説明

電圧を高めるための手段を備える給電装置

【課題】 電圧を高めるための手段を備える給電装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、二次側外部導体電位のための少なくとも2つの二次側タップと、二次側中性導体電位のための1つのタップとを有する第1の変圧器(T1)であって、二次側外部導体電位のためのタップの内の第1のタップと二次側中性導体電位のためのタップとの間での第1の変圧器の定格運転中、該第1の変圧器の定格電圧が低下する第1の変圧器、および、二次側外部導体電位のためのタップが、給電装置の出力部の外部導体接続部と結合される、2つのパワーコントローラ(V1,V2)を備える給電装置に関する。第1の変圧器(T1)の二次側の給電装置は、定格電圧よりも電圧を高めるための手段(T2)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電装置に関し、該給電装置は、二次側外部導体電位のための少なくとも2つの二次側タップと、二次側中性導体電位のための1つのタップとを有する第1の変圧器であって、二次側外部導体電位のためのタップの内の第1のタップと二次側中性導体電位のためのタップとの間での第1の変圧器の定格運転中、該第1の変圧器の定格電圧が低下する第1の変圧器、および、給電装置の出力部の第1の接続部と、二次側外部導体電位のためのタップとを結合する2つのパワーコントローラを備える。
【背景技術】
【0002】
かかる給電装置は、多くの特許文献から知られる。また参考書にもかかる給電装置が記載され、たとえば、非特許文献1に記載される。
【0003】
このような給電装置のパワーコントローラは、通常、電圧追従制御ができるように制御される。このような給電装置は、シーメンス法に従った化学蒸着(CVD)によるポリシリコンの製造のための反応炉の場合に頻繁に利用される。給電装置のこのような利用も特許文献から知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】G. K. Dubey, S. R. Doradla, A. Joshi, R. M. K. Sinha, “Thyristorised Power Controllers”, ISBN 0-85226-190-X, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電圧追従制御装置を備えるこのような給電装置の利点は、たとえば0〜2500Vという、他の給電装置と比べて高い電圧範囲にある電圧によって、高い力率と高い電力が利用できる点にある。
【0006】
シーメンス法に従ったポリシリコン製造のための方法において、初めに高い電気抵抗を有するシリコンバー(シリコン細棒またはヘアピンとも称される)には、初めに高い電圧によって駆動される電流が流れる。シリコン細棒をある程度加熱した後、抵抗は急激に低下する。これは通常シリコン細棒が発火すると言われている。発火後には電圧を低下させることが可能である。
【0007】
シリコン細棒に流れる電流は、シリコン細棒をシーメンス法に従った蒸着のために必要な温度にまで加熱する。蒸着によって、シリコン細棒にはケイ素が沈積し、これによってその直径が大きくなり、これがシリコンバーに成長する。シリコンバーの直径が増加するにつれ、シリコンバーに流れる電流に対する抵抗は小さくなる。したがって、蒸着プロセスの進行中、シリコンバーにおける電圧はさらに低下する。したがって、蒸着プロセスでは、給電装置によってシリコン細棒が発火する前の初期においては最も高い電圧が、プロセスの終わりでは最も低い電圧が供給されなければならない。
【0008】
したがって、プロセスの駆動方法に応じて、および反応炉に応じて異なる初期電圧とすることが必要であり、それが有利でもある。
【0009】
これまで、給電装置は、第1の変圧器によって供給される二次側定格電圧が、必要な最大電圧に対応するように決めるのが一般的であるが、これは、事情によっては、個々に適した変圧器を必要としたり、定格電圧に適したパワーコントローラを必要とすることになる。そのことによって、給電装置の製造には労力とコストを要し、結果的に高額となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明が提供される。
本発明は、二次側外部導体電位のための少なくとも2つの二次側タップと、二次側中性導体電位のための1つのタップとを有する第1の変圧器(T1)であって、二次側外部導体電位のためのタップの内の第1のタップと二次側中性導体電位のためのタップとの間での第1の変圧器の定格運転中、該第1の変圧器の定格電圧が低下する第1の変圧器、および、二次側外部導体電位のためのタップが、給電装置の出力部の外部導体接続部と結合される、2つのパワーコントローラ(V1,V2)を備える給電装置において、
第1の変圧器(T1)の二次側の給電装置が、定格電圧よりも電圧を高めるための手段(T2)を備えることを特徴とする給電装置である。
【0011】
また本発明において、電圧を高めるための手段(T2)が、切換え可能な第2の変圧器であることを特徴とする。
また本発明において、第2の変圧器が、単巻変圧器(T2)であることを特徴とする。
【0012】
また本発明において、第2の変圧器(T2)の中間タップは、場合によっては、パワーコントローラ(VB1,VB2)またはスイッチ(VB1,VB2,VB3,VB4)の中間スイッチを介して、第1の変圧器の第1のタップに接続されることを特徴とする。
【0013】
また本発明において、単巻変圧器の変圧器コイルの第1の端部におけるタップは、場合によっては、パワーコントローラまたはスイッチの中間スイッチを介して、第1の変圧器のタップに、好ましくは、二番目に高い二次側外部導体電位のための第1の変圧器のタップに接続されることを特徴とする。
【0014】
また本発明において、単巻変圧器の変圧器コイルの第2の端部におけるタップは、場合によっては、パワーコントローラまたはスイッチの中間スイッチを介して、出力部の第1の接続部と結合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、給電装置または給電装置の少なくとも重要な構成要素の標準化が可能になるように、冒頭で述べたタイプの給電装置を改善するという課題に基づく。
【0016】
この課題は、発明に従えば、第1の変圧器の二次側の給電装置が、定格電圧よりも電圧を高めるための手段を有することによって解決される。
【0017】
第1の変圧器の定格電圧よりも、給電装置の出力部における電圧を高めるための手段を設けることによって、給電装置の所望の定格電圧が、第1の変圧器の定格電圧を超える場合に、第1の変圧器を利用することを可能にする。したがって、第1の変圧器は、これまでより高い定格電圧を有する他の変圧器を組込むことが必要であった給電装置のためにも利用することが可能である。
【0018】
電圧を高めるための手段は、切換え可能な第2の変圧器であることが好ましい。第2の変圧器の切換えは、スイッチまたはパワーコントローラによって達成することが可能である。切換えのために、二次側外部導体のための第1の変圧器のタップに接続されたパワーコントローラを設けてもよい。
特に、第2の変圧器は単巻変圧器であることが好ましい。
【0019】
第2の変圧器の中間タップは、第1の変圧器の第1のタップ、すなわち、第1の変圧器の二次側中性導体電位に対抗する、最も高い二次側外部導体のためのタップに接続することが可能である。この接続は、パワーコントローラの中間スイッチ、および/または単巻変圧器を、電圧を高めるための手段として切換えることが可能なスイッチを介して行われる。
【0020】
単巻変圧器の変圧器コイルの第1の端部におけるタップは、第1の変圧器のタップに、好ましくは、二番目に高い二次側外部導体電位のための第1の変圧器のタップに接続される。この接続は、パワーコントローラの中間スイッチ、および/または単巻変圧器を電圧を高めるための手段として切換えることが可能であるスイッチの中間スイッチを介して行われる。
【0021】
単巻変圧器の変圧器コイルの第2の端部におけるタップは、出力部の第1の接続部と結合することが可能である。この結合は、パワーコントローラの中間スイッチ、および/または、単巻変圧器を電圧を高めるための手段として切換えることが可能であるスイッチを介して行われる。
【0022】
本発明に従った給電装置において利用されるパワーコントローラは、サイリスタとすることが可能である。利用されるスイッチは、コンバータバルブからなるスイッチ、特に、サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などからなるスイッチが可能である。これらのスイッチは双方向のものが好ましい。
【0023】
本発明のさらなる特徴と利点は、添付の図を参照して、以下の好適な実施形態についての説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態の回路図である。
【図2】第2の実施形態の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に従った給電装置の図1および図2に示す回路図は、第1の変圧器T1と、第1の変圧器T1の二次側タップに接続される、第2のパワーコントローラV1,V2と、2つのパワーコントローラV1,V2が制御される2段階電圧追従制御部と(詳細には図示せず)、双方向スイッチまたはパワーコントローラを介して切換えることが可能である電圧を高めるための手段T2とを含む。
【0026】
第1の変圧器T1と2つのパワーコントローラV1,V2とは、知られる方法で互いに結合される。第1の変圧器T1は二次側に3つのタップを有し、2つのタップには二次側外部導体電位が準備され、3番目のタップには、二次側中性導体電位が準備される。外部導体電位のための2つのタップは、パワーコントローラV1,V2を介して、第1の接続部、発明に従った給電装置の出力部の外部導体接続部と結合される。中性導体電位のためのタップは、第2の接続部、出力部の中性導体接続部と結合される。出力部には、負荷として、3つの抵抗が接続され、これらは、たとえば、シーメンス法に従った化学蒸着によるポリシリコンの製造のための反応炉において配設されるシリコンバーまたはシリコン細棒である。
【0027】
パワーコントローラV1,V2は、0Vと第1の変圧器T1の定格電圧との間で所望の電圧に調整するために、電圧追従制御によって、知られた方法で制御されることが可能である。
【0028】
給電装置の出力部において、第1の変圧器T1の定格電圧よりも高い電圧の準備のために、変圧器の、定格駆動における二次側導体電位のためのタップの内の第1のタップにおける定格電圧よりも電圧を高めるための手段T2が設けられ、該手段T2は、両実施形態において、第2の変圧器によって形成される。この第2の変圧器は、単巻変圧器T2とすることが可能である。
【0029】
図1および図2に示した2つの実施形態は、単巻変圧器T2が他の回路配置へと結合または切換えられるという点において異なるものである。
【0030】
第1の実施形態において、単巻変圧器T2の変圧器コイルの中間タップは、2つの逆並列に切換えられるサイリスタからなる双方向スイッチVB1を介して、第1の変圧器T1の第1のタップ、すなわち、二次側中性導体電位に対抗する最高外部導体電位のためのタップと結合する。それに対して、単巻変圧器T2の変圧器コイルの第1の端部におけるタップは、二次側中性導体電位に対抗する、2番目に高い外部導体電位を有する第1の変圧器のタップと結合する。単巻変圧器T2の変圧器コイルの第2の端部におけるタップは、2つの逆並列に切換えられるサイリスタからなるパワーコントローラVB2を介して、出力部の外部導体接続部と結合される。
【0031】
スイッチVB1とパワーコントローラVB2とがオンになり、パワーコントローラV1,V2がオフとなる場合、出力部では、第1の変圧器T1の二次側電圧と、単巻変圧器T2の変圧器コイルの第2の端部と単巻変圧器T2の変圧器コイルの中間タップとの間の電圧UBとの合計に相当する電圧ULが低下する。パワーコントローラVB2の位相角制御によって、この電圧のレベルを調整することが可能である。
【0032】
それに対して、スイッチVB1またはパワーコントローラVB2がオフの場合、パワーコントローラV1,V2を介して、出力電圧ULは知られた方法において、電圧追従制御によって調整される。
【0033】
第1の実施形態の変形例において、サイリスタVB1は、パワーコントローラとして利用され、位相角制御によって制御される。単巻変圧器T2の変圧器コイルの第2の端部は、この場合出力部の外部導体接続部と直接結合することが可能である。したがって、単巻変圧器T2の接続および出力電圧の調整は、電圧が高くなった場合にパワーコントローラVB1を介して行われる。サイリスタVB2は、双方向スイッチとして利用することが可能である。またはケーブルで代用することが可能である。
【0034】
第2の実施形態において、単巻変圧器T2の変圧器コイルの中間タップは、第1の変圧器T1の二次側コイルの第1のタップと直接結合される。すなわち、二次側中性導体電位に対抗する最高外部導体電位のための第1のタップと直接結合される。単巻変圧器T2の変圧器コイルの第1の端部におけるタップは、第2の実施形態の場合、2つの逆並列に切換えられるサイリスタからなる双方向スイッチVB3を介して、二次側中性導体電位に対抗する第2番目に高い外部導体電位を有する第1の変圧器T1のタップと結合される。単巻変圧器T2の変圧器コイルの第2の端部のタップは、第2の実施形態の場合、2つの逆並列に切換えられるサイリスタからなる双方向スイッチVB4を介して、第1の変圧器T1の二次側コイルの第1のタップと、すなわち、最高外部導体電位のためのタップと結合される。スイッチVB4とパワーコントローラV2とがオフであり、パワーコントローラV1とスイッチVB3とがオンの場合、第2の実施形態に従った給電装置の出力部では、第1の変圧器T1の二次側電圧と、単巻変圧器T2の変圧器コイルの第2のタップと単巻変圧器T2の変圧器コイルの中間タップとの間の電圧UBとの合計に相当する電圧ULが低下する。出力電圧のレベルは、パワーコントローラV1を介して調整することが可能である。
【0035】
それに対して、スイッチVB4がオンであり、スイッチVB3がオフである場合、第2の実施形態に従った給電装置は、電圧追従制御を備える従来の給電装置のように利用することが可能である。
【0036】
パワーコントローラまたは双方向スイッチのための構成要素として、適切なものであれば、任意の他の構成要素も可能であって、特に、たとえば、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの出力半導体を利用することも可能である。双方向スイッチとして接触器またはリレーを利用することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次側外部導体電位のための少なくとも2つの二次側タップと、二次側中性導体電位のための1つのタップとを有する第1の変圧器(T1)であって、二次側外部導体電位のためのタップの内の第1のタップと二次側中性導体電位のためのタップとの間での第1の変圧器の定格運転中、該第1の変圧器の定格電圧が低下する第1の変圧器、および、二次側外部導体電位のためのタップが、給電装置の出力部の外部導体接続部と結合される、2つのパワーコントローラ(V1,V2)を備える給電装置において、
第1の変圧器(T1)の二次側の給電装置が、定格電圧よりも電圧を高めるための手段(T2)を備えることを特徴とする給電装置。
【請求項2】
電圧を高めるための手段(T2)が、切換え可能な第2の変圧器であることを特徴とする、請求項1に記載の給電装置。
【請求項3】
第2の変圧器が、単巻変圧器(T2)であることを特徴とする、請求項2に記載の給電装置。
【請求項4】
第2の変圧器(T2)の中間タップは、場合によっては、パワーコントローラ(VB1,VB2)またはスイッチ(VB1,VB2,VB3,VB4)の中間スイッチを介して、第1の変圧器の第1のタップに接続されることを特徴とする、請求項3に記載の給電装置。
【請求項5】
単巻変圧器の変圧器コイルの第1の端部におけるタップは、場合によっては、パワーコントローラまたはスイッチの中間スイッチを介して、第1の変圧器のタップに、好ましくは、二番目に高い二次側外部導体電位のための第1の変圧器のタップに接続されることを特徴とする、請求項3または4に記載の給電装置。
【請求項6】
単巻変圧器の変圧器コイルの第2の端部におけるタップは、場合によっては、パワーコントローラまたはスイッチの中間スイッチを介して、出力部の第1の接続部と結合されることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の給電装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−33480(P2013−33480A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−168991(P2012−168991)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【出願人】(511011861)
【氏名又は名称原語表記】AEG Power Solutions B.V.
【住所又は居所原語表記】Weerenweg 29 Zwanenburg The Netherlands
【Fターム(参考)】