ収容部46前端の上吸気入口46aを開閉する前ルーバー38が設けられる。一方、電装収容部42の下壁の後端部には、ドライバ収容部47後端の下排気出口47bを開閉する後ルーバー39が設けられる。各ルーバー38,39は電動とされ、それぞれ左右方向に沿う回動軸38a,39a回りに開閉作動する。各ルーバー38,39の作動は、BMU33が監視するバッテリ2の温度情報に基づきECU31により制御される。
【0026】
吸気ダクト43はカウリング21内側を前方に延出し、その前端開口(吸気口43a)をカウリング21の前端部にて車両前方に向けて開口させる。吸気口43aは、車両走行時には走行風導入口として機能する。なお、吸気ダクト43は車体フレーム11等を避けるべく適宜分岐して設けられる。
【0027】
排気ダクト44はシートカウル22内側を後方に延出し、その後端開口(排気口44a)をシートカウル22の後端部にて車両後方に向けて開口させる。排気ダクト44の例えば基端部(前端部)の内側には、ダクト41内の空気を吸気口43a側から排気口44a側へ強制的に流通させるファン37が設けられる。
【0028】
図3に示すように、各ルーバー38,39は、バッテリ2の低温時(バッテリ2の充放電に適した所定温度未満の場合)には、前記上吸気入口46aを閉じると共に下排気出口47bを閉じる。このときのダクト41内の空気の流れを図3に鎖線矢印で示す。
一方、図4に示すように、各ルーバー38,39は、バッテリ2の高温時(前記所定温度以上の場合)には、前記上吸気入口46aを開くと共に下排気出口47bを開く。このときのダクト41内の空気の流れを図4に鎖線矢印で示す。
なお、前記所定温度は単バッテリ2aの種類に応じて最適な値に設定される。例えばリチウムイオンバッテリの場合は30℃、それ以外の鉛バッテリ等の場合は50℃である。
【0029】
図3を参照し、前記バッテリ2の低温時において、吸気ダクト43からダクト41内に取り入れた外気は、先ずドライバ収容部47前端の下吸気入口47aより隔壁45下方のドライバ収容部47のみに流入し、制御ユニット35を冷却しつつその熱を奪う。このとき、ドライバ収容部47後端の下排気出口47bは閉じており、したがって、ドライバ収容部47内で加温された空気は、各連通孔48を通じてバッテリ収容部46に流入する。
【0030】
各連通孔48からバッテリ収容部46に流入した空気は、各単バッテリ2aの周囲を流れつつこれらを加温する。特に、ドライバ収容部47内の空気は加温されつつ上昇気流となり、各連通孔48からバッテリ収容部46へ良好に流入する。バッテリ2加温後の空気は、バッテリ収容部46後端の上排気出口46bより排気ダクト44を介してダクト41外に排気される。
【0031】
一方、図4を参照し、前記バッテリ2の高温時において、吸気ダクト43からダクト41内に取り入れた外気は、各吸気入口46a,47aよりバッテリ収容部46及びドライバ収容部47にそれぞれ流入し、バッテリ2及び制御ユニット35をそれぞれ冷却する。このとき、各収容部46,47の流路面積に対して開口面積の小さい連通孔48での空気の流通は抑制される。
【0032】
バッテリ2は、バッテリ収容部46を流れる外気により直接冷却されると共に、ドライバ収容部47を流れる外気によってもヒートシンク(隔壁45)が放熱することで冷却される。バッテリ2及び制御ユニット35を冷却した後の空気は、各排気出口46b,47bより排気ダクト44を介してダクト41外に排気される。
【0033】
ダクト41は、車両走行時には吸気口43aより取り入れた走行風の風圧により外気を流通可能であるが、停車時や低速走行時であってもファン37の駆動により外気を流通可能である。ファン37は電動とされ、各ルーバー38,39と同様、BMU33が監視するバッテリ2の温度情報に基づきECU31により駆動制御される。
【0034】
ファン37は、例えばバッテリ2の高温時には常時回転して外気を流通させるが、その風量は最大要求時の性能を満たすよう設定されることから、例えばバッテリ2の温度や車速に応じて回転数を変化させることで、余分な電力消費を抑えることが可能である。特に、ファン37は、バッテリ2の低温時には停止するよう制御される。
【0035】
排気ダクト44の基端部(前端部)の下側には、前記サブバッテリ28を収容する凹部49が形成される。凹部49は、排気ダクト44の下壁を部分的に下方に膨出させてなる。この凹部49に収容されたサブバッテリ28は、その上面を排気ダクト44の下壁内面とほぼ面一に配置することで、ダクト41内の空気流路に突出することはない。凹部49の直前には後ルーバー39の回動軸39aが位置し、後ルーバー39が開いた際には、この後ルーバー39が凹部49の上部開口を閉塞するよう配置される。
【0036】
以上説明したように、上記実施形態における電動車両のバッテリ温度調整構造は、バッテリ2からの電力によりモータ本体3aを駆動させて走行する鞍乗り型電動車両1に適用されるものにおいて、外気を流通させるダクト41を備え、このダクト41内に、前記バッテリ2と、少なくともモータドライバ(PDU26)を含む駆動用電装部品(制御ユニット35)とが収容され、前記ダクト41には、前記バッテリ2を収容するバッテリ収容部46への吸気入口(上吸気入口46a)を開閉する入口側開閉弁(前ルーバー38)と、前記制御ユニット35を収容するドライバ収容部47からの排気出口(下排気出口47b)を開閉する出口側開閉弁(後ルーバー39)と、前記各収容部46,47間を区画する隔壁45とが設けられ、前記隔壁45には、前記各収容部46,47間を連通する連通部(連通孔48)が設けられ、前記バッテリ2の低温時には、前記前ルーバー38が前記上吸気入口46aを閉じると共に、前記後ルーバー39が前記下排気出口47bを閉じ、前記バッテリ2の高温時には、前記前ルーバー38が前記上吸気入口46aを開くと共に、前記後ルーバー39が前記下排気出口47bを開くものである。
【0037】
この構成によれば、バッテリ2の低温時には、前記ルーバー38,39が上吸気入口46a及び下排気出口47bをそれぞれ閉じることで、ダクト41内に取り入れた外気が先ずドライバ収容部47のみに流入し、制御ユニット35の熱により暖められた後に、隔壁45の連通孔48を通じてバッテリ収容部46に流入してバッテリ2を加温する。すなわち、制御ユニット35を熱源としてバッテリ2を加温することができる。
一方、バッテリ2の高温時には、前記各ルーバー38,39が上吸気入口46a及び下排気出口47bをそれぞれ開くことで、ダクト41内に取り入れた外気が各収容部46,47のそれぞれに流入して流れるため、バッテリ2及び制御ユニット35をそれぞれ冷却することができる。
このように、バッテリ2の温度に応じて各ルーバー38,39を開閉させることで、バッテリ2の加温装置を別途設けることなく、部品点数の増加を抑えた上でバッテリ2を加温することができる。
また、比較的高圧なバッテリ2と制御ユニット35とを繋ぐ高圧ハーネス(出力ケーブル2c)を短くできると共に、この高圧ハーネスが外部に露出しないようにダクト41内で配索できる。
【0038】
また、上記バッテリ温度調整構造は、前記ドライバ収容部47の上方に前記バッテリ収容部46が配置されることで、制御ユニット35により暖められた空気を効率よくバッテリ収容部46に流入させることができる。
【0039】
また、上記バッテリ温度調整構造は、前記連通部が、前記各収容部46,47よりも流路面積の小さい連通孔48からなることで、連通部の構成を簡単にしながら、バッテリ高温時には連通孔48での空気の流れを抑制し、各収容部46,47での空気の流れを促進してバッテリ2及び制御ユニット35の冷却性を向上できる。
【0040】
また、上記バッテリ温度調整構造は、前記ダクト41に空気流通用のファン37が設けられることで、停車時や低速走行時にもバッテリ2及び制御ユニット35に冷却風を供給できる。
【0041】
また、上記バッテリ温度調整構造は、前記バッテリ2の低温時には、前記ファン37の駆動を停止することで、バッテリ低温時におけるバッテリ2の加温を促進できると共に、ファン37の駆動に伴うエネルギー消費を低減できる。
【0042】
また、上記バッテリ温度調整構造は、前記隔壁45が、前記バッテリ2のヒートシンクからなることで、バッテリ低温時には制御ユニット35の熱をバッテリ2に伝わり易くしてその加温を促進できると共に、バッテリ高温時にはバッテリ2の熱引き性を向上できる。
【0043】
また、上記バッテリ温度調整構造は、前記ダクト41にサブバッテリ28が配置されることで、バッテリ2及び制御ユニット35とサブバッテリ28との間のハーネスを短くできる。
【0044】
また、上記バッテリ温度調整構造は、前記サブバッテリ28が、前記ダクト41内に設けられた凹部49に収容されることで、サブバッテリ28をダクト41内に収容しながらダクト41内の空気抵抗の増加を抑制できる。
【0045】
また、上記バッテリ温度調整構造は、前記制御ユニット35の下方に前記モータ本体3aが配置されることで、バッテリ2、制御ユニット35及びモータ本体3aを近接配置してこれらを繋ぐ高圧ハーネス(出力ケーブル2c、給電ケーブル35a)を短くできると共に、マスの集中にも寄与できる。
【0046】
また、上記バッテリ温度調整構造は、前記モータ本体3aにおける前記制御ユニット35を接続する接続端子3cが、前記モータ本体3aの上方に突出することで、制御ユニット35とモータ本体3aとを繋ぐ高圧ハーネス(給電ケーブル35a)を短くできる。
【0047】
また、上記バッテリ温度調整構造は、前記バッテリ2が複数の単バッテリ2aを結線してなり、前記各単バッテリ2a間の隙間にバッテリ出力ハーネス(出力ケーブル2c)及びコンタクタ25が配置されることで、各単バッテリ2a間の隙間を出力ケーブル2c及びコンタクタ25の配置スペースとして利用できると共に、各単バッテリ2a間に隙間を形成することでその冷却性を向上できる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、ドライバ収容部47に制御ユニット35に加えてコンバータ27や充電器32を配置したり、隔壁45に連通孔48に代わりバルブ等を有する連通部を設けた構成としてもよい。また、本発明はモータのみで駆動する電動車両に好適であるが、内燃機関を併せ持つハイブリッド車両に適用することも可能である。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、二輪車のみならず三輪又は四輪の電動車両も適用できる等、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1 鞍乗り型電動車両(電動車両)
2 バッテリ(駆動用バッテリ)
2a 単バッテリ
2c 出力ケーブル(バッテリ出力ハーネス)
3a モータ本体(モータ)
3c 接続端子
11 車体フレーム
12 ヘッドパイプ
13 メインフレーム
21 カウリング
25 コンタクタ
26 PDU(モータドライバ)
28 サブバッテリ
35 制御ユニット(駆動用電装部品)
37 ファン
38 前ルーバー(制御手段、入口側開閉弁)
39 後ルーバー(制御手段、出口側開閉弁)
41 ダクト(収容体)
43 吸気ダクト
45 隔壁(ヒートシンク)
46 バッテリ収容部
46a 上吸気入口(吸気入口)
47 ドライバ収容部(駆動用部品収容部)
47a 下排気出口(排気出口)
48 連通孔(連通部)
49 凹部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用バッテリ(2)からの電力によりモータ(3a)を駆動させて走行する電動車両(1)のバッテリ温度調整構造において、
前記バッテリ(2)の下方に、少なくともモータドライバ(26)を含む駆動用電装部品(35)を配置し、
車両前方からの外気を前記バッテリ(2)及び駆動用電装部品(35)の配置部位に導入する吸気ダクト(43)と、前記駆動用電装部品(35)の熱を帯びた空気を前記バッテリ(2)の配置部位へ導く連通部(48)と、前記連通部(48)における空気の流れを制御する制御手段(38,39)とを備えることを特徴とする電動車両のバッテリ温度調整構造。
【請求項2】
前記バッテリ(2)と駆動用電装部品(35)とが、一つの収容体(41)に形成されたバッテリ収容部(46)と駆動用部品収容部(47)とにそれぞれ収容されるとともに、
前記収容体(41)には、前記バッテリ収容部(46)と駆動用部品収容部(47)とを区画する隔壁(45)を設け、
前記連通部(48)が、前記隔壁に形成されることを特徴とする請求項1に記載の電動車両のバッテリ温度調整構造。
【請求項3】
前記収容体(41)は、前記吸気ダクト(43)と連結し、
前記制御手段(38,39)は、前記駆動用バッテリ(2)を収容するバッテリ収容部(46)への吸気入口(46a)を開閉する入口側開閉弁(38)と、前記駆動用電装部品(35)を収容する駆動用部品収容部(47)からの排気出口(47b)を開閉する出口側開閉弁(39)とから構成され、
前記駆動用バッテリ(2)の低温時には、前記入口側開閉弁(38)が前記吸気入口(46a)を閉じると共に、前記出口側開閉弁(39)が前記排気出口(47b)を閉じ、
前記駆動用バッテリ(2)の高温時には、前記入口側開閉弁(38)が前記吸気入口(46a)を開くと共に、前記出口側開閉弁(39)が前記排気出口(47b)を開くことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動車両のバッテリ温度調整構造。
【請求項4】
前記駆動用部品収容部(47)の直上に前記バッテリ収容部(46)が配置されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電動車両のバッテリ温度調整構造。
【請求項5】
前記連通部(48)が、前記各収容部(46,47)の流路面積よりも小さい開口面積の連通孔(48)からなることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の電動車両のバッテリ温度調整構造。
【請求項6】
前記収容体(41)に空気流通用のファン(37)が設けられることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電動車両のバッテリ温度調整構造。
【請求項7】
前記駆動用バッテリ(2)の低温時には、前記ファン(37)の駆動を停止することを特徴とする請求項6に記載の電動車両のバッテリ温度調整構造。
【請求項8】
前記隔壁(45)が、前記駆動用バッテリ(2)のヒートシンクからなることを特徴とする請求項2に記載の電動車両のバッテリ温度調整構造。
【請求項9】
前記収容体(41)にサブバッテリ(28)が配置されることを特徴とする請求項2,3,8の何れか1項に記載の電動車両のバッテリ温度調整構造。
【請求項10】
前記サブバッテリ(28)が、前記収容体(41)内に設けられた凹部(49)に収容されることを特徴とする請求項9に記載の電動車両のバッテリ温度調整構造。
【請求項11】
前記駆動用電装部品(35)の下方に前記モータ(3a)が配置されることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の電動車両のバッテリ温度調整構造。
【請求項12】
前記モータ(3a)における前記駆動用電装部品(35)を接続する接続端子(3c)が、前記モータ(3a)の上方に突出することを特徴とする請求項11に記載の電動車両のバッテリ温度調整構造。
【請求項13】
前記駆動用バッテリ(2)が複数の単バッテリ(2a)を結線してなり、前記各単バッテリ(2a)間の隙間にバッテリ出力ハーネス(2c)及びコンタクタ(25)が配置されることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の電動車両のバッテリ温度調整構造。
【請求項14】
前記電動車両(1)は、車体の前方から車両側面を覆うカウリング(21)を備え、車体フレーム(11)のヘッドパイプ(12)から左右一対のメインフレーム(13)の後部の間で、前記左右メインフレーム(13)の下方に走行用の前記モータ(3a)を搭載したレース用スポーツバイクであり、
前記吸気ダクト(43)は、前記カウリング(21)の先端部に開口されることを特徴とする請求項1から13の何れか1項に記載の電動車両のバッテリ温度調整構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−96616(P2012−96616A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244378(P2010−244378)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】